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トヨタが全固体電池車 充電数分、22年国内で

 トヨタ自動車は、現状の電池よりも飛躍的に性能を高めた次世代の「全固体電池」を搭載した電気自動車(EV)を2022年にも日本国内で発売する方針を固めた。現在のEVの弱点である航続距離を大幅に延ばし、フル充電も数分で済む。車載用では世界初の実用化になるとみられ、EV開発で欧米メーカーが先行する中、革新技術の導入で巻き返しを図る。

 現在、各社が販売するEVの車載電池には主にリチウムイオン電池が使われている。電解質を液体から固体に替えた全固体電池は、リチウムイオン電池の2倍の充電量を見込める。現行のEVは航続距離が300~400キロ程度とガソリン車より短く、急速充電であっても数十分かかるが、全固体電池はこれらの弱点を一気に解決する可能性がある。

 長年にわたり全固体電池の研究を進めてきたトヨタは昨年、東京工業大などとの共同研究で電解質に適した固形素材を発見したと発表した。

 22年以降に国内での市販を目指す新型EVに搭載するため、量産化に向けた開発を今年から本格化させた。新たにEV用のプラットフォーム(基本骨格)を開発し、全固体電池を搭載する計画だ。19年にも中国で生産、販売する小型スポーツタイプ多目的車(SUV)「C-HR」をベースにしたEVは、迅速な市場投入を優先して既存のリチウムイオン電池を使う予定だ。

 全固体電池の開発は、独BMWやフォルクスワーゲン(VW)なども進めているが、量産を巡る具体的な計画は明らかになっていない。

 <全固体電池> 充放電の際にイオンの通り道となる電解質にセラミックなどの固体を使用する。液体を使うリチウムイオン電池と異なり液漏れの心配がなく、高熱にも耐えるため安全性が高い。出力や蓄電量も倍以上の性能が期待できる。

(中日新聞)


次世代電池を牽引する、全固体電池開発  2016年07月22日
http://m.huffpost.com/jp/entry/11076660
広く普及しているリチウムイオン電池の3倍以上の出力特性を持つ、全固体(型)セラミックス電池が開発された。 開発に成功したのは、東京工業大学物質理工学院の菅野了次教授、トヨタ自動車の加藤祐樹博士らの研究グループで、リチウムイオンの伝導率がこれまでの2倍という過去最高の性能を誇る固体電解質の発見によって実現した
フル充電が数分 爆発等の危険性がない
電池容量がLiの倍か三倍 コストが下がる
1000回充放電繰り返しても劣化せず 既に‐30度~100度での安定性確保
ありがちな未来予想じゃなく五年後に量産して国内販売という現実性
THSに続いて革新的なものはいつもトヨタから
リチウム電池自動車で最大の問題だった爆発の危険性がこれでほぼ排除される 全固体電池が小型化されれば電子端末にも革命が起きるぞ

次世代電池を牽引する、全固体電池開発

投稿日: 更新:

広く普及しているリチウムイオン電池の3倍以上の出力特性を持つ、全固体(型)セラミックス電池が開発された。開発に成功したのは、東京工業大学物質理工学院の菅野了次教授、トヨタ自動車の加藤祐樹博士らの研究グループで、リチウムイオンの伝導率がこれまでの2倍という過去最高の性能を誇る固体電解質の発見によって実現した。

次世代の自動車開発、スマートグリッド拡大などにつながる有力な蓄電デバイスとして期待される。成果は今年1月に創刊したNature Energy の4月号に発表された。菅野教授、筆頭著者の加藤博士に研究の意義、今後の展望などについて伺った。

―― 全固体セラミックス電池とはどんなものですか?

菅野氏: 電池は、正極、負極と、その間にありイオンが流れる電解質で構成されます。1991年に実用化されたリチウムイオン電池は、電解質に可燃性の有機溶媒液が使われており、漏出などによる安全性・信頼性への懸念に加え、容量(出力)が小さい、コストが高いなどの課題がありました。

こうした有機電解質の弱点を克服するため、電極、電解質を含め、全てを固体化した電池ができないかと30年以上にわたり研究してきました。これが全固体電池です(図1)。この電池の実現には、従来の有機電解質を上回るイオン伝導率の固体電解質が必須でした。この固体電解質をセラミックスにしたのが「全固体セラミックス電池」ですが、極めてハードルの高い挑戦でした。

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図1:リチウム電池の全固体化

現在主流のリチウムイオン電池の電解質は可燃性の有機溶媒であり、漏出や過熱などの安定性に課題を抱えている。電解質を固体材料に置き換える全固体電池は、これらの課題を解決し得るとして期待が高まっているが、その実現には、有機電解質以上のイオン伝導体が必要。

菅野教授らの研究グループは2011年に発見した有機溶媒系に匹敵する超イオン伝導体Li10GeP2S12を足掛かりに、新たにLi9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3など二つの有望物質を発見。これを使った全固体電池はリチウムイオン電池を上回る次世代電池になりうることを確認した。

―― 今回、念願の材料を手にしたということですね。

菅野氏: 我々は試行錯誤を繰り返しながら物質探索を続け、2011年には、イオン伝導率が有機電解質に匹敵するセラミックス材料Li10GeP2S12(LGPS=リチウム・ゲルマニウム・リン・硫黄)を開発しました(参考文献1)。ただ、この材料を電解質とする全固体型電池を作っても、電流などの出力特性が従来のリチウムイオン電池を凌駕することはできませんでした。

しかし、このLGPSに可能性を見出し、LGPSをもとに硫化物系の新物質探索を行ってきました。高価なゲルマニウムに代わる元素はないかと、加藤さんが中心となって地道な作業を続け、イオン伝導率が有機電解質の2倍という超イオン伝導体Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3を発見したのです(参考文献2)。超イオン伝導体とは、イオンが固体の中をあたかも液体の中を流れるかのように動き回れる物質のことです。さらに、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3に加え、リチウム金属負極の電解質に使える、より安定した超イオン伝導体のLi9.6P3S12も発見しました(参考文献2)。

この2つの超イオン伝導体を用いて、全固体電池を作りました。室温(27℃)でリチウムイオン電池の3倍以上も電流が流れるなど高い出力特性を持っています。さらにリチウムイオン電池の欠点であった低温(マイナス30℃)、高温(100℃)でも安定して充電、放電ができることが分かりました。

―― 超イオン伝導体を見つけるのは苦労の連続ではなかったですか。

加藤氏: 菅野先生との共同研究で2011年にNature Materials にLi10GeP2S12という有望材料を発表してから、世界中で開発競争がスタートしました。他の研究機関に先を越されないかというプレッシャーの中で走り続けることは緊張感がありました。

まず高価なゲルマニウムをシリコンやスズに置き換える研究を開始し、置換はある程度うまくいきましたが、イオン伝導率がLGPS系に比べ半分程度まで下がってしまいました。有機電解質を超える魅力を持つ材料をゲルマニウムなしで何とか実現したいと、新しい組成を合成しては調べることを毎日繰り返しました。その中で、少しだけいつもと違う傾向を見つけました。

いつもより不純物が多いのに、経験上、少しだけイオン伝導率が高い気がしたのです。それが塩素添加系でした。何か違うと感じてその周辺を徹底的に調べて、今回の発見にたどり着きました。組成と数字を眺めていただけでは駄目だったと思います。不安と闘いながら、毎日実験をさせてもらえたおかげです。特別な工夫があったわけではないのですが、わずかな違いを見落とさなかったことが良かったと思っています。

菅野氏: 物質探索の手法は、端から端まで、漏れがないよう、しらみつぶしに探すことです。根気よく続けることが欠かせません。魚釣りでは、魚がいるところが分かればある程度釣れますが、魚がいる場所を見つけるまでが大変です。それと同じことで、目指す物質がどこにあるかを探るには、LGPS系の有望性に手ごたえはあったものの、100を超える物質を実際に合成して調べてみなくてはなりませんでした。

―― 今回報告した、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3の特性はいかがですか。

菅野氏: 今回発見した材料は、室温でのイオン伝導率が25mScm-1(1センチメートル当たり25ミリジーメンス。ジーメンスは抵抗の単位Ωの逆数で、電流の流れやすさを示す)とリチウムイオン伝導体としてトップクラスを誇ります。

現在のリチウムイオン電池の有機電解質(液)が10mScm-1ですから、固体でありながら液体以上にリチウムイオンの輸送能力があることを示します。この物質の結晶構造を、茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設「J-PARC」の粉末中性子解析装置「茨城県材料構造解析装置」(iMATERIA)で調べたところ、興味深いことが分かりました。

三次元の骨格構造(図2)内にリチウムが鎖状につがっていたのです。しかも、室温でイオンの伝導経路(通り道)が三次元的でした。伝導性が極めて高い理由はこの構造にあると考えています。

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図2:超イオン伝導体Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3の結晶構造
大強度陽子加速器施設「J-PARC」の粉末中性子解析装置「茨城県材料構造解析装置」(iMATERIA)で撮影したもので、緑色はリチウムイオン。左は結晶構造で、リチウムイオンが熱振動して、超イオン電導に関与していることを示す。右はリチウムイオン伝導経路で、リチウムが上下方向だけでなく水平方向にも三次元的に連なり、室温でも拡散し、伝導経路を確保している。

―― 電池としての有望性は?

菅野氏: 開発した全固体電池は、数分でフル充電できます。急速充放電が可能なキャパシタよりも優れた出力特性を示すことも確認しました。それを表したのが図3のラゴンプロットです。二次電池(充電式電池)のエネルギー密度と容量の関係を示しています。今回、我々が作った全固体電池は、リチウムイオン電池はもちろん、現在、次世代として注目されるナトリウムイオン電池、リチウム空気電池、マグネシウム電池、アルミニウム電池などと比較しても優れた特性があります。

出力を一定に維持しながら従来の有機電解質のリチウムイオン電池の2倍以上のエネルギーを取り出すことができた他、1000サイクルの充放電を繰り返しても、電位の安定性は保たれ、実用電池に匹敵する耐久性を兼ね備えていることが分かりました。

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図3:二次電池(充電式電池)のエネルギー密度と容量の関係を示すラゴンプロット

エネルギー密度は、電池の単位重量(体積)当たりに充放電できる電気エネルギー量のことで、大きい程優れた電池。出力密度は、どれだけの電流量で充放電できるかということで、電池のパワーを意味する。Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3を電解質にした全固体電池は、リチウムイオン電池はもちろん、現在、次世代として注目されるナトリウムイオン電池、リチウム空気電池、マグネシウム電池、アルミニウム電池などとして比較しても優れている。

―― 全固体電池のいいところは?

菅野氏: 電解質が固体であると、積層電池が作れます。集電体の片面に正極、もう1つの面に負極を置いたバイポーラ電極を電解質に挟んで複数枚を直列につなぐのです。高電圧を取り出すことも可能となります。

―― いいことだらけですが、欠点や課題はありますか?

加藤氏: Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3の課題はいくつかあります。その1つは、伝導機構の詳細なメカニズムの解明です。微量の塩素が入っただけで、これほどまでに伝導率が向上した理由はまだ分かっていません。これが解明されれば、さらに的確な材料設計が可能になると思います。塩素などハロゲン元素は他にフッ素、臭素、ヨウ素があります。シリコンの部分も、スズなどの別の元素に置き換えることが可能です。

もう1つの課題は、電池として量産した場合の負極側の安定性の向上です。伝導率が高い半面、負極側の耐還元性に課題があります。電池のエネルギー密度を考えた場合、負極は、炭素ではなくリチウム金属を使うのが究極です。残念ながらこの材料は、今のままではリチウム金属と合わせて使うことができません。

一方、今回の論文で報告したもう1つの物質Li9.6P3S12は、リチウム金属の界面では優れた安定性を示します。リチウム金属を負極に使った電池で、充放電も安定することが証明されています。しかし、こちらはイオン伝導率が有機溶媒電解質の10分の1と低く、どうやって引き上げるかが課題です。

いずれにせよ、両立した材料を見つけられるのが一番ですが、そうでなくても、それぞれの長所をうまく使い分けることができれば、さらに良い性能を持つ電池が作れるかもしれません。

―― 今回の固体電池の応用はいかがですか。

加藤氏: 燃料電池車、電気自動車、ハイブリッド車も電池は積んでいます。良い電池は必ず良い車につながると信じています。

―― Nature Energy に投稿を決めた理由は?

加藤氏: 電池を全固体化するというコンセプトは電気化学システムとして正しい方向性であり、今回の成果は電池の性能を大きく向上できることを示すデータになると確信していました。より多くの方の目に留まるところで発表したいと思っていたところ、菅野先生からNature Energy 創刊のご連絡を受けました。

論文誌のターゲットと我々の論文の内容が合致しているように感じましたので、先生と相談の上投稿を決めました。新しい雑誌というのも新鮮でした。

―― 世界的に競争が激しい分野ですが。

菅野氏: 材料科学は、こつこつと地道に実験をやることでいいものに出会えるという意味では、日本人に合った研究分野だと思います。実際、お家芸的に論文も多い。しかし最近は、中国系の研究者の論文が目立つようになってきました。研究者の数が圧倒的に多いですから。ただ、我々もさらに課題を克服し、さらに良い材料を手に入れたいと思います。それには、実験だけでなく人工知能(AI)などを駆使した材料の探索も考えています。

加藤氏: 今、欧州で全固体電池の研究を続けています。こちらに来て感じたのは、欧州の研究者は化学量論的組成を好むということです。固体電解質の探索は、頭の中で計算する量論組成を外れ、実際に作っていくことが大事だと教科書にも書いてありますが、あまり実践されていないと感じました。量論組成から外れることは材料探索の道標から外れることでもありますが、そうした姿勢も大事で、泥臭くこつこつと続けていくことが重要です。こうしたスタイルは日本の方が受け入れられるのではないでしょうか。

―― 最後に一言、お願いします。

菅野氏: 30年以上、全固体電池の研究を続け、その良さをアピールしてきました。では、実際、全固体電池にしたら何がいいのですかと何度も聞かれ、納得してもらえるような説明ができていませんでした。しかし、今回、従来の電池を上回るような全固体電池を実際に作ったことで、安全性、信頼性、使い勝手の良さなどの多くの利点を示すことができました。まだまだ実用化には越えるべき山がありますが、さらに良いものを目指していきたいと思っています。

参考文献
  1. Kamaya, N. et al. Nature Materials, 10, 682-686 (2011)
  2. Kato, Y. et al. Nature Energy, 1, 16030(2016)

Nature Energy 掲載論文

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Article: 硫化物系超イオン伝導体を用いた高出力全固体電池
High-power all-solid-state batteries using sulfide superionic conductors
Nature Energy 1 : 16030 doi:10.1038/nenergy.2016.30 | Published online 21 March 2016

Author Profile

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菅野 了次
1980年 大阪大学理学研究科無機及び物理化学専攻課程修了。三重大学工学部助手、神戸大学理学部助教授を経て2001年より東京工業大学大学院総合理工学研究科教授、2016年より同大物質理工学院教授。理学博士。

大学院生時代からセラミックス材料合成に携わり、三重大学で物質合成と電気化学との境界領域の研究テーマに出会う。それ以来、一貫して新しい物質を創り出すのに興味を持つとともに、生み出した新物質を蓄電池や燃料電池に利用することを目指してきた。電池を固体のセラミックスで作りたいという、研究をはじめたときからの夢の実現を目指している。趣味はクラシック音楽。

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加藤 祐樹
2008年トヨタ自動車株式会社に入社。2014年 東京工業大学大学院総合理工学研究科物質電子化学専攻 博士課程 修了。工学博士。2015年よりトヨタモーターヨーロッパ。トヨタ自動車に入社後より全固体電池の研究に従事。以来同分野の研究者が起こした数々のブレイクスルーを目の当たりにし、今こそが全固体電池実現の時機だと信じている。今後も材料と電池の研究を続け、その一翼を担いたいと考えている。趣味はインターネットサーフィン。

Nature Energy 日本語サイト
Nature Energy 創刊号(2016年1月号)フルテキスト公開中 (2016年12月末まで)

その他のNature関連誌 著者インタビュー



トヨタが開発戦略を180度転換 EV開発に本腰

トヨタはこれまでの開発戦略を180度転換し、電気自動車(EV)開発に本腰を入れざるを得なくなっている。

photo 4月19日、トヨタ自動車はこれまでの開発戦略を180度転換し、電気自動車(EV)開発に本腰を入れざるを得なくなっている。写真は同社RAV4のEV車。米カリフォルニア州で2011年9月撮影(2017年 ロイター/Lucy Nicholson)

[上海 19日 ロイター] - トヨタ自動車<7203.T>はこれまでの開発戦略を180度転換し、電気自動車(EV)開発に本腰を入れざるを得なくなっている。業界内で次世代自動車の主力はEVとの見方が強まる一方であることに加え、中国の政策に背中を押された形だ。

ごく最近までトヨタは、電気のみで走行する100%EVに背を向け、次世代車として水素式の燃料電池車(FCV)開発を積極的に進めていた。2013年、ガソリンと電気のハイブリッド車「プリウス」の生みの親の内山田竹志会長は、水素電池車は従来の燃焼エンジンに対する「実際的な代替役」だと語り、EVが使われるとしても近距離用に限定されるとの見通しを示した。

同社はモーター搭載式のハイブリッド車とプラグインハイブリッド車(PHV)が水素電池車への橋渡し的存在になると予想。14年にはついに初の水素電池車「MIRAI」の販売を開始した。

ところが昨年末、長距離走行可能な100%EVの開発を始めると表明し、豊田章男社長直々に指揮を執る新部門を立ち上げた。業界専門家によると、2020年ごろには販売にこぎ着けるはずだという。

あるトヨタ役員はこうした方針変更について「苦渋に満ち、胸が痛む」と表現している。

トヨタに姿勢を変えさせた大きな要因は、世界最大の市場である中国にある。同国政府はクリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた厳しい燃費基準導入を計画しつつあり、世界の大手メーカーは試練にさらされている。

昨年9月に公表された当局の提案では、各メーカーに販売台数の8%を来年までにEVないしPHVとするよう義務付けた。この比率は2019年に10%、20年には12%まで高められる。

業界側の働きかけでクリーンエネルギー自動車に関する販売義務の比率やペースは多少修正されるかもしれないが、トヨタを始め各メーカーは中国が20年までにEVを本格的に市場に普及させようとする基本的な流れは続くとみている。

ただトヨタにとってこれは死活問題になりかねない、と別の役員は懸念を示した。中国の提案によると、プリウスのようなモーター式ハイブリッド車はガソリン車と同等に扱われ、厳格な燃費基準達成のために利用できる「新EVクレジット」を稼ぎ出してくれない。

トヨタの大西弘致中国本部長は18日、「中国の見解ではプリウスはガソリン車と変わらないので、われわれはアレルギーを克服して電気自動車を考え出すしか道はない」と述べ、来年には中国でPHV販売を始める方針を明らかにした。いずれは100%EVの販売も目指すとしながらも、その具体的な時期は示していない。

(Norihiko Shirouzu記者)


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江守孝三(Emori Kozo)