春秋左氏傳校本第四
閔公 起元年盡二年
晉 杜氏 集解
唐 陸氏 音義
尾張 秦 鼎 校本
閔公 名啓方。莊公之子。母叔姜。史記云、名開。謚法、在國遭難曰閔。
【読み】
閔公 名は啓方。莊公の子。母は叔姜。史記に云う、名は開、と。謚法に、國に在りて難に遭うを閔と曰う、と。
〔經〕元年、春、王正月、齊人救邢。夏、六月、辛酉、葬我君莊公。秋、八月、公及齊侯盟于落姑。落姑、齊地。
【読み】
〔經〕元年、春、王の正月、齊人邢を救う。夏、六月、辛酉[かのと・とり]、我が君莊公を葬る。秋、八月、公齊侯と落姑に盟う。落姑は、齊の地。
季子來歸。季子、公子友之字。季子忠於社稷、爲國人所思。故賢而字之。齊侯許納。故曰歸。
【読み】
季子來歸す。季子は、公子友の字。季子社稷に忠にして、國人の爲に思わる。故に賢として之に字す。齊侯納るることを許す。故に歸と曰う。
冬、齊仲孫來。仲孫、齊大夫。以事出疆、因來省難。非齊侯命。故不稱使也。還、使齊侯務寧魯亂。故嘉而字之。來者事實、省難其志也。故經但書仲孫之來、而傳尋仲孫之志。
【読み】
冬、齊の仲孫來る。仲孫は、齊の大夫。事を以て疆を出でて、因りて來りて難を省る。齊侯の命に非ず。故に使と稱せず。還りて、齊侯をして務めて魯の亂を寧んぜしむ。故に嘉して之に字す。來るは事實、難を省るは其の志なり。故に經には但仲孫の來るを書して、傳には仲孫の志を尋ぬ。
〔傳〕元年、春、不書卽位、亂故也。國亂、不得成禮。
【読み】
〔傳〕元年、春、卽位を書さざるは、亂の故なり。國亂れて、禮を成すことを得ず。
狄人伐邢。狄伐邢、在往年冬。
【読み】
狄人邢を伐つ。狄邢を伐つは、往年の冬に在り。
管敬仲言於齊侯曰、戎狄豺狼。不可厭也。敬仲、管仲吾。○豺、士皆反。厭、於鹽反。
【読み】
管敬仲齊侯に言いて曰く、戎狄は豺狼なり。厭かしむ可からざるなり。敬仲は、管仲吾。○豺は、士皆反。厭は、於鹽反。
諸夏親暱。不可弃也。諸夏、中國也。暱、近也。
【読み】
諸夏は親暱[しんじつ]なり。弃[す]つ可からざるなり。諸夏は、中國なり。暱は、近きなり。
宴安酖毒。不可懷也。以宴安比之酖毒。
【読み】
宴安は酖毒なり。懷う可からざるなり。宴安を以て之を酖毒に比す。
詩云、豈不懷歸。畏此簡書。詩、小雅也。文王爲西伯、勞來諸侯之詩。
【読み】
詩に云う、豈歸ることを懷わざらんや。此の簡書を畏る、と。詩は、小雅なり。文王西伯と爲り、諸侯を勞來するの詩なり。
簡書、同惡相恤之謂也。同恤所惡。
【読み】
簡書は、同惡相恤うるの謂なり。同じく惡む所を恤う。
請救邢以從簡書。齊人救邢。
【読み】
請う、邢を救いて以て簡書に從わん、と。齊人邢を救う。
夏、六月、葬莊公。亂故、是以緩。十一月乃葬。
【読み】
夏、六月、莊公を葬る。亂の故に、是を以て緩[おく]るなり。十一月にして乃ち葬る。
秋、八月、公及齊侯盟于落姑、請復季友也。閔公初立、國家多難、以季子忠賢故、請霸主而復之。
【読み】
秋、八月、公齊侯と落姑に盟うは、季友を復さんことを請うなり。閔公初めて立ち、國家多難、季子の忠賢を以ての故に、霸主に請うて之を復さんとす。
齊侯許之、使召諸陳。公次于郎以待之。非師旅之事。故不書次。
【読み】
齊侯之を許して、諸を陳に召さしむ。公郎に次[やど]りて以て之を待つ。師旅の事に非ず。故に次るを書さず。
季子來歸、嘉之也。
【読み】
季子來歸すとは、之を嘉するなり。
冬、齊仲孫湫來省難。湫、仲孫名。○湫、子小反。
【読み】
冬、齊の仲孫湫[ちゅうそんしょう]來りて難を省る。湫は、仲孫の名。○湫は、子小反。
書曰仲孫、亦嘉之也。
【読み】
書して仲孫と曰うも、亦之を嘉するなり。
仲孫歸。曰、不去慶父、魯難未已。時慶父亦還魯。○去、起呂反。下同。
【読み】
仲孫歸る。曰く、慶父を去らずんば、魯の難已まじ、と。時に慶父も亦魯に還る。○去は、起呂反。下も同じ。
公曰、若之何而去之。對曰、難不已、將自斃。斃、踣也。
【読み】
公曰く、之を若何にして之を去らん、と。對えて曰く、難已まずんば、將に自ら斃れんとす。斃は、踣[たお]るなり。
君其待之。
【読み】
君其れ之を待て、と。
公曰、魯可取乎。對曰、不可。猶秉周禮。周禮、所以本也。臣聞之、國將亡、本必先顚、而後枝葉從之。魯不弃周禮。未可動也。君其務寧魯難而親之。親有禮、因重固、能重能固、則當就成之。
【読み】
公曰く、魯取る可きか、と。對えて曰く、不可なり。猶周の禮を秉れり。周の禮は、本たる所以なり。臣之を聞く、國の將に亡びんとするや、本必ず先ず顚[くつがえ]りて、而して後に枝葉之に從う、と。魯周の禮を弃てず。動かす可からざるなり。君其れ務めて魯の難を寧んじて之を親しめ。有禮を親しみ、重固に因り、能く重く能く固くば、則ち當に就いて之を成すべし。
閒攜貳、離而相疑者、則當因而閒之。
【読み】
攜貳[けいじ]を閒[へだ]て、離れて相疑う者は、則ち當に因りて之を閒つべし。
覆昏亂、覆、敗也。
【読み】
昏亂を覆[やぶ]るは、覆は、敗るなり。
霸王之器也。霸王所用。故以器爲喩。○王、于況反。
【読み】
霸王の器なり、と。霸王用ゆる所。故に器を以て喩えとす。○王は、于況反。
晉侯作二軍。晉本一軍。見莊十六年。
【読み】
晉侯二軍を作る。晉は本一軍。莊十六年に見ゆ。
公將上軍、大子申生將下軍、趙夙御戎、畢萬爲右、爲公御・右也。夙、趙衰兄。畢萬、魏犫祖父。○將、子匠反。衰、初危反。犫、尺由反。
【読み】
公上軍に將となり、大子申生下軍に將となり、趙夙戎に御となり、畢萬右と爲り、公の御・右と爲るなり。夙は、趙衰の兄。畢萬は、魏犫[ぎしゅう]の祖父。○將は、子匠反。衰は、初危反。犫は、尺由反。
以滅耿、滅霍、滅魏。平陽皮氏縣東南有耿郷。永安縣東北有霍大山。三國皆姬姓。
【読み】
以て耿[こう]を滅ぼし、霍[かく]を滅ぼし、魏を滅ぼす。平陽皮氏縣の東南に耿郷有り。永安縣の東北に霍大山有り。三國は皆姬姓。
還。爲大子城曲沃。賜趙夙耿、賜畢萬魏、以爲大夫。
【読み】
還る。大子の爲に曲沃に城く。趙夙に耿を賜い、畢萬に魏を賜い、以て大夫とす。
士蔿曰、大子不得立矣。分之都城、而位以卿、先爲之極。又焉得立。位以卿、謂將下軍。
【読み】
士蔿[しい]曰く、大子は立つことを得ざらん。之に都城を分かちて、位するに卿を以てして、先ず之が極を爲せり。又焉んぞ立つことを得ん。位するに卿を以てすとは、下軍に將とするを謂う。
不如逃之。無使罪至、爲吳大伯、不亦可乎。大伯、周大王之適子。知其父欲立季歷。故讓位而適吳。
【読み】
之を逃るるに如かず。罪をして至らしむること無く、吳の大伯爲らんこと、亦可からずや。大伯は、周の大王の適子。其の父季歷を立てんことを欲するを知る。故に位を讓りて吳に適く。
猶有令名。與其及也。言雖去猶有令名。勝於留而及禍。
【読み】
猶令名有らん。其の及ばんに與[いず]れぞ。言うこころは、去ると雖も猶令名有らん。留まりて禍に及ぶに勝れり。
且諺曰、心苟無瑕、何恤乎無家。天若祚大子、其無晉乎。爲晉殺申生傳。
【読み】
且諺に曰く、心苟も瑕[きず]無くば、何ぞ家無きを恤えん、と。天若し大子に祚[さいわい]せば、其れ晉無からんや、と。晉申生を殺す爲の傳なり。
卜偃曰、畢萬之後必大。卜偃、晉掌卜大夫。
【読み】
卜偃[ぼくえん]曰く、畢萬の後必ず大ならん。卜偃は、晉の卜を掌る大夫。
萬、盈數也。魏、大名也。以是始賞、天啓之矣。天子曰兆民、諸侯曰萬民。今名之大、以從盈數。其必有衆。以魏從萬、有衆象。
【読み】
萬は、盈數なり。魏は、大名なり。是を以て始めて賞せらるるは、天の之を啓くなり。天子に兆民と曰い、諸侯に萬民と曰う。今名の大、以て盈數に從う。其れ必ず衆を有たん、と。魏を以て萬に從うは、衆を有つの象なり。
初、畢萬筮仕於晉、遇屯
震下坎上屯。
【読み】
初め、畢萬晉に仕えんことを筮して、屯[ちゅん]の
震下坎上は屯。
之比。坤下坎上比。屯初九變而爲比。
【読み】
比に之くに遇えり。坤下坎上は比。屯の初九變じて比と爲る。
辛廖占之。曰、吉。辛廖、晉大夫。○廖、力彫反。
【読み】
辛廖[しんりょう]之を占う。曰く、吉なり。辛廖は、晉の大夫。○廖は、力彫反。
屯固比入。吉孰大焉。其必蕃昌。屯、險難。所以爲堅固。比、親密。所以得入。
【読み】
屯固く比は入る。吉孰れか焉より大ならん。其れ必ず蕃昌せん。屯は、險難なり。堅固と爲る所以なり。比は、親密なり。入るを得る所以なり。
震爲土、震變爲坤。
【読み】
震土と爲り、震變じて坤と爲る。
車從馬、震爲車、坤爲馬。
【読み】
車馬に從い、震を車と爲し、坤を馬と爲す。
足居之、震爲足。
【読み】
足之を居き、震を足と爲す。
兄長之、震爲長男。○長、丁丈反。
【読み】
兄之に長となり、震を長男と爲す。○長は、丁丈反。
母覆之、坤爲母。
【読み】
母之を覆い、坤を母と爲す。
衆歸之。坤爲衆。
【読み】
衆之に歸す。坤を衆と爲す。
六體不易、初一爻變有此六義、不可易也。
【読み】
六體易わらず、初めの一爻變じて此の六義有り、易う可からず。
合而能固、安而能殺、公侯之卦也。比、合。屯、固。坤、安。震、殺。故曰公侯之卦。
【読み】
合いて能く固く、安くして能く殺すは、公侯の卦なり。比は、合う。屯は、固し。坤は、安し。震は、殺す。故に公侯の卦と曰う。
公侯之子孫。必復其始。萬、畢公高之後。傳爲魏之子孫衆多張本。
【読み】
公侯の子孫なり。必ず其の始めに復らん、と。萬は、畢公高の後なり。傳、魏の子孫の衆多なる爲の張本なり。
*注の「萬、畢」について、頭注に「萬畢或作畢萬。今從足利本」とある。
〔經〕二年、春、王正月、齊人遷陽。無傳。陽、國名。蓋齊人偪徙之。
【読み】
〔經〕二年、春、王の正月、齊人陽を遷す。傳無し。陽は、國の名。蓋し齊人偪りて之を徙[うつ]すならん。
夏、五月、乙酉、吉禘于莊公。三年喪畢、致新死者之主於廟、廟之遠主、當遷入祧。因是大祭、以審昭穆。謂之禘。莊公喪制未闋、時別立廟、廟成而吉祭、又不於大廟。故詳書以示譏。○祧、他彫反。昭、上饒反。闋、苦穴反。
【読み】
夏、五月、乙酉[きのと・とり]、莊公に吉禘[きってい]す。三年の喪畢り、新たに死する者の主を廟に致し、廟の遠き主は、當に遷して祧[ちょう]に入るべし。是に因りて大祭して、以て昭穆を審らかにす。之を禘と謂う。莊公の喪制未だ闋[おわ]らず、時に別に廟を立て、廟成りて吉祭し、又大廟に於てせず。故に詳らかに書して以て譏りを示す。○祧は、他彫反。昭は、上饒反。闋[けつ]は、苦穴反。
秋、八月、辛丑、公薨。實弑書薨、又不地者、皆史策諱之。
【読み】
秋、八月、辛丑[かのと・うし]、公薨ず。實は弑して薨ずと書し、又地いわざるは、皆史策之を諱みたるなり。
九月、夫人姜氏孫于邾。哀姜外淫。故孫稱姜氏。○孫、音遜。
【読み】
九月、夫人姜氏邾[ちゅ]に孫[のが]る。哀姜外淫す。故に孫るに姜氏と稱す。○孫は、音遜。
公子慶父出奔莒。弑閔公故。
【読み】
公子慶父出でて莒に奔る。閔公を弑する故なり。
冬、齊高子來盟。無傳。蓋高傒也。齊侯使來平魯亂。僖公新立。因遂結盟。故不稱使也。魯人貴之。故不書名。子、男子之美稱。○美稱、尺證反。
【読み】
冬、齊の高子來り盟う。傳無し。蓋し高傒ならん。齊侯來りて魯の亂を平らげしむ。僖公新たに立つ。因りて遂に盟を結ぶ。故に使と稱せざるなり。魯人之を貴ぶ。故に名を書さず。子は、男子の美稱。○美稱は、尺證反。
十有二月、狄入衛。書入、不能有其地。例在襄十三年。
【読み】
十有二月、狄衛に入る。入ると書すは、其の地を有つこと能わざるなり。例は襄十三年に在り。
鄭弃其師。高克見惡、久不得還。師潰而克奔陳。故克狀其事以告魯也。
【読み】
鄭其の師を弃[す]つ。高克惡まれて、久しく還ることを得ず。師潰[つい]えて克陳に奔る。故に克其の事を狀して以て魯に告ぐるなり。
〔傳〕二年、春、虢公敗犬戎于渭汭。犬戎、西戎別在中國者。渭水、出隴西、東入河。水之隈曲曰汭。○汭、如銳反。隈、烏囘反。
【読み】
〔傳〕二年、春、虢公犬戎を渭汭[いぜい]に敗る。犬戎は、西戎の別に中國に在る者。渭水は、隴西に出でて、東して河に入る。水の隈曲を汭と曰う。○汭は、如銳反。隈は、烏囘反。
舟之僑曰、無德而祿、殃也。殃將至矣。遂奔晉。舟之僑、虢大夫。
【読み】
舟之僑曰く、德無くして祿あるは、殃[わざわい]なり。殃將に至らんとす、と。遂に晉に奔る。舟之僑は、虢の大夫。
夏、吉禘于莊公。速也。
【読み】
夏、莊公に吉禘す。速きなり。
初、公傅奪卜齮田。公不禁。卜齮、魯大夫也。公卽位。年八歲、知愛其傅、而遂成其意、以奪齮田。齮忿其傅、幷及公。故慶父因之。○齮、魚綺反。
【読み】
初め、公の傅卜齮[ぼくき]の田を奪う。公禁ぜず。卜齮は、魯の大夫なり。公位に卽く。年八歲にして、其の傅を愛することを知りて、遂に其の意を成さしめて、以て齮の田を奪う。齮其の傅を忿り、幷せて公に及ぶ。故に慶父之に因る。○齮は、魚綺反。
秋、八月、辛丑、共仲使卜齮賊公于武闈。宮中小門、謂之闈。○共、音恭。
【読み】
秋、八月、辛丑、共仲卜齮をして公を武闈[ぶい]に賊せしむ。宮中の小門、之を闈と謂う。○共は、音恭。
成季以僖公適邾。僖公、閔公庶兄。成風之子。
【読み】
成季僖公を以[い]て邾に適く。僖公は、閔公の庶兄。成風の子。
共仲奔莒。乃入、立之。以賂求共仲于莒。莒人歸之。及密、使公子魚請。密、魯地。瑯邪費縣北有密如亭。公子魚、奚斯也。
【読み】
共仲莒に奔る。乃ち入りて、之を立つ。賂を以て共仲を莒に求む。莒人之を歸す。密に及ぶとき、公子魚をして請わしむ。密は、魯の地。瑯邪費縣の北に密如亭有り。公子魚は、奚斯なり。
不許。哭而往。共仲曰、奚斯之聲也。乃縊。慶父之罪雖重、季子推親親之恩、欲同之叔牙、存孟氏之族。故略其罪不書殺、又不書卒。
【読み】
許さず。哭して往く。共仲曰く、奚斯の聲なり、と。乃ち縊る。慶父の罪重しと雖も、季子親親の恩を推して、之を叔牙に同じくして、孟氏の族を存せんと欲す。故に其の罪を略して殺を書さず、又卒を書さず。
閔公、哀姜之娣叔姜之子也。故齊人立之。共仲通於哀姜。哀姜欲立之。閔公之死也、哀姜與知之。故孫于邾。齊人取而殺之于夷、以其尸歸。爲僖元年、齊人殺哀姜傳。夷、魯地。○與、音預。孫、音遜。
【読み】
閔公は、哀姜の娣の叔姜の子なり。故に齊人之を立つ。共仲哀姜に通ず。哀姜之を立てんことを欲す。閔公の死するや、哀姜之を與り知れり。故に邾に孫る。齊人取[とら]えて之を夷に殺し、其の尸を以て歸る。僖元年、齊人哀姜を殺す爲の傳なり。夷は、魯の地。○與は、音預。孫は、音遜。
僖公請而葬之。哀姜之罪已重。而僖公請其喪還者、外欲固齊以居厚、内存母子不絕之義、爲國家之大計。
【読み】
僖公請いて之を葬れり。哀姜の罪已[はなは]だ重し。而るに僖公其の喪を請いて還すは、外齊を固くして以て厚に居り、内母子不絕の義を存して、國家の大計を爲さんことを欲してなり。
成季之將生也、桓公使卜楚丘之父卜之。卜楚丘、魯掌卜大夫。
【読み】
成季の將に生まれんとするや、桓公卜楚丘の父をして之を卜せしむ。卜楚丘は、魯の卜を掌る大夫。
曰、男也。其名曰友。在公之右。在右、言用事。
【読み】
曰く、男なり。其の名を友と曰わん。公の右に在り。右に在るは、事を用ゆるを言う。
閒于兩社、爲公室輔。兩社、周社・亳社。兩社之閒、朝廷執政所在。
【読み】
兩社に閒[はさ]まり、公室の輔と爲らん。兩社は、周社・亳社。兩社の閒は、朝廷執政の在る所。
季氏亡、則魯不昌。又筮之。遇大有 乾下離上大有。
【読み】
季氏亡びば、則ち魯昌えず、と。又之を筮す。大有の 乾下離上は大有。
之乾。乾下乾上乾。大有六五變而爲乾。
【読み】
乾に之くに遇えり。乾下乾上は乾。大有の六五變じて乾と爲る。
曰、同復于父、敬如君所。筮者之辭也。乾爲君父。離變爲乾。故曰同復于父。見敬與君同。
【読み】
曰く、同じくして父に復り、敬せらること君所の如けん、と。筮者の辭なり。乾を君父と爲す。離變じて乾と爲る。故に同じくして父に復ると曰う。敬せらること君と同じ。
及生、有文在其手曰友。遂以命之。遂以爲名。
【読み】
生まるるに及んで、文の其の手に在る有り友と曰う。遂に以て之に命ぜり。遂に以て名と爲す。
冬、十二月、狄人伐衛。衛懿公好鶴、鶴有乘軒者。軒、大夫車。○好、呼報反。軒、許言反。
【読み】
冬、十二月、狄人衛を伐つ。衛の懿公鶴を好み、鶴軒に乘る者有り。軒は、大夫の車。○好は、呼報反。軒は、許言反。
將戰。國人受甲者皆曰、使鶴。鶴實有祿位。余焉能戰。公與石祁子玦、與甯莊子矢、使守。莊子、甯速也。玦、玉玦。○玦、古穴反。守、手又反。
【読み】
將に戰わんとす。國人の甲を受くる者皆曰う、鶴を使え。鶴實に祿位有り。余焉ぞ能く戰わん、と。公石祁子に玦[けつ]を與え、甯莊子[ねいそうし]に矢を與えて、守らしむ。莊子は、甯速なり。玦は、玉玦。○玦は、古穴反。守は、手又反。
曰、以此贊國、擇利而爲之。贊、助也。玦、示以當決斷、矢、示以禦難。
【読み】
曰く、此を以て國を贊け、利を擇びて之を爲せ、と。贊は、助くなり。玦は、示すに當に決斷すべきを以てし、矢は、示すに難を禦ぐを以てす。
與夫人繡衣、曰、聽於二子。取其文章順序。
【読み】
夫人に繡衣を與えて、曰く、二子に聽け、と。其の文章の順序に取る。
渠孔御戎、子伯爲右、黃夷前驅、孔嬰齊殿、傳言衛侯失民有素、雖臨事而戒、猶無所及。○殿、丁練反。
【読み】
渠孔戎に御となり、子伯右と爲り、黃夷前驅し、孔嬰齊殿となり、傳、衛侯民を失うこと素有り、事に臨みて戒むと雖も、猶及ぶ所無きを言う。○殿は、丁練反。
及狄人戰于熒澤。衛師敗績。遂滅衛。此熒澤、當在河北。君死國散經不書滅者、狄不能赴、衛之君臣皆盡無復文告、齊桓爲之告諸侯、言狄已去、言衛之存。故但以入爲文。○熒、戶扃反。
【読み】
狄人と熒澤[けいたく]に戰う。衛の師敗績す。遂に衛を滅ぼす。此の熒澤は、當に河北に在るべし。君死し國散じて經滅を書さざるは、狄赴[つ]ぐること能わず、衛の君臣皆盡きて復文告無く、齊桓之が爲に諸侯に告げて、狄已に去るを言い、衛の存するを言う。故に但入るを以て文と爲すなり。○熒は、戶扃反。
衛侯不去其旗。是以甚敗。
【読み】
衛侯其の旗を去[す]てず。是を以て甚だ敗れたり。
狄人囚史華龍滑與禮孔、以逐衛人。二人曰、我大史也。實掌其祭。不先、國不可得也。夷狄畏鬼。故恐言、當先白神。○去、起呂反。華、胡化反。
【読み】
狄人史の華龍滑と禮孔とを囚えて、以て衛人を逐う。二人曰く、我は大史なり。實に其の祭を掌れり。先だたずんば、國得可からず、と。夷狄鬼を畏る。故に恐[おど]して言う、當に先ず神に白[もう]すべし、と。○去は、起呂反。華は、胡化反。
乃先之。至則告守曰、不可待也。守、石・甯二大夫。
【読み】
乃ち之を先だつ。至りて則ち守に告げて曰く、待つ可からず、と。守は、石・甯の二大夫。
夜與國人出。狄入衛、遂從之、又敗諸河。衛將東走渡河。狄復逐而敗之。
【読み】
夜國人と出づ。狄衛に入り、遂に之を從[お]い、又諸を河に敗る。衛將に東走して河を渡らんとす。狄復逐って之を敗る。
初、惠公之卽位也少。蓋年十五六。
【読み】
初め、惠公の位に卽くや少[わか]し。蓋し年十五六ならん。
齊人使昭伯烝於宣姜。不可。强之。昭伯、惠公庶兄、宣公子頑也。昭伯不可。
【読み】
齊人昭伯をして宣姜に烝せしむ。可[き]かず。之を强う。昭伯は、惠公の庶兄、宣公の子頑なり。昭伯可かず。
生齊子・戴公・文公・宋桓夫人・許穆夫人。
【読み】
齊子・戴公・文公・宋の桓夫人・許の穆夫人を生む。
文公爲衛之多患也、先適齊。及敗、宋桓公逆諸河。迎衛敗衆。
【読み】
文公衛の患え多きが爲に、先ず齊に適く。敗るるに及んで、宋の桓公諸を河に逆[むか]う。衛の敗衆を迎う。
宵濟。夜渡、畏狄。
【読み】
宵[よる]濟[わた]る。夜渡るは、狄を畏れてなり。
衛之遺民、男女七百有三十人、益之以共・滕之民、爲五千人。共及滕、衛別邑。○共、音恭。
【読み】
衛の遺民、男女七百有三十人、之に益すに共・滕の民を以て、五千人と爲る。共と滕とは、衛の別邑。○共は、音恭。
立戴公以廬于曹。廬、舍也。曹、衛下邑。戴公名申。立其年卒、而立文公。
【読み】
戴公を立てて以て曹に廬す。廬は、舍るなり。曹は、衛の下邑。戴公名は申。立ちて其の年卒して、文公を立つ。
許穆夫人賦載馳。載馳、詩衛風也。許穆夫人痛衛之亡、思歸唁之、不可。故作詩以言志。
【読み】
許の穆夫人載馳[さいち]を賦す。載馳は、詩の衛風なり。許の穆夫人衛の亡ぶるを痛み、歸りて之を唁[とむら]わんことを思えども、不可なり。故に詩を作りて以て志を言う。
齊侯使公子無虧帥車三百乘、甲士三千人、以戍曹。無虧、齊桓公子武孟也。車甲之賦異於常。故傳別見之。
【読み】
齊侯公子無虧[むき]をして車三百乘、甲士三千人を帥いて、以て曹を戍らしむ。無虧は、齊の桓公の子武孟なり。車甲の賦常に異なり。故に傳別に之を見す。
歸公乘馬、祭服五稱、牛・羊・豕・雞・狗皆三百、與門材、歸、遺也。四馬曰乘、衣單複具曰稱。門材、使先立門戶。○稱、尺證反。
【読み】
公に乘馬、祭服五稱、牛・羊・豕・雞・狗皆三百と、門材とを歸[おく]り、歸は、遺るなり。四馬を乘と曰い、衣の單複具わるを稱と曰う。門材は、先ず門戶を立てしむるなり。○稱は、尺證反。
歸夫人魚軒、魚軒、夫人車。以魚皮爲飾。
【読み】
夫人に魚軒と、魚軒は、夫人の車。魚皮を以て飾りと爲す。
重錦三十兩。重錦、錦之熟細者。以二丈雙行。故曰兩。三十兩、三十匹也。
【読み】
重錦三十兩を歸る。重錦は、錦の熟細なる者。二丈を以て雙行す。故に兩と曰う。三十兩は、三十匹なり。
鄭人惡高克、使帥師次于河上、久而弗召。師潰而歸。高克奔陳。高克、鄭大夫也。好利而不顧其君。文公惡之、而不能遠。故使帥師而不召。
【読み】
鄭人高克を惡みて、師を帥いて河上に次[やど]らしめ、久しくして召さず。師潰[つい]えて歸る。高克陳に奔る。高克は、鄭の大夫なり。利を好みて其の君を顧みず。文公之を惡めども、遠ざくること能わず。故に師を帥いしめて召さず。
鄭人爲之賦淸人。淸人、詩鄭風也。刺文公退臣不以道、危國亡師之本。
【読み】
鄭人之が爲に淸人を賦す。淸人は、詩の鄭風なり。文公臣を退くるに道を以てせずして、國を危くし師を亡ぼすの本なるを刺[そし]る。
晉侯使大子申生伐東山皐落氏。赤狄別種也。皐落、其氏族。
【読み】
晉侯大子申生をして東山の皐落氏を伐たしむ。赤狄の別種なり。皐落は、其の氏族。
里克諫曰、大子奉冢祀社稷之粢盛、里克、晉大夫。冢、大也。
【読み】
里克諫めて曰く、大子は冢祀社稷の粢盛を奉じて、里克は、晉の大夫。冢は、大なり。
以朝夕視君膳者也。膳、厨膳。
【読み】
以て朝夕に君の膳を視る者なり。膳は、厨膳。
故曰冢子。君行則守、有守則從。從曰撫軍、守曰監國。古之制也。夫帥師、專行謀、帥師者、必專謀軍事。○守、手又反。下同。從、才用反。監、古銜反。
【読み】
故に冢子と曰う。君行けば則ち守り、守り有れば則ち從う。從うを撫軍と曰い、守るを監國と曰う。古の制なり。夫れ師を帥いれば、專ら謀を行い、師を帥いる者は、必ず專ら軍事を謀る。○守は、手又反。下も同じ。從は、才用反。監は、古銜反。
誓軍旅。宣號令也。
【読み】
軍旅に誓う。號令を宣ぶるなり。
君與國政之所圖也。非大子之事也。國政、正卿。
【読み】
君と國政との圖る所なり。大子の事に非ざるなり。國政は、正卿。
師在制命而已。命、將軍所制。
【読み】
師は命を制するに在るのみ。命は、將に軍の制する所。
稟命則不威、專命則不孝。故君之嗣適、不可以帥師。君失其官、帥師不威、將焉用之。大子統師、是失其官也。專命則不孝、是爲帥必不威也。
【読み】
命を稟くれば則ち威あらず、命を專らにすれば則ち不孝なり。故に君の嗣適は、以て師を帥いしむ可からず。君其の官を失い、師を帥いて威あらざること、將[はた]焉んぞ之を用いん。大子師を統ぶる、是れ其の官を失うなり。命を專らにすれば則ち不孝、是れ帥いて必ず威あらずと爲るなり。
且臣聞、皐落氏將戰。君其舍之。公曰、寡人有子、未知其誰立焉。不對而退。
【読み】
且つ臣聞く、皐落氏將に戰わんとす、と。君其れ之を舍[お]け、と。公曰く、寡人子有り、未だ其の誰をか立てんことを知らず、と。對えずして退く。
見大子。大子曰、吾其廢乎。對曰、告之以臨民、謂居曲沃。
【読み】
大子に見ゆ。大子曰く、吾れ其れ廢てられんか、と。對えて曰く、之に告ぐるに臨民を以てし、曲沃に居くを謂う。
敎之以軍旅。謂將下軍。
【読み】
之に敎ゆるに軍旅を以てす。下軍に將たるを謂う。
不共是懼。何故廢乎。且子懼不孝。無懼弗得立。脩己而不責人、則免於難。
【読み】
共せざるを是れ懼れよ。何の故に廢てられんや。且つ子不孝を懼る。立つことを得ざるを懼るること無けん。己を脩めて人を責めざれば、則ち難を免れん、と。
大子帥師。公衣之偏衣、偏衣、左右異色、其半似公服。○衣之偏、於旣反。下衣身之偏、衣之純、衣之尨服、同。
【読み】
大子師を帥いぬ。公之に偏衣を衣せ、偏衣は、左右色を異にして、其の半は公服に似たるなり。○衣之偏は、於旣反。下の衣身之偏。衣之純、衣之尨服[ぼうふく]、同じ。
佩之金玦。以金爲玦。
【読み】
之に金玦[きんけつ]を佩びしむ。金を以て玦と爲すなり。
狐突御戎、先友爲右、狐突、伯行。重耳外祖父也。爲申生御。申生以大子將上軍。
【読み】
狐突戎に御となり、先友右と爲り、狐突は、伯行。重耳の外祖父なり。申生の御爲り。申生大子を以て上軍に將たり。
梁餘子養御罕夷、先丹木爲右、罕夷、晉下軍卿也。梁餘子養爲罕夷御。
【読み】
梁餘子養罕夷[かんい]に御となり、先丹木右と爲り、罕夷は、晉の下軍の卿なり。梁餘子養は罕夷の御爲たり。
羊舌大夫爲尉。羊舌大夫、叔向祖父也。尉、軍尉。○向、許丈反。
【読み】
羊舌大夫尉爲り。羊舌大夫は、叔向の祖父なり。尉は、軍尉。○向は、許丈反。
先友曰、衣身之偏、偏、半也。
【読み】
先友曰く、身の偏を衣せ、偏は、半なり。
握兵之要。謂佩金玦、將上軍。
【読み】
兵の要を握らしむ。金玦を佩びて、上軍に將とするを謂う。
在此行也、子其勉之。偏躬無慝、分身衣之半、非惡意也。
【読み】
此の行に在りてや、子其れ之を勉めよ。偏躬は慝[あ]しきこと無く、身を分けて之に半を衣するは、惡意に非ざるなり。
兵要遠災。威權在己。可以遠害。○遠、去聲。下同。
【読み】
兵要は災いに遠ざかる。威權己に在り。以て害に遠ざかる可し。○遠は、去聲。下も同じ。
親以無災。又何患焉。
【読み】
親しまれて以て災い無し。又何をか患えん、と。
狐突歎曰、時、事之徵也。歎、以先友爲不知君心。
【読み】
狐突歎じて曰く、時は、事の徵なり。歎ずるは、先友を以て君の心を知らずと爲すなり。
衣、身之章也。章貴賤。
【読み】
衣は、身の章なり。貴賤を章らかにす。
佩、衷之旗也。旗、表也。所以表明其中心。○衷、音忠。
【読み】
佩は、衷の旗なり。旗は、表なり。其の中心を表明する所以なり。○衷は、音忠。
故敬其事、則命以始、賞以春夏。
【読み】
故に其の事を敬すれば、則ち命ずるに始めを以てし、賞するに春夏を以てす。
服其身、則衣之純、必以純色爲服。
【読み】
其の身に服すれば、則ち之に純を衣せ、必ず純色を以て服とす。
用其衷、則佩之度。衷、中也。佩玉者、士君子常度。
【読み】
其の衷を用ゆれば、則ち之に度を佩びしむ。衷は、中なり。玉を佩ぶ者は、士君子の常度。
今命以時卒、閟其事也。冬十二月、閟盡之時。
【読み】
今命ずるに時の卒りを以てするは、其の事を閟[と]ずるなり。冬十二月は、閟盡[ひじん]の時なり。
衣之尨服、遠其躬也。尨、雜色。
【読み】
之に尨服[ぼうふく]を衣するは、其の躬を遠ざくるなり。尨は、雜色。
佩以金玦、弃其衷也。服以遠之、時以閟之。尨涼、冬殺、金寒、玦離。胡可恃也。寒・涼・殺・離、言無溫潤。玦、如環而缺不連。
【読み】
佩びしむるに金玦を以てするは、其の衷を弃[す]つるなり。服以て之を遠ざけて、時以て之を閟ず。尨は涼しく、冬は殺し、金は寒く、玦は離る。胡ぞ恃む可けんや。寒・涼・殺・離は、溫潤無きを言う。玦は、環の如くにして缺[か]けて連ならず。
雖欲勉之、狄可盡乎。
【読み】
之を勉めんと欲すと雖も、狄盡くす可けんや、と。
梁餘子養曰、帥師者、受命於廟、受脤於社、脤、宜社之肉。盛以脤器。○脤、市軫反。
【読み】
梁餘子養曰く、師を帥いる者は、命を廟に受け、脤[しん]を社に受けて、脤は、社に宜するの肉。盛るに脤器を以てす。○脤は、市軫反。
有常服矣。不獲而尨。命可知也。韋弁服、軍之常也。尨、偏衣。
【読み】
常の服有り。獲ずして尨す。命知る可し。韋弁服は、軍の常なり。尨は、偏衣。
死而不孝。不如逃之。
【読み】
死して不孝なり。之を逃るるに如かず、と。
罕夷曰、尨奇無常、雜色奇怪、非常之服。
【読み】
罕夷曰く、尨奇は常無く、雜色奇怪は、非常の服。
金玦不復。雖復何爲。君有心矣。有害大子之心。
【読み】
金玦は復らず。復ると雖も何をか爲さん。君心有り、と。大子を害するの心有り。
先丹木曰、是服也、狂夫阻之。阻、疑也。言雖狂夫、猶知有疑。
【読み】
先丹木曰く、是の服や、狂夫も之に阻[うたが]いありとす。阻は、疑いなり。言うこころは、狂夫と雖も、猶疑い有るを知る。
曰、盡敵而反。曰、公辭。○盡、子忍反。下盡敵同。
【読み】
曰く、敵を盡くして反れ、と。曰くは、公の辭。○盡は、子忍反。下の盡敵も同じ。
敵可盡乎。雖盡敵、猶有内讒。不如違之。違、去也。
【読み】
敵盡くす可けんや。敵を盡くすと雖も、猶内讒有り。之を違[さ]るに如かず、と。違は、去るなり。
狐突欲行。行、亦去也。
【読み】
狐突行[さ]らんと欲す。行も、亦去るなり。
羊舌大夫曰、不可。違命不孝。弃事不忠。雖知其寒、惡不可取。子其死之。寒、薄也。
【読み】
羊舌大夫曰く、不可なり。命に違うは不孝なり。事を弃つるは不忠なり。其の寒[うす]きを知ると雖も、惡取る可からず。子其れ之に死せよ、と。寒は、薄きなり。
大子將戰。狐突諫曰、不可。昔辛伯諗周桓公、諗、告也。事在桓十八年。○諗、音審。說文云、深謀。
【読み】
大子將に戰わんとす。狐突諫めて曰く、不可なり。昔辛伯周の桓公に諗[つ]げて、諗[しん]は、告ぐるなり。事は桓十八年に在り。○諗は、音審。說文に云う、深謀、と。
云、内寵竝后、外寵二政、嬖子配適、大都耦國、亂之本也。周公弗從。故及於難。今亂本成矣。驪姬爲内寵、二五爲外寵、奚齊爲嬖子、曲沃爲大都。故曰亂本成矣。
【読み】
云う、内寵后に竝び、外寵政を二つにし、嬖子適に配[たぐ]い、大都國に耦[なら]ぶは、亂の本なり、と。周公從わず。故に難に及べり。今亂の本成れり。驪姬を内寵と爲し、二五を外寵と爲し、奚齊を嬖子と爲し、曲沃を大都と爲す。故に亂の本成れりと曰う。
立可必乎。孝而安民、子其圖之。奉身爲孝、不戰爲安民。
【読み】
立つこと必とす可けんや。孝にして民を安んぜんこと、子其れ之を圖れ。身を奉ずるを孝と爲し、戰わざるを民を安んずと爲す。
與其危身以速罪也。有功益見害。故言孰與危身以召罪。
【読み】
其の身を危うくして以て罪を速[まね]くに與[いず]れぞや、と。功有れば益々害せらる。故に身を危うくして以て罪を召[まね]くに孰與[いず]れぞと言う。
成風聞成季之繇、乃事之、成風、莊公之妾、僖公之母也。繇、卦兆之占辭。○繇、直救反。
【読み】
成風成季の繇[ちゅう]を聞き、乃ち之に事えて、成風は、莊公の妾、僖公の母なり。繇は、卦兆の占辭。○繇は、直救反。
而屬僖公焉。故成季立之。
【読み】
僖公を屬す。故に成季之を立つ。
僖之元年、齊桓公遷邢于夷儀、二年、封衛于楚丘。邢遷如歸、衛國忘亡。忘其滅亡之困。
【読み】
僖の元年、齊の桓公邢を夷儀に遷し、二年、衛を楚丘に封ず。邢の遷ること歸るが如く、衛國亡びしを忘れたり。其の滅亡の困しみを忘る。
衛文公大布之衣、大帛之冠、大布、麤布。大帛、厚繒。蓋用諸侯諒闇之服。○諒、音良。又音亮。
【読み】
衛の文公大布の衣、大帛の冠し、大布は、麤布。大帛は、厚繒。蓋し諸侯諒闇の服を用ゆるならん。○諒は、音良。又音亮。
務材、訓農、通商、惠工、加惠於百工、賞其利器用。
【読み】
材を務め、農を訓え、商を通じ、工を惠み、惠みを百工に加え、其の器用を利するを賞す。
敬敎、勸學、授方、任能。方、百事之宜也。
【読み】
敎えを敬し、學を勸め、方を授け、能に任ず。方は、百事の宜なり。
元年、革車三十乘、季年、乃三百乘。衛文公以此年冬立、齊桓公始平魯亂。故傳因言齊之所以霸、衛之所由興。革車、兵車。季年、在僖二十五年。蓋招懷迸散。故能致十倍之衆。○乘、繩證反。迸、檗諍反。
【読み】
元年に、革車三十乘、季年に、乃ち三百乘あり。衛の文公此の年の冬を以て立ち、齊の桓公始めて魯の亂を平らぐ。故に傳因りて齊の霸たる所以と、衛の由りて興る所とを言う。革車は、兵車。季年は、僖二十五年に在り。蓋し逬散[ほうさん]を招懷す。故に能く十倍の衆を致すならん。○乘は、繩證反。迸は、檗諍反。
閔
經元年。出疆。居良反。省難。乃旦反。下及傳同。
傳。狼。音郎。諸夏。戶雅反。注同。親暱。女乙反。宴安。於見反。本又作晏。音同。一音烏諫反。酖毒。直蔭反。勞來。力報反。下力代反。自斃。婢世反。踣。蒲北反。閒攜。閒厠之閒。注同。覆昏。芳服反。注同。見莊。賢遍反。滅耿。古幸反。還爲。于僞反。又焉。於虔反。大伯。音泰。注同。適子。丁歷反。本又作嫡。且諺。音彥。若祚。在路反。遇屯。張倫反。之比。毗志反。注及下同。蕃昌。音煩。
經二年。吉禘。大計反。大廟。音泰。見惡。烏路反。師潰。戶内反。
傳。舟之僑。音喬。武闈。音韋。一音暉。費縣。音祕。又扶味反。乃縊。一賜反。亳社。步各反。余焉。於虔反。決斷。丁亂反。禦難。乃旦反。無復。扶又反。下復遂同。爲之。于僞反。下爲衛同。大史。音泰。故恐。丘勇反。也少。詩照反。烝於。之承反。强之。其丈反。以廬。力居反。歸唁。音彥。無虧。去危反。三百乘。繩證反。下及注同。別見。賢遍反。雞狗。音苟。歸遺。于季反。單複。音丹。下方服反。人惡。烏路反。注同。好利。呼報反。能遠。于萬反。爲之。于僞反。皐落。古刀反。別種。章勇反。粢盛。音咨。下音成。朝夕。如字。又張遙反。君膳。市戰反。嗣適。丁歷反。本又作嫡。下配適同。將焉。於虔反。謂將。子匠反。下將上軍竝同。不共。音恭。本又作供。於難。乃旦反。下同。無慝。他得反。旗也。音其。閟其。音祕。尨服。莫江反。盛以。音成。阻之。莊呂反。而屬。章欲反。衛文公大布之衣。本或作衣大布之衣誤。厚繒。疾陵反。