春秋左氏傳校本第二十七
起元年盡七年
晉 杜氏 集解
唐 陸氏 音義
尾張 秦 鼎 校本
定公 名、宋。襄公之子。昭公之弟。謚法、安民大慮曰定。
【読み】
定公 名は、宋。襄公の子。昭公の弟。謚法に、民を安んじ大慮するを定と曰う、と。
〔經〕元年、春、王 公之始年、而不書正月、公卽位在六月故。
【読み】
〔經〕元年、春、王の 公の始年にして、正月を書さざるは、公の位に卽くことは六月に在る故なり。
三月、晉人執宋仲幾于京師。晉執人于天子之側、而不以歸京師。故但書其執、不書所歸。○幾、音機。
【読み】
三月、晉人宋の仲幾を京師に執う。晉人を天子の側に執えて、以て京師に歸[おく]らず。故に但其の執うるを書して、歸る所を書さず。○幾は、音機。
夏、六月、癸亥、公之喪至自乾侯。告於廟。故書至。
【読み】
夏、六月、癸亥[みずのと・い]、公の喪乾侯より至る。廟に告ぐ。故に至るを書す。
戊辰、公卽位。定公不得以正月卽位、失其時。故詳而日之。記事之宜。無義例。
【読み】
戊辰[つちのえ・たつ]、公位に卽く。定公正月を以て位に卽くことを得ず、其の時を失う。故に詳らかにして之に日す。事を記すの宜しきなり。義例無し。
秋、七月、癸巳、葬我君昭公。公在外薨。故八月乃葬。
【読み】
秋、七月、癸巳[みずのと・み]、我が君昭公を葬る。公外に在りて薨ず。故に八月にして乃ち葬る。
九月、大雩。無傳。過也。○雩、音于。
【読み】
九月、大いに雩[う]す。傳無し。過ぐるなり。○雩は、音于。
立煬宮。煬公、伯禽子也。其廟已毀。季氏禱之、而立其宮。書以譏之。○煬、羊讓反。
【読み】
煬宮を立つ。煬公は、伯禽の子なり。其の廟已に毀つ。季氏之に禱りて、其の宮を立つ。書して以て之を譏る。○煬は、羊讓反。
冬、十月、隕霜殺菽。無傳。周十月、今八月。隕霜殺菽、非常之災。○菽、本又作叔。
【読み】
冬、十月、隕霜菽を殺[か]らす。傳無し。周の十月は、今の八月。隕霜菽を殺らすは、非常の災なり。○菽は、本又叔に作る。
〔傳〕元年、春、王正月、辛巳、晉魏舒合諸侯之大夫于狄泉、將以城成周。魏子涖政。涖、臨也。代天子大夫爲政。
【読み】
〔傳〕元年、春、王の正月、辛巳[かのと・み]、晉の魏舒諸侯の大夫を狄泉に合わせ、將に以て成周に城かんとす。魏子政に涖[のぞ]む。涖は、臨むなり。天子の大夫に代わりて政を爲す。
衛彪傒 衛大夫。
【読み】
衛の彪傒 衛の大夫。
曰、將建天子、立天子之居。
【読み】
曰く、將に天子を建てんとして、天子の居を立つるなり。
而易位以令、非義也。大事奸義、必有大咎。晉不失諸侯、魏子其不免乎。
【読み】
位を易えて以て令するは、義に非ざるなり。大事に義を奸せば、必ず大咎有り。晉諸侯を失わずんば、魏子其れ免れざらんか、と。
是行也、魏獻子屬役於韓簡子及原壽過、簡子、韓起孫、不信也。原壽過、周大夫。○屬、之欲反。過、古禾反。
【読み】
是の行や、魏獻子役を韓簡子と原壽過とに屬して、簡子は、韓起の孫、不信なり。原壽過は、周の大夫。○屬は、之欲反。過は、古禾反。
而田於大陸、焚焉。禹貢、大陸、在鉅鹿北、嫌絕遠。疑此田在汲郡吳澤荒蕪之地。火田幷見燒也。爾雅、廣平曰陸。
【読み】
大陸に田[かり]し、焚かれぬ。禹貢に、大陸は、鉅鹿の北に在れば、絕遠に嫌あり。疑うらくは此の田は汲郡吳澤荒蕪の地に在らん。火田して幷せて燒かるるなり。爾雅に、廣平を陸と曰う、と。
還、卒於甯。甯、今脩武縣。近吳澤。
【読み】
還り、甯[ねい]に卒す。甯は、今の脩武縣。吳澤に近し。
范獻子去其柏槨。以其未復命而田也。范獻子代魏子爲政。去其柏槨、示貶之。○去、起呂反。
【読み】
范獻子其の柏槨を去[す]つ。其の未だ復命せずして田するを以てなり。范獻子魏子に代わりて政を爲す。其の柏槨を去つるは、之を貶するを示すなり。○去は、起呂反。
孟懿子會城成周。不書、公未卽位。
【読み】
孟懿子成周に城くに會す。書さざるは、公未だ位に卽かざればなり。
庚寅、栽。栽、設版築。○栽、才代反。又音再。
【読み】
庚寅[かのえ・とら]に、栽す。栽は、版築を設くるなり。○栽は、才代反。又音再。
宋仲幾不受功、曰、滕・薛・郳、吾役也。欲使三國代宋受功役也。○郳、五兮反。小邾國。
【読み】
宋の仲幾功を受けずして、曰く、滕・薛・郳[げい]は、吾が役なり。三國をして宋に代わりて功役を受けしめんと欲するなり。○郳は、五兮反。小邾國。
薛宰曰、宋爲無道、絕我小國於周、以我適楚。故我常從宋。晉文公爲踐土之盟、在僖二十八年。
【読み】
薛の宰曰く、宋無道を爲し、我が小國を周に絕ち、我を以[い]て楚に適きぬ。故に我れ常に宋に從えり。晉の文公踐土の盟を爲して、僖二十八年に在り。
曰、凡我同盟、各復舊職。若從踐土。若從宋。亦唯命。仲幾曰、踐土固然。固曰從舊。薛、舊爲宋役。
【読み】
曰く、凡そ我が同盟、各々舊職に復せよ、と。若しくは踐土に從わんか。若しくは宋に從わんか。亦唯命のままなり、と。仲幾曰く、踐土固より然り、と。固より舊に從えと曰えり。薛は、舊宋の役爲り。
薛宰曰、薛之皇祖奚仲居薛、以爲夏車正、皇、大也。奚仲爲夏禹掌車服大夫。
【読み】
薛の宰曰く、薛の皇祖奚仲薛に居りて、以て夏の車正と爲り、皇は、大なり。奚仲夏禹の車服を掌る大夫爲り。
奚仲遷于邳、邳、下邳縣。
【読み】
奚仲邳[ひ]に遷り、邳は、下邳縣。
仲虺居薛、以爲湯左相。仲虺、奚仲之後。
【読み】
仲虺[ちゅうき]薛に居りて、以て湯の左相爲り。仲虺は、奚仲の後。
若復舊職、將承王官。何故以役諸侯。承、奉也。
【読み】
若し舊職に復せば、將に王官に承けんとす。何の故にして以て諸侯に役せん、と。承は、奉ずるなり。
仲幾曰、三代各異物。薛焉得有舊。言居周世、不得以夏・殷爲舊。
【読み】
仲幾曰く、三代各々物を異にす。薛焉ぞ舊有ることを得ん。言うこころは、周の世に居りては、夏・殷を以て舊爲ることを得ず。
爲宋役、亦其職也。士彌牟曰、晉之從政者新。言范獻子新爲政、未習故事。
【読み】
宋の役爲るも、亦其の職なり、と。士彌牟曰く、晉の政に從う者新たなり。言うこころは、范獻子新たに政を爲して、未だ故事に習わず。
子姑受功。歸、吾視諸故府。求故事。
【読み】
子姑く功を受けよ。歸りて、吾れ諸を故府に視ん、と。故事を求めんとす。
仲幾曰、縱子忘之、山川鬼神其忘諸乎。山川鬼神、盟所告。
【読み】
仲幾曰く、縱[たと]い子之を忘るるも、山川鬼神其れ諸を忘れんや、と。山川鬼神は、盟して告ぐる所。
士伯怒。謂韓簡子曰、薛徵於人、典籍故事、人所知也。
【読み】
士伯怒る。韓簡子に謂いて曰く、薛は人に徵[あ]かし、典籍の故事は、人の知る所なり。
宋徵於鬼。取證於鬼神。
【読み】
宋は鬼に徵かす。證を鬼神に取る。
宋罪大矣。且己無辭而抑我以神、誣我也。啓寵納侮、其此之謂矣。啓寵過分、則納受侵侮。
【読み】
宋の罪大なり。且つ己辭無くして我を抑うるに神を以てするは、我を誣うるなり。寵を啓[ひら]けば侮りを納るとは、其れ此を之れ謂うなり。寵を啓くこと分に過ぐれば、則ち侵侮を納れ受く。
必以仲幾爲戮。乃執仲幾以歸。三月、歸諸京師。知以歸不可。故復歸之京師。
【読み】
必ず仲幾を以て戮することをせん、と。乃ち仲幾を執えて以[い]て歸る。三月、諸を京師に歸[おく]る。以て歸るの不可なるを知る。故に復之を京師に歸る。
城三旬而畢。乃歸諸侯之戍。
【読み】
城三旬にして畢わる。乃ち諸侯の戍を歸す。
齊高張後、不從諸侯。後期不及諸侯之役。
【読み】
齊の高張後れて、諸侯に從わず。期に後れて諸侯の役に及ばず。
晉女叔寬曰、周萇弘・齊高張、皆將不免。叔寬、女寬也。○萇、直良反。
【読み】
晉の女叔寬曰く、周の萇弘・齊の高張は、皆將に免れざらんとす。叔寬は、女寬なり。○萇は、直良反。
萇叔違天、高子違人。天旣厭周德、萇弘欲遷都以延其祚。故曰違天。諸侯相帥、以崇天子。而高子後期。故曰違人。
【読み】
萇叔は天に違い、高子は人に違う。天旣に周の德を厭うに、萇弘都を遷して以て其の祚を延べんと欲す。故に天に違うと曰う。諸侯相帥いて、以て天子を崇む。而るに高子期に後る。故に人に違うと曰う。
天之所壞、不可支也。衆之所爲、不可奸也。爲哀三年、周人殺萇弘、六年、高張來奔起。
【読み】
天の壞[やぶ]る所は、支う可からざるなり。衆の爲す所は、奸す可からざるなり、と。哀三年、周人萇弘を殺し、六年、高張來奔する爲の起なり。
夏、叔孫成子逆公之喪于乾侯。成子、叔孫婼之子。
【読み】
夏、叔孫成子公の喪を乾侯に逆[むか]う。成子は、叔孫婼[しゅくそんちゃく]の子。
季孫曰、子家子亟言於我。未嘗不中吾志也。吾欲與之從政。子必止之。且聽命焉。衆事皆諮問子家子。○亟、去聲。
【読み】
季孫曰く、子家子亟[しば]々我に言あり。未だ嘗て吾が志に中らずんばあらず。吾れ之と政に從わんと欲す。子必ず之を止めよ。且つ命を聽け、と。衆事皆子家子に諮問せよ、と。○亟は、去聲。
子家子不見叔孫、易幾而哭。幾、哭會也。不欲見叔孫。故朝夕哭不同會。
【読み】
子家子叔孫を見ず、幾を易えて哭す。幾は、哭の會なり。叔孫を見んことを欲せず。故に朝夕の哭同じく會せず。
叔孫請見子家子。子家子辭曰、羈未得見、而從君以出、出時成子未爲卿。○羈、居宜反。子家子名。得見、音現。從、才用反。下同。
【読み】
叔孫子家子を見んことを請う。子家子辭して曰く、羈未だ見ることを得ずして、君に從いて以て出で、出づる時成子未だ卿と爲らず。○羈は、居宜反。子家子の名。得見は、音現。從は、才用反。下も同じ。
君不命而薨。羈不敢見。言未受昭公之命。託辭以距叔孫。
【読み】
君命ぜずして薨ぜり。羈敢えて見えじ、と。言うこころは、未だ昭公の命を受けず。託辭して以て叔孫を距む。
叔孫使告之曰、公衍・公爲實使羣臣不得事君。二子始謀逐季氏。
【読み】
叔孫之に告げしめて曰く、公衍・公爲は實に羣臣をして君に事うることを得ざらしめり。二子始謀して季氏を逐う。
若公子宋主社稷、則羣臣之願也。宋、昭公弟、定公。
【読み】
若し公子宋社稷に主たらば、則ち羣臣の願いなり。宋は、昭公の弟、定公なり。
凡從君出而可以入者、將唯子是聽。子家氏未有後。季孫願與子從政。此皆季孫之願也。使不敢以告。不敢、叔孫成子名。
【読み】
凡そ君に從いて出でて以て入る可き者は、將に唯子に是れ聽かんとす。子家氏未だ後有らず。季孫子と政に從わんことを願う。此れ皆季孫の願いなり。不敢をして以て告げしむ、と。不敢は、叔孫成子の名。
對曰、若立君、則有卿士大夫與守龜在。羈弗敢知。若從君者、則貌而出者、入可也。貌出、謂以義從公、與季氏無實怨。○守、手又反。
【読み】
對えて曰く、君を立つるが若きは、則ち卿士大夫と守龜との在る有り。羈敢えて知らず。君に從う者の若きは、則ち貌にして出づる者は、入らんこと可なり。貌にして出づとは、義を以て公に從いて、季氏と實怨無きを謂う。○守は、手又反。
寇而出者、行可也。與季氏爲寇讎者、自可去。
【読み】
寇にして出づる者は、行[さ]らんこと可なり。季氏と寇讎爲る者は、自ら去る可し。
若羈也、則君知其出也、君、昭公。
【読み】
羈が若きは、則ち君其の出でしことを知れども、君は、昭公。
而未知其入也。羈將逃也。
【読み】
而れども未だ其の入ることを知らざるなり。羈は將に逃れんとす、と。
喪及壞隤。公子宋先入。從公者皆自壞隤反。出奔。○壞、音懷。又去聲。隤、音頹。
【読み】
喪壞隤[かいたい]に及ぶ。公子宋先ず入る。公に從う者皆壞隤より反る。出奔す。○壞は、音懷。又去聲。隤は、音頹。
六月、癸亥、公之喪至自乾侯。戊辰公卽位。諸侯薨、五日而殯。殯則嗣子卽位。癸亥、昭公喪至、五日殯於宮、定公乃卽位。
【読み】
六月、癸亥、公の喪乾侯より至る。戊辰公位に卽く。諸侯の薨ずるは、五日にして殯す。殯すれば則ち嗣子位に卽く。癸亥に、昭公の喪至り、五日にして宮に殯し、定公乃ち位に卽く。
季孫使役如闞公氏、將溝焉。闞、魯羣公墓所在也。季孫惡昭公、欲溝絕其兆域、不使與先君同。○闞、口暫反。惡、去聲。又如字。
【読み】
季孫役をして闞[かん]の公氏に如かしめ、將に溝ほらんとす。闞は、魯の羣公の墓の在る所なり。季孫昭公を惡み、溝して其の兆域を絕ち、先君と同じからしめざらんと欲す。○闞は、口暫反。惡は、去聲。又字の如し。
榮駕鵝曰、生不能事、死又離之、以自旌也。駕鵝、魯大夫、榮成伯也。旌、章也。○駕、音加。鵞、五何反。
【読み】
榮駕鵝曰く、生けるとき事うること能わず、死して又之を離つは、以て自ら旌[あらわ]すなり。駕鵝は、魯の大夫、榮成伯なり。旌は、章すなり。○駕は、音加。鵞は、五何反。
縱子忍之、後必或恥之。乃止。
【読み】
縱い子之を忍ぶとも、後必ず之を恥ずること或らん、と。乃ち止む。
季孫問於榮駕鵝曰、吾欲爲君謚、使子孫知之。爲惡謚。
【読み】
季孫榮駕鵝に問いて曰く、吾れ君の謚を爲り、子孫をして之を知らしめんと欲す、と。惡謚を爲るなり。
對曰、生弗能事、死又惡之、以自信也。將焉用之。乃止。
【読み】
對えて曰く、生けるとき事うること能わず、死して又之を惡しくするは、以て自ら信にするなり。將に焉[いずく]に之を用いんとする、と。乃ち止む。
秋、七月、癸巳、葬昭公於墓道南。孔子之爲司寇也、溝而合諸墓。明臣無貶君之義。○惡、如字。又去聲。
【読み】
秋、七月、癸巳、昭公を墓道の南に葬る。孔子の司寇爲るや、溝して諸を墓に合わせり。臣君を貶するの義無きを明らかにするなり。○惡は、字の如し。又去聲。
昭公出故、季平子禱于煬公。九月、立煬宮。平子逐君、懼而請禱於煬公、昭公死於外。自以爲獲福。故立其宮。
【読み】
昭公出づる故に、季平子煬公に禱る。九月、煬宮を立つ。平子君を逐いて、懼れて煬公に請禱して、昭公外に死す。自ら福を獲たりと以爲えり。故に其の宮を立つ。
周鞏簡公棄其子弟、而好用遠人。簡公、周卿士。遠人、異族也。爲明年、鞏氏賊簡公張本。○好、去聲。
【読み】
周の鞏簡公[きょうかんこう]其の子弟を棄てて、遠人を用ゆることを好む。簡公は、周の卿士。遠人は、異族なり。明年、鞏氏簡公を賊する爲の張本なり。○好は、去聲。
〔經〕二年、春、王正月。夏、五月、壬辰、雉門及兩觀災。無傳。雉門、公宮之南門。兩觀、闕也。天火曰災。○觀、古亂反。
【読み】
〔經〕二年、春、王の正月。夏、五月、壬辰[みずのえ・たつ]、雉門と兩觀と災あり。傳無し。雉門は、公宮の南門。兩觀は、闕なり。天火を災と曰う。○觀は、古亂反。
秋、楚人伐吳。囊瓦稱人、見誘以敗軍。
【読み】
秋、楚人吳を伐つ。囊瓦人と稱するは、誘かれて以て軍を敗ればなり。
冬、十月、新作雉門及兩觀。無傳。
【読み】
冬、十月、新たに雉門と兩觀とを作る。傳無し。
〔傳〕二年、夏、四月、辛酉、鞏氏之羣子弟賊簡公。傳言棄親用疏、所以敗也。
【読み】
〔傳〕二年、夏、四月、辛酉[かのと・とり]、鞏氏[きょうし]の羣子弟簡公を賊す。傳親を棄て疏を用ゆるは、敗るる所以なるを言うなり。
桐叛楚。桐、小國。廬江舒縣西南有桐郷。
【読み】
桐楚に叛く。桐は、小國。廬江舒縣の西南に桐郷有り。
吳子使舒鳩氏誘楚人、舒鳩、楚屬國。
【読み】
吳子舒鳩氏をして楚人を誘かしめて、舒鳩は、楚の屬國。
曰、以師臨我。敎舒鳩誘楚、使以師臨吳。
【読み】
曰く、師を以て我に臨ませよ。舒鳩に敎えて楚を誘かせて、師を以て吳に臨ましむ。
我伐桐。爲我使之無忌。吳伐桐也。僞若畏楚師之臨己、而爲伐其叛國以取媚者也。欲使楚不忌吳。所謂多方以誤之。○爲我、于僞反。下同。
【読み】
我れ桐を伐たん。我が爲に之をして忌むこと無からしめよ、と。吳桐を伐つなり。僞りて楚の師の己に臨むを畏れて、爲に其の叛國を伐ちて以て媚を取る者の若くす。楚をして吳を忌まざらしめんと欲するなり。所謂多方以て之を誤らすなり。○爲我は、于僞反。下も同じ。
秋、楚囊瓦伐吳、師于豫章。從舒鳩言。
【読み】
秋、楚の囊瓦吳を伐ちて、豫章に師す。舒鳩の言に從う。
吳人見舟于豫章、僞將爲楚伐桐。○見、賢遍反。
【読み】
吳人舟を豫章に見[しめ]して、僞りて將に楚の爲に桐を伐たんとす。○見は、賢遍反。
而潛師于巢。實欲以擊楚。
【読み】
潛[ひそ]かに巢に師す。實は以て楚を擊たんと欲す。
冬、十月、吳軍楚師于豫章、敗之、楚不忌故。
【読み】
冬、十月、吳楚の師に豫章に軍して、之を敗り、楚忌まざる故なり。
遂圍巢、克之、獲楚公子繁。繁、守巢大夫。
【読み】
遂に巢を圍みて、之に克ち、楚の公子繁を獲たり。繁は、巢を守る大夫。
邾莊公與夷射姑飮酒。私出。射姑、邾大夫。出、辟酒。○射、音亦。一音夜。
【読み】
邾の莊公夷射姑[いえきこ]と酒を飮む。私に出づ。射姑は、邾の大夫。出づるは、酒を辟くるなり。○射は、音亦。一に音夜。
閽乞肉焉。奪之杖以敲之。奪閽杖以敲閽頭也。爲明年、邾子卒傳。○敲、苦孝反。又苦學反。又口交反。
【読み】
閽肉を乞う。之が杖を奪いて以て之を敲[たた]きぬ。閽が杖を奪いて以て閽が頭を敲くなり。明年、邾子卒する爲の傳なり。○敲は、苦孝反。又苦學反。又口交反。
〔經〕三年、春、王正月、公如晉。至河乃復。無傳。
【読み】
〔經〕三年、春、王の正月、公晉に如く。河に至りて乃ち復る。傳無し。
二月、辛卯、邾子穿卒。再同盟。
【読み】
二月、辛卯[かのと・う]、邾子穿卒す。再び同盟す。
夏、四月。秋、葬邾莊公。六月乃葬。緩。
【読み】
夏、四月。秋、邾の莊公を葬る。六月にして乃ち葬る。緩[おそ]きなり。
冬、仲孫何忌及邾子盟于拔。拔、地闕。○拔、皮八反。
【読み】
冬、仲孫何忌邾子と拔に盟う。拔は、地闕く。○拔は、皮八反。
〔傳〕三年、春、二月、辛卯、邾子在門臺、門上有臺。
【読み】
〔傳〕三年、春、二月、辛卯、邾子門臺に在り、門上に臺有り。
臨廷。閽以缾水沃廷。邾子望見之、怒。閽曰、夷射姑旋焉。旋、小便。
【読み】
廷に臨む。閽缾水[へいすい]を以て廷に沃[そそ]ぐ。邾子之を望み見て、怒る。閽曰く、夷射姑旋[ゆばり]す、と。旋は、小便。
命執之。見其不潔、執射姑。
【読み】
命じて之を執えしむ。其の不潔を見て、射姑を執えんとす。
弗得。滋怒。自投于牀、廢于鑪炭、爛遂卒。廢、隋也。○鑪、力吳反。隋、徒火反。
【読み】
得ず。滋々怒る。自ら牀より投じて、鑪炭に廢[お]ち、爛れて遂に卒す。廢は、隋[お]つるなり。○鑪は、力吳反。隋は、徒火反。
先葬以車五乘・殉五人。欲藏中之潔。故先内車及殉、別爲便房。蓋其遺命。○先、悉薦反。又如字。藏、才浪反。
【読み】
葬に先んずるに車五乘・殉五人を以てす。藏中の潔を欲す。故に先ず車と殉とを内れ、別に便房を爲す。蓋し其れ遺命ならん。○先は、悉薦反。又字の如し。藏は、才浪反。
莊公卞急而好潔。故及是。卞、躁疾也。
【読み】
莊公卞急[べんきゅう]にして潔を好む。故に是に及べり。卞は、躁疾なり。
秋、九月、鮮虞人敗晉師于平中、平中、晉地。
【読み】
秋、九月、鮮虞人晉の師を平中に敗り、平中は、晉の地。
獲晉觀虎。恃其勇也。爲五年、士鞅圍鮮虞張本。
【読み】
晉の觀虎を獲たり。其の勇を恃めばなり。五年、士鞅鮮虞を圍む爲の張本なり。
冬、盟于郯、郯、卽拔也。
【読み】
冬、郯[たん]に盟うは、郯は、卽ち拔なり。
脩邾好也。公卽位。故脩好。
【読み】
邾の好を脩むるなり。公位に卽く。故に好を脩む。
蔡昭侯爲兩佩與兩裘、佩、佩玉也。
【読み】
蔡の昭侯兩佩と兩裘とを爲りて、佩は、佩玉なり。
以如楚、獻一佩一裘於昭王。昭王服之以享蔡侯。蔡侯亦服其一。子常欲之。弗與。三年止之。唐成公如楚。有兩肅爽馬。子常欲之。成公、唐惠侯之後。肅爽、駿馬名。○肅、如字。又所六反。爽、音霜。
【読み】
以て楚に如き、一佩一裘を昭王に獻ず。昭王之を服して以て蔡侯を享す。蔡侯も亦其の一を服す。子常之を欲す。與えず。三年之を止む。唐の成公楚に如く。兩つの肅爽馬有り。子常之を欲す。成公は、唐の惠侯の後。肅爽は、駿馬の名。○肅は、字の如し。又所六反。爽は、音霜。
弗與。亦三年止之。
【読み】
與えず。亦三年之を止む。
唐人或相與謀、請代先從者。許之。飮先從者酒、醉之、竊馬而獻之子常。子常歸唐侯。自拘於司敗、竊馬者自拘。○從、才用反。飮、於鴆反。
【読み】
唐人或ひと相與に謀りて、先の從者に代わらんと請う。之を許す。先の從者に酒を飮ませて、之を醉わせ、馬を竊みて之を子常に獻ず。子常唐侯を歸す。自ら司敗に拘われて、馬を竊む者自ら拘わる。○從は、才用反。飮は、於鴆反。
曰、君以弄馬之故、隱君身、隱、憂約也。
【読み】
曰く、君馬を弄ぶの故を以て、君の身を隱[いた]ましめ、隱は、憂約なり。
棄國家。羣臣請相夫人以償馬。必如之。相、助也。夫人、謂養馬者。○相、息亮反。夫、音扶。
【読み】
國家を棄てんとせり。羣臣請う、夫の人を相けて以て馬を償わん。必ず之の如きをせん、と。相は、助くなり。夫の人は、馬を養う者を謂う。○相は、息亮反。夫は、音扶。
唐侯曰、寡人之過也。二三子無辱。皆賞之。
【読み】
唐侯曰く、寡人の過ちなり。二三子辱とすること無かれ、と。皆之を賞す。
蔡人聞之、固請而獻佩于子常。子常朝、見蔡侯之徒、命有司曰、蔡君之久也、官不共也。言楚所以禮遣蔡侯之物、不共備故。○共、音恭。
【読み】
蔡人之を聞きて、固く請いて佩を子常に獻ず。子常朝し、蔡侯の徒を見、有司に命じて曰く、蔡君の久しきや、官共せざればなり。言うこころは、楚蔡侯を禮し遣る所以の物、共備せざる故なり。○共は、音恭。
明日禮不畢、將死。遣蔡侯之禮。
【読み】
明日禮畢わらずんば、將に死せんとす、と。蔡侯を遣るの禮。
蔡侯歸。及漢、執玉而沈曰、余所有濟漢而南者、有若大川。自誓言、若復渡漢、當受禍。明如大川。○沈、音鴆。
【読み】
蔡侯歸る。漢に及び、玉を執りて沈めて曰く、余漢を濟りて南すること有る所の者あらば、大川の若きこと有らん、と。自ら誓言すらく、若し復漢を渡らば、當に禍を受くべし。明らかなること大川の如し、と。○沈は、音鴆。
蔡侯如晉、以其子元與其大夫之子爲質焉、而請伐楚。爲明年、會召陵張本。
【読み】
蔡侯晉に如き、其の子元と其の大夫の子とを以て質と爲して、楚を伐たんことを請う。明年、召陵に會する爲の張本なり。
〔經〕四年、春、王二月、癸巳、陳侯吳卒。無傳。未同盟、而赴以名。癸巳、正月七日。書二月從赴。
【読み】
〔經〕四年、春、王の二月、癸巳[みずのと・み]、陳侯吳卒す。傳無し。未だ同盟せずして、赴[つ]ぐるに名を以てす。癸巳は、正月七日。二月に書すは赴ぐるに從うなり。
三月、公會劉子・晉侯・宋公・蔡侯・衛侯・陳子・鄭伯・許男・曹伯・莒子・邾子・頓子・胡子・滕子・薛伯・杞伯・小邾子・齊國夏于召陵、侵楚。於召陵先行會禮、入楚竟。故書侵。
【読み】
三月、公劉子・晉侯・宋公・蔡侯・衛侯・陳子・鄭伯・許男・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]・頓子・胡子・滕子・薛伯・杞伯・小邾子・齊の國夏に召陵に會して、楚を侵す。召陵に於て先ず會禮を行いて、楚の竟に入る。故に侵を書す。
夏、四月、庚辰、蔡公孫姓帥師滅沈。以沈子嘉歸、殺之。五月、公及諸侯盟于皐鼬。召陵會劉子諸侯。總言之也。繁昌縣東南有城皐亭。復稱公者、會盟異處故。○姓、音生。鼬、由又反。
【読み】
夏、四月、庚辰[かのえ・たつ]、蔡の公孫姓師を帥いて沈[しん]を滅ぼす。沈子嘉を以[い]て歸り、之を殺す。五月、公諸侯と皐鼬[こうゆう]に盟う。召陵の會の劉子諸侯なり。之を總言するなり。繁昌縣の東南に城皐亭有り。復公を稱する者は、會盟處を異にする故なり。○姓は、音生。鼬は、由又反。
杞伯成卒于會。無傳。
【読み】
杞伯成會に卒す。傳無し。
六月、葬陳惠公。無傳。
【読み】
六月、陳の惠公を葬る。傳無し。
許遷于容城。無傳。
【読み】
許容城に遷る。傳無し。
秋、七月、公至自會。無傳。
【読み】
秋、七月、公會より至る。傳無し。
劉卷卒。無傳。卽劉蚠也。劉子奉命、出盟召陵。死則天王爲告同盟。故不具爵。○卷、音權。一眷免反。蚠、扶粉反。
【読み】
劉卷卒す。傳無し。卽ち劉蚠[りゅうふん]なり。劉子命を奉じて、出でて召陵に盟う。死すれば則ち天王爲に同盟に告ぐ。故に爵を具えず。○卷は、音權。一に眷免反。蚠は、扶粉反。
葬杞悼公。無傳。
【読み】
杞の悼公を葬る。傳無し。
楚人圍蔡。不服故也。
【読み】
楚人蔡を圍む。服せざる故なり。
晉士鞅・衛孔圉帥師伐鮮虞。無傳。孔圉、孔羈孫。士鞅、卽范鞅。
【読み】
晉の士鞅・衛の孔圉師を帥いて鮮虞を伐つ。傳無し。孔圉は、孔羈の孫。士鞅は、卽ち范鞅。
葬劉文公。無傳。
【読み】
劉文公を葬る。傳無し。
冬、十有一月、庚午、蔡侯以吳子及楚人戰于柏舉。楚師敗績。師能左右之曰以。皆陳曰戰。大崩曰敗績。吳爲蔡討楚、從蔡計謀。故書蔡侯以吳子。言能左右之也。囊瓦稱人、貪以致敗、不能死難。罪賤之。柏舉、楚地。昭三十一年傳曰、六年十二月庚辰、吳其入郢。今以十一月者、幷數閏。○陳、直覲反。
【読み】
冬、十有一月、庚午[かのえ・うま]、蔡侯吳子を以[い]て楚人と柏舉に戰う。楚の師敗績す。師能く之を左右するを以ると曰う。皆陳するを戰うと曰う。大いに崩るるを敗績と曰う。吳蔡の爲に楚を討じて、蔡の計謀に從う。故に蔡侯吳子を以てと書す。能く之を左右するを言うなり。囊瓦人と稱するは、貪りて以て敗を致し、難に死すること能わず。罪して之を賤しむなり。柏舉は、楚の地。昭三十一年の傳に曰く、六年十二月庚辰、吳其れ郢[えい]に入らん、と。今十一月を以てするは、閏を幷せ數うるなり。○陳は、直覲反。
楚囊瓦出奔鄭。書名、惡之。○惡、烏路反。
【読み】
楚の囊瓦出でて鄭に奔る。名を書すは、之を惡みてなり。○惡は、烏路反。
庚辰、吳入郢。弗地曰入。吳不稱子、史畧文。
【読み】
庚辰、吳郢[えい]に入る。地もたざるを入ると曰う。吳子と稱せざるは、史の畧文なり。
〔傳〕四年、春、三月、劉文公合諸侯于召陵、謀伐楚也。文公、王官伯也。晉人假王命以討楚之久留蔡侯。故曰文公合諸侯。
【読み】
〔傳〕四年、春、三月、劉文公諸侯を召陵に合わすは、楚を伐たんことを謀るなり。文公は、王官の伯なり。晉人王命を假りて以て楚の久しく蔡侯を留めしを討ず。故に文公諸侯を合わすと曰う。
晉荀寅求貨於蔡侯。弗得。言於范獻子曰、國家方危、諸侯方貳、將以襲敵。不亦難乎。水潦方降、疾瘧方起、中山不服。中山、鮮虞。
【読み】
晉の荀寅貨を蔡侯に求む。得ず。范獻子に言いて曰く、國家方に危うく、諸侯方に貳ありて、將に以て敵を襲わんとす。亦難からずや。水潦方に降り、疾瘧方に起こり、中山服せず。中山は、鮮虞。
棄盟取怨、無損於楚、晉・楚同盟。伐之爲取怨。
【読み】
盟を棄てて怨みを取り、楚に損無くして、晉・楚は同盟なり。之を伐つは怨みを取ると爲す。
而失中山。不如辭蔡侯。吾自方城以來、楚未可以得志。晉敗楚侵方城、在襄十六年。
【読み】
中山を失わん。蔡侯に辭するに如かず。吾れ方城より以來、楚には未だ以て志を得可からず。晉楚を敗り方城を侵せしは、襄十六年に在り。
祗取勤焉。乃辭蔡侯。
【読み】
祗[まさ]に勤めを取らん、と。乃ち蔡侯に辭す。
晉人假羽旄於鄭。鄭人與之。析羽爲旌。王者遊車之所建。鄭私有之。因謂之羽旄。借觀之。○祗、音支。
【読み】
晉人羽旄[うぼう]を鄭に假る。鄭人之を與う。析羽を旌と爲す。王者遊車の建つる所。鄭私に之れ有り。因りて之を羽旄と謂う。借りて之を觀るなり。○祗は、音支。
明日或旆以會。或、賤者也。繼旐曰旆。令賤人施其旆、執以從會、示卑鄭。○旆、步貝反。令、力呈反。
【読み】
明日或ひと旆[はい]して以て會す。或ひととは、賤者なり。旐[ちょう]に繼ぐを旆と曰う。賤人をして其の旆を施し、執りて以て會に從わしむるは、鄭を卑しむことを示すなり。○旆は、步貝反。令は、力呈反。
晉於是乎失諸侯。傳言晉無禮所以遂弱。
【読み】
晉是に於て諸侯を失えり。傳晉無禮にして遂に弱き所以を言う。
將會。衛子行敬子言於靈公、子行敬子、衛大夫。
【読み】
將に會せんとす。衛の子行敬子靈公に言いて、子行敬子は、衛の大夫。
曰、會同難。難得宜。
【読み】
曰く、會同は難し。宜しきを得難し。
嘖有煩言、莫之治也。嘖、至也。煩言、忿爭也。○嘖、仕責反。一音責。
【読み】
煩言有るに嘖[いた]らば、之を治むること莫けん。嘖[さく]は、至るなり。煩言は、忿爭なり。○嘖は、仕責反。一音責。
其使祝佗從。祝佗、大祝子魚。○佗、徒何反。從、才用反。
【読み】
其れ祝佗をして從わしめよ、と。祝佗は、大祝子魚。○佗は、徒何反。從は、才用反。
公曰、善。乃使子魚。子魚辭曰、臣展四體、以率舊職、猶懼不給而煩刑書。若又共二、共二職。○共、音恭。
【読み】
公曰く、善し、と。乃ち子魚をせしむ。子魚辭して曰く、臣四體を展べて、以て舊職に率うだも、猶給せずして刑書を煩わさんことを懼る。若し又二に共せば、二職に共す。○共は、音恭。
徼大罪也。且夫祝、社稷之常隸也。隸、賤臣也。
【読み】
大罪を徼[もと]むるなり。且つ夫れ祝は、社稷の常隸なり。隸は、賤臣なり。
社稷不動、祝不出竟、官之制也。社稷動、謂國遷。
【読み】
社稷動かざれば、祝竟を出でざるは、官の制なり。社稷動くとは、國の遷るを謂う。
君以軍行、祓社釁鼓、師出、先有事。祓禱於社。謂之宜社。於是殺牲以血塗鼓鼙、爲釁鼓。○祓、音弗。又音廢。
【読み】
君以て軍行すれば、社に祓いし鼓に釁[ちぬ]り、師出づれば、先ず事有り。社に祓禱す。之を宜社と謂う。是に於て牲を殺して血を以て鼓鼙[こへい]に塗るを、釁鼓[きんこ]と爲す。○祓は、音弗。又音廢。
祝奉以從、奉社主也。○從、如字。又才用反。
【読み】
祝奉じて以て從い、社主を奉ずるなり。○從は、字の如し。又才用反。
於是乎出竟。若嘉好之事、謂朝會。○好、呼報反。
【読み】
是に於て竟を出づ。若し嘉好の事は、朝會を謂う。○好は、呼報反。
君行師從、二千五百人。
【読み】
君行けば師從い、二千五百人。
卿行旅從。五百人。
【読み】
卿行けば旅從う。五百人。
臣無事焉。公曰、行也。
【読み】
臣は事無し、と。公曰く、行け、と。
及皐鼬、將盟。
【読み】
皐鼬に及び、將に盟わんとす。
將長蔡於衛。欲令蔡先衛歃。○長、丁丈反。先、悉薦反。下先衛同。
【読み】
將に蔡を衛より長とせんとす。蔡をして衛に先だちて歃[すす]らしめんと欲す。○長は、丁丈反。先は、悉薦反。下の先衛も同じ。
衛侯使祝佗私於萇弘曰、聞諸道路、不知信否。若聞蔡將先衛。信乎。萇弘曰、信。蔡叔、康叔之兄也。蔡叔、周公兄。康叔、周公弟。
【読み】
衛侯祝佗をして萇弘に私せしめて曰く、諸を道路に聞くも、信否を知らず。蔡將に衛に先だたんとすと聞くが若し。信なるか、と。萇弘曰く、信なり。蔡叔は、康叔の兄なり。蔡叔は、周公の兄。康叔は、周公の弟。
先衛、不亦可乎。子魚曰、以先王觀之、則尙德也。昔武王克商、成王定之、選建明德、以藩屛周。故周公相王室以尹天下、尹、正也。
【読み】
衛に先だたんこと、亦可ならずや、と。子魚曰く、先王を以て之を觀れば、則ち德を尙べり。昔武王商に克ち、成王之を定め、明德を選び建てて、以て周に藩屛とす。故に周公は王室を相けて以て天下を尹[ただ]して、尹は、正すなり。
於周爲睦、睦、親厚也。以盛德見親厚。
【読み】
周に於て睦爲りしかば、睦は、親厚なり。盛德を以て親厚せらる。
分魯公以大路・大旂・
魯公、伯禽也。此大路、金路。錫同姓諸侯車也。交龍爲旂。周禮、同姓以封。○分、扶問反。下竝同。
【読み】
魯公に分するに大路・大旂[たいき]・
魯公は、伯禽なり。此の大路は、金路。同姓の諸侯に錫うの車なり。交龍を旂と爲す。周禮に、同姓以て封ず、と。○分は、扶問反。下も竝同じ。
夏后氏之璜・ 璜、美玉名。
【読み】
夏后氏の璜[こう]・ 璜は、美玉の名。
封父之繁弱・
封父、古諸侯也。繁弱、大弓名。○繁、扶元反。
【読み】
封父の繁弱・ 封父は、古の諸侯なり。繁弱は、大弓の名。○繁は、扶元反。
殷民六族、條氏・徐氏・蕭氏・索氏・長勺氏・尾勺氏、使帥其宗氏、輯其分族、將其類醜、醜、衆也。○索、素各反。勺、市灼反。輯、音集。又音緝。
【読み】
殷民の六族、條氏・徐氏・蕭氏・索氏・長勺氏・尾勺氏を以てし、其の宗氏を帥い、其の分族を輯[やわ]らげ、其の類醜を將[ひき]いて、醜は、衆なり。○索は、素各反。勺は、市灼反。輯は、音集。又音緝。
以法則周公、用卽命于周、卽、就也。使六族就周、受周公之法制。
【読み】
以て周公に法則して、用て命に周に卽かしめ、卽は、就くなり。六族をして周に就きて、周公の法制を受けしむ。
是使之職事于魯、共魯公之職事。
【読み】
是に之をして魯に職事して、魯公の職事に共す。
以昭周公之明德、昭、顯也。
【読み】
以て周公の明德を昭[あらわ]さしめて、昭は、顯すなり。
分之土田陪敦、陪、增也。敦、厚也。○陪、步囘反。
【読み】
之に土田の陪敦なると、陪は、增すなり。敦は、厚きなり。○陪は、步囘反。
祝・宗・卜・史、大祝・宗人・大卜・大史。凡四官。
【読み】
祝・宗・卜・史、大祝・宗人・大卜・大史。凡そ四官。
備物・典策、典策、春秋之制。
【読み】
備物・典策、典策は、春秋の制。
官司彝器、官司、百官也。彝器、常用器。
【読み】
官司の彝器[いき]とを分して、官司は、百官なり。彝器は、常用の器。
因商奄之民、商奄、國名也。與四國流言、或逬散在魯。皆令卽屬魯懷柔之。○迸、彼諍反。
【読み】
商奄の民に因りて、商奄は、國の名なり。四國と流言し、或は逬散[ほうさん]して魯に在り。皆卽きて魯に屬して之を懷柔せしむ。○迸は、彼諍反。
命以伯禽、伯禽、周公世子。時周公唯遣伯禽之國。故皆以付伯禽。
【読み】
命ずるに伯禽を以てして、伯禽は、周公の世子。時に周公唯伯禽をして國に之かしむ。故に皆以て伯禽に付す。
而封於少皞之虛。少皞虛、曲阜也。在魯城内。○虛、起居反。
【読み】
少皞の虛に封ぜり。少皞の虛は、曲阜なり。魯城の内に在り。○虛は、起居反。
分康叔、康叔、衛之祖。
【読み】
康叔に分するに、康叔は、衛の祖。
以大路・少帛・綪茷旃旌・
少帛、雜帛也。綪茷、大赤。取染草名也。通帛爲旃、析羽爲旌。○綪、七見反。茷、步貝反。又音吠。
【読み】
大路・少帛・綪茷[せんはい]の旃旌・ 少帛は、雜帛なり。綪茷は、大赤。染草の名を取るなり。通帛を旃と爲し、析羽を旌と爲す。○綪は、七見反。茷は、步貝反。又音吠。
大呂・ 鍾名。
【読み】
大呂・ 鍾の名。
殷民七族、陶氏・施氏・繁氏・錡氏・樊氏・饑氏・終葵氏、封畛土畧、自武父以南、及圃田之北竟、畛、塗所徑也。畧、界也。武父、衛北界。圃田、鄭藪名。○繁、步何反。錡、魚綺反。畛、之忍反。一音眞。徑、音經。
【読み】
殷民の七族、陶氏・施氏・繁氏・錡氏・樊氏・饑氏・終葵氏を以てして、土畧を封畛[ほうしん]すること、武父以南より、圃田の北竟に及ぶまでをし、畛は、塗[みち]の徑る所なり。畧は、界なり。武父は、衛の北界。圃田は、鄭の藪の名。○繁は、步何反。錡は、魚綺反。畛は、之忍反。一に音眞。徑は、音經。
取於有閻之土、以共王職、有閻、衛所受朝宿邑。蓋近京畿。
【読み】
有閻の土に取りて、以て王職に共せしめ、有閻は、衛の受くる所の朝宿の邑。蓋し京畿に近きならん。
取於相土之東都、以會王之東蒐。爲湯沐邑、王東巡守、以助祭泰山。○相、息亮反。
【読み】
相土の東都に取りて、以て王の東蒐に會せしむ。湯沐の邑と爲して、王東に巡守すれば、以て泰山に助祭す。○相は、息亮反。
耼季授土、耼季、周公弟。司空。○耼、乃甘反。
【読み】
耼季[たんき]土を授け、耼季は、周公の弟。司空。○耼は、乃甘反。
陶叔授民、陶叔、司徒。
【読み】
陶叔民を授け、陶叔は、司徒。
命以康誥、而封於殷虛。康誥、周書。殷虛、朝歌也。
【読み】
命ずるに康誥を以てして、殷の虛に封ぜり。康誥は、周書。殷の虛は、朝歌なり。
皆啓以商政、疆以周索。皆魯・衛也。啓、開也。居殷故地、因其風俗、開用其政、疆理土地、以周法。索、法也。
【読み】
皆啓[ひら]くに商の政を以てして、疆するは周の索を以てせしむ。魯・衛に皆とするなり。啓は、開くなり。殷の故地に居れば、其の風俗に因りて、開くに其の政を用い、土地を疆理するは、周の法を以てするなり。索は、法なり。
分唐叔、唐叔、晉之祖。
【読み】
唐叔に分するに、唐叔は、晉の祖。
以大路・密須之鼓・ 密須、國名。
【読み】
大路・密須の鼓・ 密須は、國の名。
闕鞏・ 甲名。○鞏、九勇反。
【読み】
闕鞏・ 甲の名。○鞏は、九勇反。
沽洗・ 鍾名。○洗、息典反。
【読み】
沽洗・ 鍾の名。○洗は、息典反。
懷姓九宗・職官五正、懷姓、唐之餘民。九宗、一姓爲九族。職官五正、五官之長。○長、丁丈反。下長衛同。
【読み】
懷姓の九宗・職官の五正を以てし、懷姓は、唐の餘民。九宗は、一姓九族と爲れるなり。職官の五正は、五官の長なり。○長は、丁丈反。下の長衛も同じ。
命以唐誥、而封於夏虛、唐誥、誥命篇名也。夏虛、大夏。今大原晉陽也。
【読み】
命ずるに唐誥を以てして、夏の虛に封じ、唐誥は、誥命の篇名なり。夏の虛は、大夏。今の大原晉陽なり。
啓以夏政、亦因夏風俗、開用其政。
【読み】
啓くに夏の政を以てし、亦夏の風俗に因り、開くに其の政を用ゆ。
疆以戎索。大原近戎而寒。不與中國同。故自以戎法。
【読み】
疆するは戎の索を以てせしむ。大原は戎に近くして寒し。中國と同じからず。故に自ら戎の法を以てす。
三者皆叔也。而有令德。故昭之以分物。不然、文・武・成・康之伯猶多、而不獲是分也、唯不尙年也。
【読み】
三つの者は皆叔なり。而れども令德有り。故に之を昭すに分物を以てせり。然らずんば、文・武・成・康の伯猶多くして、是の分を獲ざるや、唯年を尙ばざればなり。
管・蔡啓商、惎閒王室、惎、毒也。周公攝政。管叔・蔡叔開道紂子祿父、以毒亂王室。○惎、音忌。閒、去聲。
【読み】
管・蔡商を啓きて、王室を惎閒[きかん]せしかば、惎は、毒なり。周公攝政す。管叔・蔡叔紂が子祿父に開道して、以て王室を毒亂す。○惎は、音忌。閒は、去聲。
王於是乎殺管叔而蔡蔡叔、周公稱王命、以討二叔。蔡、放也。○蔡蔡、上素達反。下如字。
【読み】
王是に於て管叔を殺して蔡叔を蔡[はな]つに、周公王命を稱して、以て二叔を討ず。蔡は、放つなり。○蔡蔡は、上は素達反。下は字の如し。
以車七乘・徒七十人。與蔡叔車徒而放之。
【読み】
車七乘・徒七十人を以てせり。蔡叔に車徒を與えて之を放つ。
其子蔡仲改行帥德、周公舉之以爲己卿士、爲周公臣。
【読み】
其の子蔡仲行いを改め德に帥[したが]いしかば、周公之を舉げて以て己が卿士と爲し、周公の臣と爲す。
見諸王、而命之以蔡。命爲蔡侯。○見、賢遍反。
【読み】
諸を王に見えしめて、之に命ずるに蔡を以てせり。命じて蔡侯と爲す。○見は、賢遍反。
其命書云、王曰、胡、無若爾考之違王命也。胡、蔡仲名。
【読み】
其の命書に云く、王曰く、胡よ、爾の考の王命に違えるが若くなること無かれ、と。胡は、蔡仲の名。
若之何其使蔡先衛也。
【読み】
之を若何ぞ其れ蔡をして衛に先だたしめん。
武王之母弟八人、周公爲大宰、康叔爲司寇、耼季爲司空、五叔無官。豈尙年哉。五叔、管叔鮮・蔡叔度・成叔武・霍叔處・毛叔耼也。○先、悉薦反。
【読み】
武王の母弟八人、周公は大宰爲り、康叔は司寇爲り、耼季は司空爲り、五叔は官無し。豈年を尙ぶならんや。五叔は、管叔鮮・蔡叔度・成叔武・霍叔處・毛叔耼なり。○先は、悉薦反。
曹、文之昭也、文王子。與周公異母。○昭、上饒反。
【読み】
曹は、文の昭にして、文王の子。周公と異母なり。○昭は、上饒反。
晉、武之穆也、武王子。
【読み】
晉は、武の穆なるも、武王の子。
曹爲伯甸。非尙年也。以伯爵居甸服、言小。
【読み】
曹は伯甸[はくてん]爲り。年を尙べるに非ざるなり。伯爵を以て甸服に居るは、小なるを言う。
今將尙之、是反先王也。
【読み】
今將に之を尙ばんとすれば、是れ先王に反くなり。
晉文公爲踐土之盟、衛成公不在。夷叔其母弟也、猶先蔡。踐土・召陵二會、經書蔡在衛上。霸主以國大小之序也。子魚所言、盟歃之次。
【読み】
晉の文公踐土の盟を爲せしとき、衛の成公在らず。夷叔は其の母弟なるも、猶蔡に先だてり。踐土・召陵の二會には、經に書して蔡衛の上に在り。霸主は國の大小の序を以てするなり。子魚が言う所は、盟歃の次なり。
其載書云、王若曰、晉重・ 文公。○重、直龍反。
【読み】
其の載書に云う、王若[かくのごと]く曰く、晉の重・ 文公。○重は、直龍反。
魯申・ 僖公。
【読み】
魯の申・ 僖公。
衛武・ 叔武。
【読み】
衛の武・ 叔武。
蔡甲午・ 莊侯。
【読み】
蔡の甲午・ 莊侯。
鄭捷・ 文公。
【読み】
鄭の捷・ 文公。
齊潘・ 昭公。
【読み】
齊の潘・ 昭公。
宋王臣・ 成公。○王、如字。或作壬。如林反。
【読み】
宋の王臣・ 成公。○王は、字の如し。或は壬に作る。如林反。
莒期。玆丕公也。齊序鄭下、周之宗盟、異姓爲後。
【読み】
莒の期、と。玆丕公なり。齊鄭の下に序ずるは、周の宗盟は、異姓を後と爲す。
藏在周府。可覆視也。吾子欲復文・武之畧、畧、道也。
【読み】
藏めて周府に在り。覆視す可し。吾子文・武の畧を復せんと欲して、畧は、道なり。
而不正其德、將如之何。
【読み】
其の德を正さずんば、將[はた]之を如何にせん、と。
萇弘說、告劉子與范獻子謀之、乃長衛侯於盟。
【読み】
萇弘說び、劉子と范獻子とに告げて之を謀り、乃ち衛侯を盟に長とす。
反自召陵。鄭子大叔未至而卒。晉趙簡子爲之臨、甚哀。曰、黃父之會、在昭二十五年。○說、音悅。臨、力鴆反。
【読み】
召陵より反る。鄭の子大叔未だ至らずして卒す。晉の趙簡子之が爲に臨し、甚だ哀しむ。曰く、黃父の會に、昭二十五年に在り。○說は、音悅。臨は、力鴆反。
夫子語我九言曰、無始亂。無怙富。無恃寵。無違同。無敖禮。無驕能。以能驕人。○語、魚據反。敖、五報反。
【読み】
夫子我に九言を語げて曰く、亂を始むること無かれ。富を怙むこと無かれ。寵を恃むこと無かれ。同に違うこと無かれ。禮に敖ること無かれ。能に驕ること無かれ。能を以て人に驕るなり。○語は、魚據反。敖は、五報反。
無復怒。復、重也。○復、扶又反。
【読み】
怒りを復[かさ]ぬること無かれ。復は、重ぬるなり。○復は、扶又反。
無謀非德。非所謀也。
【読み】
非德を謀ること無かれ。謀る所に非ざるなり。
無犯非義。傳言簡子能用善言、所以遂興。
【読み】
非義を犯すこと無かれ、と。傳簡子能く善言を用いて、遂に興る所以を言う。
沈人不會于召陵。晉人使蔡伐之。夏、蔡滅沈。秋、楚爲沈故圍蔡。
【読み】
沈人召陵に會せず。晉人蔡をして之を伐たしむ。夏、蔡沈を滅ぼす。秋、楚沈の爲の故に蔡を圍む。
伍員爲吳行人以謀楚。楚之殺郤宛也、在昭二十七年。○員、音云。
【読み】
伍員[ごうん]吳の行人と爲りて以て楚を謀る。楚の郤宛を殺せるや、昭二十七年に在り。○員は、音云。
伯氏之族出。郤宛黨。
【読み】
伯氏の族出づ。郤宛の黨。
伯州犂之孫嚭爲吳大宰以謀楚。楚自昭王卽位、無歲不有吳師。蔡侯因之、以其子乾與其大夫之子爲質於吳。冬、蔡侯・吳子・唐侯伐楚。唐侯不書、兵屬於吳・蔡。○嚭、普鄙反。
【読み】
伯州犂の孫嚭[ひ]吳の大宰と爲りて以て楚を謀る。楚昭王の位に卽きしより、歲として吳の師有らざること無し。蔡侯之に因りて、其の子乾と其の大夫の子とを以て吳に質と爲す。冬、蔡侯・吳子・唐侯楚を伐つ。唐侯書さざるは、兵吳・蔡に屬すればなり。○嚭は、普鄙反。
舍舟于淮汭、吳乘舟從淮來、過蔡而舍之。○舍、音赦。又音捨。
【読み】
舟を淮汭に舍き、吳舟に乘りて淮より來り、蔡を過ぎて之を舍く。○舍は、音赦。又音捨。
自豫章與楚夾漢。豫章、漢東江北地名。
【読み】
豫章より楚と漢を夾む。豫章は、漢東江北の地の名。
左司馬戌謂子常曰、子沿漢而與之上下。沿、緣也。緣漢上下、遮使勿渡。
【読み】
左司馬戌子常に謂いて曰く、子漢に沿[よ]りて之と上下せよ。沿は、緣るなり。漢に緣りて上下して、遮りて渡ること勿からしむ。
我悉方城外以毀其舟、以方城外人、毀吳所舍舟。
【読み】
我れ方城の外を悉くして以て其の舟を毀り、方城外の人を以て、吳の舍く所の舟を毀るなり。
還塞大隧・直轅・冥阨。三者、漢東之隘道。○冥、如字。或作寘。阨、於懈反。
【読み】
還りて大隧・直轅・冥阨[めいあい]を塞がん。三つの者は、漢東の隘道。○冥は、字の如し。或は寘に作る。阨は、於懈反。
子濟漢而伐之。我自後擊之、必大敗之。旣謀而行。武城黑謂子常、黑、楚武城大夫。
【読み】
子漢を濟りて之を伐て。我れ後より之を擊たば、必ず大いに之を敗らん、と。旣に謀りて行く。武城黑子常に謂いて、黑は、楚の武城の大夫。
曰、吳用木也。我用革也。用、軍器。
【読み】
曰く、吳の用は木なり。我が用は革なり。用は、軍器。
不可久也。不如速戰。史皇謂子常、楚人惡子而好司馬。史皇、楚大夫。司馬、沈尹戌。
【読み】
久しくす可からざるなり。速やかに戰うに如かず、と。史皇子常に謂えらく、楚人子を惡みて司馬を好す。史皇は、楚の大夫。司馬は、沈尹戌。
若司馬毀吳舟于淮、塞城口而入、城口、三隘道之總名。
【読み】
若し司馬吳の舟を淮に毀り、城口を塞ぎて入らば、城口は、三隘道の總名。
是獨克吳也。子必速戰。不然不免。乃濟漢而陳、自小別至于大別、禹貢、漢水至大別、南入江。然則此二別、在江・夏界。○陳、直覲反。下陳于同。
【読み】
是れ獨り吳に克てるなり。子必ず速やかに戰え。然らずんば免れじ、と。乃ち漢を濟りて陳し、小別より大別に至るまで、禹貢に、漢水は大別に至り、南して江に入る、と。然らば則ち此の二別は、江・夏の界に在らん。○陳は、直覲反。下の陳于も同じ。
三戰。子常知不可、欲奔。知吳不可勝。
【読み】
三たび戰う。子常不可なるを知り、奔らんと欲す。吳の勝つ可からざるを知る。
史皇曰、安求其事、求知政事。
【読み】
史皇曰く、安くして其の事を求め、政事を知らんことを求む。
難而逃之、將何所入。子必死之。初罪必盡說。言致死以克吳、可以免貪賄致寇之罪。○難、乃旦反。
【読み】
難にして之を逃れば、將に何れ所に入らんとする。子必ず之に死ね。初罪必ず盡く說けん、と。言うこころは、死を致して以て吳に克たば、以て賄を貪り寇を致すの罪を免る可し。○難は、乃旦反。
十一月、庚午、二師陳于柏舉。經所以書戰。二師、吳・楚師。
【読み】
十一月、庚午、二師柏舉に陳す。經に戰を書す所以なり。二師は、吳・楚の師。
闔廬之弟夫槩王晨請於闔廬曰、楚瓦不仁。瓦、子常名。
【読み】
闔廬[こうりょ]の弟夫槩王晨に闔廬に請いて曰く、楚の瓦不仁なり。瓦は、子常の名。
其臣莫有死志。先伐之、其卒必奔。而後大師繼之、必克。弗許。夫槩王曰、所謂臣義而行、不待命者、其此之謂也。今日我死、楚可入也。以其屬五千、先擊子常之卒。子常之卒奔、楚師亂。吳師大敗之。子常奔鄭。史皇以其乘廣死。以戰死。○乘、繩證反。廣、古曠反。
【読み】
其の臣死志有ること莫し。先ず之を伐たば、其の卒必ず奔らん。而して後に大師之に繼かば、必ず克たん、と。許さず。夫槩王曰く、所謂臣は義にして行う、命を待たずとは、其れ此を謂うか。今日我れ死せば、楚には入る可し、と。其の屬五千を以て、先ず子常の卒を擊つ。子常の卒奔り、楚の師亂る。吳の師大いに之を敗る。子常鄭に奔る。史皇其の乘廣を以て死す。以て戰いて死す。○乘は、繩證反。廣は、古曠反。
吳從楚師及淸發。淸發、水名。
【読み】
吳楚の師を從[お]いて淸發に及ぶ。淸發は、水の名。
將擊之。夫槩王曰、困獸猶鬭。況人乎。若知不免而致死、必敗我。若使先濟者知免、後者慕之、蔑有鬭心矣。半濟而後可擊也。從之。又敗之。楚人爲食。吳人及之。奔食。而從之、敗諸雍澨、五戰及郢。奔食、食者走不陳。故在戰數。○澨、市制反。
【読み】
將に之を擊たんとす。夫槩王曰く、困しめば獸だも猶鬭う。況んや人をや。若し免れざることを知りて死を致さば、必ず我を敗らん。若し先ず濟る者は免るることを知り、後なる者に之を慕わしめば、鬭心有ること蔑[な]けん。半ば濟りて而して後に擊つ可し、と。之に從う。又之を敗る。楚人食を爲さんとす。吳人之に及ぶ。奔りつつ食らう。而して之を從いて、諸を雍澨[ようぜい]に敗り、五戰して郢に及ぶ。奔りつつ食らうとは、食らう者走りて陳せざるなり。故に戰の數に在らず。○澨は、市制反。
*頭注に、「按奔食二字句。林注、奔句、食而從之句。吳人食楚食而逐之也。」とある。
己卯、楚子取其妹季羋・畀我以出、涉雎。雎水、出新城昌魏縣、東南至枝江縣入江。是楚王西走。○羋、面爾反。楚姓。季羋・畀我、皆平王女也。一云、畀我、季羋之字。雎、七餘反。下同。
【読み】
己卯[つちのと・う]、楚子其の妹季羋[きび]・畀我[ひが]を取りて以て出でて、雎を涉る。雎水は、新城昌魏縣に出でて、東南して枝江縣に至りて江に入る。是れ楚王西に走るなり。○羋は、面爾反。楚の姓。季羋・畀我は、皆平王の女なり。一に云う、畀我は、季羋の字、と。雎は、七餘反。下も同じ。
鍼尹固與王同舟。王使執燧象以奔吳師。燒火燧繫象尾、使赴吳師、驚却之。○鍼、之林反。
【読み】
鍼尹固[しんいんこ]王と舟を同じくす。王燧象[すいぞう]を執りて以て吳の師に奔らしむ。火燧を燒きて象の尾に繫け、吳の師に赴きて、驚かして之を却けしむ。○鍼は、之林反。
庚辰、吳入郢、以班處宮。以尊卑班次、處楚王宮室。
【読み】
庚辰、吳郢に入り、班を以て宮に處る。尊卑の班次を以て、楚王の宮室に處る。
子山處令尹之宮。子山、吳王子。
【読み】
子山令尹の宮に處る。子山は、吳王の子。
夫槩王欲攻之。懼而去之。夫槩王入之。入令尹宮也。言吳無禮。所以不能遂克。
【読み】
夫槩王之を攻めんと欲す。懼れて之を去る。夫槩王之に入る。令尹の宮に入るなり。言うこころは、吳禮無し。遂に克つこと能わざる所以なり。
左司馬戌及息而還、息、汝南新息也。聞楚敗。故還。
【読み】
左司馬戌息に及びて還り、息は、汝南の新息なり。楚敗るると聞く。故に還る。
敗吳師于雍澨、傷。司馬先敗吳師、而身被創。○創、初良反。
【読み】
吳の師を雍澨に敗りて、傷つく。司馬先ず吳の師を敗りて、身創を被る。○創は、初良反。
初、司馬臣闔廬。故恥爲禽焉。司馬嘗在吳爲闔廬臣。是以今恥於見禽。
【読み】
初め、司馬闔廬に臣たり。故に禽と爲るを恥ず。司馬嘗て吳に在りて闔廬が臣爲り。是を以て今禽にせらるるを恥ず。
謂其臣曰、誰能免吾首。吳句卑曰、臣賤。可乎。司馬曰、我實失子。可哉。失不知子賢。○句、古侯反。
【読み】
其の臣に謂いて曰く、誰か能く吾が首を免れしめん、と。吳句卑[ごこうひ]曰く、臣は賤し。可ならんか、と。司馬曰く、我れ實に子を失えり。可なるかな、と。失して子が賢を知らず。○句は、古侯反。
三戰、皆傷。曰、吾不可用也已。句卑布裳、剄而裹之、司馬已死、剄取其首。○剄、古頂反。
【読み】
三たび戰い、皆傷つく。曰く、吾れ用ゆ可からざるのみ、と。句卑裳を布き、剄[くびは]ねて之を裹み、司馬已に死し、剄ねて其の首を取るなり。○剄[けい]は、古頂反。
藏其身、而以其首免。傳言司馬之忠壯。
【読み】
其の身を藏して、其の首を以て免る。傳司馬の忠壯を言う。
楚子涉雎濟江、入于雲中。入雲夢澤中。所謂江南之夢。○夢、如字。又音蒙。
【読み】
楚子雎を涉り江を濟り、雲中に入る。雲夢の澤中に入るなり。所謂江南の夢なり。○夢は、字の如し。又音蒙。
王寢。盜攻之、以戈擊王。王孫由于以背受之、中肩。王奔鄖。鍾建負季羋以從。鍾建、楚大夫。○鄖、音云。從、才用反。一如字。
【読み】
王寢ぬ。盜之を攻め、戈を以て王を擊つ。王孫由于背を以て之を受け、肩に中る。王鄖[うん]に奔る。鍾建季羋を負いて以て從う。鍾建は、楚の大夫。○鄖は、音云。從は、才用反。一に字の如し。
由于徐蘇而從。以背受戈。故當時悶絕。
【読み】
由于徐[ようや]くに蘇りて從う。背を以て戈を受く。故に當時悶絕す。
鄖公辛之弟懷將弑王曰、平王殺吾父。我殺其子、不亦可乎。辛、蔓成然之子、鬭辛也。昭十四年、楚平王殺成然。○殺、如字。又申志反。下同。
【読み】
鄖公辛の弟懷將に王を弑せんとして曰く、平王吾が父を殺せり。我れ其の子を殺さんこと、亦可ならずや、と。辛は、蔓成然の子、鬭辛なり。昭十四年、楚の平王成然を殺す。○殺は、字の如し。又申志反。下も同じ。
辛曰、君討臣、誰敢讎之。君命天也。若死天命、將誰讎。詩曰、柔亦不茹、剛亦不吐、不侮矜寡、不畏彊禦、唯仁者能之。詩、大雅。言仲山甫不辟彊陵弱。○茹、音汝。矜、古頑反。
【読み】
辛曰く、君の臣を討ずるは、誰か敢えて之を讎とせん。君の命は天なり。若し天命に死せば、將に誰を讎とせんとする。詩に曰く、柔も亦茹[く]らわず、剛も亦吐かず、矜寡を侮らず、彊禦を畏れずとは、唯仁者之を能くす。詩は、大雅。言うこころは、仲山甫彊を辟け弱を陵がず。○茹は、音汝。矜は、古頑反。
違彊陵弱、非勇也。乘人之約、非仁也。滅宗廢祀、非孝也。弑君、罪應滅宗。
【読み】
彊を違[さ]け弱を陵ぐは、勇に非ざるなり。人の約に乘ずるは、仁に非ざるなり。宗を滅ぼし祀を廢するは、孝に非ざるなり。君を弑せば、罪應に宗を滅ぼすべし。
動無令名、非知也。必犯是、余將殺女。鬭辛與其弟巢以王奔隨。
【読み】
動きて令名無きは、知に非ざるなり。必ず是を犯さんとせば、余將に女を殺さんとす、と。鬭辛其の弟巢と王を以[い]て隨に奔る。
吳人從之、謂隨人曰、周之子孫在漢川者、楚實盡之。天誘其衷、致罰於楚。而君又竄之。竄、匿也。○知、音智。女、音汝。
【読み】
吳人之を從い、隨人に謂いて曰く、周の子孫の漢川に在る者をば、楚實に之を盡くせり。天其の衷を誘[すす]めて、罰を楚に致せり。而るを君又之を竄[かく]す。竄は、匿すなり。○知は、音智。女は、音汝。
周室何罪。君若顧報周室、施及寡人、以獎天衷、獎、成也。○施、以豉反。
【読み】
周室何の罪ある。君若し周室を顧み報い、施きて寡人に及ぼして、以て天の衷を獎[な]さば、獎は、成すなり。○施は、以豉反。
君之惠也。漢陽之田、君實有之。
【読み】
君の惠なり。漢陽の田は、君實に之を有て、と。
楚子在公宮之北。隨公宮也。
【読み】
楚子公宮の北に在り。隨公の宮なり。
吳人在其南。子期似王。子期、昭王兄、公子結也。
【読み】
吳人其の南に在り。子期王に似たり。子期は、昭王の兄、公子結なり。
逃王而己爲王、曰、以我與之、王必免。隨人卜與之。不吉。乃辭吳曰、以隨之辟小、而密邇於楚、楚實存之、世有盟誓、至于今未改。若難而棄之、何以事君。執事之患、不唯一人。一人、楚王。○辟、音僻。難、去聲。
【読み】
王を逃して己王と爲りて、曰く、我を以て之に與えば、王必ず免れん、と。隨人之に與えんことを卜す。不吉なり。乃ち吳に辭して曰く、隨の辟小にして、楚に密邇するを以て、楚實に之を存して、世々盟誓有りて、今に至るまで未だ改めず。若し難ありて之を棄てば、何を以て君に事えん。執事の患えは、唯一人のみならず。一人は、楚王。○辟は、音僻。難は、去聲。
若鳩楚竟、敢不聽命。吳人乃退。鳩、安集也。○竟、音境。
【読み】
若し楚の竟を鳩[あつ]めば、敢えて命を聽かざらんや、と。吳人乃ち退く。鳩は、安集なり。○竟は、音境。
鑢金初宦於子期氏、實與隨人要言。要言無以楚王與吳、幷欲脫子期。○鑢、音慮。鑢姓。金名。
【読み】
鑢金[りょきん]初め子期氏に宦し、實に隨人と要言せり。要言して楚王を以て吳に與うること無く、幷せて子期を脫せんと欲す。○鑢は、音慮。鑢は姓。金は名。
*頭注に、「鑢、或作鑪、誤也。釋文古今人表皆作鑢。」とある。
王使見。王喜其意、欲引見之、以比王臣。且欲使盟隨人。○見、音現。
【読み】
王見えしめんとす。王其の意を喜び、之を引見して、以て王臣に比せんと欲す。且つ隨人に盟わしめんと欲す。○見は、音現。
辭曰、不敢以約爲利。此約、謂要言也。此一時之事、非爲德舉。故辭不敢見、亦不肯爲盟主。○約、如字。又於妙反。
【読み】
辭して曰く、敢えて約を以て利と爲さず、と。此の約は、要言を謂うなり。此れ一時の事、德舉爲るに非ず。故に辭して敢えて見えず、亦肯えて盟主と爲らず。○約は、字の如し。又於妙反。
王割子期之心、以與隨人盟。當心前割取血以盟、示其至心。
【読み】
王子期の心を割きて、以て隨人と盟う。心前に當てて血を割き取りて以て盟うは、其の至心を示すなり。
初、伍員與申包胥友。包胥、楚大夫。
【読み】
初め、伍員申包胥と友たり。包胥は、楚の大夫。
其亡也、謂申包胥曰、我必復楚國。復、報也。
【読み】
其の亡ぐるや、申包胥に謂いて曰く、我れ必ず楚國に復[むく]いん、と。復は、報ゆるなり。
申包胥曰、勉之。子能復之。我必能興之。及昭王在隨、申包胥如秦乞師、曰、吳爲封豕長蛇、以荐食上國、荐、數也。言吳貪害如蛇豕。○荐、在薦反。數、音朔。
【読み】
申包胥曰く、之を勉めよ。子能く之に復え。我は必ず能く之を興さん、と。昭王の隨に在るに及びて、申包胥秦に如きて師を乞いて、曰く、吳封豕長蛇を爲し、以て上國を荐食[せんしょく]して、荐は、數々なり。言うこころは、吳の貪害蛇豕の如し。○荐は、在薦反。數は、音朔。
虐始於楚、寡君失守社稷、越在草莽。使下臣告急、曰、夷德無厭。若鄰於君、疆埸之患也。吳有楚、則與秦鄰。○莽、莫蕩反。
【読み】
虐楚に始め、寡君社稷を守ることを失いて、草莽に越在せり。下臣をして急を告げしめて、曰く、夷德厭くこと無し。若し君に鄰せば、疆埸の患えならん。吳楚を有てば、則ち秦と鄰る。○莽は莫蕩反。
逮吳之未定、君其取分焉。與吳共分楚地。○取分、扶問反。
【読み】
吳の未だ定めざるに逮びて、君其れ分を取れ。吳と共に楚の地を分せよ。○取分は、扶問反。
若楚之遂亡、君之土也。若以君靈撫之、世以事君。撫、存恤也。
【読み】
若し楚遂に亡びば、君の土なり。若し君の靈を以て之を撫でば、世々以て君に事えん、と。撫は、存恤なり。
秦伯使辭焉、曰、寡人聞命矣。子姑就館。將圖而告。對曰、寡君越在草莽、未獲所伏。伏、猶處也。
【読み】
秦伯辭せしめて、曰く、寡人命を聞けり。子姑く館に就け。將に圖りて告げんとす、と。對えて曰く、寡君草莽に越在して、未だ伏す所を獲ず。伏は、猶處るのごとし。
下臣何敢卽安。立依於庭牆而哭、日夜不絕聲、勺飮不入口、七日、秦哀公爲之賦無衣。詩、秦風。取其王于興師、脩我戈矛、與子同仇、與子偕作、與子偕行。○勺、市灼反。又音灼。爲、去聲。
【読み】
下臣何ぞ敢えて安きに卽かん、と。立ちて庭牆に依りて哭し、日夜聲を絕たず、勺飮口に入れざること、七日、秦の哀公之が爲に無衣を賦す。詩は、秦風。其れ王于[ここ]に師を興さば、我が戈矛[かぼう]を脩めて、子と仇を同じくし、子と偕に作[た]ち、子と偕に行かんというに取る。○勺は、市灼反。又音灼。爲は、去聲。
九頓首而坐。無衣三章。章三頓首。
【読み】
九たび頓首して坐す。無衣は三章。章ごとに三たび頓首す。
秦師乃出。爲明年、包胥以秦師至張本。
【読み】
秦の師乃ち出づ。明年、包胥秦の師を以[い]て至る爲の張本なり。
〔經〕五年、春、王三月、辛亥、朔、日有食之。無傳。
【読み】
〔經〕五年、春、王の三月、辛亥[かのと・い]朔、日之を食する有り。傳無し。
夏、歸粟于蔡。蔡爲楚所圍、饑乏。故魯歸之粟。
【読み】
夏、粟を蔡に歸[おく]る。蔡楚の爲に圍まれて、饑乏す。故に魯之に粟を歸る。
於越入吳。於、發聲也。
【読み】
於越吳に入る。於は、發聲なり。
六月、丙申、季孫意如卒。秋、七月、壬子、叔孫不敢卒。無傳。
【読み】
六月、丙申[ひのえ・さる]、季孫意如卒す。秋、七月、壬子[みずのえ・ね]、叔孫不敢卒す。傳無し。
冬、晉士鞅帥師圍鮮虞。
【読み】
冬、晉の士鞅師を帥いて鮮虞を圍む。
〔傳〕五年、春、王人殺子朝于楚。因楚亂也。終閔馬父之言。
【読み】
〔傳〕五年、春、王人子朝を楚に殺す。楚の亂に因りてなり。閔馬父の言を終わる。
夏、歸粟於蔡、以周亟、矜無資。亟、急也。
【読み】
夏、粟を蔡に歸るは、以て亟を周[すく]い、資無きを矜[めぐ]むなり。亟は、急なり。
越入吳、吳在楚也。
【読み】
越吳に入るは、吳楚に在ればなり。
六月、季平子行東野。東野、季氏邑。○行、下孟反。下桓子行同。
【読み】
六月、季平子東野を行[めぐ]る。東野は、季氏の邑。○行は、下孟反。下の桓子行も同じ。
還。未至、丙申、卒于房。陽虎將以璵璠斂。璵璠、美玉。君所佩。○璵、音餘。璠、音煩。又方煩反。
【読み】
還る。未だ至らず、丙申、房に卒す。陽虎將に璵璠[よはん]を以て斂せんとす。璵璠は、美玉。君の佩ぶ所。○璵は、音餘。璠は、音煩。又方煩反。
仲梁懷弗與、懷亦季氏家臣。
【読み】
仲梁懷與えずして、懷も亦季氏の家臣。
曰、改步改玉。昭公之出、季孫行君事、佩璵璠祭宗廟。今定公立、復臣位。改君步、則亦當去璵璠。○去、起呂反。
【読み】
曰く、步を改むれば玉を改む、と。昭公の出づる、季孫君の事を行い、璵璠を佩びて宗廟を祭れり。今定公立ちて、臣位に復す。君の步を改むれば、則ち亦當に璵璠を去るべし。○去は、起呂反。
陽虎欲逐之、告公山不狃。不狃曰、彼爲君也。子何怨焉。不狃、季氏臣、費宰子洩也。爲君、不欲使僭。○爲、于僞反。
【読み】
陽虎之を逐わんと欲し、公山不狃[こうざんふじゅう]に告ぐ。不狃曰く、彼は君の爲なり。子何ぞ怨みん、と。不狃は、季氏の臣、費の宰子洩なり。君の爲とは、僭せしめんことを欲せざるなり。○爲は、于僞反。
旣葬、桓子行東野。桓子、意如子、季孫斯。
【読み】
旣に葬り、桓子東野を行る。桓子は、意如の子、季孫斯。
及費。子洩爲費宰。逆勞於郊。桓子敬之。勞仲梁懷。仲梁懷弗敬。懷時從桓子行、輕慢子洩。○勞、力報反。下同。
【読み】
費に及ぶ。子洩費の宰爲り。逆[むか]えて郊に勞う。桓子之を敬す。仲梁懷を勞う。仲梁懷敬せず。懷時に桓子に從いて行き、子洩を輕慢す。○勞は、力報反。下も同じ。
子洩怒。謂陽虎、子行之乎。行、逐懷也。爲下陽虎囚桓子起。
【読み】
子洩怒る。陽虎に謂えらく、子之を行[さ]らんか、と。行は、懷を逐うなり。下の陽虎桓子を囚うる爲の起なり。
申包胥以秦師至。
【読み】
申包胥秦の師を以[い]て至る。
秦子蒲・子虎帥車五百乘以救楚。五百乘、三萬七千五百人。
【読み】
秦の子蒲・子虎車五百乘を帥いて以て楚を救う。五百乘は、三萬七千五百人。
子蒲曰、吾未知吳道。道、猶法術。
【読み】
子蒲曰く、吾れ未だ吳の道[てだて]を知らず、と。道は、猶法術のごとし。
使楚人先與吳人戰、而自稷會之、大敗夫槩王于沂。稷・沂、皆楚地。
【読み】
楚人をして先ず吳人と戰わしめて、稷より之に會し、大いに夫槩王を沂に敗る。稷・沂は、皆楚の地。
吳人獲薳射於柏舉。薳射、楚大夫。○射、食亦反。亦食夜反。
【読み】
吳人薳射[いえき]を柏舉に獲。薳射は、楚の大夫。○射は、食亦反。亦食夜反。
其子帥奔徒、奔徒、楚散卒。
【読み】
其の子奔徒を帥いて、奔徒は、楚の散卒。
以從子西、敗吳師于軍祥。楚地。
【読み】
以て子西に從いて、吳の師を軍祥に敗る。楚の地。
秋、七月、子期・子蒲滅唐。從吳伐楚故。
【読み】
秋、七月、子期・子蒲唐を滅ぼす。吳に從いて楚を伐つ故なり。
九月、夫槩王歸自立也、以與王戰而敗。自立爲吳王、號夫槩。
【読み】
九月、夫槩王歸りて自立して、以て王と戰いて敗れぬ。自立して吳王と爲り、夫槩と號す。
奔楚、爲堂谿氏。傳終言之。
【読み】
楚に奔りて、堂谿氏と爲る。傳之を終え言う。
吳師敗楚師于雍澨。秦師又敗吳師。吳師居麇。麇、地名。○麇、九倫反。
【読み】
吳の師楚の師を雍澨に敗る。秦の師又吳の師を敗る。吳の師麇[きん]に居る。麇は、地の名。○麇は、九倫反。
子期將焚之。子西曰、父兄親暴骨焉、不能收、又焚之、不可。前年、楚人與吳戰、多死麇中。言不可幷焚。○暴、步卜反。
【読み】
子期將に之を焚かんとす。子西曰く、父兄親しく骨を暴して、收むること能わざるに、又之を焚かんこと、不可なり、と。前年、楚人吳と戰いて、多く麇中に死す。言うこころは、幷せて焚く可らず。○暴は、步卜反。
子期曰、國亡矣。死者若有知也、可以歆舊祀。言焚吳復楚、則祭祀不廢。
【読み】
子期曰く、國亡びたり。死者若し知ること有らば、以て舊祀を歆[う]く可し。言うこころは、吳を焚きて楚を復せば、則ち祭祀廢らず。
豈憚焚之。焚之而又戰。吳師敗。又戰于公壻之谿。楚地名。
【読み】
豈之を焚くことを憚らんや、と。之を焚きて又戰う。吳の師敗れぬ。又公壻の谿に戰う。楚の地名。
吳師大敗。吳子乃歸。
【読み】
吳の師大いに敗れぬ。吳子乃ち歸る。
囚闉輿罷。闉輿罷請先、遂逃歸。輿罷、楚大夫。請先至吳而逃歸。言吳唯得楚一大夫、復失之。所以不克。○闉、音因。輿、音餘。又羊汝反。罷、音皮。
【読み】
闉輿罷[いんよひ]を囚う。闉輿罷先んぜんことを請い、遂に逃げ歸る。輿罷は、楚の大夫。先ず吳に至らんことを請いて逃げ歸る。言うこころは、吳唯楚の一大夫を得るも、復之を失う。克たざる所以なり。○闉は、音因。輿は、音餘。又羊汝反。罷は、音皮。
葉公諸梁之弟后臧、從其母於吳、不待而歸。諸梁、司馬沈尹戌之子、葉公子高也。吳入楚、獲后臧之母。楚定。臧棄母而歸。○葉、舒涉反。從、如字。又才用反。
【読み】
葉公[しょうこう]諸梁の弟后臧、其の母に吳に從い、待たずして歸る。諸梁は、司馬沈尹戌の子、葉公子高なり。吳楚に入り、后臧の母を獲。楚定まる。臧母を棄てて歸るなり。○葉は、舒涉反。從は、字の如し。又才用反。
葉公終不正視。不義之。
【読み】
葉公終に正視せざりき。之を不義とす。
乙亥、陽虎囚季桓子及公父文伯、文伯、季桓子從父昆弟也。陽虎欲爲亂。恐二子不從。故囚之。
【読み】
乙亥[きのと・い]、陽虎季桓子と公父文伯とを囚えて、文伯は、季桓子の從父昆弟なり。陽虎亂を爲さんと欲す。二子の從わざらんことを恐る。故に之を囚う。
而逐仲梁懷。冬、十月、丁亥、殺公何藐。藐、季氏族。○藐、亡角反。又彌小反。
【読み】
仲梁懷を逐う。冬、十月、丁亥[ひのと・い]、公何藐[こうかばく]を殺す。藐は、季氏の族。○藐は、亡角反。又彌小反。
己丑、盟桓子于稷門之内。魯南城門。
【読み】
己丑[つちのと・うし]、桓子に稷門の内に盟う。魯の南城門。
庚寅、大詛、逐公父歜及秦遄。皆奔齊。歜、卽文伯也。秦遄、平子姑婿也。傳言季氏之亂。○詛、莊慮反。歜、昌欲反。遄、市專反。
【読み】
庚寅[かのえ・とら]、大いに詛いて、公父歜[こうほしょく]と秦遄[しんせん]とを逐う。皆齊に奔る。歜は、卽ち文伯なり。秦遄は、平子の姑婿なり。傳季氏の亂を言う。○詛は、莊慮反。歜は、昌欲反。遄は、市專反。
楚子入于郢。吳師已歸。
【読み】
楚子郢に入る。吳の師已に歸る。
初、鬭辛聞吳人之爭宮也、曰、吾聞之、不讓則不和、不和不可以遠征。吳爭於楚。必有亂。有亂則必歸。焉能定楚。
【読み】
初め、鬭辛吳人の宮を爭うと聞きて、曰く、吾れ之を聞く、讓らざれば則ち和せず、和せざれば以て遠征す可からず、と。吳楚に爭う。必ず亂有らん。亂有らば則ち必ず歸らん。焉ぞ能く楚を定めん、と。
王之奔隨也、將涉於成臼。江夏竟陵縣西有臼水、出聊屈山、西南入漢。○屈、其勿反。又居勿反。
【読み】
王の隨に奔るや、將に成臼に涉らんとす。江夏竟陵縣の西に臼水有り、聊屈山[りょうくつざん]より出でて、西南して漢に入る。○屈は、其勿反。又居勿反。
藍尹亹涉其帑、亹、楚大夫。○亹、亡匪反。帑、音奴。
【読み】
藍尹亹[らんいんび]其の帑を涉して、亹は、楚の大夫。○亹は、亡匪反。帑は、音奴。
不與王舟。及寧、王欲殺之。寧、安定也。
【読み】
王に舟を與えず。寧んずるに及びて、王之を殺さんと欲す。寧は、安定なり。
子西曰、子常唯思舊怨以敗。君何效焉。王曰、善。使復其所。吾以志前惡。惡、過也。
【読み】
子西曰く、子常唯舊怨を思いて以て敗れたり。君何ぞ效[なら]わん、と。王曰く、善し。其の所に復らしめよ。吾れ以て前惡を志[しる]さん、と。惡は、過ちなり。
王賞鬭辛・王孫由于・王孫圉・鍾建・鬭巢・申包胥・王孫賈・宋木・鬭懷。九子、皆從王有大功者。
【読み】
王鬭辛・王孫由于・王孫圉・鍾建・鬭巢・申包胥・王孫賈・宋木・鬭懷を賞す。九子は、皆王に從いて大功有る者なり。
子西曰、請舍懷也。以初謀弑王也。○舍、音捨。又音赦。
【読み】
子西曰く、請う、懷を舍[お]け、と。初め王を弑せんことを謀るを以てなり。○舍は、音捨。又音赦。
王曰、大德滅小怨、道也。終從其兄免王大難。是大德。
【読み】
王曰く、大德小怨を滅ぼすは、道なり、と。終に其の兄に從いて王を大難に免れしむ。是れ大德なり。
申包胥曰、吾爲君也。非爲身也。君旣定矣。又何求。且吾尤子旗、其又爲諸。子旗、蔓成然也。以有德於平王、求欲無厭、平王殺之。在昭十四年。○爲君・爲身、于僞反。
【読み】
申包胥曰く、吾は君の爲なり。身の爲に非ざるなり。君旣に定まれり。又何をか求めん。且つ吾れ子旗を尤めて、其れ又諸を爲さんや、と。子旗は、蔓成然なり。平王に德有るを以て、求欲厭くこと無く、平王之を殺せり。昭十四年に在り。○爲君・爲身は、于僞反。
遂逃賞。
【読み】
遂に賞を逃る。
王將嫁季羋。季羋辭曰、所以爲女子、遠丈夫也。鍾建負我矣。以妻鍾建、以爲樂尹。司樂大夫。○遠、于萬反。妻、七計反。
【読み】
王將に季羋[きび]を嫁せんとす。季羋辭して曰く、女子爲る所以は、丈夫に遠ざかるなり。鍾建我を負えり、と。以て鍾建に妻せて、以て樂尹と爲す。司樂大夫。○遠は、于萬反。妻は、七計反。
王之在隨也、子西爲王輿服以保路、國于脾洩、脾洩、楚邑也。失王、恐國人潰散。故僞爲王車服、立國脾洩、以保安道路人。
【読み】
王の隨に在るや、子西王の輿服を爲して以て路を保んじて、脾洩に國し、脾洩は、楚の邑なり。王を失えば、國人の潰散せんことを恐る。故に僞りて王の車服を爲りて、國を脾洩に立てて、以て道路の人を保安す。
聞王所在而後從王。
【読み】
王の所在を聞きて而して後に王に從えり。
王使由于城麇。於麇築城。
【読み】
王由于をして麇に城かしむ。麇に於て城を築く。
復命。子西問高厚焉。弗知。子西曰、不能、如辭。言自知不能、當辭勿行。
【読み】
復命す。子西高厚を問う。知らず。子西曰く、能わずんば、辭するに如かんや。言うこころは、自ら能わざるを知らば、當に辭して行くこと勿かるべし。
城不知高厚小大、何知。對曰、固辭不能、子使余也。人各有能有不能。王遇盜於雲中、余受其戈。其所猶在。袒而示之背、曰、此余所能也。脾洩之事、余亦不能也。傳言昭王所以復國、有賢臣也。○袒、音但。
【読み】
城きて高厚小大を知らずんば、何をか知らんとする、と。對えて曰く、固より不能を辭すれども、子余を使えり。人各々能有り不能有り。王盜に雲中に遇いしとき、余其の戈を受けたり。其の所猶在り、と。袒[はだぬ]ぎて之に背を示して、曰く、此れ余が能くする所なり。脾洩の事は、余も亦能わず、と。傳昭王國を復する所以は、賢臣有るを言うなり。○袒は、音但。
晉士鞅圍鮮虞、報觀虎之役也。三年、鮮虞獲晉觀虎。
【読み】
晉の士鞅鮮虞を圍むは、觀虎の役に報ゆるなり。三年、鮮虞晉の觀虎を獲。
〔經〕六年、春、王正月、癸亥、鄭游速帥師滅許、以許男斯歸。游速、大叔子。
【読み】
〔經〕六年、春、王の正月、癸亥[みずのと・い]、鄭の游速師を帥いて許を滅ぼし、許男斯を以[い]て歸る。游速は、大叔の子。
二月、公侵鄭。公至自侵鄭。無傳。
【読み】
二月、公鄭を侵す。公鄭を侵してより至る。傳無し。
夏、季孫斯・仲孫何忌如晉。秋、晉人執宋行人樂祁犂。稱行人、言非其罪。
【読み】
夏、季孫斯・仲孫何忌晉に如く。秋、晉人宋の行人樂祁犂[がくきれい]を執う。行人と稱するは、其の罪に非ざるを言うなり。
冬、城中城。無傳。公爲晉侵鄭。故懼而城之。
【読み】
冬、中城に城く。傳無し。公晉の爲に鄭を侵す。故に懼れて之に城く。
季孫斯・仲孫忌帥師圍鄆。無傳。何忌不言何、史闕文。鄆貳於齊。故圍之。
【読み】
季孫斯・仲孫忌師を帥いて鄆[うん]を圍む。傳無し。何忌何を言わざるは、史の闕文なり。鄆齊に貳あり。故に之を圍む。
〔傳〕六年、春、鄭滅許、因楚敗也。
【読み】
〔傳〕六年、春、鄭許を滅ぼすは、楚の敗に因れるなり。
二月、公侵鄭取匡、爲晉討鄭之伐胥靡也。胥靡、周地也。周儋翩因鄭人以作亂。鄭爲之伐胥靡。故晉使魯討之。匡、鄭地。取匡不書、歸之晉。○儋、丁甘反。
【読み】
二月、公鄭を侵して匡を取るは、晉の爲に鄭の胥靡を伐ちしを討ずるなり。胥靡は、周の地なり。周の儋翩[たんへん]鄭人に因りて以て亂を作す。鄭之が爲に胥靡を伐つ。故に晉魯をして之を討ぜしめり。匡は、鄭の地。匡を取ること書さざるは、之を晉に歸[おく]ればなり。○儋は、丁甘反。
往不假道於衛、及還、陽虎使季・孟自南門入、出自東門、陽虎將逐三桓、欲使得罪於鄰國。
【読み】
往くとき道を衛に假らず、還るに及びて、陽虎季・孟をして南門より入り、東門より出でしめて、陽虎將に三桓を逐わんとし、罪を鄰國に得せしめんと欲す。
舍於豚澤。衛侯怒。使彌子瑕追之。彌子瑕、衛嬖大夫。
【読み】
豚澤に舍る。衛侯怒る。彌子瑕をして之を追わしめんとす。彌子瑕は、衛の嬖大夫。
公叔文子老矣。文子、公叔發。
【読み】
公叔文子老う。文子は、公叔發。
輦而如公、曰、尤人而效之、非禮也。昭公之難、君將以文之舒鼎・ 衛文公之鼎。
【読み】
輦[れん]にして公に如きて、曰く、人を尤めて之に效[なら]うは、禮に非ざるなり。昭公の難に、君將に文の舒鼎・ 衛の文公の鼎。
成之昭兆・ 寶龜。
【読み】
成の昭兆・ 寶龜。
定之鞶鑑、鞶帶而以鏡爲飾也。今西方羌胡猶然。古之遺服。○鞶、步丹反。
【読み】
定の鞶鑑を以て、鞶帶にして鏡を以て飾りとするなり。今西方の羌胡猶然り。古の遺服なり。○鞶は、步丹反。
苟可以納之、擇用一焉。公子與二三臣之子、諸侯苟憂之、將以爲之質。爲質求納魯昭公。
【読み】
苟も以て之を納る可くんば、擇びて一を用いんとす。公の子と二三臣の子と、諸侯苟も之を憂えば、將に以て之が質と爲さんとす。質と爲して魯の昭公を納れんことを求む。
此羣臣之所聞也。今將以小忿蒙舊德、蒙、覆也。
【読み】
此れ羣臣の聞ける所なり。今將に小忿を以て舊德を蒙[おお]わんとするは、蒙は、覆うなり。
無乃不可乎。
【読み】
乃ち不可なること無からんや。
大姒之子、大姒、文王妃。
【読み】
大姒の子は、大姒は、文王の妃。
唯周公・康叔爲相睦也。而效小人以棄之、不亦誣乎。天將多陽虎之罪以斃之。君姑待之、若何。乃止。止不伐魯師。
【読み】
唯周公・康叔のみ相睦まじと爲す。而るに小人に效いて以て之を棄てば、亦誣いざらんや。天將に陽虎の罪を多くして以て之を斃さんとす。君姑く之を待たば、若何、と。乃ち止む。止めて魯の師を伐たざるなり。
夏、季桓子如晉、獻鄭俘也。獻此春取匡之俘。
【読み】
夏、季桓子晉に如くは、鄭の俘を獻ずるなり。此の春匡を取るの俘を獻ず。
陽虎强使孟懿子往報夫人之幣。虎欲困辱三桓、幷求媚於晉。故强使正卿報晉夫人之聘。
【読み】
陽虎强いて孟懿子をして往きて夫人の幣に報ぜしむ。虎三桓を困辱し、幷せて媚を晉に求めんと欲す。故に强いて正卿をして晉の夫人の聘に報ぜしむ。
晉人兼享之。賤魯。故不復兩設禮。明經所以不備書。
【読み】
晉人之を兼ね享す。魯を賤しむ。故に復禮を兩設せず。經に備に書せざる所以を明らかにするなり。
孟孫立于房外、謂范獻子曰、陽虎若不能居魯、而息肩於晉、所不以爲中軍司馬者、有如先君。稱先君、以徵其言、若欲使晉必厚待之。
【読み】
孟孫房外に立ち、范獻子に謂いて曰く、陽虎若し魯に居ること能わずして、肩を晉に息えんとき、以て中軍司馬と爲さざる所の者あらば、先君の如きこと有らん、と。先君を稱して、以て其の言を徵する、晉をして必ず之を厚待せしめんと欲するが若くす。
獻子曰、寡君有官。將使其人。擇得其人。
【読み】
獻子曰く、寡君官有り。將に其の人を使わんとす。其の人を擇び得。
鞅何知焉。獻子謂簡子曰、魯人患陽虎矣。孟孫知其釁、以爲必適晉。故强爲之請、以取入焉。欲令晉人聞虎當逃走。故强設請託之辭、因此言以入晉、令晉素知之。○釁、許靳反。爲之、于僞反。
【読み】
鞅何ぞ知らん、と。獻子簡子に謂いて曰く、魯人陽虎を患う。孟孫其の釁を知りて、必ず晉に適かんと以爲えり。故に强いて之が爲に請いて、以て入れんことを取れり、と。晉人をして虎が當に逃走すべきを聞かしめんと欲す。故に强いて請託の辭を設けて、此の言に因りて以て晉に入れしめんとして、晉をして素より之を知らしむ。○釁は、許靳反。爲之は、于僞反。
四月、己丑、吳大子終纍敗楚舟師、終纍、闔廬子、夫差兄。舟師、水戰。○纍、力追反。又力軌反。夫、音扶。差、初佳反。
【読み】
四月、己丑[つちのと・うし]、吳の大子終纍[しゅうるい]楚の舟師を敗り、終纍は、闔廬の子、夫差の兄。舟師は、水戰。○纍は、力追反。又力軌反。夫は、音扶。差は、初佳反。
獲潘子臣・小惟子、二子、楚舟師之帥。
【読み】
潘子臣・小惟子と、二子は、楚の舟師の帥。
及大夫七人。楚國大惕、懼亡。子期又以陵師敗于繁揚。陵師、陸軍。
【読み】
大夫七人とを獲たり。楚國大いに惕れ、亡びんことを懼る。子期又陵師を以て繁揚に敗れぬ。陵師は、陸軍。
令尹子西喜曰、乃今可爲矣。言知懼而後可治。
【読み】
令尹子西喜びて曰く、乃ち今にして爲む可し、と。言うこころは、懼れを知りて而して後に治む可し。
於是乎遷郢於鄀、而改紀其政、以定楚國。傳言楚賴子西以安。○鄀、音若。
【読み】
是に於て郢[えい]を鄀[じゃく]に遷して、其の政を改め紀して、以て楚國を定む。傳楚子西に賴りて以て安きを言う。○鄀は、音若。
周儋翩率王子朝之徒、因鄭人將以作亂于周。儋翩、子朝餘黨。
【読み】
周の儋翩[たんへん]王子朝の徒を率いて、鄭人に因りて將に亂を周に作さんとす。儋翩は、子朝の餘黨。
鄭於是乎伐馮・滑・胥靡・負黍・狐人・闕外。鄭伐周六邑、在魯伐鄭取匡前。於此見者、爲戍周起也。陽城縣西南有負黍亭。○見、賢遍反。下同。
【読み】
鄭是に於て馮・滑・胥靡・負黍・狐人・闕外を伐ちぬ。鄭周の六邑を伐つは、魯の鄭を伐ち匡を取るの前に在り。此に見すは、周を戍る爲の起なり。陽城縣の西南に負黍亭有り。○見は、賢遍反。下も同じ。
六月、晉閻沒戍周、且城胥靡。爲下天王出、居姑蕕起。
【読み】
六月、晉の閻沒周を戍り、且[また]胥靡に城く。下の天王出でて、姑蕕[こゆう]に居る爲の起なり。
秋、八月、宋樂祁言於景公曰、諸侯唯我事晉。今使不往、晉其憾矣。樂祁告其宰陳寅。以與公言告之。○使、去聲。
【読み】
秋、八月、宋の樂祁景公に言いて曰く、諸侯は唯我のみ晉に事う。今使い往かずんば、晉其れ憾みん、と。樂祁其の宰陳寅に告ぐ。公と言うを以て之に告ぐ。○使は、去聲。
陳寅曰、必使子往。他日、公謂樂祁曰、唯寡人說子之言。子必往。陳寅曰、子立後而行、吾室亦不亡。寅知晉政多門、往必有難。故使樂祁立後而行。○說、音悅。
【読み】
陳寅曰く、必ず子をして往かしめん、と。他日、公樂祁に謂いて曰く、唯寡人子の言を說ぶ。子必ず往け、と。陳寅曰く、子後を立てて行かば、吾が室も亦亡びじ。寅晉の政門多ければ、往かば必ず難有らんことを知る。故に樂祁をして後を立てて行かしむ。○說は、音悅。
唯君亦以我爲知難而行也。見溷而行。溷、樂祁子也。見於君、立以爲後。○溷、侯溫反。又侯困反。
【読み】
唯君も亦我を以て難を知りて行くと爲さん、と。溷[こん]を見えしめて行く。溷は、樂祁の子なり。君に見えしめ、立てて以て後と爲す。○溷は、侯溫反。又侯困反。
趙簡子逆而飮之酒於緜上。獻楊楯六十於簡子。楊、木名。○楯、食允反。又音允。
【読み】
趙簡子逆えて之に酒を緜上に飮ましむ。楊楯六十を簡子に獻ず。楊は、木の名。○楯は、食允反。又音允。
陳寅曰、昔吾主范氏、今子主趙氏、又有納焉。以楊楯賈禍。弗可爲也已。知范氏必怨將得禍。○賈、音古。
【読み】
陳寅曰く、昔吾れ范氏を主とせしに、今子は趙氏を主として、又納るること有り。楊楯を以て禍を賈わん。爲す可からざるのみ。范氏必ず怨みて將に禍を得んとするを知る。○賈は、音古。
然子死晉國、子孫必得志於宋。以其爲國死。
【読み】
然れども子晉國に死なば、子孫必ず志を宋に得ん、と。其の國の爲に死するを以てなり。
范獻子言於晉侯曰、以君命越疆而使、未致使而私飮酒、不敬二君。不可不討也。
【読み】
范獻子晉侯に言いて曰く、君命を以て疆を越えて使いし、未だ使いを致さずして私に酒を飮むは、二君に不敬なり。討ぜずんばある可からざるなり、と。
乃執樂祁。獻子怒祁比趙氏。經所以稱行人。
【読み】
乃ち樂祁を執う。獻子祁が趙氏に比するを怒る。經に行人と稱する所以なり。
陽虎又盟公及三桓於周社、盟國人于亳社、詛于五父之衢。傳言三桓微、陪臣專政。爲八年、陽虎作亂起。
【読み】
陽虎又公と三桓とに周社に盟い、國人に亳社[はくしゃ]に盟い、五父に衢に詛[ちか]う。傳三桓微にして、陪臣政を專にするを言う。八年、陽虎亂を作す爲の起なり。
冬、十二月、天王處于姑蕕、姑蕕、周地。
【読み】
冬、十二月、天王姑蕕[こゆう]に處るは、姑蕕は、周の地。
辟儋翩之亂也。爲明年、單・劉逆王起。
【読み】
儋翩の亂を辟くるなり。明年、單・劉王を逆うる爲の起なり。
〔經〕七年、春、王正月。夏、四月。秋、齊侯・鄭伯盟于鹹。衛地。
【読み】
〔經〕七年、春、王の正月。夏、四月。秋、齊侯・鄭伯鹹[かん]に盟う。衛の地。
齊人執衛行人北宮結、以侵衛。稱行人、非使人之罪。
【読み】
齊人衛の行人北宮結を執えて、以て衛を侵す。行人と稱するは、使人の罪に非ざるなり。
齊侯・衛侯盟于沙。結叛晉也。陽平元城縣東南有沙亭。
【読み】
齊侯・衛侯沙に盟う。晉に叛くことを結ぶなり。陽平元城縣の東南に沙亭有り。
大雩。無傳。過也。
【読み】
大いに雩[う]す。傳無し。過ぐるなり。
齊國夏帥師伐我西鄙。夏、國佐孫。
【読み】
齊の國夏師を帥いて我が西鄙を伐つ。夏は、國佐の孫。
九月、大雩。無傳。過也。
【読み】
九月、大いに雩す。傳無し。過ぐるなり。
冬、十月。
【読み】
冬、十月。
〔傳〕七年、春、二月、周儋翩入于儀栗以叛。儀栗、周邑。
【読み】
〔傳〕七年、春、二月、周の儋翩[たんへん]儀栗に入りて以て叛く。儀栗は、周の邑。
齊人歸鄆・陽關。陽虎居之以爲政。鄆・陽關、皆魯邑。中貳於齊。齊今歸之。不書、虎專之。○中、丁仲反。
【読み】
齊人鄆[うん]・陽關を歸す。陽虎之に居りて以て政を爲す。鄆・陽關は、皆魯の邑。中ごろ齊に貳す。齊今之を歸す。書さざるは、虎之を專にすればなり。○中は、丁仲反。
夏、四月、單武公・ 穆公子。
【読み】
夏、四月、單武公・ 穆公の子。
劉桓公、文公子。
【読み】
劉桓公、文公の子。
敗尹氏于窮谷。尹氏復黨儋翩、共爲亂也。
【読み】
尹氏を窮谷に敗る。尹氏復儋翩に黨して、共に亂を爲せばなり。
秋、齊侯・鄭伯盟于鹹、徵會于衛。徵、召也。
【読み】
秋、齊侯・鄭伯鹹に盟い、會を衛に徵[め]す。徵は、召すなり。
衛侯欲叛晉。屬齊・鄭也。
【読み】
衛侯晉に叛かんと欲す。齊・鄭に屬せんとす。
諸大夫不可。使北宮結如齊、而私於齊侯曰、執結以侵我。欲以齊師懼諸大夫。
【読み】
諸大夫可[き]かず。北宮結をして齊に如かしめて、齊侯に私して曰く、結を執えて以て我を侵せ、と。齊の師を以て諸大夫を懼[おど]さんと欲す。
齊侯從之、乃盟于瑣。瑣、卽沙也。爲明年、涉佗捘衛侯手起。○捘、子對反。
【読み】
齊侯之に從い、乃ち瑣に盟う。瑣は、卽ち沙なり。明年、涉佗衛侯の手を捘[お]す爲の起なり。○捘は、子對反。
齊國夏伐我。齊叛晉故。
【読み】
齊の國夏我を伐つ。齊晉に叛く故なり。
陽虎御季桓子、公斂處父御孟懿子、處父、孟氏家臣、成宰公斂陽。○斂、力檢反。又音廉。
【読み】
陽虎季桓子に御となり、公斂處父孟懿子に御となりて、處父は、孟氏の家臣、成の宰公斂陽なり。○斂は、力檢反。又音廉。
將宵軍齊師。齊師聞之、墮伏而待之。墮毀其軍以誘敵、而設伏兵。○墮、許規反。
【読み】
將に宵齊の師に軍せんとす。齊の師之を聞き、墮[やぶ]りて伏して之を待つ。其の軍を墮毀して以て敵を誘きて、伏兵を設く。○墮は、許規反。
處父曰、虎不圖禍。而必死。而、女也。○女、音汝。
【読み】
處父曰く、虎禍を圖らず。而[なんじ]必ず死せん、と。而は、女なり。○女は、音汝。
苫夷曰、虎陷二子於難。苫夷、季氏家臣。二子、季・孟。○苫、始占反。
【読み】
苫夷[せんい]曰く、虎二子を難に陷れんとす。苫夷は、季氏の家臣。二子は、季・孟。○苫は、始占反。
不待有司、余必殺女。虎懼、乃還。不敗。傳言陪臣强、能自相制、季・孟不敢有心。
【読み】
有司を待たずして、余必ず女を殺さん、と。虎懼れ、乃ち還る。敗れず。傳陪臣强く、能く自ら相制して、季・孟敢えて心有らざるを言う。
冬、十一月、戊午、單子・劉子逆王于慶氏。慶氏、守姑蕕大夫。
【読み】
冬、十一月、戊午[つちのえ・うま]、單子・劉子王を慶氏より逆う。慶氏は、姑蕕[こゆう]を守る大夫。
晉籍秦送王。己巳、王入于王城。己巳、十二月五日。有日無月。
【読み】
晉の籍秦王を送る。己巳[つちのと・み]、王王城に入る。己巳は、十二月五日。日有れども月無し。
館于公族黨氏、黨氏、周大夫。○黨、音掌。
【読み】
公族の黨氏[しょうし]に館りて、黨氏は、周の大夫。○黨は、音掌。
而後朝于莊宮。莊王廟也。
【読み】
而して後に莊宮に朝せり。莊王の廟なり。
定
經元年。禱之。丁老反。隕霜。于敏反。
傳。涖政。音利。又音類。奸義。音干。大咎。其九反。荒蕪。音無。近吳。附近之近。柏椁。音郭。爲夏。戶雅反。注同。于邳。皮悲反。仲虺。許鬼反。左相。息亮反。薛焉。於虔反。納侮。亡甫反。過分。扶問反。故復。扶又反。旣厭。於豔反。其祚。才故反。不中。丁仲反。故朝夕。如字。而從君。或如字。壞隤。徒回反。自旌。音精。將焉。於虔反。鞏。九勇反。
經二年。囊瓦。乃郎反。
傳。閽。音昬。守門人也。以敲。說文、作毃。云、擊頭也。字林同。又一曰、擊聲也。口交反。又口卓反。訓此敲云、橫擿也。又或作摮。或作搞。口交反。
經三年。子穿。音川。
傳。臨廷。音庭。下同。缾水。步丁反。本又作甁。炭。他旦反。五乘。繩證反。殉五人。辭俊反。卞急。皮彥反。而好。呼報反。下文及注同。躁疾。早報反。于郯。音談。駿馬。音俊。自拘。九于反。弄馬。魯貢反。以償。市亮反。若復。扶又反。爲質。音致。
經四年。國夏。戶雅反。召陵。上照反。楚竟。音境。公孫生。本又作姓。○今本亦姓。復稱。扶又反。異處。昌慮反。伯成。音城。爲告。于僞反。下吳爲蔡同。孔圉。魚呂反。死難。乃旦反。幷數。所主反。
傳。水潦。音老。疾瘧。魚略反。羽旄。音毛。析羽。星曆反。下放此。旐。音兆。忿爭。爭鬭之爭。大祝。音泰。下大祝・大卜・大史・大原同。徼大。古堯反。夫祝。音扶。出竟。音境。下同。釁鼓。許靳反。鼓鞞。步西反。本又作鼙。○今本亦鼙。欲令歃也。所洽反。又所甲反。以蕃。方元反。○今本藩。相王。悉亮反。大輅。音路。本亦作路。下皆同。○今本亦路。大旂。其依反。諸侯所建。錫。星曆反。夏后。戶雅反。下皆同。之璜。音黃。封父。音甫。下武父同。封父、國名。輯其。一音七入反。共魯。音恭。下文以共王職同。倍敦。本亦作陪。同。○今本亦陪。典筴。本又作冊。亦作策。或作笧。皆初革反。○今本亦策。彝。羊之反。皆令。徐力呈反。皞。詩照反。注及下同。下胡老反。旃。章然反。陶。徒刀反。甫田。布吳反。本亦作圃。同。○今本圃。塗所徑。音徒。鄭藪。素口反。蓋近。附近之近。下近戒同。東蒐。所求反。巡守。手又反。疆以。居良反。注及下同。沽洗。音孤。道紂。音導。七乘。繩證反。改行。下孟反。之昭。說文作佋。伯甸。徒練反。鄭捷。在接反。齊潘。普安反。玆丕。普悲反。可覆。芳服反。爲之。于僞反。下楚爲沈同。黃父。音甫。無怙。音戶。州犂。力兮反。子乾。其連反。爲質。音致。淮汭。人銳反。夾漢。古洽反。沿漢。悅全反。上下。時掌反。注同。遮使。正奢反。大隧。音遂。冥。本或作寘。之豉反。阨。本或作隘。音同。惡子。烏路反。而好。呼報反。江夏。戶雅反。其卒。子忽反。下同。畀我。必利反。燧象。音遂。裹。音果。中肩。丁仲反。蔓成。音萬。其衷。音忠。又竄。七亂反。竄匿。女力反。申包。必交反。數也。所角反。草茅。舊作茅。亡交反。今本多作莽。○今本亦莽。無厭。於鹽反。疆。居良反。埸。音亦。逮吳。音代。同仇。音求。
經五年。
傳。周亟。紀力反。注同。璵。本又作與。斂。力驗反。不狃。女九反。子洩。息列反。使僭。子念反。時從。才用反。下從父昆弟・皆從王、竝同。百乘。繩證反。注同。于沂。魚依反。散卒。子忽反。堂谿。苦兮反。下同。以歆。許金反。輿。本又作與。罷。音皮。復失。扶又反。公父。音甫。焉能。於虔反。成臼。其九反。藍尹。力甘反。謀殺。申志反。○今本弑。大難。乃旦反。無厭。於鹽反。脾洩。婢支反。下息列反。
經六年。祁犂。力兮反。又力之反。公爲。于僞反。圍鄆。音運。
傳。爲晉。于僞反。注同。儋翩。音篇。豚澤。杜孫反。嬖大夫。必計反。之難。乃旦反。盤。或作鞶。一音蒲官反。○今本亦鞶。鑑。古暫反。爲質。音致。注同。大姒。音泰。下音似。鄭俘。芳夫反。强使。其丈反。注同。下放此。不復。扶又反。欲令。力呈反。小惟子。位悲反。本又作帷。又如字。之帥。所類反。大惕。他歷反。爲戍。于僞反。下同。其憾。戶暗反。有難。乃旦反。下文同。飮之。於鴆反。爲國。于僞反。下同。越疆。居良反。而使。所吏反。下同。比趙。毗志反。亳社。步各反。詛于。側慮反。五父。音甫。之衢。其倶反。姑蕕。音由。又作猶。一音由舊反。單劉。音善。
經七年。于鹹。音咸。非使。所吏反。于沙。如字。又星和反。
傳。中貳。丁仲反。復黨。扶又反。瑣。素果反。涉佗。徒何反。公斂。或音慮點反。於難。乃旦反。