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  [詩経][春秋], [春秋]姉妹編[書經][周易]
春秋左氏傳校本


 春秋《左氏傳》(定公上、下)

春秋左氏傳
(隱公 桓公莊公閔公)(僖公上、中、下 )(文公上、下 )(宣公上、下 )(成公上、下 )
(襄公一、二、三) (四、五、六 )(昭公一、二、三、四) (五、六、七)(定公上、下)(哀公上、下)(序杜預略傳 ・後序)

定公上、下

春秋左氏傳校本第二十七

起元年盡七年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本
 
定公 名、宋。襄公之子。昭公之弟。謚法、安民大慮曰定。
【読み】
定公 名は、宋。襄公の子。昭公の弟。謚法に、民を安んじ大慮するを定と曰う、と。

〔經〕
元年、春、王 公之始年、而不書正月、公卽位在六月故。
【読み】
〔經〕元年、春、王の 公の始年にして、正月を書さざるは、公の位に卽くことは六月に在る故なり。

三月、晉人執宋仲幾于京師。晉執人于天子之側、而不以歸京師。故但書其執、不書所歸。○幾、音機。
【読み】
三月、晉人宋の仲幾を京師に執う。晉人を天子の側に執えて、以て京師に歸[おく]らず。故に但其の執うるを書して、歸る所を書さず。○幾は、音機。

夏、六月、癸亥、公之喪至自乾侯。告於廟。故書至。
【読み】
夏、六月、癸亥[みずのと・い]、公の喪乾侯より至る。廟に告ぐ。故に至るを書す。

戊辰、公卽位。定公不得以正月卽位、失其時。故詳而日之。記事之宜。無義例。
【読み】
戊辰[つちのえ・たつ]、公位に卽く。定公正月を以て位に卽くことを得ず、其の時を失う。故に詳らかにして之に日す。事を記すの宜しきなり。義例無し。

秋、七月、癸巳、葬我君昭公。公在外薨。故八月乃葬。
【読み】
秋、七月、癸巳[みずのと・み]、我が君昭公を葬る。公外に在りて薨ず。故に八月にして乃ち葬る。

九月、大雩。無傳。過也。○雩、音于。
【読み】
九月、大いに雩[う]す。傳無し。過ぐるなり。○雩は、音于。

立煬宮。煬公、伯禽子也。其廟已毀。季氏禱之、而立其宮。書以譏之。○煬、羊讓反。
【読み】
煬宮を立つ。煬公は、伯禽の子なり。其の廟已に毀つ。季氏之に禱りて、其の宮を立つ。書して以て之を譏る。○煬は、羊讓反。

冬、十月、隕霜殺菽。無傳。周十月、今八月。隕霜殺菽、非常之災。○菽、本又作叔。
【読み】
冬、十月、隕霜菽を殺[か]らす。傳無し。周の十月は、今の八月。隕霜菽を殺らすは、非常の災なり。○菽は、本又叔に作る。

〔傳〕元年、春、王正月、辛巳、晉魏舒合諸侯之大夫于狄泉、將以城成周。魏子涖政。涖、臨也。代天子大夫爲政。
【読み】
〔傳〕元年、春、王の正月、辛巳[かのと・み]、晉の魏舒諸侯の大夫を狄泉に合わせ、將に以て成周に城かんとす。魏子政に涖[のぞ]む。涖は、臨むなり。天子の大夫に代わりて政を爲す。

衛彪傒 衛大夫。
【読み】
衛の彪傒 衛の大夫。

曰、將建天子、立天子之居。
【読み】
曰く、將に天子を建てんとして、天子の居を立つるなり。

而易位以令、非義也。大事奸義、必有大咎。晉不失諸侯、魏子其不免乎。
【読み】
位を易えて以て令するは、義に非ざるなり。大事に義を奸せば、必ず大咎有り。晉諸侯を失わずんば、魏子其れ免れざらんか、と。

是行也、魏獻子屬役於韓簡子及原壽過、簡子、韓起孫、不信也。原壽過、周大夫。○屬、之欲反。過、古禾反。
【読み】
是の行や、魏獻子役を韓簡子と原壽過とに屬して、簡子は、韓起の孫、不信なり。原壽過は、周の大夫。○屬は、之欲反。過は、古禾反。

而田於大陸、焚焉。禹貢、大陸、在鉅鹿北、嫌絕遠。疑此田在汲郡吳澤荒蕪之地。火田幷見燒也。爾雅、廣平曰陸。
【読み】
大陸に田[かり]し、焚かれぬ。禹貢に、大陸は、鉅鹿の北に在れば、絕遠に嫌あり。疑うらくは此の田は汲郡吳澤荒蕪の地に在らん。火田して幷せて燒かるるなり。爾雅に、廣平を陸と曰う、と。

還、卒於甯。甯、今脩武縣。近吳澤。
【読み】
還り、甯[ねい]に卒す。甯は、今の脩武縣。吳澤に近し。

范獻子去其柏槨。以其未復命而田也。范獻子代魏子爲政。去其柏槨、示貶之。○去、起呂反。
【読み】
范獻子其の柏槨を去[す]つ。其の未だ復命せずして田するを以てなり。范獻子魏子に代わりて政を爲す。其の柏槨を去つるは、之を貶するを示すなり。○去は、起呂反。

孟懿子會城成周。不書、公未卽位。
【読み】
孟懿子成周に城くに會す。書さざるは、公未だ位に卽かざればなり。

庚寅、栽。栽、設版築。○栽、才代反。又音再。
【読み】
庚寅[かのえ・とら]に、栽す。栽は、版築を設くるなり。○栽は、才代反。又音再。

宋仲幾不受功、曰、滕・薛・郳、吾役也。欲使三國代宋受功役也。○郳、五兮反。小邾國。
【読み】
宋の仲幾功を受けずして、曰く、滕・薛・郳[げい]は、吾が役なり。三國をして宋に代わりて功役を受けしめんと欲するなり。○郳は、五兮反。小邾國。

薛宰曰、宋爲無道、絕我小國於周、以我適楚。故我常從宋。晉文公爲踐土之盟、在僖二十八年。
【読み】
薛の宰曰く、宋無道を爲し、我が小國を周に絕ち、我を以[い]て楚に適きぬ。故に我れ常に宋に從えり。晉の文公踐土の盟を爲して、僖二十八年に在り。

曰、凡我同盟、各復舊職。若從踐土。若從宋。亦唯命。仲幾曰、踐土固然。固曰從舊。薛、舊爲宋役。
【読み】
曰く、凡そ我が同盟、各々舊職に復せよ、と。若しくは踐土に從わんか。若しくは宋に從わんか。亦唯命のままなり、と。仲幾曰く、踐土固より然り、と。固より舊に從えと曰えり。薛は、舊宋の役爲り。

薛宰曰、薛之皇祖奚仲居薛、以爲夏車正、皇、大也。奚仲爲夏禹掌車服大夫。
【読み】
薛の宰曰く、薛の皇祖奚仲薛に居りて、以て夏の車正と爲り、皇は、大なり。奚仲夏禹の車服を掌る大夫爲り。

奚仲遷于邳、邳、下邳縣。
【読み】
奚仲邳[ひ]に遷り、邳は、下邳縣。

仲虺居薛、以爲湯左相。仲虺、奚仲之後。
【読み】
仲虺[ちゅうき]薛に居りて、以て湯の左相爲り。仲虺は、奚仲の後。

若復舊職、將承王官。何故以役諸侯。承、奉也。
【読み】
若し舊職に復せば、將に王官に承けんとす。何の故にして以て諸侯に役せん、と。承は、奉ずるなり。

仲幾曰、三代各異物。薛焉得有舊。言居周世、不得以夏・殷爲舊。
【読み】
仲幾曰く、三代各々物を異にす。薛焉ぞ舊有ることを得ん。言うこころは、周の世に居りては、夏・殷を以て舊爲ることを得ず。

爲宋役、亦其職也。士彌牟曰、晉之從政者新。言范獻子新爲政、未習故事。
【読み】
宋の役爲るも、亦其の職なり、と。士彌牟曰く、晉の政に從う者新たなり。言うこころは、范獻子新たに政を爲して、未だ故事に習わず。

子姑受功。歸、吾視諸故府。求故事。
【読み】
子姑く功を受けよ。歸りて、吾れ諸を故府に視ん、と。故事を求めんとす。

仲幾曰、縱子忘之、山川鬼神其忘諸乎。山川鬼神、盟所告。
【読み】
仲幾曰く、縱[たと]い子之を忘るるも、山川鬼神其れ諸を忘れんや、と。山川鬼神は、盟して告ぐる所。

士伯怒。謂韓簡子曰、薛徵於人、典籍故事、人所知也。
【読み】
士伯怒る。韓簡子に謂いて曰く、薛は人に徵[あ]かし、典籍の故事は、人の知る所なり。

宋徵於鬼。取證於鬼神。
【読み】
宋は鬼に徵かす。證を鬼神に取る。

宋罪大矣。且己無辭而抑我以神、誣我也。啓寵納侮、其此之謂矣。啓寵過分、則納受侵侮。
【読み】
宋の罪大なり。且つ己辭無くして我を抑うるに神を以てするは、我を誣うるなり。寵を啓[ひら]けば侮りを納るとは、其れ此を之れ謂うなり。寵を啓くこと分に過ぐれば、則ち侵侮を納れ受く。

必以仲幾爲戮。乃執仲幾以歸。三月、歸諸京師。知以歸不可。故復歸之京師。
【読み】
必ず仲幾を以て戮することをせん、と。乃ち仲幾を執えて以[い]て歸る。三月、諸を京師に歸[おく]る。以て歸るの不可なるを知る。故に復之を京師に歸る。

城三旬而畢。乃歸諸侯之戍。
【読み】
城三旬にして畢わる。乃ち諸侯の戍を歸す。

齊高張後、不從諸侯。後期不及諸侯之役。
【読み】
齊の高張後れて、諸侯に從わず。期に後れて諸侯の役に及ばず。

晉女叔寬曰、周萇弘・齊高張、皆將不免。叔寬、女寬也。○萇、直良反。
【読み】
晉の女叔寬曰く、周の萇弘・齊の高張は、皆將に免れざらんとす。叔寬は、女寬なり。○萇は、直良反。

萇叔違天、高子違人。天旣厭周德、萇弘欲遷都以延其祚。故曰違天。諸侯相帥、以崇天子。而高子後期。故曰違人。
【読み】
萇叔は天に違い、高子は人に違う。天旣に周の德を厭うに、萇弘都を遷して以て其の祚を延べんと欲す。故に天に違うと曰う。諸侯相帥いて、以て天子を崇む。而るに高子期に後る。故に人に違うと曰う。

天之所壞、不可支也。衆之所爲、不可奸也。爲哀三年、周人殺萇弘、六年、高張來奔起。
【読み】
天の壞[やぶ]る所は、支う可からざるなり。衆の爲す所は、奸す可からざるなり、と。哀三年、周人萇弘を殺し、六年、高張來奔する爲の起なり。

夏、叔孫成子逆公之喪于乾侯。成子、叔孫婼之子。
【読み】
夏、叔孫成子公の喪を乾侯に逆[むか]う。成子は、叔孫婼[しゅくそんちゃく]の子。

季孫曰、子家子亟言於我。未嘗不中吾志也。吾欲與之從政。子必止之。且聽命焉。衆事皆諮問子家子。○亟、去聲。
【読み】
季孫曰く、子家子亟[しば]々我に言あり。未だ嘗て吾が志に中らずんばあらず。吾れ之と政に從わんと欲す。子必ず之を止めよ。且つ命を聽け、と。衆事皆子家子に諮問せよ、と。○亟は、去聲。

子家子不見叔孫、易幾而哭。幾、哭會也。不欲見叔孫。故朝夕哭不同會。
【読み】
子家子叔孫を見ず、幾を易えて哭す。幾は、哭の會なり。叔孫を見んことを欲せず。故に朝夕の哭同じく會せず。

叔孫請見子家子。子家子辭曰、羈未得見、而從君以出、出時成子未爲卿。○羈、居宜反。子家子名。得見、音現。從、才用反。下同。
【読み】
叔孫子家子を見んことを請う。子家子辭して曰く、羈未だ見ることを得ずして、君に從いて以て出で、出づる時成子未だ卿と爲らず。○羈は、居宜反。子家子の名。得見は、音現。從は、才用反。下も同じ。

君不命而薨。羈不敢見。言未受昭公之命。託辭以距叔孫。
【読み】
君命ぜずして薨ぜり。羈敢えて見えじ、と。言うこころは、未だ昭公の命を受けず。託辭して以て叔孫を距む。

叔孫使告之曰、公衍・公爲實使羣臣不得事君。二子始謀逐季氏。
【読み】
叔孫之に告げしめて曰く、公衍・公爲は實に羣臣をして君に事うることを得ざらしめり。二子始謀して季氏を逐う。

若公子宋主社稷、則羣臣之願也。宋、昭公弟、定公。
【読み】
若し公子宋社稷に主たらば、則ち羣臣の願いなり。宋は、昭公の弟、定公なり。

凡從君出而可以入者、將唯子是聽。子家氏未有後。季孫願與子從政。此皆季孫之願也。使不敢以告。不敢、叔孫成子名。
【読み】
凡そ君に從いて出でて以て入る可き者は、將に唯子に是れ聽かんとす。子家氏未だ後有らず。季孫子と政に從わんことを願う。此れ皆季孫の願いなり。不敢をして以て告げしむ、と。不敢は、叔孫成子の名。

對曰、若立君、則有卿士大夫與守龜在。羈弗敢知。若從君者、則貌而出者、入可也。貌出、謂以義從公、與季氏無實怨。○守、手又反。
【読み】
對えて曰く、君を立つるが若きは、則ち卿士大夫と守龜との在る有り。羈敢えて知らず。君に從う者の若きは、則ち貌にして出づる者は、入らんこと可なり。貌にして出づとは、義を以て公に從いて、季氏と實怨無きを謂う。○守は、手又反。

寇而出者、行可也。與季氏爲寇讎者、自可去。
【読み】
寇にして出づる者は、行[さ]らんこと可なり。季氏と寇讎爲る者は、自ら去る可し。

若羈也、則君知其出也、君、昭公。
【読み】
羈が若きは、則ち君其の出でしことを知れども、君は、昭公。

而未知其入也。羈將逃也。
【読み】
而れども未だ其の入ることを知らざるなり。羈は將に逃れんとす、と。

喪及壞隤。公子宋先入。從公者皆自壞隤反。出奔。○壞、音懷。又去聲。隤、音頹。
【読み】
喪壞隤[かいたい]に及ぶ。公子宋先ず入る。公に從う者皆壞隤より反る。出奔す。○壞は、音懷。又去聲。隤は、音頹。

六月、癸亥、公之喪至自乾侯。戊辰公卽位。諸侯薨、五日而殯。殯則嗣子卽位。癸亥、昭公喪至、五日殯於宮、定公乃卽位。
【読み】
六月、癸亥、公の喪乾侯より至る。戊辰公位に卽く。諸侯の薨ずるは、五日にして殯す。殯すれば則ち嗣子位に卽く。癸亥に、昭公の喪至り、五日にして宮に殯し、定公乃ち位に卽く。

季孫使役如闞公氏、將溝焉。闞、魯羣公墓所在也。季孫惡昭公、欲溝絕其兆域、不使與先君同。○闞、口暫反。惡、去聲。又如字。
【読み】
季孫役をして闞[かん]の公氏に如かしめ、將に溝ほらんとす。闞は、魯の羣公の墓の在る所なり。季孫昭公を惡み、溝して其の兆域を絕ち、先君と同じからしめざらんと欲す。○闞は、口暫反。惡は、去聲。又字の如し。

榮駕鵝曰、生不能事、死又離之、以自旌也。駕鵝、魯大夫、榮成伯也。旌、章也。○駕、音加。鵞、五何反。
【読み】
榮駕鵝曰く、生けるとき事うること能わず、死して又之を離つは、以て自ら旌[あらわ]すなり。駕鵝は、魯の大夫、榮成伯なり。旌は、章すなり。○駕は、音加。鵞は、五何反。

縱子忍之、後必或恥之。乃止。
【読み】
縱い子之を忍ぶとも、後必ず之を恥ずること或らん、と。乃ち止む。

季孫問於榮駕鵝曰、吾欲爲君謚、使子孫知之。爲惡謚。
【読み】
季孫榮駕鵝に問いて曰く、吾れ君の謚を爲り、子孫をして之を知らしめんと欲す、と。惡謚を爲るなり。

對曰、生弗能事、死又惡之、以自信也。將焉用之。乃止。
【読み】
對えて曰く、生けるとき事うること能わず、死して又之を惡しくするは、以て自ら信にするなり。將に焉[いずく]に之を用いんとする、と。乃ち止む。

秋、七月、癸巳、葬昭公於墓道南。孔子之爲司寇也、溝而合諸墓。明臣無貶君之義。○惡、如字。又去聲。
【読み】
秋、七月、癸巳、昭公を墓道の南に葬る。孔子の司寇爲るや、溝して諸を墓に合わせり。臣君を貶するの義無きを明らかにするなり。○惡は、字の如し。又去聲。

昭公出故、季平子禱于煬公。九月、立煬宮。平子逐君、懼而請禱於煬公、昭公死於外。自以爲獲福。故立其宮。
【読み】
昭公出づる故に、季平子煬公に禱る。九月、煬宮を立つ。平子君を逐いて、懼れて煬公に請禱して、昭公外に死す。自ら福を獲たりと以爲えり。故に其の宮を立つ。

周鞏簡公棄其子弟、而好用遠人。簡公、周卿士。遠人、異族也。爲明年、鞏氏賊簡公張本。○好、去聲。
【読み】
周の鞏簡公[きょうかんこう]其の子弟を棄てて、遠人を用ゆることを好む。簡公は、周の卿士。遠人は、異族なり。明年、鞏氏簡公を賊する爲の張本なり。○好は、去聲。


〔經〕二年、春、王正月。夏、五月、壬辰、雉門及兩觀災。無傳。雉門、公宮之南門。兩觀、闕也。天火曰災。○觀、古亂反。
【読み】
〔經〕二年、春、王の正月。夏、五月、壬辰[みずのえ・たつ]、雉門と兩觀と災あり。傳無し。雉門は、公宮の南門。兩觀は、闕なり。天火を災と曰う。○觀は、古亂反。

秋、楚人伐吳。囊瓦稱人、見誘以敗軍。
【読み】
秋、楚人吳を伐つ。囊瓦人と稱するは、誘かれて以て軍を敗ればなり。

冬、十月、新作雉門及兩觀。無傳。
【読み】
冬、十月、新たに雉門と兩觀とを作る。傳無し。

〔傳〕二年、夏、四月、辛酉、鞏氏之羣子弟賊簡公。傳言棄親用疏、所以敗也。
【読み】
〔傳〕二年、夏、四月、辛酉[かのと・とり]、鞏氏[きょうし]の羣子弟簡公を賊す。傳親を棄て疏を用ゆるは、敗るる所以なるを言うなり。

桐叛楚。桐、小國。廬江舒縣西南有桐郷。
【読み】
桐楚に叛く。桐は、小國。廬江舒縣の西南に桐郷有り。

吳子使舒鳩氏誘楚人、舒鳩、楚屬國。
【読み】
吳子舒鳩氏をして楚人を誘かしめて、舒鳩は、楚の屬國。

曰、以師臨我。敎舒鳩誘楚、使以師臨吳。
【読み】
曰く、師を以て我に臨ませよ。舒鳩に敎えて楚を誘かせて、師を以て吳に臨ましむ。

我伐桐。爲我使之無忌。吳伐桐也。僞若畏楚師之臨己、而爲伐其叛國以取媚者也。欲使楚不忌吳。所謂多方以誤之。○爲我、于僞反。下同。
【読み】
我れ桐を伐たん。我が爲に之をして忌むこと無からしめよ、と。吳桐を伐つなり。僞りて楚の師の己に臨むを畏れて、爲に其の叛國を伐ちて以て媚を取る者の若くす。楚をして吳を忌まざらしめんと欲するなり。所謂多方以て之を誤らすなり。○爲我は、于僞反。下も同じ。

秋、楚囊瓦伐吳、師于豫章。從舒鳩言。
【読み】
秋、楚の囊瓦吳を伐ちて、豫章に師す。舒鳩の言に從う。

吳人見舟于豫章、僞將爲楚伐桐。○見、賢遍反。
【読み】
吳人舟を豫章に見[しめ]して、僞りて將に楚の爲に桐を伐たんとす。○見は、賢遍反。

而潛師于巢。實欲以擊楚。
【読み】
潛[ひそ]かに巢に師す。實は以て楚を擊たんと欲す。

冬、十月、吳軍楚師于豫章、敗之、楚不忌故。
【読み】
冬、十月、吳楚の師に豫章に軍して、之を敗り、楚忌まざる故なり。

遂圍巢、克之、獲楚公子繁。繁、守巢大夫。
【読み】
遂に巢を圍みて、之に克ち、楚の公子繁を獲たり。繁は、巢を守る大夫。

邾莊公與夷射姑飮酒。私出。射姑、邾大夫。出、辟酒。○射、音亦。一音夜。
【読み】
邾の莊公夷射姑[いえきこ]と酒を飮む。私に出づ。射姑は、邾の大夫。出づるは、酒を辟くるなり。○射は、音亦。一に音夜。

閽乞肉焉。奪之杖以敲之。奪閽杖以敲閽頭也。爲明年、邾子卒傳。○敲、苦孝反。又苦學反。又口交反。
【読み】
閽肉を乞う。之が杖を奪いて以て之を敲[たた]きぬ。閽が杖を奪いて以て閽が頭を敲くなり。明年、邾子卒する爲の傳なり。○敲は、苦孝反。又苦學反。又口交反。


〔經〕三年、春、王正月、公如晉。至河乃復。無傳。
【読み】
〔經〕三年、春、王の正月、公晉に如く。河に至りて乃ち復る。傳無し。

二月、辛卯、邾子穿卒。再同盟。
【読み】
二月、辛卯[かのと・う]、邾子穿卒す。再び同盟す。

夏、四月。秋、葬邾莊公。六月乃葬。緩。
【読み】
夏、四月。秋、邾の莊公を葬る。六月にして乃ち葬る。緩[おそ]きなり。

冬、仲孫何忌及邾子盟于拔。拔、地闕。○拔、皮八反。
【読み】
冬、仲孫何忌邾子と拔に盟う。拔は、地闕く。○拔は、皮八反。

〔傳〕三年、春、二月、辛卯、邾子在門臺、門上有臺。
【読み】
〔傳〕三年、春、二月、辛卯、邾子門臺に在り、門上に臺有り。

臨廷。閽以缾水沃廷。邾子望見之、怒。閽曰、夷射姑旋焉。旋、小便。
【読み】
廷に臨む。閽缾水[へいすい]を以て廷に沃[そそ]ぐ。邾子之を望み見て、怒る。閽曰く、夷射姑旋[ゆばり]す、と。旋は、小便。

命執之。見其不潔、執射姑。
【読み】
命じて之を執えしむ。其の不潔を見て、射姑を執えんとす。

弗得。滋怒。自投于牀、廢于鑪炭、爛遂卒。廢、隋也。○鑪、力吳反。隋、徒火反。
【読み】
得ず。滋々怒る。自ら牀より投じて、鑪炭に廢[お]ち、爛れて遂に卒す。廢は、隋[お]つるなり。○鑪は、力吳反。隋は、徒火反。

先葬以車五乘・殉五人。欲藏中之潔。故先内車及殉、別爲便房。蓋其遺命。○先、悉薦反。又如字。藏、才浪反。
【読み】
葬に先んずるに車五乘・殉五人を以てす。藏中の潔を欲す。故に先ず車と殉とを内れ、別に便房を爲す。蓋し其れ遺命ならん。○先は、悉薦反。又字の如し。藏は、才浪反。

莊公卞急而好潔。故及是。卞、躁疾也。
【読み】
莊公卞急[べんきゅう]にして潔を好む。故に是に及べり。卞は、躁疾なり。

秋、九月、鮮虞人敗晉師于平中、平中、晉地。
【読み】
秋、九月、鮮虞人晉の師を平中に敗り、平中は、晉の地。

獲晉觀虎。恃其勇也。爲五年、士鞅圍鮮虞張本。
【読み】
晉の觀虎を獲たり。其の勇を恃めばなり。五年、士鞅鮮虞を圍む爲の張本なり。

冬、盟于郯、郯、卽拔也。
【読み】
冬、郯[たん]に盟うは、郯は、卽ち拔なり。

脩邾好也。公卽位。故脩好。
【読み】
邾の好を脩むるなり。公位に卽く。故に好を脩む。

蔡昭侯爲兩佩與兩裘、佩、佩玉也。
【読み】
蔡の昭侯兩佩と兩裘とを爲りて、佩は、佩玉なり。

以如楚、獻一佩一裘於昭王。昭王服之以享蔡侯。蔡侯亦服其一。子常欲之。弗與。三年止之。唐成公如楚。有兩肅爽馬。子常欲之。成公、唐惠侯之後。肅爽、駿馬名。○肅、如字。又所六反。爽、音霜。
【読み】
以て楚に如き、一佩一裘を昭王に獻ず。昭王之を服して以て蔡侯を享す。蔡侯も亦其の一を服す。子常之を欲す。與えず。三年之を止む。唐の成公楚に如く。兩つの肅爽馬有り。子常之を欲す。成公は、唐の惠侯の後。肅爽は、駿馬の名。○肅は、字の如し。又所六反。爽は、音霜。

弗與。亦三年止之。
【読み】
與えず。亦三年之を止む。

唐人或相與謀、請代先從者。許之。飮先從者酒、醉之、竊馬而獻之子常。子常歸唐侯。自拘於司敗、竊馬者自拘。○從、才用反。飮、於鴆反。
【読み】
唐人或ひと相與に謀りて、先の從者に代わらんと請う。之を許す。先の從者に酒を飮ませて、之を醉わせ、馬を竊みて之を子常に獻ず。子常唐侯を歸す。自ら司敗に拘われて、馬を竊む者自ら拘わる。○從は、才用反。飮は、於鴆反。

曰、君以弄馬之故、隱君身、隱、憂約也。
【読み】
曰く、君馬を弄ぶの故を以て、君の身を隱[いた]ましめ、隱は、憂約なり。

棄國家。羣臣請相夫人以償馬。必如之。相、助也。夫人、謂養馬者。○相、息亮反。夫、音扶。
【読み】
國家を棄てんとせり。羣臣請う、夫の人を相けて以て馬を償わん。必ず之の如きをせん、と。相は、助くなり。夫の人は、馬を養う者を謂う。○相は、息亮反。夫は、音扶。

唐侯曰、寡人之過也。二三子無辱。皆賞之。
【読み】
唐侯曰く、寡人の過ちなり。二三子辱とすること無かれ、と。皆之を賞す。

蔡人聞之、固請而獻佩于子常。子常朝、見蔡侯之徒、命有司曰、蔡君之久也、官不共也。言楚所以禮遣蔡侯之物、不共備故。○共、音恭。
【読み】
蔡人之を聞きて、固く請いて佩を子常に獻ず。子常朝し、蔡侯の徒を見、有司に命じて曰く、蔡君の久しきや、官共せざればなり。言うこころは、楚蔡侯を禮し遣る所以の物、共備せざる故なり。○共は、音恭。

明日禮不畢、將死。遣蔡侯之禮。
【読み】
明日禮畢わらずんば、將に死せんとす、と。蔡侯を遣るの禮。

蔡侯歸。及漢、執玉而沈曰、余所有濟漢而南者、有若大川。自誓言、若復渡漢、當受禍。明如大川。○沈、音鴆。
【読み】
蔡侯歸る。漢に及び、玉を執りて沈めて曰く、余漢を濟りて南すること有る所の者あらば、大川の若きこと有らん、と。自ら誓言すらく、若し復漢を渡らば、當に禍を受くべし。明らかなること大川の如し、と。○沈は、音鴆。

蔡侯如晉、以其子元與其大夫之子爲質焉、而請伐楚。爲明年、會召陵張本。
【読み】
蔡侯晉に如き、其の子元と其の大夫の子とを以て質と爲して、楚を伐たんことを請う。明年、召陵に會する爲の張本なり。


〔經〕四年、春、王二月、癸巳、陳侯吳卒。無傳。未同盟、而赴以名。癸巳、正月七日。書二月從赴。
【読み】
〔經〕四年、春、王の二月、癸巳[みずのと・み]、陳侯吳卒す。傳無し。未だ同盟せずして、赴[つ]ぐるに名を以てす。癸巳は、正月七日。二月に書すは赴ぐるに從うなり。

三月、公會劉子・晉侯・宋公・蔡侯・衛侯・陳子・鄭伯・許男・曹伯・莒子・邾子・頓子・胡子・滕子・薛伯・杞伯・小邾子・齊國夏于召陵、侵楚。於召陵先行會禮、入楚竟。故書侵。
【読み】
三月、公劉子・晉侯・宋公・蔡侯・衛侯・陳子・鄭伯・許男・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]・頓子・胡子・滕子・薛伯・杞伯・小邾子・齊の國夏に召陵に會して、楚を侵す。召陵に於て先ず會禮を行いて、楚の竟に入る。故に侵を書す。

夏、四月、庚辰、蔡公孫姓帥師滅沈。以沈子嘉歸、殺之。五月、公及諸侯盟于皐鼬。召陵會劉子諸侯。總言之也。繁昌縣東南有城皐亭。復稱公者、會盟異處故。○姓、音生。鼬、由又反。
【読み】
夏、四月、庚辰[かのえ・たつ]、蔡の公孫姓師を帥いて沈[しん]を滅ぼす。沈子嘉を以[い]て歸り、之を殺す。五月、公諸侯と皐鼬[こうゆう]に盟う。召陵の會の劉子諸侯なり。之を總言するなり。繁昌縣の東南に城皐亭有り。復公を稱する者は、會盟處を異にする故なり。○姓は、音生。鼬は、由又反。

杞伯成卒于會。無傳。
【読み】
杞伯成會に卒す。傳無し。

六月、葬陳惠公。無傳。
【読み】
六月、陳の惠公を葬る。傳無し。

許遷于容城。無傳。
【読み】
許容城に遷る。傳無し。

秋、七月、公至自會。無傳。
【読み】
秋、七月、公會より至る。傳無し。

劉卷卒。無傳。卽劉蚠也。劉子奉命、出盟召陵。死則天王爲告同盟。故不具爵。○卷、音權。一眷免反。蚠、扶粉反。
【読み】
劉卷卒す。傳無し。卽ち劉蚠[りゅうふん]なり。劉子命を奉じて、出でて召陵に盟う。死すれば則ち天王爲に同盟に告ぐ。故に爵を具えず。○卷は、音權。一に眷免反。蚠は、扶粉反。

葬杞悼公。無傳。
【読み】
杞の悼公を葬る。傳無し。

楚人圍蔡。不服故也。
【読み】
楚人蔡を圍む。服せざる故なり。

晉士鞅・衛孔圉帥師伐鮮虞。無傳。孔圉、孔羈孫。士鞅、卽范鞅。
【読み】
晉の士鞅・衛の孔圉師を帥いて鮮虞を伐つ。傳無し。孔圉は、孔羈の孫。士鞅は、卽ち范鞅。

葬劉文公。無傳。
【読み】
劉文公を葬る。傳無し。

冬、十有一月、庚午、蔡侯以吳子及楚人戰于柏舉。楚師敗績。師能左右之曰以。皆陳曰戰。大崩曰敗績。吳爲蔡討楚、從蔡計謀。故書蔡侯以吳子。言能左右之也。囊瓦稱人、貪以致敗、不能死難。罪賤之。柏舉、楚地。昭三十一年傳曰、六年十二月庚辰、吳其入郢。今以十一月者、幷數閏。○陳、直覲反。
【読み】
冬、十有一月、庚午[かのえ・うま]、蔡侯吳子を以[い]て楚人と柏舉に戰う。楚の師敗績す。師能く之を左右するを以ると曰う。皆陳するを戰うと曰う。大いに崩るるを敗績と曰う。吳蔡の爲に楚を討じて、蔡の計謀に從う。故に蔡侯吳子を以てと書す。能く之を左右するを言うなり。囊瓦人と稱するは、貪りて以て敗を致し、難に死すること能わず。罪して之を賤しむなり。柏舉は、楚の地。昭三十一年の傳に曰く、六年十二月庚辰、吳其れ郢[えい]に入らん、と。今十一月を以てするは、閏を幷せ數うるなり。○陳は、直覲反。

楚囊瓦出奔鄭。書名、惡之。○惡、烏路反。
【読み】
楚の囊瓦出でて鄭に奔る。名を書すは、之を惡みてなり。○惡は、烏路反。

庚辰、吳入郢。弗地曰入。吳不稱子、史畧文。
【読み】
庚辰、吳郢[えい]に入る。地もたざるを入ると曰う。吳子と稱せざるは、史の畧文なり。

〔傳〕四年、春、三月、劉文公合諸侯于召陵、謀伐楚也。文公、王官伯也。晉人假王命以討楚之久留蔡侯。故曰文公合諸侯。
【読み】
〔傳〕四年、春、三月、劉文公諸侯を召陵に合わすは、楚を伐たんことを謀るなり。文公は、王官の伯なり。晉人王命を假りて以て楚の久しく蔡侯を留めしを討ず。故に文公諸侯を合わすと曰う。

晉荀寅求貨於蔡侯。弗得。言於范獻子曰、國家方危、諸侯方貳、將以襲敵。不亦難乎。水潦方降、疾瘧方起、中山不服。中山、鮮虞。
【読み】
晉の荀寅貨を蔡侯に求む。得ず。范獻子に言いて曰く、國家方に危うく、諸侯方に貳ありて、將に以て敵を襲わんとす。亦難からずや。水潦方に降り、疾瘧方に起こり、中山服せず。中山は、鮮虞。

棄盟取怨、無損於楚、晉・楚同盟。伐之爲取怨。
【読み】
盟を棄てて怨みを取り、楚に損無くして、晉・楚は同盟なり。之を伐つは怨みを取ると爲す。

而失中山。不如辭蔡侯。吾自方城以來、楚未可以得志。晉敗楚侵方城、在襄十六年。
【読み】
中山を失わん。蔡侯に辭するに如かず。吾れ方城より以來、楚には未だ以て志を得可からず。晉楚を敗り方城を侵せしは、襄十六年に在り。

祗取勤焉。乃辭蔡侯。
【読み】
祗[まさ]に勤めを取らん、と。乃ち蔡侯に辭す。

晉人假羽旄於鄭。鄭人與之。析羽爲旌。王者遊車之所建。鄭私有之。因謂之羽旄。借觀之。○祗、音支。
【読み】
晉人羽旄[うぼう]を鄭に假る。鄭人之を與う。析羽を旌と爲す。王者遊車の建つる所。鄭私に之れ有り。因りて之を羽旄と謂う。借りて之を觀るなり。○祗は、音支。

明日或旆以會。或、賤者也。繼旐曰旆。令賤人施其旆、執以從會、示卑鄭。○旆、步貝反。令、力呈反。
【読み】
明日或ひと旆[はい]して以て會す。或ひととは、賤者なり。旐[ちょう]に繼ぐを旆と曰う。賤人をして其の旆を施し、執りて以て會に從わしむるは、鄭を卑しむことを示すなり。○旆は、步貝反。令は、力呈反。

晉於是乎失諸侯。傳言晉無禮所以遂弱。
【読み】
晉是に於て諸侯を失えり。傳晉無禮にして遂に弱き所以を言う。

將會。衛子行敬子言於靈公、子行敬子、衛大夫。
【読み】
將に會せんとす。衛の子行敬子靈公に言いて、子行敬子は、衛の大夫。

曰、會同難。難得宜。
【読み】
曰く、會同は難し。宜しきを得難し。

嘖有煩言、莫之治也。嘖、至也。煩言、忿爭也。○嘖、仕責反。一音責。
【読み】
煩言有るに嘖[いた]らば、之を治むること莫けん。嘖[さく]は、至るなり。煩言は、忿爭なり。○嘖は、仕責反。一音責。

其使祝佗從。祝佗、大祝子魚。○佗、徒何反。從、才用反。
【読み】
其れ祝佗をして從わしめよ、と。祝佗は、大祝子魚。○佗は、徒何反。從は、才用反。

公曰、善。乃使子魚。子魚辭曰、臣展四體、以率舊職、猶懼不給而煩刑書。若又共二、共二職。○共、音恭。
【読み】
公曰く、善し、と。乃ち子魚をせしむ。子魚辭して曰く、臣四體を展べて、以て舊職に率うだも、猶給せずして刑書を煩わさんことを懼る。若し又二に共せば、二職に共す。○共は、音恭。

徼大罪也。且夫祝、社稷之常隸也。隸、賤臣也。
【読み】
大罪を徼[もと]むるなり。且つ夫れ祝は、社稷の常隸なり。隸は、賤臣なり。

社稷不動、祝不出竟、官之制也。社稷動、謂國遷。
【読み】
社稷動かざれば、祝竟を出でざるは、官の制なり。社稷動くとは、國の遷るを謂う。

君以軍行、祓社釁鼓、師出、先有事。祓禱於社。謂之宜社。於是殺牲以血塗鼓鼙、爲釁鼓。○祓、音弗。又音廢。
【読み】
君以て軍行すれば、社に祓いし鼓に釁[ちぬ]り、師出づれば、先ず事有り。社に祓禱す。之を宜社と謂う。是に於て牲を殺して血を以て鼓鼙[こへい]に塗るを、釁鼓[きんこ]と爲す。○祓は、音弗。又音廢。

祝奉以從、奉社主也。○從、如字。又才用反。
【読み】
祝奉じて以て從い、社主を奉ずるなり。○從は、字の如し。又才用反。

於是乎出竟。若嘉好之事、謂朝會。○好、呼報反。
【読み】
是に於て竟を出づ。若し嘉好の事は、朝會を謂う。○好は、呼報反。

君行師從、二千五百人。
【読み】
君行けば師從い、二千五百人。

卿行旅從。五百人。
【読み】
卿行けば旅從う。五百人。

臣無事焉。公曰、行也。
【読み】
臣は事無し、と。公曰く、行け、と。

及皐鼬、將盟。
【読み】
皐鼬に及び、將に盟わんとす。

將長蔡於衛。欲令蔡先衛歃。○長、丁丈反。先、悉薦反。下先衛同。
【読み】
將に蔡を衛より長とせんとす。蔡をして衛に先だちて歃[すす]らしめんと欲す。○長は、丁丈反。先は、悉薦反。下の先衛も同じ。

衛侯使祝佗私於萇弘曰、聞諸道路、不知信否。若聞蔡將先衛。信乎。萇弘曰、信。蔡叔、康叔之兄也。蔡叔、周公兄。康叔、周公弟。
【読み】
衛侯祝佗をして萇弘に私せしめて曰く、諸を道路に聞くも、信否を知らず。蔡將に衛に先だたんとすと聞くが若し。信なるか、と。萇弘曰く、信なり。蔡叔は、康叔の兄なり。蔡叔は、周公の兄。康叔は、周公の弟。

先衛、不亦可乎。子魚曰、以先王觀之、則尙德也。昔武王克商、成王定之、選建明德、以藩屛周。故周公相王室以尹天下、尹、正也。
【読み】
衛に先だたんこと、亦可ならずや、と。子魚曰く、先王を以て之を觀れば、則ち德を尙べり。昔武王商に克ち、成王之を定め、明德を選び建てて、以て周に藩屛とす。故に周公は王室を相けて以て天下を尹[ただ]して、尹は、正すなり。

於周爲睦、睦、親厚也。以盛德見親厚。
【読み】
周に於て睦爲りしかば、睦は、親厚なり。盛德を以て親厚せらる。

分魯公以大路・大旂・ 魯公、伯禽也。此大路、金路。錫同姓諸侯車也。交龍爲旂。周禮、同姓以封。○分、扶問反。下竝同。
【読み】
魯公に分するに大路・大旂[たいき]・ 魯公は、伯禽なり。此の大路は、金路。同姓の諸侯に錫うの車なり。交龍を旂と爲す。周禮に、同姓以て封ず、と。○分は、扶問反。下も竝同じ。

夏后氏之璜・ 璜、美玉名。
【読み】
夏后氏の璜[こう]・ 璜は、美玉の名。

封父之繁弱・ 封父、古諸侯也。繁弱、大弓名。○繁、扶元反。
【読み】
封父の繁弱・ 封父は、古の諸侯なり。繁弱は、大弓の名。○繁は、扶元反。

殷民六族、條氏・徐氏・蕭氏・索氏・長勺氏・尾勺氏、使帥其宗氏、輯其分族、將其類醜、醜、衆也。○索、素各反。勺、市灼反。輯、音集。又音緝。
【読み】
殷民の六族、條氏・徐氏・蕭氏・索氏・長勺氏・尾勺氏を以てし、其の宗氏を帥い、其の分族を輯[やわ]らげ、其の類醜を將[ひき]いて、醜は、衆なり。○索は、素各反。勺は、市灼反。輯は、音集。又音緝。

以法則周公、用卽命于周、卽、就也。使六族就周、受周公之法制。
【読み】
以て周公に法則して、用て命に周に卽かしめ、卽は、就くなり。六族をして周に就きて、周公の法制を受けしむ。

是使之職事于魯、共魯公之職事。
【読み】
是に之をして魯に職事して、魯公の職事に共す。

以昭周公之明德、昭、顯也。
【読み】
以て周公の明德を昭[あらわ]さしめて、昭は、顯すなり。

分之土田陪敦、陪、增也。敦、厚也。○陪、步囘反。
【読み】
之に土田の陪敦なると、陪は、增すなり。敦は、厚きなり。○陪は、步囘反。

祝・宗・卜・史、大祝・宗人・大卜・大史。凡四官。
【読み】
祝・宗・卜・史、大祝・宗人・大卜・大史。凡そ四官。

備物・典策、典策、春秋之制。
【読み】
備物・典策、典策は、春秋の制。

官司彝器、官司、百官也。彝器、常用器。
【読み】
官司の彝器[いき]とを分して、官司は、百官なり。彝器は、常用の器。

因商奄之民、商奄、國名也。與四國流言、或逬散在魯。皆令卽屬魯懷柔之。○迸、彼諍反。
【読み】
商奄の民に因りて、商奄は、國の名なり。四國と流言し、或は逬散[ほうさん]して魯に在り。皆卽きて魯に屬して之を懷柔せしむ。○迸は、彼諍反。

命以伯禽、伯禽、周公世子。時周公唯遣伯禽之國。故皆以付伯禽。
【読み】
命ずるに伯禽を以てして、伯禽は、周公の世子。時に周公唯伯禽をして國に之かしむ。故に皆以て伯禽に付す。

而封於少皞之虛。少皞虛、曲阜也。在魯城内。○虛、起居反。
【読み】
少皞の虛に封ぜり。少皞の虛は、曲阜なり。魯城の内に在り。○虛は、起居反。

分康叔、康叔、衛之祖。
【読み】
康叔に分するに、康叔は、衛の祖。

以大路・少帛・綪茷旃旌・ 少帛、雜帛也。綪茷、大赤。取染草名也。通帛爲旃、析羽爲旌。○綪、七見反。茷、步貝反。又音吠。
【読み】
大路・少帛・綪茷[せんはい]の旃旌・ 少帛は、雜帛なり。綪茷は、大赤。染草の名を取るなり。通帛を旃と爲し、析羽を旌と爲す。○綪は、七見反。茷は、步貝反。又音吠。

大呂・ 鍾名。
【読み】
大呂・ 鍾の名。

殷民七族、陶氏・施氏・繁氏・錡氏・樊氏・饑氏・終葵氏、封畛土畧、自武父以南、及圃田之北竟、畛、塗所徑也。畧、界也。武父、衛北界。圃田、鄭藪名。○繁、步何反。錡、魚綺反。畛、之忍反。一音眞。徑、音經。
【読み】
殷民の七族、陶氏・施氏・繁氏・錡氏・樊氏・饑氏・終葵氏を以てして、土畧を封畛[ほうしん]すること、武父以南より、圃田の北竟に及ぶまでをし、畛は、塗[みち]の徑る所なり。畧は、界なり。武父は、衛の北界。圃田は、鄭の藪の名。○繁は、步何反。錡は、魚綺反。畛は、之忍反。一に音眞。徑は、音經。

取於有閻之土、以共王職、有閻、衛所受朝宿邑。蓋近京畿。
【読み】
有閻の土に取りて、以て王職に共せしめ、有閻は、衛の受くる所の朝宿の邑。蓋し京畿に近きならん。

取於相土之東都、以會王之東蒐。爲湯沐邑、王東巡守、以助祭泰山。○相、息亮反。
【読み】
相土の東都に取りて、以て王の東蒐に會せしむ。湯沐の邑と爲して、王東に巡守すれば、以て泰山に助祭す。○相は、息亮反。

耼季授土、耼季、周公弟。司空。○耼、乃甘反。
【読み】
耼季[たんき]土を授け、耼季は、周公の弟。司空。○耼は、乃甘反。

陶叔授民、陶叔、司徒。
【読み】
陶叔民を授け、陶叔は、司徒。

命以康誥、而封於殷虛。康誥、周書。殷虛、朝歌也。
【読み】
命ずるに康誥を以てして、殷の虛に封ぜり。康誥は、周書。殷の虛は、朝歌なり。

皆啓以商政、疆以周索。皆魯・衛也。啓、開也。居殷故地、因其風俗、開用其政、疆理土地、以周法。索、法也。
【読み】
皆啓[ひら]くに商の政を以てして、疆するは周の索を以てせしむ。魯・衛に皆とするなり。啓は、開くなり。殷の故地に居れば、其の風俗に因りて、開くに其の政を用い、土地を疆理するは、周の法を以てするなり。索は、法なり。

分唐叔、唐叔、晉之祖。
【読み】
唐叔に分するに、唐叔は、晉の祖。

以大路・密須之鼓・ 密須、國名。
【読み】
大路・密須の鼓・ 密須は、國の名。

闕鞏・ 甲名。○鞏、九勇反。
【読み】
闕鞏・ 甲の名。○鞏は、九勇反。

沽洗・ 鍾名。○洗、息典反。
【読み】
沽洗・ 鍾の名。○洗は、息典反。

懷姓九宗・職官五正、懷姓、唐之餘民。九宗、一姓爲九族。職官五正、五官之長。○長、丁丈反。下長衛同。
【読み】
懷姓の九宗・職官の五正を以てし、懷姓は、唐の餘民。九宗は、一姓九族と爲れるなり。職官の五正は、五官の長なり。○長は、丁丈反。下の長衛も同じ。

命以唐誥、而封於夏虛、唐誥、誥命篇名也。夏虛、大夏。今大原晉陽也。
【読み】
命ずるに唐誥を以てして、夏の虛に封じ、唐誥は、誥命の篇名なり。夏の虛は、大夏。今の大原晉陽なり。

啓以夏政、亦因夏風俗、開用其政。
【読み】
啓くに夏の政を以てし、亦夏の風俗に因り、開くに其の政を用ゆ。

疆以戎索。大原近戎而寒。不與中國同。故自以戎法。
【読み】
疆するは戎の索を以てせしむ。大原は戎に近くして寒し。中國と同じからず。故に自ら戎の法を以てす。

三者皆叔也。而有令德。故昭之以分物。不然、文・武・成・康之伯猶多、而不獲是分也、唯不尙年也。
【読み】
三つの者は皆叔なり。而れども令德有り。故に之を昭すに分物を以てせり。然らずんば、文・武・成・康の伯猶多くして、是の分を獲ざるや、唯年を尙ばざればなり。

管・蔡啓商、惎閒王室、惎、毒也。周公攝政。管叔・蔡叔開道紂子祿父、以毒亂王室。○惎、音忌。閒、去聲。
【読み】
管・蔡商を啓きて、王室を惎閒[きかん]せしかば、惎は、毒なり。周公攝政す。管叔・蔡叔紂が子祿父に開道して、以て王室を毒亂す。○惎は、音忌。閒は、去聲。

王於是乎殺管叔而蔡蔡叔、周公稱王命、以討二叔。蔡、放也。○蔡蔡、上素達反。下如字。
【読み】
王是に於て管叔を殺して蔡叔を蔡[はな]つに、周公王命を稱して、以て二叔を討ず。蔡は、放つなり。○蔡蔡は、上は素達反。下は字の如し。

以車七乘・徒七十人。與蔡叔車徒而放之。
【読み】
車七乘・徒七十人を以てせり。蔡叔に車徒を與えて之を放つ。

其子蔡仲改行帥德、周公舉之以爲己卿士、爲周公臣。
【読み】
其の子蔡仲行いを改め德に帥[したが]いしかば、周公之を舉げて以て己が卿士と爲し、周公の臣と爲す。

見諸王、而命之以蔡。命爲蔡侯。○見、賢遍反。
【読み】
諸を王に見えしめて、之に命ずるに蔡を以てせり。命じて蔡侯と爲す。○見は、賢遍反。

其命書云、王曰、胡、無若爾考之違王命也。胡、蔡仲名。
【読み】
其の命書に云く、王曰く、胡よ、爾の考の王命に違えるが若くなること無かれ、と。胡は、蔡仲の名。

若之何其使蔡先衛也。
【読み】
之を若何ぞ其れ蔡をして衛に先だたしめん。

武王之母弟八人、周公爲大宰、康叔爲司寇、耼季爲司空、五叔無官。豈尙年哉。五叔、管叔鮮・蔡叔度・成叔武・霍叔處・毛叔耼也。○先、悉薦反。
【読み】
武王の母弟八人、周公は大宰爲り、康叔は司寇爲り、耼季は司空爲り、五叔は官無し。豈年を尙ぶならんや。五叔は、管叔鮮・蔡叔度・成叔武・霍叔處・毛叔耼なり。○先は、悉薦反。

曹、文之昭也、文王子。與周公異母。○昭、上饒反。
【読み】
曹は、文の昭にして、文王の子。周公と異母なり。○昭は、上饒反。

晉、武之穆也、武王子。
【読み】
晉は、武の穆なるも、武王の子。

曹爲伯甸。非尙年也。以伯爵居甸服、言小。
【読み】
曹は伯甸[はくてん]爲り。年を尙べるに非ざるなり。伯爵を以て甸服に居るは、小なるを言う。

今將尙之、是反先王也。
【読み】
今將に之を尙ばんとすれば、是れ先王に反くなり。

晉文公爲踐土之盟、衛成公不在。夷叔其母弟也、猶先蔡。踐土・召陵二會、經書蔡在衛上。霸主以國大小之序也。子魚所言、盟歃之次。
【読み】
晉の文公踐土の盟を爲せしとき、衛の成公在らず。夷叔は其の母弟なるも、猶蔡に先だてり。踐土・召陵の二會には、經に書して蔡衛の上に在り。霸主は國の大小の序を以てするなり。子魚が言う所は、盟歃の次なり。

其載書云、王若曰、晉重・ 文公。○重、直龍反。
【読み】
其の載書に云う、王若[かくのごと]く曰く、晉の重・ 文公。○重は、直龍反。

魯申・ 僖公。
【読み】
魯の申・ 僖公。

衛武・ 叔武。
【読み】
衛の武・ 叔武。

蔡甲午・ 莊侯。
【読み】
蔡の甲午・ 莊侯。

鄭捷・ 文公。
【読み】
鄭の捷・ 文公。

齊潘・ 昭公。
【読み】
齊の潘・ 昭公。

宋王臣・ 成公。○王、如字。或作壬。如林反。
【読み】
宋の王臣・ 成公。○王は、字の如し。或は壬に作る。如林反。

莒期。玆丕公也。齊序鄭下、周之宗盟、異姓爲後。
【読み】
莒の期、と。玆丕公なり。齊鄭の下に序ずるは、周の宗盟は、異姓を後と爲す。

藏在周府。可覆視也。吾子欲復文・武之畧、畧、道也。
【読み】
藏めて周府に在り。覆視す可し。吾子文・武の畧を復せんと欲して、畧は、道なり。

而不正其德、將如之何。
【読み】
其の德を正さずんば、將[はた]之を如何にせん、と。

萇弘說、告劉子與范獻子謀之、乃長衛侯於盟。
【読み】
萇弘說び、劉子と范獻子とに告げて之を謀り、乃ち衛侯を盟に長とす。

反自召陵。鄭子大叔未至而卒。晉趙簡子爲之臨、甚哀。曰、黃父之會、在昭二十五年。○說、音悅。臨、力鴆反。
【読み】
召陵より反る。鄭の子大叔未だ至らずして卒す。晉の趙簡子之が爲に臨し、甚だ哀しむ。曰く、黃父の會に、昭二十五年に在り。○說は、音悅。臨は、力鴆反。

夫子語我九言曰、無始亂。無怙富。無恃寵。無違同。無敖禮。無驕能。以能驕人。○語、魚據反。敖、五報反。
【読み】
夫子我に九言を語げて曰く、亂を始むること無かれ。富を怙むこと無かれ。寵を恃むこと無かれ。同に違うこと無かれ。禮に敖ること無かれ。能に驕ること無かれ。能を以て人に驕るなり。○語は、魚據反。敖は、五報反。

無復怒。復、重也。○復、扶又反。
【読み】
怒りを復[かさ]ぬること無かれ。復は、重ぬるなり。○復は、扶又反。

無謀非德。非所謀也。
【読み】
非德を謀ること無かれ。謀る所に非ざるなり。

無犯非義。傳言簡子能用善言、所以遂興。
【読み】
非義を犯すこと無かれ、と。傳簡子能く善言を用いて、遂に興る所以を言う。

沈人不會于召陵。晉人使蔡伐之。夏、蔡滅沈。秋、楚爲沈故圍蔡。
【読み】
沈人召陵に會せず。晉人蔡をして之を伐たしむ。夏、蔡沈を滅ぼす。秋、楚沈の爲の故に蔡を圍む。

伍員爲吳行人以謀楚。楚之殺郤宛也、在昭二十七年。○員、音云。
【読み】
伍員[ごうん]吳の行人と爲りて以て楚を謀る。楚の郤宛を殺せるや、昭二十七年に在り。○員は、音云。

伯氏之族出。郤宛黨。
【読み】
伯氏の族出づ。郤宛の黨。

伯州犂之孫嚭爲吳大宰以謀楚。楚自昭王卽位、無歲不有吳師。蔡侯因之、以其子乾與其大夫之子爲質於吳。冬、蔡侯・吳子・唐侯伐楚。唐侯不書、兵屬於吳・蔡。○嚭、普鄙反。
【読み】
伯州犂の孫嚭[ひ]吳の大宰と爲りて以て楚を謀る。楚昭王の位に卽きしより、歲として吳の師有らざること無し。蔡侯之に因りて、其の子乾と其の大夫の子とを以て吳に質と爲す。冬、蔡侯・吳子・唐侯楚を伐つ。唐侯書さざるは、兵吳・蔡に屬すればなり。○嚭は、普鄙反。

舍舟于淮汭、吳乘舟從淮來、過蔡而舍之。○舍、音赦。又音捨。
【読み】
舟を淮汭に舍き、吳舟に乘りて淮より來り、蔡を過ぎて之を舍く。○舍は、音赦。又音捨。

自豫章與楚夾漢。豫章、漢東江北地名。
【読み】
豫章より楚と漢を夾む。豫章は、漢東江北の地の名。

左司馬戌謂子常曰、子沿漢而與之上下。沿、緣也。緣漢上下、遮使勿渡。
【読み】
左司馬戌子常に謂いて曰く、子漢に沿[よ]りて之と上下せよ。沿は、緣るなり。漢に緣りて上下して、遮りて渡ること勿からしむ。

我悉方城外以毀其舟、以方城外人、毀吳所舍舟。
【読み】
我れ方城の外を悉くして以て其の舟を毀り、方城外の人を以て、吳の舍く所の舟を毀るなり。

還塞大隧・直轅・冥阨。三者、漢東之隘道。○冥、如字。或作寘。阨、於懈反。
【読み】
還りて大隧・直轅・冥阨[めいあい]を塞がん。三つの者は、漢東の隘道。○冥は、字の如し。或は寘に作る。阨は、於懈反。

子濟漢而伐之。我自後擊之、必大敗之。旣謀而行。武城黑謂子常、黑、楚武城大夫。
【読み】
子漢を濟りて之を伐て。我れ後より之を擊たば、必ず大いに之を敗らん、と。旣に謀りて行く。武城黑子常に謂いて、黑は、楚の武城の大夫。

曰、吳用木也。我用革也。用、軍器。
【読み】
曰く、吳の用は木なり。我が用は革なり。用は、軍器。

不可久也。不如速戰。史皇謂子常、楚人惡子而好司馬。史皇、楚大夫。司馬、沈尹戌。
【読み】
久しくす可からざるなり。速やかに戰うに如かず、と。史皇子常に謂えらく、楚人子を惡みて司馬を好す。史皇は、楚の大夫。司馬は、沈尹戌。

若司馬毀吳舟于淮、塞城口而入、城口、三隘道之總名。
【読み】
若し司馬吳の舟を淮に毀り、城口を塞ぎて入らば、城口は、三隘道の總名。

是獨克吳也。子必速戰。不然不免。乃濟漢而陳、自小別至于大別、禹貢、漢水至大別、南入江。然則此二別、在江・夏界。○陳、直覲反。下陳于同。
【読み】
是れ獨り吳に克てるなり。子必ず速やかに戰え。然らずんば免れじ、と。乃ち漢を濟りて陳し、小別より大別に至るまで、禹貢に、漢水は大別に至り、南して江に入る、と。然らば則ち此の二別は、江・夏の界に在らん。○陳は、直覲反。下の陳于も同じ。

三戰。子常知不可、欲奔。知吳不可勝。
【読み】
三たび戰う。子常不可なるを知り、奔らんと欲す。吳の勝つ可からざるを知る。

史皇曰、安求其事、求知政事。
【読み】
史皇曰く、安くして其の事を求め、政事を知らんことを求む。

難而逃之、將何所入。子必死之。初罪必盡說。言致死以克吳、可以免貪賄致寇之罪。○難、乃旦反。
【読み】
難にして之を逃れば、將に何れ所に入らんとする。子必ず之に死ね。初罪必ず盡く說けん、と。言うこころは、死を致して以て吳に克たば、以て賄を貪り寇を致すの罪を免る可し。○難は、乃旦反。

十一月、庚午、二師陳于柏舉。經所以書戰。二師、吳・楚師。
【読み】
十一月、庚午、二師柏舉に陳す。經に戰を書す所以なり。二師は、吳・楚の師。

闔廬之弟夫槩王晨請於闔廬曰、楚瓦不仁。瓦、子常名。
【読み】
闔廬[こうりょ]の弟夫槩王晨に闔廬に請いて曰く、楚の瓦不仁なり。瓦は、子常の名。

其臣莫有死志。先伐之、其卒必奔。而後大師繼之、必克。弗許。夫槩王曰、所謂臣義而行、不待命者、其此之謂也。今日我死、楚可入也。以其屬五千、先擊子常之卒。子常之卒奔、楚師亂。吳師大敗之。子常奔鄭。史皇以其乘廣死。以戰死。○乘、繩證反。廣、古曠反。
【読み】
其の臣死志有ること莫し。先ず之を伐たば、其の卒必ず奔らん。而して後に大師之に繼かば、必ず克たん、と。許さず。夫槩王曰く、所謂臣は義にして行う、命を待たずとは、其れ此を謂うか。今日我れ死せば、楚には入る可し、と。其の屬五千を以て、先ず子常の卒を擊つ。子常の卒奔り、楚の師亂る。吳の師大いに之を敗る。子常鄭に奔る。史皇其の乘廣を以て死す。以て戰いて死す。○乘は、繩證反。廣は、古曠反。

吳從楚師及淸發。淸發、水名。
【読み】
吳楚の師を從[お]いて淸發に及ぶ。淸發は、水の名。

將擊之。夫槩王曰、困獸猶鬭。況人乎。若知不免而致死、必敗我。若使先濟者知免、後者慕之、蔑有鬭心矣。半濟而後可擊也。從之。又敗之。楚人爲食。吳人及之。奔食。而從之、敗諸雍澨、五戰及郢。奔食、食者走不陳。故在戰數。○澨、市制反。
【読み】
將に之を擊たんとす。夫槩王曰く、困しめば獸だも猶鬭う。況んや人をや。若し免れざることを知りて死を致さば、必ず我を敗らん。若し先ず濟る者は免るることを知り、後なる者に之を慕わしめば、鬭心有ること蔑[な]けん。半ば濟りて而して後に擊つ可し、と。之に從う。又之を敗る。楚人食を爲さんとす。吳人之に及ぶ。奔りつつ食らう。而して之を從いて、諸を雍澨[ようぜい]に敗り、五戰して郢に及ぶ。奔りつつ食らうとは、食らう者走りて陳せざるなり。故に戰の數に在らず。○澨は、市制反。
*頭注に、「按奔食二字句。林注、奔句、食而從之句。吳人食楚食而逐之也。」とある。

己卯、楚子取其妹季羋・畀我以出、涉雎。雎水、出新城昌魏縣、東南至枝江縣入江。是楚王西走。○羋、面爾反。楚姓。季羋・畀我、皆平王女也。一云、畀我、季羋之字。雎、七餘反。下同。
【読み】
己卯[つちのと・う]、楚子其の妹季羋[きび]・畀我[ひが]を取りて以て出でて、雎を涉る。雎水は、新城昌魏縣に出でて、東南して枝江縣に至りて江に入る。是れ楚王西に走るなり。○羋は、面爾反。楚の姓。季羋・畀我は、皆平王の女なり。一に云う、畀我は、季羋の字、と。雎は、七餘反。下も同じ。

鍼尹固與王同舟。王使執燧象以奔吳師。燒火燧繫象尾、使赴吳師、驚却之。○鍼、之林反。
【読み】
鍼尹固[しんいんこ]王と舟を同じくす。王燧象[すいぞう]を執りて以て吳の師に奔らしむ。火燧を燒きて象の尾に繫け、吳の師に赴きて、驚かして之を却けしむ。○鍼は、之林反。

庚辰、吳入郢、以班處宮。以尊卑班次、處楚王宮室。
【読み】
庚辰、吳郢に入り、班を以て宮に處る。尊卑の班次を以て、楚王の宮室に處る。

子山處令尹之宮。子山、吳王子。
【読み】
子山令尹の宮に處る。子山は、吳王の子。

夫槩王欲攻之。懼而去之。夫槩王入之。入令尹宮也。言吳無禮。所以不能遂克。
【読み】
夫槩王之を攻めんと欲す。懼れて之を去る。夫槩王之に入る。令尹の宮に入るなり。言うこころは、吳禮無し。遂に克つこと能わざる所以なり。

左司馬戌及息而還、息、汝南新息也。聞楚敗。故還。
【読み】
左司馬戌息に及びて還り、息は、汝南の新息なり。楚敗るると聞く。故に還る。

敗吳師于雍澨、傷。司馬先敗吳師、而身被創。○創、初良反。
【読み】
吳の師を雍澨に敗りて、傷つく。司馬先ず吳の師を敗りて、身創を被る。○創は、初良反。

初、司馬臣闔廬。故恥爲禽焉。司馬嘗在吳爲闔廬臣。是以今恥於見禽。
【読み】
初め、司馬闔廬に臣たり。故に禽と爲るを恥ず。司馬嘗て吳に在りて闔廬が臣爲り。是を以て今禽にせらるるを恥ず。

謂其臣曰、誰能免吾首。吳句卑曰、臣賤。可乎。司馬曰、我實失子。可哉。失不知子賢。○句、古侯反。
【読み】
其の臣に謂いて曰く、誰か能く吾が首を免れしめん、と。吳句卑[ごこうひ]曰く、臣は賤し。可ならんか、と。司馬曰く、我れ實に子を失えり。可なるかな、と。失して子が賢を知らず。○句は、古侯反。

三戰、皆傷。曰、吾不可用也已。句卑布裳、剄而裹之、司馬已死、剄取其首。○剄、古頂反。
【読み】
三たび戰い、皆傷つく。曰く、吾れ用ゆ可からざるのみ、と。句卑裳を布き、剄[くびは]ねて之を裹み、司馬已に死し、剄ねて其の首を取るなり。○剄[けい]は、古頂反。

藏其身、而以其首免。傳言司馬之忠壯。
【読み】
其の身を藏して、其の首を以て免る。傳司馬の忠壯を言う。

楚子涉雎濟江、入于雲中。入雲夢澤中。所謂江南之夢。○夢、如字。又音蒙。
【読み】
楚子雎を涉り江を濟り、雲中に入る。雲夢の澤中に入るなり。所謂江南の夢なり。○夢は、字の如し。又音蒙。

王寢。盜攻之、以戈擊王。王孫由于以背受之、中肩。王奔鄖。鍾建負季羋以從。鍾建、楚大夫。○鄖、音云。從、才用反。一如字。
【読み】
王寢ぬ。盜之を攻め、戈を以て王を擊つ。王孫由于背を以て之を受け、肩に中る。王鄖[うん]に奔る。鍾建季羋を負いて以て從う。鍾建は、楚の大夫。○鄖は、音云。從は、才用反。一に字の如し。

由于徐蘇而從。以背受戈。故當時悶絕。
【読み】
由于徐[ようや]くに蘇りて從う。背を以て戈を受く。故に當時悶絕す。

鄖公辛之弟懷將弑王曰、平王殺吾父。我殺其子、不亦可乎。辛、蔓成然之子、鬭辛也。昭十四年、楚平王殺成然。○殺、如字。又申志反。下同。
【読み】
鄖公辛の弟懷將に王を弑せんとして曰く、平王吾が父を殺せり。我れ其の子を殺さんこと、亦可ならずや、と。辛は、蔓成然の子、鬭辛なり。昭十四年、楚の平王成然を殺す。○殺は、字の如し。又申志反。下も同じ。

辛曰、君討臣、誰敢讎之。君命天也。若死天命、將誰讎。詩曰、柔亦不茹、剛亦不吐、不侮矜寡、不畏彊禦、唯仁者能之。詩、大雅。言仲山甫不辟彊陵弱。○茹、音汝。矜、古頑反。
【読み】
辛曰く、君の臣を討ずるは、誰か敢えて之を讎とせん。君の命は天なり。若し天命に死せば、將に誰を讎とせんとする。詩に曰く、柔も亦茹[く]らわず、剛も亦吐かず、矜寡を侮らず、彊禦を畏れずとは、唯仁者之を能くす。詩は、大雅。言うこころは、仲山甫彊を辟け弱を陵がず。○茹は、音汝。矜は、古頑反。

違彊陵弱、非勇也。乘人之約、非仁也。滅宗廢祀、非孝也。弑君、罪應滅宗。
【読み】
彊を違[さ]け弱を陵ぐは、勇に非ざるなり。人の約に乘ずるは、仁に非ざるなり。宗を滅ぼし祀を廢するは、孝に非ざるなり。君を弑せば、罪應に宗を滅ぼすべし。

動無令名、非知也。必犯是、余將殺女。鬭辛與其弟巢以王奔隨。
【読み】
動きて令名無きは、知に非ざるなり。必ず是を犯さんとせば、余將に女を殺さんとす、と。鬭辛其の弟巢と王を以[い]て隨に奔る。

吳人從之、謂隨人曰、周之子孫在漢川者、楚實盡之。天誘其衷、致罰於楚。而君又竄之。竄、匿也。○知、音智。女、音汝。
【読み】
吳人之を從い、隨人に謂いて曰く、周の子孫の漢川に在る者をば、楚實に之を盡くせり。天其の衷を誘[すす]めて、罰を楚に致せり。而るを君又之を竄[かく]す。竄は、匿すなり。○知は、音智。女は、音汝。

周室何罪。君若顧報周室、施及寡人、以獎天衷、獎、成也。○施、以豉反。
【読み】
周室何の罪ある。君若し周室を顧み報い、施きて寡人に及ぼして、以て天の衷を獎[な]さば、獎は、成すなり。○施は、以豉反。

君之惠也。漢陽之田、君實有之。
【読み】
君の惠なり。漢陽の田は、君實に之を有て、と。

楚子在公宮之北。隨公宮也。
【読み】
楚子公宮の北に在り。隨公の宮なり。

吳人在其南。子期似王。子期、昭王兄、公子結也。
【読み】
吳人其の南に在り。子期王に似たり。子期は、昭王の兄、公子結なり。

逃王而己爲王、曰、以我與之、王必免。隨人卜與之。不吉。乃辭吳曰、以隨之辟小、而密邇於楚、楚實存之、世有盟誓、至于今未改。若難而棄之、何以事君。執事之患、不唯一人。一人、楚王。○辟、音僻。難、去聲。
【読み】
王を逃して己王と爲りて、曰く、我を以て之に與えば、王必ず免れん、と。隨人之に與えんことを卜す。不吉なり。乃ち吳に辭して曰く、隨の辟小にして、楚に密邇するを以て、楚實に之を存して、世々盟誓有りて、今に至るまで未だ改めず。若し難ありて之を棄てば、何を以て君に事えん。執事の患えは、唯一人のみならず。一人は、楚王。○辟は、音僻。難は、去聲。

若鳩楚竟、敢不聽命。吳人乃退。鳩、安集也。○竟、音境。
【読み】
若し楚の竟を鳩[あつ]めば、敢えて命を聽かざらんや、と。吳人乃ち退く。鳩は、安集なり。○竟は、音境。

鑢金初宦於子期氏、實與隨人要言。要言無以楚王與吳、幷欲脫子期。○鑢、音慮。鑢姓。金名。
【読み】
鑢金[りょきん]初め子期氏に宦し、實に隨人と要言せり。要言して楚王を以て吳に與うること無く、幷せて子期を脫せんと欲す。○鑢は、音慮。鑢は姓。金は名。
*頭注に、「鑢、或作鑪、誤也。釋文古今人表皆作鑢。」とある。

王使見。王喜其意、欲引見之、以比王臣。且欲使盟隨人。○見、音現。
【読み】
王見えしめんとす。王其の意を喜び、之を引見して、以て王臣に比せんと欲す。且つ隨人に盟わしめんと欲す。○見は、音現。

辭曰、不敢以約爲利。此約、謂要言也。此一時之事、非爲德舉。故辭不敢見、亦不肯爲盟主。○約、如字。又於妙反。
【読み】
辭して曰く、敢えて約を以て利と爲さず、と。此の約は、要言を謂うなり。此れ一時の事、德舉爲るに非ず。故に辭して敢えて見えず、亦肯えて盟主と爲らず。○約は、字の如し。又於妙反。

王割子期之心、以與隨人盟。當心前割取血以盟、示其至心。
【読み】
王子期の心を割きて、以て隨人と盟う。心前に當てて血を割き取りて以て盟うは、其の至心を示すなり。

初、伍員與申包胥友。包胥、楚大夫。
【読み】
初め、伍員申包胥と友たり。包胥は、楚の大夫。

其亡也、謂申包胥曰、我必復楚國。復、報也。
【読み】
其の亡ぐるや、申包胥に謂いて曰く、我れ必ず楚國に復[むく]いん、と。復は、報ゆるなり。

申包胥曰、勉之。子能復之。我必能興之。及昭王在隨、申包胥如秦乞師、曰、吳爲封豕長蛇、以荐食上國、荐、數也。言吳貪害如蛇豕。○荐、在薦反。數、音朔。
【読み】
申包胥曰く、之を勉めよ。子能く之に復え。我は必ず能く之を興さん、と。昭王の隨に在るに及びて、申包胥秦に如きて師を乞いて、曰く、吳封豕長蛇を爲し、以て上國を荐食[せんしょく]して、荐は、數々なり。言うこころは、吳の貪害蛇豕の如し。○荐は、在薦反。數は、音朔。

虐始於楚、寡君失守社稷、越在草莽。使下臣告急、曰、夷德無厭。若鄰於君、疆埸之患也。吳有楚、則與秦鄰。○莽、莫蕩反。
【読み】
虐楚に始め、寡君社稷を守ることを失いて、草莽に越在せり。下臣をして急を告げしめて、曰く、夷德厭くこと無し。若し君に鄰せば、疆埸の患えならん。吳楚を有てば、則ち秦と鄰る。○莽は莫蕩反。

逮吳之未定、君其取分焉。與吳共分楚地。○取分、扶問反。
【読み】
吳の未だ定めざるに逮びて、君其れ分を取れ。吳と共に楚の地を分せよ。○取分は、扶問反。

若楚之遂亡、君之土也。若以君靈撫之、世以事君。撫、存恤也。
【読み】
若し楚遂に亡びば、君の土なり。若し君の靈を以て之を撫でば、世々以て君に事えん、と。撫は、存恤なり。

秦伯使辭焉、曰、寡人聞命矣。子姑就館。將圖而告。對曰、寡君越在草莽、未獲所伏。伏、猶處也。
【読み】
秦伯辭せしめて、曰く、寡人命を聞けり。子姑く館に就け。將に圖りて告げんとす、と。對えて曰く、寡君草莽に越在して、未だ伏す所を獲ず。伏は、猶處るのごとし。

下臣何敢卽安。立依於庭牆而哭、日夜不絕聲、勺飮不入口、七日、秦哀公爲之賦無衣。詩、秦風。取其王于興師、脩我戈矛、與子同仇、與子偕作、與子偕行。○勺、市灼反。又音灼。爲、去聲。
【読み】
下臣何ぞ敢えて安きに卽かん、と。立ちて庭牆に依りて哭し、日夜聲を絕たず、勺飮口に入れざること、七日、秦の哀公之が爲に無衣を賦す。詩は、秦風。其れ王于[ここ]に師を興さば、我が戈矛[かぼう]を脩めて、子と仇を同じくし、子と偕に作[た]ち、子と偕に行かんというに取る。○勺は、市灼反。又音灼。爲は、去聲。

九頓首而坐。無衣三章。章三頓首。
【読み】
九たび頓首して坐す。無衣は三章。章ごとに三たび頓首す。

秦師乃出。爲明年、包胥以秦師至張本。
【読み】
秦の師乃ち出づ。明年、包胥秦の師を以[い]て至る爲の張本なり。


〔經〕五年、春、王三月、辛亥、朔、日有食之。無傳。
【読み】
〔經〕五年、春、王の三月、辛亥[かのと・い]朔、日之を食する有り。傳無し。

夏、歸粟于蔡。蔡爲楚所圍、饑乏。故魯歸之粟。
【読み】
夏、粟を蔡に歸[おく]る。蔡楚の爲に圍まれて、饑乏す。故に魯之に粟を歸る。

於越入吳。於、發聲也。
【読み】
於越吳に入る。於は、發聲なり。

六月、丙申、季孫意如卒。秋、七月、壬子、叔孫不敢卒。無傳。
【読み】
六月、丙申[ひのえ・さる]、季孫意如卒す。秋、七月、壬子[みずのえ・ね]、叔孫不敢卒す。傳無し。

冬、晉士鞅帥師圍鮮虞。
【読み】
冬、晉の士鞅師を帥いて鮮虞を圍む。

〔傳〕五年、春、王人殺子朝于楚。因楚亂也。終閔馬父之言。
【読み】
〔傳〕五年、春、王人子朝を楚に殺す。楚の亂に因りてなり。閔馬父の言を終わる。

夏、歸粟於蔡、以周亟、矜無資。亟、急也。
【読み】
夏、粟を蔡に歸るは、以て亟を周[すく]い、資無きを矜[めぐ]むなり。亟は、急なり。

越入吳、吳在楚也。
【読み】
越吳に入るは、吳楚に在ればなり。

六月、季平子行東野。東野、季氏邑。○行、下孟反。下桓子行同。
【読み】
六月、季平子東野を行[めぐ]る。東野は、季氏の邑。○行は、下孟反。下の桓子行も同じ。

還。未至、丙申、卒于房。陽虎將以璵璠斂。璵璠、美玉。君所佩。○璵、音餘。璠、音煩。又方煩反。
【読み】
還る。未だ至らず、丙申、房に卒す。陽虎將に璵璠[よはん]を以て斂せんとす。璵璠は、美玉。君の佩ぶ所。○璵は、音餘。璠は、音煩。又方煩反。

仲梁懷弗與、懷亦季氏家臣。
【読み】
仲梁懷與えずして、懷も亦季氏の家臣。

曰、改步改玉。昭公之出、季孫行君事、佩璵璠祭宗廟。今定公立、復臣位。改君步、則亦當去璵璠。○去、起呂反。
【読み】
曰く、步を改むれば玉を改む、と。昭公の出づる、季孫君の事を行い、璵璠を佩びて宗廟を祭れり。今定公立ちて、臣位に復す。君の步を改むれば、則ち亦當に璵璠を去るべし。○去は、起呂反。

陽虎欲逐之、告公山不狃。不狃曰、彼爲君也。子何怨焉。不狃、季氏臣、費宰子洩也。爲君、不欲使僭。○爲、于僞反。
【読み】
陽虎之を逐わんと欲し、公山不狃[こうざんふじゅう]に告ぐ。不狃曰く、彼は君の爲なり。子何ぞ怨みん、と。不狃は、季氏の臣、費の宰子洩なり。君の爲とは、僭せしめんことを欲せざるなり。○爲は、于僞反。

旣葬、桓子行東野。桓子、意如子、季孫斯。
【読み】
旣に葬り、桓子東野を行る。桓子は、意如の子、季孫斯。

及費。子洩爲費宰。逆勞於郊。桓子敬之。勞仲梁懷。仲梁懷弗敬。懷時從桓子行、輕慢子洩。○勞、力報反。下同。
【読み】
費に及ぶ。子洩費の宰爲り。逆[むか]えて郊に勞う。桓子之を敬す。仲梁懷を勞う。仲梁懷敬せず。懷時に桓子に從いて行き、子洩を輕慢す。○勞は、力報反。下も同じ。

子洩怒。謂陽虎、子行之乎。行、逐懷也。爲下陽虎囚桓子起。
【読み】
子洩怒る。陽虎に謂えらく、子之を行[さ]らんか、と。行は、懷を逐うなり。下の陽虎桓子を囚うる爲の起なり。

申包胥以秦師至。
【読み】
申包胥秦の師を以[い]て至る。

秦子蒲・子虎帥車五百乘以救楚。五百乘、三萬七千五百人。
【読み】
秦の子蒲・子虎車五百乘を帥いて以て楚を救う。五百乘は、三萬七千五百人。

子蒲曰、吾未知吳道。道、猶法術。
【読み】
子蒲曰く、吾れ未だ吳の道[てだて]を知らず、と。道は、猶法術のごとし。

使楚人先與吳人戰、而自稷會之、大敗夫槩王于沂。稷・沂、皆楚地。
【読み】
楚人をして先ず吳人と戰わしめて、稷より之に會し、大いに夫槩王を沂に敗る。稷・沂は、皆楚の地。

吳人獲薳射於柏舉。薳射、楚大夫。○射、食亦反。亦食夜反。
【読み】
吳人薳射[いえき]を柏舉に獲。薳射は、楚の大夫。○射は、食亦反。亦食夜反。

其子帥奔徒、奔徒、楚散卒。
【読み】
其の子奔徒を帥いて、奔徒は、楚の散卒。

以從子西、敗吳師于軍祥。楚地。
【読み】
以て子西に從いて、吳の師を軍祥に敗る。楚の地。

秋、七月、子期・子蒲滅唐。從吳伐楚故。
【読み】
秋、七月、子期・子蒲唐を滅ぼす。吳に從いて楚を伐つ故なり。

九月、夫槩王歸自立也、以與王戰而敗。自立爲吳王、號夫槩。
【読み】
九月、夫槩王歸りて自立して、以て王と戰いて敗れぬ。自立して吳王と爲り、夫槩と號す。

奔楚、爲堂谿氏。傳終言之。
【読み】
楚に奔りて、堂谿氏と爲る。傳之を終え言う。

吳師敗楚師于雍澨。秦師又敗吳師。吳師居麇。麇、地名。○麇、九倫反。
【読み】
吳の師楚の師を雍澨に敗る。秦の師又吳の師を敗る。吳の師麇[きん]に居る。麇は、地の名。○麇は、九倫反。

子期將焚之。子西曰、父兄親暴骨焉、不能收、又焚之、不可。前年、楚人與吳戰、多死麇中。言不可幷焚。○暴、步卜反。
【読み】
子期將に之を焚かんとす。子西曰く、父兄親しく骨を暴して、收むること能わざるに、又之を焚かんこと、不可なり、と。前年、楚人吳と戰いて、多く麇中に死す。言うこころは、幷せて焚く可らず。○暴は、步卜反。

子期曰、國亡矣。死者若有知也、可以歆舊祀。言焚吳復楚、則祭祀不廢。
【読み】
子期曰く、國亡びたり。死者若し知ること有らば、以て舊祀を歆[う]く可し。言うこころは、吳を焚きて楚を復せば、則ち祭祀廢らず。

豈憚焚之。焚之而又戰。吳師敗。又戰于公壻之谿。楚地名。
【読み】
豈之を焚くことを憚らんや、と。之を焚きて又戰う。吳の師敗れぬ。又公壻の谿に戰う。楚の地名。

吳師大敗。吳子乃歸。
【読み】
吳の師大いに敗れぬ。吳子乃ち歸る。

囚闉輿罷。闉輿罷請先、遂逃歸。輿罷、楚大夫。請先至吳而逃歸。言吳唯得楚一大夫、復失之。所以不克。○闉、音因。輿、音餘。又羊汝反。罷、音皮。
【読み】
闉輿罷[いんよひ]を囚う。闉輿罷先んぜんことを請い、遂に逃げ歸る。輿罷は、楚の大夫。先ず吳に至らんことを請いて逃げ歸る。言うこころは、吳唯楚の一大夫を得るも、復之を失う。克たざる所以なり。○闉は、音因。輿は、音餘。又羊汝反。罷は、音皮。

葉公諸梁之弟后臧、從其母於吳、不待而歸。諸梁、司馬沈尹戌之子、葉公子高也。吳入楚、獲后臧之母。楚定。臧棄母而歸。○葉、舒涉反。從、如字。又才用反。
【読み】
葉公[しょうこう]諸梁の弟后臧、其の母に吳に從い、待たずして歸る。諸梁は、司馬沈尹戌の子、葉公子高なり。吳楚に入り、后臧の母を獲。楚定まる。臧母を棄てて歸るなり。○葉は、舒涉反。從は、字の如し。又才用反。

葉公終不正視。不義之。
【読み】
葉公終に正視せざりき。之を不義とす。

乙亥、陽虎囚季桓子及公父文伯、文伯、季桓子從父昆弟也。陽虎欲爲亂。恐二子不從。故囚之。
【読み】
乙亥[きのと・い]、陽虎季桓子と公父文伯とを囚えて、文伯は、季桓子の從父昆弟なり。陽虎亂を爲さんと欲す。二子の從わざらんことを恐る。故に之を囚う。

而逐仲梁懷。冬、十月、丁亥、殺公何藐。藐、季氏族。○藐、亡角反。又彌小反。
【読み】
仲梁懷を逐う。冬、十月、丁亥[ひのと・い]、公何藐[こうかばく]を殺す。藐は、季氏の族。○藐は、亡角反。又彌小反。

己丑、盟桓子于稷門之内。魯南城門。
【読み】
己丑[つちのと・うし]、桓子に稷門の内に盟う。魯の南城門。

庚寅、大詛、逐公父歜及秦遄。皆奔齊。歜、卽文伯也。秦遄、平子姑婿也。傳言季氏之亂。○詛、莊慮反。歜、昌欲反。遄、市專反。
【読み】
庚寅[かのえ・とら]、大いに詛いて、公父歜[こうほしょく]と秦遄[しんせん]とを逐う。皆齊に奔る。歜は、卽ち文伯なり。秦遄は、平子の姑婿なり。傳季氏の亂を言う。○詛は、莊慮反。歜は、昌欲反。遄は、市專反。

楚子入于郢。吳師已歸。
【読み】
楚子郢に入る。吳の師已に歸る。

初、鬭辛聞吳人之爭宮也、曰、吾聞之、不讓則不和、不和不可以遠征。吳爭於楚。必有亂。有亂則必歸。焉能定楚。
【読み】
初め、鬭辛吳人の宮を爭うと聞きて、曰く、吾れ之を聞く、讓らざれば則ち和せず、和せざれば以て遠征す可からず、と。吳楚に爭う。必ず亂有らん。亂有らば則ち必ず歸らん。焉ぞ能く楚を定めん、と。

王之奔隨也、將涉於成臼。江夏竟陵縣西有臼水、出聊屈山、西南入漢。○屈、其勿反。又居勿反。
【読み】
王の隨に奔るや、將に成臼に涉らんとす。江夏竟陵縣の西に臼水有り、聊屈山[りょうくつざん]より出でて、西南して漢に入る。○屈は、其勿反。又居勿反。

藍尹亹涉其帑、亹、楚大夫。○亹、亡匪反。帑、音奴。
【読み】
藍尹亹[らんいんび]其の帑を涉して、亹は、楚の大夫。○亹は、亡匪反。帑は、音奴。

不與王舟。及寧、王欲殺之。寧、安定也。
【読み】
王に舟を與えず。寧んずるに及びて、王之を殺さんと欲す。寧は、安定なり。

子西曰、子常唯思舊怨以敗。君何效焉。王曰、善。使復其所。吾以志前惡。惡、過也。
【読み】
子西曰く、子常唯舊怨を思いて以て敗れたり。君何ぞ效[なら]わん、と。王曰く、善し。其の所に復らしめよ。吾れ以て前惡を志[しる]さん、と。惡は、過ちなり。

王賞鬭辛・王孫由于・王孫圉・鍾建・鬭巢・申包胥・王孫賈・宋木・鬭懷。九子、皆從王有大功者。
【読み】
王鬭辛・王孫由于・王孫圉・鍾建・鬭巢・申包胥・王孫賈・宋木・鬭懷を賞す。九子は、皆王に從いて大功有る者なり。

子西曰、請舍懷也。以初謀弑王也。○舍、音捨。又音赦。
【読み】
子西曰く、請う、懷を舍[お]け、と。初め王を弑せんことを謀るを以てなり。○舍は、音捨。又音赦。

王曰、大德滅小怨、道也。終從其兄免王大難。是大德。
【読み】
王曰く、大德小怨を滅ぼすは、道なり、と。終に其の兄に從いて王を大難に免れしむ。是れ大德なり。

申包胥曰、吾爲君也。非爲身也。君旣定矣。又何求。且吾尤子旗、其又爲諸。子旗、蔓成然也。以有德於平王、求欲無厭、平王殺之。在昭十四年。○爲君・爲身、于僞反。
【読み】
申包胥曰く、吾は君の爲なり。身の爲に非ざるなり。君旣に定まれり。又何をか求めん。且つ吾れ子旗を尤めて、其れ又諸を爲さんや、と。子旗は、蔓成然なり。平王に德有るを以て、求欲厭くこと無く、平王之を殺せり。昭十四年に在り。○爲君・爲身は、于僞反。

遂逃賞。
【読み】
遂に賞を逃る。

王將嫁季羋。季羋辭曰、所以爲女子、遠丈夫也。鍾建負我矣。以妻鍾建、以爲樂尹。司樂大夫。○遠、于萬反。妻、七計反。
【読み】
王將に季羋[きび]を嫁せんとす。季羋辭して曰く、女子爲る所以は、丈夫に遠ざかるなり。鍾建我を負えり、と。以て鍾建に妻せて、以て樂尹と爲す。司樂大夫。○遠は、于萬反。妻は、七計反。

王之在隨也、子西爲王輿服以保路、國于脾洩、脾洩、楚邑也。失王、恐國人潰散。故僞爲王車服、立國脾洩、以保安道路人。
【読み】
王の隨に在るや、子西王の輿服を爲して以て路を保んじて、脾洩に國し、脾洩は、楚の邑なり。王を失えば、國人の潰散せんことを恐る。故に僞りて王の車服を爲りて、國を脾洩に立てて、以て道路の人を保安す。

聞王所在而後從王。
【読み】
王の所在を聞きて而して後に王に從えり。

王使由于城麇。於麇築城。
【読み】
王由于をして麇に城かしむ。麇に於て城を築く。

復命。子西問高厚焉。弗知。子西曰、不能、如辭。言自知不能、當辭勿行。
【読み】
復命す。子西高厚を問う。知らず。子西曰く、能わずんば、辭するに如かんや。言うこころは、自ら能わざるを知らば、當に辭して行くこと勿かるべし。

城不知高厚小大、何知。對曰、固辭不能、子使余也。人各有能有不能。王遇盜於雲中、余受其戈。其所猶在。袒而示之背、曰、此余所能也。脾洩之事、余亦不能也。傳言昭王所以復國、有賢臣也。○袒、音但。
【読み】
城きて高厚小大を知らずんば、何をか知らんとする、と。對えて曰く、固より不能を辭すれども、子余を使えり。人各々能有り不能有り。王盜に雲中に遇いしとき、余其の戈を受けたり。其の所猶在り、と。袒[はだぬ]ぎて之に背を示して、曰く、此れ余が能くする所なり。脾洩の事は、余も亦能わず、と。傳昭王國を復する所以は、賢臣有るを言うなり。○袒は、音但。

晉士鞅圍鮮虞、報觀虎之役也。三年、鮮虞獲晉觀虎。
【読み】
晉の士鞅鮮虞を圍むは、觀虎の役に報ゆるなり。三年、鮮虞晉の觀虎を獲。


〔經〕六年、春、王正月、癸亥、鄭游速帥師滅許、以許男斯歸。游速、大叔子。
【読み】
〔經〕六年、春、王の正月、癸亥[みずのと・い]、鄭の游速師を帥いて許を滅ぼし、許男斯を以[い]て歸る。游速は、大叔の子。

二月、公侵鄭。公至自侵鄭。無傳。
【読み】
二月、公鄭を侵す。公鄭を侵してより至る。傳無し。

夏、季孫斯・仲孫何忌如晉。秋、晉人執宋行人樂祁犂。稱行人、言非其罪。
【読み】
夏、季孫斯・仲孫何忌晉に如く。秋、晉人宋の行人樂祁犂[がくきれい]を執う。行人と稱するは、其の罪に非ざるを言うなり。

冬、城中城。無傳。公爲晉侵鄭。故懼而城之。
【読み】
冬、中城に城く。傳無し。公晉の爲に鄭を侵す。故に懼れて之に城く。

季孫斯・仲孫忌帥師圍鄆。無傳。何忌不言何、史闕文。鄆貳於齊。故圍之。
【読み】
季孫斯・仲孫忌師を帥いて鄆[うん]を圍む。傳無し。何忌何を言わざるは、史の闕文なり。鄆齊に貳あり。故に之を圍む。

〔傳〕六年、春、鄭滅許、因楚敗也。
【読み】
〔傳〕六年、春、鄭許を滅ぼすは、楚の敗に因れるなり。

二月、公侵鄭取匡、爲晉討鄭之伐胥靡也。胥靡、周地也。周儋翩因鄭人以作亂。鄭爲之伐胥靡。故晉使魯討之。匡、鄭地。取匡不書、歸之晉。○儋、丁甘反。
【読み】
二月、公鄭を侵して匡を取るは、晉の爲に鄭の胥靡を伐ちしを討ずるなり。胥靡は、周の地なり。周の儋翩[たんへん]鄭人に因りて以て亂を作す。鄭之が爲に胥靡を伐つ。故に晉魯をして之を討ぜしめり。匡は、鄭の地。匡を取ること書さざるは、之を晉に歸[おく]ればなり。○儋は、丁甘反。

往不假道於衛、及還、陽虎使季・孟自南門入、出自東門、陽虎將逐三桓、欲使得罪於鄰國。
【読み】
往くとき道を衛に假らず、還るに及びて、陽虎季・孟をして南門より入り、東門より出でしめて、陽虎將に三桓を逐わんとし、罪を鄰國に得せしめんと欲す。

舍於豚澤。衛侯怒。使彌子瑕追之。彌子瑕、衛嬖大夫。
【読み】
豚澤に舍る。衛侯怒る。彌子瑕をして之を追わしめんとす。彌子瑕は、衛の嬖大夫。

公叔文子老矣。文子、公叔發。
【読み】
公叔文子老う。文子は、公叔發。

輦而如公、曰、尤人而效之、非禮也。昭公之難、君將以文之舒鼎・ 衛文公之鼎。
【読み】
輦[れん]にして公に如きて、曰く、人を尤めて之に效[なら]うは、禮に非ざるなり。昭公の難に、君將に文の舒鼎・ 衛の文公の鼎。

成之昭兆・ 寶龜。
【読み】
成の昭兆・ 寶龜。

定之鞶鑑、鞶帶而以鏡爲飾也。今西方羌胡猶然。古之遺服。○鞶、步丹反。
【読み】
定の鞶鑑を以て、鞶帶にして鏡を以て飾りとするなり。今西方の羌胡猶然り。古の遺服なり。○鞶は、步丹反。

苟可以納之、擇用一焉。公子與二三臣之子、諸侯苟憂之、將以爲之質。爲質求納魯昭公。
【読み】
苟も以て之を納る可くんば、擇びて一を用いんとす。公の子と二三臣の子と、諸侯苟も之を憂えば、將に以て之が質と爲さんとす。質と爲して魯の昭公を納れんことを求む。

此羣臣之所聞也。今將以小忿蒙舊德、蒙、覆也。
【読み】
此れ羣臣の聞ける所なり。今將に小忿を以て舊德を蒙[おお]わんとするは、蒙は、覆うなり。

無乃不可乎。
【読み】
乃ち不可なること無からんや。

大姒之子、大姒、文王妃。
【読み】
大姒の子は、大姒は、文王の妃。

唯周公・康叔爲相睦也。而效小人以棄之、不亦誣乎。天將多陽虎之罪以斃之。君姑待之、若何。乃止。止不伐魯師。
【読み】
唯周公・康叔のみ相睦まじと爲す。而るに小人に效いて以て之を棄てば、亦誣いざらんや。天將に陽虎の罪を多くして以て之を斃さんとす。君姑く之を待たば、若何、と。乃ち止む。止めて魯の師を伐たざるなり。

夏、季桓子如晉、獻鄭俘也。獻此春取匡之俘。
【読み】
夏、季桓子晉に如くは、鄭の俘を獻ずるなり。此の春匡を取るの俘を獻ず。

陽虎强使孟懿子往報夫人之幣。虎欲困辱三桓、幷求媚於晉。故强使正卿報晉夫人之聘。
【読み】
陽虎强いて孟懿子をして往きて夫人の幣に報ぜしむ。虎三桓を困辱し、幷せて媚を晉に求めんと欲す。故に强いて正卿をして晉の夫人の聘に報ぜしむ。

晉人兼享之。賤魯。故不復兩設禮。明經所以不備書。
【読み】
晉人之を兼ね享す。魯を賤しむ。故に復禮を兩設せず。經に備に書せざる所以を明らかにするなり。

孟孫立于房外、謂范獻子曰、陽虎若不能居魯、而息肩於晉、所不以爲中軍司馬者、有如先君。稱先君、以徵其言、若欲使晉必厚待之。
【読み】
孟孫房外に立ち、范獻子に謂いて曰く、陽虎若し魯に居ること能わずして、肩を晉に息えんとき、以て中軍司馬と爲さざる所の者あらば、先君の如きこと有らん、と。先君を稱して、以て其の言を徵する、晉をして必ず之を厚待せしめんと欲するが若くす。

獻子曰、寡君有官。將使其人。擇得其人。
【読み】
獻子曰く、寡君官有り。將に其の人を使わんとす。其の人を擇び得。

鞅何知焉。獻子謂簡子曰、魯人患陽虎矣。孟孫知其釁、以爲必適晉。故强爲之請、以取入焉。欲令晉人聞虎當逃走。故强設請託之辭、因此言以入晉、令晉素知之。○釁、許靳反。爲之、于僞反。
【読み】
鞅何ぞ知らん、と。獻子簡子に謂いて曰く、魯人陽虎を患う。孟孫其の釁を知りて、必ず晉に適かんと以爲えり。故に强いて之が爲に請いて、以て入れんことを取れり、と。晉人をして虎が當に逃走すべきを聞かしめんと欲す。故に强いて請託の辭を設けて、此の言に因りて以て晉に入れしめんとして、晉をして素より之を知らしむ。○釁は、許靳反。爲之は、于僞反。

四月、己丑、吳大子終纍敗楚舟師、終纍、闔廬子、夫差兄。舟師、水戰。○纍、力追反。又力軌反。夫、音扶。差、初佳反。
【読み】
四月、己丑[つちのと・うし]、吳の大子終纍[しゅうるい]楚の舟師を敗り、終纍は、闔廬の子、夫差の兄。舟師は、水戰。○纍は、力追反。又力軌反。夫は、音扶。差は、初佳反。

獲潘子臣・小惟子、二子、楚舟師之帥。
【読み】
潘子臣・小惟子と、二子は、楚の舟師の帥。

及大夫七人。楚國大惕、懼亡。子期又以陵師敗于繁揚。陵師、陸軍。
【読み】
大夫七人とを獲たり。楚國大いに惕れ、亡びんことを懼る。子期又陵師を以て繁揚に敗れぬ。陵師は、陸軍。

令尹子西喜曰、乃今可爲矣。言知懼而後可治。
【読み】
令尹子西喜びて曰く、乃ち今にして爲む可し、と。言うこころは、懼れを知りて而して後に治む可し。

於是乎遷郢於鄀、而改紀其政、以定楚國。傳言楚賴子西以安。○鄀、音若。
【読み】
是に於て郢[えい]を鄀[じゃく]に遷して、其の政を改め紀して、以て楚國を定む。傳楚子西に賴りて以て安きを言う。○鄀は、音若。

周儋翩率王子朝之徒、因鄭人將以作亂于周。儋翩、子朝餘黨。
【読み】
周の儋翩[たんへん]王子朝の徒を率いて、鄭人に因りて將に亂を周に作さんとす。儋翩は、子朝の餘黨。

鄭於是乎伐馮・滑・胥靡・負黍・狐人・闕外。鄭伐周六邑、在魯伐鄭取匡前。於此見者、爲戍周起也。陽城縣西南有負黍亭。○見、賢遍反。下同。
【読み】
鄭是に於て馮・滑・胥靡・負黍・狐人・闕外を伐ちぬ。鄭周の六邑を伐つは、魯の鄭を伐ち匡を取るの前に在り。此に見すは、周を戍る爲の起なり。陽城縣の西南に負黍亭有り。○見は、賢遍反。下も同じ。

六月、晉閻沒戍周、且城胥靡。爲下天王出、居姑蕕起。
【読み】
六月、晉の閻沒周を戍り、且[また]胥靡に城く。下の天王出でて、姑蕕[こゆう]に居る爲の起なり。

秋、八月、宋樂祁言於景公曰、諸侯唯我事晉。今使不往、晉其憾矣。樂祁告其宰陳寅。以與公言告之。○使、去聲。
【読み】
秋、八月、宋の樂祁景公に言いて曰く、諸侯は唯我のみ晉に事う。今使い往かずんば、晉其れ憾みん、と。樂祁其の宰陳寅に告ぐ。公と言うを以て之に告ぐ。○使は、去聲。

陳寅曰、必使子往。他日、公謂樂祁曰、唯寡人說子之言。子必往。陳寅曰、子立後而行、吾室亦不亡。寅知晉政多門、往必有難。故使樂祁立後而行。○說、音悅。
【読み】
陳寅曰く、必ず子をして往かしめん、と。他日、公樂祁に謂いて曰く、唯寡人子の言を說ぶ。子必ず往け、と。陳寅曰く、子後を立てて行かば、吾が室も亦亡びじ。寅晉の政門多ければ、往かば必ず難有らんことを知る。故に樂祁をして後を立てて行かしむ。○說は、音悅。

唯君亦以我爲知難而行也。見溷而行。溷、樂祁子也。見於君、立以爲後。○溷、侯溫反。又侯困反。
【読み】
唯君も亦我を以て難を知りて行くと爲さん、と。溷[こん]を見えしめて行く。溷は、樂祁の子なり。君に見えしめ、立てて以て後と爲す。○溷は、侯溫反。又侯困反。

趙簡子逆而飮之酒於緜上。獻楊楯六十於簡子。楊、木名。○楯、食允反。又音允。
【読み】
趙簡子逆えて之に酒を緜上に飮ましむ。楊楯六十を簡子に獻ず。楊は、木の名。○楯は、食允反。又音允。

陳寅曰、昔吾主范氏、今子主趙氏、又有納焉。以楊楯賈禍。弗可爲也已。知范氏必怨將得禍。○賈、音古。
【読み】
陳寅曰く、昔吾れ范氏を主とせしに、今子は趙氏を主として、又納るること有り。楊楯を以て禍を賈わん。爲す可からざるのみ。范氏必ず怨みて將に禍を得んとするを知る。○賈は、音古。

然子死晉國、子孫必得志於宋。以其爲國死。
【読み】
然れども子晉國に死なば、子孫必ず志を宋に得ん、と。其の國の爲に死するを以てなり。

范獻子言於晉侯曰、以君命越疆而使、未致使而私飮酒、不敬二君。不可不討也。
【読み】
范獻子晉侯に言いて曰く、君命を以て疆を越えて使いし、未だ使いを致さずして私に酒を飮むは、二君に不敬なり。討ぜずんばある可からざるなり、と。

乃執樂祁。獻子怒祁比趙氏。經所以稱行人。
【読み】
乃ち樂祁を執う。獻子祁が趙氏に比するを怒る。經に行人と稱する所以なり。

陽虎又盟公及三桓於周社、盟國人于亳社、詛于五父之衢。傳言三桓微、陪臣專政。爲八年、陽虎作亂起。
【読み】
陽虎又公と三桓とに周社に盟い、國人に亳社[はくしゃ]に盟い、五父に衢に詛[ちか]う。傳三桓微にして、陪臣政を專にするを言う。八年、陽虎亂を作す爲の起なり。

冬、十二月、天王處于姑蕕、姑蕕、周地。
【読み】
冬、十二月、天王姑蕕[こゆう]に處るは、姑蕕は、周の地。

辟儋翩之亂也。爲明年、單・劉逆王起。
【読み】
儋翩の亂を辟くるなり。明年、單・劉王を逆うる爲の起なり。


〔經〕七年、春、王正月。夏、四月。秋、齊侯・鄭伯盟于鹹。衛地。
【読み】
〔經〕七年、春、王の正月。夏、四月。秋、齊侯・鄭伯鹹[かん]に盟う。衛の地。

齊人執衛行人北宮結、以侵衛。稱行人、非使人之罪。
【読み】
齊人衛の行人北宮結を執えて、以て衛を侵す。行人と稱するは、使人の罪に非ざるなり。

齊侯・衛侯盟于沙。結叛晉也。陽平元城縣東南有沙亭。
【読み】
齊侯・衛侯沙に盟う。晉に叛くことを結ぶなり。陽平元城縣の東南に沙亭有り。

大雩。無傳。過也。
【読み】
大いに雩[う]す。傳無し。過ぐるなり。

齊國夏帥師伐我西鄙。夏、國佐孫。
【読み】
齊の國夏師を帥いて我が西鄙を伐つ。夏は、國佐の孫。

九月、大雩。無傳。過也。
【読み】
九月、大いに雩す。傳無し。過ぐるなり。

冬、十月。
【読み】
冬、十月。

〔傳〕七年、春、二月、周儋翩入于儀栗以叛。儀栗、周邑。
【読み】
〔傳〕七年、春、二月、周の儋翩[たんへん]儀栗に入りて以て叛く。儀栗は、周の邑。

齊人歸鄆・陽關。陽虎居之以爲政。鄆・陽關、皆魯邑。中貳於齊。齊今歸之。不書、虎專之。○中、丁仲反。
【読み】
齊人鄆[うん]・陽關を歸す。陽虎之に居りて以て政を爲す。鄆・陽關は、皆魯の邑。中ごろ齊に貳す。齊今之を歸す。書さざるは、虎之を專にすればなり。○中は、丁仲反。

夏、四月、單武公・ 穆公子。
【読み】
夏、四月、單武公・ 穆公の子。

劉桓公、文公子。
【読み】
劉桓公、文公の子。

敗尹氏于窮谷。尹氏復黨儋翩、共爲亂也。
【読み】
尹氏を窮谷に敗る。尹氏復儋翩に黨して、共に亂を爲せばなり。

秋、齊侯・鄭伯盟于鹹、徵會于衛。徵、召也。
【読み】
秋、齊侯・鄭伯鹹に盟い、會を衛に徵[め]す。徵は、召すなり。

衛侯欲叛晉。屬齊・鄭也。
【読み】
衛侯晉に叛かんと欲す。齊・鄭に屬せんとす。

諸大夫不可。使北宮結如齊、而私於齊侯曰、執結以侵我。欲以齊師懼諸大夫。
【読み】
諸大夫可[き]かず。北宮結をして齊に如かしめて、齊侯に私して曰く、結を執えて以て我を侵せ、と。齊の師を以て諸大夫を懼[おど]さんと欲す。

齊侯從之、乃盟于瑣。瑣、卽沙也。爲明年、涉佗捘衛侯手起。○捘、子對反。
【読み】
齊侯之に從い、乃ち瑣に盟う。瑣は、卽ち沙なり。明年、涉佗衛侯の手を捘[お]す爲の起なり。○捘は、子對反。

齊國夏伐我。齊叛晉故。
【読み】
齊の國夏我を伐つ。齊晉に叛く故なり。

陽虎御季桓子、公斂處父御孟懿子、處父、孟氏家臣、成宰公斂陽。○斂、力檢反。又音廉。
【読み】
陽虎季桓子に御となり、公斂處父孟懿子に御となりて、處父は、孟氏の家臣、成の宰公斂陽なり。○斂は、力檢反。又音廉。

將宵軍齊師。齊師聞之、墮伏而待之。墮毀其軍以誘敵、而設伏兵。○墮、許規反。
【読み】
將に宵齊の師に軍せんとす。齊の師之を聞き、墮[やぶ]りて伏して之を待つ。其の軍を墮毀して以て敵を誘きて、伏兵を設く。○墮は、許規反。

處父曰、虎不圖禍。而必死。而、女也。○女、音汝。
【読み】
處父曰く、虎禍を圖らず。而[なんじ]必ず死せん、と。而は、女なり。○女は、音汝。

苫夷曰、虎陷二子於難。苫夷、季氏家臣。二子、季・孟。○苫、始占反。
【読み】
苫夷[せんい]曰く、虎二子を難に陷れんとす。苫夷は、季氏の家臣。二子は、季・孟。○苫は、始占反。

不待有司、余必殺女。虎懼、乃還。不敗。傳言陪臣强、能自相制、季・孟不敢有心。
【読み】
有司を待たずして、余必ず女を殺さん、と。虎懼れ、乃ち還る。敗れず。傳陪臣强く、能く自ら相制して、季・孟敢えて心有らざるを言う。

冬、十一月、戊午、單子・劉子逆王于慶氏。慶氏、守姑蕕大夫。
【読み】
冬、十一月、戊午[つちのえ・うま]、單子・劉子王を慶氏より逆う。慶氏は、姑蕕[こゆう]を守る大夫。

晉籍秦送王。己巳、王入于王城。己巳、十二月五日。有日無月。
【読み】
晉の籍秦王を送る。己巳[つちのと・み]、王王城に入る。己巳は、十二月五日。日有れども月無し。

館于公族黨氏、黨氏、周大夫。○黨、音掌。
【読み】
公族の黨氏[しょうし]に館りて、黨氏は、周の大夫。○黨は、音掌。

而後朝于莊宮。莊王廟也。
【読み】
而して後に莊宮に朝せり。莊王の廟なり。



經元年。禱之。丁老反。隕霜。于敏反。
傳。涖政。音利。又音類。奸義。音干。大咎。其九反。荒蕪。音無。近吳。附近之近。柏椁。音郭。爲夏。戶雅反。注同。于邳。皮悲反。仲虺。許鬼反。左相。息亮反。薛焉。於虔反。納侮。亡甫反。過分。扶問反。故復。扶又反。旣厭。於豔反。其祚。才故反。不中。丁仲反。故朝夕。如字。而從君。或如字。壞隤。徒回反。自旌。音精。將焉。於虔反。鞏。九勇反。
經二年。囊瓦。乃郎反。
傳。閽。音昬。守門人也。以敲。說文、作毃。云、擊頭也。字林同。又一曰、擊聲也。口交反。又口卓反。訓此敲云、橫擿也。又或作摮。或作搞。口交反。
經三年。子穿。音川。
傳。臨廷。音庭。下同。缾水。步丁反。本又作甁。炭。他旦反。五乘。繩證反。殉五人。辭俊反。卞急。皮彥反。而好。呼報反。下文及注同。躁疾。早報反。于郯。音談。駿馬。音俊。自拘。九于反。弄馬。魯貢反。以償。市亮反。若復。扶又反。爲質。音致。
經四年。國夏。戶雅反。召陵。上照反。楚竟。音境。公孫生。本又作姓。○今本亦姓。復稱。扶又反。異處。昌慮反。伯成。音城。爲告。于僞反。下吳爲蔡同。孔圉。魚呂反。死難。乃旦反。幷數。所主反。
傳。水潦。音老。疾瘧。魚略反。羽旄。音毛。析羽。星曆反。下放此。旐。音兆。忿爭。爭鬭之爭。大祝。音泰。下大祝・大卜・大史・大原同。徼大。古堯反。夫祝。音扶。出竟。音境。下同。釁鼓。許靳反。鼓鞞。步西反。本又作鼙。○今本亦鼙。欲令歃也。所洽反。又所甲反。以蕃。方元反。○今本藩。相王。悉亮反。大輅。音路。本亦作路。下皆同。○今本亦路。大旂。其依反。諸侯所建。錫。星曆反。夏后。戶雅反。下皆同。之璜。音黃。封父。音甫。下武父同。封父、國名。輯其。一音七入反。共魯。音恭。下文以共王職同。倍敦。本亦作陪。同。○今本亦陪。典筴。本又作冊。亦作策。或作笧。皆初革反。○今本亦策。彝。羊之反。皆令。徐力呈反。皞。詩照反。注及下同。下胡老反。旃。章然反。陶。徒刀反。甫田。布吳反。本亦作圃。同。○今本圃。塗所徑。音徒。鄭藪。素口反。蓋近。附近之近。下近戒同。東蒐。所求反。巡守。手又反。疆以。居良反。注及下同。沽洗。音孤。道紂。音導。七乘。繩證反。改行。下孟反。之昭。說文作佋。伯甸。徒練反。鄭捷。在接反。齊潘。普安反。玆丕。普悲反。可覆。芳服反。爲之。于僞反。下楚爲沈同。黃父。音甫。無怙。音戶。州犂。力兮反。子乾。其連反。爲質。音致。淮汭。人銳反。夾漢。古洽反。沿漢。悅全反。上下。時掌反。注同。遮使。正奢反。大隧。音遂。冥。本或作寘。之豉反。阨。本或作隘。音同。惡子。烏路反。而好。呼報反。江夏。戶雅反。其卒。子忽反。下同。畀我。必利反。燧象。音遂。裹。音果。中肩。丁仲反。蔓成。音萬。其衷。音忠。又竄。七亂反。竄匿。女力反。申包。必交反。數也。所角反。草茅。舊作茅。亡交反。今本多作莽。○今本亦莽。無厭。於鹽反。疆。居良反。埸。音亦。逮吳。音代。同仇。音求。
經五年。
傳。周亟。紀力反。注同。璵。本又作與。斂。力驗反。不狃。女九反。子洩。息列反。使僭。子念反。時從。才用反。下從父昆弟・皆從王、竝同。百乘。繩證反。注同。于沂。魚依反。散卒。子忽反。堂谿。苦兮反。下同。以歆。許金反。輿。本又作與。罷。音皮。復失。扶又反。公父。音甫。焉能。於虔反。成臼。其九反。藍尹。力甘反。謀殺。申志反。○今本弑。大難。乃旦反。無厭。於鹽反。脾洩。婢支反。下息列反。
經六年。祁犂。力兮反。又力之反。公爲。于僞反。圍鄆。音運。
傳。爲晉。于僞反。注同。儋翩。音篇。豚澤。杜孫反。嬖大夫。必計反。之難。乃旦反。盤。或作鞶。一音蒲官反。○今本亦鞶。鑑。古暫反。爲質。音致。注同。大姒。音泰。下音似。鄭俘。芳夫反。强使。其丈反。注同。下放此。不復。扶又反。欲令。力呈反。小惟子。位悲反。本又作帷。又如字。之帥。所類反。大惕。他歷反。爲戍。于僞反。下同。其憾。戶暗反。有難。乃旦反。下文同。飮之。於鴆反。爲國。于僞反。下同。越疆。居良反。而使。所吏反。下同。比趙。毗志反。亳社。步各反。詛于。側慮反。五父。音甫。之衢。其倶反。姑蕕。音由。又作猶。一音由舊反。單劉。音善。
經七年。于鹹。音咸。非使。所吏反。于沙。如字。又星和反。
傳。中貳。丁仲反。復黨。扶又反。瑣。素果反。涉佗。徒何反。公斂。或音慮點反。於難。乃旦反。

春秋左氏傳校本第二十八

定公 起八年盡十五年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本

〔經〕
八年、春、王正月、公侵齊。報前年、伐我西鄙。
【読み】
〔經〕八年、春、王の正月、公齊を侵す。前年、我が西鄙を伐つに報ゆ。

公至自侵齊。無傳。
【読み】
公齊を侵してより至る。傳無し。

二月、公侵齊。未得志故。
【読み】
二月、公齊を侵す。未だ志を得ざる故なり。

三月、公至自侵齊。無傳。
【読み】
三月、公齊を侵してより至る。傳無し。

曹伯露卒。無傳。四年、盟皐鼬。○鼬、由又反。
【読み】
曹伯露卒す。傳無し。四年、皐鼬[こうゆう]に盟う。○鼬は、由又反。

夏、齊國夏帥師伐我西鄙。公會晉師于瓦。瓦、衛地。將來救魯。公逆會之。東郡燕縣東北有瓦亭。
【読み】
夏、齊の國夏師を帥いて我が西鄙を伐つ。公晉の師に瓦に會す。瓦は、衛の地。將に來りて魯を救わんとす。公逆[むか]えて之に會す。東郡燕縣の東北に瓦亭有り。

公至自瓦。無傳。
【読み】
公瓦より至る。傳無し。

秋、七月、戊辰、陳侯柳卒。無傳。四年、盟皐鼬。
【読み】
秋、七月、戊辰[つちのえ・たつ]、陳侯柳卒す。傳無し。四年、皐鼬に盟う。

晉士鞅帥師侵鄭、遂侵衛。兩事。故曰遂。
【読み】
晉の士鞅師を帥いて鄭を侵し、遂に衛を侵す。兩事なり。故に遂にと曰う。

葬曹靖公。無傳。
【読み】
曹の靖公を葬る。傳無し。

九月、葬陳懷公。無傳。三月而葬。速。
【読み】
九月、陳の懷公を葬る。傳無し。三月にして葬る。速きなり。

季孫斯・仲孫何忌帥師侵衛。冬、衛侯・鄭伯盟于曲濮。無傳。結叛晉。曲濮、衛地。
【読み】
季孫斯・仲孫何忌師を帥いて衛を侵す。冬、衛侯・鄭伯曲濮に盟う。傳無し。晉に叛くことを結ぶなり。曲濮は、衛の地。

從祀先公。從、順也。先公、閔公・僖公也。將正二公之位次。所順非一。親盡。故通言先公。
【読み】
先公を從祀す。從は、順なり。先公は、閔公・僖公なり。將に二公の位次を正さんとす。順ずる所一に非ず。親盡く。故に通じて先公と言う。

盜竊寶玉・大弓。盜、謂陽虎也。家臣賤。名氏不見。故曰盜。寶玉、夏后氏之璜。大弓、封父之繁弱。○見、賢遍反。穀梁、寶玉者、封圭也。大弓者、武王之戎弓也。
【読み】
盜寶玉・大弓を竊む。盜は、陽虎を謂うなり。家臣は賤し。名氏見さず。故に盜と曰う。寶玉は、夏后氏の璜[こう]。大弓は、封父の繁弱。○見は、賢遍反。穀梁に、寶玉は、封圭なり。大弓は、武王の戎弓なり、と。

〔傳〕八年、春、王正月、公侵齊、門于陽州。攻其門。
【読み】
〔傳〕八年、春、王の正月、公齊を侵し、陽州を門[せ]む。其の門を攻む。

士皆坐列、言無鬭志。
【読み】
士皆坐列して、鬭志無きを言う。

曰、顏高之弓六鈞。顏高、魯人。三十斤爲鈞。六鈞、百八十斤。古稱重。故以爲異强。○稱、尺證反。强、其丈反。
【読み】
曰く、顏高の弓は六鈞なり、と。顏高は、魯人。三十斤を鈞と爲す。六鈞は、百八十斤。古の稱[はかり]は重し。故に以て異强と爲す。○稱、尺證反。强、其丈反。

皆取而傳觀之。陽州人出。顏高奪人弱弓。籍丘子鉏擊之。與一人倶斃。子鉏、齊人。斃、仆也。
【読み】
皆取りて之を傳え觀る。陽州の人出づ。顏高人の弱弓を奪う。籍丘子鉏之を擊つ。一人と倶に斃る。子鉏は、齊人。斃は、仆るるなり。

偃且射子鉏。中頰殪。子鉏死。○且、如字。射、食亦反。
【読み】
偃[ふ]しながら且つ子鉏を射る。頰に中りて殪[たう]る。子鉏死す。○且は、字の如し。射は、食亦反。

顏息射人、中眉。顏息、魯人。
【読み】
顏息人を射て、眉に中つ。顏息は、魯人。

退曰、我無勇。吾志其目也。以自矜。
【読み】
退きて曰く、我れ勇無し。吾は其の目を志せり、と。以て自ら矜[ほこ]る。

師退。冉猛僞傷足而先。猛、魯人。欲先歸。
【読み】
師退く。冉猛足に傷つける僞[まね]して先だつ。猛は、魯人。先ず歸らんと欲す。

其兄會乃呼曰、猛也殿。會見師退而猛不在列、乃大呼詐言、猛在後爲殿。傳言魯無軍政。○呼、火故反。殿、丁電反。
【読み】
其の兄會乃ち呼ばいて曰く、猛や殿たり、と。會師退きて猛が列に在らざるを見て、乃ち大いに呼ばり詐り言う、猛後ろに在りて殿爲り、と。傳魯軍政無きを言う。○呼は、火故反。殿は、丁電反。

二月、己丑、單子伐穀城、劉子伐儀栗。討儋翩之黨。穀城、在河南縣西。○單、音善。
【読み】
二月、己丑[つちのと・うし]、單子穀城を伐ち、劉子儀栗を伐つ。儋翩の黨を討ず。穀城は、河南縣の西に在り。○單は、音善。

辛卯、單子伐簡城、劉子伐盂、以定王室。傳終王室之亂。
【読み】
辛卯[かのと・う]、單子簡城を伐ち、劉子盂を伐ちて、以て王室を定む。傳王室の亂を終わる。

趙鞅言於晉侯曰、諸侯唯宋事晉。好逆其使、猶懼不至。今又執之、是絕諸侯也。
【読み】
趙鞅晉侯に言いて曰く、諸侯は唯宋のみ晉に事えり。好して其の使いを逆[むか]うるも、猶至らざらんことを懼る。今又之を執うるは、是れ諸侯を絕つなり、と。

將歸樂祁。士鞅曰、三年止之、無故而歸之、宋必叛晉。執樂祁、在六年。○好・使、皆去聲。
【読み】
將に樂祁を歸さんとす。士鞅曰く、三年之を止め、故無くして之を歸さば、宋必ず晉に叛かん、と。樂祁を執うるは、六年に在り。○好・使は、皆去聲。

獻子私謂子梁、獻子、范鞅。子梁、樂祁。
【読み】
獻子私に子梁に謂いて、獻子は、范鞅。子梁は、樂祁。

曰、寡君懼不得事宋君、是以止子。子姑使溷代子。溷、樂祁子。○溷、侯溫反。又侯困反。
【読み】
曰く、寡君宋君に事うることを得ざらんことを懼れ、是を以て子を止めり。子姑く溷[こん]をして子に代わらしめよ、と。溷は、樂祁の子。○溷は、侯溫反。又侯困反。

子梁以告陳寅。陳寅曰、宋將叛晉。是棄溷也。不如待之。留待勿以子自代。
【読み】
子梁以て陳寅に告ぐ。陳寅が曰く、宋將に晉に叛かんとす。是れ溷を棄つるなり。之を待たんに如かず、と。留まり待ちて子を以て自ら代わること勿かれ、と。

樂祁歸、卒於大行。大行、晉東南山。○大、音泰。行、戶郎反。一音衡。
【読み】
樂祁歸り、大行に卒す。大行は、晉の東南の山。○大は、音泰。行は、戶郎反。一に音衡。

士鞅曰、宋必叛。不如止其尸以求成焉。乃止諸州。州、晉地。爲明年、宋公使樂大心如晉張本。
【読み】
士鞅曰く、宋必ず叛かん。其の尸を止めて以て成[たい]らぎを求むるに如かず、と。乃ち諸を州に止む。州は、晉の地。明年、宋公樂大心をして晉に如かしむる爲の張本なり。

公侵齊、攻廩丘之郛。郛、郭也。
【読み】
公齊を侵して、廩丘の郛[ふ]を攻む。郛は、郭なり。

主人焚衝。衝、戰車。
【読み】
主人衝を焚く。衝は、戰車。

或濡馬褐以救之、馬褐、馬衣。
【読み】
或ひと馬褐を濡[うるお]して以て之を救い、馬褐は、馬衣。

遂毀之。毀郛。
【読み】
遂に之を毀つ。郛を毀つ。

主人出。師奔。攻郛人少。故遣後師走往助之。
【読み】
主人出づ。師奔る。郛を攻むる人少なし。故に後師をして走り往きて之を助けしむ。

陽虎僞不見冉猛者、曰、猛在此、必敗。陽州之役、猛先歸。言若在此、必復敗。○復、扶又反。
【読み】
陽虎冉猛を見ざる者の僞して、曰く、猛此に在らば必ず敗れん、と。陽州の役に、猛先ず歸る。言うこころは、若し此に在らば、必ず復敗れん。○復は、扶又反。

猛逐之、顧而無繼。僞顚。遂廩丘人。
【読み】
猛之を逐い、顧みて繼ぐもの無し。僞りて顚[たう]る。廩丘人を遂う。

虎曰、盡客氣也。言皆客氣非勇。
【読み】
虎曰く、盡く客氣なり、と。言うこころは、皆客氣にして勇に非ず。

苫越生子、將待事而名之。苫越、苫夷。○苫、式占反。
【読み】
苫越[せんえつ]子を生し、將に事を待ちて之に名づけんとす。苫越は、苫夷。○苫は、式占反。

陽州之役獲焉。名之曰陽州。欲自比僑如。
【読み】
陽州の役に獲あり。之を名づけて陽州と曰う。自ら僑如に比せんと欲す。

夏、齊國夏・高張伐我西鄙。報上二侵。
【読み】
夏、齊の國夏・高張我が西鄙を伐つ。上の二侵に報ゆ。

晉士鞅・趙鞅・荀寅救我。救不書、齊師已去、未入竟。
【読み】
晉の士鞅・趙鞅・荀寅我を救う。救い書さざるは、齊の師已に去りて、未だ竟に入らざればなり。

公會晉師于瓦。范獻子執羔、趙簡子・中行文子皆執鴈。魯於是始尙羔。獻子、士鞅也。簡子、趙鞅也。中行文子、荀寅也。禮、卿執羔、大夫執鴈。魯則同之。今始知執羔之尊也。卿不書、禮不敵公、史略之。
【読み】
公晉の師に瓦に會す。范獻子羔を執り、趙簡子・中行文子皆鴈を執る。魯是に於て始めて羔を尙めり。獻子は、士鞅なり。簡子は、趙鞅なり。中行文子は、荀寅なり。禮に、卿は羔を執り、大夫は鴈を執る、と。魯則ち之を同じくす。今始めて羔を執るの尊きを知るなり。卿書さざるは、禮公に敵せざれば、史之を略するなり。

晉師將盟衛侯于鄟澤。自瓦還、就衛地盟。○鄟、音專。又市轉反。
【読み】
晉の師將に衛侯に鄟澤[せんたく]に盟わんとす。瓦より還り、衛の地に就きて盟う。○鄟は、音專。又市轉反。

趙簡子曰、羣臣誰敢盟衛君者。前年、衛叛晉屬齊。簡子意欲摧辱之。
【読み】
趙簡子曰く、羣臣誰か敢えて衛の君に盟わん者ぞ、と。前年、衛晉に叛きて齊に屬す。簡子意之を摧辱せんと欲す。

涉佗・成何曰、我能盟之。二子、晉大夫。
【読み】
涉佗・成何曰く、我れ能く之に盟わん、と。二子は、晉の大夫。

衛人請執牛耳。盟禮、尊者涖牛耳、主次盟者。衛侯與晉大夫盟、自以當涖牛耳。故請。
【読み】
衛人牛耳を執れと請う。盟禮に、尊者は牛耳に涖み、盟者を次づることを主る、と。衛侯晉の大夫と盟えば、自ら以えらく、當に牛耳に涖むべし、と。故に請うなり。

成何曰、衛、吾溫・原也。焉得視諸侯。言衛小。可比晉縣。不得從諸侯禮。
【読み】
成何曰く、衛は、吾が溫・原なり。焉ぞ諸侯に視[なぞら]うることを得ん、と。言うこころは、衛は小なり。晉の縣に比す可し。諸侯の禮に從うことを得ず。

將歃。涉佗捘衛侯之手及捥。捘、擠也。血至捥。○歃、所洽反。捘、子對反。捥、烏喚反。擠、子計反。
【読み】
將に歃[すす]らんとす。涉佗衛侯の手を捘[お]して捥[うで]に及ぶ。捘は、擠[お]すなり。血捥に至る。○歃は、所洽反。捘は、子對反。捥[わん]は、烏喚反。擠[せい]は、子計反。

衛侯怒。王孫賈趨進、賈、衛大夫。
【読み】
衛侯怒る。王孫賈趨り進みて、賈は、衛の大夫。

曰、盟以信禮也。信、猶明也。
【読み】
曰く、盟は以て禮を信にせんとなり。信は、猶明のごとし。

有如衛君、其敢不唯禮是事、而受此盟也。言晉無禮。不欲受其盟。
【読み】
衛君にして、其れ敢えて唯禮あるに是れ事えざるが如きこと有らば、此の盟を受けんや、と。言うこころは、晉禮無し。其の盟を受くることを欲せず。

衛侯欲叛晉、而患諸大夫。王孫賈使次于郊。大夫問故。問不入故。
【読み】
衛侯晉に叛かんと欲して、諸大夫を患う。王孫賈郊に次[やど]らしむ。大夫故を問う。入らざる故を問う。

公以晉詬語之。詬、恥也。○詬、呼豆反。語、魚據反。
【読み】
公晉の詬[はじ]を以て之に語ぐ。詬は、恥なり。○詬は、呼豆反。語は、魚據反。

且曰、寡人辱社稷。其改卜嗣。寡人從焉。使改卜他公子以嗣先君。我從大夫所立。
【読み】
且[また]曰く、寡人社稷を辱めたり。其れ改めて嗣を卜せよ。寡人從わん、と。他の公子を改め卜して以て先君に嗣がしめよ。我れ大夫の立つる所に從わん、と。

大夫曰、是衛之禍。豈君之過也。公曰、又有患焉。謂寡人必以而子與大夫之子爲質。爲質於晉。
【読み】
大夫曰く、是れ衛の禍なり。豈君の過ちならんや、と。公曰く、又患え有り。寡人に必ず而[なんじ]の子と大夫の子とを以て質とせよと謂えり、と。晉に質と爲す。

大夫曰、苟有益也、公子則往。羣臣之子敢不皆負羈絏以從。將行。王孫賈曰、苟衛國有難、工商未嘗不爲患。使皆行而後可。欲以激怒國人。○絏、息列反。從、才用反。
【読み】
大夫曰く、苟も益有らば、公子だも則ち往かん。羣臣の子敢えて皆羈絏[きせつ]を負いて以て從わざらんや、と。將に行かんとす。王孫賈曰く、苟も衛國に難有れば、工商も未だ嘗て患えと爲さずんばあらず。皆行かしめて而して後に可なり、と。以て國人を激怒せんと欲す。○絏は、息列反。從は、才用反。

公以告大夫。乃皆將行之。行有日。有期日。
【読み】
公以て大夫に告ぐ。乃ち皆將に之を行[や]らんとす。行らんこと日有り。期日有り。

公朝國人、使賈問焉、曰、若衛叛晉、晉五伐我、病何如矣。皆曰、五伐我、猶可以能戰。賈曰、然則如叛之。病而後質焉。何遲之有。乃叛晉。
【読み】
公國人を朝せしめて、賈をして問わしめて、曰く、若し衛晉に叛かんに、晉五たび我を伐たば、病ましきこと何如、と。皆曰く、五たび我を伐つとも、猶以て能く戰う可し、と。賈曰く、然らば則ち之に叛くに如かんや。病みて後に質せん。何の遲きことか之れ有らん、と。乃ち晉に叛く。

晉人請改盟。弗許。
【読み】
晉人改め盟わんと請う。許さず。

秋、晉士鞅會成桓公侵鄭、圍蟲牢、報伊闕也。桓公、周卿士。不書、監帥不親侵也。六年、鄭伐周闕外。晉爲周報之。○監、古銜反。
【読み】
秋、晉の士鞅成桓公に會して鄭を侵して、蟲牢を圍むは、伊闕に報ゆるなり。桓公は、周の卿士。書さざるは、監帥にして親ら侵さざればなり。六年、鄭周の闕外を伐す。晉周の爲に之を報ゆ。○監は、古銜反。

遂侵衛。討叛。
【読み】
遂に衛を侵す。叛けるを討ず。

九月、師侵衛、晉故也。魯爲晉討衛。
【読み】
九月、師衛を侵すは、晉の故なり。魯晉の爲に衛を討ず。

季寤・ 季桓子之弟。
【読み】
季寤・ 季桓子の弟。

公鉏極・ 公彌曾孫。桓子族子。
【読み】
公鉏極・ 公彌の曾孫。桓子の族子。

公山不狃、費宰。
【読み】
公山不狃[こうざんふじゅう]、費の宰。

皆不得志於季氏。叔孫輒無寵於叔孫氏。輒、叔孫氏之庶子。
【読み】
皆志を季氏に得ず。叔孫輒[しゅくそんちょう]叔孫氏に寵無し。輒は、叔孫氏の庶子。

叔仲志不得志於魯。志、叔孫帶之孫。皆爲國人所薄。
【読み】
叔仲志志を魯に得ず。志は、叔孫帶の孫。皆國人の爲に薄んぜらる。

故五人因陽虎。陽虎欲去三桓、以季寤更季氏、代桓子。○去、起呂反。更、音庚。舊古孟反。下同。
【読み】
故に五人陽虎に因る。陽虎三桓を去りて、季寤を以て季氏に更え、桓子に代う。○去は、起呂反。更は、音庚。舊古孟反。下も同じ。

以叔孫輒更叔孫氏、代武叔。
【読み】
叔孫輒を以て叔孫氏に更え、武叔に代う。

己更孟氏。陽虎自代懿子。
【読み】
己孟氏に更わらんことを欲す。陽虎自ら懿子に代わる。

冬、十月、順祀先公而祈焉。將作大事、欲以順祀取媚。
【読み】
冬、十月、先公を順祀して祈る。將に大事を作さんとし、順祀を以て媚を取らんと欲す。

辛卯、禘于僖公。辛卯、十月二日。不於大廟者、順祀之義、當退僖公。懼於僖神。故於僖廟行順祀。
【読み】
辛卯、僖公に禘す。辛卯は、十月二日。大廟に於てせざるは、順祀の義は、當に僖公を退くべし。僖の神に懼る。故に僖が廟に於て順祀を行うなり。

壬辰、將享季氏于蒲圃而殺之。戒都車曰、癸巳至。都邑之兵車也。陽虎欲以壬辰夜殺季孫、明日癸巳、以都車攻二家。○圃、布五反。
【読み】
壬辰[みずのえ・たつ]、將に季氏を蒲圃に享して之を殺さんとす。都車を戒めて曰く、癸巳[みずのと・み]に至れ、と。都邑の兵車なり。陽虎壬辰の夜を以て季孫を殺し、明日癸巳に、都車を以て二家を攻めんことを欲す。○圃は、布五反。

成宰公斂處父告孟孫曰、季氏戒都車、何故。孟孫曰、吾弗聞。處父曰、然則亂也。必及於子。先備諸。與孟孫以壬辰爲期。處父期以兵救孟氏。壬辰、先癸巳一日。
【読み】
成の宰公斂處父孟孫に告げて曰く、季氏都車を戒むるは、何の故ぞ、と。孟孫曰く、吾れ聞かず、と。處父曰く、然らば則ち亂ならん。必ず子に及ばん。先ず諸に備えん、と。孟孫と壬辰を以て期と爲す。處父兵を以て孟氏を救わんことを期す。壬辰は、癸巳に先だつこと一日。

陽虎前驅、林楚御桓子、虞人以鈹盾夾之、陽越殿、越、陽虎從弟。○鈹、普皮反。盾、食允反。又音允也。
【読み】
陽虎前驅し、林楚桓子に御となり、虞人鈹盾を以て之を夾み、陽越殿となり、越は、陽虎の從弟。○鈹は、普皮反。盾は、食允反。又音允なり。

將如蒲圃。桓子咋謂林楚、咋、暫也。○咋、仕詐反。
【読み】
將に蒲圃に如かんとす。桓子咋[しばら]く林楚に謂いて、咋[さ]は、暫くなり。○咋は、仕詐反。

曰、而先皆季氏之良也。爾以是繼之。欲使林楚免己於難、以繼其先人之良。
【読み】
曰く、而の先は皆季氏の良なり。爾是を以て之を繼げ、と。林楚をして己を難に免れしめて、以て其の先人の良に繼がしめんと欲す。

對曰、臣聞命後。後、猶晩也。
【読み】
對えて曰く、臣命を聞くこと後れたり。後は、猶晩[おそ]きがごとし。

陽虎爲政、魯國服焉。違之徵死。死無益於主。桓子曰、何後之有。而能以我適孟氏乎。對曰、不敢愛死、懼不免主。桓子曰、往也。言必往。
【読み】
陽虎政を爲して、魯國服す。之に違えば死を徵す。死すれば主に益無し、と。桓子曰く、何の後れたること之れ有らん。而能く我を以て孟氏に適かんか、と。對えて曰く、敢えて死を愛しまざれども、主を免れしめざらんことを懼る、と。桓子曰く、往け、と。言うこころは、必ず往け。

孟氏選圉人之壯者三百人、以爲公期築室於門外。實欲以備難。不欲使人知。故僞築室於門外、因得聚衆。公期、孟氏支子。
【読み】
孟氏圉人の壯なる者三百人を選びて、以て公期が爲に室を門外に築く。實は以て難に備えんと欲す。人をして知らしめんことを欲せず。故に僞りて室を門外に築きて、因りて衆を聚むるを得たり。公期は、孟氏の支子。

林楚怒馬、及衢而騁。騁、馳也。
【読み】
林楚馬を怒らせ、衢に及びて騁す。騁は、馳するなり。

陽越射之。不中。築者闔門。季孫旣得入、乃閉門。○射、食亦反。
【読み】
陽越之を射る。中らず。築く者門を闔ず。季孫旣に入ることを得て、乃ち門を閉ず。○射は、食亦反。

有自門閒射陽越、殺之。
【読み】
門閒より陽越を射るもの有り、之を殺す。

陽虎劫公與武叔、武叔、叔孫不敢之子、州仇也。
【読み】
陽虎公と武叔とを劫かして、武叔は、叔孫不敢の子、州仇なり。

以伐孟氏。公斂處父帥成人自上東門入、魯東城之北門。
【読み】
以て孟氏を伐つ。公斂處父成人を帥いて上東門より入り、魯の東城の北門。

與陽氏戰于南門之内。弗勝。又戰于棘下。城内地名。
【読み】
陽氏と南門の内に戰う。勝たず。又棘下に戰う。城内の地名。

陽氏敗。
【読み】
陽氏敗れぬ。

陽虎說甲如公宮、取寶玉・大弓以出、舍于五父之衢、寢而爲食。其徒曰、追其將至。虎曰、魯人聞余出、喜於徵死。何暇追余。徵、召也。陽虎召季氏於蒲圃、將殺之。今得脫必喜。故言喜於召死。○說、他活反。
【読み】
陽虎甲を說[ぬ]ぎて公宮に如き、寶玉・大弓を取りて以て出で、五父の衢に舍り、寢ねて食を爲らしむ。其の徒曰く、追うもの其れ將に至らんとす、と。虎曰く、魯人余が出づるを聞かば、死を徵[め]さるに喜ばん。何ぞ余を追うに暇あらん、と。徵は、召すなり。陽虎季氏を蒲圃に召して、將に之を殺さんとす。今脫することを得て必ず喜ばん。故に死を召さるに喜ばんと言う。○說は、他活反。

從者曰、嘻、速駕。公斂陽在。嘻、懼聲。
【読み】
從者曰く、嘻[ああ]、速やかに駕せよ。公斂陽在り、と。嘻[き]は、懼るる聲。

公斂陽請追之。孟孫弗許。畏陽虎。
【読み】
公斂陽之を追わんと請う。孟孫許さず。陽虎を畏る。

陽欲殺桓子。欲因亂討季氏、以强孟氏。
【読み】
陽桓子を殺さんことを欲す。亂に因り季氏を討じて、以て孟氏を强くせんことを欲す。

孟孫懼而歸之。不敢殺。
【読み】
孟孫懼れて之を歸す。敢えて殺さず。

子言辨舍爵於季氏之廟而出。子言、季寤。辨、猶周徧也。徧告廟飮酒、示無懼。○辨、音徧。舍、如字。
【読み】
子言辨[あまね]く爵を季氏の廟に舍きて出づ。子言は、季寤。辨は、猶周徧のごとし。徧く廟に告げて酒を飮むは、懼れ無きを示すなり。○辨は、音徧。舍は、字の如し。

陽虎入于讙・陽關以叛。叛不書、畧家臣。○讙、音歡。
【読み】
陽虎讙・陽關に入りて以て叛く。叛くこと書さざるは、家臣を畧すなり。○讙は、音歡。

鄭駟歂嗣子大叔爲政。歂、駟乞子、子然也。爲明年、殺鄧析張本。○歂、市專反。
【読み】
鄭の駟歂[しせん]子大叔に嗣ぎて政を爲す。歂は、駟乞の子、子然なり。明年、鄧析を殺す爲の張本なり。○歂は、市專反。


〔經〕九年、春、王正月。夏、四月、戊申、鄭伯蠆卒。無傳。四年、盟皐鼬。
【読み】
〔經〕九年、春、王の正月。夏、四月、戊申[つちのえ・さる]、鄭伯蠆[たい]卒す。傳無し。四年、皐鼬[こうゆう]に盟う。

得寶玉・大弓。弓玉、國之分器。得之足以爲榮、失之足以爲辱。故重而書之。○分、扶問反。
【読み】
寶玉・大弓を得。弓玉は、國の分器。之を得るは以て榮と爲すに足り、之を失うは以て辱と爲すに足る。故に重ねて之を書す。○分は、扶問反。

六月、葬鄭獻公。無傳。三月而葬。速。
【読み】
六月、鄭の獻公を葬る。傳無し。三月にして葬る。速きなり。

秋、齊侯・衛侯次于五氏。五氏、晉地。不書伐者、諱伐盟主、以次告。
【読み】
秋、齊侯・衛侯五氏に次[やど]る。五氏は、晉の地。伐つことを書さざるは、盟主を伐つを諱み、次るを以て告ぐればなり。

秦伯卒。無傳。不書名、未同盟。
【読み】
秦伯卒す。傳無し。名を書さざるは、未だ同盟せざればなり。

冬、葬秦哀公。無傳。
【読み】
冬、秦の哀公を葬る。傳無し。

〔傳〕九年、春、宋公使樂大心盟于晉、且逆樂祁之尸。辭、僞有疾。乃使向巢如晉盟、且逆子梁之尸。巢、向戌曾孫。○向、舒亮反。
【読み】
〔傳〕九年、春、宋公樂大心をして晉に盟い、且つ樂祁の尸を逆[むか]えしめんとす。辭するに、疾有る僞[まね]す。乃ち向巢[しょうそう]をして晉に如きて盟い、且つ子梁の尸を逆えしむ。巢は、向戌の曾孫。○向は、舒亮反。

子明謂桐門右師出。子明、樂祁之子、溷也。右師、樂大心。子明族父也。右師往到子明舍。子明逐使出門去。
【読み】
子明桐門右師に謂えらく、出でよ、と。子明は、樂祁の子、溷[こん]なり。右師は、樂大心。子明の族父なり。右師往きて子明が舍に到る。子明逐いて門を出でて去らしむ。

曰、吾猶衰絰。而子擊鐘、何也。忿其不逆父喪、因責其無同族之恩。
【読み】
曰く、吾れ猶衰絰[さいてつ]す。而るに子鐘を擊つは、何ぞや、と。其の父の喪を逆えざるを忿り、因りて其の同族の恩無きを責む。

右師曰、喪不在此故也。旣而告人曰、己衰絰而生子。余何故舍鐘。己、子明也。○舍、音捨。
【読み】
右師曰く、喪此に在らざる故なり、と。旣にして人に告げて曰く、己衰絰して子を生ましむ。余何の故に鐘を舍てん、と。己は、子明なり。○舍は、音捨。

子明聞之、怒。言於公曰、右師將不利戴氏。樂氏、戴公族。
【読み】
子明之を聞きて、怒る。公に言いて曰く、右師將に戴氏に不利せんとす。樂氏は、戴公の族。

不肯適晉、將作亂也。不然無疾。乃逐桐門右師。逐之在明年。終叔孫昭子之言。
【読み】
肯えて晉に適かざりしは、將に亂を作さんとするなり。然らずんば疾無かりしにという。乃ち桐門の右師を逐う。之を逐うことは明年に在り。叔孫昭子の言を終わる。

鄭駟歂殺鄧析、而用其竹刑。鄧析、鄭大夫。欲改鄭所鑄舊制、不受君命、而私造刑法、書之於竹簡。故言竹刑。
【読み】
鄭の駟歂鄧析を殺して、其の竹刑を用ゆ。鄧析は、鄭の大夫。鄭の鑄る所の舊制を改めんと欲して、君命を受けずして、私に刑法を造り、之を竹簡に書す。故に竹刑と言う。

君子謂子然於是不忠。苟有可以加於國家者、棄其邪可也。加、猶益也。棄、不責其邪惡也。
【読み】
君子謂えらく、子然是に於て不忠なり。苟も以て國家に加う可き者有らば、其の邪を棄てて可なり。加は、猶益すのごとし。棄は、其の邪惡を責めざるなり。

靜女之三章、取彤管焉。詩邶風也。言靜女三章之詩、雖說美女、義在彤管。彤管、赤管筆。女史記事、規誨之所執。
【読み】
靜女の三章は、彤管[とうかん]に取れり。詩の邶風[はいふう]なり。言うこころは、靜女三章の詩は、美女を說ぶと雖も、義彤管に在り。彤管は、赤管の筆。女史事を記し、規誨するに執る所なり。

竿旄何以告之、取其忠也。詩鄘風也。錄竿旄詩者、取其中心願告人以善道也。言此二詩、皆以一善見采、而鄧析不以一善存身。
【読み】
竿旄[かんぼう]の何を以て之を告げんとは、其の忠に取れり。詩の鄘風なり。竿旄の詩を錄する者は、其の中心に人に告ぐるに善道を以てするを願うを取ればなり。言うこころは、此の二詩、皆一善を以て采られて、鄧析は一善を以て身を存せず。

故用其道、不棄其人。詩云、蔽芾甘棠、勿翦勿伐。召伯所茇。詩、召南也。召伯決訟於蔽芾小棠之下。詩人思之、不伐其樹。茇、草舍也。
【読み】
故に其の道を用ゆれば、其の人を棄てず。詩に云う、蔽芾[へいひ]たる甘棠は、翦ること勿かれ伐つこと勿かれ。召伯の茇[やど]りし所なり、と。詩は、召南なり。召伯訟を蔽芾たる小棠の下に決す。詩人之を思いて、其の樹を伐らず。茇[はつ]は、草舍なり。

思其人、猶愛其樹。況用其道、而不恤其人乎。子然無以勸能矣。傳言子然嗣大叔爲政、鄭所以衰弱。
【読み】
其の人を思いて、猶其の樹を愛す。況んや其の道を用いて、其の人を恤えざらんや。子然以て能を勸むること無し、と。傳子然大叔に嗣ぎて政を爲して、鄭の衰弱する所以を言う。

夏、陽虎歸寶玉・大弓。無益近用、而祗爲名。故歸之。○祗、音支。
【読み】
夏、陽虎寶玉・大弓を歸す。近用するに益無くして、祗[まさ]に名を爲す。故に之を歸す。○祗は、音支。

書曰得、器用也。
【読み】
書して得と曰うは、器用なればなり。

凡獲器用曰得。器用者、謂物之成器、可爲人用者也。
【読み】
凡そ器用を獲るを得と曰う。器用とは、物の成器、人用と爲す可き者を謂うなり。

得用焉曰獲。謂用器物以有獲、若麟爲田獲、俘爲戰獲。
【読み】
用に得るを獲と曰う。器物を用いて以て獲る有り、麟の田の獲爲る、俘の戰の獲爲るが若きを謂う。

六月、伐陽關。討陽虎也。
【読み】
六月、陽關を伐つ。陽虎を討ずるなり。

陽虎使焚萊門。陽關邑門。
【読み】
陽虎萊門を焚かしむ。陽關の邑門。

師驚。犯之而出、奔齊。
【読み】
師驚く。之を犯して出で、齊に奔る。

請師以伐魯。曰、三加必取之。三加兵於魯。
【読み】
師を請いて以て魯を伐たんとす。曰く、三たび加えば必ず之を取らん、と。三たび兵を魯に加うるなり。

齊侯將許之。鮑文子諫曰、臣嘗爲隸於施氏矣。施氏、魯大夫。文子、鮑國也。成十七年、齊人召而立之。至今七十四歲。於是文子蓋九十餘矣。
【読み】
齊侯將に之を許さんとす。鮑文子諫めて曰く、臣嘗て施氏に隸爲り。施氏は、魯の大夫。文子は、鮑國なり。成十七年、齊人召して之を立つ。今に至りて七十四歲なり。是に於て文子蓋し九十餘ならん。

魯未可取也。上下猶和、衆庶猶睦、能事大國、大國、晉也。
【読み】
魯未だ取る可からざるなり。上下猶和し、衆庶猶睦まじく、能く大國に事えて、大國は、晉なり。

而無天菑。若之何取之。陽虎欲勤齊師也。齊師罷、大臣必多死亡。已於是乎奮其詐謀。夫陽虎有寵於季氏、而將殺季孫、以不利魯國而求容焉。求自容。○罷、音皮。
【読み】
天菑[てんさい]無し。之を若何ぞ之を取らん。陽虎は齊の師を勤めしめんと欲するなり。齊の師罷[つか]れば、大臣必ず多く死亡せん。已是に於て其の詐謀を奮わんとす。夫れ陽虎季氏に寵有りて、將に季孫を殺さんとし、以て魯國に不利して容れられんことを求めんとす。自ら容れられんことを求む。○罷は、音皮。

親富不親仁。君焉用之。君富於季氏、而大於魯國。玆陽虎所欲傾覆也。魯免其疾、而君又收之、無乃害乎。
【読み】
富を親しみて仁を親しまず。君焉ぞ之を用いん。君季氏より富みて、魯國より大なり。玆れ陽虎が傾覆せんと欲する所なり。魯其の疾を免れて、君又之を收めば、乃ち害あること無からんや、と。

齊侯執陽虎、將東之。陽虎願東。陽虎欲西奔晉。知齊必反己。故詐以東爲願。
【読み】
齊侯陽虎を執え、將に之を東せんとす。陽虎東せんと願う。陽虎西のかた晉に奔らんと欲す。齊必ず己に反せんことを知る。故に詐りて東を以て願いと爲す。

乃囚諸西鄙。盡借邑人之車、鍥其軸、麻約而歸之、鍥、刻也。欲絕追者。○鍥、苦結反。
【読み】
乃ち諸を西鄙に囚う。盡く邑人の車を借り、其の軸を鍥[きざ]み、麻にて約して之を歸し、鍥[けつ]は、刻むなり。追う者を絕たんと欲す。○鍥は、苦結反。

載蔥靈、寢於其中而逃。蔥靈、輜車名。○蔥、初江反。或音怱。
【読み】
蔥靈[そうれい]に載り、其の中に寢ねて逃ぐ。蔥靈は、輜車の名。○蔥は、初江反。或は音怱[そう]。

追而得之、囚於齊。又以蔥靈逃、奔宋。遂奔晉、適趙氏。仲尼曰、趙氏其世有亂乎。受亂人故。
【読み】
追いて之を得、齊に囚う。又蔥靈を以て逃げて、宋に奔る。遂に晉に奔り、趙氏に適く。仲尼曰く、趙氏は其れ世々亂有らんか、と。亂人を受くる故なり。

秋、齊侯伐晉夷儀。爲衛討也。
【読み】
秋、齊侯晉の夷儀を伐つ。衛の爲に討ずるなり。

敝無存之父將室之。辭、以與其弟、無存、齊人也。室之、爲取婦。
【読み】
敝無存の父將に之に室せんとす。辭して、以て其の弟に與えて、無存は、齊人なり。之に室すとは、爲に婦を取[めと]るなり。

曰、此役也不死、反必娶於高・國。高氏・國氏、齊貴族也。無存欲必有功還、取卿相之女。
【読み】
曰く、此の役や死なずんば、反りて必ず高・國に娶らん、と。高氏・國氏は、齊の貴族なり。無存必ず功有りて還りて、卿相の女を取らんと欲す。

先登、求自門出、死於霤下。旣入城。夷儀人不服。故鬭死於門屋霤下也。
【読み】
先登し、門より出でんことを求め、霤下[りゅうか]に死す。旣に城に入る。夷儀の人服せず。故に門の屋霤下に鬭死す。

東郭書讓登。登城非人所樂。故讓衆使後、而己先登。○樂、如字。又五孝反。
【読み】
東郭書讓りて登る。城に登るは人の樂しむ所に非ず。故に衆に讓り後れしめて、己先ず登る。○樂は、字の如し。又五孝反。

犂彌從之。曰、子讓而左。我讓而右。使登者絕而後下。恐書先下。故又譎以讓之。下、入城也。
【読み】
犂彌之に從う。曰く、子讓りて左せよ。我は讓りて右せん。登る者をして絕えしめて而して後に下らん、と。恐れらくは書先ず下らんことを。故に又譎[いつわ]りて以て之に讓るなり。下るとは、城に入るなり。

書左。彌先下。書從彌言左行。彌遂自先下。亦讓也。
【読み】
書左す。彌先ず下る。書彌が言に從いて左行す。彌遂に自ら先ず下る。亦讓るなり。

書與王猛息。戰訖共止息。
【読み】
書王猛と息う。戰訖[お]わりて共に止息す。

猛曰、我先登。書斂甲曰、曩者之難。今又難焉。斂甲起。欲擊猛。○曩、乃黨反。嚮也。難、乃旦反。
【読み】
猛曰く、我れ先登せり、と。書甲を斂めて曰く、曩者[さき]に難あり。今又難あり、と。甲を斂めて起つ。猛を擊たんと欲するなり。○曩[のう]は、乃黨反。嚮なり。難は、乃旦反。

猛笑曰、吾從子、如驂之靳。靳、車中馬也。猛不敢與書爭。言己從書、如驂馬之隨靳也。傳言齊師和、所以能克。○靳、居覲反。
【読み】
猛笑いて曰く、吾が子に從うは、驂と靳との如し、と。靳は、車の中馬なり。猛敢えて書と爭わず。言うこころは、己書に從うこと、驂馬の靳に隨うが如し。傳齊の師和す、能く克つ所以を言う。○靳は、居覲反。

晉車千乘在中牟。救夷儀也。今熒陽有中牟縣。遠。疑非也。
【読み】
晉の車千乘中牟に在り。夷儀を救うなり。今熒陽に中牟縣有り。遠なり。疑うらくは非ならん。
*「廻」は、漢籍國字解全書では「迥」。

衛侯將如五氏。齊侯在五氏。將往助之。
【読み】
衛侯將に五氏に如かんとす。齊侯五氏に在り。將に往きて之を助けんとす。

卜過之。龜焦。衛至五氏、道過中牟。畏晉故卜。龜焦、兆不成。不可以行事也。
【読み】
之を過ぎんことを卜す。龜焦る。衛五氏に至らんとして、道中牟を過ぐ。晉を畏るる故に卜す。龜焦るとは、兆の成らざるなり。以て事を行う可からざるなり。

衛侯曰、可也。衛車當其半、寡人當其半、敵矣。衛侯怒晉甚。不復顧卜、欲以身當五百乘。
【読み】
衛侯曰く、可なり。衛の車其の半ばに當たり、寡人其の半ばに當らば、敵せん、と。衛侯晉を怒ること甚だし。復卜を顧みず、身を以て五百乘に當たらんことを欲す。

乃過中牟。中牟人欲伐之。衛褚師圃亡在中牟。曰、衛雖小其君在焉。未可勝也。齊師克城而驕。其帥又賤。城、謂夷儀也。帥、謂東郭書。○褚、中呂反。
【読み】
乃ち中牟を過ぐ。中牟の人之を伐たんことを欲す。衛の褚師圃亡げて中牟に在り。曰く、衛小なりと雖も其の君在り。未だ勝つ可からざるなり。齊の師城に克ちて驕れり。其の帥又賤し。城は、夷儀を謂うなり。帥は、東郭書を謂う。○褚は、中呂反。

遇必敗之。不如從齊。乃伐齊師、敗之。獲齊車五百乘。事見哀十五年。
【読み】
遇わば必ず之を敗らん。齊を從[お]うに如かず、と。乃ち齊の師を伐ち、之を敗る。齊の車五百乘を獲たり。事は哀十五年に見ゆ。

齊侯致禚・媚・杏於衛。三邑、皆齊西界。以答謝衛意。○禚、諸若反。
【読み】
齊侯禚[しゃく]・媚・杏を衛に致す。三邑は、皆齊の西界。以て衛の意に答謝す。○禚は、諸若反。

齊侯賞犂彌。犂彌辭曰、有先登者。臣從之。皙幘而衣貍製。皙、白也。幘、齒上下相値。製、裘也。○幘、音策。又音責。衣、去聲。
【読み】
齊侯犂彌を賞す。犂彌辭して曰く、先登する者有り。臣之に從えり。皙幘[せきさく]にして貍製を衣たり、と。皙は、白なり。幘は、齒の上下相値[あ]たるなり。製は、裘なり。○幘は、音策。又音責。衣は、去聲。

公使視東郭書。曰、乃夫子也。吾貺子。貺、賜也。
【読み】
公東郭書を視せしむ。曰く、乃ち夫子なり。吾れ子に貺[きょう]せん、と。貺は、賜うなり。

公賞東郭書。辭曰、彼賓旅也。言彼與我若賓主相讓、旅倶進退。
【読み】
公東郭書を賞す。辭して曰く、彼とは賓旅なり。言うこころは、彼と我とは賓主の相讓り、旅倶に進退するが若し。

乃賞犂彌。
【読み】
乃ち犂彌を賞す。

齊師之在夷儀也、齊侯謂夷儀人曰、得敝無存者、以五家免。給其五家、令常不共役事。
【読み】
齊の師の夷儀に在るや、齊侯夷儀の人に謂いて曰く、敝無存を得ん者には、五家を以て免ぜん、と。其に五家を給して、常に役事に共せざらしむ。

乃得其尸。公三襚之、襚、衣也。比殯三加襚、深禮厚之。
【読み】
乃ち其の尸を得たり。公三たび之に襚[すい]し、襚は、衣なり。殯する比[ころおい]三たび襚を加るは、深く之を禮厚するなり。

與之犀軒與直蓋、犀軒、卿車。直蓋、高蓋。
【読み】
之に犀軒と直蓋とを與えて、犀軒は、卿車。直蓋は、高蓋。

而先歸之、坐引者、以師哭之、停喪車以盡哀也。君方爲位而哭。故挽喪者不敢立。
【読み】
先ず之を歸し、引く者を坐せしめ、師を以[い]て之を哭し、喪車を停めて以て哀を盡くすなり。君方に位を爲して哭す。故に喪を挽く者敢えて立たず。

親推之三。齊侯自推喪車、輪三轉。○推、如字。又他囘反。
【読み】
親ら之を推すこと三たびす。齊侯自ら喪車を推して、輪三轉す。○推は、字の如し。又他囘反。


〔經〕十年、春、王三月、及齊平。平前八年、再侵齊之怨。
【読み】
〔經〕十年、春、王の三月、齊と平らぐ。前八年、再び齊を侵すの怨みを平らぐ。

夏、公會齊侯于夾谷。平故。○夾、古洽反。又古協反。
【読み】
夏、公齊侯に夾谷に會す。平らぐ故なり。○夾は、古洽反。又古協反。

公至自夾谷。無傳。
【読み】
公夾谷より至る。傳無し。

晉趙鞅帥師圍衛。齊人來歸鄆・讙・龜陰田。三邑、皆汶陽田也。泰山博縣北有龜山。陰田、在其北也。會夾谷、孔子相。齊人服義而歸魯田。○鄆、音運。讙、火官反。
【読み】
晉の趙鞅師を帥いて衛を圍む。齊人來りて鄆[うん]・讙[かん]・龜陰の田を歸す。三邑は、皆汶陽[ぶんよう]の田なり。泰山博縣の北に龜山有り。陰田は、其の北に在り。夾谷に會するとき、孔子相く。齊人義に服して魯に田を歸せり。○鄆は、音運。讙は、火官反。

叔孫州仇・仲孫何忌帥師圍郈。郈、叔孫氏邑。○郈、音后。
【読み】
叔孫州仇・仲孫何忌師を帥いて郈[こう]を圍む。郈は、叔孫氏の邑。○郈は、音后。

秋、叔孫州仇・仲孫何忌帥師圍郈。宋樂大心出奔曹。傳在前年春。書名、罪其稱疾不適晉。
【読み】
秋、叔孫州仇・仲孫何忌師を帥いて郈を圍む。宋の樂大心出でて曹に奔る。傳前年の春に在り。名を書すは、其の疾を稱して晉に適かざるを罪するなり。

宋公子地出奔陳。貪弄馬以距君命、書名罪之也。
【読み】
宋の公子地出でて陳に奔る。馬を貪弄して以て君命を距めば、名を書して之を罪するなり。

冬、齊侯・衛侯・鄭游速會于安甫。無傳。安甫、地闕。
【読み】
冬、齊侯・衛侯・鄭の游速安甫に會す。傳無し。安甫は、地闕く。

叔孫州仇如齊。宋公之弟辰曁仲佗・石彄出奔陳。曁、與也。宋公寵向魋、不聽辰請。辰忿而將大臣出奔。虛請自忿。稱弟、示首惡也。仲佗・石彄皆爲國卿。不能匡君靜難、而爲辰所牽帥出奔。稱名、亦罪之也。○佗、徒何反。彄、苦侯反。魋、大回反。難、乃旦反。
【読み】
叔孫州仇齊に如く。宋公の弟辰仲佗・石彄[せきこう]と出でて陳に奔る。曁[き]は、與なり。宋公向魋[しょうたい]を寵して、辰が請を聽かず。辰忿りて大臣を將[ひき]いて出奔す。請を虛しくし自ら忿る。弟と稱するは、首惡を示すなり。仲佗・石彄は皆國卿爲り。君を匡し難を靜むること能わずして、辰が爲に牽帥せられて出奔す。名を稱するは、亦之を罪するなり。○佗は、徒何反。彄は、苦侯反。魋は、大回反。難は、乃旦反。

〔傳〕十年、春、及齊平。夏、公會齊侯于祝其。實夾谷。夾谷、卽祝其也。
【読み】
〔傳〕十年、春、齊と平らぐ。夏、公齊侯に祝其に會す。實は夾谷なり。夾谷は、卽ち祝其なり。

孔丘相。相會儀也。
【読み】
孔丘相く。會儀を相くなり。

犂彌言於齊侯曰、孔丘知禮而無勇。若使萊人以兵劫魯侯、必得志焉。萊人、齊所滅萊夷也。○劫、居業反。
【読み】
犂彌齊侯に言いて曰く、孔丘は禮を知れども勇無し。若し萊人をして兵を以て魯侯を劫かさしめば、必ず志を得ん、と。萊人は、齊の滅ぼす所の萊夷なり。○劫は、居業反。

齊侯從之。孔丘以公退曰、士兵之。以兵擊萊人。
【読み】
齊侯之に從う。孔丘公を以[い]て退きて曰く、士之を兵せよ。兵を以て萊人を擊つ。

兩君合好。而裔夷之俘以兵亂之。裔、遠也。
【読み】
兩君好を合わす。而るを裔夷の俘兵を以て之を亂らんとす。裔は、遠きなり。

非齊君所以命諸侯也。裔不謀夏。夷不亂華。俘不干盟。兵不偪好。於神爲不祥、盟將告神。犯之爲不善。
【読み】
齊君の諸侯に命ずる所以に非ざるなり。裔は夏を謀らず。夷は華を亂らず。俘は盟を干さず。兵は好に偪らず。神に於ては不祥と爲し、盟は將に神に告げんとす。之を犯すを不善と爲す。

於德爲愆義、於人爲失禮。君必不然。齊侯聞之、遽辟之。辟去萊兵也。○辟、婢亦反。又音避。去、起呂反。
【読み】
德に於ては愆義[けんぎ]と爲し、人に於ては失禮と爲す。君必ず然らじ、と。齊侯之を聞きて、遽[あわ]てて之を辟[しりぞ]かしむ。萊兵を辟き去らしむ。○辟は、婢亦反。又音避。去は、起呂反。

將盟。齊人加於載書曰、齊師出竟、而不以甲車三百乘從我者、有如此盟。如此盟詛之禍。
【読み】
將に盟わんとす。齊人載書に加えて曰く、齊の師竟を出でんに、而[なんじ]甲車三百乘を以て我に從わざる者あらば、此の盟の如きこと有らん、と。此の盟詛の禍の如くならん。

孔丘使玆無還揖對、無還、魯大夫。○還、音旋。
【読み】
孔丘玆無還[じむせん]をして揖して對えしめて、無還は、魯の大夫。○還は、音旋。

曰、而不反我汶陽之田、吾以共命者、亦如之。須齊歸汶陽田、乃當共齊命。於是孔子以公退、賤者終其事。要盟不絜。故畧不書。○共、音恭。要、一遙反。
【読み】
曰く、而我が汶陽[ぶんよう]の田を反さずんば、吾が以て命に共せん者も、亦之の如けん、と。齊の汶陽の田を歸すを須ちて、乃ち當に齊の命に共すべし。是に於て孔子公を以て退き、賤者其の事を終うる。要盟絜[いさぎよ]からず。故に畧して書さず。○共は、音恭。要は、一遙反。

齊侯將享公。孔丘謂梁丘據曰、齊・魯之故、吾子何不聞焉。故、舊典。
【読み】
齊侯將に公を享せんとす。孔丘梁丘據に謂いて曰く、齊・魯の故を、吾子何ぞ聞かざる。故は、舊典。

事旣成矣。會事成。
【読み】
事旣成れり。會事成る。

而又享之、是勤執事也。且犧象不出門、嘉樂不野合。犧象、酒器、犧尊・象尊也。嘉樂、鐘磬也。○犧、許宜反。又息河反。
【読み】
而るを又之を享せば、是れ執事を勤めしむるなり。且つ犧象は門を出ださず、嘉樂は野合せず。犧象は、酒器、犧尊と象尊となり。嘉樂は、鐘磬[しょうけい]なり。○犧は、許宜反。又息河反。

饗而旣具、是棄禮也。若其不具、用秕稗也。秕、穀不成者。稗、草之似穀者。言享不具禮、穢薄、若秕稗。○秕、音鄙。稗、皮賣反。
【読み】
饗して旣[ことごと]く具えば、是れ禮を棄つるなり。若し其れ具えざれば、秕稗[ひはい]を用ゆるなり。秕は、穀の成らざる者。稗は、草の穀に似たる者。言うこころは、享して禮を具えざるは、穢薄[わいはく]なること、秕稗の若し。○秕は、音鄙。稗は、皮賣反。

用秕稗君辱。棄禮名惡。子盍圖之。夫享、所以昭德也。不昭、不如其已也。乃不果享。孔子知齊侯懷詐。故以禮距之。
【読み】
秕稗を用ゆるは君の辱なり。禮を棄つるは名惡し。子盍ぞ之を圖らざる。夫れ享は、德を昭らかにする所以なり。昭らかならざるは、其の已むに如かず、と。乃ち享を果たさず。孔子齊侯の詐を懷くを知る。故に禮を以て之を距む。

齊人來歸鄆・讙・龜陰之田。陽虎九年以此奔齊。經文倒者、次魯事。
【読み】
齊人來りて鄆・讙・龜陰の田を歸す。陽虎九年此を以て齊に奔る。經文倒するは、魯の事を次づればなり。

晉趙鞅圍衛、報夷儀也。前年、齊爲衛伐晉夷儀。故伐衛以爲報。
【読み】
晉の趙鞅衛を圍むは、夷儀に報ゆるなり。前年、齊衛の爲に晉の夷儀を伐つ。故に衛を伐ちて以て報を爲す。

初、衛侯伐邯鄲午於寒氏、邯鄲、廣平縣也。午、晉邯鄲大夫。寒氏、卽五氏也。前年、衛人助齊伐五氏。○邯、音寒。鄲、音丹。
【読み】
初め、衛侯邯鄲午を寒氏に伐ち、邯鄲は、廣平縣なり。午は、晉の邯鄲の大夫。寒氏は、卽ち五氏なり。前年、衛人齊を助けて五氏を伐つ。○邯は、音寒。鄲は、音丹。

城其西北而守之、宵熸。午衆宵散。○熸、子潛反。
【読み】
其の西北に城きて之を守りしかば、宵熸[せん]せり。午の衆宵散ず。○熸は、子潛反。

及晉圍衛、午以徒七十人門於衛西門、殺人於門中、曰、請報寒氏之役。衛開門與午鬭。
【読み】
晉の衛を圍むに及びて、午徒七十人を以て衛の西門を門[せ]め、人を門中に殺して、曰く、請う、寒氏の役に報いん、と。衛門を開きて午と鬭う。

涉佗曰、夫子則勇矣。然我往、必不敢啓門。亦以徒七十人、旦門焉、步左右、皆至而立。如植。至其門下、步行門左右、然後立待。如立木不動、以示整。○植、如字。一音値。
【読み】
涉佗曰く、夫子は則ち勇なり。然れども我れ往かば、必ず敢えて門を啓[ひら]かじ、と。亦徒七十人を以て、旦に門め、左右に步み、皆至りて立つ。植[た]てるが如し。其の門下に至り、門の左右を步行して、然して後に立ちて待つ。立木の動かざるが如くにして、以て整えるを示す。○植は、字の如し。一に音値。

日中不啓門。乃退。
【読み】
日中まで門を啓かず。乃ち退く。

反役、晉人討衛之叛故、曰、由涉佗・成何。捘衛侯手故。
【読み】
役より反り、晉人衛の叛く故を討じて、曰く、涉佗・成何に由れり、と。衛侯の手を捘[お]す故なり。

於是執涉佗以求成於衛。衛人不許。晉人遂殺涉佗。成何奔燕。
【読み】
是に於て涉佗を執えて以て成[たい]らぎを衛に求む。衛人許さず。晉人遂に涉佗を殺す。成何燕に奔る。

君子曰、此之謂棄禮。必不鈞。言必見殺、不得與人等。
【読み】
君子曰く、此を之れ禮を棄つと謂う。必ず鈞しからず。言うこころは、必ず殺されて、人と等しきを得ず。

詩曰、人而無禮、胡不遄死。涉佗亦遄矣哉。詩、鄘風。遄、速也。
【読み】
詩に曰く、人として禮無きは、胡ぞ遄[すみ]やかに死せざらんや、と。涉佗も亦遄やかなるかな、と。詩は、鄘風。遄[せん]は、速やかなり。

初、叔孫成子欲立武叔。公若藐固諫曰、不可。藐、叔孫氏之族。○藐、音邈。又亡小反。
【読み】
初め、叔孫成子武叔を立てんことを欲す。公若藐[こうじゃくばく]固く諫めて曰く、不可なり、と。藐は、叔孫氏の族。○藐は、音邈。又亡小反。

成子立之、而卒。公南使賊射之。不能殺。公南、叔孫家臣。武叔之黨。○射、音石。
【読み】
成子之を立てて、卒す。公南賊をして之を射せしむ。殺すこと能わず。公南は、叔孫の家臣。武叔の黨。○射は、音石。

公南爲馬正、使公若爲郈宰。武叔旣定、使郈馬正侯犯殺公若。不能。其圉人曰、武叔之圉人。
【読み】
公南を馬正と爲し、公若をして郈の宰と爲らしむ。武叔旣に定まり、郈馬正侯犯をして公若を殺さしむ。能わず。其の圉人曰く、武叔の圉人。

吾以劒過朝、公若必曰誰之劒也。吾稱子以告、必觀之。吾僞固而授之末、則可殺也。僞爲固陋不知禮者、以劒鋒末授之。
【読み】
吾れ劒を以て朝を過ぎば、公若必ず誰が劒ぞと曰わん。吾れ子を稱して以て告げば、必ず之を觀ん。吾れ固なる僞[まね]して之に末を授けば、則ち殺す可し、と。僞りて固陋にして禮を知らざる者の爲[まね]して、劒の鋒末を以て之に授くるなり。

使如之。公若曰、爾欲吳王我乎。見劒向己、逆呵之。鱄諸殺吳王、亦用劒刺之。○刺、七亦反。
【読み】
之の如くせしむ。公若曰く、爾我を吳王にせんと欲するか、と。劒の己に向かうを見て、逆えて之を呵す。鱄諸が吳王を殺すも、亦劒を用いて之を刺せり。○刺は、七亦反。

遂殺公若。侯犯以郈叛。犯以不能副武叔之命、故叛。叛而以圍告廟。故書圍。
【読み】
遂に公若を殺す。侯犯郈を以て叛く。犯武叔の命に副[かな]うこと能わざるを以て、故に叛く。叛きて圍を以て廟に告ぐ。故に圍を書す。

武叔・懿子圍郈。弗克。秋、二子及齊師復圍郈。弗克。
【読み】
武叔・懿子郈を圍む。克たず。秋、二子齊の師と復郈を圍む。克たず。

叔孫謂郈工師駟赤、工師、掌工匠之官。○復、扶又反。
【読み】
叔孫郈の工師駟赤に謂いて、工師は、工匠を掌るの官。○復は、扶又反。

曰、郈非唯叔孫氏之憂。社稷之患也。將若之何。對曰、臣之業、在揚水卒章之四言矣。揚水、詩唐風。卒章四言曰、我聞有命。
【読み】
曰く、郈は唯叔孫氏の憂えのみに非ず。社稷の患えなり。將に之を若何にせんとする、と。對えて曰く、臣の業は、揚水の卒章の四言に在り、と。揚水は、詩の唐風。卒章の四言に曰く、我れ命有るを聞く、と。

叔孫稽首。謝其受己命。
【読み】
叔孫稽首す。其の己が命を受くるを謝す。

駟赤謂侯犯曰、居齊・魯之際而無事、必不可矣。無所服事。
【読み】
駟赤侯犯に謂いて曰く、齊・魯の際に居りて事うること無くば、必ず不可なり。服事する所無し。

子盍求事於齊以臨民。不然將叛。侯犯從之。齊使至。駟赤與郈人爲之宣言於郈中、詐爲齊使言也。
【読み】
子盍ぞ齊に事うることを求めて以て民に臨まざる。然らずんば將に叛かんとす、と。侯犯之に從う。齊の使い至る。駟赤郈人と之が爲に郈中に宣言して、詐りて齊の使いの言を爲すなり。

曰、侯犯將以郈易于齊。齊人將遷郈民。謂易其民人。
【読み】
曰く、侯犯將に郈を以て齊に易えんとす。齊人將に郈の民を遷さんとす、と。其の民人を易うることを謂う。

衆兇懼。不欲遷。○兇、音凶。又上聲。
【読み】
衆兇[きょう]として懼る。遷ることを欲せず。○兇は、音凶。又上聲。

駟赤謂侯犯曰、衆言異矣。不與始同。
【読み】
駟赤侯犯に謂いて曰く、衆言異なり。始めと同じからず。

子不如易於齊。與其死也、猶是郈也、而得紓焉。何必此。言以郈民易取齊人、與郈無異。勝於守郈、爲叛人所殺。
【読み】
子齊に易えんには如かじ。其の死なんよりは、猶是れ郈にして、紓[ゆる]むることを得ん。何ぞ必ずしも此のみならん。言うこころは、郈の民を以て齊人に易え取らば、郈と異なること無し。郈を守りて、叛人の爲に殺さるに勝れり。

齊人欲以此偪魯、必倍與子地。言非徒得民。又將得齊地。
【読み】
齊人此を以て魯に偪らんと欲すれば、必ず子に地を倍與せん。言うこころは、徒に民を得るのみに非ず。又將に齊の地を得んとす。

且盍多舍甲於子之門、以備不虞。侯犯曰、諾。乃多舍甲焉。侯犯請易於齊。齊有司觀郈。將至。駟赤使周走呼曰、齊師至矣。郈人大駭。介侯犯之門甲、以圍侯犯。駟赤將射之。僞爲侯犯射郈人。○呼、火故反。
【読み】
且盍ぞ多く甲を子の門に舍きて、以て不虞に備えざる、と。侯犯曰く、諾、と。乃ち多く甲を舍く。侯犯齊に易えんことを請う。齊の有司郈を觀る。將に至らんとす。駟赤周く走り呼ばしめて曰く、齊の師至れり、と。郈人大いに駭く。侯犯の門甲を介して、以て侯犯を圍む。駟赤將に之を射んとす。僞りて侯犯の爲に郈人を射る。○呼は、火故反。

侯犯止之曰、謀免我。侯犯請行。許之。郈人許之。
【読み】
侯犯之を止めて曰く、我を免れしむることを謀れ、と。侯犯行[さ]らんと請う。之を許す。郈人之を許す。

駟赤先如宿、宿、東平無鹽縣。故宿國。
【読み】
駟赤先ず宿に如かんとし、宿は、東平無鹽縣。故の宿國。

侯犯殿。每出一門、郈人閉之。閉其後門。○殿、丁見反。
【読み】
侯犯殿たり。一門を出づる每に、郈人之を閉ず。其の後門を閉ず。○殿は、丁見反。

及郭門、止之曰、子以叔孫氏之甲出。有司若誅之、誅、責也。
【読み】
郭門に及ぶとき、之を止めて曰く、子叔孫氏の甲を以て出づ。有司若し之を誅[せ]めば、誅は、責むるなり。

羣臣懼死。駟赤曰、叔孫氏之甲有物。吾未敢以出。物、識也。赤還救侯犯也。○識、申志反。又如字。
【読み】
羣臣死せんことを懼る、と。駟赤曰く、叔孫氏の甲には物有り。吾れ未だ敢えて以て出でず、と。物は、識なり。赤還りて侯犯を救うなり。○識は、申志反。又字の如し。

犯謂駟赤曰、子止而與之數。數甲以相付。○數、色主反。
【読み】
犯駟赤に謂いて曰く、子は止まりて之と數えよ、と。甲を數えて以て相付[さず]けよ、と。○數は、色主反。

駟赤止而納魯人。
【読み】
駟赤止まりて魯人を納れぬ。

侯犯奔齊。齊人乃致郈。致其名簿也。爲下武叔如齊傳。
【読み】
侯犯齊に奔る。齊人乃ち郈を致す。其の名簿を致すなり。下の武叔齊に如く爲の傳なり。

宋公子地嬖蘧富獵、地、宋景公弟、辰之兄也。○蘧、其居反。
【読み】
宋の公子地蘧富獵を嬖して、地は、宋の景公の弟、辰の兄なり。○蘧は、其居反。

十一分其室、而以其五與之。與富獵也。
【読み】
其の室を十一分にして、其の五を以て之に與えぬ。富獵に與う。

公子地有白馬四。公嬖向魋。魋欲之。向魋、司馬桓魋也。
【読み】
公子地白馬四つ有り。公向魋[しょうたい]を嬖す。魋之を欲す。向魋は、司馬桓魋なり。

公取而朱其尾鬣以與之。與魋也。
【読み】
公取りて其の尾鬣[びりょう]を朱にして以て之に與う。魋に與う。

地怒。使其徒抶魋而奪之。魋懼、將走。公閉門而泣之。目盡腫。母弟辰曰、子分室以與獵也、而獨卑魋。亦有頗焉。子爲君禮。禮、辟君也。○抶、勑乙反。頗、普多反。
【読み】
地怒る。其の徒をして魋を抶[う]ちて之を奪わしむ。魋懼れ、將に走らんとす。公門を閉じて泣く。目盡く腫れたり。母弟辰曰く、子室を分けて以て獵に與えて、獨り魋を卑しむ。亦頗有り。子君の爲に禮せよ。禮は、君を辟くるなり。○抶[ちつ]は、勑乙反。頗は、普多反。

不過出竟、君必止子。公子地出奔陳。公弗止。辰爲之請。弗聽。辰曰、是我迋吾兄也。迋、欺也。○迋、求往反。又古況反。
【読み】
竟を出づるに過ぎずして、君必ず子を止めん、と。公子地出でて陳に奔る。公止めず。辰之が爲に請う。聽かず。辰曰く、是れ我れ吾が兄を迋[あざむ]くなり。迋[きょう]は、欺くなり。○迋は、求往反。又古況反。

吾以國人出、君誰與處。
【読み】
吾れ國人を以て出でば、君誰と與に處らん、と。

冬、母弟辰曁仲佗・石彄出奔陳。佗、中幾子。彄、褚師段子。皆宋卿。衆之所望。故言國人。
【読み】
冬、母弟辰仲佗・石彄と出でて陳に奔る。佗は、中幾の子。彄は、褚師段の子。皆宋の卿。衆の望む所なり。故に國人と言う。

武叔聘于齊。謝致郈也。經書辰奔在聘後者、從告。
【読み】
武叔齊に聘す。郈を致すを謝するなり。經辰が奔るを書して聘するの後に在るは、告ぐるに從うなり。

齊侯享之。曰、子叔孫、若使郈在君之他竟、寡人何知焉。屬與敝邑際。故敢助君憂之。以致郈德叔孫。○屬、音燭。
【読み】
齊侯之を享す。曰く、子叔孫、若し郈をして君の他竟に在らしめば、寡人何ぞ知らん。屬[たま]々敝邑と際[まじ]わる。故に敢えて君を助けて之を憂えり、と。郈を致すを以て叔孫に德とす。○屬は、音燭。

對曰、非寡君之望也。所以事君、封疆社稷是以。以、猶爲也。
【読み】
對えて曰く、寡君の望みに非ざるなり。君に事うる所以は、封疆社稷是が以[ため]なり。以は、猶爲のごとし。

敢以家隸、勤君之執事。夫不令之臣、天下之所惡也。君豈以爲寡君賜。言義在討惡。非所以賜寡君。
【読み】
敢えて家隸を以て、君の執事を勤めしめんや。夫れ不令の臣は、天下の惡む所なり。君豈以て寡君の賜とするか、と。言うこころは、義惡を討ずるに在り。寡君に賜とする所以に非ず。


〔經〕十有一年、春、宋公之弟辰及仲佗・石彄・公子地、自陳入于蕭以叛。蕭、宋邑。稱弟例、在前年。
【読み】
〔經〕十有一年、春、宋公の弟辰仲佗・石彄[せきこう]・公子地と、陳より蕭[しょう]に入りて以[い]て叛く。蕭は、宋の邑。弟と稱するの例は、前年に在り。

夏、四月。秋、宋樂大心自曹入于蕭。入蕭從叛人、叛可知。故不書叛。
【読み】
夏、四月。秋、宋の樂大心曹より蕭に入る。蕭に入りて叛人に從えば、叛くこと知る可し。故に叛くを書さず。

冬、及鄭平。平六年、侵鄭取匡之怨。
【読み】
冬、鄭と平らぐ。六年、鄭を侵して匡を取るの怨みを平らぐ。

叔還如鄭涖盟。還、叔詣曾孫。○還、音旋。案世族譜、叔還、是叔弓曾孫。此誤。
【読み】
叔還[しゅくせん]鄭に如きて涖[のぞ]みて盟う。還は、叔詣の曾孫。○還は、音旋。案ずるに世族譜に、叔還は、是れ叔弓の曾孫、と。此は誤りなり。

〔傳〕十一年、春、宋公母弟辰曁仲佗・石彄・公子地入于蕭以叛。秋、樂大心從之、大爲宋患。寵向魋故也。惡宋公寵不義、以致國患。
【読み】
〔傳〕十一年、春、宋公の母弟辰仲佗・石彄・公子地と蕭に入り以て叛く。秋、樂大心之に從い、大いに宋の患えを爲せり。向魋[しょうたい]を寵する故なり。宋公不義を寵して、以て國患を致すを惡む。

冬、及鄭平、始叛晉也。魯自僖公以来、世服於晉。至今而叛。故曰始。
【読み】
冬、鄭と平らぐは、始めて晉に叛くなり。魯僖公より以来、世々晉に服す。今に至りて叛く。故に始めてと曰う。


〔經〕十有二年、春、薛伯定卒。無傳。四年、盟皐鼬。
【読み】
〔經〕十有二年、春、薛伯定卒す。傳無し。四年、皐鼬[こうゆう]に盟う。

夏、葬薛襄公。無傳。
【読み】
夏、薛の襄公を葬る。傳無し。

叔孫州仇帥師墮郈。墮、毀也。患其險固。故毀壞其城。○墮、許規反。壞、音怪。又戶怪反。
【読み】
叔孫州仇師を帥いて郈[こう]を墮[こぼ]つ。墮は、毀つなり。其の險固を患う。故に其の城を毀壞す。○墮は、許規反。壞は、音怪。又戶怪反。

衛公孟彄帥師伐曹。彄、孟縶之子。○彄、苦侯反。縶、陟立反。
【読み】
衛の公孟彄[こうもうこう]師を帥いて曹を伐つ。彄は、孟縶[もうちゅう]の子。○彄は、苦侯反。縶は、陟立反。

季孫斯・仲孫何忌帥師墮費。秋、大雩。無傳。書過。
【読み】
季孫斯・仲孫何忌師を帥いて費を墮つ。秋、大いに雩[う]す。傳無し。過ぐるを書す。

冬、十月、癸亥、公會齊侯盟于黃。無傳。結叛晉。
【読み】
冬、十月、癸亥[みずのと・い]、公齊侯に會して黃に盟う。傳無し。晉に叛くことを結ぶなり。

十有一月、丙寅、朔、日有食之。無傳。
【読み】
十有一月、丙寅[ひのえ・とら]、朔、日之を食する有り。傳無し。

公至自黃。無傳。
【読み】
公黃より至る。傳無し。

十有二月、公圍成。公至自圍成。無傳。國内而書至者、成彊若列國、興動大衆。故出入皆告廟。
【読み】
十有二月、公成を圍む。公成を圍みてより至る。傳無し。國内にして至ると書すは、成彊くして列國の若く、大衆を興動す。故に出入皆廟に告ぐればなり。

〔傳〕十二年、夏、衛公孟彄伐曹、克郊。郊、曹邑。
【読み】
〔傳〕十二年、夏、衛の公孟彄曹を伐ち、郊に克つ。郊は、曹の邑。

還。滑羅殿。羅、衛大夫。○滑、干八反。
【読み】
還る。滑羅殿たり。羅は、衛の大夫。○滑は、干八反。

未出、不退于列。未出曹竟、羅不退、在行列之後。
【読み】
未だ出でず、列より退かず。未だ曹の竟を出でず、羅退かずして、行列の後に在り。

其御曰、殿而在列、其爲無勇乎。羅曰、與其素厲、寧爲無勇。素、空也。厲、猛也。言伐小國、當如畏者、以誘致之。
【読み】
其の御曰く、殿にして列に在るは、其れ勇無しとせんか、と。羅曰く、其の素厲せんよりは、寧ろ勇無きことをせん、と。素は、空しきなり。厲は、猛きなり。言うこころは、小國を伐つは、當に畏るる者の如くにして、以て之を誘致すべし。

仲由爲季氏宰。仲由、子路。
【読み】
仲由季氏が宰と爲る。仲由は、子路。

將墮三都。三都、費・郈・成也。彊盛將爲國害。故仲由欲毀之。
【読み】
將に三都を墮たんとす。三都は、費・郈・成なり。彊盛にして將に國の害を爲さんとす。故に仲由之を毀たんことを欲す。

於是叔孫氏墮郈。
【読み】
是に於て叔孫氏郈を墮つ。

季氏將墮費。公山不狃・叔孫輒帥費人以襲魯。不狃、費宰也。輒、不得志於叔孫氏。
【読み】
季氏將に費を墮たんとす。公山不狃[こうざんふじゅう]・叔孫輒[しゅくそんちょう]費人を帥いて以て魯を襲う。不狃は、費の宰なり。輒は、志を叔孫氏に得ざるなり。

公與三子入于季氏之宮、登武子之臺。費人攻之。弗克。入及公側。至臺下。
【読み】
公三子と季氏の宮に入り、武子の臺に登る。費人之を攻む。克たず。入りて公の側に及ぶ。臺下に至る。

仲尼命申句須・樂頎、下伐之。二子、魯大夫。仲尼時爲司寇。○句、音劬。頎、音祈。
【読み】
仲尼申句須[しんくしゅ]・樂頎[がくき]に命じて、下りて之を伐たしむ。二子は、魯の大夫。仲尼時に司寇爲り。○句は、音劬。頎は、音祈。

費人北。國人追之、敗諸姑蔑。二子奔齊。二子、不狃・叔孫輒。
【読み】
費人北[に]ぐ。國人之を追い、諸を姑蔑に敗る。二子齊に奔る。二子は、不狃・叔孫輒。

遂墮費。
【読み】
遂に費を墮つ。

將墮成。公斂處父謂孟孫、墮成、齊人必至于北門。成、在魯北竟故。
【読み】
將に成を墮たんとす。公斂處父孟孫に謂えらく、成を墮たば、齊人必ず北門に至らん。成は、魯の北竟に在る故なり。

且成、孟氏之保障也。無成、是無孟氏也。子僞不知。佯不知。
【読み】
且つ成は、孟氏の保障なり。成無くば、是れ孟氏無きなり。子知らずと僞れ。知らざる佯[まね]す。

我將不墮。
【読み】
我れ將に墮たれざらんとす、と。

冬、十二月、公圍成。弗克。
【読み】
冬、十二月、公成を圍む。克たず。


〔經〕十有三年、春、齊侯・衛侯次于垂葭。二君將使師伐晉。次垂葭以爲之援。
【読み】
〔經〕十有三年、春、齊侯・衛侯垂葭[すいか]に次[やど]る。二君將に師をして晉を伐たしめんとす。垂葭に次りて以て之が援けと爲す。

夏、築蛇淵囿。無傳。書不時也。
【読み】
夏、蛇淵に囿を築く。傳無し。時ならざるを書すなり。

大蒐于比蒲。無傳。夏蒐、非時。○比、音毗。
【読み】
比蒲に大蒐す。傳無し。夏蒐するは、時に非ざるなり。○比は、音毗。

衛公孟彄帥師伐曹。無傳。
【読み】
衛の公孟彄[こうもうこう]師を帥いて曹を伐つ。傳無し。

秋、晉趙鞅入于晉陽以叛。書叛、惡可知。
【読み】
秋、晉の趙鞅晉陽に入りて以て叛く。叛くと書せば、惡知る可し。

冬、晉荀寅・士吉射入于朝歌以叛。吉射、士鞅子。
【読み】
冬、晉の荀寅・士吉射朝歌に入りて以て叛く。吉射は、士鞅の子。

晉趙鞅歸于晉。韓・魏請而復之。故曰歸。言韓・魏之彊猶列國。
【読み】
晉の趙鞅晉に歸る。韓・魏請いて之を復す。故に歸ると曰う。言うこころは、韓・魏の彊きこと列國の猶きなり。

薛弑其君比。無傳。稱君、君無道。
【読み】
薛其の君比を弑す。傳無し。君を稱するは、君無道なればなり。

〔傳〕十三年、春、齊侯・衛侯次于垂葭。實郹氏。垂葭、改名。郹氏。高平鉅野縣西南有郹亭。○郹、古闃反。
【読み】
〔傳〕十三年、春、齊侯・衛侯垂葭に次る。實は郹氏[げきし]なり。垂葭は、改名。郹氏なり。高平鉅野縣の西南に郹亭有り。○郹は、古闃反。

使師伐晉。將濟河。諸大夫皆曰、不可。邴意玆曰、可。意玆、齊大夫。○邴、彼命反。
【読み】
師をして晉を伐たしむ。將に河を濟らんとす。諸大夫皆曰く、不可なり、と。邴意玆[へいいじ]曰く、可なり。意玆は、齊の大夫。○邴は、彼命反。

銳師伐河内、今河内汲郡。
【読み】
銳師河内を伐たば、今の河内の汲郡。

傳必數日而後及絳。傳告晉。○傳、春戀反、又直專反。數、所主反。
【読み】
傳必ず數日にして而して後に絳に及ばん。傳もて晉に告ぐ。○傳は、張戀反、又直專反。數は、所主反。

絳不三月、不能出河。則我旣濟水矣。乃伐河内。齊侯皆斂諸大夫之軒。唯邴意玆乘軒。以其言當。○當、丁浪反。
【読み】
絳より三月ならざれば、河を出づること能わじ。則ち我れ旣に水を濟らん、と。乃ち河内を伐つ。齊侯皆諸大夫の軒を斂む。唯邴意玆のみ軒に乘れり。其の言の當を以てなり。○當は、丁浪反。

齊侯欲與衛侯乘、共載。○乘、繩證反。下同。
【読み】
齊侯衛侯と乘らんと欲し、共に載るなり。○乘は、繩證反。下も同じ。

與之宴而駕乘廣、載甲焉、使告曰、晉師至矣。齊侯曰、比君之駕也、寡人請攝。以己車攝代衛車。○廣、古曠反。
【読み】
之と宴して乘廣に駕し、甲を載せ、告げしめて曰く、晉の師至れり、と。齊侯曰く、君の駕する比[ころおい]まで、寡人請う、攝せん、と。己が車を以て衛の車に攝代せん、と。○廣は、古曠反。

乃介而與之乘、驅之。或告曰、無晉師。乃止。傳言齊侯輕所以不能成功。○輕、遣政反。
【読み】
乃ち介して之と乘じて、之を驅る。或ひと告げて曰く、晉の師無し、と。乃ち止む。傳齊侯輕々しくして功を成すこと能わざる所以を言う。○輕は、遣政反。

晉趙鞅謂邯鄲午曰、歸我衛貢五百家。吾舍諸晉陽。午許諾。十年、趙鞅圍衛。衛人懼貢五百家。鞅置之邯鄲。今欲徙著晉陽。晉陽、趙鞅邑。
【読み】
晉の趙鞅邯鄲午に謂いて曰く、我に衛の貢せる五百家を歸[おく]れ。吾れ諸を晉陽に舍かん、と。午許諾す。十年、趙鞅衛を圍む。衛人懼れて五百家を貢す。鞅之を邯鄲に置く。今晉陽に徙著せんと欲す。晉陽は、趙鞅の邑。

歸告其父兄。父兄皆曰、不可。衛是以爲邯鄲。言衛以五百家在邯鄲、常爲是故與邯鄲親。○爲、于僞反。
【読み】
歸りて其の父兄に告ぐ。父兄皆曰く、不可なり。衛是を以て邯鄲の爲にす。言うこころは、衛五百家の邯鄲に在るを以て、常に是が爲の故に邯鄲と親しむ。○爲は、于僞反。

而寘諸晉陽、絕衛之道也。不如侵齊而謀之。侵齊則齊當來報。欲因懼齊而徙、則衛與邯鄲好不絕。
【読み】
而るに諸を晉陽に寘かば、衛を絕つの道なり。齊を侵して之を謀らんには如かじ、と。齊を侵すときは則ち齊當に來報すべし。齊を懼るるに因りて徙[うつ]すときは、則ち衛邯鄲と好絕えざらんことを欲す。

乃如之、而歸之于晉陽。欲如是謀而後歸衛貢。
【読み】
乃ち之の如くにして、之を晉陽に歸らんとす。是の謀の如くにして後に衛の貢を歸らんと欲す。

趙孟怒。召午而囚諸晉陽、趙鞅不察其謀、謂午不用命。故囚之。
【読み】
趙孟怒る。午を召して諸を晉陽に囚え、趙鞅其の謀を察せず、午命を用いずと謂えり。故に之を囚う。

使其從者說劒而入。涉賓不可。涉賓、午家臣。不肯說劒入。欲謀叛。○從、才用反。說、他活反。注同。
【読み】
其の從者をして劒を說きて入らしめんとす。涉賓可[き]かず。涉賓は、午が家臣。劒を說きて入ることを肯わず。叛を謀らんと欲す。○從は、才用反。說は、他活反。注も同じ。

乃使告邯鄲人曰、吾私有討於午也。二三子唯所欲立。午、趙鞅同族。別封邯鄲。故使邯鄲人、更立午宗親。
【読み】
乃ち邯鄲の人に告げしめて曰く、吾れ私に午を討ずること有り。二三子唯立てんと欲する所のままなり、と。午は、趙鞅の同族。別に邯鄲に封ぜらる。故に邯鄲の人をして、更に午が宗親を立てしむ。

遂殺午。趙稷・涉賓以邯鄲叛。稷、趙午子。
【読み】
遂に午を殺す。趙稷・涉賓邯鄲を以て叛く。稷は、趙午の子。

夏、六月、上軍司馬籍秦圍邯鄲。
【読み】
夏、六月、上軍司馬籍秦邯鄲を圍む。

邯鄲午、荀寅之甥也。荀寅、范吉射之姻也。婿父曰姻。荀寅子娶吉射女。
【読み】
邯鄲午は、荀寅の甥なり。荀寅は、范吉射の姻なり。婿の父を姻と曰う。荀寅が子吉射が女を娶る。

而相與睦。故不與圍邯鄲。將作亂。作亂、攻趙鞅。
【読み】
而して相與に睦まじ。故に邯鄲を圍むに與らず。將に亂を作さんとす。亂を作すとは、趙鞅を攻むるなり。

董安于聞之、安于、趙氏臣。
【読み】
董安于之を聞きて、安于は、趙氏の臣。

告趙孟曰、先備諸。趙孟曰、晉國有命。始禍者死。爲後可也。安于曰、與其害於民、寧我獨死。懼見攻必傷害民。
【読み】
趙孟に告げて曰く、先ず諸に備えんか、と。趙孟曰く、晉國に命有り。禍を始めん者は死せん、と。後を爲して可なり、と。安于曰く、其の民に害あらんよりは、寧ろ我れ獨り死せん。攻めらるれば必ず民を傷害せんことを懼る。

請以我說。趙孟不可。晉國若討、可殺我以自解說。
【読み】
請う、我を以て說け、と。趙孟可かず。晉國若し討ぜば、我を殺して以て自ら解說す可し。

秋、七月、范氏・中行氏伐趙氏之宮。趙鞅奔晉陽。晉人圍之。
【読み】
秋、七月、范氏・中行氏趙氏の宮を伐つ。趙鞅晉陽に奔る。晉人之を圍む。

范皐夷無寵於范吉射、而欲爲亂於范氏。皐夷、范氏側室子。
【読み】
范皐夷范吉射に寵無くして、亂を范氏に爲さんことを欲す。皐夷は、范氏の側室の子。

梁嬰父嬖於知文子。文子、荀躒。○知、音智。
【読み】
梁嬰父知文子に嬖せらる。文子は、荀躒。○知は、音智。

文子欲以爲卿。韓簡子與中行文子相惡。簡子、韓起孫、不信也。中行文子、荀寅也。○惡、如字。又烏路反。下同。
【読み】
文子以て卿と爲さんと欲す。韓簡子中行文子と相惡し。簡子は、韓起の孫、不信なり。中行文子は、荀寅なり。○惡は、字の如し。又烏路反。下も同じ。

魏襄子亦與范昭子相惡。襄子、魏舒孫、曼多也。昭子、士吉射。
【読み】
魏襄子も亦范昭子と相惡し。襄子は、魏舒の孫、曼多なり。昭子は、士吉射。

故五子謀。五子、范皐夷・梁嬰父・知文子・韓簡子・魏襄子。
【読み】
故に五子謀る。五子は、范皐夷・梁嬰父・知文子・韓簡子・魏襄子。

將逐荀寅、而以梁嬰父代之、逐范吉射、而以范皐夷代之。
【読み】
將に荀寅を逐いて、梁嬰父を以て之に代え、范吉射を逐いて、范皐夷を以て之に代えんとす。

荀躒言於晉侯曰、君命大臣、始禍者死。載書在河。爲盟書沈之河。○躒、力狄反。
【読み】
荀躒晉侯に言いて曰く、君大臣に命ずらく、禍を始めし者は死せん、と。載書河に在り。盟書を爲して之を河に沈む。○躒は、力狄反。

今三臣始禍、而獨逐鞅、刑已不鈞矣。請皆逐之。冬、十一月、荀躒・韓不信・魏曼多奉公以伐范氏・中行氏。弗克。
【読み】
今三臣禍を始めて、獨り鞅を逐うは、刑已に鈞しからず。請う、皆之を逐わん、と。冬、十一月、荀躒・韓不信・魏曼多公を奉じて以て范氏・中行氏を伐つ。克たず。

二子將伐公。齊高彊曰、三折肱、知爲良醫。高彊、齊子尾之子。昭十年、奔魯、遂適晉。○三、如字。又息暫反。折、之設反。
【読み】
二子將に公を伐たんとす。齊の高彊が曰く、三たび肱を折りて、良醫爲ることを知る。高彊は、齊の子尾の子。昭十年、魯に奔り、遂に晉に適く。○三は、字の如し。又息暫反。折は、之設反。

唯伐君爲不可。民弗與也。我以伐君在此矣。三家未睦。三家、知・韓・魏。
【読み】
唯君を伐つを不可なりと爲す。民與せざるなり。我れ君を伐ちしを以て此に在り。三家未だ睦まじからず。三家は、知・韓・魏。

可盡克也。克之、君將誰與。若先伐君、是使睦也。弗聽。遂伐公。國人助公。二子敗。從而伐之。丁未、荀寅・士吉射奔朝歌。
【読み】
盡く克つ可し。之に克たば、君將に誰に與せんとする。若し先ず君を伐たば、是れ睦まじからしむるなり、と。聽かず。遂に公を伐つ。國人公を助く。二子敗れぬ。從[お]いて之を伐つ。丁未[ひのと・ひつじ]、荀寅・士吉射朝歌に奔る。

韓・魏以趙氏爲請。經所以書趙鞅歸。
【読み】
韓・魏趙氏を以て請うことを爲す。經に趙鞅が歸るを書す所以なり。

十二月、辛未、趙鞅入于絳、盟于公宮。傳錄晉衰亂。
【読み】
十二月、辛未[かのと・ひつじ]、趙鞅絳に入り、公宮に盟う。傳晉の衰亂を錄す。

初、衛公叔文子朝、而請享靈公。欲令公臨其家。
【読み】
初め、衛の公叔文子朝して、靈公を享せんことを請う。公をして其の家に臨ましめんことを欲す。

退見史鰌而告之。史鰌、史魚。○鰌、音秋。
【読み】
退きて史鰌[ししゅう]を見て之に告ぐ。史鰌は、史魚。○鰌は、音秋。

史鰌曰、子必禍矣。子富而君貪。罪其及子乎。文子曰、然。吾不先告子、是吾罪也。君旣許我矣。其若之何。史鰌曰、無害。子臣、可以免。言能執臣禮。
【読み】
史鰌曰く、子必ず禍あらん。子は富みて君は貪る。罪其れ子に及ばんか、と。文子曰く、然り。吾れ先ず子に告げざりしは、是れ吾が罪なり。君旣に我に許せり。其れ之を若何にせん、と。史鰌曰く、害無し。子臣をせば、以て免る可し。言うこころは、能く臣禮を執るなり。

富而能臣、必免於難。上下同之。言尊卑皆然。○難、乃旦反。下同。
【読み】
富みて能く臣なれば、必ず難に免る。上下之に同じ。言うこころは、尊卑皆然り。○難は、乃旦反。下も同じ。

戍也驕。其亡乎。戍、文子之子。
【読み】
戍や驕れり。其れ亡びんか。戍は、文子の子。

富而不驕者鮮。吾唯子之見。驕而不亡者、未之有也。戍必與焉。與禍難。○與、音預。
【読み】
富みて驕らざる者は鮮し。吾れ唯子をのみ見る。驕りて亡びざる者は、未だ之れ有らざるなり。戍必ず與らん、と。禍難に與る。○與は、音預。

及文子卒、衛侯始惡於公叔戍。以其富也。公叔戍又將去夫人之黨。靈公夫人南子黨、宋朝之徒。○去、起呂反。朝、如字。
【読み】
文子が卒するに及びて、衛侯始めて公叔戍に惡し。其の富めるを以てなり。公叔戍又將に夫人の黨を去らんとす。靈公の夫人南子の黨は、宋朝の徒なり。○去は、起呂反。朝は、字の如し。

夫人愬之曰、戍將爲亂。爲明年、戍來奔傳。
【読み】
夫人之を愬[うった]えて曰く、戍將に亂を爲さんとす、と。明年、戍來奔する爲の傳なり。


〔經〕十有四年、春、衛公叔戍來奔。衛趙陽出奔宋。陽、趙黶孫。書名者、親富不親仁。○黶、於減反。
【読み】
〔經〕十有四年、春、衛の公叔戍來奔す。衛の趙陽出でて宋に奔る。陽は、趙黶[ちょうえん]の孫。名を書すは、富を親しみて仁を親しまざればなり。○黶は、於減反。

二月、辛巳、楚公子結・陳公孫佗人帥師滅頓。以頓子牂歸。夏、衛北宮結來奔。亦黨公叔戍。皆惡之。○佗、吐何反。牂、子郎反。惡、去聲。後同。
【読み】
二月、辛巳[かのと・み]、楚の公子結・陳の公孫佗人師を帥いて頓を滅ぼす。頓子牂[そう]を以[い]て歸る。夏、衛の北宮結來奔す。亦公叔戍に黨す。皆之を惡むなり。○佗は、吐何反。牂は、子郎反。惡は、去聲。後も同じ。

五月、於越敗吳于檇李。於越、越國也。使罪人詐吳亂陳。故從未陳之例書敗也。檇李、吳郡嘉興縣南醉李城。○檇、音醉。陳、直覲反。
【読み】
五月、於越吳を檇李[すいり]に敗る。於越は、越國なり。罪人をして吳を詐り陳を亂らしむ。故に未だ陳せざるの例に從いて敗を書すなり。檇李は、吳郡嘉興縣の南の醉李城。○檇は、音醉。陳は、直覲反。

吳子光卒。未同盟而赴以名。
【読み】
吳子光卒す。未だ同盟せずして赴[つ]ぐるに名を以てす。

公會齊侯・衛侯于牽。魏郡黎陽縣東北有牽城。
【読み】
公齊侯・衛侯に牽に會す。魏郡黎陽縣の東北に牽城有り。

公至自會。無傳。
【読み】
公會より至る。傳無し。

秋、齊侯・宋公會于洮。洮、曹地。
【読み】
秋、齊侯・宋公洮[とう]に會す。洮は、曹の地。

天王使石尙來歸脤。無傳。石尙、天子之士。石、氏。尙、名。脤、祭社之肉。盛以蜃器、以賜同姓諸侯、親兄弟之國、與之共福。○脤、市軫反。
【読み】
天王石尙をして來りて脤[しん]を歸[おく]らしむ。傳無し。石尙は、天子の士。石は、氏。尙は、名。脤は、社を祭るの肉。盛るに蜃器を以てして、以て同姓の諸侯に賜い、兄弟の國を親しみ、之と福を共にす。○脤は、市軫反。

衛世子蒯聵出奔宋。○蒯、苦怪反。聵、五怪反。
【読み】
衛の世子蒯聵[かいかい]出でて宋に奔る。○蒯は、苦怪反。聵は、五怪反。

衛公孟彄出奔鄭。彄書名、與蒯聵黨、罪之。
【読み】
衛の公孟彄[こうもうこう]出でて鄭に奔る。彄名を書すは、蒯聵と黨すれば、之を罪するなり。

宋公之弟辰自蕭來奔。無傳。稱宋公之弟、例在十年。
【読み】
宋公の弟辰蕭[しょう]より來奔す。傳無し。宋公の弟と稱するは、例十年に在り。

大蒐于比蒲。邾子來會公。無傳。會公于比蒲。來而不用朝禮。故曰會。○比、音毗。
【読み】
比蒲に大蒐す。邾子[ちゅし]來りて公に會す。傳無し。公に比蒲に會するなり。來りて朝禮を用いず。故に會すと曰う。○比は、音毗。

城莒父及霄。無傳。公叛晉助范氏。故懼而城二邑也。此年無冬、史闕文。
【読み】
莒父と霄[しょう]とに城く。傳無し。公晉に叛きて范氏を助く。故に懼れて二邑に城くなり。此の年冬無きは、史の闕文なり。

〔傳〕十四年、春、衛侯逐公叔戍與其黨。故趙陽奔宋、戍來奔。終史魚之言。
【読み】
〔傳〕十四年、春、衛侯公叔戍と其の黨とを逐う。故に趙陽宋に奔り、戍來奔す。史魚の言を終わる。

梁嬰父惡董安于。謂知文子曰、不殺安于、使終爲政於趙氏、趙氏必得晉國。盍以其先發難也、討於趙氏。文子使告於趙孟曰、范・中行氏雖信爲亂、安于則發之。是安于與謀亂也。晉國有命、始禍者死。二子旣伏其罪矣。敢以告。告使討安于。○知・難・與、竝去聲。
【読み】
梁嬰父董安于を惡む。知文子に謂いて曰く、安于を殺さずして、終に政を趙氏に爲さしめば、趙氏必ず晉國を得ん。盍ぞ其の先ず難を發するを以て、趙氏を討ぜざる、と。文子趙孟に告げしめて曰く、范・中行氏信に亂を爲せりと雖も、安于則ち之を發せり。是れ安于も謀に與りて亂るなり。晉國に命有り、禍を始むる者は死せん、と。二子旣に其の罪に伏せり。敢えて以て告ぐ、と。告げて安于を討ぜしむ。○知・難・與は、竝去聲。

趙孟患之。安于曰、我死而晉國寧、趙氏定、將焉用生。人誰不死。吾死莫矣。乃縊而死。趙孟尸諸市、而告於知氏曰、主命戮罪人安于。旣伏其罪矣。敢以告。
【読み】
趙孟之を患う。安于曰く、我れ死して晉國寧く、趙氏定まらば、將焉ぞ生を用いん。人誰か死なざらん。吾が死すること莫[おそ]し、と。乃ち縊れて死す。趙孟諸を市に尸[さら]して、知氏に告げて曰く、主命じて罪人安于を戮せしむ。旣に其の罪に伏せり。敢えて以て告ぐ、と。

知伯從趙孟盟。知伯、荀躒。○莫、音暮。
【読み】
知伯趙孟に從いて盟う。知伯は、荀躒。○莫は、音暮。

而後趙氏定。祀安于於廟。趙氏廟。
【読み】
而して後に趙氏定まる。安于を廟に祀れり。趙氏の廟。

頓子牂欲事晉、背楚而絕陳好。二月、楚滅頓。傳言小不事大、所以亡。
【読み】
頓子牂晉に事えんことを欲し、楚に背きて陳の好を絕つ。二月、楚頓を滅ぼす。傳小大に事えざるは、亡ぶる所以なるを言う。

夏、衛北宮結來奔、公叔戍之故也。
【読み】
夏、衛の北宮結來奔するは、公叔戍の故なり。

吳伐越。報五年、越入吳。
【読み】
吳越を伐つ。五年、越の吳に入るに報ゆ。

越子勾踐禦之、陳于檇李。勾踐、越王允常子。
【読み】
越子勾踐[こうせん]之を禦ぎ、檇李に陳す。勾踐は、越王允常の子。

勾踐患吳之整也、使死士再禽焉。不動。使敢死之士往輒爲吳所禽。欲使吳師亂取之。而吳不動。
【読み】
勾踐吳の整うを患うるや、死士をして再び禽にせられしむ。動かず。敢死の士をして往きて輒ち吳の爲に禽にせられしむ。吳の師をして亂れしめて之を取らんと欲す。而るに吳動かず。

使罪人三行、屬劒於頸、以劒注頸。○行、音杭。下同。屬、之欲反。又之住反。
【読み】
罪人をして三行して、劒を頸に屬[つ]けて、劒を以て頸に注[つ]く。○行は、音杭。下も同じ。屬は、之欲反。又之住反。

而辭曰、二君有治、治軍旅。
【読み】
辭せしめて曰く、二君治むること有りて、軍旅を治む。

臣奸旗鼓、犯軍令。
【読み】
臣旗鼓を奸して、軍令を犯す。

不敏於君之行前。不敢逃刑。敢歸死。遂自剄也。師屬之目。越子因而伐之、大敗之。
【読み】
君の行前に不敏なり。敢えて刑を逃れず。敢えて死を歸せん、と。遂に自剄す。師之に目を屬く。越子因りて之を伐ち、大いに之を敗りぬ。

靈姑浮以戈擊闔廬。姑浮、越大夫。○剄、古頂反。
【読み】
靈姑浮戈を以て闔廬を擊つ。姑浮は、越の大夫。○剄は、古頂反。

闔廬傷將指、取其一屨。其足大指見斬、遂失屨、姑浮取之。○將、子匠反。
【読み】
闔廬將指に傷つき、其の一屨[いっく]を取らる。其の足の大指斬られ、遂に屨を失い、姑浮之を取る。○將は、子匠反。

還。卒於陘。去檇李七里。釋經所以不書滅。
【読み】
還る。陘に卒す。檇李を去ること七里なり。經に滅ぶと書さざる所以を釋く。

夫差使人立於庭、夫差、闔廬嗣子。
【読み】
夫差人をして庭に立たしめて、夫差は、闔廬の嗣子。

苟出入必謂己曰、夫差、而忘越王之殺而父乎。則對曰、唯、不敢忘。三年乃報越。後三年、哀元年。
【読み】
苟も出入するに必ず己に謂わせて曰く、夫差、而[なんじ]越王の而の父を殺せるを忘れたりや、と。則ち對えて曰く、唯、敢えて忘れじ、と。三年にして乃ち越に報いぬ。後三年は、哀の元年。

晉人圍朝歌。公會齊侯・衛侯于脾・上梁之閒、脾・上梁之閒、卽牽。
【読み】
晉人朝歌を圍む。公齊侯・衛侯に脾・上梁の閒に會して、脾・上梁の閒は、卽ち牽。

謀救范・中行氏。齊・魯叛晉。故助范・中行也。
【読み】
范・中行氏を救わんことを謀る。齊・魯晉に叛く。故に范・中行を助く。

析成鮒・小王桃甲率狄師以襲晉、二子、晉大夫、范・中行氏之黨。○桃、如字。又作姚。
【読み】
析成鮒・小王桃甲狄の師を率いて以て晉を襲い、二子は、晉の大夫、范・中行氏の黨。○桃は、字の如し。又姚に作る。

戰于絳中、不克而還。士鮒奔周、小王桃甲入于朝歌。
【読み】
絳中に戰い、克たずして還る。士鮒周に奔り、小王桃甲朝歌に入る。

秋、齊侯・宋公會于洮、范氏故也。謀救范氏。
【読み】
秋、齊侯・宋公洮に會するは、范氏の故なり。范氏を救わんことを謀る。

衛侯爲夫人南子召宋朝。南子、宋女也。朝、宋公子。舊通于南子。在宋、呼之。○爲、去聲。
【読み】
衛侯夫人南子の爲に宋朝を召びぬ。南子は、宋の女なり。朝は、宋の公子。舊南子に通ず。宋に在り、之を呼ぶ。○爲は、去聲。

會于洮、大子蒯聵獻盂于齊、過宋野。蒯聵、衛靈公大子。盂、邑名也。就會獻之。故自衛行而過宋野。○盂、音于。
【読み】
洮に會するとき、大子蒯聵盂を齊に獻ぜんとして、宋の野を過ぐ。蒯聵は、衛の靈公の大子。盂は、邑の名なり。會に就きて之を獻ず。故に衛より行きて宋の野を過ぐ。○盂は、音于。

野人歌之曰、旣定爾婁豬。盍歸吾艾豭。婁豬、求子豬。以喩南子。艾豭、喩宋朝。艾、老也。○豭、音加。牡豕也。
【読み】
野人之を歌いて曰く、旣に爾の婁豬を定めり。盍ぞ吾が艾豭[がいか]を歸さざる、と。婁豬は、子を求むる豬。以て南子に喩う。艾豭は、宋朝に喩う。艾は、老なり。○豭は、音加。牡豕なり。

大子羞之、謂戲陽速曰、從我而朝少君。速、大子家臣。○戲、許宜反。少、詩照反。亦作小。
【読み】
大子之を羞じ、戲陽速に謂いて曰く、我に從いて少君に朝せよ。速は、大子の家臣。○戲は、許宜反。少は、詩照反。亦小に作る。

少君見我、我顧、乃殺之。速曰、諾。乃朝夫人。夫人見大子。大子三顧。速不進。夫人見其色、啼而走。見大子色變、知其欲殺己。
【読み】
少君我を見んとき、我れ顧みば、乃ち之を殺せ、と。速曰く、諾、と。乃ち夫人に朝す。夫人大子を見る。大子三たび顧みる。速進まず。夫人其の色を見て、啼きて走る。大子の色變ずるを見て、其の己を殺さんと欲するを知る。

曰、蒯聵將殺余。公執其手以登臺。大子奔宋。盡逐其黨。故公孟彄出奔鄭、自鄭奔齊。
【読み】
曰く、蒯聵將に余を殺さんとす、と。公其の手を執りて以て臺に登る。大子宋に奔る。盡く其の黨を逐う。故に公孟彄出でて鄭に奔り、鄭より齊に奔る。

大子告人曰、戲陽速禍余。戲陽速告人曰、大子則禍余。大子無道、使余殺其母。余不許、將戕於余。戕、殘殺也。
【読み】
大子人に告げて曰く、戲陽速余に禍せり、と。戲陽速人に告げて曰く、大子則ち余に禍せんとす。大子無道にして、余をして其の母を殺さしめんとす。余許さずんば、將に余を戕[しょう]せんとす。戕は、殘殺なり。

若殺夫人、將以余說。余是故許而弗爲、以紓余死。諺曰、民保於信。吾以信義也。使義可信。不必信言。○紓、音舒。
【読み】
若夫人を殺さば、將に余を以て說かんとするなり。余是の故に許して爲さずして、以て余が死を紓[ゆる]くせり。諺に曰く、民は信に保んず、と。吾は以て義を信にせんとするなり、と。義を信ず可からしむ。必ずしも言を信にせず。○紓は、音舒。

冬、十二月、晉人敗范・中行氏之師於潞、獲籍秦・高彊、二子、黨范氏者。終景王言籍父無後。
【読み】
冬、十二月、晉人范・中行氏の師を潞に敗り、籍秦・高彊を獲、二子は、范氏に黨する者。景王籍父は後無からんと言いしを終わる。

又敗鄭師及范氏之師于百泉。鄭助范氏。故幷敗。
【読み】
又鄭の師と范氏の師を百泉に敗る。鄭范氏を助く。故に幷せて敗らる。


〔經〕十有五年、春、王正月、邾子來朝。鼷鼠食郊牛。牛死。改卜牛。無傳。不言所食處、舉死重也。改卜禮也。○鼷、音兮。
【読み】
〔經〕十有五年、春、王の正月、邾子[ちゅし]來朝す。鼷鼠[けいそ]郊牛を食む。牛死す。牛を改め卜す。傳無し。食する所の處を言わざるは、死を舉げて重ければなり。改め卜するは禮なり。○鼷は、音兮。

二月、辛丑、楚子滅胡、以胡子豹歸。夏、五月、辛亥、郊。無傳。書過。
【読み】
二月、辛丑[かのと・うし]、楚子胡を滅ぼし、胡子豹を以[い]て歸る。夏、五月、辛亥[かのと・い]、郊す。傳無し。過ぐるを書す。

壬申、公薨于高寢。高寢、宮名。不於路寢、失其所。
【読み】
壬申[みずのえ・さる]、公高寢に薨ず。高寢は、宮の名。路寢に於てせざるは、其の所を失うなり。

鄭罕達帥師伐宋。齊侯・衛侯次于渠蒢。不果救。故書次。○蒢、直居反。
【読み】
鄭の罕達師を帥いて宋を伐つ。齊侯・衛侯渠蒢[きょちょ]に次[やど]る。救うことを果たさず。故に次ると書す。○蒢は、直居反。

邾子來奔喪。無傳。諸侯奔喪、非禮。
【読み】
邾子來りて喪に奔る。傳無し。諸侯喪に奔るは、禮に非ず。

秋、七月、壬申、姒氏卒。定公夫人。
【読み】
秋、七月、壬申、姒氏卒す。定公の夫人。

八月、庚辰、朔、日有食之。無傳。
【読み】
八月、庚辰[かのえ・たつ]、朔、日之を食する有り。傳無し。

九月、滕子來會葬。無傳。諸侯會葬、非禮也。
【読み】
九月、滕子來りて葬に會す。傳無し。諸侯葬に會するは、禮に非ざるなり。

丁巳、葬我君定公。雨不克葬。戊午日下昃、乃克葬。辛巳、葬定姒。辛巳、十月三日。有日無月。
【読み】
丁巳[ひのと・み]、我が君定公を葬る。雨ふりて葬ること克わず。戊午[つちのえ・うま]の日の下昃[かしょく]に、乃ち葬を克くす。辛巳[かのと・み]、定姒を葬る。辛巳は、十月三日。日有りて月無し。

冬、城漆。邾庶其邑。
【読み】
冬、漆に城く。邾の庶其の邑。

〔傳〕十五年、春、邾隱公來朝。邾子益。
【読み】
〔傳〕十五年、春、邾の隱公來朝す。邾子益。

子貢觀焉。邾子執玉高、其容仰。公受玉卑、其容俯。玉、朝者之贄。
【読み】
子貢觀る。邾子は玉を執るに高く、其の容仰ぐ。公は玉を受くること卑[ひく]く、其の容俯す。玉は、朝者の贄。

子貢曰、以禮觀之、二君者皆有死亡焉。夫禮、死生存亡之體也。將左右・周旋・進退・俯仰、於是乎取之、朝祀喪戎、於是乎觀之。今正月相朝而皆不度。不合法度。
【読み】
子貢曰く、禮を以て之を觀れば、二君の者皆死亡有らん。夫れ禮は、死生存亡の體なり。將に左右・周旋・進退・俯仰、是に於て之を取り、朝祀喪戎、是に於て之を觀んとす。今正月相朝して皆度あらず。法度に合わず。

心巳亡矣。嘉事不體。何以能久。嘉事、朝禮。
【読み】
心巳に亡びたり。嘉事體あらず。何を以て能く久しからん。嘉事は、朝禮。

高仰、驕也。卑俯、替也。驕近亂、替近疾。君爲主。其先亡乎。爲此年、公薨、哀七年、以邾子益歸傳。○替、他計反。
【読み】
高仰は、驕なり。卑俯は、替[てい]なり。驕は亂に近く、替は疾に近し。君主爲り。其れ先ず亡びんか、と。此の年、公薨じ、哀七年、邾子益を以て歸る爲の傳なり。○替は、他計反。

吳之入楚也、在四年。
【読み】
吳の楚に入りしや、四年に在り。

胡子盡俘楚邑之近胡者。俘、取也。
【読み】
胡子盡く楚邑の胡に近き者を俘[と]れり。俘は、取るなり。

楚旣定、胡子豹又不事楚、曰、存亡有命。事楚何爲。多取費焉。二月、楚滅胡。傳言小不事大、所以亡。○費、芳味反。
【読み】
楚旣に定まれども、胡子豹又楚に事えず、曰く、存亡は命有り。楚に事うるも何をかせん。多く費えを取らん、と。二月、楚胡を滅ぼす。傳小大に事えざるは、亡ぶる所以なるを言う。○費は、芳味反。

夏、五月、壬申、公薨。
【読み】
夏、五月、壬申、公薨ず。

仲尼曰、賜不幸、言而中。是使賜多言者也。以微知著、知之難者。子貢言語之士、今言而中。仲尼懼其易言。故抑之。○中、丁仲反。
【読み】
仲尼曰く、賜不幸にして、言いて中る。是れ賜をして多言ならしむる者なり。微を以て著を知るは、知の難き者なり。子貢は言語の士、今言いて中る。仲尼其の言を易くせんことを懼る。故に之を抑う。○中は、丁仲反。

鄭罕達敗宋師于老丘。罕達、子齹之子。老丘、宋地。宋公子地奔鄭。鄭人爲之伐宋。欲取地以處之。事見哀十二年。○齹、才何反。
【読み】
鄭の罕達宋の師を老丘に敗る。罕達は、子齹[しさ]の子。老丘は、宋の地。宋の公子地鄭に奔る。鄭人之が爲に宋を伐つ。地を取りて以て之を處かんことを欲す。事は哀十二年に見ゆ。○齹は、才何反。

齊侯・衛侯次于蘧挐、謀救宋也。○挐、女居反。又女加反。
【読み】
齊侯・衛侯蘧挐[きょじょ]に次るは、宋を救わんことを謀るなり。○挐は、女居反。又女加反。

秋、七月、壬申、姒氏卒。不稱夫人、不赴、且不祔也。赴同、祔姑、夫人之禮。二者皆闕。故不曰夫人。
【読み】
秋、七月、壬申、姒氏卒す。夫人と稱せざるは、赴[つ]げず、且祔[ふ]せざればなり。同に赴げ、姑に祔するは、夫人の禮。二つの者皆闕く。故に夫人と曰わず。

葬定公。雨不克襄事、禮也。襄、成也。雨而成事、若汲汲於欲葬者。
【読み】
定公を葬る。雨ふりて事を襄[な]すこと克わざるは、禮なり。襄は、成すなり。雨ふりて事を成すは、葬らんことを欲するに汲汲たる者の若し。

葬定姒。不稱小君、不成喪也。公未葬、而夫人薨、煩於喪禮。不赴不祔。故不稱小君。臣子怠慢也。反哭於寢。故書葬。
【読み】
定姒を葬る。小君と稱せざるは、喪を成さざればなり。公未だ葬らずして、夫人薨じて、喪禮に煩わし。赴げず祔せず。故に小君と稱せず。臣子の怠慢なり。寢に反哭す。故に葬を書す。

冬、城漆、書不時告也。實以秋城、冬乃告廟。魯知其不時。故緩告。從而書之以示譏。
【読み】
冬、漆に城くは、時に告げざるを書すなり。實は秋を以て城くも、冬にして乃ち廟に告ぐ。魯其の時ならざるを知る。故に緩[おそ]く告ぐ。從いて之を書して以て譏りを示すなり。



經八年。國夏。戶雅反。年末注同。于瓦。顏寡反。燕縣。音煙。侯柳。力九反。本或作抑。曲濮。音卜。之璜。音黃。封父。音甫。
傳。六鈞。音均。而傳。直專反。子鉏。仕居反。倶斃。婢世反。仆也。音赴。又蒲北反。子鉏中。丁仲反。下同。頰。古協反。殪。於計反。言顏高雖爲子鉏所擊偃仆、且射子鉏、中頰而死。言其善射也。一讀、且、音子餘反。云、偃且、人姓名也。檢世族譜無此人。一讀者非也。儋翩。丁甘反。下音篇。伐盂。音于。廩丘。力甚反。焚衝。昌容反。或濡。人于反。馬褐。戶葛反。盡客。苦百反。僑如。其驕反。人竟。音境。中行。戶郎反。鄟澤。本亦作■(左が阝で右が專)。音同。涉佗。徒何反。焉得。於虔反。擠也。一音子禮反。說文云、排也。爲質。音致。注及下同。有難。乃旦反。激。古狄反。爲周。于僞反。下同。季寤。五故反。不狃。女九反。禘。大計反。先癸巳。悉薦反。夾之。古洽反。陽越殿。丁見反。於難。乃旦反。圉人。魚呂反。以爲。于僞反。而騁。敕領反。不中。丁仲反。闔。戶臘反。劫。居業反。州仇。音求。說甲。本又作稅。同。得脫。徒活反。或他活反。嘻。許其反。鄧析。星歷反。
經九年。蠆。敕邁反。
傳。衰絰。七雷反。下田結反。下同。其邪。似嗟反。注同。彤管。徒冬邶。音佩。雖說。音悅。竿旄。音干。下音毛。鄘。音容。蔽芾。芳味反。蔽芾、小貌。召伯。音邵。注同。茇。畔末反。麟。本又作驎。呂辛反。俘。芳夫反。萊門。音來。菑。音災。焉。於虔反。頃覆。音傾。本又作傾。下芳服反。○今本亦傾。軸。音遂。輜。側其反。爲衛。于僞反。下同。必娶。七住反。卿相。息亮反。霤。力又反。犂彌。力兮反。譎。古穴反。驂。七南反。騑馬也。之靳。本或作如驂之有靳非也。與書爭。爭鬭之爭。又如字。千乘。繩證反。不復。扶又反。其帥。所類反。注同。事見。賢遍反。媚。武冀反。杏。戶猛反。晳。星歷反。貍。力之反。製。音制。吾貺。音況。令常。力呈反。不共。音恭。三襚。音遂。比殯。必利反。故挽。音晩。
經十年。夾谷。二傳作頰。谷、音古木反。汶陽。音問。孔子相。息亮反。郈。字林、下遘反。弄馬。魯貢反。曁。其器反。
傳。丘相。息亮反。注同。合好。呼報反。下同。裔。以制反。俘。芳夫反。謀夏。戶雅反。不偪。彼力反。爲愆。去連反。遽。其據反。出竟。音境。三百乘。繩證反。詛。側據反。犧象。皆尊名。秕。字林、音七。又作粃。又必履反。子盍。戶臘反。下同。齊爲衛。于僞反。城其西北而守之。一本或作城其西北隅。涉佗。徒河反。如植。市力反。不遄。市專反。劒鋒。芳逢反。向己。許亮反。亦作嚮。逆呵。呼多反。在揚水卒章。本或作揚之水卒章。齊使。所吏反。注同。爲之。于僞反。下注爲齊同。得紓。音舒。偪魯。彼力反。必倍。步罪反。介侯犯。音界。與之數。色主反。注同。名簿。步古反。嬖。必計反。獵。力輒反。鬣。力輒反。爾雅舍人注云、馬鬣也。鬣、音子工反。腫。章勇反。出竟。音境。辰爲。于僞反。注猶爲同。褚。張呂反。封疆。居良反。所惡。烏路反。十一年傳注同。一音如字。
經十一年。
傳。
經十二年。墮費。音祕。雩。音于。
傳。羅殿。丁見反。下同。曹竟。音境。下同。在行。戶郎反。保障。之尙反。又音章。子爲不知。竝如字。一本爲作僞。○今本亦僞。陽不知也。陽本亦作佯。音同。○今本亦佯。
經十三年。垂葭。音加。囿、音又。蒐。所求反。士吉射。食亦反。又食夜反。朝歌。如字。
傳。邴意玆。一音丙。比君。必利反。乃介。音界。著。丁略反。是以爲。一音如字。寘。之豉反。好不。呼報反。不與。音預。又如字。中行。戶郎反。曼多。音萬。沈之。如字。又音鴆。肱。古弘反。欲令。力呈反。者鮮。息淺反。始惡。烏路反。愬。音素。
經十四年。佗人。一音徒何反。檇。依說文從本。黎陽。力兮反。洮。吐刀反。盛以。音成。莒父。音甫。
傳。惡董。烏路反。盍以。戶臘反。將焉。於虔反。乃縊。一賜反。背楚。音佩。陳好。呼報反。勾踐。古侯反。陳于。直覲反。自剄。本又作刎。闔閭。戶臘反。一屨。九具反。於陘。音刑。夫差。音扶。於廷。音庭。本又作庭。○今本亦庭。曰唯。惟癸反。舊以水反。于脾。婢支反。析。星歷反。成鮒。音附。婁豬。力侯反。字林、作■(上が豕+世、下が婁)。力付反。下張魚反。盍歸。戶臘反。艾。五蓋反。字林、作■(左が豕で右が艾)。音艾。豕三毛聚居者。將戕。在良反。諺曰。音彥。於潞。音路。籍父。音甫。
經十五年。食處。昌慮反。下昃。音側。城漆。音七。
傳。之贄。音至。近亂。附近之近。下皆同。微知著知之難。竝如字。又音智。其易。以豉反。爲之。于僞反。事見。賢遍反。蘧。音渠。不祔。音附。不克襄。息羊反。


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(引用文献)


江守孝三(Emori Kozo)