春秋左氏傳校本第八
文公 起元年盡十年
晉 杜氏 集解
唐 陸氏 音義
尾張 秦 鼎 校本
文公 名興。僖公子。母聲姜。謚法、慈惠愛民曰文。忠信接禮曰文。
【読み】
文公 名は興。僖公の子。母は聲姜。謚法に、慈惠にして民を愛するを文と曰う。忠信禮に接わるを文と曰う、と。
〔經〕元年、春、王正月、公卽位。無傳。先君未葬、而公卽位、不可曠年無君。
【読み】
〔經〕元年、春、王の正月、公位に卽く。傳無し。先君未だ葬らずして、公位に卽くは、年を曠[むな]しくして君無かる可からざればなり。
二月、癸亥、日有食之。無傳。癸亥、月一日。不書朔、官失之。
【読み】
二月、癸亥[みずのと・い]、日之を食する有り。傳無し。癸亥は、月の一日。朔を書さざるは、官之を失えるなり。
天王使叔服來會葬。叔、氏。服、字。諸侯喪、天子使大夫會葬、禮也。
【読み】
天王叔服をして來りて葬に會せしむ。叔は、氏。服は、字。諸侯の喪に、天子大夫をして葬に會せしむるは、禮なり。
夏、四月、丁巳、葬我君僖公。七月而葬。緩也。
【読み】
夏、四月、丁巳[ひのと・み]、我が君僖公を葬る。七月にして葬る。緩[おそ]きなり。
天王使毛伯來錫公命。毛、國。伯、爵。諸侯爲王卿士者。諸侯卽位、天子賜以命圭、合瑞爲信。僖十一年、王賜晉侯命、亦其比也。
【読み】
天王毛伯をして來りて公に命を錫わしむ。毛は、國。伯は、爵。諸侯の王の卿士爲る者なり。諸侯位に卽けば、天子賜うに命圭を以てし、瑞を合わせて信と爲す。僖十一年、王晉侯に命を賜うも、亦其の比なり。
晉侯伐衛。晉襄公先告諸侯而伐衛。雖大夫親伐、而稱晉侯、從告辭也。
【読み】
晉侯衛を伐つ。晉の襄公先ず諸侯に告げて衛を伐つ。大夫親ら伐つと雖も、而れども晉侯と稱するは、告辭に從うなり。
叔孫得臣如京師。得臣、叔牙之孫。
【読み】
叔孫得臣京師に如く。得臣は、叔牙の孫。
衛人伐晉。衛孔達爲政、不共盟主、興兵鄰國、受討喪邑。故貶稱人。
【読み】
衛人晉を伐つ。衛の孔達政を爲して、盟主に共せず、兵を鄰國に興し、討を受け邑を喪う。故に貶して人と稱す。
秋、公孫敖會晉侯于戚。戚、衛邑。在頓丘衛縣西。禮、卿不會公侯。而春秋魯大夫皆不貶者、體例已舉。故據用魯史成文而已。内稱公、卒稱薨、皆用魯史。
【読み】
秋、公孫敖晉侯に戚に會す。戚は、衛の邑。頓丘衛縣の西に在り。禮に、卿は公侯に會せず、と。而るに春秋魯の大夫皆貶せざるは、體例已に舉げたり。故に魯史の成文に據り用ゆるのみ。内公と稱し、卒するに薨と稱するも、皆魯史を用ゆるなり。
冬十月、丁未、楚世子商臣弑其君頵。商臣、穆王也。弑君例在宣四年。○頵、憂倫反。又丘倫反。
【読み】
冬十月、丁未[ひのと・ひつじ]、楚の世子商臣其の君頵[いん]を弑す。商臣は、穆王なり。君を弑するの例は宣四年に在り。○頵は、憂倫反。又丘倫反。
公孫敖如齊。傳例曰、始聘焉。禮也。
【読み】
公孫敖齊に如く。傳例に曰く、始めて聘す。禮なり、と。
〔傳〕元年、春、王使内史叔服來會葬。公孫敖聞其能相人也、公孫敖、魯大夫。慶父之子。
【読み】
〔傳〕元年、春、王内史叔服をして來りて葬に會せしむ。公孫敖其の能く人を相すると聞き、公孫敖は、魯の大夫。慶父の子。
見其二子焉。叔服曰、穀也食子。難也收子。穀、文伯。難、惠叔。食子、奉祭祀供養者也。收子、葬子身也。○見、賢遍反。食、音嗣。難、乃多反。又如字。
【読み】
其の二子を見えしむ。叔服曰く、穀や子を食[やしな]わん。難や子を收めん。穀は、文伯。難は、惠叔。子を食うとは、祭祀を奉じて供養する者なり。子を收むとは、子の身を葬るなり。○見は、賢遍反。食は、音嗣。難は、乃多反。又字の如し。
穀也豐下。必有後於魯國。豐下、蓋面方。爲八年、公孫敖奔莒傳。
【読み】
穀や豐下なり。必ず魯國に後有らん、と。豐下は、蓋し面方ならん。八年、公孫敖莒に奔る爲の傳なり。
於是閏三月。非禮也。於歷法、閏當在僖公末年。誤於今年三月置閏。蓋時達歷者所譏。
【読み】
是に於て三月に閏す。禮に非ざるなり。歷法に於て、閏は當に僖公の末年に在るべし。誤りて今年三月に於て閏を置けり。蓋し時の歷に達する者を譏る所ならん。
先王之正時也、履端於始、舉正於中、歸餘於終。步歷之始、以爲術之端首。朞之日、三百六十有六日。日月之行、又有遲速、而必分爲十二月、舉中氣以正月、有餘日則歸之於終、積而爲閏。故言歸餘於終。
【読み】
先王の時を正すや、端を始めに履[あゆ]ませ、正を中に舉げ、餘を終わりに歸す。歷の始めを步ませて、以て術の端首と爲す。朞の日、三百六十有六日なり。日月の行に、又遲速有るも、而れども必ず分かちて十二月と爲し、中氣を舉げて以て月を正し、餘日有れば則ち之を終
わりに歸して、積りて閏と爲すなり。故に餘を終わりに歸すと言う。
履端於始、序則不愆、四時無愆過。
【読み】
端を始めに履ますときは、序則ち愆[あやま]らず、四時愆過無し。
舉正於中、民則不惑、斗建不失其次、寒暑不失其常。故無疑惑。
【読み】
正を中に舉ぐるときは、民則ち惑わず、斗建其の次を失わず、寒暑其の常を失わず。故に疑惑無し。
歸餘於終、事則不悖。四時得所、則事無悖亂。
【読み】
餘を終わりに歸するときは、事則ち悖らず。四時所を得れば、則ち事悖亂無し。
夏、四月、丁巳、葬僖公。傳皆不虛載經文。而此經孤見。知僖公末年傳、宜在此下。
【読み】
夏、四月、丁巳、僖公を葬る。傳皆經文を虛しく載せず。而るに此の經のみ孤り見す。知んぬ、僖公の末年の傳の、宜しく此の下に在るべきを。
王使毛伯衛來錫公命。衛、毛伯字。
【読み】
王毛伯衛をして來りて公に命を錫わしむ。衛は、毛伯の字。
叔孫得臣如周拜。謝賜命。
【読み】
叔孫得臣周に如きて拜す。賜命を謝す。
晉文公之季年、諸侯朝晉、衛成公不朝、使孔達侵鄭、伐緜訾及匡。孔達、衛大夫。匡、在潁川新汲縣東北。○訾、子斯反。
【読み】
晉の文公の季年に、諸侯晉に朝せしに、衛の成公のみ朝せず、孔達をして鄭を侵さしめ、緜訾[めんし]と匡とを伐てり。孔達は、衛の大夫。匡は、潁川新汲縣の東北に在り。○訾は、子斯反。
晉襄公旣祥、諸侯雖諒闇、亦因祥祭、爲位而哭。
【読み】
晉の襄公旣に祥して、諸侯諒闇と雖も、亦祥祭に因りて、位を爲して哭す。
使告于諸侯而伐衛、及南陽。今河内地。
【読み】
諸侯に告げしめて衛を伐ち、南陽に及ぶ。今の河内の地。
先且居曰、效尤禍也。尤衛不朝。故伐。今不朝王、是效衛致禍。時王在溫。故勸之。○且、子餘反。
【読み】
先且居曰く、尤に效うは禍なり。衛の朝せざるを尤む。故に伐つ。今王に朝せざれば、是れ衛に效いて禍を致すなり。時に王溫に在り。故に之を勸む。○且は、子餘反。
請君朝王。臣從師。晉侯朝王于溫。先且居・胥臣伐衛。五月、辛酉、朔、晉師圍戚。六月、戊戌、取之、獲孫昭子。昭子、衛大夫。食戚邑。
【読み】
請う君王を朝せよ。臣師に從わん、と。晉侯王に溫に朝す。先且居・胥臣衛を伐つ。五月、辛酉[かのと・とり]、朔、晉の師戚を圍む。六月、戊戌[つちのえ・いぬ]、之を取り、孫昭子を獲たり。昭子は、衛の大夫。戚邑を食む。
衛人使告于陳。陳共公曰、更伐之。我辭之。見伐求和、不競大甚。故使報伐、示己力足以距晉。○共、音恭。更、古孟反。又音庚。
【読み】
衛人陳に告げしむ。陳の共公曰く、更に之を伐て。我れ之を辭せん、と。伐たれて和を求むるは、競わざること大甚だし。故に報伐せしめて、己が力の以て晉を距ぐに足るを示す。○共は、音恭。更は、古孟反。又音庚。
衛孔達帥師伐晉。
【読み】
衛の孔達師を帥いて晉を伐つ。
君子以爲古。古者越國而謀。合古之道、而失今事霸主之禮。故國失其邑、身見執辱。
【読み】
君子以て古なりと爲す。古は國を越えて謀る。古の道に合いて、今霸主に事うるの禮を失う。故に國其の邑を失いて、身執辱せらる。
秋、晉侯疆戚田。故公孫敖會之。晉取衛田、正其疆界。
【読み】
秋、晉侯戚の田を疆[さか]う。故に公孫敖之に會す。晉衛の田を取りて、其の疆界を正す。
初、楚子將以商臣爲大子、訪諸令尹子上。子上曰、君之齒未也。齒、年也。言尙少。
【読み】
初め、楚子將に商臣を以て大子と爲さんとして、諸を令尹子上に訪[と]う。子上曰く、君の齒[よわい]未だし。齒は、年なり。言うこころは、尙少[わか]し。
而又多愛。黜乃亂也。楚國之舉、恆在少者。舉、立也。
【読み】
而るに又愛多し。黜けば乃ち亂あらん。楚國の舉は、恆に少者に在り。舉は、立つなり。
且是人也、蠭目而豺聲。忍人也。能忍行不義。○蠭、本作蜂。
【読み】
且つ是の人や、蠭目[ほうもく]にして豺聲なり。忍人なり。能く忍びて不義を行う。○蠭は、本蜂に作る。
不可立也。弗聽。
【読み】
立つ可からず、と。聽かず。
旣又欲立王子職、而黜大子商臣。職、商臣庶弟。
【読み】
旣にして又王子職を立てて、大子商臣を黜けんことを欲す。職は、商臣の庶弟。
商臣聞之而未察。告其師潘崇曰、若之何而察之。潘崇曰、享江羋而勿敬也。江羋、成王妹。嫁於江。○羋、亡氏反。
【読み】
商臣之を聞きて未だ察せず。其の師潘崇に告げて曰く、之を若何にして之を察せん、と。潘崇曰く、江羋[こうび]を享して敬すること勿かれ、と。江羋は、成王の妹。江に嫁す。○羋は、亡氏反。
從之。江羋怒曰、呼、役夫。呼、發聲也。役夫、賤者稱。○呼、好賀反。
【読み】
之に從う。江羋怒りて曰く、呼、役夫。呼は、發聲なり。役夫は、賤者の稱。○呼は、好賀反。
宜君王之欲殺女而立職也。告潘崇曰、信矣。潘崇曰、能事諸乎。問能事職不。○女、音汝。
【読み】
宜なり君王の女を殺して職を立てんと欲することや、と。潘崇に告げて曰く、信なり、と。潘崇曰く、能く諸に事えんか、と。能く職に事えんや不[いな]やと問う。○女は、音汝。
曰、不能。能行乎。曰、不能。能行大事乎。曰、能。大事、謂弑君。
【読み】
曰く、能わず、と。能く行[さ]らんか。曰く、能わず、と。能く大事を行わんか。曰く、能くせん、と。大事は、君を弑するを謂う。
冬、十月、以宮甲圍成王。大子官甲。僖二十八年、王以東宮卒從子玉、蓋取此宮甲。
【読み】
冬、十月、宮甲を以て成王を圍む。大子の官甲。僖二十八年に、王東宮の卒を以て子玉に從わすとは、蓋し此の宮甲を取るならん。
王請食熊蹯而死。熊掌難熟。冀久將有外救。○蹯、音煩。
【読み】
王熊蹯[ゆうはん]を食いて死なんと請う。熊掌は熟し難し。久しくして將に外救有らんと冀う。○蹯は、音煩。
弗聽。丁未、王縊。謚之曰靈。不瞑。曰成。乃瞑。言其忍甚、未斂而加惡謚。○瞑、亡丁反。又亡千反。
【読み】
聽かず。丁未、王縊る。之を謚して靈と曰う。瞑せず。成と曰う。乃ち瞑す。其の忍甚だしく、未だ斂せずして惡謚を加うるを言う。○瞑は、亡丁反。又亡千反。
穆王立。以其爲大子之室與潘崇、使爲大師、且掌環列之尹。環列之尹、宮衛之官。列兵而環王宮。
【読み】
穆王立つ。其の大子爲るときの室を以て潘崇に與えて、大師爲らしめ、且環列の尹を掌らしむ。環列の尹は、宮衛の官。兵を列ねて王宮を環るものなり。
穆伯如齊、始聘焉。禮也。穆伯、公孫敖。
【読み】
穆伯齊に如き、始めて聘す。禮なり。穆伯は、公孫敖。
凡君卽位、卿出竝聘、踐脩舊好、要結外援、踐、猶履行也。
【読み】
凡そ君位に卽けば、卿出でて竝び聘し、舊好を踐脩し、外援を要結し、踐は、猶履行のごとし。
好事鄰國、以衛社稷。忠信卑讓之道也。忠、德之正也。信、德之固也。卑讓、德之基也。傳因此發凡、以明諸侯諒闇、則國事皆用吉禮。
【読み】
鄰國に好事して、以て社稷を衛る。忠信卑讓の道なり。忠は、德の正なり。信は、德の固なり。卑讓は、德の基なり。傳此に因りて凡そを發して、以て諸侯は諒闇なれば、則ち國事皆吉禮を用ゆることを明かす。
殽之役、在僖三十三年。
【読み】
殽[こう]の役に、僖三十三年に在り。
晉人旣歸秦師。秦大夫及左右皆言於秦伯曰、是敗也、孟明之罪也。必殺之。秦伯曰、是孤之罪也。周芮良夫之詩曰、大風有隧、貪人敗類。詩大雅。隧、蹊徑也。周大夫芮伯刺厲王。言貪人之敗善類、若大風之行、毀壞衆物、所在成蹊徑。○芮、如銳反。
【読み】
晉人旣に秦の師を歸す。秦の大夫と左右と皆秦伯に言いて曰く、是の敗や、孟明の罪なり。必ず之を殺せ、と。秦伯曰く、是れ孤の罪なり。周の芮良夫の詩に曰く、大風隧有り、貪人類を敗る。詩は大雅。隧は、蹊徑なり。周の大夫芮伯厲王を刺る。言うこころは、貪人の善類を敗る、大風の行きて、衆物を毀壞し、在る所蹊徑を成すが若し。○芮は、如銳反。
聽言則對、誦言如醉。言昏亂之君、不好典誦之言、聞之若醉。得道聽塗說之言、則喜而答對。
【読み】
聽言には則ち對え、誦言には醉えるが如し。言うこころは、昏亂の君、典誦の言を好まず、之を聞きて醉えるが若し。道聽塗說の言を得ては、則ち喜びて答對す。
匪用其良、覆俾我悖。覆、反也。俾、使也。不用良臣之言、反使我爲悖亂。
【読み】
其の良を用ゆるに匪ず、覆[かえ]って我をして悖らしむ、と。覆は、反ってなり。俾は、使むるなり。良臣の言を用いず、反って我をして悖亂を爲さしむ。
是貪故也。孤之謂矣。孤實貪以禍夫子。夫子何罪。
【読み】
是れ貪の故なり。孤を謂うなり。孤實に貪りて以て夫子に禍せり。夫子何の罪あらん、と。
復使爲政。爲明年、秦・晉戰彭衙傳。
【読み】
復政を爲さしむ。明年、秦・晉彭衙[ほうが]に戰う爲の傳なり。
〔經〕二年、春、王二月、甲子、晉侯及秦師戰于彭衙。秦師敗績。孟明名氏不見、非命卿也。大崩曰敗績。馮翊郃陽縣西北有彭衙城。○郃、戶納反。
【読み】
〔經〕二年、春、王の二月、甲子[きのえ・ね]、晉侯秦の師と彭衙[ほうが]に戰う。秦の師敗績す。孟明名氏見えざるは、命卿に非ざればなり。大いに崩るるを敗績と曰う。馮翊郃陽[ひょうよくこうよう]縣の西北に彭衙城有り。○郃は、戶納反。
丁丑、作僖公主。主者、殷人以柏、周人以栗。三年喪終、則遷入於廟。
【読み】
丁丑[ひのと・うし]、僖公の主を作る。主は、殷人は柏を以てし、周人は栗を以てす。三年の喪終われば、則ち遷して廟に入る。
三月、乙巳、及晉處父盟。處父爲晉正卿、不能匡君以禮、而親與公盟。故貶其族。族去則非卿。故以微人常稱爲耦、以直厭不直。不地者、盟晉都。
【読み】
三月、乙巳[きのと・み]、晉の處父と盟う。處父晉の正卿と爲りて、君を匡すに禮を以てすること能わずして、親ら公と盟う。故に其の族を貶す。族去れば則ち卿に非ず。故に微人の常稱を以て耦と爲すは、直を以て不直を厭[おと]すなり。地いわざるは、晉の都に盟えばなり。
夏、六月、公孫敖會宋公・陳侯・鄭伯・晉士縠盟于垂隴。垂隴、鄭地。滎陽縣東有隴城。士縠出盟諸侯、受成於衛。故貴而書名氏。○縠、戶木反。
【読み】
夏、六月、公孫敖宋公・陳侯・鄭伯・晉の士縠[しこく]に會して垂隴[すいろう]に盟う。垂隴は、鄭の地。滎陽[けいよう]縣の東に隴城有り。士縠出でて諸侯に盟い、成[たい]らぎを衛に受く。故に貴びて名氏を書す。○縠は、戶木反。
自十有二月不雨、至于秋七月。無傳。周七月、今五月也。不雨、足爲災。不書旱、五穀猶有收。
【読み】
十有二月より雨ふらずして、秋七月に至る。傳無し。周の七月は、今の五月なり。雨ふらざるは、災いを爲すに足れり。旱と書さざるは、五穀猶收むること有ればなり。
八月、丁卯、大事于大廟。躋僖公。大事、禘也。躋、升也。僖公、閔公庶兄。繼閔而立。廟坐宜次閔下。今升在閔上。故書而譏之。時未應吉禘、而於大廟行之。其譏已明。徒以逆祀故、特大其事、異其文。
【読み】
八月、丁卯[ひのと・う]、大廟に大事あり。僖公を躋[のぼ]す。大事は、禘なり。躋[せい]は、升るなり。僖公は、閔公の庶兄。閔に繼いで立つ。廟坐宜しく閔下に次ぐべし。今升せて閔の上に在り。故に書して之を譏る。時未だ應に吉禘すべからずして、大廟に於て之を行う。其の譏るや已に明らかなり。徒に逆祀の故を以て、特に其の事を大いにして、其の文を異にす。
冬、晉人・宋人・陳人・鄭人伐秦。四人皆卿。秦穆悔過、終用孟明。故貶四國大夫以尊秦。
【読み】
冬、晉人・宋人・陳人・鄭人秦を伐つ。四人は皆卿なり。秦穆過ちを悔いて、終に孟明を用ゆ。故に四國の大夫を貶して以て秦を尊ぶ。
公子遂如齊納幣。傳曰、禮也。僖公喪、終此年十一月、則納幣在十二月也。士昏六禮、其一納采・納徵始有玄纁束帛、諸侯則謂之納幣。其禮與士禮不同。蓋公爲大子時、已行昏禮。
【読み】
公子遂齊に如きて幣を納る。傳に曰く、禮なり、と。僖公の喪、此の年十一月に終われば、則ち納幣は十二月に在るなり。士昏の六禮、其の一は納采・納徵に始めて玄纁束帛有り、諸侯は則ち之を納幣と謂う。其の禮と士禮と同じからず。蓋し公大子爲る時、已に昏禮を行うならん。
〔傳〕二年、春、秦孟明視帥師伐晉、以報殽之役。二月、晉侯禦之。先且居將中軍。趙衰佐之。代郤溱。○衰、初危反。
【読み】
〔傳〕二年、春、秦の孟明視師を帥いて晉を伐ちて、以て殽[こう]の役に報ゆ。二月、晉侯之を禦ぐ。先且居中軍に將たり。趙衰[ちょうし]之に佐たり。郤溱に代わる。○衰は、初危反。
王官無地御戎。代梁弘。
【読み】
王官無地戎に御たり。梁弘に代わる。
狐鞫居爲右。鞫居、續簡伯。○鞫、九六反。
【読み】
狐鞫居[こきくきょ]右爲り。鞫居は、續簡伯。○鞫は、九六反。
甲子、及秦師戰于彭衙。秦師敗績。晉人謂秦拜賜之師。以孟明言三年將拜君賜、故嗤之。
【読み】
甲子、秦の師と彭衙に戰う。秦の師敗績す。晉人秦を拜賜の師と謂う。孟明三年ありて將に君の賜を拜せんとすと言いしを以て、故に之を嗤う。
戰于殽也、晉梁弘御戎。萊駒爲右。戰之明日、晉襄公縛秦囚、使萊駒以戈斬之。囚呼。萊駒失戈。狼瞫取戈以斬囚、禽之以從公乘、遂以爲右。箕之役、箕役、在僖三十三年。○呼、火故反。瞫、尺甚反。字林、式衽反。乘、繩證反。
【読み】
殽に戰いしや、晉の梁弘戎に御たり。萊駒右爲り。戰の明日に、晉の襄公秦の囚を縛りて、萊駒をして戈を以て之を斬らしむ。囚呼ぶ。萊駒戈を失う。狼瞫[ろうじん]戈を取りて以て囚を斬り、之を禽にして以て公の乘に從い、遂に以て右と爲りぬ。箕の役に、箕の役は、僖三十三年に在り。○呼は、火故反。瞫は、尺甚反。字林に、式衽反。乘は、繩證反。
先軫黜之、而立續簡伯。狼瞫怒。其友曰、盍死之。瞫曰、吾未獲死所。未得可死處。
【読み】
先軫之を黜けて、續簡伯を立つ。狼瞫怒る。其の友曰く、盍ぞ之に死せざる、と。瞫曰く、吾れ未だ死所を獲ず、と。未だ死す可き處を得ず。
其友曰、吾與女爲難。欲共殺先軫。○難、乃旦反。
【読み】
其の友曰く、吾れ女と難を爲さん、と。共に先軫を殺さんと欲す。○難は、乃旦反。
瞫曰、周志有之、勇則害上、不登於明堂。周志、周書也。明堂、祖廟也。所以策功序德。故不義之士不得升。
【読み】
瞫曰く、周志に之れ有り、勇にして則ち上を害するは、明堂に登[あ]げず、と。周志は、周書なり。明堂は、祖廟なり。功を策し德を序ずる所以。故に不義の士は升ることを得ず。
死而不義、非勇也。共用之謂勇。共用、死國用。○共、音恭。
【読み】
死して不義なれば、勇に非ざるなり。用に共する、之を勇と謂う。用に共するは、國用に死するなり。○共は、音恭。
吾以勇求右。無勇而黜、亦其所也。言今死而不義、更成無勇。宜見退。
【読み】
吾れ勇を以て右を求めたり。勇無くして黜けらるは、亦其の所なり。言うこころは、今死して不義なるは、更に勇無しと成る。宜しく退けらるべし。
謂上不我知、黜而宜、乃知我矣。言今見黜而合宜、則吾不得復言上不我知。
【読み】
上を我を知らずと謂うに、黜けられて宜しきは、乃ち我を知れるなり。言うこころは、今黜けられて宜しきに合うは、則ち吾れ復上を我を知らずと言うことを得ず。
子姑待之。
【読み】
子姑く之を待て、と。
及彭衙旣陳、以其屬馳秦師、死焉。屬、屬己兵。○陳、去聲。
【読み】
彭衙旣に陳するに及びて、其の屬を以[い]て秦の師に馳せて、死す。屬は、己に屬する兵。○陳は、去聲。
晉師從之、大敗秦師。
【読み】
晉の師之に從い、大いに秦の師を敗れり。
君子謂、狼瞫於是乎君子。詩曰、君子如怒、亂庶遄沮。詩、小雅。言君子之怒、必以止亂。遄、疾也。沮、止也。
【読み】
君子謂えらく、狼瞫是に於て君子なり。詩に曰く、君子如し怒らば、亂庶わくは遄[と]く沮[や]まん、と。詩は、小雅。君子の怒は、必ず以て亂を止むるを言う。遄[せん]は、疾きなり。沮は、止むなり。
又曰、王赫斯怒、爰整其旅。詩、大雅。言文王赫然奮怒、則整師旅以討亂。
【読み】
又曰く、王赫として斯に怒り、爰に其の旅を整う、と。詩は、大雅。言うこころは、文王赫然として奮怒すれば、則ち師旅を整えて以て亂を討ず。
怒不作亂、而以從師、可謂君子矣。
【読み】
怒りて亂を作さずして、以て師に從いしは、君子と謂う可し、と。
秦伯猶用孟明。孟明增脩國政、重施於民。趙成子言於諸大夫曰、成子、趙衰。○施、去聲。
【読み】
秦伯猶孟明を用ゆ。孟明國政を增脩して、民に重施す。趙成子諸大夫に言いて曰く、成子は、趙衰。○施は、去聲。
秦師又至。將必辟之。懼而增德。不可當也。詩曰、毋念爾祖。聿脩厥德。詩、大雅。言念其祖考、則宜述脩其德以顯之。毋念、念也。
【読み】
秦の師又至らん。將に必ず之を辟けんとす。懼れて德を增す。當たる可からざるなり。詩に曰く、爾の祖を念うこと毋からんや。厥の德を聿[の]べ脩めよ、と。詩は、大雅。言うこころは、其の祖考を念わば、則ち宜しく其の德を述べ脩めて以て之を顯らかにすべし。毋念は、念うなり。
孟明念之矣。念德不怠。其可敵乎。爲明年、秦人伐晉傳。
【読み】
孟明之を念えり。德を念いて怠らず。其れ敵す可けんや、と。明年、秦人晉を伐つ爲の傳なり。
丁丑、作僖公主。書不時也。過葬十月。故曰不時。例在僖三十三年。
【読み】
丁丑、僖公の主を作る。時ならざるを書すなり。葬を過ぐること十月。故に時ならずと曰う。例は僖三十三年に在り。
晉人以公不朝來討。公如晉。夏、四月、己巳、晉人使陽處父盟公、以恥之。使大夫盟公、欲以恥辱魯也。經書三月乙巳。經・傳必有誤。
【読み】
晉人公の朝せざるを以て來り討ず。公晉に如く。夏、四月、己巳[つちのと・み]、晉人陽處父をして公に盟わしめて、以て之を恥ずかしむ。大夫をして公に盟わしめて、以て魯を恥辱せしめんと欲す。經には三月乙巳と書す。經・傳に必ず誤り有らん。
書曰及晉處父盟、以厭之也。厭、猶損也。晉以非禮盟公。故文厭之、以示譏。○厭、於涉反。
【読み】
書して晉の處父と盟うと曰うは、以て之を厭[おと]すなり。厭は、猶損[おと]すのごとし。晉非禮を以て公に盟う。故に文之を厭して、以て譏りを示す。○厭は、於涉反。
適晉不書、諱之也。不書公如晉。
【読み】
晉に適くを書さざるは、之を諱みてなり。公晉に如くを書さず。
公未至。六月、穆伯會諸侯及晉司空士縠、盟于垂隴。晉討衛故也。討元年、衛人伐晉。士縠、士蔿子。
【読み】
公未だ至らず。六月、穆伯諸侯と晉の司空士縠とに會して、垂隴に盟う。晉衛を討ずる故なり。元年、衛人晉を伐つを討ずるなり。士縠は、士蔿[しい]の子。
書士縠、堪其事也。晉司空、非卿也。以士縠能堪卿事、故書。
【読み】
士縠と書すは、其の事に堪えたるなり。晉の司空は、卿に非ざるなり。士縠能く卿事に堪えたるを以て、故に書す。
陳侯爲衛請成于晉、執孔達以說。陳始與衛謀。謂可以强得免。今晉不聽。故更執孔達以苟免也。
【読み】
陳侯衛の爲に成らぎを晉に請い、孔達を執えて以て說く。陳始め衛と謀る。强を以て免ることを得可しと謂う。今晉聽かず。故に更に孔達を執えて以て苟も免るなり。
秋、八月、丁卯、大事于大廟。躋僖公。逆祀也。僖是閔兄。不得爲父子。嘗爲臣。位應在下。令居閔上。故曰逆祀。
【読み】
秋、八月、丁卯、大廟に大事あり。僖公を躋す。逆祀なり。僖は是れ閔の兄。父子爲るを得ず。嘗て臣爲り。位應に下に在るべし。閔の上に居らしむ。故に逆祀と曰う。
於是夏父弗忌爲宗伯。宗伯、掌宗廟昭穆之禮。
【読み】
是に於て夏父弗忌宗伯爲り。宗伯は、宗廟昭穆の禮を掌る。
尊僖公、且明見曰、吾見新鬼大、故鬼小。新鬼、僖公。旣爲兄。死時年又長。故鬼、閔公。死時年少。弗忌明言其所見。
【読み】
僖公を尊び、且見しことを明らかにして曰く、吾れ新鬼の大に、故鬼の小なるを見たり。新鬼は、僖公。旣に兄爲り。死する時年又長ぜり。故鬼は、閔公。死する時年少し。弗忌明らかに其の見し所を言う。
先大後小、順也。躋聖賢、明也。又以僖公爲聖賢。
【読み】
大を先にし小を後にするは、順なり。聖賢を躋すは、明なり。又僖公を以て聖賢と爲す。
明順、禮也。
【読み】
明順は、禮なり、と。
君子以爲失禮。禮無不順。祀、國之大事也。而逆之。可謂禮乎。子雖齊聖、不先父食久矣。齊、肅也。臣繼君、猶子繼父。○先、去聲。下同。
【読み】
君子以て禮を失えりと爲す。禮は順ならざること無し。祀は、國の大事なり。而るを之を逆にす。禮と謂う可けんや。子は齊聖なりと雖も、父に先だちて食せざること久し。齊は、肅なり。臣の君に繼ぐは、猶子の父に繼ぐがごとし。○先は、去聲。下も同じ。
故禹不先鯀、湯不先契、鯀、禹父。契、湯十三世祖。
【読み】
故に禹も鯀に先だたず、湯も契[せつ]に先だたず、鯀は、禹の父。契は、湯十三世の祖。
文武不先不窋。不窋、后稷子。○窋、知律反。
【読み】
文武も不窋[ふちゅつ]に先だたず。不窋は、后稷の子。○窋は、知律反。
宋祖帝乙、鄭祖厲王、猶上祖也。帝乙、微子父。厲王、鄭桓公父。二國不以帝乙・厲王不肖、而猶尊尙之。
【読み】
宋の祖は帝乙[ていいつ]、鄭の祖は厲王なるも、猶祖を上[たっと]べり。帝乙は、微子の父。厲王は、鄭の桓公の父。二國帝乙・厲王の不肖なるを以てせずして、猶之を尊尙す。
是以魯頌曰、春秋匪解、享祀不忒、皇皇后帝、皇祖后稷。忒、差也。皇皇、美也。后帝、天也。詩、頌僖公郊祭上天、配以后稷。○解、佳買反。
【読み】
是を以て魯頌に曰く、春秋解[おこた]らず、享祀忒[たが]わず、皇皇たる后帝、皇祖后稷、と。忒は、差うなり。皇皇は、美きなり。后帝は、天なり。詩に、僖公の上天を郊祭して、配するに后稷を以てするを頌す。○解は、佳買反。
君子曰、禮。謂其后稷親而先帝也。先稱帝也。
【読み】
君子曰く、禮なり、と。其の后稷は親なれども帝を先にするを謂うなり。先ず帝を稱す。
詩曰、問我諸姑、遂及伯姊。詩、邶風也。衛女思歸而不得。故願致問於姑姊。○邶、音佩。
【読み】
詩に曰く、我が諸姑を問いて、遂に伯姊に及ぶ、と。詩は、邶風[はいふう]なり。衛の女歸を思えども得ず。故に姑姊に致問せんことを願う。○邶は、音佩。
君子曰、禮。謂其姊親而先姑也。僖、親文公父。夏父弗忌從阿時君、先其所親。故傳以此二詩、深責其意。
【読み】
君子曰く、禮なり、と。其の姊は親なれども姑を先にするを謂うなり。僖は、親しく文公の父。夏父弗忌時君に從阿して、其の所親を先にす。故に傳此の二詩を以て、深く其の意を責む。
仲尼曰、臧文仲其不仁者三、不知者三。下展禽、展禽、柳下惠也。文仲知柳下惠之賢、而使在下位。非己欲立而立人之道也。
【読み】
仲尼曰く、臧文仲其の不仁なる者三つ、不知なる者三つ。展禽を下にし、展禽は、柳下惠なり。文仲柳下惠の賢を知りて、下位に在らしむ。己立たんと欲して人を立つの道に非ず。
*頭注に「本註舊脫非之道三字。今以馮氏本補之。七經考文引足利本後人記云、立人下、異本有仁字。」とある。
廢六關、塞關陽關之屬、凡六關。所以禁絕未遊、而廢之。
【読み】
六關を廢し、塞關陽關の屬、凡そ六關。未遊を禁絕する所以にして、之を廢す。
妾織蒲。三不仁也。家人販席。言其與民爭利。
【読み】
妾蒲を織る。三つの不仁なり。家人席[むしろ]を販[ひさ]ぐ。其の民と利を爭うを言う。
作虛器、謂居蔡山節藻梲也。有其器、而無其位。故曰虛。
【読み】
虛器を作り、蔡を居き節を山にし梲[せつ]に藻するを謂うなり。其の器有りて、其の位無し。故に虛と曰う。
縱逆祀、聽夏父躋僖公。
【読み】
逆祀を縱[ゆる]し、夏父僖公を躋すを聽[ゆる]す。
祀爰居。三不知也。海鳥曰爰居。止於魯東門外。文仲以爲神、命國人祀之。
【読み】
爰居[えんきょ]を祀る。三つの不知なり。海鳥を爰居と曰う。魯の東門外に止る。文仲以て神と爲し、國人に命じて之を祀らしむ。
冬、晉先且居・宋公子成・陳轅選・鄭公子歸生伐秦、取汪、及彭衙而還。以報彭衙之役。
【読み】
冬、晉の先且居・宋の公子成・陳の轅選・鄭の公子歸生秦を伐ち、汪を取り、彭衙に及びて還る。以て彭衙の役に報ゆ。
卿不書、爲穆公故、尊秦也。謂之崇德。
【読み】
卿書さざるは、穆公の爲の故に、秦を尊ぶなり。之を德を崇ぶと謂う。
襄仲如齊納幣。禮也。
【読み】
襄仲齊に如きて幣を納る。禮なり。
凡君卽位、好舅甥、脩昏姻、娶元妃、以奉粢盛。孝也。謂諒闇旣終、嘉好之事、通于外内。外内之禮始備。此除凶之卽位也。於是遣卿申好舅甥之國、脩禮以昏姻也。元妃、嫡夫人。奉粢盛、共祭祀。○好、呼報反。
【読み】
凡そ君位に卽くときは、舅甥を好し、昏姻を脩め、元妃を娶り、以て粢盛に奉ず。孝なり。諒闇旣に終わり、嘉好の事、外内に通ずるを謂う。外内の禮始めて備わる。此れ除凶の卽位なり。是に於て卿を遣して好を舅甥の國に申ね、禮を脩めて以て昏姻するなり。元妃は、嫡夫人。粢盛に奉ずるは、祭祀に共するなり。○好は、呼報反。
孝、禮之始也。
【読み】
孝は、禮の始めなり。
〔經〕三年、春、王正月、叔孫得臣會晉人・宋人・陳人・衛人・鄭人伐沈。沈潰。傳例曰、民逃其上曰潰。沈、國名也。汝南平與縣北有沈亭。○與、音餘。一音預。
【読み】
〔經〕三年、春、王の正月、叔孫得臣晉人・宋人・陳人・衛人・鄭人に會して沈を伐つ。沈潰[つい]ゆ。傳例に曰く、民其の上を逃るるを潰と曰う。沈は、國の名なり。汝南平與縣の北に沈亭有り。○與は、音餘。一に音預。
夏、五月、王子虎卒。不書爵者、天王赴也。翟泉之盟、雖輒假王命、周王因以同盟之例爲赴。
【読み】
夏、五月、王子虎卒す。爵を書さざるは、天王赴[つ]ぐればなり。翟泉の盟、輒ち王命を假ると雖も、周王因りて同盟の例を以て赴ぐることを爲す。
秦人伐晉。晉人恥不出、以微者告。
【読み】
秦人晉を伐つ。晉人出でざるを恥じ、微者を以て告ぐ。
秋、楚人圍江。雨螽于宋。自上而隋。有似於雨。宋人以其死爲得天祐。喜而來告。故書。○雨、于付反。隋、徒火反。
【読み】
秋、楚人江を圍む。宋に螽[しゅう]雨[ふ]る。上より隋[お]つ。雨ふるに似たること有り。宋人其の死するを以て天の祐を得るとす。喜びて來り告ぐ。故に書す。○雨は、于付反。隋は、徒火反。
冬、公如晉。十有二月、己巳、公及晉侯盟。晉陽處父帥師伐楚、以救江。
【読み】
冬、公晉に如く。十有二月、己巳[つちのと・み]、公晉侯と盟う。晉の陽處父師を帥いて楚を伐ち、以て江を救う。
〔傳〕三年、春、莊叔會諸侯之師伐沈、以其服於楚也。沈潰。
【読み】
〔傳〕三年、春、莊叔諸侯の師に會して沈を伐つは、其の楚に服するを以てなり。沈潰ゆ。
凡民逃其上曰潰、在上曰逃。潰、衆散流移、若積水之潰。自壞之象也。國君輕走、羣臣不知其謀、與匹夫逃竄無異。是以在衆曰潰、在上曰逃。各以類言之。
【読み】
凡そ民其の上を逃るるを潰と曰い、上に在るを逃と曰う。潰は、衆散流移すること、積水の潰ゆるが若し。自ら壞るるの象なり。國君輕走して、羣臣其の謀を知らざるは、匹夫の逃竄[とうざん]すると異なること無し。是を以て衆に在るを潰と曰い、上に在るを逃と曰う。各々類を以て之を言うなり。
衛侯如陳、拜晉成也。二年、陳侯爲衛請成于晉。
【読み】
衛侯陳に如き、晉の成[たい]らぎを拜す。二年、陳侯衛の爲に成らぎを晉に請う。
夏、四月、乙亥、王叔文公卒。來赴。弔如同盟。禮也。王子虎與僖公同盟於翟泉。文公是同盟之子。故赴以名。傳因王子虎異於諸侯、王叔又未與文公盟、故於此顯示體例也。經書五月、又不書日、從赴也。
【読み】
夏、四月、乙亥[きのと・い]、王叔文公卒す。來り赴[つ]ぐ。弔うこと同盟の如くす。禮なり。王子虎僖公と翟泉に同盟す。文公は是れ同盟の子なり。故に赴ぐるに名を以てす。傳王子虎諸侯に異なり、王叔も又未だ文公と盟うにあらざるに因りて、故に此に於て體例を顯示す。經五月に書し、又日を書さざるは、赴ぐるに從うなり。
秦伯伐晉。濟河焚舟、示必死也。
【読み】
秦伯晉を伐つ。河を濟[わた]りて舟を焚き、必死を示すなり。
取王官、及郊。王官・郊、晉地。
【読み】
王官を取り、郊に及ぶ。王官・郊は、晉の地。
晉人不出。遂自茅津濟、封殽尸而還。茅津、在河東大陽縣西。封、埋藏之。○大、音泰。
【読み】
晉人出でず。遂に茅津より濟り、殽[こう]の尸を封じて還る。茅津は、河東大陽縣の西に在り。封は、之を埋藏するなり。○大は、音泰。
遂霸西戎。用孟明也。
【読み】
遂に西戎に霸たり。孟明を用ゆればなり。
君子是以知秦穆公之爲君也。舉人之周也、周、備也。不偏以一惡棄其善。
【読み】
君子是を以て秦の穆公の君爲ることを知る。人を舉ぐること周[そな]わり、周は、備わるなり。偏に一惡を以て其の善を棄てず。
與人之壹也。壹、無二心。
【読み】
人に與すること壹なり。壹は、二心無きなり。
孟明之臣也、其不解也。能懼思也。子桑之忠也、其知人也。能舉善也。子桑、公孫枝。舉孟明者。
【読み】
孟明の臣たるや、其れ解[おこた]らず。能く懼れ思えり。子桑の忠なるや、其れ人を知れり。能く善を舉げたり。子桑は、公孫枝。孟明を舉ぐる者なり。
詩曰、于以采蘩、于沼于沚。于以用之、公侯之事、秦穆有焉。詩、國風。言沼沚之蘩至薄、猶采以共公侯。以喩秦穆不遺小善。
【読み】
詩に曰く、于[ここ]に以て蘩[はん]を采る、沼に于[おい]てし沚[みぎわ]に于てす。于に以て之を用ゆ、公侯の事にとは、秦穆有り。詩は、國風。沼沚の蘩は至薄なるも、猶采りて以て公侯に共するを言う。以て秦穆小善を遺さざるに喩う。
夙夜匪解、以事一人、孟明有焉。詩、大雅。美仲山甫也。一人、天子也。
【読み】
夙夜解らず、以て一人に事るとは、孟明有り。詩は、大雅。仲山甫を美むるなり。一人は、天子なり。
詒厥孫謀、以燕翼子、子桑有焉。詒、遺也。燕、安也。翼、成也。詩、大雅。美武王能遺其子孫善謀、以安成子孫。言子桑有舉善之謀。
【読み】
厥の孫謀を詒[のこ]して、以て子を燕翼すとは、子桑有り。詒[い]は、遺すなり。燕は、安きなり。翼は、成すなり。詩は、大雅。武王能く其の子孫に善謀を遺して、以て子孫を安成するを美む。子桑善を舉ぐるの謀有るを言う。
秋、雨螽于宋、隊而死也。螽飛至宋、隊地而死。若雨。○隊、直類反。
【読み】
秋、宋に螽雨り、隊[お]ちて死す。螽飛びて宋に至り、地に隊ちて死す。雨の若し。○隊は、直類反。
楚師圍江。晉先僕伐楚以救江。晉救江、在雨螽下。故使圍江之經、隨在雨螽下。
【読み】
楚の師江を圍む。晉の先僕楚を伐ちて以て江を救う。晉江を救うは、螽雨るの下に在り。故に江を圍むの經をして、隨いて螽雨るの下に在らしむ。
冬、晉以江故告于周。欲假天子之威以伐楚。
【読み】
冬、晉江の故を以て周に告ぐ。天子の威を假りて以て楚を伐たんことを欲す。
王叔桓公・晉陽處父伐楚以救江。桓公、周卿士、王叔文公之子。桓公不書、示威名不親伐。
【読み】
王叔桓公・晉の陽處父楚を伐ちて以て江を救う。桓公は、周の卿士、王叔文公の子。桓公書さざるは、威名を示して親伐せざればなり。
門于方城、遇息公子朱而還。子朱、楚大夫。伐江之帥也。聞晉師起、而江兵解。故晉亦還。
【読み】
方城を門[せ]め、息公子朱に遇いて還る。子朱は、楚の大夫。江を伐つの帥なり。晉の師起こると聞きて、江の兵解く。故に晉も亦還る。
晉人懼其無禮於公也、請改盟。改二年、處父之盟。
【読み】
晉人其の公に禮無かりしを懼るるや、改めて盟わんと請う。二年、處父の盟を改むるなり。
公如晉、及晉侯盟。
【読み】
公晉に如き、晉侯と盟う。
晉侯饗公、賦菁菁者莪。菁菁者莪、詩小雅。取其旣見君子、樂且有儀。
【読み】
晉侯公を饗して、菁菁者莪[せいせいしゃが]を賦す。菁菁者莪は、詩の小雅。其の旣に君子を見れば、樂しみて且儀有るに取る。
莊叔以公降拜、謝其以公比君子也。
【読み】
莊叔公を以[い]て降り拜して、其の公を以て君子に比するを謝するなり。
曰、小國受命於大國。敢不愼儀。君貺之以大禮。何樂如之。抑小國之樂、大國之惠也。晉侯降辭。降堦辭讓公。○樂、音洛。下同。
【読み】
曰く、小國命を大國に受く。敢えて儀を愼まざらんや。君之に貺[たま]うに大禮を以てす。何の樂しみか之に如かん。抑々小國の樂しきは、大國の惠みなり、と。晉侯降り辭す。堦を降りて公に辭讓す。○樂は、音洛。下も同じ。
登成拜。倶還上、成拜禮。
【読み】
登りて拜を成す。倶に還り上りて、拜禮を成す。
公賦嘉樂。嘉樂、詩大雅。義取其顯顯令德、宜民宜人、受祿于天。○嘉、戶嫁反。嘉、如字。詩作假。傳、假、嘉也。中庸引作嘉。疏、美也。按樂、音洛。釋文、樂如字、非也。
【読み】
公嘉樂を賦す。嘉樂は、詩の大雅。義其の顯顯たる令德、民に宜しく人に宜しく、祿を天に受くというに取る。○嘉は、戶嫁反。嘉は、字の如し。詩に假に作る。傳に、假は、嘉なり、と。中庸引嘉と作す。疏は、美なり。按ずるに樂は、音洛。釋文、樂字の如しとは、非なり。
〔經〕四年、春、公至自晉。無傳。
【読み】
〔經〕四年、春、公晉より至る。傳無し。
夏、逆婦姜于齊。稱婦、有姑之辭。
【読み】
夏、婦姜を齊より逆[むか]う。婦と稱するは、姑有るの辭。
狄侵齊。無傳。
【読み】
狄齊を侵す。傳無し。
秋、楚人滅江。滅例在文十五年。
【読み】
秋、楚人江を滅ぼす。滅ぼすの例は文十五年に在り。
晉侯伐秦。衛侯使甯兪來聘。冬、十有一月、壬寅、夫人風氏薨。僖公母。風姓也。赴同、祔姑。故稱夫人。
【読み】
晉侯秦を伐つ。衛侯甯兪[ねいゆ]をして來聘せしむ。冬、十有一月、壬寅[みずのえ・とら]、夫人風氏薨ず。僖公の母。風姓なり。同に赴[つ]げ、姑に祔す。故に夫人と稱す。
〔傳〕四年、春、晉人歸孔達于衛。以爲衛之良也。故免之。二年、衛執孔達以說晉。
【読み】
〔傳〕四年、春、晉人孔達を衛に歸す。以て衛の良なりとす。故に之を免[ゆる]す。二年、衛孔達を執えて以て晉に說く。
夏、衛侯如晉拜。謝歸孔達。
【読み】
夏、衛侯晉に如きて拜す。孔達を歸すを謝す。
曹伯如晉會正。會受貢賦之政也。傳言襄公能繼文之業、而諸侯服從。
【読み】
曹伯晉に如きて正に會す。會して貢賦の政を受くるなり。傳襄公能く文の業を繼ぎて、諸侯服從するを言う。
逆婦姜于齊。卿不行、非禮也。禮、諸侯有故、則使卿逆。
【読み】
婦姜を齊より逆う。卿行かざるは、禮に非ざるなり。禮に、諸侯故有れば、則ち卿をして逆えしむ、と。
君子是以知出姜之不允於魯也。允、信也。始來不見尊貴。故終不爲國人所敬信也。文公薨而見出。故曰出姜。
【読み】
君子是を以て出姜の魯に允とせられざるを知れり。允は、信なり。始めて來りて尊貴せられず。故に終に國人の爲に敬信せられざるなり。文公薨じて出ださる。故に出姜と曰う。
曰、貴聘而賤逆之、公子遂納幣。是貴聘也。
【読み】
曰く、貴聘して賤之を逆え、公子遂納幣す。是れ貴聘するなり。
君而卑之、立而廢之、君、小君也。不以夫人禮迎。是卑廢之。
【読み】
君として之を卑しみ、立てて之を廢し、君は、小君なり。夫人の禮を以て迎えず。是れ之を卑廢するなり。
棄信而壞其主、在國必亂、在家必亡。主、内主也。○壞、音怪。
【読み】
信を棄てて其の主を壞[やぶ]れば、國に在りては必ず亂れ、家に在りては必ず亡ぶ。主は、内主なり。○壞は、音怪。
不允宜哉。詩曰、畏天之威、于時保之、敬主之謂也。詩、頌。言畏天威、於是保福祿。
【読み】
允とせられざること宜なるかな。詩に曰く、天の威を畏れて、時[ここ]に之を保つとは、主を敬するを謂うなり、と。詩は、頌。言うこころは、天威を畏れて、是に於て福祿を保つ。
秋、晉侯伐秦、圍邧・新城、以報王官之役。邧・新城、秦邑也。王官役、在前年。○邧、願晩反。一音元。
【読み】
秋、晉侯秦を伐ち、邧[げん]・新城を圍みて、以て王官の役に報ゆ。邧・新城は、秦の邑なり。王官の役は、前年に在り。○邧は、願晩反。一に音元。
楚人滅江。秦伯爲之降服、出次、不舉、過數。降服、素服也。出次、辟正寢。不舉、去盛饌。鄰國之禮有數。今秦伯過之。○爲、于僞反。下同。
【読み】
楚人江を滅ぼす。秦伯之が爲に服を降し、出でて次[やど]り、舉せず、數に過ぐ。服を降すとは、素服するなり。出でて次るとは、正寢を辟くるなり。舉せざるは、盛饌を去るなり。鄰國の禮は數有り。今秦伯之に過ぐ。○爲は、于僞反。下も同じ。
大夫諫。公曰、同盟滅。雖不能救、敢不矜乎。吾自懼也。秦・江同盟。不告。故不書。
【読み】
大夫諫む。公曰く、同盟滅ぶ。救うこと能わずと雖も、敢えて矜[あわ]れまざらんや。吾は自ら懼るるなり、と。秦・江は同盟なり。告げず。故に書さず。
君子曰、詩云、惟彼二國、其政不獲、惟此四國、爰究爰度、其秦穆之謂矣。詩、大雅。言夏商之君、政不得人心。故四方諸侯、皆懼而謀度其政事也。言秦穆亦能感江之滅、懼而思政。爰、於也。究・度、皆謀也。
【読み】
君子曰く、詩に云う、惟れ彼の二國、其の政獲ず、惟れ此の四國、爰に究[はか]り爰に度るとは、其れ秦穆を謂うなり、と。詩は、大雅。言うこころは、夏商の君、政人心を得ず。故に四方の諸侯、皆懼れて其の政事を謀度するなり。秦穆亦能く江の滅ぶるに感じて、懼れて政を思うを言う。爰は、於なり。究・度は、皆謀るなり。
衛甯武子來聘。公與之宴、爲賦湛露及彤弓。非禮之常。公特命樂人以示意。故言爲賦。湛露・彤弓、詩小雅。
【読み】
衛の甯武子來聘す。公之と宴して、爲に湛露[たんろ]と彤弓[とうきゅう]とを賦せしむ。禮の常に非ず。公特に樂人に命じて以て意を示す。故に爲に賦すと言う。湛露・彤弓は、詩の小雅。
不辭、又不答賦。使行人私焉。私問之。
【読み】
辭せず、又答賦せず。行人をして私せしむ。私に之を問う。
對曰、臣以爲肄業及之也。肄、習也。魯人失所賦。甯武子佯不知。此其愚不可及。○肄、以二反。
【読み】
對えて曰く、臣以爲えらく、業を肄[なら]いて之に及べり、と。肄は、習うなり。魯人賦する所を失う。甯武子知らずと佯[いつわ]る。此れ其の愚には及ぶ可からざるなり。○肄は、以二反。
昔諸侯朝正於王、朝而受政敎也。
【読み】
昔諸侯正に王に朝すれば、朝して政敎を受く。
王宴樂之。於是乎賦湛露、則天子當陽、諸侯用命也。湛露曰、湛湛露斯、匪陽不晞。晞、乾也。言露見日而乾、猶諸侯稟天子命而行。
【読み】
王之を宴樂す。是に於て湛露を賦するは、則ち天子陽に當たりて、諸侯命を用ゆるなり。湛露に曰く、湛湛たる露、陽に匪ざれば晞[かわ]かず、と。晞[き]は、乾くなり。露日を見て乾く、猶諸侯天子の命を稟けて行うがごときを言う。
諸侯敵王所愾、而獻其功、敵、猶當也。愾、恨怒也。○愾、苦愛反。
【読み】
諸侯王の愾[いか]る所に敵して、其の功を獻ずれば、敵は、猶當たるのごとし。愾は、恨怒なり。○愾[かい]は、苦愛反。
王於是乎賜之彤弓一、彤矢百、玈弓矢千、以覺報宴。覺、明也。謂諸侯有四夷之功、王賜之弓矢、又爲歌彤弓、以明報功宴樂。○玈、音盧。覺、音角。
【読み】
王是に於て之に彤弓一、彤矢百、玈弓[ろきゅう]矢千を賜いて、以て報宴を覺[あき]らかにす。覺は、明らかなり。諸侯四夷の功有れば、王之に弓矢を賜いて、又爲に彤弓を歌いて、以て功に報じて宴樂するを明らかにするを謂う。○玈は、音盧。覺は、音角。
今陪臣來繼舊好、方論天子之樂。故自稱陪臣。
【読み】
今陪臣來りて舊好を繼ぐに、方に天子の樂を論ず。故に自ら陪臣と稱す。
君辱貺之。其敢干大禮以自取戾。貺、賜也。干、犯也。戾、罪也。
【読み】
君辱く之を貺[たま]えり。其れ敢えて大禮を干して以て自ら戾[つみ]を取らんや、と。貺は、賜うなり。干は、犯すなり。戾は、罪なり。
冬、成風薨。爲明年、王使來含賵傳。
【読み】
冬、成風薨ず。明年、王來りて含賵[ぼう]せしむる爲の傳なり。
〔經〕五年、春、王正月、王使榮叔歸含且賵。珠玉曰含。含、口實。車馬曰賵。○含、戶暗反。
【読み】
〔經〕五年、春、王の正月、王榮叔をして含且賵[ぼう]を歸[おく]らしむ。珠玉を含と曰う。含は、口實。車馬を賵と曰う。○含は、戶暗反。
三月、辛亥、葬我小君成風。無傳。反哭成喪。故曰葬我小君。
【読み】
三月、辛亥[かのと・い]、我が小君成風を葬る。傳無し。反哭して喪を成す。故に我が小君を葬ると曰う。
王使召伯來會葬。召伯、天子卿也。召、采地。伯、爵也。來不及葬、不譏者、不失五月之内。
【読み】
王召伯をして來りて葬に會せしむ。召伯は、天子の卿なり。召は、采地。伯は、爵なり。來りて葬に及ばざれども、譏らざるは、五月の内を失わざればなり。
夏、公孫敖如晉。無傳。
【読み】
夏、公孫敖晉に如く。傳無し。
秦人入鄀。入例在十五年。○鄀、音若。
【読み】
秦人鄀[じゃく]に入る。入るの例は十五年に在り。○鄀は、音若。
秋、楚人滅六。六國、今廬江六縣。
【読み】
秋、楚人六を滅ぼす。六國は、今の廬江の六縣。
冬、十月、甲申、許男業卒。無傳。與僖公六同盟。
【読み】
冬、十月、甲申[きのえ・さる]、許男業卒す。傳無し。僖公と六たび同盟す。
〔傳〕五年、春、王使榮叔來含且賵、召昭公來會葬。禮也。成風、莊公之妾。天子以夫人禮賵之。明母以子貴。故曰禮。
【読み】
〔傳〕五年、春、王榮叔をして來りて含し且賵し、召昭公をして來りて葬に會せしむ。禮なり。成風は、莊公の妾。天子夫人の禮を以て之を賵す。母は子を以て貴きを明かす。故に禮と曰う。
初、鄀叛楚卽秦、又貳於楚。夏、秦人入鄀。
【読み】
初め、鄀楚に叛きて秦に卽き、又楚に貳あり。夏、秦人鄀に入る。
六人叛楚、卽東夷。秋、楚成大心・仲歸帥師滅六。仲歸、子家。
【読み】
六人楚に叛きて、東夷に卽く。秋、楚の成大心・仲歸師を帥いて六を滅ぼす。仲歸は、子家。
冬、楚公子爕滅蓼。蓼、今安豐蓼縣。○爕、息協反。蓼、音了。
【読み】
冬、楚の公子爕[しょう]蓼[りょう]を滅ぼす。蓼は、今の安豐蓼縣。○爕は、息協反。蓼は、音了。
臧文仲聞六與蓼滅、曰、皐陶庭堅不祀、忽諸。德之不建、民之無援、哀哉。蓼與六、皆皐陶後也。傷二國之君、不能建德、結援大國、忽然而亡。
【読み】
臧文仲六と蓼との滅ぶるを聞きて、曰く、皐陶庭堅祀られざること、忽諸たり。德を建てず、民の援け無き、哀しいかな、と。蓼と六とは、皆皐陶の後なり。二國の君、德を建て、援を大國に結ぶこと能わずして、忽然として亡ぶるを傷む。
晉陽處父聘于衛、反過甯。甯嬴從之、甯、晉邑。汲郡脩武縣也。嬴、逆旅大夫。
【読み】
晉の陽處父衛に聘し、反るとき甯を過ぐ。甯の嬴[えい]之に從い、甯は、晉の邑。汲郡脩武縣なり。嬴は、逆旅の大夫。
及溫而還。其妻問之。嬴曰、以剛。商書曰、沈漸剛克、高明柔克。沈漸、猶滯溺也。高明、猶亢爽也。言各當以剛柔勝己本性、乃能成全也。此在洪範。今謂之周書。○漸、似廉反。
【読み】
溫に及びて還る。其の妻之を問う。嬴曰く、以[はなは]だ剛なり。商書に曰く、沈漸なるは剛克し、高明なるは柔克す、と。沈漸は、猶滯溺のごとし。高明は、猶亢爽のごとし。言うこころは、各々當に剛柔を以て己が本性に勝つべく、乃ち能く全きを成す。此れ洪範に在り。今之を周書と謂う。○漸は、似廉反。
夫子壹之。其不沒乎。陽子性純剛。
【読み】
夫子之を壹[もっぱ]らにす。其れ沒[おわ]らざらんか。陽子性純剛なり。
天爲剛德、猶不干時。寒暑相順。
【読み】
天は剛德爲れども、猶時を干さず。寒暑相順う。
況在人乎。
【読み】
況んや人に在りてをや。
且華而不實、怨之所聚也。言過其行。
【読み】
且つ華にして實ならざるは、怨みの聚まる所なり。言其の行いに過ぐ。
犯而聚怨、不可以定身。剛則犯人。
【読み】
犯して怨みを聚めば、以て身を定む可からず。剛なれば則ち人を犯す。
余懼不獲其利而離其難。是以去之。爲六年、晉殺處父傳。○難、乃旦反。
【読み】
余其の利を獲ずして其の難に離[かか]らんことを懼る。是を以て之を去れり、と。六年、晉處父を殺す爲の傳なり。○難は、乃旦反。
晉趙成子・欒貞子・霍伯・臼季皆卒。成子、趙衰。新上軍帥、中軍佐也。貞子、欒枝。下軍帥也。霍伯、先且居。中軍帥也。臼季、胥臣。下軍佐也。爲六年、蒐於夷傳。
【読み】
晉の趙成子・欒貞子[らんていし]・霍伯・臼季皆卒す。成子は、趙衰。新上軍の帥、中軍の佐なり。貞子は、欒枝。下軍の帥なり。霍伯は、先且居。中軍の帥なり。臼季は、胥臣。下軍の佐なり。六年、夷に蒐する爲の傳なり。
〔經〕六年、春、葬許僖公。無傳。
【読み】
〔經〕六年、春、許の僖公を葬る。傳無し。
夏、季孫行父如陳。行父、季友孫。
【読み】
夏、季孫行父陳に如く。行父は、季友の孫。
秋、季孫行父如晉。八月、乙亥、晉侯驩卒。再同盟。
【読み】
秋、季孫行父晉に如く。八月、乙亥[きのと・い]、晉侯驩[かん]卒す。再び同盟す。
冬、十月、公子遂如晉。葬晉襄公。卿共葬事、文・襄之制也。三月而葬。速。
【読み】
冬、十月、公子遂晉に如く。晉の襄公を葬る。卿葬事に共するは、文・襄の制なり。三月にして葬る。速きなり。
晉殺其大夫陽處父。處父侵官。宜爲國討。故不言賈季殺。
【読み】
晉其の大夫陽處父を殺す。處父官を侵す。宜しく國討せらるべし。故に賈季殺すと言わず。
晉狐射姑出奔狄。射姑、狐偃子。射姑、狐偃子、賈季也。奔例在宣十年。○射、音亦。一音夜。
【読み】
晉の狐射姑[こえきこ]出でて狄に奔る。射姑は、狐偃の子、賈季なり。奔るの例は宣十年に在り。○射は、音亦。一に音夜。
閏月、不告月、猶朝于廟。諸侯每月必告朔聽政、因朝宗廟。文公以閏非常月、故闕不告朔、怠慢政事。雖朝于廟、則如勿朝。故曰猶。猶者、可止之辭。
【読み】
閏月、月を告げず、猶廟に朝す。諸侯每月必ず朔を告げ政を聽き、因りて宗廟に朝す。文公閏は常の月に非ざるを以て、故に闕きて告朔せずして、政事を怠慢す。廟に朝すと雖も、則ち朝すること勿きに如かんや。故に猶と曰う。猶とは、止む可きの辭なり。
〔傳〕六年、春、晉蒐于夷、舍二軍。僖三十一年、晉蒐淸原、作五軍。今舍二軍、復三軍之制。夷、晉地。前年四卿卒。故蒐以謀軍帥。○舍、音捨。
【読み】
〔傳〕六年、春、晉夷に蒐して、二軍を舍[す]つ。僖三十一年、晉淸原に蒐して、五軍を作る。今二軍を舍てて、三軍の制に復す。夷は、晉の地。前年四卿卒す。故に蒐して以て軍帥を謀るなり。○舍は、音捨。
使狐射姑將中軍。代先且居。
【読み】
狐射姑をして中軍に將たらしむ。先且居に代わる。
趙盾佐之。代趙衰也。盾、趙衰子。○盾、徒本反。
【読み】
趙盾[ちょうとん]之に佐たり。趙衰に代わるなり。盾は、趙衰の子。○盾は、徒本反。
陽處父至自溫、往年聘衛過溫。今始至。○過、古禾反。
【読み】
陽處父溫より至り、往年衛に聘して溫を過ぐ。今始めて至る。○過は、古禾反。
改蒐于董、易中軍。易以趙盾爲帥。射姑佐之。河東汾陰縣有董亭。
【読み】
改めて董に蒐して、中軍を易う。易えて趙盾を以て帥とす。射姑之に佐たり。河東汾陰縣に董亭有り。
陽子、成季之屬也。處父嘗爲趙衰屬大夫。
【読み】
陽子は、成季の屬なり。處父嘗て趙衰の屬大夫爲り。
故黨於趙氏。且謂趙盾能。曰、使能、國之利也。是以上之。
【読み】
故に趙氏に黨す。且趙盾を能ありと謂う。曰く、能を使うは、國の利なり、と。是を以て之を上にす。
宣子於是乎始爲國政。宣、趙盾謚。
【読み】
宣子是に於て始めて國政を爲す。宣は、趙盾の謚。
制事典、典、常也。
【読み】
事典を制し、典は、常なり。
正法罪、輕重當。○當、丁浪反。
【読み】
法罪を正し、輕重當たる。○當は、丁浪反。
辟刑獄、辟、猶理也。○辟、婢亦反。
【読み】
刑獄を辟[おさ]め、辟は、猶理むるのごとし。○辟は、婢亦反。
董逋逃、董、督也。
【読み】
逋逃を董[ただ]し、董は、督すなり。
由質要、由、用也。質要、券契也。
【読み】
質要を由[もち]い、由は、用ゆるなり。質要は、券契なり。
治舊洿、治、理。洿、穢。○洿、音烏。
【読み】
舊洿[きゅうお]を治め、治は、理む。洿は、穢れ。○洿は、音烏。
本秩禮、貴賤不失其本。
【読み】
秩禮に本づき、貴賤其の本を失わず。
續常職、脩廢官。
【読み】
常職を續ぎ、廢官を脩む。
出滯淹。拔賢能也。
【読み】
滯淹を出だす。賢能を拔くなり。
旣成、以授大傅陽子與大師賈佗、使行諸晉國、以爲常法。賈佗以公族從文公。而不在五人之數。○佗、徒何反。從、才用反。
【読み】
旣に成りて、以て大傅陽子と大師賈佗とに授けて、諸を晉國に行わしめて、以て常法と爲す。賈佗公族を以て文公に從う。而れども五人の數に在らず。○佗、徒何反。從、才用反。
臧文仲以陳・衛之睦也、欲求好於陳。夏、季文子聘于陳、且娶焉。臣非君命不越竟。故因聘而自爲娶。
【読み】
臧文仲陳・衛の睦まじきを以てや、好を陳に求めんことを欲す。夏、季文子陳に聘し、且つ娶る。臣君命に非ざれば竟を越えず。故に聘に因りて自ら爲に娶る。
秦伯任好卒。任好、秦穆公名。○任、音壬。
【読み】
秦伯任好卒す。任好は、秦の穆公の名。○任は、音壬。
以子車氏之三子奄息・仲行・鍼虎爲殉。子車、秦大夫氏也。以人從葬爲殉。○行、音航。鍼、其廉反。殉、音徇。
【読み】
子車氏の三子奄息・仲行・鍼虎[けんこ]を以て殉と爲す。子車は、秦の大夫の氏なり。人を以て葬に從うを殉と爲す。○行は、音航。鍼は、其廉反。殉は、音徇。
皆秦之良也。國人哀之、爲之賦黃鳥。黃鳥、詩秦風。義取黃鳥止于棘桑、往來得其所。傷三良不然。○爲、于僞反。
【読み】
皆秦の良なり。國人之を哀れみ、之が爲に黃鳥を賦す。黃鳥は、詩の秦風。義黃鳥の棘桑に止[やど]りて、往來其の所を得るに取る。三良の然らざるを傷むなり。○爲は、于僞反。
君子曰、秦穆之不爲盟主也宜哉。死而棄民。先王違世、猶詒之法。而況奪之善人乎。詩曰、人之云亡、邦國殄瘁、詩、大雅。言善人亡、則國瘁病。○詒、以之反。瘁、似醉反。
【読み】
君子曰く、秦穆の盟主と爲らざるや宜なるかな。死して民を棄てたり。先王は世を違[さ]れども、猶之に法を詒[のこ]せり。而るを況んや之が善人を奪わんや。詩に曰く、人の云[ここ]に亡ぶる、邦國殄瘁[てんすい]すとは、詩は、大雅。善人亡ぶれば、則ち國瘁病するを言う。○詒[い]は、以之反。瘁は、似醉反。
無善人之謂。若之何奪之。古之王者、知命之不長。是以竝建聖哲、建立聖知、以司牧民。
【読み】
善人無きを謂うなり。之を若何ぞ之を奪わんや。古の王者、命の長からざるを知る。是を以て竝に聖哲を建て、聖知を建立して、以て民を司牧せしむ。
樹之風聲、因土地風俗、爲立聲敎之法。
【読み】
之が風聲を樹て、土地風俗に因りて、爲に聲敎の法を立つ。
分之采物、旌旗衣服、各有分制。○分、扶問反。
【読み】
之が采物を分にし、旌旗衣服、各々分制有り。○分は、扶問反。
著之話言、話、善也。爲作善言遺戒。
【読み】
之が話言を著し、話は、善きなり。爲に善言遺戒を作るなり。
爲之律度、鐘律度量、所以治歷明時。
【読み】
之が律度を爲り、鐘律度量は、歷を治め時を明らかにする所以なり。
陳之藝極、藝、準也。極、中也。貢獻多少之法。傳曰、貢之無藝。又曰、貢獻無極。
【読み】
之が藝極を陳ね、藝は、準なり。極は、中なり。貢獻多少の法なり。傳に曰く、貢の藝無き、と。又曰く、貢獻極無し、と。
引之表儀、引、道也。表儀、猶威儀。○道、音導。
【読み】
之を表儀に引[みちび]き、引は、道くなり。表儀は、猶威儀のごとし。○道は、音導。
予之法制、告之訓典、訓典、先王之書。
【読み】
之に法制を予え、之に訓典を告げ、訓典は、先王の書。
敎之防利、防惡興利。
【読み】
之に防利を敎え、惡を防ぎ利を興す。
委之常秩、委、任也。常秩、官司之常職。
【読み】
之に常秩を委ね、委は、任すなり。常秩は、官司の常職。
道之以禮則、使毋失其土宜、衆隸賴之、而後卽命。卽、就也。
【読み】
之を道くに禮則を以てして、其の土宜を失うこと毋からしめ、衆隸之に賴りて、而して後に命に卽けり。卽は、就くなり。
聖王同之。今縱無法以遺後嗣、而又收其良以死。難以在上矣。
【読み】
聖王之を同じくす。今縱[たと]い法の以て後嗣に遺す無くとも、而るを又其の良を收めて以て死なしめんや。以て上に在ること難し、と。
君子是以知秦之不復東征也。不能復征討東方諸侯爲霸主。○復、扶又反。
【読み】
君子是を以て秦の復東征せざることを知る。復東方の諸侯を征討して霸主爲ること能わざるなり。○復は、扶又反。
秋、季文子將聘於晉、使求遭喪之禮以行。季文子、季孫行父也。聞晉侯疾故。
【読み】
秋、季文子將に晉に聘せんとし、喪に遭うの禮を求めしめて以て行く。季文子は、季孫行父なり。晉侯の疾を聞く故なり。
其人曰、將焉用之。其人、從者。○從、去聲。
【読み】
其の人曰く、將に焉にか之を用いんとす、と。其の人は、從者。○從は、去聲。
文子曰、備豫不虞、古之善敎也。求而無之實難。難卒得。
【読み】
文子曰く、不虞に備豫するは、古の善敎なり。求めて之れ無きは實に難し。卒に得難し。
過求何害。所謂文子三思。
【読み】
過ぎて求むるは何の害あらん、と。所謂文子の三思なり。
八月、乙亥、晉襄公卒。
【読み】
八月、乙亥、晉の襄公卒す。
靈公少。晉人以難故、欲立長君。立少君、恐有難。
【読み】
靈公少[わか]し。晉人難の故を以て、長君を立てんことを欲す。少君を立てば、難有らんことを恐る。
趙孟曰、立公子雍。趙孟、趙盾也。公子雍、文公子、襄公庶弟、杜祁之子。
【読み】
趙孟曰く、公子雍を立てん。趙孟は、趙盾なり。公子雍は、文公の子、襄公の庶弟、杜祁の子。
好善而長、先君愛之。且近於秦。秦舊好也。置善則固、事長則順、立愛則孝、結舊則安。爲難故、故欲立長君。有此四德者、難必抒矣。抒、除也。○抒、直呂反。又時呂反。
【読み】
善を好みて長じ、先君之を愛せり。且秦に近し。秦は舊好なり。善を置けば則ち固く、長に事るは則ち順、愛を立つるは則ち孝、舊を結べば則ち安し。難の故の爲に、故に長君を立てんことを欲するなり。此の四德有らば、難必ず抒[のぞ]かん、と。抒[じょ]は、除くなり。○抒は、直呂反。又時呂反。
賈季曰、不如立公子樂。樂、文公子。○樂、音岳。一音洛。
【読み】
賈季曰く、公子樂を立つるに如かず。樂は、文公の子。○樂は、音岳。一に音洛。
辰嬴嬖於二君。辰嬴、懷嬴也。二君、懷公・文公也。
【読み】
辰嬴[しんえい]二君に嬖せられたり。辰嬴は、懷嬴なり。二君は、懷公・文公なり。
立其子、民必安之。趙孟曰、辰嬴賤。班在九人。班、位也。
【読み】
其の子を立てば、民必ず之を安んぜん、と。趙孟曰く、辰嬴は賤し。班九人に在り。班は、位なり。
其子何震之有。震、威也。
【読み】
其の子何の震か之れ有らん。震は、威なり。
且爲二嬖、淫也。爲先君子、不能求大、而出在小國、辟也。母淫子辟、無威。陳小而遠、無援。將何安焉。
【読み】
且つ二嬖爲るは、淫なり。先君の子と爲して、大を求むること能わずして、出でて小國に在るは、辟なり。母淫に子辟は、威無し。陳小にして遠く、援け無し。將[はた]何ぞ安んぜん。
杜祁以君故、讓偪姞而上之、杜祁、杜伯之後。祁、姓也。偪姞、姞姓之女。生襄公。爲世子。故杜祁讓使在己上。○辟、匹亦反。偪、彼力反。姞、其吉反。
【読み】
杜祁君の故を以て、偪姞[ひょくきつ]に讓りて之を上にし、杜祁は、杜伯の後。祁は、姓なり。偪姞は、姞姓の女。襄公を生む。世子と爲る。故に杜祁讓りて己が上に在らしむ。○辟は、匹亦反。偪は、彼力反。姞は、其吉反。
以狄故、讓季隗而已次之。故班在四。以季隗是文公託狄時妻、故復讓之。然則杜祁本班在二。○隗、五罪反。
【読み】
狄の故を以て、季隗に讓りて已之に次ぐ。故に班四に在り。季隗是れ文公狄に託せし時の妻なるを以て、故に復之に讓る。然らば則ち杜祁の本班は二に在りしなり。○隗は、五罪反。
先君是以愛其子、而仕諸秦、爲亞卿焉。亞、次也。言其賢故位尊。
【読み】
先君是を以て其の子を愛して、諸を秦に仕えしめて、亞卿と爲れり。亞は、次なり。其の賢の故に位尊きを言う。
秦大而近。足以爲援。母義子愛。足以威民。立之不亦可乎。
【読み】
秦は大にして近し。以て援けと爲るに足れり。母義にして子愛あり。以て民を威すに足れり。之を立てんこと亦可ならずや、と。
使先蔑・士會如秦逆公子雍。先蔑、士伯也。士會、隨季也。
【読み】
先蔑・士會をして秦に如きて公子雍を逆えしむ。先蔑は、士伯なり。士會は、隨季なり。
賈季亦使召公子樂于陳。趙孟使殺諸郫。郫、晉地。○郫、婢支反。
【読み】
賈季も亦公子樂を陳より召[よ]ばしむ。趙孟諸を郫[ひ]に殺さしむ。郫は、晉の地。○郫は、婢支反。
賈季怨陽子之易其班也、本中軍帥、易以爲佐。
【読み】
賈季陽子が其の班を易えたるを怨み、本中軍の帥、易えられて以て佐と爲れり。
而知其無援於晉也。少族多怨。
【読み】
而して其の晉に援け無きを知る。族少なく怨み多し。
九月、賈季使續鞫居殺陽處父。鞫居、狐氏之族。
【読み】
九月、賈季續鞫居[ぞくきくきょ]をして陽處父を殺さしむ。鞫居は、狐氏の族。
書曰晉殺其大夫、侵官也。君已命帥、處父易之。故曰侵官。
【読み】
書して晉其の大夫を殺すと曰うは、官を侵せばなり。君已に帥を命じて、處父之を易う。故に官を侵すと曰う。
冬、十月、襄仲如晉、葬襄公。
【読み】
冬、十月、襄仲晉に如き、襄公を葬る。
十一月、丙寅、晉殺續簡伯。簡伯、續鞫居。十一月無丙寅。丙寅、十二月八日也。日月必有誤。
【読み】
十一月、丙寅[ひのえ・とら]、晉續簡伯を殺す。簡伯は、續鞫居。十一月に丙寅無し。丙寅は、十二月八日なり。日月に必ず誤り有らん。
賈季奔狄。宣子使臾騈送其帑。帑、妻子也。宣子以賈季中軍之佐、同官故。○騈、蒲賢反。又蒲丁反。帑、音奴。
【読み】
賈季狄に奔る。宣子臾騈[ゆへん]をして其の帑[ど]を送らしむ。帑は、妻子なり。宣子賈季は中軍の佐にして、同官なるを以ての故なり。○騈は、蒲賢反。又蒲丁反。帑は、音奴。
夷之蒐、賈季戮臾駢。臾駢之人、欲盡殺賈氏以報焉。臾駢曰、不可。吾聞、前志有之、曰、敵惠敵怨、不在後嗣、忠之道也。敵、猶對也。若及子孫、則爲非對。非對、則爲遷怒。
【読み】
夷の蒐に、賈季臾駢を戮せり。臾駢の人、盡く賈氏を殺して以て報いんと欲す。臾駢曰く、不可なり。吾れ聞く、前志に之れ有り、曰く、惠に敵し怨に敵して、後嗣に在らざるは、忠の道なり、と。敵は、猶對のごとし。若し子孫に及べば、則ち對に非ずとす。對に非ざれば、則ち怒を遷すとす。
夫子禮於賈季。我以其寵報私怨、無乃不可乎。言已蒙宣子寵位。
【読み】
夫子賈季に禮あり。我れ其の寵を以て私怨を報いば、乃ち不可なること無からんや。已に宣子が寵位を蒙るを言う。
介人之寵、非勇也。介、因也。
【読み】
人の寵に介[よ]るは、勇に非ざるなり。介は、因るなり。
損怨益仇、非知也。殺季家欲以除怨、宣子將復怨己。是益仇也。
【読み】
怨みを損せんとして仇を益すは、知に非ざるなり。季が家を殺して以て怨みを除かんと欲すれば、宣子將に復己を怨まんとす。是れ仇を益すなり。
以私害公、非忠也。釋此三者、何以事夫子。
【読み】
私を以て公を害するは、忠に非ざるなり。此の三つの者を釋[す]てば、何を以て夫子に事えん、と。
盡具其帑與其器用財賄、親師扞之、送致諸竟。扞、衛也。○扞、戶旦反。竟、音境。
【読み】
盡く其の帑と其の器用財賄とを具え、親ら師いて之を扞[まも]り、送りて諸を竟に致す。扞は、衛るなり。○扞は、戶旦反。竟は、音境。
閏月不告朔。非禮也。經稱告月、傳稱告朔。明告月必以朔。
【読み】
閏月告朔せず。禮に非ざるなり。經に告月と稱し、傳に告朔と稱す。告月は必ず朔を以てすることを明かすなり。
閏以正時、四時漸差、則致閏以正之。
【読み】
閏以て時を正し、四時漸く差えば、則ち閏を致して以て之を正す。
時以作事、順時命事。
【読み】
時以て事を作し、時に順いて事を命ず。
事以厚生。事不失時則年豐。
【読み】
事以て生を厚くす。事時を失わざれば則ち年豐かなり。
生民之道、於是乎在矣。不告閏朔、棄時政也。何以爲民。○爲、如字。治也。
【読み】
生民の道、是に於て在り。閏朔を告げざるは、時政を棄つるなり。何を以て民を爲[おさ]めん。○爲は、字の如し。治むるなり。
〔經〕七年、春、公伐邾。三月、甲戌、取須句。須句、魯之封内屬國也。僖公反其君之後、邾復滅之。書取易也。例在襄十三年。○句、其倶反。
【読み】
〔經〕七年、春、公邾[ちゅ]を伐つ。三月、甲戌[きのえ・いぬ]、須句[しゅこう]を取る。須句は、魯の封内の屬國なり。僖公其の君を反すの後、邾復之を滅ぼせり。取ると書すは易きなり。例は襄十三年に在り。○句は、其倶反。
遂城郚。無傳。因伐邾師、以城郚。郚、魯邑。卞縣南有郚城。備邾難。○郚、音吾。
【読み】
遂に郚[ご]に城く。傳無し。邾を伐つの師に因りて、以て郚に城く。郚は、魯の邑。卞縣の南に郚城有り。邾の難に備うるなり。○郚は、音吾。
夏、四月、宋公王臣卒。二年、與魯大夫盟於垂隴。
【読み】
夏、四月、宋公王臣卒す。二年、魯の大夫と垂隴に盟う。
宋人殺其大夫。宋人攻昭公、幷殺二大夫。故以非罪書。
【読み】
宋人其の大夫を殺す。宋人昭公を攻め、幷せて二大夫を殺す。故に罪に非ざるを以て書す。
戊子、晉人及秦人戰于令狐。趙盾廢嫡而外求君。故貶稱人。晉諱背先蔑而夜薄秦師、以戰告。
【読み】
戊子[つちのえ・ね]、晉人秦人と令狐に戰う。趙盾[ちょうとん]嫡を廢して外君を求む。故に貶して人と稱す。晉先蔑に背きて夜秦の師に薄[せま]るを諱みて、戰を以て告ぐ。
晉先蔑奔秦。不言出、在外奔。
【読み】
晉の先蔑秦に奔る。出づると言わざるは、外に在りて奔ればなり。
狄侵我西鄙。秋、八月、公會諸侯・晉大夫盟于扈。扈、鄭地。滎陽卷縣西北有扈亭。不分別書會人、總言諸侯・晉大夫盟者、公後會而及其盟。○扈、音戶。卷、音權。又丘權反。
【読み】
狄我が西鄙を侵す。秋、八月、公諸侯・晉の大夫に會して扈[こ]に盟う。扈は、鄭の地。滎陽卷縣の西北に扈亭有り。分別して會人を書さずして、總べて諸侯・晉の大夫盟うと言うは、公會に後れて其の盟に及べばなり。○扈は、音戶。卷は、音權。又丘權反。
冬、徐伐莒。不書將帥、徐夷、告辭略。
【読み】
冬、徐莒[きょ]を伐つ。將帥を書さざるは、徐夷にして、告辭略するなり。
公孫敖如莒涖盟。
【読み】
公孫敖莒に如き涖[のぞ]みて盟う。
〔傳〕七年、春、公伐邾、間晉難也。公因霸國有難而侵小。
【読み】
〔傳〕七年、春、公邾を伐つは、晉の難を間してなり。公霸國難有るに因りて小を侵すなり。
三月、甲戌、取須句、寘文公子焉。非禮也。邾文公子叛在魯。故公使爲守須句大夫也。絕大暤之祀、以與鄰國叛臣。故曰非禮。
【読み】
三月、甲戌、須句を取り、文公の子を寘[お]く。禮に非ざるなり。邾の文公の子叛きて魯に在り。故に公須句を守るの大夫爲らしむるなり。大暤の祀を絕ちて、以て鄰國の叛臣に與う。故に禮に非ずと曰う。
夏、四月、宋成公卒。於是公子成爲右師、莊公子。
【読み】
夏、四月、宋の成公卒す。是に於て公子成右師爲り、莊公の子。
公孫友爲左師、目夷子。
【読み】
公孫友左師爲り、目夷の子。
樂豫爲司馬、戴公玄孫。
【読み】
樂豫司馬爲り、戴公の玄孫。
鱗矔爲司徒、桓公孫。○矔、古亂反。
【読み】
鱗矔[りんかん]司徒爲り、桓公の孫。○矔は、古亂反。
公子蕩爲司城、桓公子也。以武公名、廢司空爲司城。
【読み】
公子蕩司城爲り、桓公の子なり。武公の名を以て、司空を廢して司城と爲す。
華御事爲司寇。華元父也。傳言六卿皆公族、昭公不親信之、所以致亂。○御、魚呂反。
【読み】
華御事司寇爲り。華元の父なり。傳六卿皆公族にして、昭公之を親信せず、亂を致す所以なるを言う。○御は、魚呂反。
昭公將去羣公子。樂豫曰、不可。公族、公室之枝葉也。若去之、則本根無所庇廕矣。葛藟猶能庇其本根。葛之能藟蔓繁滋者、以本枝廕庥之多。○去、起呂反。
【読み】
昭公將に羣公子を去らんとす。樂豫曰く、不可なり。公族は、公室の枝葉なり。若し之を去らば、則ち本根庇廕する所無からん。葛藟も猶能く其の本根を庇う。葛の能く藟蔓繁滋するは、本枝廕庥の多きを以てなり。○去は、起呂反。
故君子以爲比。謂詩人取以喩九族兄弟。
【読み】
故に君子以て比と爲す。詩人取りて以て九族兄弟に喩ゆるを謂う。
況國君乎。此諺所謂庇焉、而縱尋斧焉者也。縱、放也。
【読み】
況んや國君をや。此れ諺に所謂庇われて、縱[ほしいまま]に斧を尋[もち]ゆるという者なり。縱は、放なり。
必不可。君其圖之。親之以德、皆股肱也。誰敢攜貳。若之何去之。不聽。
【読み】
必ず不可ならん。君其れ之を圖れ。之を親しむに德を以てせば、皆股肱なり。誰か敢えて攜貳せん。之を若何ぞ之を去さらん、と。聽かず。
穆・襄之族、率國人以攻公、穆公・襄公之子孫、昭公所欲去者。
【読み】
穆・襄の族、國人を率いて以て公を攻め、穆公・襄公の子孫、昭公の去らんと欲する所の者。
殺公孫固・公孫鄭于公宮。二子在公宮。故爲亂兵所殺。
【読み】
公孫固・公孫鄭を公宮に殺す。二子公宮に在り。故に亂兵の爲に殺さる。
六卿和公室。樂豫舍司馬、以讓公子卬。卬、昭公弟。○舍、音捨。下同。卬、五郎反。
【読み】
六卿公室を和す。樂豫司馬を舍てて、以て公子卬[こう]に讓る。卬は、昭公の弟。○舍は、音捨。下も同じ。卬は、五郎反。
昭公卽位而葬。
【読み】
昭公位に卽きて葬る。
書曰宋人殺其大夫、不稱名、衆也。且言非其罪也。不稱殺者及死者名、殺者衆。故名不可知。死者無罪、則例不稱名。
【読み】
書して宋人其の大夫を殺すと曰いて、名を稱せざるは、衆[おお]ければなり。且其の罪に非ざるを言うなり。殺す者と死する者との名を稱せざるは、殺す者衆し。故に名知る可からざればなり。死する者罪無くば、則ち例名を稱せず。
秦康公送公子雍于晉、曰、文公之入也、無衛。故有呂・郤之難。僖二十四年、文公入。
【読み】
秦の康公公子雍を晉に送りて、曰く、文公の入りしや、衛無し。故に呂・郤の難有り、と。僖二十四年に、文公入る。
乃多與之徒衛。
【読み】
乃ち多く之に徒衛を與う。
穆嬴日抱大子以啼于朝、曰、先君何罪。其嗣亦何罪。舍適嗣不立、而外求君。將焉寘此。穆嬴、襄公夫人、靈公母也。○適、丁歷反。
【読み】
穆嬴[ぼくえい]日々に大子を抱きて以て朝に啼きて、曰く、先君何の罪ある。其の嗣も亦何の罪ある。適嗣を舍てて立てずして、外君を求む。將に焉に此を寘かんとするや、と。穆嬴は、襄公の夫人、靈公の母なり。○適は、丁歷反。
出朝、則抱以適趙氏、頓首於宣子曰、先君奉此子也、而屬諸子、曰、此子也才、吾受子之賜。不才、吾唯子之怨。欲使宣子敎訓之。○屬、音燭。
【読み】
朝を出づれば、則ち抱きて以て趙氏に適き、宣子に頓首して曰く、先君此の子を奉じて、諸を子に屬して、曰く、此の子や才あらば、吾れ子の賜を受けん。不才ならば、吾れ唯子を怨みん、と。宣子をして之を敎訓せしめんと欲す。○屬は、音燭。
今君雖終、言猶在耳。在宣子之耳。
【読み】
今君終わると雖も、言猶耳に在らん。宣子の耳に在り。
而棄之。若何。
【読み】
而るに之を棄つ。若何、と。
宣子與諸大夫皆患穆嬴、且畏偪。畏國人以大義來偪己。
【読み】
宣子諸大夫と皆穆嬴を患え、且偪られんことを畏る。國人の大義を以て來りて己に偪らんことを畏る。
乃背先蔑而立靈公、以禦秦師。
【読み】
乃ち先蔑に背きて靈公を立て、以て秦の師を禦ぐ。
箕鄭居守。趙盾將中軍。先克佐之。克、先且居子。代狐射姑。
【読み】
箕鄭居守す。趙盾中軍に將たり。先克之に佐たり。克は、先且居の子。狐射姑に代わる。
荀林父佐上軍。箕鄭將上軍居守。故佐獨行。
【読み】
荀林父上軍に佐たり。箕鄭上軍に將として居守す。故に佐獨り行く。
先蔑將下軍。先都佐之。步招御戎。戎津爲右。及堇陰。先蔑・士會逆公子雍、前還晉。晉人始以逆雍出軍、卒然變計立靈公。故車右・戎御猶在職。堇陰、晉地。○招、上遙反。堇、音謹。一音靳。
【読み】
先蔑下軍に將たり。先都之に佐たり。步招戎に御たり。戎津右爲り。堇陰[きんいん]に及ぶ。先蔑・士會公子雍を逆えて、前に晉に還る。晉人始め雍を逆うるを以て軍を出だし、卒然として計を變じて靈公を立つ。故に車右・戎御猶職に在り。堇陰は、晉の地。○招は、上遙反。堇は、音謹。一に音靳[きん]。
宣子曰、我若受秦、秦則賓也。不受、寇也。旣不受矣。而復緩師、秦將生心。先人有奪人之心、奪敵之戰心也。○先、悉薦反。
【読み】
宣子曰く、我れ若し秦を受けば、秦は則ち賓なり。受けざれば、寇なり。旣に受けず。而るを復師を緩くせば、秦將に心を生ぜんとす。人に先だてば人の心を奪うこと有るは、敵の戰心を奪うなり。○先は、悉薦反。
軍之善謀也。逐寇如追逃、軍之善政也。訓卒利兵、秣馬蓐食、潛師夜起。蓐食、早食於寢蓐。○蓐、音辱。
【読み】
軍の善謀なり。寇を逐うこと逃ぐるを追うが如くするは、軍の善政なり。卒を訓え兵を利[と]くし、馬に秣[まぐさか]い蓐[じょく]に食すといいて、師を潛めて夜起つ。蓐食は、寢蓐に早食するなり。○蓐は、音辱。
戊子、敗秦師于令狐、至于刳首。己丑、先蔑奔秦。士會從之。從刳首去也。令狐、在河東。當與刳首相接。○刳、苦胡反。
【読み】
戊子、秦の師を令狐に敗り、刳首[こしゅ]に至る。己丑[つちのと・うし]、先蔑秦に奔る。士會之に從う。刳首より去る。令狐は、河東に在り。當に刳首と相接わるべし。○刳は、苦胡反。
先蔑之使也、荀林父止之曰、夫人・大子猶在、而外求君。此必不行。子以疾辭、若何。不然將及。禍將及己。
【読み】
先蔑の使いするや、荀林父之を止めて曰く、夫人・大子猶在りて、而るに外君を求む。此れ必ず行われじ。子疾を以て辭せば、若何。然らずんば將に及ばんとす。禍將に己に及ばんとす。
攝卿以往、可也。何必子。同官爲寮。吾嘗同寮。敢不盡心乎。弗聽。爲賦板之三章。板、詩大雅。其三章、義取芻蕘之言、猶不可忽。況同寮乎。僖二十八年、林父將中行。先蔑將左行。
【読み】
卿を攝して以て往かしめて、可なり。何ぞ必ずしも子ならん。同官を寮と爲す。吾れ嘗て同寮なり。敢えて心を盡くさざらんや、と。聽かず。爲に板の三章を賦す。板は、詩の大雅。其の三章は、義芻蕘[すうじょう]の言も、猶忽にす可からず。況んや同寮をやというに取る。僖二十八年、林父中行に將たり。先蔑左行に將たり。
又弗聽。及亡、荀伯盡送其帑及其器用財賄於秦、曰、爲同寮故也。荀伯、林父。
【読み】
又聽かず。亡[に]ぐるに及びて、荀伯盡く其の帑と其の器用財賄とを秦に送りて、曰く、同寮の爲の故なり、と。荀伯は、林父。
士會在秦三年、不見士伯。士伯、先蔑。
【読み】
士會秦に在ること三年、士伯を見ず。士伯は、先蔑。
其人曰、能亡人於國、言能與人倶亡於晉國。
【読み】
其の人曰く、能く國を亡ぐる人と、言うこころは、能く人と倶に晉國を亡げたり。
不能見於此。焉用之。何用如此。
【読み】
此に見ること能わず。焉ぞ之を用いん、と。何ぞ此の如くなることを用いん。
士季曰、吾與之同罪。倶有迎公子雍之罪。
【読み】
士季曰く、吾れ之と罪を同じくするのみ。倶に公子雍を迎うるの罪有り。
非義之也。將何見焉。言己非慕先蔑之義而從之。
【読み】
之を義とするに非ざるなり。將[はた]何ぞ見えん、と。言うこころは、己先蔑の義を慕いて之に從うに非ず。
及歸、遂不見。責先蔑爲正卿而不匡諫、且倶出奔、惡有黨也。士會歸、在十三年。
【読み】
歸るに及ぶまで、遂に見ず。先蔑が正卿と爲して匡諫せざるを責め、且倶に出奔すれば、黨有らんことを惡むなり。士會が歸は、十三年に在り。
狄侵我西鄙。公使告于晉。趙宣子使因賈季問酆舒、且讓之。酆舒、狄相。讓其伐魯。
【読み】
狄我が西鄙を侵す。公晉に告げしむ。趙宣子賈季に因りて酆舒[ほうじょ]を問い、且つ之を讓[せ]めしむ。酆舒は、狄の相。其の魯を伐つを讓む。
酆舒問於賈季曰、趙衰・趙盾孰賢。對曰、趙衰、冬日之日也。趙盾、夏日之日也。冬日可愛、夏日可畏。
【読み】
酆舒賈季に問いて曰く、趙衰・趙盾孰れか賢なる、と。對えて曰く、趙衰は、冬日の日なり。趙盾は、夏日の日なり、と。冬日は愛す可く、夏日は畏る可し。
秋、八月、齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・許男・曹伯會晉趙盾、盟于扈、晉侯立故也。公後至。故不書所會。
【読み】
秋、八月、齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・許男・曹伯晉の趙盾に會して、扈に盟うは、晉侯立つ故なり。公後れて至る。故に會する所を書さず。
凡會諸侯、不書所會、後也。不書所會、謂不具列公侯及卿大夫。
【読み】
凡そ諸侯に會する、會する所を書さざるは、後れたるなり。會する所を書さざるは、公侯と卿大夫とを具列せざるを謂うなり。
後至、不書其國、辟不敏也。此傳還自釋凡例之意。
【読み】
後れて至れば、其の國を書さざるは、不敏を辟くるなり。此の傳還って自ら凡例の意を釋く。
穆伯娶于莒。曰戴己。生文伯。其娣聲己、生惠叔。穆伯、公孫敖也。文伯、穀也。惠叔、難也。○己、音紀。難、乃多反。
【読み】
穆伯莒に娶る。戴己[たいき]と曰う。文伯を生む。其の娣聲己、惠叔を生む。穆伯は、公孫敖なり。文伯は、穀なり。惠叔は、難なり。○己は、音紀。難は、乃多反。
戴已卒。又聘于莒。莒人以聲已辭。則爲襄仲聘焉。襄仲、公孫敖從父昆弟。
【読み】
戴已卒す。又莒に聘す。莒人聲已を以て辭す。則ち襄仲の爲に聘す。襄仲は、公孫敖の從父昆弟。
冬、徐伐莒。莒人來請盟。見伐。故欲結援。
【読み】
冬、徐莒を伐つ。莒人來りて盟を請う。伐たる。故に援を結ばんと欲す。
穆伯如莒涖盟、且爲仲逆。及鄢陵、登城見之。美。鄢陵、莒邑。○鄢、於晩反。
【読み】
穆伯莒に如きて涖みて盟い、且仲の爲に逆[むか]う。鄢陵[えんりょう]に及び、城に登りて之を見る。美なり。鄢陵は、莒の邑。○鄢は、於晩反。
自爲娶之。仲請攻之。公將許之。叔仲惠伯諫、惠伯、叔牙孫。
【読み】
自ら爲に之を娶る。仲之を攻めんと請う。公將に之を許さんとす。叔仲惠伯諫めて、惠伯は、叔牙の孫。
曰、臣聞之、兵作於内爲亂、於外爲寇。寇猶及人。亂自及也。今臣作亂、而君不禁、以啓寇讎。若之何。公止之。
【読み】
曰く、臣之を聞く、兵内に作るを亂と爲し、外に於るを寇と爲す、と。寇は猶人に及ぶ。亂ら自ら及ぶなり。今臣亂を作して、君禁ぜざるは、以て寇讎を啓くなり。之を若何、と。公之を止む。
惠伯成之。平二子。
【読み】
惠伯之を成[たい]らぐ。二子を平らぐ。
使仲舍之、舍、不娶。○舍、音捨。
【読み】
仲をして之を舍て、舍は、娶らざるなり。○舍は、音捨。
公孫敖反之、還莒女。
【読み】
公孫敖をして之を反し、莒の女を還す。
復爲兄弟如初。從之。爲明年、公孫敖奔莒傳。○復、音服。又扶又反。
【読み】
復兄弟爲ること初めの如くならしむ。之に從う。明年、公孫敖莒に奔る爲の傳なり。○復は、音服。又扶又反。
晉郤缺言於趙宣子曰、日衛不睦。故取其地。日、往日。取衛地、在元年。
【読み】
晉の郤缺[げきけつ]趙宣子に言いて曰く、日[さき]に衛睦まじからず。故に其の地を取れり。日は、往日。衛の地を取るは、元年に在り。
今已睦矣。可以歸之。叛而不討、何以示威。服而不柔、何以示懷。柔、安也。
【読み】
今已に睦まじ。以て之を歸す可し。叛きて討ぜずんば、何を以て威を示さん。服して柔[やす]んぜずんば、何を以て懷を示さん。柔は、安きなり。
非威非懷、何以示德。無德、何以主盟。子爲正卿、以主諸侯。而不務德、將若之何。
【読み】
威に非ず懷に非ずんば、何を以て德を示さん。德無くば、何を以て盟を主らん。子正卿と爲して、以て諸侯を主れり。而るを德を務めずんば、將[はた]之を若何せん。
夏書曰、逸書。
【読み】
夏書に曰く、逸書。
戒之用休、有休、則戒之以勿休。
【読み】
之を戒むるに休を用てし、休有れば、則ち之を戒むるに休すること勿きを以てす。
董之用威、董、督也。有罪、則督之以威刑。
【読み】
之を董[ただ]すに威を用てし、董は、督すなり。罪有れば、則ち之を督すに威刑を以てす。
勸之以九歌、勿使壞。九功之德、皆可歌也、謂之九歌、六府三事、謂之九功、水・火・金・木・土・穀、謂之六府、正德・利用・厚生、謂之三事、義而行之、謂之德禮。德、正德也。禮以制財用之節、又以厚生民之命。
【読み】
之を勸むるに九歌を以てして、壞[やぶ]れしむること勿かれ、と。九功の德、皆歌う可き、之を九歌と謂い、六府三事、之を九功と謂い、水・火・金・木・土・穀、之を六府と謂い、正德・利用・厚生、之を三事と謂い、義にして之を行う、之を德禮と謂う。德は、正德なり。禮以て財用の節を制し、又以て生民の命を厚くす。
無禮不樂、所由叛也。
【読み】
禮無ければ樂しまず、由りて叛く所なり。
若吾子之德、莫可歌也。其誰來之。來、猶歸也。○樂、音洛。
【読み】
吾子の德の若きは、歌う可き莫し。其れ誰か之に來らん。來は、猶歸すのごとし。○樂は、音洛。
盍使睦者歌吾子乎。宣子說之。爲明年、晉歸鄭衞田張本。一說、歸鄭・衛二國田也。說見下。
【読み】
盍ぞ睦まじき者をして吾子を歌わしめざるか、と。宣子之を說ぶ。明年、晉鄭の衞田を歸す爲の張本なり。一說に、鄭・衛二國の田を歸すなり。說下に見ゆ。
〔經〕八年、春、王正月。夏、四月。秋、八月、戊申、天王崩。冬、十月、壬午、公子遂會晉趙盾盟于衡雍。壬午、月五日。○雍、於用反。
【読み】
〔經〕八年、春、王の正月。夏、四月。秋、八月、戊申[つちのえ・さる]、天王崩ず。冬、十月、壬午[みずのえ・うま]、公子遂晉の趙盾[ちょうとん]に會して衡雍に盟う。壬午は、月の五日。○雍は、於用反。
乙酉、公子遂會雒戎盟于暴。乙酉、月八日也。暴、鄭地。公子遂不受命而盟。宜去族。善其解國患。故稱公子以貴之。
【読み】
乙酉[きのと・とり]、公子遂雒戎[らくじゅう]に會して暴に盟う。乙酉は、月の八日なり。暴は、鄭の地。公子遂命を受けずして盟う。宜しく族を去るべし。其の國の患えを解くを善す。故に公子と稱して以て之を貴ぶ。
公孫敖如京師。不至而復、丙戌、奔莒。不言出、受命而出、自外行。
【読み】
公孫敖京師に如く。至らずして復り、丙戌[ひのえ・いぬ]、莒[きょ]に奔る。出づると言わざるは、命を受けて出でて、外より行けばなり。
螽。無傳。爲災。故書。
【読み】
螽[しゅう]あり。傳無し。災いを爲す。故に書す。
宋人殺其大夫司馬。宋司城來奔。司馬死不舍節。司城奉身而退。故皆書官而不名。貴之。
【読み】
宋人其の大夫の司馬を殺す。宋の司城來奔す。司馬死して節を舍てず。司城身を奉じて退く。故に皆官を書して名いわず。之を貴ぶなり。
〔傳〕八年、春、晉侯使解揚歸匡・戚之田于衛、匡、本衛邑。中屬鄭。孔達伐不能克。今晉令鄭還衛、及取戚田、皆見元年。○解、音蟹。中、去聲。
【読み】
〔傳〕八年、春、晉侯解揚をして匡・戚の田を衛に歸さしめ、匡は、本衛の邑。中ごろ鄭に屬す。孔達伐ちて克つこと能わず。今晉鄭をして衛に還さしめ、及び戚の田を取ること、皆元年に見ゆ。○解は、音蟹。中は、去聲。
且復致公壻池之封、自申至于虎牢之竟。公壻池、晉君女壻。又取衛地以封之、今幷還衛也。申、鄭地。傳言趙盾所以能相幼主而盟諸侯。○復、扶又反。
【読み】
且つ復公の壻池の封の、申より虎牢の竟に至るまでを致[かえ]す。公の壻池は、晉君の女壻なり。又衛の地を取りて以て之を封ぜしを、今幷せて衛に還すなり。申は、鄭の地。傳趙盾[ちょうとん]能く幼主を相けて諸侯に盟う所以を言う。○復は、扶又反。
夏、秦人伐晉、取武城、以報令狐之役。令狐役、在七年。
【読み】
夏、秦人晉を伐ちて、武城を取り、以て令狐の役に報ゆ。令狐の役は、七年に在り。
秋、襄王崩。爲公孫敖如周弔傳。
【読み】
秋、襄王崩ず。公孫敖周に如きて弔する爲の傳なり。
晉人以扈之盟來討。前年盟扈、公後至。
【読み】
晉人扈の盟を以て來り討ず。前年扈[こ]に盟うとき、公後れて至る。
冬、襄仲會晉趙孟盟于衡雍、報扈之盟也。遂會伊雒之戎。伊雒之戎將伐魯。公子遂不及復君。故專命與之盟。
【読み】
冬、襄仲晉の趙孟に會して衡雍に盟うは、扈[こ]の盟に報ゆるなり。遂に伊雒の戎に會す。伊雒の戎將に魯を伐たんとす。公子遂君に復するに及ばず。故に命を專らにして之と盟うなり。
書曰公子遂、珍之也。珍、貴也。大夫出竟、有可以安社稷、利國家者、專之可。
【読み】
書して公子遂と曰うは、之を珍とするなり。珍は、貴きなり。大夫竟を出づるとき、以て社稷を安んじ、國家を利す可き者有れば、之を專らにして可なり。
穆伯如周弔喪。不至。以幣奔莒、從己氏焉。己氏、莒女。
【読み】
穆伯周に如きて喪を弔せんとす。至らず。幣を以て莒に奔り、己氏に從えり。己氏は、莒の女。
宋襄夫人、襄王之姊也。昭公不禮焉。昭公適祖母。
【読み】
宋の襄夫人は、襄王の姊なり。昭公禮せず。昭公の適祖母。
夫人因戴氏之族、華・樂・皇、皆戴族。
【読み】
夫人戴氏の族に因りて、華・樂・皇は、皆戴の族。
以殺襄公之孫孔叔・公孫鍾離及大司馬公子卬。皆昭公之黨也。司馬握節以死。故書以官。節、國之符信也。握之以死、示不廢命。
【読み】
以て襄公の孫孔叔・公孫鍾離と大司馬公子卬[こう]とを殺す。皆昭公の黨なり。司馬節を握りて以て死す。故に書すに官を以てす。節は、國の符信なり。之を握りて以て死するは、命を廢せざるを示すなり。
司城蕩意諸來奔。效節於府人而出。效、猶致也。意諸、公子蕩之孫。
【読み】
司城蕩意諸來奔す。節を府人に效[いた]して出づ。效は、猶致すのごとし。意諸は、公子蕩の孫。
公以其官逆之、皆復之。亦書以官。皆貴之也。卿違從大夫。公賢其效節。故以本官逆之、請宋而復之。司城官屬悉來奔。故言皆復。
【読み】
公其の官を以て之を逆え、皆之を復す。亦書すに官を以てす。皆之を貴ぶなり。卿違[さ]るときは大夫に從う。公其の節を效すを賢とす。故に本官を以て之を逆え、宋に請いて之を復す。司城の官屬悉く來奔す。故に皆復すと言う。
夷之蒐、晉侯將登箕鄭父・先都、登之於上軍也。夷蒐在六年。
【読み】
夷の蒐に、晉侯將に箕鄭父・先都を登せて、之を上軍に登すなり。夷蒐は六年に在り。
而使士縠・梁益耳、將中軍。士縠、本司空。○縠、戶木反。
【読み】
士縠・梁益耳をして、中軍に將たらしめんとす。士縠は、本司空。○縠は、戶木反。
先克曰、狐・趙之勳、不可廢也。從之。狐偃・趙衰、有從亡之勳。○從亡、去聲。
【読み】
先克曰く、狐・趙の勳、廢す可からず、と。之に從う。狐偃・趙衰、亡に從うの勳有り。○從亡は、去聲。
先克奪蒯得田于堇陰。七年、晉禦秦師於堇陰、以軍事奪其田也。先克、中軍佐。○蒯、苦聵反。
【読み】
先克蒯得の田を堇陰[きんいん]に奪う。七年、晉秦の師を堇陰に禦ぐとき、軍事を以て其の田を奪うなり。先克は、中軍の佐。○蒯は、苦聵反。
故箕鄭父・先都・士縠・梁益耳・蒯得作亂。爲明年、殺先克張本。○爲、于僞反。
【読み】
故に箕鄭父・先都・士縠・梁益耳・蒯得亂を作す。明年、先克を殺す爲の張本なり。○爲は、于僞反。
〔經〕九年、春、毛伯來求金。求金以共葬事。雖踰年而未葬。故不稱王使。
【読み】
〔經〕九年、春、毛伯來りて金を求む。金を求めて以て葬事に共せんとす。年を踰ゆと雖も未だ葬らず。故に王使むと稱せず。
夫人姜氏如齊。無傳。歸寧。
【読み】
夫人姜氏齊に如く。傳無し。歸寧なり。
二月、叔孫得臣如京師。辛丑、葬襄王。卿共葬事。禮也。
【読み】
二月、叔孫得臣京師に如く。辛丑[かのと・うし]、襄王を葬る。卿葬事に共す。禮なり。
晉人殺其大夫先都。下軍佐也。以作亂討。故書名。
【読み】
晉人其の大夫先都を殺す。下軍の佐なり。亂を作すを以て討ず。故に名を書す。
三月、夫人姜氏至自齊。無傳。告于廟。
【読み】
三月、夫人姜氏齊より至る。傳無し。廟に告ぐ。
晉人殺其大夫士縠及箕鄭父。與先都同罪也。
【読み】
晉人其の大夫士縠と箕鄭父とを殺す。先都と同罪なり。
楚人伐鄭。楚子師於狼淵不親伐。
【読み】
楚人鄭を伐つ。楚子狼淵に師して親ら伐たず。
公子遂會晉人・宋人・衛人・許人救鄭。夏、狄侵齊。無傳。
【読み】
公子遂晉人・宋人・衛人・許人に會して鄭を救う。夏、狄齊を侵す。傳無し。
秋、八月、曹伯襄卒。無傳。七年、同盟于扈。
【読み】
秋、八月、曹伯襄卒す。傳無し。七年、扈[こ]に同盟す。
九月、癸酉、地震。無傳。地道安靜。以動爲異。故書。
【読み】
九月、癸酉[みずのと・とり]、地震す。傳無し。地道は安靜。動を以て異とす。故に書す。
冬、楚子使椒來聘。稱君以使大夫、其禮辭與中國同。椒不書氏、史略文。
【読み】
冬、楚子椒をして來聘せしむ。君を稱して以て大夫を使いせしめむるは、其の禮辭中國と同じきなり。椒氏を書さざるは、史の略文なり。
秦人來歸僖公・成風之禭。衣服曰禭。秦辟陋。故不稱使。不稱夫人、從來者辭。
【読み】
秦人來りて僖公・成風の禭[すい]を歸[おく]る。衣服を禭と曰う。秦は辟陋。故に使むと稱せず。夫人と稱せざるは、來者の辭に從うなり。
葬曹共公。無傳。
【読み】
曹の共公を葬る。傳無し。
〔傳〕九年、春、王正月、己酉、使賊殺先克。箕鄭等所使也。亂殺先克。不赴故不書。
【読み】
〔傳〕九年、春、王の正月、己酉[つちのと・とり]、賊をして先克を殺さしむ。箕鄭等のせしむる所なり。先克を亂殺す。赴[つ]げざる故に書さず。
乙丑、晉人殺先都・梁益耳。乙丑、正月十九日。經書二月、從告。
【読み】
乙丑[きのと・うし]、晉人先都・梁益耳を殺す。乙丑は、正月十九日。經二月に書すは、告ぐるに從うなり。
毛伯衛來求金、非禮也。天子不私求財。故曰非禮。
【読み】
毛伯衛來りて金を求むるは、禮に非ざるなり。天子は私に財を求めず。故に禮に非ずと曰う。
不書王命、未葬也。
【読み】
王命を書さざるは、未だ葬らざればなり。
二月、莊叔如周、葬襄王。
【読み】
二月、莊叔周に如き、襄王を葬る。
三月、甲戌、晉人殺箕鄭父・士縠・蒯得。梁益耳・蒯得不書、皆非卿。
【読み】
三月、甲戌[きのえ・いぬ]、晉人箕鄭父・士縠・蒯得を殺す。梁益耳・蒯得書さざるは、皆卿に非ざればなり。
范山言於楚子曰、晉君少、不在諸侯。北方可圖也。范山、楚大夫。
【読み】
范山楚子に言いて曰く、晉の君少くして、諸侯に在らず。北方圖る可し、と。范山は、楚の大夫。
楚子師于狼淵以伐鄭。陳師狼淵、爲伐鄭援也。潁川潁陰縣西有狼陂。
【読み】
楚子狼淵に師して以て鄭を伐つ。師を狼淵に陳して、鄭を伐つの援とするなり。潁川潁陰縣の西に狼陂有り。
囚公子堅・公子尨及樂耳。三子、鄭大夫。○尨、莫江反。
【読み】
公子堅・公子尨[ぼう]と樂耳とを囚う。三子は、鄭の大夫。○尨は、莫江反。
鄭及楚平。
【読み】
鄭楚と平らぐ。
公子遂會晉趙盾・宋華耦・衛孔達・許大夫救鄭、不及楚師。卿不書、緩也。以懲不恪。華耦、華父督曾孫。公子遂獨不在貶者、諸魯事、自非指爲其國褒貶、則皆從国史、不同之於他國。此春秋大意。他放此。○恪、苦各反。
【読み】
公子遂晉の趙盾・宋の華耦・衛の孔達・許の大夫に會して鄭を救いて、楚の師に及ばず。卿書さざるは、緩[おそ]ければなり。以て不恪を懲らすなり。華耦は、華父督の曾孫。公子遂獨り貶に在らざるは、諸々の魯の事、指して其の國の爲に褒貶するに非ざるよりは、則ち皆国史に從いて、之を他國に同じくせず。此れ春秋の大意なり。他も此に放え。○恪は、苦各反。
夏、楚侵陳、克壺丘。壺丘、陳邑。
【読み】
夏、楚陳を侵し、壺丘に克つ。壺丘は、陳の邑。
以其服於晉也。
【読み】
其の晉に服するを以てなり。
秋、楚公子朱自東夷伐陳。子朱、息公也。
【読み】
秋、楚の公子朱東夷より陳を伐つ。子朱は、息公なり。
陳人敗之、獲公子茷。陳懼。乃及楚平。以小勝大。故懼而請平也。傳言晉君少、楚陵中國。明年、所以有厥貉之會。○茷、扶廢反。貉、武百反。
【読み】
陳人之を敗り、公子茷[はい]を獲たり。陳懼る。乃ち楚と平らぐ。小を以て大に勝つ。故に懼れて平らぎを請うなり。傳晉君少くして、楚中國を陵ぐを言う。明年、厥貉[けつばく]の會有る所以なり。○茷は、扶廢反。貉は、武百反。
冬、楚子越椒來聘。執幣傲。子越椒、令尹子文從子。傲、不敬。
【読み】
冬、楚の子越椒來聘す。幣を執ること傲れり。子越椒は、令尹子文の從子。傲は、不敬なり。
叔仲惠伯曰、是必滅若敖氏之宗。傲其先君。神弗福也。十二年傳曰、先君之敝器、使下臣致諸執事。明奉使皆告廟。故言傲其先君也。爲宣四年、楚滅若敖氏張本。
【読み】
叔仲惠伯曰く、是れ必ず若敖氏の宗を滅ぼさん。其の先君に傲れり。神福せじ、と。十二年の傳に曰く、先君の敝器、下臣をして諸を執事に致さしむ、と。明けし、使を奉ずれば皆廟に告ぐるなり。故に其の先君に傲ると言うなり。宣四年、楚若敖氏を滅ぼす爲の張本なり。
秦人來歸僖公・成風之襚。禮也。秦慕諸夏、欲通敬於魯。因有翟泉之盟、故追贈僖公、幷及成風。本非魯方嶽同盟、無相赴弔之制。故不譏其緩、而以接好爲禮。
【読み】
秦人來りて僖公・成風の襚を歸る。禮なり。秦諸夏を慕い、敬を魯に通ぜんことを欲す。翟泉の盟有るに因りて、故に僖公に追贈して、幷せて成風に及ぶなり。本魯の方嶽の同盟に非ざれば、相赴弔するの制無し。故に其の緩きを譏らずして、接好を以て禮とす。
諸侯相弔賀也、雖不當事、苟有禮焉、書也。以無忘舊好。送死不及尸。故曰不當事。書者、書於典策、垂示子孫、使無忘過厚之好。
【読み】
諸侯相弔賀するや、事に當たらずと雖も、苟も禮有れば、書すなり。舊好を忘るること無きを以てなり。死に送りて尸に及ばず。故に事に當たらずと曰う。書すとは、典策に書して、子孫に垂示して、過厚の好を忘るること無からしむるなり。
〔經〕十年、春、王三月、辛卯、臧孫辰卒。無傳。公與小斂。故書日。
【読み】
〔經〕十年、春、王の三月、辛卯[かのと・う]、臧孫辰卒す。傳無し。公小斂に與る。故に日を書す。
夏、秦伐晉。不稱將帥、告辭略。
【読み】
夏、秦晉を伐つ。將帥を稱せざるは、告辭略するなり。
楚殺其大夫宜申。宜申、子西也。謀弑君。故書名。
【読み】
楚其の大夫宜申を殺す。宜申は、子西なり。君を弑せんと謀る。故に名を書す。
自正月不雨、至于秋七月。無傳。義與二年同。
【読み】
正月より雨ふらず、秋七月に至る。傳無し。義二年と同じ。
及蘇子盟于女栗。女栗、地名。闕。蘇子、周卿士。頃王新立。故與魯盟。親諸侯也。○女、音汝。一如字。
【読み】
蘇子と女栗[じょりつ]に盟う。女栗は、地の名。闕く。蘇子は、周の卿士。頃王新たに立つ。故に魯と盟う。諸侯を親しむなり。○女は、音汝。一に字の如し。
冬、狄侵宋。無傳。
【読み】
冬、狄宋を侵す。傳無し。
楚子・蔡侯次于厥貉。厥貉、地名。闕。將伐宋而未行。故書次。
【読み】
楚子・蔡侯厥貉[けつばく]に次[やど]る。厥貉は、地の名。闕く。將に宋を伐たんとして未だ行かず。故に次ると書す。
〔傳〕十年、春、晉人伐秦、取少梁。少梁、馮翊夏陽縣。○少、詩照反。
【読み】
〔傳〕十年、春、晉人秦を伐ち、少梁を取る。少梁は、馮翊の夏陽縣。○少は、詩照反。
夏、秦伯伐晉、取北徵。報少梁。○徵、如字。三蒼云、音懲。一音張里反。
【読み】
夏、秦伯晉を伐ち、北徵を取る。少梁に報ゆ。○徵は、字の如し。三蒼云う、音懲。一に音張里反。
初、楚范巫矞似、矞似、范邑之巫。○矞、尹必反。
【読み】
初め、楚の范巫矞似[いつじ]、矞似は、范邑の巫。○矞は、尹必反。
謂成王與子玉・子西、曰、三君皆將强死。城濮之役、王思之。故使止子玉、曰、毋死。不及。止子西。縊而縣絕。在僖二十八年。○强、其丈反。
【読み】
成王と子玉・子西とに謂いて、曰く、三君皆將に强死せんとす、と。城濮の役に、王之を思う。故に子玉を止めしめて、曰く、死すこと毋かれ、と。及ばず。子西を止む。縊れて縣絕ゆ。僖二十八年に在り。○强は、其丈反。
*漢籍國字解全書には、「縊而縣絕」は「子西縊而縣絕」とある。
王使適至、遂止之。使爲商公。商、楚邑。今上雒商縣。
【読み】
王の使適[たま]々至り、遂に之を止む。商公爲らしむ。商は、楚の邑。今の上雒商縣。
沿漢泝江、將入郢。沿、順流。泝、逆流。○沿、悅專反。泝、息路反。郢、以井反。
【読み】
漢に沿い江に泝[さかのぼ]り、將に郢[えい]に入らんとす。沿は、流れに順うなり。泝は、流れに逆うなり。○沿は、悅專反。泝は、息路反。郢は、以井反。
*沿は、サンズイに公。
王在渚宮、小洲曰渚。
【読み】
王渚宮に在りて、小洲を渚と曰う。
下見之。懼而辭曰、臣免於死、又有讒言、謂臣將逃。臣歸死於司敗也。陳・楚名司寇爲司敗。子西畏讒言、不敢之商縣。
【読み】
之を下し見る。懼れて辭して曰く、臣死を免れしに、又讒言有りて、臣を將に逃げんとすと謂う。臣死を司敗に歸せん、と。陳・楚司寇を名づけて司敗とす。子西讒言を畏れて、敢えて商縣に之かず。
王使爲工尹。掌百工之官。
【読み】
王工尹爲らしむ。百工を掌るの官。
又與子家謀弑穆王。穆王聞之、五月、殺鬭宜申及仲歸。仲歸、子家。不書、非卿。
【読み】
又子家と穆王を弑せんことを謀る。穆王之を聞き、五月、鬭宜申と仲歸とを殺す。仲歸は、子家。書さざるは、卿に非ざればなり。
秋、七月、及蘇子盟于女栗、頃王立故也。僖十年、狄滅溫、蘇子奔衛。今復見、蓋王復之。
【読み】
秋、七月、蘇子と女栗に盟うは、頃王立つ故なり。僖十年、狄溫を滅ぼして、蘇子衛に奔る。今復見ゆるは、蓋し王之を復すならん。
陳侯・鄭伯會楚子于息。冬、遂及蔡侯次于厥貉。陳・鄭及宋麇子不書者、宋・鄭執卑苟免、爲楚僕任、受役於司馬、麇子恥之、遂逃而歸。三君失位降爵。故不列於諸侯。宋・鄭猶然、則陳侯必同也。○麇、九倫反。
【読み】
陳侯・鄭伯楚子に息に會す。冬、遂に蔡侯と厥貉に次る。陳・鄭と宋の麇子[きんし]と書さざるは、宋・鄭は卑しきを執えて苟も免れ、楚の僕任と爲りて、役を司馬に受け、麇子は之を恥じて、遂に逃げて歸る。三君位を失し爵を降す。故に諸侯に列ねず。宋・鄭猶然るときは、則ち陳侯必ず同じならん。○麇は、九倫反。
將以伐宋。宋華御事曰、楚欲弱我也。先爲之弱乎、何必使誘我。我實不能、民何罪。乃逆楚子、勞且聽命。時楚欲誘呼宋共戰。御事、華元父。○勞、力報反。
【読み】
將に以て宋を伐たんとす。宋の華御事が曰く、楚我を弱めんと欲するなり。先ず之が弱きを爲さんや、何ぞ必ずしも我を誘[あざむ]かしめん。我れ實に能わざれども、民何の罪ある、と。乃ち楚子を逆え、勞して且命を聽く。時に楚宋を誘呼して共に戰わんと欲す。御事は、華元の父。○勞は、力報反。
遂道以田孟諸。孟諸、宋大藪也。在梁國睢陽縣東北。○道、音導。睢、音綏。
【読み】
遂に道[みちび]きて以て孟諸に田[かり]す。孟諸は、宋の大藪なり。梁國睢陽縣の東北に在り。○道は、音導。睢は、音綏。
宋公爲右盂、鄭伯爲左盂、盂、田獵陳名。○陳、直覲反。
【読み】
宋公右盂と爲り、鄭伯左盂と爲り、盂は、田獵の陳の名。○陳は、直覲反。
期思公復遂爲右司馬、復遂、楚期思邑公。今弋陽期思縣。
【読み】
期思公復遂右司馬と爲り、復遂は、楚の期思邑の公。今の弋陽の期思縣。
子朱及文之無畏爲左司馬。將獵、張兩甄。故置二左司馬。然則右司馬一人當中央。○甄、吉然反。
【読み】
子朱と文之無畏と左司馬と爲る。將に獵せんとし、兩甄[りょうけん]を張る。故に二りの左司馬を置く。然れば則ち右司馬一人中央に當たるなり。○甄は、吉然反。
命夙駕載燧。燧、取火者。
【読み】
命ずらく、夙に駕して燧[すい]を載せよ、と。燧は、火を取る者。
宋公違命。不夙駕載燧。
【読み】
宋公命に違う。夙に駕して燧を載せず。
無畏抶其僕以徇。或謂子舟曰、國君不可戮也。子舟曰、當官而行。何彊之有。子舟、無畏字。○抶、恥乙反。
【読み】
無畏其の僕を抶[う]ちて以て徇[とな]う。或ひと子舟に謂いて曰く、國君は戮す可からず、と。子舟曰く、官に當たりて行う。何の彊か之れ有らん。子舟は、無畏の字。○抶[ちつ]は、恥乙反。
詩曰、剛亦不吐、柔亦不茹。詩、大雅。美仲山甫不辟彊禦。○茹、如呂反。
【読み】
詩に曰く、剛も亦吐かず、柔も亦茹[くら]わず、と。詩は、大雅。仲山甫の彊禦を辟けざるを美む。○茹は、如呂反。
毋縱詭隨、以謹罔極。詩、大雅。詭人隨人、無正心者。謹、猶愼也。罔、無也。極、中也。○詭、九委反。
【読み】
詭隨を縱[ゆる]すること毋くして、以て罔極を謹め、と。詩は、大雅。詭人隨人は、正心無き者。謹は、猶愼のごとし。罔は、無なり。極は、中なり。○詭は、九委反。
是亦非辟彊也。敢愛死以亂官乎。爲宣十四年、宋人殺子舟張本。
【読み】
是も亦彊を辟くるに非ざるなり。敢えて死を愛して以て官を亂らんや、と。宣十四年、宋人子舟を殺す爲の張本なり。
厥貉之會、麇子逃歸。爲明年、楚子伐麇傳。
【読み】
厥貉の會に、麇子[きんし]逃げ歸る。明年、楚子麇を伐つ爲の傳なり。
文
經元年。來錫。星歷反。其比。必利反。例也。又如字。喪色。息浪反。
傳。能相。息亮反。供。倶用反。養。餘亮反。期之。居其反。朞同。○今本朞。不愆。起虔反。不悖。必内反。毛伯衛來錫公命。一本作王使。又作天王使。○今本亦作王使。錫作賜。按此文疑有誤脫。汲。居及反。諒。音良。又音亮。大甚。音泰。又如字。疆。居良反。尙少。詩照反。下同。蠭。芳逢反。豺。仕皆反。江羋。史記以爲成王妾。役夫。如字。者稱。尺證反。大事謂弑君。申志反。一本無此注。宮卒。子忽反。從子玉。如字。又才用反。斂。力驗反。大師。音泰。環。如字。又音患。舊好。呼報反。下及注同。要結。於遙反。外援。于眷反。秦帥。所類反。有隧。音遂。敗類。必邁反。注同。蹊。音兮。徑。古定反。誦言。似用反。惽。音昬。本亦作昬。○今本亦昏。覆。芳服反。卑。必爾反。本又作俾。注同。○今本亦俾。復使。扶又定。
經二年。衙。音牙。不見。賢遍反。族去。起呂反。常稱。尺證反。士縠。本又作穀。無隴。力勇反。有收。如字。又手又反。大廟。音泰。下同。躋。子兮反。廟坐。才臥反。又如字。纁。許云反。
傳。禦。魚呂反。將中。子匠反。溱。側巾反。故嗤。尺之反。盍死。戶臘反。死處。昌慮反。與女。音汝。不得復。扶又反。遄。市專反。沮。在汝反。王赫。火百反。必辟。音避。母念。音無。注同。士蔿。于委反。書士縠。本或作書曰晉士。爲衛。于僞反。令居。力呈反。閔上。時掌反。一本無閔字。夏父。戶雅反。昭穆。上遙反。後皆放此。又長。丁丈反。年少。詩照反。鯀。古本反。先契。息列反。殷始封之君。不肖。悉召反。不忒。他得反。不知。音智。下同。塞關。悉再反。販。甫万反。梲。章悅反。爰居。樊光云、似鳳皇。爰居事見國語。莊子云、魯侯御而觴之于廟。公子成。音城。本或作戌。音恤。轅選。息袞反。取汪。烏黃反。爲穆公。于僞反。娶。七住反。元妃。芳非反。粢盛。音咨。下音成。適夫人。丁歷反。○今本嫡。共。音恭。
經三年。沈。尸甚反。潰。戶内反。螽。音終。天祐。音又。
傳。輕走。如字。又遣政反。逃竄。七亂反。爲衛。于僞反。不解。佳賣反。下同。蘩。音煩。沼。之紹反。沚。音止。以共。音恭。詒厥。以之反。詒遺。唯季反。下同。之帥。所類反。兵解。音蟹。又佳買反。菁菁。子丁反。莪。五多反。還上。時掌反。又如字。
經四年。甯兪。羊朱反。祔姑。音附。
傳。去盛。起呂反。饌。仕眷反。不矜。居陵反。爰究。音救。爰度。待洛反。注同。湛露。直減反。彤弓。徒冬反。佯不。音陽。一音祥。宴樂。音洛。下注同。不晞。音希。舊好。呼報反。辱貺。音況。取戾。力計反。
經五年。且賵。芳鳳反。召伯。上照反。廬江。力居反。
傳。蓼。或作鄝。音同。皐陶。音遙。甯嬴。音盈。亢爽。苦浪反。其行。下孟反。軍帥。所類反。下同。蒐。所求反。
經六年。侯驩。喚官反。卿其。音恭。不告月。月或作朔、誤也。不告朔。本或朔告月。
傳。軍帥。所類反。下同。將中。子匠反。逋逃。補吾反。洿。本又作汙。大傅。音泰。下同。求好。呼報反。且娶。七住反。越竟。音境。自爲。于僞反。子車氏。音居。中行。音仲。本亦作仲。下戶郎反。○今本亦仲。爲殉。字林、弋絹反。王者。如字。一于況反。聖知。音智。話言。戶快反。度量。音亮。以遺。唯季反。焉用。於虔反。卒得。寸忽反。三思。息暫反。公少。詩照反。注同。以難。乃旦反。注及下皆同。長君。丁丈反。下皆同。好善。呼報反。下皆同。且近。附近之近。嬖。必計反。杜祁。巨之反。姞。一音其乙反。故復。扶又反。下將復怨同。亞卿。於嫁反。軍帥。所類反。又命帥同。臾。羊朱反。欲盡。津忍反。介人。音戒。非知。音智。爲民。或于僞反、非也。
經七年。邾復。扶又反。易也。以豉反。邾難。乃旦反。今狐。力呈反。廢適。丁歷反。本又作嫡。諱背。音佩。分別。彼列反。書將。子匠反。帥。所類反。涖盟。音利。又音類。
傳。難也。乃旦反。注同。寘文。之豉反。下同。大暤。音泰。下戶老反。庇。必利反。又悲位反。下同。廕。本又作蔭。於鴆反。藟。本或作虆。力軌反。能虆。類龜反。蔓。音萬。廕庥。許求反。本又作庇。爲比。必爾反。之難。乃旦反。穆嬴。音盈。舍嫡。本亦作適。同。○今本亦適。將焉。於虔反。下焉用同。畏偪。彼力反。乃背。音佩。箕鄭。音基。居守。手又反。下注同。將中。子匠反。下注同。卒然。寸忽反。而復。扶又反。有奪人之心。本或此下有後人待其反、誤。訓卒。子忽反。秣馬。音末。之使。所吏反。爲寮。本又作僚。力彫反。爲賦。于僞反。下爲同寮同。芻。初倶反。蕘。音饒。中行。戶郎反。下同。惡有。烏路反。酆舒。芳忠反。狄相。息亮反。戴己。一音杞。其娣。大計反。則爲。于僞反。下且爲・自爲同。用休。許虯反。注同。盍使。戶臘反。說之。音悅。
經八年。會雒戎。音洛。本或作伊雒之戎。此後人妄取傳文加耳。宜去。起呂反。不舍。音捨。
傳。令鄭。力呈反。皆見。賢遍反。公壻。音細。俗作聟。之竟。音境。下注同。能相。息亮反。適祖母。丁歷反。效節。戶敎反。將中。子匠反。
經九年。以共。音恭。本又作供。下同。僻陋。匹亦反。○今本辟。曹共。音恭。
傳。君少。詩照反。下注同。狼陂。彼皮反。以懲。直升反。旨爲。于僞反。執幣傲。本又作敖。五報反。注下同。從子。才用反。若敖。五刀反。奉使。所吏反。諸夏。戶雅反。方嶽。音岳。接好。呼報反。下及注同。
經十年。公與。音預。斂。力驗反。稱將。子匠反。帥。所類反。頃王。音傾。
傳。夏陽。戶雅反。城濮。音卜。毋死。音無。縊。一豉反。而縣。音玄。王使。所吏反。入郢。一音以政反。渚宮。章呂反。小洲。音州。今復。扶又反。見。賢遍反。大藪。素口反。右盂。音于。弋陽。以職反。命夙。眉病反。載燧。本又作■(上が遂、下が火)。音遂。以徇。似俊反。子舟。音州。