春秋左氏傳校本第十四 襄公 起一年盡九年 晉 杜氏 集解 唐 陸氏 音義 尾張 秦 鼎 校本 襄公 名、午。成公子。母定姒。謚法、因事有功曰襄。辟土有德曰襄。 【読み】 襄公 名は、午。成公の子。母は定姒[ていじ]。謚法に、事に因りて功有るを襄と曰う、と。土を辟き德有るを襄と曰う。 〔經〕元年、春、王正月、公卽位。無傳。於是公年四歲。 【読み】 〔經〕元年、春、王の正月、公位に卽く。傳無し。是に於て公の年四歲なり。 仲孫蔑會晉欒黶・宋華元・衛甯殖・曹人・莒人・邾人・滕人・宋人・薛人圍宋彭城。魯與謀於虛朾。而書會者、稟命霸主、非匹敵故。○與、音預。 【読み】 仲孫蔑晉の欒黶[らんえん]・宋の華元・衛の甯殖[ねいしょく]・曹人・莒人・邾人[ちゅひと]・滕人・宋人・薛人に會して宋の彭城を圍む。魯謀に虛朾[きょてい]に與る。而るを會と書すは、命を霸主に稟けて、匹敵に非ざる故なり。○與は、音預。 夏、晉韓厥帥師伐鄭。仲孫蔑會齊崔杼・曹人・邾人・杞人次于鄫。鄫、鄭地。在陳留襄邑縣東南。書次、兵不加鄭、次鄫以待晉師。○鄫、才陵反。 【読み】 夏、晉の韓厥師を帥いて鄭を伐つ。仲孫蔑齊の崔杼・曹人・邾人・杞人に會して鄫[しょう]に次[やど]る。鄫は、鄭の地。陳留襄邑縣の東南に在り。次ると書すは、兵鄭に加えず、鄫に次りて以て晉の師を待つなり。○鄫は、才陵反。 秋、楚公子壬夫帥師侵宋。九月、辛酉、天王崩。無傳。辛酉、九月十五日。 【読み】 秋、楚の公子壬夫師を帥いて宋を侵す。九月、辛酉[かのと・とり]、天王崩ず。傳無し。辛酉は、九月十五日。 邾子來朝。冬、衛侯使公孫剽來聘。剽、子叔黑背子。○剽、匹妙反。 【読み】 邾子來朝す。冬、衛侯公孫剽をして來聘せしむ。剽は、子叔黑背の子。○剽は、匹妙反。 晉侯使荀罃來聘。冬者、十月初也。王崩赴未至、皆未聞喪。故各得行朝聘之禮。而傳善之。 【読み】 晉侯荀罃[じゅんおう]をして來聘せしむ。冬は、十月の初めなり。王崩じて赴[つげ]未だ至らず、皆未だ喪を聞かず。故に各々朝聘の禮を行うことを得たり。而して傳之を善す。 〔傳〕元年、春、己亥、圍宋彭城。下有二月、則此己亥爲正月。正月無己亥。日誤。 【読み】 〔傳〕元年、春、己亥[つちのと・い]、宋の彭城を圍む。下に二月有れば、則ち此の己亥は正月爲り。正月に己亥無し。日の誤りなり。 非宋地。追書也。成十八年、楚取彭城以封魚石。故曰非宋地。夫子治春秋、追書繫之宋。 【読み】 宋の地に非ず。追って書すなり。成十八年、楚彭城を取りて以て魚石を封ず。故に宋の地に非ずと曰う。夫子春秋を治め、追書して之を宋に繫くるなり。 於是爲宋討魚石。故稱宋。且不登叛人也。登、成也。不與其專邑叛君。故使彭城還繫宋。 【読み】 是に於て宋の爲に魚石を討ず。故に宋と稱す。且叛人を登[な]さざるなり。登は、成すなり。其の邑を專らにし君に叛くを與[ゆる]さず。故に彭城をして還して宋に繫けしむ。 謂之宋志。稱宋、亦以成宋志。 【読み】 之を宋の志と謂う。宋と稱するは、亦以て宋の志を成すなり。 彭城降晉。晉人以宋五大夫在彭城者歸、寘諸瓠丘。彭城降不書、賤略之。瓠丘、晉地。河東東垣縣東南有壺丘。五大夫、魚石・向爲人・鱗朱・向帶・魚府。○降、戶江反。瓠、侯吳反。一戶故反。 【読み】 彭城晉に降る。晉人宋の五大夫の彭城に在る者を以[い]て歸り、諸を瓠丘[こきゅう]に寘く。彭城降ること書さざるは、賤しければ之を略するなり。瓠丘は、晉の地。河東東垣縣の東南に壺丘有り。五大夫は、魚石・向爲人・鱗朱・向帶・魚府。○降は、戶江反。瓠は、侯吳反。一に戶故反。 齊人不會彭城。晉人以爲討。二月、齊大子光爲質於晉。光、齊靈公大子。 【読み】 齊人彭城に會せず。晉人以て討ずることを爲す。二月、齊の大子光晉に質と爲る。光は、齊の靈公の大子。 夏、五月、晉韓厥・荀偃帥諸侯之師伐鄭、入其郛、荀偃不書、非元帥。○郛、芳夫反。 【読み】 夏、五月、晉の韓厥・荀偃諸侯の師を帥いて鄭を伐ち、其の郛[ふ]に入り、荀偃書さざるは、元帥に非ざればなり。○郛は、芳夫反。 敗其徒兵於洧上。徒兵、步兵。洧水出密縣、東南至長平入潁。○洧、于軌反。 【読み】 其の徒兵を洧上[いじょう]に敗る。徒兵は、步兵。洧水は密縣に出でて、東南して長平に至りて潁に入る。○洧は、于軌反。 於是東諸侯之師、次于鄫、以待晉師、齊・魯・曹・邾・杞。 【読み】 是に於て東諸侯の師は、鄫に次りて、以て晉の師を待ち、齊・魯・曹・邾・杞。 晉師自鄭以鄫之師侵楚焦夷、及陳。於是孟獻子自鄫先歸、不與侵陳・楚。故不書。○焦、如字。又在堯反。 【読み】 晉の師は鄭より鄫の師を以て楚の焦夷を侵して、陳に及ぶ。是に於て孟獻子鄫より先ず歸り、陳・楚を侵すに與らず。故に書さず。○焦は、字の如し。又在堯反。 晉侯・衛侯次于戚、以爲之援。爲韓厥援。 【読み】 晉侯・衛侯は戚に次りて、以て之が援けを爲す。韓厥が援けを爲す。 秋、楚子辛救鄭、侵宋呂・留。呂・留二縣、今屬彭城郡。 【読み】 秋、楚の子辛鄭を救いて、宋の呂・留を侵す。呂・留二縣は、今彭城郡に屬す。 鄭子然侵宋、取犬丘。譙國酇縣東北有犬丘城。迂廻疑。○酇、才河反。又子旦反。迂、音于。 【読み】 鄭の子然宋を侵して、犬丘を取る。譙國酇縣の東北に犬丘城有り。迂廻なれば疑わし。○酇は、才河反。又子旦反。迂は、音于。 九月、邾子來朝。禮也。邾宣公。 【読み】 九月、邾子來朝す。禮なり。邾の宣公。 冬、衛子叔・晉知武子來聘。禮也。 【読み】 冬、衛の子叔・晉の知武子來聘す。禮なり。 凡諸侯卽位、小國朝之、小事大。 【読み】 凡そ諸侯位に卽けば、小國は之に朝し、小は大に事う。 大國聘焉、大字小。 【読み】 大國は聘して、大は小を字[いつく]しむ。 以繼好結信、謀事補闕。禮之大者也。闕、猶過也。禮以安國家利民人爲大。 【読み】 以て好を繼ぎ信を結び、事を謀り闕けたるを補う。禮の大なる者なり。闕は、猶過ちのごとし。禮は國家を安んじ民人を利するを以て大と爲す。 〔經〕二年、春、王正月、葬簡王。無傳。五月而葬。速。 【読み】 〔經〕二年、春、王の正月、簡王を葬る。傳無し。五月にして葬る。速きなり。 鄭師伐宋。書伐、從告。 【読み】 鄭の師宋を伐つ。伐つと書すは、告ぐるに從うなり。 夏、五月、庚寅、夫人姜氏薨。六月、庚辰、鄭伯睔卒。未與襄同盟、而赴以名。庚辰、七月九日。書六月、經誤。○睔、古囷反。又胡忖反。 【読み】 夏、五月、庚寅[かのえ・とら]、夫人姜氏薨ず。六月、庚辰[かのえ・たつ]、鄭伯睔[きん]卒す。未だ襄と同盟せずして、赴[つ]ぐるに名を以てす。庚辰は、七月九日。六月に書すは、經の誤りなり。○睔は、古囷反。又胡忖反。 晉師・宋師・衛甯殖侵鄭。宋雖非卿師重。故敍衛上。 【読み】 晉の師・宋の師・衛の甯殖鄭を侵す。宋卿に非ずと雖も師重し。故に衛の上に敍ず。 秋、七月、仲孫蔑會晉荀罃・宋華元・衛孫林父・曹人・邾人于戚。己丑、葬我小君齊姜。齊、謚也。三月而葬。速。○齊、如字。執心克莊曰齊。 【読み】 秋、七月、仲孫蔑晉の荀罃[じゅんおう]・宋の華元・衛の孫林父・曹人・邾人に戚に會す。己丑[つちのと・うし]、我が小君齊姜を葬る。齊は、謚なり。三月にして葬る。速きなり。○齊は、字の如し。執心克莊を齊と曰う。 叔孫豹如宋。豹於此始自齊還爲卿。 【読み】 叔孫豹宋に如く。豹此に於て始めて齊より還りて卿と爲る。 冬、仲孫蔑會晉荀罃・齊崔杼・宋華元・衛孫林父・曹人・邾人・滕人・薛人・小邾人于戚。遂城虎牢。以逼鄭。 【読み】 冬、仲孫蔑晉の荀罃・齊の崔杼・宋の華元・衛の孫林父・曹人・邾人・滕人・薛人・小邾人に戚に會す。遂に虎牢に城く。以て鄭に逼る。 楚殺其大夫公子申。 【読み】 楚其の大夫公子申を殺す。 〔傳〕二年、春、鄭師侵宋、楚令也。以彭城故。 【読み】 〔傳〕二年、春、鄭の師宋を侵すは、楚の令なり。彭城を以ての故なり。 齊侯伐萊。萊人使正輿子賂夙沙衛以索馬牛皆百匹。夙沙衛、齊寺人。索、簡擇好者。○索、所白反。 【読み】 齊侯萊を伐つ。萊人正輿子をして夙沙衛に賂いて索[えら]べる馬牛皆百匹を以てせしむ。夙沙衛は、齊の寺人。索は、好き者を簡擇するなり。○索は、所白反。 齊師乃還。 【読み】 齊の師乃ち還る。 君子是以知齊靈公之爲靈也。謚法、亂而不損曰靈。言謚應其行。 【読み】 君子是を以て齊の靈公の靈爲るを知れり。謚法に、亂れて損せざるを靈と曰う。謚其の行いに應ずるを言う。 夏、齊姜薨。 【読み】 夏、齊姜薨ず。 初、穆姜使擇美檟、檟、梓之屬。○檟、古雅反。 【読み】 初め、穆姜美檟[びか]を擇ばしめ、檟は、梓の屬。○檟は、古雅反。 以自爲櫬與頌琴。櫬、棺也。頌琴、琴名。猶言雅琴。皆欲以送終。○櫬、初覲反。 【読み】 以て自ら櫬[しん]と頌琴とに爲る。櫬は、棺なり。頌琴は、琴の名。猶雅琴と言うがごとし。皆以て終わりを送らんと欲す。○櫬は、初覲反。 季文子取以葬。 【読み】 季文子取りて以て葬る。 君子曰、非禮也。禮無所逆。婦養姑者也。虧姑以成婦、逆莫大焉。穆姜、成公母。齊姜、成公婦。○養、余亮反。 【読み】 君子曰く、禮に非ざるなり。禮は逆う所無し。婦は姑を養う者なり。姑を虧[か]きて以て婦を成すは、逆焉より大なるは莫し。穆姜は、成公の母。齊姜は、成公の婦。○養は、余亮反。 詩曰、其惟哲人、告之話言、順德之行。詩、大雅。哲、知也。話、善也。言知者行事無不順。○話、古怪反。知、音致。 【読み】 詩に曰く、其れ惟れ哲人は、之に話言を告ぐれば、順いて德の行をす、と。詩は、大雅。哲は、知なり。話は、善きなり。言うこころは、知者は事を行うに順ならざること無し。○話は、古怪反。知は、音致。 季孫於是爲不哲矣。言逆德。 【読み】 季孫是に於て不哲爲り。德に逆うを言う。 且姜氏、君之妣也。襄公適母。故曰君之妣。 【読み】 且つ姜氏は、君の妣なり。襄公の適母。故に君の妣と曰う。 詩曰、爲酒爲醴、烝畀祖妣、以洽百禮、降福孔偕。詩、周頌。烝、進也。畀、與也。偕、偏也。言敬事祖妣、則鬼神降福。季孫葬姜氏不以禮。是不敬祖妣。 【読み】 詩に曰く、酒を爲り醴[れい]を爲り、祖妣に烝畀[じょうひ]して、以て百禮を洽[あまね]くすれば、福を降すこと孔[はなは]だ偕[あまね]し、と。詩は、周頌。烝は、進むなり。畀は、與うるなり。偕は、偏きなり。祖妣に敬事すれば、則ち鬼神福を降すを言う。季孫姜氏を葬るに禮を以てせず。是れ祖妣を敬せざるなり。 齊侯使諸姜宗婦來送葬。宗婦、同姓大夫之婦。婦人越疆送葬、非禮。 【読み】 齊侯諸姜と宗婦とをして來りて葬を送らしむ。宗婦は、同姓の大夫の婦。婦人疆を越えて葬を送るは、禮に非ず。 召萊子。萊子不會。故晏弱城東陽以偪之。爲六年、滅萊傳。東陽、齊竟上邑。 【読み】 萊子を召す。萊子會せず。故に晏弱東陽に城きて以て之に偪る。六年、萊を滅ぼす爲の傳なり。東陽は、齊の竟上の邑。 鄭成公疾。子駟請息肩於晉。欲辟楚役。以負擔喩。○擔、都暫反。 【読み】 鄭の成公疾む。子駟肩を晉に息えんと請う。楚の役を辟けんと欲す。負擔を以て喩う。○擔は、都暫反。 公曰、楚君以鄭故、親集矢於其目。謂鄢陵戰、晉射楚王目。○射、食亦反。 【読み】 公曰く、楚の君鄭の故を以て、親ら矢を其の目に集[とど]めたり。鄢陵の戰に、晉楚王の目を射るを謂う。○射は、食亦反。 非異人任。寡人也。言楚子任此患、不爲他人、蓋在己。○非異人任、絶句。任、音壬。一讀、至人字絶句。 【読み】 異人の任に非ず。寡人のなり。言うこころは、楚子此の患えに任ずるは、他人の爲ならず、蓋し己に在り。○非異人任は、絶句。任は、音壬。一に讀みて、至人の字は絶句。 若背之、是棄力與言。其誰暱我。言、盟誓之言。○力、服本作功。暱、女乙反。 【読み】 若し之に背かば、是れ力と言とを棄つるなり。其れ誰か我を暱[した]しまん。言は、盟誓の言なり。○力は、服本功に作る。暱[じつ]は、女乙反。 免寡人、唯二三子。 【読み】 寡人を免れしむるは、唯二三子なり。 秋、七月、庚辰、鄭伯睔卒。於是子罕當國、攝君事。 【読み】 秋、七月、庚辰、鄭伯睔卒す。是に於て子罕國に當たり、君の事を攝す。 子駟爲政、爲正卿。 【読み】 子駟政を爲し、正卿爲り。 子國爲司馬。晉師侵鄭。晉伐喪、非禮。 【読み】 子國司馬爲り。晉の師鄭を侵す。晉喪を伐つは、禮に非ず。 諸大夫欲從晉。子駟曰、官命未改。成公未葬、嗣君未免喪。故言未改。不欲違先君意。 【読み】 諸大夫晉に從わんことを欲す。子駟曰く、官命未だ改まらず、と。成公未だ葬らず、嗣君未だ喪を免[ぬ]がず。故に未だ改まらずと言う。先君の意に違うことを欲せず。 會于戚、謀鄭故也。鄭久叛晉。謀討之。 【読み】 戚に會するは、鄭の故を謀るなり。鄭久しく晉に叛く。之を討ぜんことを謀る。 孟獻子曰、請城虎牢以偪鄭。虎牢、舊鄭邑。今屬晉。 【読み】 孟獻子曰く、請う、虎牢に城きて以て鄭に偪らん、と。虎牢は、舊鄭の邑。今晉に屬す。 知武子曰、善。鄫之會、吾子聞崔子之言。今不來矣。元年、孟獻子與齊崔杼次于鄫。崔杼有不服晉之言。獻子以告知武子。 【読み】 知武子曰く、善し。鄫[しょう]の會に、吾子崔子の言を聞けり。今來らず。元年、孟獻子齊の崔杼と鄫に次る。崔杼晉に服せざるの言有り。獻子以て知武子に告ぐ。 滕・薛・小邾之不至、皆齊故也。三國、齊之屬。 【読み】 滕・薛・小邾の至らざるは、皆齊の故なり。三國は、齊の屬。 寡君之憂不唯鄭。言復憂齊叛。○復、扶又反。下同。 【読み】 寡君の憂えは唯鄭のみにあらず。復齊の叛くを憂うるを言う。○復は、扶又反。下も同じ。 罃將復於寡君而請於齊。以城事白晉君、而請齊會之、欲以觀齊志。 【読み】 罃將に寡君に復[もう]して齊に請わんとす。城く事を以て晉君に白[もう]して、齊に之に會せんことを請いて、以て齊の志を觀んと欲す。 得請而告、吾子之功也。得請、謂齊人應命、告諸侯會、築虎牢。 【読み】 請うことを得て告げば、吾子の功なり。請うことを得るとは、齊人命に應じ、諸侯に會を告げ、虎牢に築くを謂う。 若不得請、事將在齊。將伐齊。 【読み】 若し請うことを得ずんば、事將に齊に在らんとす。將に齊を伐たんとす。 吾子之請、諸侯之福也。城虎牢、足以服鄭息征伐。 【読み】 吾子の請いは、諸侯の福なり。虎牢に城くは、以て鄭を服して征伐を息むるに足る。 豈惟寡君賴之。傳言荀罃能用善謀。 【読み】 豈惟寡君のみ之に賴らんや、と。傳荀罃能く善謀を用ゆるを言う。 穆叔聘于宋、通嗣君也。 【読み】 穆叔宋に聘するは、嗣君を通ずるなり。 冬、復會于戚。齊崔武子及滕・薛・小邾之大夫皆會。知武子之言故也。武子言、事將在齊。齊人懼、帥小國而會之。 【読み】 冬、復戚に會す。齊崔武子と滕・薛・小邾の大夫と皆會す。知武子の言の故なり。武子言う、事將に齊に在らんとす、と。齊人懼れ、小國を帥いて之に會す。 遂城虎牢。鄭人乃成。如孟獻子之謀。 【読み】 遂に虎牢に城く。鄭人乃ち成[たい]らぐ。孟獻子の謀の如し。 楚公子申爲右司馬、多受小國之賂、以偪子重・子辛。偪奪其權勢。 【読み】 楚の公子申右司馬と爲り、多く小國の賂を受けて、以て子重・子辛に偪る。其の權勢を偪り奪う。 楚人殺之。故書曰楚殺其大夫公子申。言所以致國討之文。 【読み】 楚人之を殺す。故に書して楚其の大夫公子申を殺すと曰う。國討の文を致す所以を言う。 〔經〕三年、春、楚公子嬰齊帥師伐吳。公如晉。夏、四月、壬戌、公及晉侯盟于長樗。晉侯出其國都、與公盟於外。○樗、勑居反。 【読み】 〔經〕三年、春、楚の公子嬰齊師を帥いて吳を伐つ。公晉に如く。夏、四月、壬戌[みずのえ・いぬ]、公晉侯と長樗[ちょうちょ]に盟う。晉侯其の國都を出でて、公と外に盟う。○樗は、勑居反。 公至自晉。無傳。不以長樗至、本非會。 【読み】 公晉より至る。傳無し。長樗を以て至るとせざるは、本會に非ざればなり。 六月、公會單子・晉侯・宋公・衛侯・鄭伯・莒子・邾子・齊世子光。己未、同盟于雞澤。雞澤、在廣平曲梁縣西南。周靈王新卽位、使王官伯出、與諸侯盟、以安王室。故無譏。 【読み】 六月、公單子・晉侯・宋公・衛侯・鄭伯・莒子・邾子[ちゅし]・齊の世子光に會す。己未[つちのと・ひつじ]、雞澤に同盟す。雞澤は、廣平曲梁縣の西南に在り。周の靈王新たに位に卽き、王官の伯をして出でて、諸侯と盟わしめて、以て王室を安んず。故に譏り無し。 陳侯使袁僑如會。陳疾楚政、而來屬晉。本非召會而自來。故言如會。 【読み】 陳侯袁僑をして會に如かしむ。陳楚の政を疾[にく]みて、來りて晉に屬す。本召會に非ずして自ら來る。故に會に如くと言う。 戊寅、叔孫豹及諸侯之大夫及陳袁僑盟。諸侯旣盟、袁僑乃至。故使大夫別與之盟。言諸侯之大夫、則在雞澤之諸侯也。殊袁僑者、明諸侯大夫所以盟、盟袁僑也。據傳、盟在秋。長曆推、戊寅、七月十三日。經誤。 【読み】 戊寅[つちのえ・とら]、叔孫豹諸侯の大夫と及[とも]に陳の袁僑と盟う。諸侯旣に盟いて、袁僑乃ち至る。故に大夫をして別に之と盟わしむ。諸侯の大夫と言うは、則ち雞澤に在るの諸侯なり。袁僑を殊にするは、諸侯大夫の盟う所以は、袁僑に盟うことを明らかにするなり。傳に據れば、盟は秋に在り。長曆をもって推すに、戊寅は、七月十三日なり。經の誤りなり。 秋、公至自會。無傳。 【読み】 秋、公會より至る。傳無し。 冬、晉荀罃帥師伐許。 【読み】 冬、晉の荀罃[じゅんおう]師を帥いて許を伐つ。 〔傳〕三年、春、楚子重伐吳。爲簡之師、簡、選練。 【読み】 〔傳〕三年、春、楚の子重吳を伐つ。簡[えら]べる師を爲し、簡は、選練。 克鳩玆、至于衡山。鳩玆、吳邑。在丹陽蕪湖縣東。今皐夷也。衡山、在吳興烏程縣南。 【読み】 鳩玆に克ち、衡山に至る。鳩玆は、吳の邑。丹陽蕪湖縣の東に在り。今の皐夷なり。衡山は、吳興の烏程縣の南に在り。 使鄧廖帥組甲三百・被練三千、組甲・被練、皆戰備也。組甲、漆甲成組文。被練、練袍。○廖、力彫反。組、音祖。被、去聲。 【読み】 鄧廖[とうりょう]をして組甲三百・被練三千を帥いて、組甲・被練は、皆戰備なり。組甲は、甲に漆して組文を成すなり。被練は、練袍なり。○廖は、力彫反。組は、音祖。被は、去聲。 以侵吳。吳人要而擊之、獲鄧廖。其能免者、組甲八十、被練三百而已。 【読み】 以て吳を侵さしむ。吳人要[むか]えて之を擊ち、鄧廖を獲。其の能く免る者は、組甲八十、被練三百のみ。 子重歸、旣飮至。三日、吳人伐楚、取駕。 【読み】 子重歸り、旣に飮至す。三日ありて、吳人楚を伐ちて、駕を取る。 駕、良邑也。鄧廖、亦楚良也。君子謂、子重於是役也、所獲不如所亡。當時君子。○要、於遙反。 【読み】 駕は、良邑なり。鄧廖も、亦楚の良なり。君子謂えらく、子重是の役に於てや、獲る所亡[うしな]う所に如かず、と。當時の君子。○要は、於遙反。 楚人以是咎子重。子重病之、遂遇心疾而卒。憂恚。故成心疾。 【読み】 楚人是を以て子重を咎む。子重之を病[うれ]え、遂に心疾に遇いて卒す。憂恚[ゆうい]す。故に心疾を成す。 公如晉、始朝也。公卽位而朝。 【読み】 公晉に如くは、始めて朝するなり。公位に卽きて朝す。 夏、盟于長樗。孟獻子相。公稽首。相儀也。稽首、首至地。 【読み】 夏、長樗に盟う。孟獻子相[たす]く。公稽首す。儀を相くるなり。稽首は、首地に至るなり。 知武子曰、天子在。而君辱稽首。寡君懼矣。稽首、事天子之禮。 【読み】 知武子曰く、天子在[いま]す。而るを君辱く稽首す。寡君懼る、と。稽首は、天子に事うるの禮。 孟獻子曰、以敝邑介在東表、密邇仇讎、仇讎、謂齊・楚與晉爭。 【読み】 孟獻子曰く、敝邑の東表に介在して、仇讎に密邇するを以て、仇讎は、齊・楚と晉と爭うを謂う。 寡君將君是望。敢不稽首。傳言獻子能固事盟主。 【読み】 寡君將に君を是れ望まんとす。敢えて稽首せざらんや、と。傳獻子能く固く盟主に事うるを言う。 晉爲鄭服故、且欲脩吳好。鄭服在前年。 【読み】 晉鄭の服する爲の故に、且吳の好を脩めんと欲す。鄭の服するは前年に在り。 將合諸侯。使士匃告于齊曰、寡君使匃。以歲之不易、不虞之不戒、寡君願與一二兄弟相見、不易、多難也。虞、度也。戒、備也。列國之君、相謂兄弟。○易、以豉反。 【読み】 將に諸侯を合わせんとす。士匃[しかい]をして齊に告げしめて曰く、寡君匃を使いす。歲の易からざると、不虞の戒めざるを以て、寡君願わくは一二の兄弟と相見えて、易からざるは、難多きなり。虞は、度るなり。戒は、備うるなり。列國の君、兄弟と相謂う。○易は、以豉反。 以謀不協。請君臨之。使匃乞盟。齊侯欲勿許。而難爲不協。乃盟於耏外。與士匃盟。耏、水名。○耏、音而。 【読み】 以て不協を謀らんとす。君の之に臨まんことを請う。匃をして盟を乞わしむ、と。齊侯許すこと勿からんと欲す。而れども不協爲るに難[はばか]る。乃ち耏外[じがい]に盟う。士匃と盟う。耏は、水の名。○耏は、音而。 祁奚請老。老、致仕。 【読み】 祁奚[きけい]老を請う。老は、致仕なり。 晉侯問嗣焉。嗣續其職者。 【読み】 晉侯嗣を問う。其の職を嗣續する者。 稱解狐。其讎也。將立之而卒。解狐卒。○解、音蟹。 【読み】 解狐を稱す。其の讎なり。將に之を立てんとして卒す。解狐卒す。○解は、音蟹。 又問焉。對曰、午也可。午、祁奚子。 【読み】 又問う。對えて曰く、午や可なり、と。午は、祁奚の子。 於是羊舌職死矣。晉侯曰、孰可以代之。對曰、赤也可。赤、職之子、伯華。 【読み】 是に於て羊舌職死す。晉侯曰く、孰か以て之に代う可き、と。對えて曰く、赤や可なり、と。赤は、職の子、伯華。 於是使祁午爲中軍尉、羊舌赤佐之。各代其父。 【読み】 是に於て祁午をして中軍の尉爲らしめて、羊舌赤之に佐たり。各々其の父に代わる。 君子謂、祁奚於是能舉善矣。稱其讎、不爲諂、立其子、不爲比、舉其偏、不爲黨。諂、媚也。偏、屬也。○諂、他檢反。比、毗志反。 【読み】 君子謂えらく、祁奚是に於て能く善を舉げたり。其の讎を稱して、諂えりと爲さず、其の子を立てて、比すると爲さず、其の偏を舉げて、黨すと爲さず。諂は、媚びるなり。偏は、屬なり。○諂は、他檢反。比は、毗志反。 商書曰、無偏無黨、王道蕩蕩、商書、洪範也。蕩蕩、平正無私。 【読み】 商書に曰く、偏無く黨無く、王道蕩蕩たりとは、商書は、洪範なり。蕩蕩は、平正にして私無きなり。 其祁奚之謂矣。解狐得舉、未得位。故曰得舉。 【読み】 其れ祁奚を謂うなり。解狐舉を得、未だ位を得ず。故に舉を得と曰う。 祁午得位、伯華得官。建一官而三物成、一官、軍尉。物、事也。 【読み】 祁午位を得、伯華官を得たり。一官を建てて三物成りしは、一官は、軍尉。物は、事なり。 能舉善也夫。唯善。故能舉其類。詩云、惟其有之。是以似之。祁奚有焉。詩、小雅。言唯有德之人、能舉似己者也。○夫、音扶。絕句。一讀、夫爲下句首。 【読み】 能く善を舉ぐればなるかな。唯善なり。故に能く其の類を舉げたり。詩に云う、惟其れ之れ有り。是を以て之に似たるをす、と。祁奚焉れ有り、と。詩は、小雅。唯德有るの人のみ、能く己に似たる者を舉ぐるを言う。○夫は、音扶。絕句。一に讀みて、夫は下の句の首めと爲す。 六月、公會單頃公及諸侯。己未、同盟于雞澤。單頃公、王卿士。○頃、音傾。 【読み】 六月、公單頃公[ぜんけいこう]と諸侯とに會す。己未、雞澤に同盟す。單頃公は、王の卿士。○頃は、音傾。 晉侯使荀會逆吳子于淮上。吳子不至。道遠多難。 【読み】 晉侯荀會をして吳子を淮上に逆えしむ。吳子至らず。道遠くして難多し。 楚子辛爲令尹、侵欲於小國。陳成公使袁僑如會求成。患楚侵欲。袁僑、濤塗四世孫。 【読み】 楚の子辛令尹と爲り、小國を侵欲す。陳の成公袁僑をして會に如きて成[たい]らぎ求めしむ。楚の侵欲を患う。袁僑は、濤塗が四世の孫。 晉侯使和組父告于諸侯。告陳服。 【読み】 晉侯和組父をして諸侯に告げしむ。陳の服するを告ぐ。 秋、叔孫豹及諸侯之大夫及陳袁僑盟、陳請服也。其君不來。使大夫盟之、匹敵之宜。 【読み】 秋、叔孫豹諸侯の大夫と及に陳の袁僑と盟うとは、陳服せんことを請えるなり。其の君來らず。大夫をして之に盟わしむるは、匹敵の宜なり。 晉侯之弟揚干、亂行於曲梁。行、陳次。○行、戶郎反。注同。陳、直覲反。 【読み】 晉侯の弟揚干、行を曲梁に亂る。行は、陳の次。○行は、戶郎反。注も同じ。陳は、直覲反。 魏絳戮其僕。僕、御也。 【読み】 魏絳其の僕を戮す。僕は、御なり。 晉侯怒。謂羊舌赤曰、合諸侯以爲榮也。揚干爲戮。何辱如之。必殺魏絳。無失也。對曰、絳無貳志。事君不辟難、有罪不逃刑。其將來辭。何辱命焉。言終。魏絳至、授僕人書、僕人、晉侯御僕。 【読み】 晉侯怒る。羊舌赤に謂いて曰く、諸侯を合わすは以て榮爲り。揚干戮せらる。何の辱か之に如かんや。必ず魏絳を殺せ。失うこと無かれ、と。對えて曰く、絳は貳志無し。君に事えて難を辟けず、罪有りて刑を逃げず。其れ將に來り辭せんとす。何ぞ命を辱くせん、と。言終わる。魏絳至り、僕人に書を授けて、僕人は、晉侯の御僕。 將伏劒。士魴・張老止之。公讀其書曰、日君乏使、使臣斯司馬。斯、此也。 【読み】 將に劒に伏さんとす。士魴・張老之を止む。公其の書を讀むに曰く、日[さき]に君使いに乏しく、臣をして斯の司馬たらしめり。斯は、此なり。 臣聞師衆以順爲武、順莫敢違。 【読み】 臣聞く、師衆は順を以て武と爲し、順は敢えて違うこと莫し。 軍事有死無犯爲敬。守官行法。雖死不敢有違。 【読み】 軍事は死すること有るも犯すこと無きを敬と爲す、と。官を守りて法を行う。死すと雖も敢えて違うこと有らず。 君合諸侯。臣敢不敬。君師不武、執事不敬、罪莫大焉。臣懼其死以及揚干、無所逃罪、懼自犯不武不敬之罪。 【読み】 君諸侯を合す。臣敢えて敬せざらんや。君の師武ならず、執事敬せざるは、罪焉より大なるは莫し。臣其の死の以て揚干に及び、罪を逃るる所無からんことを懼れて、自ら不武不敬の罪を犯さんことを懼る。 不能致訓、至於用鉞、用鉞、斬揚干之僕。 【読み】 訓えを致すこと能わずして、鉞[えつ]を用ゆるに至りしは、鉞を用ゆるは、揚干の僕を斬るなり。 臣之罪重。敢有不從以怒君心。言不敢不從戮。 【読み】 臣の罪重し。敢えて從わずして以て君の心を怒らすこと有らんや。敢えて戮に從わずんばあらざるを言う。 請歸死於司寇。致尸於司寇、使戮之。 【読み】 請う、死を司寇に歸せん、と。尸を司寇に致して、之を戮せしむ。 公跣而出曰、寡人之言、親愛也。吾子之討、軍禮也。寡人有弟、弗能敎訓、使干大命、寡人之過也。子無重寡人之過。聽絳死、爲重過。 【読み】 公跣[せん]して出でて曰く、寡人の言は、親愛なり。吾子の討は、軍禮なり。寡人弟有るも、敎訓すること能わずして、大命を干さしめしは、寡人の過ちなり。子寡人の過ちを重ぬること無かれ。絳が死を聽くは、過ちを重ぬると爲す。 敢以爲請。請使無死。 【読み】 敢えて以て請うことを爲す、と。請いて死すること無からしむ。 晉侯以魏絳爲能以刑佐民矣。反役、與之禮食、使佐新軍。羣臣旅會。今欲顯絳。故特爲設禮食。○食、音嗣。又如字。 【読み】 晉侯魏絳を以て能く刑を以て民を佐くと爲す。役より反りて、之に禮食を與えて、新軍に佐たらしむ。羣臣旅會す。今絳を顯さんと欲す。故に特に爲に禮食を設く。○食は、音嗣。又字の如し。 張老爲中軍司馬、代魏絳。 【読み】 張老を中軍司馬と爲し、魏絳に代わる。 士富爲候奄。代張老。士富、士會別族。 【読み】 士富を候奄と爲す。張老に代わる。士富は、士會の別族。 楚司馬公子何忌侵陳、陳叛故也。 【読み】 楚の司馬公子何忌陳を侵すは、陳叛く故なり。 許靈公事楚、不會于雞澤。冬、晉知武子帥師伐許。 【読み】 許の靈公楚に事えて、雞澤に會せず。冬、晉の知武子師を帥いて許を伐つ。 〔經〕四年、春、王三月、己酉、陳侯午卒。前年、大夫盟雞澤。三月無己酉。日誤。 【読み】 〔經〕四年、春、王の三月、己酉[つちのと・とり]、陳侯午卒す。前年、大夫雞澤に盟えり。三月に己酉無し。日の誤りなり。 夏、叔孫豹如晉。秋、七月、戊子、夫人姒氏薨。成公妾。襄公母。姒、杞姓。 【読み】 夏、叔孫豹晉に如く。秋、七月、戊子[つちのえ・ね]、夫人姒氏[じし]薨ず。成公の妾。襄公の母。姒は、杞の姓。 葬陳成公。無傳。 【読み】 陳の成公を葬る。傳無し。 八月、辛亥、葬我小君定姒。無傳。定、謚也。赴同祔姑、反哭成喪。皆以正夫人禮、母以子貴。踰月而葬、速。 【読み】 八月、辛亥[かのと・い]、我が小君定姒を葬る。傳無し。定は、謚なり。同に赴[つ]げ姑に祔し、反哭し喪を成す。皆正夫人の禮を以てするは、母は子を以て貴ければなり。月を踰えて葬るは、速きなり。 冬、公如晉。陳人圍頓。 【読み】 冬、公晉に如く。陳人頓を圍む。 〔傳〕四年、春、楚師爲陳叛故、猶在繁陽。前年、何忌之師侵陳。今猶未還。繁陽、楚地。在汝南鮦陽縣南。○鮦、音紂。一音童。 【読み】 〔傳〕四年、春、楚の師陳叛くが爲の故に、猶繁陽に在り。前年、何忌の師陳を侵す。今猶未だ還らず。繁陽は、楚の地。汝南鮦陽縣の南に在り。○鮦は、音紂。一に音童。 韓獻子患之。言於朝曰、文王帥殷之叛國以事紂、唯知時也。知時未可爭。 【読み】 韓獻子之を患う。朝に言いて曰く、文王殷の叛國を帥いて以て紂に事えしは、唯時を知ればなり。時の未だ爭う可からざるを知るなり。 今我易之。難哉。晉力未能服楚、受陳爲非時。 【読み】 今我れ之を易う。難いかな、と。晉の力未だ楚を服すること能わずして、陳を受くるは時に非ずと爲す。 三月、陳成公卒。楚人將伐陳。聞喪乃止。軍禮、不伐喪。 【読み】 三月、陳の成公卒す。楚人將に陳を伐たんとす。喪を聞きて乃ち止む。軍禮に、喪を伐たず、と。 陳人不聽命。不聽楚命。 【読み】 陳人命を聽かず。楚の命を聽かず。 臧武仲聞之曰、陳不服於楚、必亡。大國行禮焉而不服、在大猶有咎。而況小乎。 【読み】 臧武仲之を聞きて曰く、陳楚に服せずんば、必ず亡びん。大國禮を行いて服せずんば、大に在りても猶咎有り。而るを況んや小をや、と。 夏、楚彭名侵陳。陳無禮故也。爲下陳圍頓傳。 【読み】 夏、楚の彭名陳を侵す。陳禮無き故なり。下の陳頓を圍む爲の傳なり。 穆叔如晉、報知武子之聘也。武子聘、在元年。 【読み】 穆叔晉に如くは、知武子の聘に報ゆるなり。武子の聘は、元年に在り。 晉侯享之。金奏肆夏之三。不拜。肆夏、樂曲名。周禮、以鐘鼓奏九夏。其二曰肆夏。一名樊。三曰韶夏。一名遏。四曰納夏。一名渠。蓋擊鐘而奏此三夏曲。○夏、戶雅反。 【読み】 晉侯之を享す。肆夏の三を金奏す。拜せず。肆夏は、樂曲の名。周禮に、鐘鼓を以て九夏を奏す、と。其の二を肆夏と曰う。一名は樊。三を韶夏と曰う。一名は遏。四を納夏と曰う。一名は渠。蓋し鐘を擊ちて此の三夏曲を奏するならん。○夏は、戶雅反。 工歌文王之三。又不拜。工、樂人也。文王之三、大雅之首、文王・大明・緜。 【読み】 工文王の三を歌う。又拜せず。工は、樂人なり。文王の三は、大雅の首め、文王・大明・緜なり。 歌鹿鳴之三。三拜。小雅之首、鹿鳴・四牡・皇皇者華。 【読み】 鹿鳴の三を歌う。三たび拜す。小雅の首め、鹿鳴・四牡・皇皇者華なり。 韓獻子使行人子員問之、行人、通使之官。○員、音云。使、所吏反。 【読み】 韓獻子行人子員をして之を問わしめて、行人は、通使の官。○員は、音云。使は、所吏反。 曰、子以君命辱於敝邑。先君之禮、藉之以樂、以辱吾子。藉、薦也。○藉、在夜反。 【読み】 曰く、子君命を以て敝邑に辱くす。先君の禮、之に藉[し]くに樂を以てし、以て吾子を辱しむ。藉は、薦[し]くなり。○藉は、在夜反。 吾子舍其大而重拜其細。敢問何禮也。對曰、三夏、天子所以享元侯也。使臣弗敢與聞。元侯、牧伯。○舍、音捨。 【読み】 吾子其の大を舍てて其の細を重拜す。敢えて問う、何の禮ぞや、と。對えて曰く、三夏は、天子の元侯を享する所以なり。使臣敢えて與り聞かず。元侯は、牧伯。○舍は、音捨。 文王、兩君相見之樂也。臣不敢及。及、與也。文王之三、皆稱文王之德、受命作周。故諸侯會同以相樂。○相樂、音洛。 【読み】 文王は、兩君相見るの樂なり。臣敢えて及ばず。及は、與るなり。文王の三は、皆文王の德、命を受けて周を作すを稱す。故に諸侯會同に以て相樂しむ。○相樂は、音洛。 鹿鳴、君所以嘉寡君也。敢不拜嘉。晉以叔孫爲嘉賓。故歌鹿鳴之詩。取其我有嘉賓。叔孫奉君命而來。嘉叔孫、乃所以嘉魯君。 【読み】 鹿鳴は、君の寡君を嘉する所以なり。敢えて嘉を拜せざらんや。晉叔孫を以て嘉賓と爲す。故に鹿鳴の詩を歌う。其の我に嘉賓有りというに取る。叔孫君命を奉じて來る。叔孫を嘉するは、乃ち魯君を嘉する所以なり。 四牡、君所以勞使臣也。敢不重拜。詩言使臣乘四牡、騑騑然行不止勤勞也。晉以叔孫來聘、故以此勞之。○勞、力報反。勤勞、平聲。騑、芳非反。 【読み】 四牡は、君の使臣を勞う所以なり。敢えて重拜せざらんや。詩に使臣四牡に乘りて、騑騑然として行きて止まらずして勤勞するを言う。晉叔孫來聘するを以て、故に此を以て之を勞うなり。○勞は、力報反。勤勞は、平聲。騑は、芳非反。 皇皇者華、君敎使臣曰、必諮於周。皇皇者華、君遣使臣之詩。言忠信奉使、能光輝君命、如華之皇皇然。又當諮于忠信、以補己不及、忠信爲周。其詩曰、周爰諮諏。周爰諮謀。周爰諮度。周爰諮詢。言必於忠信之人、諮此四事。○諏、子須反。度、待洛反。下同。 【読み】 皇皇者華は、君使臣に敎えて曰く、必ず周に諮[と]え、と。皇皇者華は、君使臣を遣るの詩なり。忠信使いを奉じて、能く君命を光輝すること、華の皇皇然たるが如くなるを言う。又當に忠信に諮りて、以て己が及ばざるを補うべし、忠信を周と爲す。其の詩に曰く、周に爰に諮諏す。周に爰に諮謀す。周に爰に諮度す。周に爰に諮詢す、と。必ず忠信の人に於て、此の四事を諮うを言うなり。○諏は、子須反。度は、待洛反。下も同じ。 臣聞之、訪問於善爲咨、問善道。 【読み】 臣之を聞く、善を訪問するを咨と爲し、善道を問う。 咨親爲詢、問親戚之義。 【読み】 親を咨うを詢と爲し、親戚の義を問う。 咨禮爲度、問禮宜。 【読み】 禮を咨うを度と爲し、禮の宜を問う。 咨事爲諏、問政事。 【読み】 事を咨うを諏と爲し、政事を問う。 咨難爲謀。問患難。○難、乃旦反。 【読み】 難を咨うを謀と爲す、と。患難を問う。○難は、乃旦反。 臣獲五善。敢不重拜。五善、謂諮・詢・度・諏・謀。 【読み】 臣五善を獲たり。敢えて重拜せざらんや、と。五善は、諮・詢・度・諏・謀を謂う。 秋、定姒薨。不殯于廟、無櫬、不虞。櫬、親身棺。季孫以定姒本賤、旣無器備。議其喪制、欲殯不過廟、又不反哭。○過、古禾反。 【読み】 秋、定姒薨ず。廟に殯せず、櫬[しん]無く、虞せざらんとす。櫬は、親身の棺。季孫以えらく、定姒本賤しくして、旣に器備無し、と。其の喪制を議して、殯廟を過ぎず、又反哭せざらんことを欲す。○過は、古禾反。 匠慶謂季文子、匠慶、魯大匠。 【読み】 匠慶季文子に謂いて、匠慶は、魯の大匠。 曰、子爲正卿、而小君之喪不成、謂如季孫所議、則爲夫人禮不成。 【読み】 曰く、子正卿として、小君の喪成らざるは、季孫が議する所の如きは、則ち夫人の禮成らずとするを謂う。 不終君也。慢其母、是不終事君之道。 【読み】 君を終えざるなり。其の母を慢るは、是れ君に事うるの道を終えざるなり。 君長、誰受其咎。言襄公長、將責季孫。○長、丁丈反。 【読み】 君長ぜば、誰か其の咎を受けん、と。言うこころは、襄公長ぜば、將に季孫を責めんとす。○長は、丁丈反。 初、季孫爲己樹六檟於蒲圃東門之外。蒲圃、場圃名。季文子樹檟欲自爲櫬。 【読み】 初め、季孫己が爲に六檟[りくか]を蒲圃の東門の外に樹えしむ。蒲圃は、場圃の名。季文子檟を樹えて自ら櫬と爲さんと欲す。 匠慶請木。爲定姒作櫬。 【読み】 匠慶木を請う。定姒の爲に櫬を作る。 季孫曰、略。不以道取爲略。 【読み】 季孫曰く、略せよ、と。道を以てせずして取るを略と爲す。 匠慶用蒲圃之檟。季孫不御。御、止也。傳言遂得成禮。故經無異文。○御、魚呂反。 【読み】 匠慶蒲圃の檟を用ゆ。季孫御[とど]めず。御は、止むるなり。傳遂に禮を成すことを得るを言う。故に經に異文無し。○御は、魚呂反。 君子曰、志所謂多行無禮、必自及也、其是之謂乎。 【読み】 君子曰く、志に所謂多く無禮を行えば、必ず自ら及ぶとは、其れ是を謂うか、と。 冬、公如晉聽政。受貢賦多少之政。 【読み】 冬、公晉に如きて政を聽く。貢賦多少の政を受く。 晉侯享公。公請屬鄫。鄫、小國也。欲得使屬魯、如須句・顓臾之比、使助魯出貢賦。公時年七歲。蓋相者爲之言。鄫、今琅邪鄫縣。 【読み】 晉侯公を享す。公鄫[しょう]を屬せんことを請う。鄫は、小國なり。魯に屬せしめて、須句・顓臾の比の如く、魯を助けて貢賦を出ださしむることを得んと欲す。公時に年七歲。蓋し相者之が爲に言うならん。鄫は、今の琅邪鄫縣。 晉侯不許。孟獻子曰、以寡君之密邇於仇讎、而願固事君、無失官命。晉官徵發之命。 【読み】 晉侯許さず。孟獻子曰く、寡君の仇讎に密邇するを以て、願わくは固く君に事えて、官命を失うこと無からんことを。晉の官の徵發の命。 鄫無賦於司馬。晉司馬。又掌諸侯之賦。 【読み】 鄫は司馬に賦無し。晉の司馬。又諸侯の賦を掌る。 爲執事朝夕之命敝邑、敝邑褊小、闕而爲罪、闕、不共也。○共、音恭。 【読み】 執事朝夕に敝邑に命ずるに、敝邑褊小にして、闕けて罪と爲らんが爲に、闕は、共せざるなり。○共は、音恭。 寡君是以願借助焉。借鄫以自助。○借、子亦反。 【読み】 寡君是を以て借助せんことを願う、と。鄫を借りて以て自ら助く。○借は、子亦反。 晉侯許之。爲明年、叔孫豹・鄫世子巫如晉傳。 【読み】 晉侯之を許す。明年、叔孫豹・鄫の世子巫晉に如く爲の傳なり。 楚人使頓閒陳、而侵伐之。故陳人圍頓。閒、伺閒缺。○閒、去聲。伺、音司。閒、音閑。又去聲。 【読み】 楚人頓をして陳を閒せしめて、之を侵伐せり。故に陳人頓を圍む。閒は、閒缺を伺うなり。○閒は、去聲。伺は、音司。閒は、音閑。又去聲。 無終子嘉父使孟樂如晉、無終、山戎國名。孟樂、其使臣。 【読み】 無終子嘉父孟樂をして晉に如かしめ、無終は、山戎の國の名。孟樂は、其の使臣。 因魏莊子納虎豹之皮、以請和諸戎。欲戎與晉和。莊子、魏絳。 【読み】 魏莊子に因りて虎豹の皮を納れて、以て諸戎を和せんことを請う。戎と晉と和せんことを欲す。莊子は、魏絳。 晉侯曰、戎狄無親而貪。不如伐之。魏絳曰、諸侯新服、陳新來和。將觀於我。我德則睦、否則攜貳。勞師於戎、而楚伐陳、必弗能救。是棄陳也。諸華必叛。諸華、中國。 【読み】 晉侯曰く、戎狄は親無くして貪る。之を伐たんに如かず、と。魏絳曰く、諸侯新たに服して、陳新たに來り和す。將に我を觀んとす。我れ德あれば則ち睦び、否らざれば則ち攜貳す。師を戎に勞して、楚陳を伐たば、必ず救うこと能わじ。是れ陳を棄つるなり。諸華必ず叛かん。諸華は、中國。 戎禽獸也。獲戎失華、無乃不可乎。 【読み】 戎は禽獸なり。戎を獲て華を失わば、乃ち不可なること無からんや。 夏訓有之曰、有窮后羿。夏訓、夏書。有窮、國名。后、君也。羿、有窮君之號。 【読み】 夏訓に之れ有り曰く、有窮の后羿、と。夏訓は、夏書。有窮は、國の名。后は、君なり。羿は、有窮の君の號。 公曰、后羿何如。怪其言不次。故問之。 【読み】 公曰く、后羿とは何如、と。其の言の次あらざるを怪しむ。故に之を問う。 對曰、昔有夏之方衰也、后羿自鉏遷于窮石、因夏民以代夏政。禹孫大康淫放失國、夏人立其弟仲康。仲康亦微弱。仲康卒、子相立。羿遂代相。號曰有窮。鉏、羿本國名。 【読み】 對えて曰く、昔有夏の方に衰うるや、后羿鉏より窮石に遷り、夏の民に因りて以て夏の政に代われり。禹の孫大康淫放にして國を失い、夏人其の弟仲康を立つ。仲康亦微弱なり。仲康卒して、子の相立つ。羿遂に相に代わる。號して有窮と曰う。鉏は、羿の本國の名。 恃其射也、羿善射。 【読み】 其の射を恃めるや、羿射を善す。 不脩民事、而淫于原獸、淫放原野。 【読み】 民事を脩めずして、原獸に淫し、原野に淫放す。 棄武羅・伯因・熊髡・尨圉、四子、皆羿之賢臣。○髡、苦門反。尨、莫邦反。圉、魚呂反。 【読み】 武羅・伯因・熊髡[ゆうこん]・尨圉[ぼうぎょ]を棄てて、四子は、皆羿の賢臣。○髡は、苦門反。尨は、莫邦反。圉は、魚呂反。 而用寒浞。寒浞、伯明氏之讒子弟也。寒、國。北海平壽縣東有寒亭。伯明、其君名。○浞、仕角反。又在角反。 【読み】 寒浞[かんさく]を用ゆ。寒浞は、伯明氏の讒子弟なり。寒は、國。北海平壽縣の東に寒亭有り。伯明は、其の君の名。○浞は、仕角反。又在角反。 伯明后寒棄之、夷羿收之、夷、氏。 【読み】 伯明寒に后として之を棄てしを、夷羿之を收め、夷は、氏。 信而使之、以爲己相。浞行媚于内、内、宮人。 【読み】 信じて之を使いて、以て己が相と爲しぬ。浞媚を内に行いて、内は、宮人。 而施賂于外、愚弄其民、欺罔之。 【読み】 賂を外に施し、其の民を愚弄して、之を欺罔す。 而虞羿于田、樂之以遊田。○樂、音洛。下樂安同。 【読み】 羿を田[かり]に虞[たの]しましめ、之を樂しむるに遊田を以てす。○樂は、音洛。下の樂安同じ。 樹之詐慝、以取其國家。樹、立也。 【読み】 之が詐慝を樹てて、以て其の國家を取らんとす。樹は、立つなり。 外内咸服、信浞詐。 【読み】 外内咸服して、浞が詐りを信ず。 羿猶不悛。悛、改也。○悛、七全反。 【読み】 羿猶悛[あらた]めず。悛は、改むなり。○悛は、七全反。 將歸自田、羿獵還。 【読み】 將に田より歸らんとして、羿獵して還る。 家衆殺而亨之、以食其子。食羿子。○亨、普彭反。食、音嗣。 【読み】 家衆殺して之を亨[に]て、以て其の子に食わしむ。羿が子に食わしむ。○亨は、普彭反。食は、音嗣。 其子不忍食諸、死于窮門。殺之於國門。 【読み】 其の子諸を食うに忍びず、窮門に死す。之を國門に殺す。 靡奔有鬲氏。靡、夏遺臣、事羿者。有鬲、國名。今平原鬲縣。○鬲、音革。 【読み】 靡有鬲氏に奔る。靡は、夏の遺臣にして、羿に事うる者。有鬲は、國の名。今の平原鬲縣。○鬲は、音革。 浞因羿室、就其妃妾。 【読み】 浞羿が室に因りて、其の妃妾に就く。 生澆及豷。恃其讒慝詐僞、而不德于民。使澆用師滅斟灌及斟尋氏、二國、夏同姓諸侯。仲康之子后相所依。樂安壽光縣東南有灌亭。北海平壽縣東南有斟亭。○澆、五弔反。豷、許器反。 【読み】 澆[ぎょう]と豷[き]とを生む。其の讒慝詐僞を恃みて、民に德あらず。澆をして師を用いて斟灌と斟尋氏とを滅ぼさしめ、二國は、夏の同姓の諸侯。仲康の子后相の依る所なり。樂安壽光縣の東南に灌亭有り。北海平壽縣の東南に斟亭有り。○澆は、五弔反。豷は、許器反。 處澆于過、處豷于戈。過・戈、皆國名。東萊掖縣北有過郷。戈、在宋・鄭之閒。○過、古禾反。 【読み】 澆を過に處き、豷を戈[か]に處く。過・戈は、皆國の名。東萊掖縣の北に過郷有り。戈は、宋・鄭の閒に在り。○過は、古禾反。 靡自有鬲氏收二國之燼、燼、遺民。○燼、才刃反。 【読み】 靡有鬲氏より二國の燼を收めて、燼は、遺民。○燼は、才刃反。 以滅浞而立少康。少康、夏后相之子。 【読み】 以て浞を滅ぼして少康を立つ。少康は、夏后相の子。 少康滅澆于過、后杼滅豷于戈。后杼、少康子。○杼、直呂反。 【読み】 少康澆を過に滅ぼし、后杼[こうちょ]豷を戈に滅ぼす。后杼は、少康の子。○杼は、直呂反。 有窮由是遂亡。失人故也。浞因羿室。故不改有窮之號。 【読み】 有窮是に由りて遂に亡びたり。人を失うが故なり。浞羿の室に因る。故に有窮の號を改めず。 昔周辛甲之爲大史也、命百官官箴王闕。辛甲、周武王大史。闕、過也。使百官各爲箴辭戒王過。 【読み】 昔周の辛甲の大史爲るや、百官に命じて官ごとに王の闕けたるを箴[いまし]めしむ。辛甲は、周の武王の大史。闕は、過ちなり。百官をして各々箴辭を爲して王の過ちを戒めしむ。 於虞人之箴、虞人、掌田獵。 【読み】 虞人の箴に於ける、虞人は、田獵を掌る。 曰、芒芒禹跡、畫爲九州。芒芒、遠貌。畫、分也。 【読み】 曰く、芒芒たる禹跡、畫[わ]けて九州と爲す。芒芒は、遠き貌。畫は、分かつなり。 經啓九道、啓開九州之道。 【読み】 九道を經啓して、九州の道を啓き開く。 民有寢廟、獸有茂草、各有攸處、德用不擾。人神各有所歸。故德不亂。○處、如字。 【読み】 民に寢廟有り、獸に茂草有り、各々處る攸有りて、德用て擾[みだ]れず。人神各々歸する所有り。故に德亂れず。○處は、字の如し。 在帝夷羿、冒于原獸、冒、貪也。 【読み】 帝夷羿に在りて、原獸を冒[むさぼ]り、冒は、貪るなり。 忘其國恤、而思其麀牡。言但念獵。 【読み】 其の國恤を忘れて、其の麀牡[ゆうぼ]を思う。但獵を念うを言う。 武不可重。重、猶數也。 【読み】 武は重ぬ可からず。重は、猶數々のごとし。 用不恢于夏家。羿以好武、雖有夏家、而不能恢大之。 【読み】 用て夏家を恢[おお]いにせず。羿武を好むを以て、夏家を有つと雖も、之を恢大[かいだい]にすること能わず。 獸臣司原。敢告僕夫。獸臣、虞人。告僕夫、不敢斥尊。 【読み】 獸臣原を司れり。敢えて僕夫に告ぐ、と。獸臣は、虞人。僕夫に告ぐとは、敢えて尊を斥[さ]さざるなり。 虞箴如是。可不懲乎。 【読み】 虞の箴是の如し。懲りざる可けんや、と。 於是晉侯好田。故魏絳及之。及后羿事。 【読み】 是に於て晉侯田を好む。故に魏絳之に及べり。后羿が事に及ぶ。 公曰、然則莫如和戎乎。對曰、和戎有五利焉。戎狄荐居、貴貨易土。荐、聚也。易、猶輕也。○荐、在薦反。易、以豉反。 【読み】 公曰く、然らば則ち戎を和するに如くは莫きか、と。對えて曰く、戎を和するに五利有り。戎狄は荐居[せんきょ]して、貨を貴びて土を易[かろ]んず。荐は、聚まるなり。易は、猶輕んずるがごとし。○荐は、在薦反。易は、以豉反。 土可賈焉。一也。邊鄙不聳、民狎其野、穡人成功。二也。聳、懼。狎、習也。○賈、音古。 【読み】 土賈う可し。一なり。邊鄙聳[おそ]れず、民其の野に狎れ、穡人功を成す。二なり。聳は、懼るるなり。狎は、習るるなり。○賈は、音古。 戎狄事晉、四鄰振動、諸侯威懷。三也。以德綏戎、師徒不勤、甲兵不頓。四也。頓、壞也。 【読み】 戎狄晉に事えば、四鄰振動して、諸侯威懷せん。三なり。德を以て戎を綏んぜば、師徒勤めずして、甲兵頓[やぶ]れじ。四なり。頓は、壞るなり。 鑒于后羿、而用德度、以后羿爲鑒戒。 【読み】 后羿に鑒みて、德度を用いば、后羿を以て鑒戒と爲す。 遠至邇安。五也。君其圖之。 【読み】 遠きは至り邇きは安からん。五なり。君其れ之を圖れ、と。 公說。使魏絳盟諸戎、脩民事、田以時。傳言晉侯能用善謀。 【読み】 公說ぶ。魏絳をして諸戎に盟わしめ、民事を脩め、田するに時を以てす。傳晉侯能く善謀を用いしを言う。 冬、十月、邾人・莒人伐鄫。臧紇救鄫侵邾、敗于狐駘。臧紇、武仲也。鄫屬魯。故救之。狐駘、邾地。魯國番縣東南有目台亭。○紇、恨發反。駘、徒來反。又勑才反。 【読み】 冬、十月、邾人・莒人鄫を伐つ。臧紇[ぞうこつ]鄫を救いて邾を侵し、狐駘に敗れぬ。臧紇は、武仲なり。鄫魯に屬す。故に之を救う。狐駘は、邾の地。魯國番縣の東南に目台亭有り。○紇は、恨發反。駘は、徒來反。又勑才反。 國人逆喪者皆髽。魯於是乎始髽。髽、麻髮合結也。遭喪者多。故不能備凶服、髽而已。○髽、側瓜反。結、音計。 【読み】 國人の喪を逆うる者皆髽[さ]す。魯是に於て始めて髽す。髽は、麻髮合結するなり。喪に遭う者多し。故に凶服を備うること能わず、髽するのみ。○髽は、側瓜反。結は、音計。 國人誦之曰、臧之狐裘、敗我於狐駘。臧紇時服狐裘。 【読み】 國人之を誦して曰く、臧の狐裘する、我を狐駘に敗れしめり。臧紇時に狐裘を服す。 我君小子、朱儒是使。朱儒朱儒、使我敗於邾。襄公幼弱。故曰小子。臧紇短小。故曰朱儒。敗不書、魯人諱之。 【読み】 我が君小子、朱儒是れ使う。朱儒朱儒、我をして邾に敗れしめり、と。襄公幼弱。故に小子と曰う。臧紇短小。故に朱儒と曰う。敗れ書さざるは、魯人之を諱みてなり。 〔經〕五年、春、公至自晉。夏、鄭伯使公子發來聘。發、子產父。 【読み】 〔經〕五年、春、公晉より至る。夏、鄭伯公子發をして來聘せしむ。發は、子產の父。 叔孫豹・鄫世子巫如晉。比魯大夫。故書巫如晉。 【読み】 叔孫豹・鄫[しょう]の世子巫晉に如く。魯の大夫に比す。故に巫晉に如くと書す。 仲孫蔑・衛孫林父會吳于善道。魯・衛倶受命於晉。故不言及。吳先在善道。二大夫往會之。故曰會吳。善道、地闕。 【読み】 仲孫蔑・衛の孫林父吳に善道に會す。魯・衛倶に命を晉に受く。故に及と言わず。吳先ず善道に在り。二大夫往きて之に會す。故に吳に會すと曰う。善道は、地闕く。 秋、大雩。楚殺其大夫公子壬夫。書名、罪其貪。 【読み】 秋、大いに雩[う]す。楚其の大夫公子壬夫を殺す。名を書すは、其の貪を罪するなり。 公會晉侯・宋公・陳侯・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子・滕子・薛伯・齊世子光・吳人・鄫人于戚。穆叔使鄫人聽命于會。故鄫見經。不復殊吳者、吳來會于戚。 【読み】 公晉侯・宋公・陳侯・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]・滕子・薛伯・齊の世子光・吳人・鄫人に戚に會す。穆叔鄫人をして命を會に聽かしむ。故に鄫經に見ゆ。復吳を殊にせざるは、吳來りて戚に會すればなり。 公至自會。無傳。 【読み】 公會より至る。傳無し。 冬、戍陳。諸侯在戚會、皆受命戍陳各還國遣戍。不復有告命。故獨書魯戍。 【読み】 冬、陳を戍る。諸侯の戚の會に在る、皆陳を戍るの命を受けて各々國に還りて戍を遣る。復告命有らず。故に獨り魯の戍を書す。 楚公子貞帥師伐陳。公會晉侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・齊世子光救陳。十有二月、公至自救陳。無傳。 【読み】 楚の公子貞師を帥いて陳を伐つ。公晉侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・齊の世子光に會して陳を救う。十有二月、公陳を救いてより至る。傳無し。 辛未、季孫行父卒。 【読み】 辛未[かのと・ひつじ]、季孫行父卒す。 〔傳〕五年、春、公至自晉。公在晉、旣聽屬鄫、聞其見伐、遙命臧紇出救。故傳稱經公至以明之。 【読み】 〔傳〕五年、春、公晉より至る。公晉に在りて、旣に鄫を屬するを聽[ゆる]され、其の伐たるると聞き、遙かに臧紇に命じて出でて救わしむ。故に傳經の公至るを稱して以て之を明らかにす。 王使王叔陳生愬戎于晉。王叔、周卿士也。戎陵虣周室。故告愬於盟主。○虣、白報反。 【読み】 王王叔陳生をして戎を晉に愬[うった]えしむ。王叔は、周の卿士なり。戎周室を陵虣[りょうほう]す。故に盟主に告愬す。○虣は、白報反。 晉人執之。士魴如京師、言王叔之貳於戎也。王叔反有二心於戎、失奉使之義。故晉執之。 【読み】 晉人之を執う。士魴京師に如き、王叔の戎に貳あるを言う。王叔反って戎に二心有り、使いを奉ずるの義を失う。故に晉之を執う。 夏、鄭子國來聘、通嗣君也。鄭僖公初卽位。 【読み】 夏、鄭の子國來聘するは、嗣君を通ずるなり。鄭の僖公初めて位に卽く。 穆叔覿鄫大子于晉、以成屬鄫。覿、見也。前年、請屬鄫。故將鄫大子巫如晉以成之。○見、賢遍反。 【読み】 穆叔鄫の大子を晉に覿[まみ]えしめて、以て鄫を屬することを成す。覿[てき]は、見るなり。前年、鄫を屬するを請う。故に鄫の大子巫を將[もっ]て晉に如きて以て之を成す。○見は、賢遍反。 書曰叔孫豹・鄫大子巫如晉、言比諸魯大夫也。豹與巫倶受命於魯。故經不書及。比之魯大夫。 【読み】 書して叔孫豹・鄫の大子巫晉に如くと曰うは、諸を魯の大夫に比するを言うなり。豹と巫と倶に命を魯に受く。故に經に及と書さず。之を魯の大夫に比するなり。 吳子使壽越如晉、壽越、吳大夫。 【読み】 吳子壽越をして晉に如かしめ、壽越は、吳の大夫。 辭不會于雞澤之故、三年、會雞澤、吳不至。今來謝之。 【読み】 雞澤に會せざるの故を辭し、三年、雞澤に會するとき、吳至らず。今來りて之を謝す。 且請聽諸侯之好。更請會。 【読み】 且つ諸侯の好を聽かんと請う。更に會を請う。 晉人將爲之合諸侯、使魯・衛先會吳、且告會期。以其道遠、故使魯・衛先告期。○爲、于僞反。 【読み】 晉人將に之が爲に諸侯を合わせんとし、魯・衛をして先ず吳に會し、且つ會期を告げしむ。其の道遠きを以て、故に魯・衛をして先ず期を告げしむ。○爲は、于僞反。 故孟獻子・孫文子會吳于善道。二子皆受晉命而行。 【読み】 故に孟獻子・孫文子吳に善道に會す。二子皆晉の命を受けて行く。 秋、大雩、旱也。雩、夏祭。所以祈甘雨。若旱則又脩其禮。故雖秋雩、非書過也。然經與過雩同文。是以傳每釋之、曰旱也。雩而獲雨。故書雩、而不書旱。 【読み】 秋、大いに雩するは、旱すればなり。雩は、夏の祭。甘雨を祈る所以なり。若し旱すれば則ち又其の禮を脩む。故に秋雩すと雖も、過ぐるを書すに非ざるなり。然れども經過雩と文を同じくす。是を以て傳每に之を釋きて、旱すればなりと曰う。雩して雨を獲。故に雩を書して、旱を書さず。 楚人討陳叛故、討、治也。 【読み】 楚人陳の叛く故を討[おさ]めて、討は、治むるなり。 曰、由令尹子辛實侵欲焉。乃殺之。 【読み】 曰く、令尹子辛が實に侵欲せしに由れり、と。乃ち之を殺す。 書曰楚殺其大夫公子壬夫、貪也。 【読み】 書して楚其の大夫公子壬夫を殺すと曰うは、貪なればなり。 君子謂、楚共王於是不刑。陳之叛楚、罪在子辛。共王旣不能素明法敎、陳叛之日、又不能嚴斷威刑、以謝小國、而擁其罪人、興兵致討。加禮於陳、而陳恨彌篤。乃怨而歸罪子辛。子辛之貪、雖足以取死、然共王用刑、爲失其節。故言不刑。 【読み】 君子謂えらく、楚の共王是に於て不刑なり。陳の楚に叛くは、罪子辛に在り。共王旣に素[あらかじ]め法敎を明らかにすること能わず、陳叛くの日、又嚴斷威刑して、以て小國に謝すること能わずして、其の罪人を擁して、兵を興し討を致す。禮を陳に加うれども、而して陳の恨み彌々篤し。乃ち怨みて罪を子辛に歸す。子辛の貪、以て死を取るに足ると雖も、然れども共王刑を用ゆること、其の節を失うと爲す。故に不刑と言う。 詩曰、周道挺挺。我心扃扃。講事不令、集人來定。逸詩也。挺挺、正直也。扃扃、明察也。講、謀也。言謀事不善、當聚致賢人以定之。○扃、工逈反。 【読み】 詩に曰く、周道挺挺たり。我が心扃扃[けいけい]たり。事を講[はか]りて令[よ]からずば、人を集めて來り定めよ、と。逸詩なり。挺挺は、正直なり。扃扃は、明察なり。講は、謀るなり。事を謀りて善からずば、當に賢人を聚致して以て之を定むべきを言う。○扃は、工逈反。 己則無信、而殺人以逞。不亦難乎。共王伐宋封魚石、背盟敗于鄢陵、殺子反・公子申及壬夫。八年之中、戮殺三卿、欲以屬諸侯。故君子以爲不可。 【読み】 己則ち信無くして、人を殺して以て逞しくす。亦難からずや。共王宋を伐ちて魚石を封じ、盟に背きて鄢陵に敗れ、子反・公子申と壬夫とを殺す。八年の中、三卿を戮殺して、以て諸侯を屬せんと欲す。故に君子以て不可と爲す。 夏書曰、成允成功。亦逸書也。允、信也。言信成然後有成功。 【読み】 夏書に曰く、允を成して功を成す、と。亦逸書なり。允は、信なり。信成りて然して後に成功有るを言う。 九月、丙午、盟于戚、會吳、且命戍陳也。公及其會。而不書盟、非公後會。蓋不以盟告廟。 【読み】 九月、丙午[ひのえ・うま]、戚に盟うは、吳に會し、且陳を戍ることを命ずるなり。公其の會に及べり。而るに盟を書さざるは、公の會に後るるに非ず。蓋し盟を以て廟に告げざるならん。 穆叔以屬鄫爲不利、使鄫大夫聽命于會。鄫近魯竟。故欲以爲屬國。旣而與莒有忿、魯不能救。恐致譴責。故復乞還之。傳言鄫人所以見於戚會。○復、扶又反。見、賢遍反。 【読み】 穆叔鄫を屬するを以て不利と爲し、鄫の大夫をして命を會に聽かしむ。鄫魯の竟に近し。故に以て屬國とせんことを欲す。旣にして莒と忿り有り、魯救うこと能わず。恐れらくは譴責を致さんことを。故に復乞いて之を還す。傳鄫人の戚の會に見る所以を言う。○復は、扶又反。見は、賢遍反。 楚子囊爲令尹。公子貞。 【読み】 楚の子囊令尹と爲る。公子貞。 范宣子曰、我喪陳矣。楚人討貳、而立子囊。必改行、改子辛所行。○喪、息浪反。行、如字。又下孟反。 【読み】 范宣子曰く、我れ陳を喪わん。楚人貳を討じて、子囊を立つ。必ず行いを改めて、子辛の行う所を改む。○喪は、息浪反。行は、字の如し。又下孟反。 而疾討陳。疾、急也。 【読み】 疾く陳を討ぜん。疾は、急なり。 陳近于楚。民朝夕急、能無往乎。有陳非吾事也。無之而後可。言晉力不能及陳。故七年、陳侯逃歸。 【読み】 陳楚に近し。民朝夕に急ならば、能く往くこと無からんや。陳を有つは吾が事に非ざるなり。之れ無くして而して後に可なり、と。晉の力陳に及ぶこと能わざるを言う。故に七年、陳侯逃歸す。 冬、諸侯戍陳。備楚。 【読み】 冬、諸侯陳を戍る。楚に備う。 子囊伐陳。十一月、甲午、會于城棣以救之。公及救陳、而不及會。故不書城棣。城棣、鄭地。陳留酸棗縣西南有棣城。○棣、直計反。一戶妹反。 【読み】 子囊陳を伐つ。十一月、甲午[きのえ・うま]、城棣に會して以て之を救う。公陳を救うに及びて、會に及ばず。故に城棣を書さず。城棣は、鄭の地。陳留酸棗縣の西南に棣城有り。○棣は、直計反。一に戶妹反。 季文子卒。大夫入斂。公在位。在阼階西郷。 【読み】 季文子卒す。大夫入りて斂す。公位に在り。阼階に在りて西に郷[む]かう。 宰庀家器爲葬備。庀、具也。○庀、必婢反。 【読み】 宰家器を庀[そな]えて葬の備えを爲す。庀[ひ]は、具うるなり。○庀は、必婢反。 無衣帛之妾、無食粟之馬、無藏金玉、無重器備。器備、謂珍寶甲兵之物。○衣、於旣反。食、如字。又音嗣。重、如字。又直龍反。 【読み】 帛を衣るの妾無く、粟を食うの馬無く、藏むる金玉無く、重なる器備無し。器備は、珍寶甲兵の物を謂う。○衣は、於旣反。食は、字の如し。又音嗣。重は、字の如し。又直龍反。 君子是以知季文子之忠於公室也。相三君矣。而無私積。可不謂忠乎。○積、子賜反。 【読み】 君子是を以て季文子の公室に忠なるを知れり。三君に相たり。而るに私積[しし]無し。忠と謂わざる可けんや。○積は、子賜反。 〔經〕六年、春、王三月、壬午、杞伯姑容卒。夏、宋華弱來奔。華叔孫。 【読み】 〔經〕六年、春、王三月、壬午[みずのえ・うま]、杞伯姑容卒す。夏、宋の華弱來奔す。華叔が孫。 秋、葬杞桓公。無傳。 【読み】 秋、杞の桓公を葬る。傳無し。 滕子來朝。莒人滅鄫。冬、叔孫豹如邾。季孫宿如晉。行父之子。 【読み】 滕子來朝す。莒人鄫[しょう]を滅ぼす。冬、叔孫豹邾[ちゅ]に如く。季孫宿晉に如く。行父の子。 十有二月、齊侯滅萊。書十二月、從告。 【読み】 十有二月、齊侯萊を滅ぼす。十二月に書すは、告ぐるに從うなり。 〔傳〕六年、春、杞桓公卒。始赴以名。同盟故也。杞入春秋、未嘗書名。桓公三與成同盟。故赴以名。 【読み】 〔傳〕六年、春、杞の桓公卒す。始めて赴[つ]ぐるに名を以てす。同盟の故なり。杞春秋に入りて、未だ嘗て名を書さず。桓公三たび成と同盟す。故に赴ぐるに名を以てす。 宋華弱與樂轡少相狎、長相優、又相謗也。狎、親習也。優、調戲也。○少、詩照反。長、丁丈反。 【読み】 宋の華弱樂轡[がくひ]と少[わか]くして相狎れ、長じて相優[たわむ]れ、又相謗る。狎は、親習なり。優は、調戲なり。○少は、詩照反。長は、丁丈反。 子蕩怒。以弓梏華弱于朝。子蕩、樂轡也。張弓以貫其頸。若械之在手。故曰梏。○梏、古毒反。 【読み】 子蕩怒る。弓を以て華弱を朝に梏す。子蕩は、樂轡なり。弓を張りて以て其の頸を貫く。械の手に在るが若し。故に梏と曰う。○梏は、古毒反。 平公見之曰、司武而梏於朝、難以勝矣。司武、司馬。言其懦弱、不足以勝敵。○懦、乃亂反。又乃臥反。 【読み】 平公之を見て曰く、司武にして朝に梏せらるは、以て勝ち難し、と。司武は、司馬。其の懦弱にして、以て敵に勝つに足らざるを言う。○懦は、乃亂反。又乃臥反。 遂逐之。夏、宋華弱來奔。司城子罕曰、同罪異罰、非刑也。專戮於朝。罪孰大焉。亦逐子蕩。子蕩射子罕之門曰、幾日而不我從。言我射女門。女亦當以不勝任見逐。○射、食亦反。 【読み】 遂に之を逐う。夏、宋の華弱來奔す。司城子罕曰く、罪を同じくして罰を異にするは、刑に非ざるなり。戮を朝に專らにす。罪孰れか焉より大ならん、と。亦子蕩を逐う。子蕩子罕の門を射て曰く、幾日にして我に從わざらんや、と。言うこころは、我れ女の門を射る。女も亦當に任に勝えざるを以て逐わるべし。○射は、食亦反。 子罕善之如初。言子罕雖見辱、不追忿。所以得安。 【読み】 子罕之を善すること初めの如くす。子罕辱めらると雖も、追忿せず。安きを得る所以なるを言う。 秋、滕成公來朝、始朝公也。 【読み】 秋、滕の成公來朝するは、始めて公に朝するなり。 莒人滅鄫、鄫恃賂也。鄫有貢賦之賂在魯。恃之而慢莒。故滅之。 【読み】 莒人鄫を滅ぼすは、鄫賂を恃めばなり。鄫貢賦の賂の魯に在る有り。之を恃みて莒を慢る。故に之を滅ぼす。 冬、穆叔如邾聘。且脩平。平四年、狐駘戰。 【読み】 冬、穆叔邾に如きて聘す。且つ平らぎを脩む。四年、狐駘の戰を平らぐ。 晉人以鄫故來討曰、何故亡鄫。鄫屬魯、恃賂而慢莒。魯不致力輔助、無何以還晉。尋便見滅。故晉責魯。 【読み】 晉人鄫の故を以て來り討じて曰く、何の故に鄫を亡ぼせる、と。鄫魯に屬して、賂を恃みて莒を慢る。魯力を致して輔助せず、何くも無くして以て晉に還す。尋[つい]で便ち滅ぼさる。故に晉魯を責む。 季武子如晉見、且聽命。始代父爲卿、見大國、且謝亡鄫。聽命、受罪。 【読み】 季武子晉に如きて見え、且つ命を聽けり。始めて父に代わりて卿と爲り、大國に見え、且つ鄫を亡ぼすを謝す。命を聽くは、罪を受くるなり。 十一月、齊侯滅萊、萊恃謀也。賂夙沙衛之謀也。事在二年。 【読み】 十一月、齊侯萊を滅ぼすは、萊謀を恃めばなり。夙沙衛に賂うの謀なり。事は二年に在り。 於鄭子國之來聘也四月、晏弱城東陽、而遂圍萊。子國聘在五年。二年、晏弱城東陽。至五年四月、復託治城、因遂圍萊。 【読み】 鄭の子國の來聘するの四月に於て、晏弱東陽に城きて、遂に萊を圍む。子國が聘は五年に在り。二年、晏弱東陽に城く。五年四月に至りて、復城を治むるに託して、因りて遂に萊を圍む。 甲寅、堙之、環城傅於堞。堞、女墻也。堙、土山也。周城爲土山、及女墻。○環、戶關反。又音患。傅、音附。 【読み】 甲寅[きのえ・とら]、之に堙[いん]して、城を環らして堞[ちょう]に傅[つ]く。堞は、女墻なり。堙は、土山なり。城を周らして土山を爲り、女墻に及ぶ。○環は、戶關反。又音患。傅は、音附。 及杞桓公卒之月、此年三月。 【読み】 杞の桓公の卒する月の、此の年の三月。 乙未、王湫帥師及正輿子・棠人軍齊師。王湫、故齊人。成十八年、奔萊。正輿子、萊大夫。棠、萊邑也。北海卽墨縣有棠郷。三人帥別邑兵來解圍。○湫、子小反。 【読み】 乙未[きのと・ひつじ]に及びて、王湫[おうしょう]師を帥いて正輿子・棠人[とうひと]と齊の師に軍す。王湫は、故[もと]齊人。成十八年、萊に奔る。正輿子は、萊の大夫。棠は、萊の邑なり。北海卽墨縣に棠郷有り。三人別邑の兵を帥いて來りて圍を解く。○湫は、子小反。 齊師大敗之。敗湫等。 【読み】 齊の師大いに之を敗る。湫等を敗る。 丁未、入萊。萊共公浮柔奔棠。正輿子・王湫奔莒。莒人殺之。四月、陳無宇獻萊宗器于襄宮。無宇、桓子。陳完玄孫。襄宮、齊襄公廟。 【読み】 丁未[ひのと・ひつじ]、萊に入る。萊の共公浮柔棠に奔る。正輿子・王湫莒に奔る。莒人之を殺す。四月、陳無宇萊の宗器を襄宮に獻ず。無宇は、桓子。陳完の玄孫。襄宮は、齊の襄公の廟。 晏弱圍棠。十一月、丙辰、而滅之、遷萊于郳。遷萊子于郳國。○郳、五兮反。 【読み】 晏弱棠を圍む。十一月、丙辰[ひのえ・たつ]に、之を滅ぼし、萊を郳[げい]に遷す。萊子を郳國に遷す。○郳は、五兮反。 高厚・崔杼定其田。定其疆界。高厚、高固子。 【読み】 高厚・崔杼其の田を定めり。其の疆界を定む。高厚は、高固の子。 〔經〕七年、春、郯子來朝。夏、四月、三卜郊。不從。乃免牲。稱牲、旣卜日也。卜郊、又非禮也。 【読み】 〔經〕七年、春、郯子[たんし]來朝す。夏、四月、三たび郊を卜す。從わず。乃ち牲を免[はな]つ。牲と稱するは、旣に日を卜するなり。郊を卜するは、又禮に非ざるなり。 小邾子來朝。城費。南遺假事難而城之。○費、音祕。難、乃旦反。 【読み】 小邾子[しょうちゅし]來朝す。費に城く。南遺事難を假りて之に城く。○費は、音祕。難は、乃旦反。 秋、季孫宿如衛。八月、螽。無傳。爲災。故書。 【読み】 秋、季孫宿衛に如く。八月、螽[しゅう]あり。傳無し。災を爲す。故に書す。 冬、十月、衛侯使孫林父來聘。壬戌、及孫林父盟。楚公子貞帥師圍陳。十有二月、公會晉侯・宋公・陳侯・衛侯・曹伯・莒子・邾子于鄬。謀救陳。陳侯逃歸不成救。故不書救也。鄬、鄭地。○鄬、于軌反。 【読み】 冬、十月、衛侯孫林父をして來聘せしむ。壬戌[みずのえ・いぬ]、孫林父と盟う。楚の公子貞師を帥いて陳を圍む。十有二月、公晉侯・宋公・陳侯・衛侯・曹伯・莒子・邾子に鄬[い]に會す。陳を救わんことを謀るなり。陳侯逃歸して救を成さず。故に救を書さざるなり。鄬は、鄭の地。○鄬は、于軌反。 鄭伯髡頑如會。未見諸侯。丙戌、卒于鄵。實爲子駟所弑。以瘧疾赴。故不書弑。稱名、爲書卒同盟故也。如會、會於鄬也。未見諸侯、未至會所而死。鄵、鄭地。不欲再稱鄭伯。故約文上其名於會上。○鄵、七報反。又采南反。爲、于僞反。 【読み】 鄭伯髡頑[こんがん]會に如く。未だ諸侯を見ず。丙戌[ひのえ・いぬ]、鄵[そう]に卒す。實は子駟の爲に弑せらるるなり。瘧疾を以て赴[つ]ぐ。故に弑を書さず。名を稱するは、卒を書すと同盟との爲の故なり。會に如くは、鄬に會するなり。未だ諸侯を見ざるとは、未だ會所に至らずして死するなり。鄵は、鄭の地。再び鄭伯と稱することを欲せず。故に文を約して其の名を會の上に上ぐるなり。○鄵は、七報反。又采南反。爲は、于僞反。 陳侯逃歸。畏楚逃晉而歸。 【読み】 陳侯逃げ歸る。楚を畏れ晉を逃れて歸る。 〔傳〕七年、春、郯子來朝、始朝公也。 【読み】 〔傳〕七年、春、郯子來朝するは、始めて公に朝するなり。 夏、四月、三卜郊。不從。乃免牲。 【読み】 夏、四月、三たび郊を卜す。從わず。乃ち牲を免つ。 孟獻子曰、吾乃今而後知有卜筮。夫郊祀后稷、以祈農事也。郊祀后稷以配天。后稷、周始祖。能播殖者。 【読み】 孟獻子曰く、吾れ乃ち今にして後に卜筮有ることを知れり。夫れ后稷を郊祀するは、以て農事を祈るなり。后稷を郊祀して以て天に配す。后稷は、周の始祖。能く播殖する者。 是故啓蟄而郊、郊而後耕。今旣耕而卜郊。宜其不從也。啓蟄、夏正建寅之月。耕、謂春分。○蟄、直立反。 【読み】 是の故に啓蟄にして郊し、郊して後に耕すなり。今旣に耕して郊を卜す。宜なり其の從わざることや、と。啓蟄は、夏正建寅の月。耕は、春分を謂う。○蟄は、直立反。 南遺爲費宰、費、季氏邑。 【読み】 南遺費の宰と爲り、費は、季氏の邑。 叔仲昭伯爲隧正。隧正、主役徒。昭伯、叔仲惠伯之孫。 【読み】 叔仲昭伯隧正と爲る。隧正は、役徒を主る。昭伯は、叔仲惠伯の孫。 欲善季氏、而求媚於南遺。謂遺請城費。使遺請城。 【読み】 季氏に善からんことを欲して、媚を南遺に求めんとす。遺に謂えらく、請うて費に城け。遺をして城くことを請わしむ。 吾多與而役。故季氏城費。傳言祿去公室、季氏所以强。 【読み】 吾れ多く而[なんじ]に役を與えん、と。故に季氏費に城く。傳祿公室を去りて、季氏强き所以を言う。 小邾穆公來朝、亦始朝公也。亦郯子也。 【読み】 小邾の穆公來朝するは、亦始めて公に朝するなり。郯子に亦とするなり。 秋、季武子如衛、報子叔之聘、且辭緩報非貳也。子叔聘在元年。言國家多難、故不時報。 【読み】 秋、季武子衛に如くは、子叔の聘に報いて、且緩[おそ]く報ゆるの貳に非ざるを辭するなり。子叔の聘は元年に在り。國家多難、故に時に報ぜざるを言う。 冬、十月、晉韓獻子告老。公族穆子有廢疾。穆子、韓厥長子。成十八年、爲公族大夫。 【読み】 冬、十月、晉の韓獻子老を告ぐ。公族穆子廢疾有り。穆子は、韓厥の長子。成十八年、公族大夫と爲る。 將立之。代厥爲卿。 【読み】 將に之を立てんとす。厥に代わりて卿と爲す。 辭曰、詩曰、豈不夙夜。謂行多露。詩言雖欲早夜而行、懼多露之濡己。義取非禮不可妄行。 【読み】 辭して曰く、詩に曰く、豈夙夜にせざらんや。行[みち]の露多きを謂[おも]いてなり、と。詩に早夜にして行かんことを欲すと雖も、多露の己を濡らさんことを懼るるを言う。義禮に非ざれば妄りに行う可からざるに取る。 又曰、弗躬弗親、庶民弗信。詩小雅。言譏在位者、不躬親政事、則庶民不奉信其命。言己有疾、不能躬親政事。 【読み】 又曰く、躬[みずか]らせず親[みずか]らせざれば、庶民信ぜず、と。詩は小雅。在位の者、政事を躬親せざれば、則ち庶民其の命を奉信せざるを譏るを言う。己疾有りて、政事を躬親すること能わざるを言うなり。 無忌不才。讓其可乎。請立起也。無忌、穆子名。起、無忌弟、宣子也。 【読み】 無忌不才なり。讓らんこと其れ可ならんや。請う、起を立てよ。無忌は、穆子の名。起は、無忌の弟、宣子なり。 與田蘇游。而曰好仁。田蘇、晉賢人。蘇言起好仁。 【読み】 田蘇と游ぶ。而して仁を好むと曰う。田蘇は、晉の賢人。蘇起仁を好むと言う。 詩曰、靖共爾位、好是正直。神之聽之、介爾景福。靖、安也。介、助也。景、大也。詩、小雅。言君子當思不出其位、求正直之人、與之竝立。如是則神明順之、致大福也。 【読み】 詩に曰く、爾の位を靖共して、是の正直を好せよ。神の之を聽きて、爾の景福を介[たす]けん、と。靖は、安んずるなり。介は、助くなり。景は、大いなり。詩は、小雅。君子當に思うこと其の位を出でず、正直の人を求めて、之と竝び立つべし。是の如くなれば則ち神明之に順いて、大福を致すを言う。 恤民爲德、靖共其位、所以恤民。 【読み】 民を恤うるを德と爲し、其の位を靖共するは、民を恤うる所以なり。 正直爲正、正己心。 【読み】 正直にするを正と爲し、己が心を正しくす。 正曲爲直、正人曲。 【読み】 曲を正すを直と爲し、人の曲を正す。 參和爲仁。德・正・直、三者備、乃爲仁。○參、七南反。或音三。 【読み】 參ながら和するを仁と爲す。德・正・直、三つの者備わるを、乃ち仁と爲す。○參は、七南反。或は音三。 如是則神聽之、介福降之。立之、不亦可乎。言起有此三德。故可立。 【読み】 是の如くなれば則ち神之を聽きて、福を介けて之に降す。之を立てんこと、亦可ならずや、と。言うこころは、起此の三德有り。故に立つ可し。 庚戌、使宣子朝。遂老。韓厥致仕。 【読み】 庚戌[かのえ・いぬ]、宣子をして朝せしむ。遂に老す。韓厥仕を致す。 晉侯謂韓無忌仁。使掌公族大夫。爲之師長。 【読み】 晉侯韓無忌を謂えらく、仁なり、と。公族大夫を掌らしむ。之が師長と爲す。 衛孫文子來聘、且拜武子之言、緩報非貳之言。 【読み】 衛の孫文子來聘し、且武子の言を拜して、緩く報ゆるの貳に非ざるの言。 而尋孫桓子之盟。盟在成三年。 【読み】 孫桓子の盟を尋[かさ]ぬ。盟は成三年に在り。 公登亦登。禮、登階、臣後君一等。 【読み】 公登れば亦登る。禮に、階を登るは、臣君に後るること一等、と。 叔孫穆子相。趨進曰、諸侯之會、寡君未嘗後衛君。敵體竝登。 【読み】 叔孫穆子相[たす]く。趨り進みて曰く、諸侯の會に、寡君未だ嘗て衛君に後れず。敵體は竝び登る。 今吾子不後寡君。寡君未知所過。吾子其少安。安、徐也。 【読み】 今吾子寡君に後れず。寡君未だ過つ所を知らず。吾子其れ少しく安[しず]かにせよ、と。安は、徐[しず]かなり。 孫子無辭、亦無悛容。悛、改也。 【読み】 孫子辭無く、亦悛[あらた]むる容無し。悛は、改むるなり。 穆叔曰、孫子必亡。爲臣而君、過而不悛。亡之本也。詩曰、退食自公。委蛇委蛇。委蛇、順貌。詩、召南。言人臣自公門入私門、無不順禮。 【読み】 穆叔曰く、孫子は必ず亡びん。臣として君をし、過ちて悛めず。亡ぶるの本なり。詩に曰く、公より退食す。委蛇[いい]たり委蛇たり、と。委蛇は、順う貌。詩は、召南。人臣公門より私門に入るまで、禮に順わざること無きを言う。 謂從者也。從、順行。 【読み】 從う者を謂うなり。從は、順行。 衡而委蛇必折。衡、橫也。橫不順道、必毀折。爲十四年、林父逐君起本。 【読み】 衡にして委蛇とすれば必ず折れぬ。衡は、橫なり。橫たわりて道に順わざれば、必ず毀折す。十四年、林父君を逐う爲の起本なり。 楚子囊圍陳。會于鄬以救之。晉會諸侯。 【読み】 楚の子囊陳を圍む。鄬に會して以て之を救う。晉諸侯を會す。 鄭僖公之爲大子也、於成之十六年、魯成公。 【読み】 鄭の僖公の大子爲るや、成の十六年に於て、魯の成公。 與子罕適晉。不禮焉。又與子豐適楚。亦不禮焉。子豐、穆公子。 【読み】 子罕と晉に適く。禮せず。又子豐と楚に適く。亦禮せず。子豐は、穆公の子。 及其元年、朝于晉、鄭僖元年。魯襄三年。 【読み】 其の元年、晉に朝するに及びて、鄭の僖元年。魯の襄三年。 子豐欲愬諸晉而廢之。子罕止之。 【読み】 子豐諸を晉に愬[うった]えて之を廢せんことを欲す。子罕之を止む。 及將會于鄬、子駟相。又不禮焉。侍者諫。不聽。又諫。殺之。及鄵。子駟使賊夜弑僖公、而以瘧疾赴于諸侯。傳言經所以不書弑。 【読み】 將に鄬に會せんとするに及びて、子駟相く。又禮せず。侍者諫む。聽かず。又諫む。之を殺す。鄵に及ぶ。子駟賊をして夜僖公を弑せしめて、瘧疾を以て諸侯に赴[つ]ぐ。傳經に弑を書さざる所以を言う。 簡公生五年。奉而立之。僖公子。 【読み】 簡公生まれて五年なり。奉じて之を立つ。僖公の子。 陳人患楚。楚圍陳故。 【読み】 陳人楚を患う。楚陳を圍む故なり。 慶虎・慶寅謂楚人曰、吾使公子黃往。而執之。二慶、陳執政大夫。黃、哀公弟。 【読み】 慶虎・慶寅楚人に謂いて曰く、吾れ公子黃をして往かしめん。而[なんじ]之を執えよ、と。二慶は、陳の執政の大夫。黃は、哀公の弟。 楚人從之。爲執黃。 【読み】 楚人之に從う。爲に黃を執う。 二慶使告陳侯于會、鄬之會。 【読み】 二慶陳侯に會に告げしめて、鄬の會。 曰、楚人執公子黃矣。君若不來、羣臣不忍社稷宗廟。懼有二圖。背君屬楚。 【読み】 曰く、楚人公子黃を執えたり。君若し來らずんば、羣臣社稷宗廟に忍びず。懼らくは二圖有らん、と。君に背きて楚に屬す。 陳侯逃歸。鄬會所以不書救。 【読み】 陳侯逃げ歸る。鄬の會に救を書さざる所以なり。 〔經〕八年、春、王正月、公如晉。夏、葬鄭僖公。無傳。 【読み】 〔經〕八年、春、王の正月、公晉に如く。夏、鄭の僖公を葬る。傳無し。 鄭人侵蔡。獲蔡公子燮。鄭子國稱人、刺其無故侵蔡、以生國患。燮、蔡莊公子。 【読み】 鄭人蔡を侵す。蔡の公子燮[しょう]を獲たり。鄭の子國人と稱するは、其の故無くして蔡を侵して、以て國患を生ずるを刺[そし]るなり。燮は、蔡の莊公の子。 季孫宿會晉侯・鄭伯・齊人・宋人・衛人・邾人于邢丘。時公在晉。晉悼難勞諸侯、唯使大夫聽命。故季孫在會、而公先歸。○難、乃旦反。 【読み】 季孫宿晉侯・鄭伯・齊人・宋人・衛人・邾人[ちゅひと]に邢丘に會す。時に公晉に在り。晉悼諸侯を勞することを難[はばか]り、唯大夫をして命を聽かしむ。故に季孫會に在りて、公先ず歸る。○難は、乃旦反。 公至自晉。無傳。 【読み】 公晉より至る。傳無し。 莒人伐我東鄙。秋、九月、大雩。冬、楚公子貞帥師伐鄭。晉侯使士匃來聘。 【読み】 莒人我が東鄙を伐つ。秋、九月、大いに雩[う]す。冬、楚の公子貞師を帥いて鄭を伐つ。晉侯士匃[しかい]をして來聘せしむ。 〔傳〕八年、春、公如晉、朝、且聽朝聘之數。晉悼復脩霸業。故朝而稟其多少。○復、扶又反。 【読み】 〔傳〕八年、春、公晉に如くは、朝して、且朝聘の數を聽くなり。晉悼復霸業を脩む。故に朝して其の多少を稟く。○復は、扶又反。 鄭羣公子以僖公之死也、謀子駟。子駟先之。夏、四月、庚辰、辟殺子狐・子煕・子侯・子丁。辟、罪也。加罪以戮之。○先、悉薦反。辟、婢亦反。 【読み】 鄭の羣公子僖公の死するを以てや、子駟を謀る。子駟之に先だつ。夏、四月、庚辰[かのえ・たつ]、辟[つみ]して子狐・子煕・子侯・子丁を殺す。辟は、罪なり。罪を加えて以て之を戮す。○先は、悉薦反。辟は、婢亦反。 孫擊・孫惡出奔衛。二孫、子狐之子。 【読み】 孫擊・孫惡出でて衛に奔る。二孫は、子狐の子。 庚寅、鄭子國・子耳侵蔡、獲蔡司馬公子燮。鄭侵蔡、欲以求媚於晉。子耳、子良之子。不言敗、唯以獲告。 【読み】 庚寅[かのえ・とら]、鄭の子國・子耳蔡を侵して、蔡の司馬公子燮を獲たり。鄭蔡を侵して、以て媚を晉に求めんと欲す。子耳は、子良の子。敗るを言わざるは、唯獲るを以て告ぐればなり。 鄭人皆喜。唯子產不順。子產、子國子。不順衆而喜。 【読み】 鄭人皆喜ぶ。唯子產のみ順わず。子產は、子國の子。衆に順いて喜ばず。 曰、小國無文德而有武功。禍莫大焉。楚人來討、能勿從乎。從之、晉師必至。晉・楚伐鄭。自今鄭國不四五年、弗得寧矣。子國怒之、曰、爾何知。國有大命、而有正卿。童子言焉、將爲戮矣。大命、起師行軍之命。 【読み】 曰く、小國文德無くして武功有り。禍焉より大なるは莫し。楚人來り討ぜば、能く從うこと勿からんや。之に從わば、晉の師必ず至らん。晉・楚鄭を伐たん。今より鄭國四五年ならずば、寧きを得じ、と。子國之を怒りて、曰く、爾何をか知らん。國に大命有れば、正卿有り。童子言う、將に戮せられんとす、と。大命は、師を起こし軍を行うの命。 五月、甲辰、會于邢丘、以命朝聘之數、使諸侯之大夫聽命。季孫宿・齊高厚・宋向戌・衛甯殖・邾大夫會之。晉難重煩諸侯。故使大夫聽命。 【読み】 五月、甲辰[きのえ・たつ]、邢丘に會して、以て朝聘の數を命じ、諸侯の大夫をして命を聽かしむ。季孫宿・齊の高厚・宋の向戌[しょうじゅつ]・衛の甯殖・邾の大夫之に會す。晉重ねて諸侯を煩わすことを難る。故に大夫をして命を聽かしむ。 鄭伯獻捷于會。故親聽命。獻蔡捷也。 【読み】 鄭伯捷を會に獻ず。故に親ら命を聽く。蔡の捷を獻ずるなり。 大夫不書、尊晉侯也。晉悼復文・襄之業、制朝聘之節。儉而有禮、德義可尊。故退諸侯大夫以崇之。 【読み】 大夫書さざるは、晉侯を尊びてなり。晉悼文・襄の業を復し、朝聘の節を制す。儉にして禮有り、德義尊ぶ可し。故に諸侯の大夫を退けて以て之を崇ぶ。 莒人伐我東鄙、以疆鄫田。莒旣滅鄫。魯侵其西界。故伐魯東鄙、以正其封疆。 【読み】 莒人我が東鄙を伐つは、以て鄫[しょう]の田を疆うなり。莒旣に鄫を滅ぼす。魯其の西界を侵す。故に魯の東鄙を伐ちて、以て其の封疆を正す。 秋、九月、大雩、旱也。 【読み】 秋、九月、大雩するは、旱すればなり。 冬、楚子囊伐鄭、討其侵蔡也。 【読み】 冬、楚の子囊鄭を伐つは、其の蔡を侵すを討ずるなり。 子駟・子國・子耳欲從楚。子孔・子蟜・子展欲待晉。待晉來救。子孔、穆公子。子蟜、子游子。子展、子罕子。○蟜、居表反。 【読み】 子駟・子國・子耳楚に從わんと欲す。子孔・子蟜[しきょう]・子展晉を待たんと欲す。晉の來り救うを待つなり。子孔は、穆公の子。子蟜は、子游の子。子展は、子罕の子。○蟜は、居表反。 子駟曰、周詩有之曰、俟河之淸、人壽幾何。逸詩也。言人壽促、而河淸遲。喩晉之不可待。 【読み】 子駟曰く、周詩に之れ有り曰く、河の淸[す]めるを俟[ま]たんも、人壽幾何[いくばく]ぞ。逸詩なり。言うこころは、人壽促[すみ]やかにして、河の淸むは遲し。晉の待つ可からざるに喩う。 兆云詢多、職競作羅。兆、卜。詢、謀也。職、主也。言旣卜且謀多、則競作羅網之難、無成功。○難、乃旦反。 【読み】 兆して云[ここ]に詢[はか]ること多ければ、職として競いて羅[あみ]を作す、と。兆は、卜。詢は、謀るなり。職は、主なり。旣に卜して且謀ること多ければ、則ち競いて羅網の難を作して、成功無きを言う。○難は、乃旦反。 謀之多族、民之多違、族、家也。 【読み】 謀の族多ければ、民の違うこと多くして、族は、家なり。 事滋無成。滋、益也。 【読み】 事滋々成ること無し。滋は、益々なり。 民急矣。姑從楚以紓吾民。晉師至、吾又從之。敬共幣帛以待來者、小國之道也。 【読み】 民は急なり。姑く楚に從いて以て吾が民を紓[ゆる]べん。晉の師至らば、吾れ又之に從わん。敬みて幣帛を共[そな]えて以て來者を待つは、小國の道なり。 犧牲玉帛待於二竟、二竟、晉・楚界上。 【読み】 犧牲玉帛二竟に待ち、二竟は、晉・楚の界上。 以待彊者而庇民焉。寇不爲害、民不罷病、不亦可乎。 【読み】 以て彊き者を待ちて民を庇わん。寇害を爲さず、民罷病せずんば、亦可ならずや、と。 子展曰、小所以事大、信也。小國無信、兵亂日至、亡無日矣。 【読み】 子展曰く、小の大に事うる所以は、信なり。小國信無ければ、兵亂日に至り、亡ぶること日無けん。 五會之信、謂三年、會雞澤、五年、會戚、又會城棣、七年、會鄬、八年、會邢丘。 【読み】 五會の信、三年、雞澤に會し、五年、戚に會し、又城棣に會し、七年、鄬[い]に會し、八年、邢丘に會するを謂う。 今將背之。雖楚救我、將安用之。言失信得楚、不足貴。 【読み】 今將に之に背かんとす。楚我を救うと雖も、將に安くに之を用いんとする。信を失いて楚を得るは、貴ぶに足らざるを言う。 親我無成、晉親鄭。 【読み】 我を親しむは成[たい]らぐこと無く、晉鄭を親しむ。 鄙我是欲。楚欲以鄭爲鄙邑。而反欲與成。 【読み】 我を鄙にするを是れ欲す。楚鄭を以て鄙邑とせんと欲す。而るを反って與に成らがんと欲す。 不可從也。言子駟不可從。 【読み】 從う可からざるなり。子駟に從う可からざるを言う。 不如待晉。晉君方明、四軍無闕、八卿和睦。必不棄鄭。四軍、謂上中下新軍也。軍有二卿。 【読み】 晉を待つに如かず。晉君方に明らかにして、四軍闕けたること無く、八卿和睦す。必ず鄭を棄てじ。四軍は、上中下新軍を謂うなり。軍ごとに二卿有り。 楚師遼遠。糧食將盡。必將速歸。何患焉。 【読み】 楚の師遼遠なり。糧食將に盡きんとす。必ず將に速やかに歸らんとす。何ぞ患えん。 舍之聞之、舍之、子展名。 【読み】 舍之之を聞く、舍之は、子展の名。 杖莫如信。完守以老楚、杖信以待晉、不亦可乎。 【読み】 杖[よ]るは信に如くは莫し、と。守りを完くして以て楚を老[つか]らし、信に杖りて以て晉を待たんこと、亦可ならずや、と。 子駟曰、詩云、謀夫孔多。是用不集。詩、小雅。孔、甚也。集、就也。言人欲爲政、是非相亂而不成。○守、手又反。或如字。下守官同。 【読み】 子駟曰く、詩に云う、謀夫孔[はなは]だ多し。是を用て集[な]らず。詩は、小雅。孔は、甚だなり。集は、就なるなり。人政をせんと欲すれども、是非相亂れて成らざるを言う。○守は、手又反。或は字の如し。下の守官も同じ。 發言盈庭。誰敢執其咎。言謀者多、若有不善無適受其咎。○適、丁歷反。 【読み】 言を發して庭に盈つ。誰か敢えて其の咎を執らん。言うこころは、謀者多ければ、若し不善有るとも適として其の咎を受くること無し。○適は、丁歷反。 如匪行邁謀。是用不得于道。匪、彼也。行邁謀、謀於路人也。不得于道、衆無適從。 【読み】 匪[か]の行邁して謀るが如し。是を用て道に得ず、と。匪は、彼なり。行邁して謀るとは、路人に謀るなり。道に得ずとは、衆くして適從無きなり。 請從楚。騑也受其咎。騑、子駟名。○騑、芳非反。 【読み】 請う、楚に從わん。騑や其の咎を受けん、と。騑は、子駟の名。○騑は、芳非反。 乃及楚平。 【読み】 乃ち楚と平らぐ。 使王子伯騈告于晉。伯騈、鄭大夫。 【読み】 王子伯騈[はくへん]をして晉に告げしむ。伯騈は、鄭の大夫。 曰、君命敝邑、脩而車賦、儆而師徒、以討亂略。蔡人不從、敝邑之人、不敢寧處。悉索敝賦、索、盡也。○索、悉名反。又所百反。 【読み】 曰く、君敝邑に命ずらく、而[なんじ]の車賦を脩め、而の師徒を儆[いまし]めて、以て亂略を討ぜよ、と。蔡人從わざりしかば、敝邑の人、敢えて寧處せず。悉く敝賦を索[つ]くして、索は、盡くすなり。○索は、悉名反。又所百反。 以討于蔡、獲司馬燮、獻于邢丘、今楚來討曰、女何故稱兵于蔡。稱、舉也。 【読み】 以て蔡を討じて、司馬燮を獲て、邢丘に獻ぜしを、今楚來り討じて曰く、女何の故に兵を蔡に稱[あ]げたる、と。稱は、舉ぐるなり。 焚我郊保、郭外曰郊。保、守也。 【読み】 我が郊保を焚き、郭外を郊と曰う。保は、守なり。 馮陵我城郭、馮、迫也。○馮、皮冰反。 【読み】 我が城郭を馮陵すれば、馮は、迫るなり。○馮は、皮冰反。 敝邑之衆、夫婦男女、不皇啓處、以相救也、皇、暇也。啓、跪なり。 【読み】 敝邑の衆、夫婦男女、啓處するに皇[いとま]あらずして、以て相救うも、皇は、暇なり。啓は、跪くなり。 翦焉傾覆、無所控告。翦、盡也。控、引也。 【読み】 翦[ことごと]く焉に傾覆して、控告する所無し。翦は、盡くなり。控は、引くなり。 民死亡者、非其父兄、卽其子弟。夫人愁痛、夫人、猶人人也。○夫、音扶。 【読み】 民の死亡する者、其の父兄に非ざれば、卽ち其の子弟なり。夫人[ひとびと]愁痛して、夫人は、猶人人のごとし。○夫は、音扶。 不知所庇。民知窮困、而受盟于楚。孤也與其二三臣、不能禁止。孤、鄭伯。 【読み】 庇われん所を知らず。民窮困するを知りて、盟を楚に受けたり。孤や其の二三臣と、禁止すること能わず。孤は、鄭伯。 不敢不告。 【読み】 敢えて告げずんばあらず、と。 知武子使行人子員對之曰、君有楚命、見討之命。 【読み】 知武子行人子員をして之に對えしめて曰く、君楚の命有るも、討たるるの命。 亦不使一介行李告于寡君、一介、獨使也。行李、行人也。○介、古賀反。獨使、所吏反。 【読み】 亦一介の行李をして寡君に告げしめずして、一介は、獨使なり。行李は、行人なり。○介は、古賀反。獨使は、所吏反。 而卽安于楚。君之所欲也。誰敢違君。寡君將帥諸侯以見于城下。唯君圖之。爲明年、晉伐鄭傳。 【読み】 安きに楚に卽く。君の欲する所のままなり。誰か敢えて君に違わん。寡君將に諸侯を帥いて以て城下に見えんとす。唯君之を圖れ、と。明年、晉鄭を伐つ爲の傳なり。 晉范宣子來聘、且拜公之辱、謝公此春朝。 【読み】 晉の范宣子來聘し、且つ公の辱きを拜し、公此の春朝するを謝す。 告將用師于鄭。 【読み】 將に師を鄭に用いんとするを告ぐ。 公享之。宣子賦摽有梅。摽有梅、詩召南。摽、落也。梅盛極則落。詩人以興女色盛則有衰、衆士求之、宜及其時。宣子欲魯及時共討鄭。取其汲汲相赴。 【読み】 公之を享す。宣子摽有梅[ひょうゆうばい]を賦す。摽有梅は、詩の召南。摽は、落つるなり。梅盛り極わまれば則ち落つる。詩人以て女色盛んなれば則ち衰うること有り、衆士の之を求むる、宜しく其の時に及ぶべきに興す。宣子魯の時に及びて共に鄭を討ぜんことを欲す。其の汲汲として相赴[つ]ぐるに取る。 季武子曰、誰敢哉。言誰敢不從命。 【読み】 季武子曰く、誰か敢えてせんや。言うこころは、誰か敢えて命に從わざらんや。 今譬於草木、寡君在君、君之臭味也。言同類。 【読み】 今草木に譬うれば、寡君の君に在るは、君の臭味なり。同類を言う。 歡以承命。何時之有。遲速無時。 【読み】 歡びて以て命を承けん。何の時か之れ有らん、と。遲速時無し。 武子賦角弓。角弓、詩小雅。取其兄弟婚姻、無相遠矣。 【読み】 武子角弓を賦す。角弓は、詩の小雅。其の兄弟婚姻、相遠ざかること無きに取るなり。 賓將出。武子賦彤弓。彤弓、天子賜有功諸侯之詩。欲使晉君繼文之業、復受彤弓於王。 【読み】 賓將に出でんとす。武子彤弓[とうきゅう]を賦す。彤弓は、天子有功の諸侯に賜うの詩なり。晉君をして文の業を繼いで、復彤弓を王に受けしめんことを欲す。 宣子曰、城濮之役、在僖二十八年。 【読み】 宣子曰く、城濮の役に、僖二十八年に在り。 我先君文公獻功于衡雍、受彤弓于襄王、以爲子孫藏。藏之以示子孫。○雍、於用反。 【読み】 我が先君文公功を衡雍に獻じて、彤弓を襄王に受けて、以て子孫の爲に藏めり。之を藏めて以て子孫に示す。○雍は、於用反。 匃也先君守官之嗣也。敢不承命。言己嗣其父祖爲先君守官。不敢廢命。欲匡晉君。 【読み】 匃や先君の守官の嗣なり。敢えて命を承けざらんや、と。己其の父祖に嗣いで先君の守官爲り。敢えて命を廢せず。晉君を匡さんと欲するを言う。 君子以爲知禮。彤弓之義、義在晉君。故范匃受之。所謂知禮。 【読み】 君子以て禮を知れりと爲す。彤弓の義、義晉君に在り。故に范匃之を受く。所謂禮を知れるなり。 〔經〕九年、春、宋災。天火曰災。來告。故書。 【読み】 〔經〕九年、春、宋災あり。天火を災と曰う。來り告ぐ。故に書す。 夏、季孫宿如晉。五月、辛酉、夫人姜氏薨。成公母。 【読み】 夏、季孫宿晉に如く。五月、辛酉[かのと・とり]、夫人姜氏薨ず。成公の母。 秋、八月、癸未、葬我小君穆姜。無傳。四月而葬。速。 【読み】 秋、八月、癸未[みずのと・ひつじ]、我が小君穆姜を葬る。傳無し。四月にして葬る。速きなり。 冬、公會晉侯・宋公・衛侯・曹伯・莒子・邾子・滕子・薛伯・杞伯・小邾子・齊世子光伐鄭。十有二月、己亥、同盟于戲。伐鄭而書同盟、則鄭受盟可知。傳言十有二月己亥。以長曆推之、十二月無己亥。經誤。戲、鄭地。○戲、許宜反。 【読み】 冬、公晉侯・宋公・衛侯・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]・滕子・薛伯・杞伯・小邾子・齊の世子光に會して鄭を伐つ。十有二月、己亥[つちのと・い]、戲に同盟す。鄭を伐ちて同盟すと書すときは、則ち鄭盟を受くること知る可し。傳に十有二月己亥と言う。長曆を以て之を推すに、十二月に己亥無し。經の誤りなり。戲は、鄭の地。○戲は、許宜反。 楚子伐鄭。 【読み】 楚子鄭を伐つ。 〔傳〕九年、春、宋災。 【読み】 〔傳〕九年、春、宋災あり。 樂喜爲司城。以爲政。樂喜、子罕也。爲政卿。知將有火災。素戒爲備火之政。 【読み】 樂喜司城爲り。以て政を爲す。樂喜は、子罕なり。政卿爲り。將に火災有らんとするを知る。素[あらかじ]め戒め火に備うるの政を爲す。 使伯氏司里、伯氏、宋大夫。司里、里宰。 【読み】 伯氏をして司里として、伯氏は、宋の大夫。司里は、里宰。 火所未至、徹小屋、塗大屋、大屋、難徹。就塗之。 【読み】 火の未だ至らざる所は、小屋を徹し、大屋を塗り、大屋は、徹し難し。就きて之を塗る。 陳畚挶、具綆缶、畚、簣籠。挶、土轝。綆、汲索。缶、汲器。○畚、音本。草器也。挶、九錄反。綆、古杏反。缶、方九反。簣、其位反。籠、力東反。轝、音預。 【読み】 畚挶[ほんきょく]を陳ね、綆缶[こうふ]を具え、畚は、簣籠[きろう]。挶は、土轝[どよ]。綆は、汲索。缶は、汲器。○畚は、音本。草器なり。挶は、九錄反。綆は、古杏反。缶は、方九反。簣は、其位反。籠は、力東反。轝は、音預。 備水器、盆■之屬。○■、戶暫反。 【読み】 水器を備え、盆■の屬。○■は、戶暫反。 *■は「鑒の上部」に下が「缶」。 量輕重、計人力所任。○任、音壬。 【読み】 輕重を量り、人力の任[た]うる所を計る。○任は、音壬。 蓄水潦、積土塗、巡丈城、繕守備、巡、行也。丈、度也。繕、治也。行度守備之處、恐因災有亂。○行、下孟反。度、待洛反。 【読み】 水潦を蓄え、土塗を積み、城を巡り丈[はか]りて、守備を繕[おさ]め、巡は、行[めぐ]るなり。丈は、度るなり。繕は、治むるなり。守備の處を行り度るは、災に因りて亂有らんことを恐れてなり。○行は、下孟反。度は、待洛反。 表火道。火起則從其所趣標表之。 【読み】 火道を表せしむ。火起これば則ち其の趣く所に從いて之を標表す。 使華臣具正徒、華臣、華元子。爲司徒。正徒、役徒也。司徒之所主也。 【読み】 華臣をして正徒を具え、華臣は、華元の子。司徒爲り。正徒は、役徒なり。司徒の主る所なり。 令隧正納郊保、奔火所。隧正、官名也。五縣爲隧。納聚郊野保守之民、使隨火所起往救之。 【読み】 隧正に令して郊保を納れ、火所に奔らしむ。隧正は、官の名なり。五縣を隧と爲す。郊野保守の民を納聚して、火の起こる所に隨いて往きて之を救わしむ。 使華閱討右官、官庀其司。亦華元子。代元爲右師。討、治也。庀、具也。使具其官屬。○庀、芳婢反。 【読み】 華閱をして右官を討[おさ]め、官ごとに其の司を庀[そな]えしむ。亦華元の子。元に代わりて右師と爲る。討は、治むるなり。庀[ひ]は、具うるなり。其の官屬を具えしむ。○庀は、芳婢反。 向戌討左、亦如之。向戌、左師。 【読み】 向戌[しょうじゅつ]左を討むるも、亦之の如し。向戌は、左師。 使樂遄庀刑器、亦如之。樂遄、司寇。刑器、刑書。○遄、市專反。 【読み】 樂遄[がくせん]をして刑器を庀えしむるも、亦之の如し。樂遄は、司寇。刑器は、刑書。○遄は、市專反。 使皇鄖命校正出馬、工正出車、備甲兵、庀武守。皇鄖、皇父充石之後。校正主馬、工正主車。使各備其官。○鄖、音云。校、戶敎反。出、如字。又尺遂反。 【読み】 皇鄖[こううん]をして校正に命じて馬を出だし、工正をして車を出だし、甲兵を備え、武守を庀えしむ。皇鄖は、皇父充石の後。校正は馬を主り、工正は車を主る。各々其の官を備えしむ。○鄖は、音云。校は、戶敎反。出は、字の如し。又尺遂反。 使西鉏吾庀府守、鉏吾、大宰也。府、六官之典。○吾、音魚。 【読み】 西鉏吾をして府守を庀え、鉏吾は、大宰なり。府は、六官の典。○吾は、音魚。 令司宮・巷伯儆宮。司宮、奄臣。巷伯、寺人。皆掌宮内之事。 【読み】 司宮・巷伯に令して宮を儆[いまし]めむ。司宮は、奄臣。巷伯は、寺人。皆宮内の事を掌る。 二師令四郷正敬享、二師、左右師也。郷正、郷大夫。享、祀也。 【読み】 二師四郷正をして敬みて享し、二師は、左右の師なり。郷正は、郷大夫。享は、祀るなり。 祝宗用馬于四墉、祀盤庚于西門之外。祝、大祝。宗、宗人。墉、城也。用馬祭于四城以禳火。盤庚、殷王。宋之遠祖。城、積陰之氣。故祀之。凡天災有幣無牲。用馬祀盤庚、皆非禮。 【読み】 祝宗をして馬を四墉に用い、盤庚を西門の外に祀らしむ。祝は、大祝。宗は、宗人。墉は、城なり。馬を用いて四城に祭りて以て火を禳[はら]うなり。盤庚は、殷王。宋の遠祖。城は、積陰の氣。故に之を祀る。凡そ天災は幣有りて牲無し。馬を用いて盤庚を祀るは、皆禮に非ず。 晉侯問於士弱、弱、士渥濁之子、莊子。 【読み】 晉侯士弱に問いて、弱は、士渥濁の子、莊子。 曰、吾聞之、宋災。於是乎知有天道。何故。問宋何故自知天道將災。 【読み】 曰く、吾れ之を聞く、宋災あり。是に於て天道有ることを知る、と。何の故ぞ、と。問う、宋何の故に自ら天道の將に災いせんとするを知るや、と。 對曰、古之火正、或食於心、或食於咮、以出内火。是故咮爲鶉火、心爲大火。謂火正之官配食於火星。建辰之月、鶉火星昏在南方、則令民放火。建戌之月、大火星伏在日下、夜不得見、則令民内火、禁放火。○咮、竹又反。又丁遘反。出、如字。又尺遂反。内、如字。又音納。鶉、音純。 【読み】 對えて曰く、古の火正、或は心に食し、或は咮[ちゅう]に食して、以て火を出内す。是の故に咮を鶉火[じゅんか]と爲し、心を大火と爲す。火正の官火星に配食するを謂う。建辰の月、鶉火星昏に南方に在れば、則ち民をして火を放たしむ。建戌の月、大火星伏して日の下に在りて、夜見ることを得ざれば、則ち民をして火を内れしめ、放火を禁ず。○咮は、竹又反。又丁遘反。出は、字の如し。又尺遂反。内は、字の如し。又音納。鶉は、音純。 陶唐氏之火正閼伯居商丘、陶唐、堯有天下號。閼伯、高辛氏之子。傳曰、遷閼伯于商丘、主辰。辰、大火也。今爲宋星。然則商丘、在宋地。○閼、於葛反。 【読み】 陶唐氏の火正閼伯[あつはく]商丘に居り、陶唐は、堯の天下を有つの號。閼伯は、高辛氏の子。傳に曰く、閼伯を商丘に遷して、辰を主らしむ、と。辰は、大火なり。今宋の星爲り。然らば則ち商丘は、宋の地に在り。○閼は、於葛反。 祀大火、而火紀時焉。謂出内火時。 【読み】 大火を祀りて、火時を紀しぬ。火を出内する時を謂う。 相土因之。故商主大火。相土、契孫、商之祖也。始代閼伯之後、居商丘、祀大火。○相、息亮反。 【読み】 相土之に因る。故に商大火を主れり。相土は、契の孫、商の祖なり。始めて閼伯の後に代わり、商丘に居りて、大火を祀る。○相は、息亮反。 商人閱其禍敗之釁、必始於火。是以日知其有天道也。閱、猶數也。商人數所更歷、恆多火災。宋是殷・商之後。故知天道之災必火。 【読み】 商人其の禍敗の釁[きん]を閱するに、必ず火に始まる。是を以て日[おの]ずから其の天道有るを知れり、と。閱は、猶數うるのごとし。商人更歷する所を數うるに、恆に火災多し。宋は是れ殷・商の後なり。故に天道の災は必ず火なるを知るなり。 公曰、可必乎。對曰、在道。國亂無象。不可知也。言國無道、則災變亦殊。故不可必知。 【読み】 公曰く、必とす可けんや、と。對えて曰く、道に在り。國亂るるときは象無し。知る可からざるなり、と。言うこころは、國道無ければ、則ち災變亦殊なり。故に必ずしも知る可からず。 夏、季武子如晉、報宣子之聘也。宣子聘、在八年。 【読み】 夏、季武子晉に如くは、宣子の聘に報ゆるなり。宣子の聘は、八年に在り。 穆姜薨於東宮。太子宮也。穆姜淫僑如、欲廢成公。故徙居東宮。事在成十六年。 【読み】 穆姜東宮に薨ず。太子の宮なり。穆姜僑如に淫して、成公を廢せんと欲す。故に東宮に徙居す。事は成十六年に在り。 始往而筮之。遇艮之八。艮下艮上艮。周禮、大卜掌三易。然則雜用連山・歸藏・周易。二易皆以七八爲占。故言遇艮之八。 【読み】 始め往かんとして之を筮す。艮の八なるに遇う。艮下艮上は艮。周禮に、大卜三易を掌る、と。然らば則ち連山・歸藏・周易を雜え用ゆるなり。二易は皆七八を以て占を爲す。故に艮の八に遇うと言う。 史曰、是謂艮之隨。震下兌上隨。史疑、占易遇八爲不利。故更以周易占變爻、得隨卦而論之。 【読み】 史曰く、是を艮の隨に之くと謂う。震下兌上は隨。史疑う、占易八に遇うは不利爲たるを。故に更に周易を以て變爻を占い、隨卦を得て之を論ず。 隨其出也。史謂隨非閉固之卦。 【読み】 隨は其れ出づるなり。史隨は閉固の卦に非ざるを謂う。 君必速出。姜曰、亡。亡、猶無也。○亡、如字。或音無。 【読み】 君必ず速やかに出でん、と。姜曰く、亡[な]し。亡は、猶無きがごとし。○亡は、字の如し。或は音無。 是於周易曰、隨元亨利貞、無咎。易筮皆以變者占。遇一爻變義異、則論彖。故姜亦以彖爲占也。史據周易。故指言周易以折之。 【読み】 是れ周易に於て曰く、隨は元亨利貞、咎無し、と。易筮皆變ずる者を以て占う。一爻變じて義異なるに遇えば、則ち彖を論ず。故に姜亦彖を以て占と爲すなり。史周易に據る。故に周易を指言して以て之を折[さだ]む。 元、體之長也。亨、嘉之會也。利、義之和也。貞、事之幹也。體仁足以長人、嘉德足以合禮、利物足以和義、貞固足以幹事。然。故不可誣也。是以雖隨無咎。言不誣四德、乃遇隨無咎。明無四德者、則爲淫而相隨、非吉事。 【読み】 元は、體の長なり。亨は、嘉の會なり。利は、義の和なり。貞は、事の幹なり。仁を體するは以て人に長たるに足り、嘉德は以て禮に合するに足り、物を利するは以て義を和するに足り、貞固は以て事に幹たるに足れり。然り。故に誣う可からざるなり。是を以て隨と雖も咎無し。言うこころは、四德を誣いざれば、乃ち隨に遇いて咎無し。四德無き者は、則ち淫にして相隨うことを爲して、吉事に非ざるを明らかにす。 今我婦人而與於亂、固在下位、婦人卑於丈夫。○與、音預。 【読み】 今我れ婦人にして亂に與り、固より下位に在りて、婦人は丈夫より卑し。○與は、音預。 而有不仁。不可謂元。不靖國家。不可謂亨。作而害身。不可謂利。棄位而姣。姣、淫之別名。○姣、戶交反。又如字。又音效。 【読み】 不仁有り。元と謂う可からず。國家を靖んぜず。亨と謂う可からず。作して身を害す。利と謂う可からず。位を棄てて姣[こう]す。姣は、淫の別名。○姣は、戶交反。又字の如し。又音效。 不可謂貞。有四德者、隨而無咎。我皆無之。豈隨也哉。我則取惡。能無咎乎。必死於此。弗得出矣。傳言穆姜辯而不德。 【読み】 貞と謂う可からず。四德有る者は、隨にして咎無し。我れ皆之れ無し。豈隨ならんや。我れ則ち惡を取れり。能く咎無からんや。必ず此に死なん。出づることを得じ、と。傳穆姜辯にして不德なるを言う。 秦景公使士雃乞師于楚。將以伐晉。楚子許之。子囊曰、不可。當今吾不能與晉爭。晉君類能而使之、隨所能。○雃、苦田反。 【読み】 秦の景公士雃[しけん]をして師を楚に乞わしむ。將に以て晉を伐たんとす。楚子之を許す。子囊曰く、不可なり。當今吾れ晉と爭うこと能わず。晉君能を類して之を使い、能くする所に隨う。○雃は、苦田反。 舉不失選、得所選。○選、息戀反。 【読み】 舉は選を失わず、選ぶ所を得。○選は、息戀反。 官不易方、方、猶宜也。 【読み】 官は方を易えず、方は、猶宜のごとし。 其卿讓於善、讓勝己者。 【読み】 其の卿は善に讓り、己に勝る者に讓る。 其大夫不失守、各任其職。 【読み】 其の大夫は守を失わず、各々其の職に任ず。 其士競於敎、奉上命。 【読み】 其の士は敎に競い、上命を奉ず。 其庶人力於農穡、種曰農、收曰穡。 【読み】 其の庶人は農穡を力め、種[う]うるを農と曰い、收むるを穡と曰う。 商・工・皁・隸不知遷業。四民不雜。 【読み】 商・工・皁[そう]・隸業を遷すことを知らず。四民雜わらず。 韓厥老矣。知罃稟焉以爲政。代將中軍。 【読み】 韓厥老す。知罃[ちおう]稟けて以て政を爲す。代わりて中軍に將たり。 范匃少於中行偃而上之、使佐中軍。使匃佐中軍、偃將上軍。○少、詩照反。中行、戶郎反。 【読み】 范匃[はんかい]中行偃より少[わか]くして之を上げて、中軍に佐たらしむ。匃をして中軍に佐とし、偃をして上軍に將たらしむ。○少は、詩照反。中行は、戶郎反。 韓起少於欒黶、而欒黶・士魴上之、使佐上軍、黶・魴讓起、起佐上軍、黶將下軍、魴佐之。○黶、於斬反。 【読み】 韓起欒黶[らんえん]より少くして、欒黶・士魴之を上げて、上軍に佐たらしめ、黶・魴起に讓り、起上軍に佐となり、黶下軍に將となり、魴之に佐となる。○黶は、於斬反。 魏絳多功、以趙武爲賢而爲之佐。武、新軍將。 【読み】 魏絳功多きも、趙武を以て賢と爲して之が佐と爲る。武は、新軍の將。 君明臣忠、上讓下競。尊官相讓、勞職力競。 【読み】 君明らかに臣忠に、上讓り下競う。尊官相讓り、勞職力め競う。 當是時也、晉不可敵。事之而後可。君其圖之。 【読み】 是の時に當たりて、晉には敵す可からず。之に事えて而して後に可なり。君其れ之を圖れ、と。 王曰、吾旣許之矣。雖不及晉、必將出師。 【読み】 王曰く、吾れ旣に之を許せり。晉に及ばずと雖も、必ず將に師を出ださんとす、と。 秋、楚子師于武城、以爲秦援。秦人侵晉。晉饑。弗能報也。爲十年、晉伐秦傳。 【読み】 秋、楚子武城に師して、以て秦の援けを爲す。秦人晉を侵す。晉饑ゆ。報ゆること能わざるなり。十年、晉秦を伐つ爲の傳なり。 冬、十月、諸侯伐鄭。鄭從楚也。 【読み】 冬、十月、諸侯鄭を伐つ。鄭楚に從うなり。 庚午、季武子・齊崔杼・宋皇鄖從荀罃・士匃門于鄟門、鄭城門也。三國從中軍。 【読み】 庚午[かのえ・うま]、季武子・齊の崔杼・宋の皇鄖荀罃・士匃に從いて鄟門[せんもん]を門[せ]め、鄭の城門なり。三國は中軍に從う。 衛北宮括・曹人・邾人從荀偃・韓起、門于師之梁、師之梁、亦鄭城門。三國從上軍。 【読み】 衛の北宮括・曹人・邾人荀偃・韓起に從いて、師之梁を門め、師之梁も、亦鄭の城門。三國は上軍に從う。 滕人・薛人從欒黶・士魴門于北門、二國從下軍。 【読み】 滕人・薛人欒黶・士魴に從いて北門を門め、二國は下軍に從う。 杞人・郳人從趙武・魏絳斬行栗。二國從新軍。行栗、表道樹。○行、如字。道也。 【読み】 杞人・郳人[げいひと]趙武・魏絳に從いて行栗を斬る。二國は新軍に從う。行栗は、表道の樹。○行は、字の如し。道なり。 甲戌、師于氾。衆軍還聚氾。氾、鄭地、東氾。○氾、音凡。 【読み】 甲戌[きのえ・いぬ]、氾に師す。衆軍還りて氾に聚まる。氾は、鄭の地、東氾なり。○氾は、音凡。 令於諸侯曰、脩器備、兵器戦備。 【読み】 諸侯に令して曰えらく、器備を脩め、兵器戦備。 盛餱糧、餱、乾食。○盛、音成。餱、音侯。 【読み】 餱糧を盛り、餱は、乾食。○盛は、音成。餱は、音侯。 歸老幼、示將久師。 【読み】 老幼を歸し、將に久しく師せんとするを示す。 居疾于虎牢、諸侯已取鄭虎牢。故使諸軍疾病息其中。 【読み】 疾めるを虎牢に居き、諸侯已に鄭の虎牢を取る。故に諸軍の疾病あるをして其の中に息わしむ。 肆眚圍鄭。肆、緩也。眚、過也。不書圍、鄭逆服不成圍。○眚、生領反。又所幸反。 【読み】 眚[せい]を肆[ゆる]して鄭を圍め、と。肆は、緩すなり。眚は、過ちなり。圍むを書さざるは、鄭逆え服して圍を成さざればなり。○眚は、生領反。又所幸反。 鄭人恐。乃行成。與晉成也。 【読み】 鄭人恐る。乃ち成[たい]らぎを行う。晉と成らぐなり。 中行獻子曰、遂圍之、以待楚人之救也、而與之戰。不然無成。獻子、荀偃也。恐楚救鄭、鄭復屬之。 【読み】 中行獻子曰く、遂に之を圍みて、以て楚人の救いを待ちて、之と戰わん。然らずば成らぐこと無からん、と。獻子は、荀偃なり。楚鄭を救いて、鄭復之に屬せんことを恐る。 知武子曰、許之盟而還師、以敝楚人。敝、罷也。 【読み】 知武子曰く、之に盟を許して師を還して、以て楚の人を敝[つか]らさん。敝は、罷[つか]るるなり。 吾三分四軍、分四軍爲三部。 【読み】 吾れ四軍を三分にして、四軍を分けて三部と爲す。 與諸侯之銳、以逆來者、來者、楚也。 【読み】 諸侯の銳と與に、以て來る者を逆[むか]えば、來者とは、楚なり。 於我未病、楚不能矣。晉各一動、而楚三來。故曰不能。 【読み】 我に於て未だ病まず、楚能わざるなり。晉各々一たび動きて、楚三たび來る。故に能わずと曰う。 猶愈於戰。勝聚戰。 【読み】 猶戰うに愈れり。聚まり戰うに勝れり。 暴骨以逞。不可以爭。言爭當以謀。不可以暴骨。○暴、蒲卜反。 【読み】 骨を暴して以て逞しくせん。爭いに以う可からず。言うこころは、爭いは當に謀を以てすべし。以て骨を暴す可からず。○暴は、蒲卜反。 *頭注に「不可以爭、當在未艾下。此二句上下倒置也。」とある。 大勞未艾、君子勞心、小人勞力。先王之制也。艾、息也。言當從勞心之勞。○艾、魚廢反。又五盖反。 【読み】 大勞未だ艾[や]まざれば、君子心を勞し、小人力を勞す。先王の制なり、と。艾[がい]は、息むなり。言うこころは、當に心を勞するの勞に從うべし。○艾は、魚廢反。又五盖反。 諸侯皆不欲戰。乃許鄭成。 【読み】 諸侯皆戰を欲せず。乃ち鄭に成らぎを許す。 十一月、己亥、同盟于戲、鄭服也。鄭服。故言同盟。 【読み】 十一月、己亥、戲に同盟するは、鄭服すればなり。鄭服す。故に同盟と言う。 將盟。鄭六卿公子騑、子駟。 【読み】 將に盟わんとす。鄭の六卿公子騑、子駟。 公子發、子國。 【読み】 公子發、子國。 公子嘉、子孔。 【読み】 公子嘉、子孔。 公孫輒、子耳。 【読み】 公孫輒[こうそんちょう]、子耳。 公孫蠆、子蟜。○蠆、勑邁反。 【読み】 公孫蠆[こうそんたい]、子蟜[しきょう]。○蠆、勑邁反。 公孫舍之、子展。 【読み】 公孫舍之と、子展。 及其大夫門子皆從鄭伯。門子、卿之適子。○從、才用反。 【読み】 其の大夫門子と皆鄭伯に從う。門子は、卿の適子。○從は、才用反。 晉士莊子爲載書、莊子、士弱。載書、盟書。 【読み】 晉の士莊子載書を爲して、莊子は、士弱。載書は、盟書。 曰、自今日旣盟之後、鄭國而不唯晉命是聽、而或有異志者、有如此盟。如違盟之罰。 【読み】 曰く、今日旣に盟うの後より、鄭國にして唯晉の命を是れ聽かずして、或は異志有らん者ならば、此の盟の如きこと有らん、と。盟に違うの罰の如けん。 公子騑趨進曰、天禍鄭國、使介居二大國之閒、介、猶閒也。 【読み】 公子騑趨り進みて曰く、天鄭國に禍して、二大國の閒に介居せしめ、介は、猶閒のごとし。 大國不加德音、而亂以要之、謂以兵亂之力、强要鄭。○要、一遙反。强、其丈反。 【読み】 大國德音を加えずして、亂以て之を要して、兵亂の力を以て、鄭を强要するを謂う。○要は、一遙反。强は、其丈反。 使其鬼神不獲歆其禋祀、其民人不獲享其土利、夫婦辛苦墊隘、無所底告。墊隘、猶委頓。底、至也。○墊、丁念反。 【読み】 其の鬼神をして其の禋祀[いんし]を歆[う]くることを獲ず、其の民人をして其の土利を享くることを獲ず、夫婦をして辛苦墊隘[てんあい]して、底[いた]り告ぐる所無からしむ。墊隘は、猶委頓のごとし。底は、至るなり。○墊は、丁念反。 自今日旣盟之後、鄭國而不唯有禮與彊、可以庇民者是從、而敢有異志者、亦如之。亦如此盟。 【読み】 今日旣に盟うの後より、鄭國にして唯有禮と彊きとの、以て民を庇う可き者に是れ從わずして、敢えて異志有らんも、亦之の如くならん、と。亦此の盟の如けん。 荀偃曰、改載書。子駟亦以所言載於策。故欲改之。 【読み】 荀偃曰く、載書を改めよ、と。子駟亦言う所を以て策に載す。故に之を改めんと欲す。 公孫舍之曰、昭大神要言焉。要、誓以告神。 【読み】 公孫舍之曰く、大神に昭らかにして要言せり。要は、誓いて以て神に告ぐるなり。 若可改也、大國亦可叛也。知武子謂獻子曰、我實不德、而要人以盟。豈禮也哉。非禮何以主盟。姑盟而退、脩德息師而來、終必獲鄭。何必今日。我之不德、民將棄我。豈唯鄭。若能休和、遠人將至。何恃於鄭。乃盟而還。遂兩用載書。 【読み】 若し改む可くば、大國にも亦叛く可し、と。知武子獻子に謂いて曰く、我れ實に不德にして、人を要して以て盟う。豈禮ならんや。禮に非ざれば何を以て盟を主らん。姑く盟いて退き、德を脩め師を息えて來らば、終に必ず鄭を獲ん。何ぞ必ずしも今日のみならん。我の不德ならば、民も將に我を棄てんとす。豈唯鄭のみならんや。若し能く休和せば、遠人も將に至らんとす。何ぞ鄭を恃まんや、と。乃ち盟いて還る。遂に載書を兩用す。 晉人不得志於鄭、以諸侯復伐之。十二月、癸亥、門其三門。三門、鄟門・師之梁・北門也。癸亥、月五日。晉果三分其軍、各攻一門。 【読み】 晉人志を鄭に得ず、諸侯を以[い]て復之を伐つ。十二月、癸亥[みずのと・い]、其の三門を門む。三門は、鄟門・師之梁・北門なり。癸亥は、月の五日。晉果たして其の軍を三分して、各々一門を攻む。 閏月、戊寅、濟于陰阪、侵鄭。以長曆參校上下、此年不得有閏月戊寅。戊寅、是十二月二十日。疑閏月、當爲門五日。五字上與門合爲閏、則後學者自然轉日爲月。晉人三番四軍、更攻鄭門。門各五日、晉各一攻、鄭三受敵。欲以苦之。癸亥、去戊寅十六日。以癸亥始攻、攻輒五日、凡十五日、鄭故不服而去、明日戊寅、濟于陰阪、復侵鄭外邑。陰阪、洧津。○閏月、依注讀爲門五日。阪、音反。又扶板反。番、芳元反。更、音庚。 【読み】 閏月、戊寅[つちのえ・とら]、陰阪より濟[わた]り、鄭を侵す。長曆を以て上下を參校するに、此の年閏月戊寅有ることを得ず。戊寅は、是れ十二月二十日。疑うらくは閏月は、當に門五日に爲るべし。五の字上門と合して閏と爲るときは、則ち後の學者自然に日を轉じて月と爲すならん。晉人四軍を三番にして、更[こも]々鄭の門を攻む。門ごとに各々五日、晉各々一たび攻めて、鄭三たび敵を受く。以て之を苦しめんと欲するなり。癸亥は、戊寅を去ること十六日。癸亥を以て始めて攻め、攻むること輒ち五日、凡そ十五日、鄭故[なお]服せずして去り、明日戊寅、陰阪を濟り、復鄭の外邑を侵す。陰阪は、洧津。○閏月は、注に依りて讀みて門むること五日と爲す。阪は、音反。又扶板反。番は、芳元反。更は、音庚。 次于陰口而還。陰口、鄭地名。 【読み】 陰口に次[やど]りて還る。陰口は、鄭の地名。 子孔曰、晉師可擊也。師老而勞、且有歸志。必大克之。子展曰、不可。傳言子展能守信。 【読み】 子孔曰く、晉の師擊つ可し。師老[つか]れて勞し、且歸志有り。必ず大いに之に克たん、と。子展曰く、不可なり、と。傳子展能く信を守るを言う。 公送晉侯。晉侯以公宴于河上。問公年。季武子對曰、會于沙隨之歲、寡君以生。沙隨、在成十六年。 【読み】 公晉侯を送る。晉侯公を以[い]て河上に宴す。公の年を問う。季武子對えて曰く、沙隨に會するの歲に、寡君以て生まれたり、と。沙隨は、成十六年に在り。 晉侯曰、十二年矣。是謂一終。一星終也。歲星、十二歲而一周天。 【読み】 晉侯曰く、十二年なり。是を一終と謂う。一星の終わりなり。歲星は、十二歲にして天を一周す。 國君十五而生子。冠而生子、禮也。冠、成人之服。故必冠而後生子。○冠、古亂反。下同。 【読み】 國君は十五にして子を生む。冠して子を生むは、禮なり。冠は、成人の服。故に必ず冠して後に子を生む。○冠は、古亂反。下も同じ。 君可以冠矣。大夫盍爲冠具。武子對曰、君冠、必以祼享之禮行之、祼、謂灌鬯酒也。享、祭先君也。○祼、古亂反。 【読み】 君以て冠す可けん。大夫盍ぞ冠具を爲さざる、と。武子對えて曰く、君冠するときは、必ず祼享[かんきょう]の禮を以て之を行い、祼は、鬯酒[ちょうしゅ]を灌ぐを謂うなり。享は、先君を祭るなり。○祼は、古亂反。 以金石之樂節之、以鐘磬爲舉動之節。 【読み】 金石の樂を以て之を節し、鐘磬[しょうけい]を以て舉動の節と爲す。 以先君之祧處之。諸侯以始祖之廟爲祧。○祧、他彫反。 【読み】 先君の祧[ちょう]を以て之に處る。諸侯始祖の廟を以て祧と爲す。○祧は、他彫反。 今寡君在行、未可具也。請及兄弟之國、而假備焉。晉侯曰、諾。公還及衛、冠于成公之廟、成公、今衛獻公之曾祖。從衛所處。 【読み】 今寡君行に在り、未だ具う可からざるなり。請う、兄弟の國に及びて、假り備えん、と。晉侯曰く、諾、と。公還りて衛に及び、成公の廟に冠して、成公は、今の衛の獻公の曾祖。衛の處する所に從う。 假鍾磬焉。禮也。 【読み】 鍾磬[しょうけい]を假る。禮なり。 楚子伐鄭。與晉成故。 【読み】 楚子鄭を伐つ。晉と成らぐ故なり。 子駟將及楚平。子孔・子蟜曰、與大國盟、口血未乾而背之、可乎。子駟・子展曰、吾盟固云、唯彊是從。 【読み】 子駟將に楚と平らがんとす。子孔・子蟜曰く、大國と盟いて、口血未だ乾かずして之に背かば、可ならんや、と。子駟・子展曰く、吾が盟に固より云いき、唯彊きに是れ從わん、と。 今楚師至、晉不我救、則楚彊矣。盟誓之言、豈敢背之。 【読み】 今楚の師至りて、晉我を救わずんば、則ち楚は彊きなり。盟誓の言、豈敢えて之を背かんや。 且要盟無質。神弗臨也。質、主也。 【読み】 且つ要盟は質無し。神臨まざるなり。質は、主なり。 所臨唯信。信者、言之瑞也。瑞、符也。 【読み】 臨む所は唯信なり。信は、言の瑞なり。瑞は、符なり。 善之主也。是故臨之。神臨之。 【読み】 善の主なり。是の故に之に臨む。神之に臨む。 明神不蠲要盟。蠲、潔也。 【読み】 明神は要盟を蠲[いさぎよ]しとせず。蠲[けん]は、潔きなり。 背之可也。 【読み】 之に背くも可なり、と。 乃及楚平。公子罷戎入盟、同盟于中分。中分、鄭城中里名。罷戎、楚大夫。○罷、音皮。又音被。 【読み】 乃ち楚と平らぐ。公子罷戎入りて盟い、中分に同盟す。中分は、鄭の城中の里の名。罷戎は、楚の大夫。○罷は、音皮。又音被。 楚莊夫人卒。共王母。 【読み】 楚の莊夫人卒す。共王の母。 王未能定鄭而歸。 【読み】 王未だ鄭を定むること能わずして歸る。 晉侯歸、謀所以息民。魏絳請施舍、施恩惠舍勞役。 【読み】 晉侯歸り、民を息えん所以を謀る。魏絳施舍し、恩惠を施し勞役を舍[ゆる]す。 輸積聚以貸。輸、盡也。○積、子賜反。下同。貸、他代反。 【読み】 積聚[ししゅう]を輸[つ]くして以て貸さんと請う。輸は、盡くすなり。○積は、子賜反。下も同じ。貸は、他代反。 自公以下、苟有積者盡出之、國無滯積、散在民。 【読み】 公より以下、苟も積有る者は盡く之を出だし、國に滯積無く、散じて民に在り。 亦無困人、不匱乏。 【読み】 亦困人無く、匱乏せず。 公無禁利、與民共。 【読み】 公利を禁ずること無く、民と共にす。 亦無貪民。禮讓行。 【読み】 亦貪民無し。禮讓行わる。 祈以幣更、不用牲。 【読み】 祈るに幣を以て更え、牲を用いず。 賓以特牲、務崇省。 【読み】 賓をも特牲を以てし、務めて省を崇ぶ。 器用不作、因仍舊。 【読み】 器用作らず、舊に因仍[いんじょう]す。 車服從給。足給事也。 【読み】 車服給に從う。事に給するに足るなり。 行之期年、國乃有節。三駕而楚不能與爭。三駕、三興師。謂十年、師於牛首、十一年、師於向、其秋觀兵於鄭東門。自是鄭遂服。○期、音基。 【読み】 之を行うこと期年、國乃ち節有り。三駕して楚與に爭うこと能わざりき。三駕とは、三たび師を興すなり。十年、牛首に師し、十一年、向に師し、其の秋兵を鄭の東門に觀[しめ]すを謂う。是より鄭遂に服す。○期は、音基。 襄 經元年。公孫剽。字林、匹召反。 傳。爲宋。于僞反。歸寘。之豉反。東垣。音袁。爲質。音致。元帥。所類反。不與。音預。繼好。呼報反。 經二年。甯殖。市力反。齊姜。或音側皆反、非。 傳。伐萊。音來。正輿子。音餘。本亦作與。謚應。應對之應。年末同。其行。下孟反。爲不哲矣。一本作不爲哲矣。之妣。必履反。公適。丁歷反。本亦作嫡。烝。之承反。畀。必利反。注同。以洽。戶夾反。孔偕。音皆。偕徧。音遍。越疆。居良反。齊竟。音境。不爲。于僞反。若背。音佩。弃力。○今本棄。弃古文。誰暱。本又作昵。徐乃吉反。 經三年。三年單子。音善。袁僑。其驕反。 傳。被練。徐扶僞反。注及下同。咎子。其九反。患恚。一僞反。子相。息亮反。注同。介在。音界。晉爭。爭鬭之爭。爲鄭。于僞反。吳好。呼報反。多難。乃旦反。年内同。虞度。待洛反。用鉞。音越。公跣。先典反。無量。直用反。注同。特爲。于僞反。 經四年。 傳。爲陳。于僞反。鮦陽。孟康直九反、或音直勇反、非。有咎。其九反。下同。肆夏一名樊。國語云、金奏肆夏樊遏渠。杜遂分爲三夏之別名。呂叔玉云、肆夏、時邁也。樊遏、執競也。渠、思文也。韶夏。上招反。名遏。於葛反。夏納。本或爲納夏誤。名渠。其居反。子員。徐于貧反。而重。直用反。下皆同。敢與。音預。下及與同。牧伯。徐音目。咨諏。○今本咨作諮。下咨度咨詢皆同。咨詢。音荀。爲己。于僞反。下注爲定姒爲言下爲執事同。圃。布古反。場。直良反。須句。其倶反。顓。音專。臾。羊朱反。之比。必二反。蓋相。息亮反。朝夕。如字。褊小。必淺反。其使。所吏反。夏訓。戶雅反。下注皆同。后羿。音詣。自鉏。仕居反。大康。音泰。中康。音仲。下同。○今本仲。子相。息亮反。下及注同。慝。他得反。後同。而亨。煮也。斟。之林反。灌。古亂反。干戈。古禾反。掖縣。音亦。漢書作夜。孟康音掖。少康。詩照反。注下同。官箴。之林反。芒芒。莫郎反。畫爲。乎麥反。攸家。如字。本或作攸處。○今本亦攸處。不擾。如少反。冒于。莫報反。又亡北反。其麀。音憂。鹿牝也。牡。茂后反。可重。直用反。下文同。猶數。所角反。不恢。苦回反。以好。呼報反。下文同。不懲。直升反。荐居。一音才遜反。易土。徐神豉反。不聳。息勇反。公說。音悅。番縣。一音方袁反。目台。吐才反。合髻。本又作結。又作紒。音同。○今本結。朱儒。本或作侏。亦音朱。 經五年。子巫。亡扶反。鄫見。賢遍反。不復。扶又反。下同。 傳。愬戒。悉路反。奉使。所吏反。覿鄫。直歷反。之好。呼報反。共王。音恭。嚴斷。丁亂反。挺挺。他頂反。扃扃。徐孔穎反。背盟。音佩。鄫近。附近之近。下文陳近同。魯竟。音境。致譴。棄專反。子囊。乃郎反。民朝。如字。入斂。力豔反。西郷。許亮反。相三。息亮反。 經六年。 傳。狎。戶甲反。調戲。徒弔反。以貫。古亂反。幾日。居豈反。射女。音汝。不勝。音升。見且。賢遍反。注同。復託。扶又反。堙之。音因。王湫。徐子鳥反。共公。音恭。其疆。居良反。 經七年。郯子。音談。于鄬。字林、几吹反。于鄵。字林、千消反。所殺。音試。下同。○今本弑。上其名。時掌反。 傳。夏正。戶雅反。隧正。音遂。多難。乃旦反。長子。丁丈反。下師長同。好仁。呼報反。注及下同。靖共。音恭。下注同。介爾。音界。下及注同。臣後。胡豆反。下文不後寡君同。子相。息亮反。下子駟相同。未嘗後。如字。徐胡豆反。無悛。七全反。委蛇。於危反。下以支反。下同。召南。上照反。爲執。于僞反。背君。音佩。 經八年。公子燮。悉協反。邢丘。徐音刑。 傳。伯業。音霸。又如字。本亦作霸。○今本亦霸。先之。一如字。子煕。許其反。徐音怡。以疆。居良反。注同。人壽。音授。或如字。注同。幾何。居豈反。以紓。音舒。敬共。音恭。二竟。音境。注同。而庇。必利反。又音祕。下同。不罷。音皮。背之。音佩。至卷末皆同。杖莫。直亮反。下同。其咎。其九反。下同。伯騈。扶賢反。又扶經反。儆而。居領反。女何。音汝。啓跪。其委反。傾覆。芳服反。所控。苦貢反。以見。賢遍反。或如字。摽有。徐扶妙反。又扶表反。以興。許譍反。今辟。音譬。本多卽作譬字。後放此。○今本又譬。彤弓。徒冬反。復受。扶又反。城濮。音卜。孫臧。如字。徐才浪反。 經九年。 傳。汲。音急。索。悉各反。畜。勅六反。本又作蓄。○今本亦蓄。水潦。音老。繕守。手又反。注守備同。之處。昌慮反。標表。必遙反。隧正。音遂。華閱。音悅。皇鄖。本亦作員。音同。武守。手又反。下同。儆官。音景。四庸。本又作墉。音同。○今本亦墉。般庚。步干反。字亦作盤。○今本亦盤。以禳。如羊反。渥濁。於角反。得見。如字。又賢遍反。契孫。息列反。之釁。許靳反。猶數。處主反。下同。所更。音庚。遇艮。古恨反。元亨。許庚反。下同。論彖。吐亂反。以折。之設反。之長。丁丈反。下同。嘉德。易作嘉會。新軍將。子匠反。晉饑。音飢。又音機。鄟門。音專。本亦作專。人恐。丘勇反。鄭復。扶又反。敝罷。音皮。暴骨。徐扶沃反。以爭。爭鬭之爭。注同。又如字。適子。丁歷反。使介。音界。注同。介猶閒也。音閒厠之閒。又如字。歆其。許今反。隘。於懈反。所底。音旨。以庇。必利反。能休。許虯反。復伐。扶又反。下注同。洧津。于軌反。盍爲。戶臘反。謂灌。古亂反。鬯酒。勅亮反。中分。竝如字。徐音丁仲反。聚。才住反。崇省。所景反。期年。本亦作朞。于向。舒亮反。
春秋左氏傳校本第十五 襄公 起十年盡十五年 晉 杜氏 集解 唐 陸氏 音義 尾張 秦 鼎 校本 〔經〕十年、春、公會晉侯・宋公・衛侯・曹伯・莒子・邾子・滕子・薛伯・杞伯・小邾子・齊世子光會吳于柤。吳子在柤。晉以諸侯往會之。故曰會吳。吳不稱子、從所稱也。柤、楚地。○柤、莊加反。 【読み】 〔經〕十年、春、公晉侯・宋公・衛侯・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]・滕子・薛伯・杞伯・小邾子・齊の世子光に會して吳に柤[さ]に會す。吳子柤に在り。晉諸侯を以[い]て往きて之に會す。故に吳に會すと曰う。吳子と稱せざるは、稱する所に從うなり。柤は、楚の地。○柤は、莊加反。 夏、五月、甲午、遂滅偪陽。偪陽、妘姓國。今彭城傅陽縣也。因柤會而滅之。故曰遂。○偪、甫目反。又彼力反。妘、音云。 【読み】 夏、五月、甲午[きのえ・うま]、遂に偪陽を滅ぼす。偪陽は、妘[うん]姓の國。今の彭城傅陽縣なり。柤の會に因りて之を滅ぼす。故に遂にと曰う。○偪は、甫目反。又彼力反。妘は、音云。 公至自會。無傳。 【読み】 公會より至る。傳無し。 楚公子貞・鄭公孫輒帥師伐宋。晉師伐秦。荀罃不書、不親兵也。 【読み】 楚の公子貞・鄭の公孫輒師を帥いて宋を伐つ。晉の師秦を伐つ。荀罃[じゅんおう]書さざるは、兵を親らせざればなり。 秋、莒人伐我東鄙。公會晉侯・宋公・衛侯・曹伯・莒子・邾子・齊世子光・滕子・薛伯・杞伯・小邾子伐鄭。齊世子光先至於師、爲盟主所尊。故在滕上。 【読み】 秋、莒人我が東鄙を伐つ。公晉侯・宋公・衛侯・曹伯・莒子・邾子・齊の世子光・滕子・薛伯・杞伯・小邾子に會して鄭を伐つ。齊の世子光先ず師に至り、盟主の爲に尊ばる。故に滕の上に在り。 冬、盜殺鄭公子騑・公子發・公孫輒。非國討、當兩稱名氏、殺者非卿。故稱盜。以盜爲文。故不得言其大夫。 【読み】 冬、盜鄭の公子騑・公子發・公孫輒を殺す。國討に非ざれば、當に兩ながら名氏を稱すべきに、殺す者卿に非ず。故に盜と稱す。盜を以て文を爲す。故に其の大夫を言うことを得ず。 戍鄭虎牢。伐鄭諸侯各受晉命戍虎牢。不復爲告命。故獨書魯戍、而不敍諸侯。 【読み】 鄭の虎牢を戍る。鄭を伐つの諸侯各々晉の命を受けて虎牢を戍る。復告命を爲さず。故に獨魯の戍を書して、諸侯を敍せず。 楚公子貞帥師救鄭。公至自伐鄭。無傳。 【読み】 楚の公子貞師を帥いて鄭を救う。公鄭を伐ちてより至る。傳無し。 〔傳〕十年、春、會于柤、會吳子壽夢也。壽夢、吳子乘。○夢、莫公反。 【読み】 〔傳〕十年、春、柤に會するは、吳子壽夢[じゅぼう]に會するなり。壽夢は、吳子乘。○夢は、莫公反。 三月、癸丑、齊高厚相大子光、以先會諸侯于鍾離。不敬。吳子未至。光從東道與東諸侯會遇。非本期地。故不書會。高厚、高固子也。癸丑、月二十六日。○相、息亮反。下同。 【読み】 三月、癸丑[みずのと・うし]、齊の高厚大子光を相けて、以て先ず諸侯に鍾離に會す。不敬なり。吳子未だ至らず。光東道より東諸侯と會遇す。本期の地に非ず。故に會を書さず。高厚は、高固の子なり。癸丑は、月の二十六日。○相は、息亮反。下も同じ。 士莊子曰、高子相大子以會諸侯、將社稷是衛。而皆不敬。厚與光倶不敬。 【読み】 士莊子曰く、高子大子を相けて以て諸侯に會するは、將に社稷を是れ衛らんとするなり。而るに皆不敬なり。厚と光と倶に不敬なり。 弃社稷也。其將不免乎。爲十九年、齊殺高厚、二十五年、弑其君光傳。 【読み】 社稷を弃つるなり。其れ將に免れざらんとするか、と。十九年、齊高厚を殺し、二十五年、其の君光を弑する爲の傳なり。 夏、四月、戊午、會于柤。經書春、書始行也。戊午、月一日。 【読み】 夏、四月、戊午[つちのえ・うま]、柤に會す。經春と書すは、始めて行くを書すなり。戊午は、月の一日。 晉荀偃・士匃請伐偪陽而封宋向戌焉。以宋常事晉、而向戌有賢行、故欲封之爲附庸。 【読み】 晉の荀偃・士匃[しかい]偪陽を伐ちて宋の向戌[しょうじゅつ]を封ぜんと請う。宋の常に晉に事えて、向戌賢行有るを以て、故に之を封じて附庸と爲さんと欲す。 荀罃曰、城小而固。勝之不武。弗勝爲笑。固請。丙寅、圍之。弗克。丙寅、四月九日。 【読み】 荀罃[じゅおう]曰く、城小にして固し。之に勝つとも武ならじ。勝たざれば笑いと爲らん、と。固く請う。丙寅[ひのえ・とら]、之を圍む。克たず。丙寅は、四月九日。 孟氏之臣秦堇父輦重如役。堇父、孟獻子家臣。步挽重車以從師。○堇、音謹。挽、音晩。 【読み】 孟氏の臣秦堇父[しんきんぽ]重を輦[れん]して役に如く。堇父は、孟獻子の家臣。步して重車を挽きて以て師に從う。○堇は、音謹。挽は、音晩。 偪陽人啓門。諸侯之士門焉。見門開。故攻之。 【読み】 偪陽の人門を啓く。諸侯の士門[せ]む。門の開くを見る。故に之を攻む。 縣門發。郰人紇抉之以出門者。門者、諸侯之士在門内者也。紇、郰邑大夫、仲尼父叔梁紇也。郰邑、魯縣東南莝城是也。言紇多力、抉舉縣門、出在内者。○縣、音玄。下同。郰、側留反。紇、恨發反。抉、烏穴反。又古穴反。出、如字。一尺遂反。 【読み】 縣門發[と]ず。郰人[しゅうひと]紇[こつ]之を抉[かか]げて以て門むる者を出だす。門むる者とは、諸侯の士の門内に在る者なり。紇は、郰邑の大夫、仲尼の父叔梁紇なり。郰邑は、魯縣の東南の莝城是れなり。紇多力、縣門を抉げ舉げて、内に在る者を出だすを言う。○縣は、音玄。下も同じ。郰は、側留反。紇は、恨發反。抉は、烏穴反。又古穴反。出は、字の如し。一に尺遂反。 狄虒彌建大車之輪、而蒙之以甲、以爲櫓、狄虒彌、魯人也。蒙、覆也。櫓、大楯。○虒、音斯。櫓、音魯。楯、常尹反。又音尹。 【読み】 狄虒彌[てきしび]大車の輪を建てて、之に蒙うに甲を以てして、以て櫓と爲し、狄虒彌は、魯の人なり。蒙は、覆うなり。櫓は、大楯。○虒は、音斯。櫓は、音魯。楯は、常尹反。又音尹。 左執之、右拔戟、以成一隊。百人爲隊。 【読み】 左に之を執り、右に戟を拔きて、以て一隊を成す。百人を隊と爲す。 孟獻子曰、詩所謂有力如虎者也。詩、邶風也。○邶、音佩。 【読み】 孟獻子曰く、詩に所謂力有ること虎の如しという者なり、と。詩は、邶[はい]風なり。○邶は、音佩。 主人縣布。堇父登之。及堞而絕之。偪陽人縣布以試外勇者。○堞、音牒。 【読み】 主人布を縣く。堇父之に登る。堞に及びて之を絕つ。偪陽の人布を縣けて以て外の勇者を試む。○堞は、音牒。 隊則又縣之。蘇而復上者三、主人辭焉。乃退。主人嘉其勇。故辭謝不復縣布。○隊、直類反。復、扶又反。三、息暫反。又如字。 【読み】 隊[お]つれば則ち又之を縣く。蘇りて復上ること三たび、主人辭す。乃ち退く。主人其の勇を嘉す。故に辭謝して復布を縣けず。○隊は、直類反。復は、扶又反。三は、息暫反。又字の如し。 帶其斷以徇於軍三日。帶其斷布以示勇。○斷、徒亂反。 【読み】 其の斷を帶びて以て軍に徇[とな]うること三日。其の斷布を帶びて以て勇を示す。○斷は、徒亂反。 諸侯之師久於偪陽。荀偃・士匃請於荀罃曰、水潦將降。懼不能歸。向夏恐有久雨。從丙寅至庚寅、二十五日。故曰久。 【読み】 諸侯の師偪陽に久し。荀偃・士匃荀罃に請いて曰く、水潦[すいろう]將に降らんとす。懼れらくは歸ること能わじ。夏に向かいて久雨有らんことを恐る。丙寅より庚寅に至るまで、二十五日なり。故に久しと曰う。 請班師。班、還也。 【読み】 請う、師を班[かえ]さん、と。班は、還るなり。 知伯怒、知伯、荀罃。○知、音智。 【読み】 知伯怒り、知伯は、荀罃。○知は、音智。 投之以机。出於其閒。出偃・匃之閒。○机、本作几。 【読み】 之に投ぐるに机を以てす。其の閒に出づ。偃・匃の閒に出づ。○机は、本几に作る。 曰、女成二事而後告余。二事、伐偪陽、封向戌。○女、音汝。下同。 【読み】 曰く、女二事を成して而して後に余に告げたり。二事は、偪陽を伐つと、向戌を封ずるとなり。○女は、音汝。下も同じ。 余恐亂命、以不女違。旣成改之、爲亂命。 【読み】 余命を亂らんことを恐れて、以て女に違わざりき。旣に成して之を改むを、命を亂ると爲す。 女旣勤君而興諸侯、牽帥老夫以至于此、旣無武守、無武功可執守。 【読み】 女旣に君を勤めしめて諸侯を興し、老夫を牽帥して以て此に至り、旣に武守無くして、武功の執り守る可き無し。 而又欲易余罪、曰是實班師。不然克矣。謂偃・匃將言爾。 【読み】 又余に罪を易えて、是れ實に師を班せり、然らずんば克たんと曰わんと欲す。偃・匃將に爾か言わんとするを謂う。 余羸老也。可重任乎。不任受女此責。○羸、劣危反。任、音壬。注同。 【読み】 余羸老[るいろう]せり。重く任う可けんや。女の此の責を受くるに任えず。○羸は、劣危反。任は、音壬。注も同じ。 七日不克、必爾乎取之。言當取女以謝不克之罪。 【読み】 七日までに克たずんば、必ず爾を取らん、と。言うこころは、當に女を取りて以て克たざるの罪を謝す。 五月、庚寅、月四日。 【読み】 五月、庚寅[かのえ・とら]、月の四日。 荀偃・士匃帥卒攻偪陽、親受矢石。躬在矢石閒。 【読み】 荀偃・士匃卒を帥いて偪陽を攻め、親ら矢石を受く。躬ら矢石の閒に在り。 甲午、滅之。月八日。 【読み】 甲午、之を滅ぼす。月の八日。 書曰遂滅偪陽、言自會也。言其因會以滅國。非之也。 【読み】 書して遂に偪陽を滅ぼすと曰うは、會よりするを言うなり。其の會に因りて以て國を滅ぼすを言う。之を非[そし]るなり。 以與向戌。向戌辭曰、君若猶辱鎭撫宋國、而以偪陽光啓寡君、羣臣安矣。其何貺如之。言見賜之厚、無過此。 【読み】 以て向戌に與う。向戌辭して曰く、君若し猶辱く宋國を鎭撫して、偪陽を以て寡君に光啓せば、羣臣安からん。其れ何の貺[たまもの]か之に如かん。賜わらるるの厚き、此に過ぐること無きを言う。 若專賜臣、是臣興諸侯以自封也。其何罪大焉。敢以死請。乃予宋公。 【読み】 若し專ら臣に賜わば、是れ臣諸侯を興して以て自ら封ずるなり。其れ何の罪か焉より大ならん。敢えて死を以て請う、と。乃ち宋公に予う。 宋公享晉侯于楚丘。請以桑林。桑林、殷天子之樂名。 【読み】 宋公晉侯を楚丘に享す。桑林を以てせんとを請う。桑林は、殷の天子の樂の名。 荀罃辭。辭、讓之。 【読み】 荀罃辭す。辭すとは、之を讓るなり。 荀偃・士匃曰、諸侯、宋・魯於是觀禮。宋、王者後。魯以周公故、皆用天子禮樂。故可觀。 【読み】 荀偃・士匃曰く、諸侯は、宋・魯のみ是に於て禮を觀る。宋は、王者の後。魯は周公の故を以て、皆天子の禮樂を用ゆ。故に觀る可し。 魯有禘樂、賓祭用之。禘、三年大祭、則作四代之樂。別祭羣公、則用諸侯樂。 【読み】 魯に禘の樂有り、賓祭に之を用ゆ。禘は、三年の大祭なれば、則ち四代の樂を作す。別に羣公を祭るときは、則ち諸侯の樂を用ゆ。 宋以桑林享君、不亦可乎。言倶天子樂也。 【読み】 宋桑林を以て君を享すること、亦可ならずや、と。言うこころは、倶に天子の樂なり。 舞師題以旌夏。師、樂師也。旌夏、大旌也。題、識也。以大旌表識其行列。○夏、戶雅反。識、申志反。又如字。 【読み】 舞師題するに旌夏を以てす。師は、樂師なり。旌夏は、大旌なり。題は、識なり。大旌を以て其の行列を表識するなり。○夏は、戶雅反。識は、申志反。又字の如し。 晉侯懼而退、入于房。旌夏非常。卒見之。人心偶有所畏。○卒、寸忽反。 【読み】 晉侯懼れて退き、房に入る。旌夏は常に非ず。卒に之を見る。人心偶々畏るる所有り。○卒は、寸忽反。 去旌、卒享而還。及著雍、疾。晉侯疾也。著雍、晉地。○去、起呂反。著、張慮反。一除慮反。雍、於用反。 【読み】 旌を去り、享を卒えて還る。著雍に及びて、疾む。晉侯疾むなり。著雍は、晉の地。○去は、起呂反。著は、張慮反。一に除慮反。雍は、於用反。 卜、桑林見。祟見於卜兆。○見、賢遍反。崇、息遂反。 【読み】 卜するに、桑林見ゆ。祟り卜兆に見ゆ。○見は、賢遍反。崇は、息遂反。 荀偃・士匃欲奔請禱焉。奔走還宋禱謝。 【読み】 荀偃・士匃奔りて請禱せんと欲す。奔走して宋に還りて禱謝せんとす。 荀罃不可。曰、我辭禮矣。彼則以之。以、用也。 【読み】 荀罃可[き]かず。曰く、我れ禮を辭す。彼れ則ち之を以[もち]いぬ。以は、用ゆるなり。 猶有鬼神、於彼加之。言自當加罪於宋。 【読み】 猶鬼神有らば、彼に於て之を加えん、と。言うこころは、自ずから當に罪を宋に加うべし。 晉侯有閒。閒、疾差也。○差、初賣反。 【読み】 晉侯閒[い]ゆること有り。閒は、疾の差[い]ゆるなり。○差は、初賣反。 以偪陽子歸、獻于武宮。謂之夷俘。諱俘中國。故謂之夷。 【読み】 偪陽子を以[い]て歸り、武宮に獻ず。之を夷俘と謂う。中國を俘にするを諱む。故に之を夷と謂う。 偪陽、妘姓也。使周内史選其族嗣、納諸霍人。禮也。霍、晉邑。内史、掌爵祿廢置者。使選偪陽宗族賢者、令居霍奉妘姓之祀。善不滅姓。故曰禮也。使周史者、示有王命。 【読み】 偪陽は、妘[うん]姓なり。周の内史をして其の族嗣を選ばしめて、諸を霍人に納る。禮なり。霍は、晉の邑。内史は、爵祿廢置を掌る者。偪陽の宗族の賢者を選ばしめて、霍に居りて妘姓の祀を奉ぜしむ。姓を滅ぼさざるを善す。故に禮なりと曰う。周史をしむるは、王命有るを示すなり。 師歸。孟獻子以秦堇父爲右。嘉其勇力。 【読み】 師歸る。孟獻子秦堇父を以て右と爲す。其の勇力を嘉す。 生秦丕玆。事仲尼。言二父以力相尙、子事仲尼、以德相高。 【読み】 秦丕玆[しんひじ]を生む。仲尼に事う。言うこころは、二父は力を以て相尙ぶり、子は仲尼に事えて、德を以て相高ぶる。 *漢籍國辭解全書にある注は「言秦父以力相尙、子事仲尼以德相尙。」である。 六月、楚子囊・鄭子耳伐宋、師于訾毋。宋地。○訾、子斯反。 【読み】 六月、楚の子囊・鄭の子耳宋を伐ちて、訾毋[しむ]に師す。宋の地。○訾は、子斯反。 庚午、圍宋、門于桐門。不成圍而攻其城門。 【読み】 庚午[かのえ・うま]、宋を圍み、桐門を門む。圍を成さずして其の城門を攻む。 晉荀罃伐秦、報其侵也。侵、在九年。 【読み】 晉の荀罃秦を伐つは、其の侵に報ゆるなり。侵は、九年に在り。 衛侯救宋、師于襄牛。鄭子展曰、必伐衛。不然、是不與楚也。得罪於晉、又得罪於楚、國將若之何。子駟曰、國病矣。師數出疲病也。 【読み】 衛侯宋を救い、襄牛に師す。鄭の子展曰く、必ず衛を伐て。然らずんば、是れ楚に與せざるなり。罪を晉に得て、又罪を楚に得ば、國將に之を若何にせんとす、と。子駟曰く、國病めり、と。師數々出でて疲病す。 子展曰、得罪於二大國、必亡。病不猶愈於亡乎。諸大夫皆以爲然。故鄭皇耳帥師侵衛、楚令也。亦兼受楚之勑命也。皇耳、皇戌子。 【読み】 子展曰く、罪を二大國に得ば、必ず亡びん。病めるは猶亡ぶるに愈らざるや、と。諸大夫皆以て然りと爲す。故に鄭の皇耳師を帥いて衛を侵すは、楚の令なり。亦兼ねて楚の勑命を受くるなり。皇耳は、皇戌の子。 孫文子卜追之、獻兆於定姜。姜氏問繇。繇、兆辭。○繇、勑救反。 【読み】 孫文子之を追わんことを卜して、兆を定姜に獻ず。姜氏繇[ちゅう]を問う。繇は、兆の辭。○繇は、勑救反。 曰、兆如山陵。有夫出征、而喪其雄。姜氏曰、征者喪雄、禦寇之利也。大夫圖之。衛人追之。孫蒯獲鄭皇耳于犬丘。蒯、孫林父子。○喪、息浪反。蒯、古怪反。 【読み】 曰く、兆山陵の如し。夫有り出でて征して、其の雄を喪う、と。姜氏曰く、征する者雄を喪うは、寇を禦ぐの利なり。大夫之を圖れ、と。衛人之を追う。孫蒯[そんかい]鄭の皇耳を犬丘に獲たり。蒯は、孫林父の子。○喪は、息浪反。蒯は、古怪反。 秋、七月、楚子囊・鄭子耳侵我西鄙。於魯無所恥。諱而不書、其義未聞。 【読み】 秋、七月、楚の子囊・鄭の子耳我が西鄙を侵す。魯に於て恥ずる所無し。諱みて書さざるは、其の義未だ聞かざればなり。 還圍蕭、八月、丙寅、克之。蕭、宋邑。 【読み】 還りて蕭[しょう]を圍み、八月、丙寅、之に克つ。蕭は、宋の邑。 九月、子耳侵宋北鄙。孟獻子曰、鄭其有災乎。師競已甚。競、爭競也。 【読み】 九月、子耳宋の北鄙を侵す。孟獻子曰く、鄭其れ災い有らんか。師競うこと已甚だし。競は、爭競なり。 周猶不堪競、況鄭乎。周、謂天王。 【読み】 周も猶競うに堪えず、況んや鄭をや。周は、天王を謂う。 有災、其執政之三士乎。鄭簡公幼少、子駟・子國・子耳秉政。故知三士任其禍也。爲下盜殺三大夫傳。○任、音壬。 【読み】 災い有らば、其れ執政の三士か、と。鄭の簡公幼少にして、子駟・子國・子耳政を秉る。故に三士其の禍に任ずるを知るなり。下の盜三大夫を殺す爲の傳なり。○任は、音壬。 莒人閒諸侯之有事也。故伐我東鄙。諸侯有討鄭之事。 【読み】 莒人諸侯の事有るを閒す。故に我が東鄙を伐つ。諸侯鄭を討ずるの事有り。 諸侯伐鄭。齊崔杼使大子光先至于師。故長於滕。大子宜賓之以上卿。而今晉悼以一時之宜、令在滕侯上。故傳從而釋之。○長、丁丈反。 【読み】 諸侯鄭を伐つ。齊の崔杼大子光をして先ず師に至らしむ。故に滕より長とす。大子は宜しく之を賓するに上卿を以てすべし。而るに今晉悼一時の宜しきを以て、滕侯の上に在らしむ。故に傳從りて之を釋く。○長は、丁丈反。 己酉、師于牛首。鄭地。 【読み】 己酉[つちのと・とり]、牛首に師す。鄭の地。 初、子駟與尉止有爭。將禦諸侯之師而黜其車。禦牛首師也。黜、減損。 【読み】 初め、子駟尉止と爭うこと有り。將に諸侯の師を禦がんとして其の車を黜く。牛首の師を禦ぐなり。黜は、減損。 尉止獲。又與之爭、獲、囚俘。 【読み】 尉止獲[えもの]あり。又之と爭い、獲は、囚俘。 子駟抑尉止曰、爾車非禮也。言女車猶多過制。 【読み】 子駟尉止を抑えて曰く、爾の車禮に非ず、と。言うこころは、女の車猶多く制に過ぐ。 遂弗使獻。不使獻所獲。 【読み】 遂に獻ぜしめず。獲る所を獻ぜしめず。 初、子駟爲田洫、司氏・堵氏・侯氏・子師氏皆喪田焉。洫、田畔溝也。子駟爲田洫、以正封疆而侵四族田。○洫、況域反。堵、音者。或丁古反。喪、息浪反。 【読み】 初め、子駟田洫[でんきょく]を爲るとき、司氏・堵氏・侯氏・子師氏皆田を喪う。洫は、田畔の溝なり。子駟田洫を爲して、以て封疆を正しくして四族の田を侵す。○洫は、況域反。堵は、音者。或は丁古反。喪は、息浪反。 故五族聚羣不逞之人、因公子之徒以作亂。八年、子駟所殺公子媐等之黨。○媐、許其反。本作煕。 【読み】 故に五族羣不逞の人を聚めて、公子の徒に因りて以て亂を作す。八年、子駟が殺せし所の公子媐等の黨。○媐は、許其反。本煕に作る。 於是子駟當國、攝君事也。 【読み】 是に於て子駟國に當たり、君の事を攝するなり。 子國爲司馬。子耳爲司空。子孔爲司徒。冬、十月、戊辰、尉止・司臣・侯晉・堵女父・子師僕帥賊以入、晨攻執政于西宮之朝、公官。 【読み】 子國司馬爲り。子耳司空爲り。子孔司徒爲り。冬、十月、戊辰[つちのえ・たつ]、尉止・司臣・侯晉・堵女父・子師僕賊を帥いて以て入り、晨に執政を西宮の朝に攻めて、公官。 殺子駟・子國・子耳、劫鄭伯以如北宮。子孔知之。故不死。子孔、公子嘉也。知難不告、利得其處也。爲十九年、殺公子嘉傳。○難、乃旦反。 【読み】 子駟・子國・子耳を殺し、鄭伯を劫かして以て北宮に如く。子孔之を知る。故に死せず。子孔は、公子嘉なり。難を知りて告げざるは、其の處を得んことを利するなり。十九年、公子嘉を殺す爲の傳なり。○難は、乃旦反。 書曰盜、言無大夫焉。尉止等五人、皆士也。大夫、謂卿。 【読み】 書して盜と曰うは、大夫無きを言うなり。尉止等五人は、皆士なり。大夫は、卿を謂う。 子西聞盜、不儆而出、子西、公孫夏。子駟子。 【読み】 子西盜を聞き、儆[いまし]めずして出で、子西は、公孫夏。子駟の子。 尸而追盜。先臨尸而追盜。 【読み】 尸して盜を追う。先ず尸に臨みて盜を追う。 盜入於北宮。乃歸授甲。臣妾多逃、器用多喪。子產聞盜、子國子。 【読み】 盜北宮に入る。乃ち歸りて甲を授く。臣妾多く逃げ、器用多く喪う。子產盜を聞き、子國の子。 爲門者、置守門。 【読み】 門者を爲し、守門を置く。 庀羣司、具衆官。○庀、匹婢反。 【読み】 羣司を庀[そな]え、衆官を具う。○庀は、匹婢反。 閉府庫、愼閉藏、完守備、成列而後出。兵車十七乘、千二百七十五人。○藏、才浪反。又如字。守、手又反。 【読み】 府庫を閉じ、閉藏を愼み、守備を完くし、列を成して而して後に出づ。兵車十七乘、千二百七十五人。○藏は、才浪反。又字の如し。守は、手又反。 尸而攻盜於北宮。子蟜帥國人助之。殺尉止・子師僕。盜衆盡死。侯晉奔晉、堵女父・司臣・尉翩・司齊奔宋。尉翩、尉止子。司齊、司臣子。○翩、音篇。 【読み】 尸して盜を北宮に攻む。子蟜[しきょう]國人を帥いて之を助く。尉止・子師僕を殺す。盜衆盡く死す。侯晉晉に奔り、堵女父・司臣・尉翩[いへん]・司齊宋に奔る。尉翩は、尉止の子。司齊は、司臣の子。○翩は、音篇。 子孔當國。代子駟。 【読み】 子孔國に當たる。子駟に代わる。 爲載書、以位序聽政辟。自羣卿・諸司、各守其職位、以受執政之法、不得與朝政。○辟、音闢。與、音預。 【読み】 載書を爲り、位序を以て政辟を聽かしむ。羣卿・諸司より、各々其の職位を守りて、以て執政の法を受けて、朝政に與ることを得ず。○辟は、音闢。與は、音預。 大夫・諸司・門子弗順。將誅之。子孔欲誅不順者。 【読み】 大夫・諸司・門子順わず。將に之を誅せんとす。子孔順わざる者を誅せんと欲す。 子產止之、請爲之焚書。旣止子孔、又勸令燒除載書。○爲、于僞反。 【読み】 子產之を止め、之が爲に書を焚かんと請う。旣に子孔を止め、又勸めて載書を燒除せしむ。○爲は、于僞反。 子孔不可。曰、爲書以定國。衆怒而焚之、是衆爲政也。國不亦難乎。難以至治。 【読み】 子孔可[き]かず。曰く、書を爲りて以て國を定めんとす。衆怒りて之を焚かば、是れ衆政を爲すなり。國亦難からずや、と。以て治に至り難し。 子產曰、衆怒難犯、專欲難成。合二難以安國、危之道也。不如焚書以安衆。子得所欲、欲爲政也。 【読み】 子產曰く、衆の怒りは犯し難く、欲を專らにすれば成り難し。二難を合わせて以て國を安くせんとするは、危の道なり。書を焚きて以て衆を安んずるに如かず。子は欲する所を得、政を爲さんと欲するなり。 衆亦得安、不亦可乎。專欲無成、犯衆興禍。子必從之。乃焚書於倉門之外。衆而後定。不於朝内燒、欲使遠近見所燒。 【読み】 衆も亦安きを得ば、亦可ならずや。欲を專らにすれば成ること無く、衆を犯せば禍を興す。子必ず之に從え、と。乃ち書を倉門の外に焚く。衆而して後に定まる。朝内に於て燒かざるは、遠近をして燒く所を見せしめんと欲するなり。 諸侯之師城虎牢而戍之、晉師城梧及制、欲以偪鄭也。不書城、魯不與也。梧・制、皆鄭舊地。 【読み】 諸侯の師は虎牢に城きて之を戍り、晉の師は梧と制とに城き、以て鄭に偪らんと欲するなり。城くを書さざるは、魯與らざればなり。梧・制は、皆鄭の舊地。 士魴・魏絳戍之。 【読み】 士魴・魏絳之を戍る。 書曰戍鄭虎牢、非鄭地也、言將歸焉。二年、晉城虎牢而居之。今鄭復叛。故脩其城而置戍。鄭服則欲以還鄭。故夫子追書、繫之于鄭、以見晉志。 【読み】 書して鄭の虎牢を戍ると曰うは、鄭の地に非ざるも、將に歸さんとするを言うなり。二年、晉虎牢に城きて之に居る。今鄭復叛く。故に其の城を脩めて戍を置く。鄭服するときは則ち以て鄭に還さんと欲す。故に夫子追書して、之を鄭に繫けて、以て晉の志を見す。 鄭及晉平。 【読み】 鄭晉と平らぐ。 楚子囊救鄭。十一月、諸侯之師還鄭而南、至於陽陵。還、繞也。陽陵、鄭地。○還、戶關反。又音患。 【読み】 楚の子囊鄭を救う。十一月、諸侯の師鄭を還[めぐ]りて南し、陽陵に至る。還は、繞るなり。陽陵は、鄭の地。○還は、戶關反。又音患。 楚師不退。知武子欲退。曰、今我逃楚、楚必驕。驕則可與戰矣。武子、荀罃。 【読み】 楚の師退かず。知武子退かんと欲す。曰く、今我れ楚を逃げば、楚必ず驕らん。驕らば則ち與に戰う可し、と。武子は、荀罃。 欒黶曰、逃楚、晉之恥也。合諸侯以益恥、不如死。我將獨進。師遂進。己亥、與楚師夾潁而軍。潁水、出城陽至下蔡入淮。 【読み】 欒黶[らんえん]曰く、楚を逃ぐるは、晉の恥なり。諸侯を合わせて以て恥を益すは、死するに如かず。我れ將に獨り進まんとす、と。師遂に進む。己亥[つちのと・い]、楚の師と潁を夾みて軍す。潁水は、城陽より出でて下蔡に至りて淮に入る。 子蟜曰、諸侯旣有成行。必不戰矣。言有成去之志。 【読み】 子蟜曰く、諸侯旣に行を成すこと有り。必ず戰わじ。言うこころは、去るの志を成すこと有り。 從之將退。不從亦退。從、猶服也。 【読み】 之に從うも將に退かんとす。從わざるも亦退かん。從は、猶服するがごとし。 退、楚必圍我。猶將退也。不如從楚。亦以退之。以退楚。 【読み】 退かば、楚必ず我を圍まん。猶[ひと]しく將に退かんとするなり。楚に從わんには如かず。亦以て之を退けん、と。以て楚を退けん。 宵涉潁、與楚人盟。夜渡、畏晉知之。 【読み】 宵潁を涉り、楚人と盟う。夜渡るは、晉の之を知らんことを畏れてなり。 欒黶欲伐鄭師。荀罃不可。曰、我實不能禦楚、又不能庇鄭。鄭何罪。不如致怨焉而還。致怨爲後伐之資。 【読み】 欒黶鄭の師を伐たんと欲す。荀罃可かず。曰く、我れ實に楚を禦ぐこと能わず、又鄭を庇うこと能わず。鄭何の罪ある。怨みを致して還らんには如かじ。怨みを致して後伐の資と爲す。 今伐其師、楚必救之。戰而不克、爲諸侯笑。克不可命。勝負難要。不可命以必克。○要、一遙反。 【読み】 今其の師を伐たば、楚必ず之を救わん。戰いて克たずんば、諸侯の笑いと爲らん。克つこと命ず可からず。勝負要し難し。命ずるに必ず克つを以てす可からず。○要は、一遙反。 不如還也。丁未、諸侯之師還、侵鄭北鄙而歸。欲以致怨。 【読み】 還るに如かざるなり、と。丁未[ひのと・ひつじ]、諸侯の師還り、鄭の北鄙を侵して歸る。以て怨みを致さんと欲す。 楚人亦還。鄭服故也。 【読み】 楚人も亦還る。鄭服する故なり。 王叔陳生與伯輿爭政。二子、王卿士。 【読み】 王叔陳生伯輿と政を爭う。二子は、王の卿士。 王右伯輿。右、助也。 【読み】 王伯輿を右[たす]く。右は、助くなり。 王叔陳生怒而出奔、及河。王復之、欲奔晉。 【読み】 王叔陳生怒りて出奔し、河に及ぶ。王之を復し、晉に奔らんと欲す。 殺史狡以說焉。說王叔也。○狡、古卯反。說、音悅。又如字。 【読み】 史狡を殺して以て說ばす。王叔を說ばす。○狡は、古卯反。說は、音悅。又字の如し。 不入。遂處之。處叔河上。 【読み】 入らず。遂に之を處く。叔を河上に處く。 晉侯使士匃平王室。王叔與伯輿訟焉。爭曲直。 【読み】 晉侯士匃をして王室を平らげしむ。王叔と伯輿と訟う。曲直を爭う。 王叔之宰、宰、家臣。 【読み】 王叔の宰と、宰は、家臣。 與伯輿之大夫瑕禽、瑕禽、伯輿屬大夫。 【読み】 伯輿の大夫瑕禽と、瑕禽は、伯輿の屬大夫。 坐獄於王庭。獄、訟也。周禮、命夫命婦、不躬坐獄訟。故使宰與屬大夫對爭曲直。 【読み】 獄に王庭に坐す。獄は、訟なり。周禮に、命夫命婦は、躬ら獄訟に坐せず、と。故に宰と屬大夫とをして對して曲直を爭わしむ。 士匃聽之。王叔之宰曰、篳門閨竇之人、而皆陵其上、其難爲上矣。篳門、柴門。閨竇、小戶。穿壁爲戶。上銳下方、狀如圭也。言伯輿微賤之家。○竇、音豆。 【読み】 士匃之を聽く。王叔の宰曰く、篳門閨竇[ひつもんけいとう]の人にして、皆其の上を陵ぐは、其れ上爲り難し、と。篳門は、柴門。閨竇は、小戶。壁を穿ちて戶を爲る。上銳[とが]り下は方、狀圭の如きなり。伯輿は微賤の家なるを言う。○竇は、音豆。 瑕禽曰、昔平王東遷、吾七姓從王、牲用備具、王賴之、而賜之騂旄之盟、平王徙時、大臣從者有七姓。伯輿之祖、皆在其中、主爲王備犠牲、共祭祀、王恃其用。故與之盟、使世守其職。騂旄、赤牛也。舉騂旄者、言得重盟、不以犬雞。○從、才用反。又如字。騂、息營反。 【読み】 瑕禽曰く、昔平王東遷せしとき、吾が七姓王に從い、牲用備具せしかば、王之に賴りて、之に騂旄[せいぼう]の盟を賜いて、平王徙りし時、大臣の從う者七姓有り。伯輿の祖も、皆其の中に在り、王の爲に犠牲を備え、祭祀に共することを主り、王其の用を恃む。故に之と盟い、世々其の職を守らしむ。騂旄は、赤牛なり。騂旄を舉ぐるは、重盟を得、犬雞を以てせざるを言う。○從は、才用反。又字の如し。騂は、息營反。 曰、世世無失職。若篳門閨竇、其能來東底乎。且王何賴焉。言我若貧賤、何能來東、使王恃其用而與之盟邪。底、至也。○底、音旨。 【読み】 曰く、世世職を失うこと無かれ、と。若し篳門閨竇ならば、其れ能く東に來り底らんや。且王何ぞ賴らん。言うこころは、我れ若し貧賤ならば、何ぞ能く東に來り、王をして其の用を恃みて之と盟わしめんや。底は、至るなり。○底は、音旨。 今自王叔之相也、政以賄成、隨財制政。 【読み】 今王叔の相たりしより、政賄を以て成りて、財に隨いて政を制す。 而刑放於寵、寵臣專刑不任法。 【読み】 刑寵に放[ほしいまま]にして、寵臣刑を專にして法に任ぜず。 官之師旅、不勝其富。師旅之長、皆受賂。○勝、音升。 【読み】 官の師旅は、其の富に勝えず。師旅の長、皆賂を受く。○勝は、音升。 吾能無篳門閨竇乎。言王叔之屬富。故使我貧。 【読み】 吾れ能く篳門閨竇なること無からんや。言うこころは、王叔の屬富む。故に我をして貧しからしむ。 唯大國圖之。圖、猶議也。 【読み】 唯大國之を圖れ。圖は、猶議するがごとし。 下而無直、則何謂正矣。正者不失下之直。 【読み】 下にして直無くば、則ち何ぞ正と謂わん、と。正とは下の直を失わざるなり。 范宣子曰、天子所右、寡君亦右之、所左亦左之。宣子知伯輿直、不欲自專。故推之於王。○右、音又。左、音佐。下同。又竝如字。 【読み】 范宣子曰く、天子の右にする所は、寡君も亦之を右にし、左にする所は亦之を左にす、と。宣子伯輿が直を知れども、自ら專にすることを欲せず。故に之を王に推すなり。○右は、音又。左は、音佐。下も同じ。又竝字の如し。 使王叔氏與伯輿合要。合要辭。 【読み】 王叔氏と伯輿とをして要を合わせしむ。要辭を合わす。 王叔氏不能舉其契。要契之辭。○契、苦計反。 【読み】 王叔氏其の契を舉ぐること能わず。要契の辭。○契は、苦計反。 王叔奔晉。 【読み】 王叔晉に奔る。 不書、不告也。 【読み】 書さざるは、告げざればなり。 單靖公爲卿士、以相王室。代王叔。 【読み】 單靖公卿士と爲り、以て王室を相く。王叔に代わる。 〔經〕十有一年、春、王正月、作三軍。增立中軍。萬二千五百人爲軍。 【読み】 〔經〕十有一年、春、王の正月、三軍を作る。中軍を增し立つ。萬二千五百人を軍と爲す。 夏、四月、四卜郊。不從。乃不郊。無傳。 【読み】 夏、四月、四たび郊を卜す。從わず。乃ち郊せず。傳無し。 鄭公孫舍之帥師侵宋。公會晉侯・宋公・衛侯・曹伯・齊世子光・莒子・邾子・滕子・薛伯・杞伯・小邾子伐鄭。世子光至、復在莒子之先。故晉悼亦進之。 【読み】 鄭の公孫舍之師を帥いて宋を侵す。公晉侯・宋公・衛侯・曹伯・齊の世子光・莒子・邾子[ちゅし]・滕子・薛伯・杞伯・小邾子に會して鄭を伐つ。世子光の至る、復莒子の先に在り。故に晉悼亦之を進む。 秋、七月、己未、同盟于亳城北。亳城、鄭地。伐鄭而書同盟、鄭與盟可知。○亳、蒲洛反。與、音預。 【読み】 秋、七月、己未[つちのと・ひつじ]、亳城[はくじょう]の北に同盟す。亳城は、鄭の地。鄭を伐ちて同盟すと書すは、鄭盟に與ること知る可し。○亳は、蒲洛反。與は、音預。 公至自伐鄭。無傳。 【読み】 公鄭を伐ちてより至る。傳無し。 楚子・鄭伯伐宋。公會晉侯・宋公・衛侯・曹伯・齊世子光・莒子・邾子・滕子・薛伯・杞伯・小邾子伐鄭。晉遂尊光。 【読み】 楚子・鄭伯宋を伐つ。公晉侯・宋公・衛侯・曹伯・齊の世子光・莒子・邾子・滕子・薛伯・杞伯・小邾子に會して鄭を伐つ。晉遂に光を尊ぶ。 會于蕭魚。鄭服而諸侯會。蕭魚、鄭地。 【読み】 蕭魚[しょうぎょ]に會す。鄭服して諸侯會するなり。蕭魚は、鄭の地。 公至自會。無傳。以會至者、觀兵而不果侵伐。 【読み】 公會より至る。傳無し。會を以て至るは、兵を觀[しめ]して侵伐を果たさざればなり。 楚人執鄭行人良霄。良霄、公孫輒子、伯有也。 【読み】 楚人鄭の行人良霄[りょうしょう]を執う。良霄は、公孫輒の子、伯有なり。 冬、秦人伐晉。 【読み】 冬、秦人晉を伐つ。 〔傳〕十一年、春、季武子將作三軍。魯本無中軍、唯上下二軍皆屬於公、有事、三卿更帥以征伐。季氏欲專其民人。故假立中軍、因以改作。○更、音庚。 【読み】 〔傳〕十一年、春、季武子將に三軍を作らんとす。魯本中軍無く、唯上下二軍ありて皆公に屬し、事有れば、三卿更[こも]々帥いて以て征伐す。季氏其の民人を專にせんと欲す。故に中軍を立つるを假りて、因りて以て改め作るなり。○更は、音庚。 告叔孫穆子曰、請爲三軍、各征其軍。征、賦稅也。三家各征其軍之家屬。 【読み】 叔孫穆子に告げて曰く、請う、三軍を爲り、各々其の軍を征せん、と。征は、賦稅なり。三家各々其の軍の家屬を征す。 穆子曰、政將及子。子必不能。政者、霸國之政令。禮、大國三軍。魯次國。而爲大國之制、貢賦必重。故憂不能堪。 【読み】 穆子曰く、政將に子に及ばんとす。子必ず能わじ、と。政は、霸國の政令なり。禮に、大國は三軍、と。魯は次國なり。而るに大國の制を爲せば、貢賦必ず重からん。故に堪うること能わざるを憂えん。 武子固請之。穆子曰、然則盟諸。穆子知季氏將復變易。故盟之。 【読み】 武子固く之を請う。穆子曰く、然らば則ち諸を盟わん、と。穆子季氏が將に復變易せんとするを知る。故に之に盟う。 乃盟諸僖閎、僖宮之門。 【読み】 乃ち諸を僖閎に盟い、僖宮の門。 詛諸五父之衢。五父衢、道名。在魯國東南。詛、以禍福之言相要。 【読み】 諸を五父の衢[く]に詛[ちか]う。五父の衢は、道の名。魯國の東南に在り。詛は、禍福の言を以て相要するなり。 正月、作三軍。三分公室、而各有其一、三分國民衆。 【読み】 正月、三軍を作る。公室を三分して、各々其の一を有ち、國の民衆を三分す。 三子各毀其乘。壞其軍乘、分以足成三軍。○乘、繩證反。壞、音怪。足、將住反。亦如字。 【読み】 三子各々其の乘を毀[こぼ]つ。其の軍乘を壞り、分かちて以て三軍を足し成す。○乘は、繩證反。壞は、音怪。足は、將住反。亦字の如し。 季氏使其乘之人、以其役邑入者無征、使軍乘之人、率其邑役入季氏者、無公征。 【読み】 季氏は其の乘の人をして、其の役邑を以て入る者は征無からしめ、軍乘の人をして、其の邑役を率いて季氏に入る者は、公征無からしむ。 不入者倍征。不入季氏者、則使公家倍征之。設利病欲驅使入己。故昭五年傳曰、季氏盡征之。民辟倍征。故盡屬季氏。 【読み】 入らざる者は倍征す。季氏に入らざる者は、則ち公家をして之を倍征せしむ。利病を設けて驅して己に入らしめんと欲す。故に昭五年の傳に曰く、季氏盡く之を征す、と。民倍征を辟く。故に盡く季氏に屬す。 孟氏使半爲臣。若子若弟。取其子弟之半也。四分其乘之人、以三歸公而取其一。 【読み】 孟氏は半をして臣爲らしむ。若しくは子若しくは弟なり。其の子弟の半を取るなり。其の乘の人を四分にして、三を以て公に歸して其の一を取る。 叔孫氏使盡爲臣。盡取子弟、以其父兄歸公。 【読み】 叔孫氏は盡く臣爲たらしむ。盡く子弟を取りて、其の父兄を以て公に歸す。 不然不舍。制軍分民不如是、則三家不舍其故而改作也。此蓋三家盟詛之本言。○舍、音捨。 【読み】 然らざれば舍てじという。軍を制し民を分かつこと是の如くせざれば、則ち三家其の故を舍てて改め作らず、と。此れ蓋し三家盟詛の本言ならん。○舍は、音捨。 鄭人患晉・楚之故。諸大夫曰、不從晉、國幾亡。幾、近也。○幾、音機。徐音畿。 【読み】 鄭人晉・楚の故[こと]を患う。諸大夫曰く、晉に從わずんば、國幾ど亡びん。幾は、近きなり。○幾は、音機。徐音畿。 楚弱於晉。晉不吾疾也。疾、急也。 【読み】 楚は晉より弱し。晉吾を疾くせざるなり。疾は、急なり。 晉疾、楚將辟之。何爲而使晉師致死於我。言當作何計。 【読み】 晉疾くせば、楚將に之を辟けんとす。何を爲してか晉の師をして死を我に致さしめん。言うこころは、當に何の計を作すべき。 楚弗敢敵、而後可固與也。固與晉也。 【読み】 楚敢えて敵せずして、而して後に固く與す可し、と。固く晉に與するなり。 子展曰、與宋爲惡、諸侯必至。吾從之盟、楚師至。吾又從之、則晉怒甚矣。晉能驟來、楚將不能。吾乃固與晉。 【読み】 子展曰く、宋と惡を爲さば、諸侯必ず至らん。吾れ之に從いて盟わば、楚の師至らん。吾れ又之に從わば、則ち晉の怒ること甚だしからん。晉能く驟[しば]々來らば、楚將に能わざらんとす。吾れ乃ち固く晉に與せん、と。 大夫說之、使疆場之司惡於宋。使守疆場之吏侵犯宋。○說、音悅。場、音亦。 【読み】 大夫之を說び、疆場の司をして宋に惡くせしむ。疆場を守るの吏をして宋を侵犯せしむ。○說は、音悅。場は、音亦。 宋向戌侵鄭。大獲。子展曰、師而伐宋可矣。若我伐宋、諸侯之伐我必疾。吾乃聽命焉、且告於楚。楚師至、吾又與之盟。而重賂晉師、乃免矣。言如此、乃免於晉・楚之難。 【読み】 宋の向戌[しょうじゅつ]鄭を侵す。大いに獲たり。子展曰く、師して宋を伐たば可なり。若し我れ宋を伐たば、諸侯の我を伐つこと必ず疾からん。吾れ乃ち命を聽き、且楚に告げん。楚の師至らば、吾れ又之と盟わん。而して重く晉の師に賂わば、乃ち免れん、と。言うこころは、此の如くならば、乃ち晉・楚の難を免れん。 夏、鄭子展侵宋。欲以致諸侯。 【読み】 夏、鄭の子展宋を侵す。以て諸侯を致さんと欲す。 四月、諸侯伐鄭。己亥、齊大子光・宋向戌先至于鄭、門于東門。傳釋齊大子光所以序莒上也。向戌不書、宋公在魯故。 【読み】 四月、諸侯鄭を伐つ。己亥[つちのと・い]、齊の大子光・宋の向戌先ず鄭に至り、東門を門[せ]む。傳齊の大子光が莒の上に序ずる所以を釋く。向戌書さざるは、宋公魯に在る故なり。 其莫、晉荀罃至于西郊、東侵舊許。許之舊國、鄭新邑。○莫、音暮。 【読み】 其の莫に、晉の荀罃[じゅんおう]西郊に至り、東舊許を侵す。許の舊國、鄭の新邑。○莫は、音暮。 衛孫林父侵其北鄙。六月、諸侯會于北林、師于向。向地、在潁川長社縣東北。○向、音餉。 【読み】 衛の孫林父其の北鄙を侵す。六月、諸侯北林に會し、向に師す。向の地は、潁川長社縣の東北に在り。○向は、音餉[しょう]。 右還、次于瑣、北行而西爲右還。滎陽宛陵縣西有瑣候亭。○宛、於阮反。又於元反。 【読み】 右に還[めぐ]り、瑣に次り、北行して西するを右に還ると爲す。滎陽宛陵縣の西に瑣候亭有り。○宛は、於阮反。又於元反。 圍鄭、觀兵于南門、觀、示也。 【読み】 鄭を圍み、兵を南門に觀[しめ]し、觀は、示すなり。 西濟于濟隧。濟隧、水名。○濟、子禮反。 【読み】 西濟隧を濟る。濟隧は、水の名。○濟は、子禮反。 鄭人懼、乃行成。 【読み】 鄭人懼れ、乃ち成[たい]らぎを行う。 秋、七月、同盟于亳。范宣子曰、不愼、必失諸侯。愼、敬威儀、謹辭令。 【読み】 秋、七月、亳に同盟す。范宣子曰く、愼まずんば、必ず諸侯を失わん。愼は、威儀を敬み、辭令を謹むなり。 諸侯道敝而無成。能無貳乎。數伐鄭、皆罷於道路。○數、所角反。罷、音皮。 【読み】 諸侯道に敝[つか]れて成せること無し。能く貳あること無からんや、と。數々鄭を伐ちて、皆道路に罷[つか]る。○數は、所角反。罷は、音皮。 乃盟。載書曰、凡我同盟、毋薀年。薀積年穀而不分災。○薀、紆粉反。 【読み】 乃ち盟う。載書に曰く、凡そ我が同盟、年を薀[つ]むこと毋かれ。年穀を薀積して災いに分かたず。○薀は、紆粉反。 毋壅利。專山川之利。○壅、於勇反。 【読み】 利を壅ぐこと毋かれ。山川の利を專にす。○壅は、於勇反。 毋保姦。藏罪人。 【読み】 姦を保つこと毋かれ。罪人を藏す。 毋留慝。速去惡。○慝、他得反。 【読み】 慝を留むること毋かれ。速やかに惡を去る。○慝は、他得反。 救災患、恤禍亂、同好惡、獎王室。獎、助也。○好惡、竝如字。或上呼報反。下烏路反。 【読み】 災患を救い、禍亂を恤え、好惡を同じくし、王室を獎[たす]けん。獎は、助くなり。○好惡は、竝字の如し。或は上は呼報反。下は烏路反。 或閒茲命、司愼司盟、名山名川、二司、天神。 【読み】 或は茲の命を閒せば、司愼司盟、名山名川、二司は、天神。 羣神羣祀、羣祀、在祀典者。 【読み】 羣神羣祀、羣祀は、祀典に在る者。 先王先公、先王、諸侯之大祖。宋祖、帝乙。鄭祖、厲王之比也。先公、始封君。○大、音泰。 【読み】 先王先公、先王は、諸侯の大祖。宋祖は、帝乙。鄭祖は、厲王の比[たぐい]なり。先公は、始封の君。○大は、音泰。 七姓十二國之祖、七姓、晉。魯。衛。鄭。曹。滕、姬姓。邾・小邾、曹姓。宋、子姓。齊、姜姓。莒、己姓。杞、姒姓。薛、任姓。實十三國。言十二、誤也。○己、音紀。或音杞。任、音壬。 【読み】 七姓十二國の祖、七姓は、晉。魯。衛。鄭。曹。滕は、姬姓。邾・小邾は、曹姓。宋は、子姓。齊は、姜姓。莒は、己姓。杞は、姒姓。薛は、任姓。實は十三國なり。十二と言うは、誤りなり。○己は、音紀。或は音杞。任は、音壬。 明神殛之、殛、誅也。 【読み】 明神之を殛して、殛は、誅するなり。 俾失其民、隊命亡氏、踣其國家。踣、斃也。○隊、直類反。踣、蒲北反。又敷豆反。 【読み】 其の民を失い、命を隊[おと]し氏を亡ぼし、其の國家を踣[たお]さしめん、と。踣[ほく]は、斃すなり。○隊は、直類反。踣は、蒲北反。又敷豆反。 楚子囊乞旅于秦。乞師旅于秦。 【読み】 楚の子囊旅を秦に乞う。師旅を秦に乞う。 秦右大夫詹帥師從楚子、將以伐鄭。鄭伯逆之。丙子、伐宋。鄭逆服。故更伐宋也。秦師不書、不與伐宋而還。○與、音預。 【読み】 秦の右大夫詹[せん]師を帥いて楚子に從い、將に以て鄭を伐たんとす。鄭伯之を逆う。丙子[ひのえ・ね]、宋を伐つ。鄭逆え服す。故に更に宋を伐つなり。秦の師書さざるは、宋を伐つに與らずして還ればなり。○與は、音預。 九月、諸侯悉師以復伐鄭。此夏諸侯皆復來。故曰悉師。○復、扶又反。 【読み】 九月、諸侯師を悉くして以て復鄭を伐つ。此の夏の諸侯皆復來る。故に師を悉くすと曰う。○復は、扶又反。 鄭人使良霄・大宰石■如楚、告將服于晉。曰、孤以社稷之故、不能懷君。君若能以玉帛綏晉。不然、則武震以攝威之、孤之願也。楚人執之。 【読み】 鄭人良霄・大宰石■[せきちゃく]をして楚に如きて、將に晉に服せんとするを告げしむ。曰く、孤社稷の故を以て、君を懷うこと能わず。君若し能く玉帛を以て晉を綏んぜんか。然らずんば、則ち武震以て之を攝威せば、孤の願いなり、と。楚人之を執う。 *■は、上から「兔の上部」+「比」+「犬」。次段も同じ。 書曰行人、言使人也。書行人、言非使人之罪。古者兵交、使在其閒。所以通命示整。或執殺之、皆以爲譏也。旣成而後告。故書在蕭魚下。石■爲介。故不書。○■、勑略反。攝、如字。又之涉反。 【読み】 書して行人と曰うは、使人を言うなり。行人と書すは、使人の罪に非ざるを言う。古は兵交わるや、使い其の閒に在り。命を通じ整を示す所以なり。或は之を執殺すれば、皆以て譏ることを爲すなり。旣に成らぎて而して後に告ぐ。故に書すこと蕭魚の下に在り。石■は介爲り。故に書さず。○■は、勑略反。攝は、字の如し。又之涉反。 諸侯之師觀兵于鄭東門。鄭人使王子伯騈行成。甲戌、晉趙武入盟鄭伯。冬、十月、丁亥、鄭子展出盟晉侯。二盟不書、不告。 【読み】 諸侯の師兵を鄭の東門に觀す。鄭人王子伯騈[はくへん]をして成らぎを行わしむ。甲戌[きのえ・いぬ]、晉の趙武入りて鄭伯に盟う。冬、十月、丁亥[ひのと・い]、鄭の子展出でて晉侯に盟う。二盟書さざるは、告げざればなり。 十二月、戊寅、會于蕭魚。經書秋、史失之。 【読み】 十二月、戊寅[つちのえ・とら]、蕭魚に會す。經秋に書すは、史之を失うなり。 庚辰、赦鄭囚、皆禮而歸之。納斥候、不相備也。○斥、音尺。一昌夜反。 【読み】 庚辰[かのえ・たつ]、鄭の囚を赦し、皆禮して之を歸す。斥候を納れ、相備えず。○斥は、音尺。一に昌夜反。 禁侵掠。 【読み】 侵掠を禁ず。 晉侯使叔肸告于諸侯。叔肸、叔向也。告諸侯亦使赦鄭囚。○掠、音亮。肸、許乙反。向、許丈反。 【読み】 晉侯叔肸[しゅくきつ]をして諸侯に告げしむ。叔肸は、叔向[しゅくきょう]なり。諸侯に告げて亦鄭の囚を赦さしむ。○掠は、音亮。肸は、許乙反。向は、許丈反。 公使臧孫紇對曰、凡我同盟、小國有罪、大國致討、苟有以藉手、鮮不赦宥。寡君聞命矣。言晉討小國、有藉手之功、則赦其罪人。德義如是。不敢不承命。○藉、在夜反。 【読み】 公臧孫紇をして對えしめて曰く、凡そ我が同盟、小國罪有りて、大國討を致すに、苟も以て手を藉[し]くこと有れば、赦宥せざること鮮し。寡君命を聞けり、と。言うこころは、晉小國を討じて、手を藉くの功有れば、則ち其の罪人を赦す。德義是の如し。敢えて命を承けずんばあらず。○藉は、在夜反。 鄭人賂晉侯以師悝・師觸・師蠲、悝・觸・蠲、皆樂師名。○悝、苦回反。蠲、古玄反。亦音圭。 【読み】 鄭人晉侯に賂うに師悝[しかい]・師觸・師蠲[しけん]と、悝・觸・蠲は、皆樂師の名。○悝は、苦回反。蠲は、古玄反。亦音圭。 廣車・軘車淳十五乘甲兵備、廣車・軘車、皆兵車名。淳、耦也。○廣、古曠反。軘、徒溫反。淳、述倫反。又之倫反。 【読み】 廣車・軘車[とんしゃ]淳に十五乘の甲兵備わると、廣車・軘車は、皆兵車の名。淳は、耦なり。○廣は、古曠反。軘は、徒溫反。淳は、述倫反。又之倫反。 凡兵車百乘、他兵車及廣・軘共百乘。 【読み】 凡て兵車百乘と、他の兵車と廣・軘と共に百乘。 歌鐘二肆、肆、列也。縣鐘十六爲一肆。二肆、三十二枚。 【読み】 歌鐘二肆と、肆は、列なり。縣鐘十六を一肆と爲す。二肆は、三十二枚。 及其鎛磬、鎛磬、皆樂器。○鎛、音博。 【読み】 其の鎛磬[はくけい]と、鎛磬は、皆樂器。○鎛は、音博。 女樂二八。十六人。 【読み】 女樂二八とを以てす。十六人。 晉侯以樂之半賜魏絳、曰、子教寡人和諸戎狄、以正諸華、在四年。 【読み】 晉侯樂の半ばを以て魏絳に賜いて、曰く、子寡人に諸戎狄を和して、以て諸華を正すことを敎えてより、四年に在り。 八年之中、九合諸侯、如樂之和、無所不諧。諧、亦和也。○九合諸侯、謂五年會戚、又會城棣救陳、七年會鄬、八年會邢丘、九年盟于戲、十年會柤、又伐鄭戌虎牢、十一年同盟亳城北、又會蕭魚。 【読み】 八年の中に、九たび諸侯を合わすこと、樂の和するが如く、諧[かな]わざる所無し。諧も、亦和すなり。○九たび諸侯を合わすとは、五年戚に會し、又城棣に會して陳を救い、七年鄬[い]に會し、八年邢丘に會し、九年戲に盟い、十年柤[さ]に會し、又鄭を伐ちて虎牢を戌り、十一年亳城の北に同盟し、又蕭魚に會するを謂う。 請與子樂之。共此樂。○樂、音洛。一音岳。 【読み】 請う、子と之を樂しまん、と。此の樂しみを共にす。○樂は、音洛。一音岳。 辭曰、夫和戎狄、國之福也。八年之中、九合諸侯、諸侯無慝、君之靈也。二三子之勞也。臣何力之有焉。 【読み】 辭して曰く、夫れ戎狄を和するは、國の福なり。八年の中、諸侯を九合して、諸侯慝無きは、君の靈なり。二三子の勞なり。臣何の力か之れ有らん。 抑臣願君安其樂、而思其終也。詩曰、樂旨君子、殿天子之邦。詩、小雅也。謂諸侯有樂美之德、可以鎭撫天子之邦。殿、鎭也。○殿、都遍反。 【読み】 抑々臣願わくは君其の樂しみを安んじて、其の終わりを思わんことを。詩に曰く、樂旨の君子は、天子の邦を殿[しず]む。詩は、小雅なり。諸侯樂美の德有れば、以て天子の邦を鎭撫す可きを謂う。殿は、鎭むるなり。○殿は、都遍反。 樂旨君子、福祿攸同。攸、所也。 【読み】 樂旨の君子は、福祿の同じくする攸。攸は、所なり。 便蕃左右、亦是帥從。便蕃、數也。言遠人相帥來服從、便蕃在左右。○蕃、音煩。 【読み】 左右に便蕃として、亦是れ帥從す、と。便蕃は、數々なり。遠人相帥いて來りて服從して、便蕃として左右に在るを言う。○蕃は、音煩。 夫樂以安德、和其心也。 【読み】 夫れ樂以て德を安くし、其の心を和するなり。 義以處之、處位以義。 【読み】 義以て之に處り、位に處るに義を以てす。 禮以行之、行敎令。 【読み】 禮以て之を行い、敎令を行う。 信以守之、守所行。 【読み】 信以て之を守り、行う所を守る。 仁以厲之、厲風俗。 【読み】 仁以て之を厲まして、風俗を厲ます。 而後可以殿邦國、同福祿、來遠人。所謂樂也。言五德皆備、乃爲樂。非但金石。 【読み】 而して後に以て邦國を殿め、福祿を同じくし、遠人を來す可し。所謂樂しむなり。五德皆備えて、乃ち樂しみと爲す。但金石のみに非ざるを言う。 書曰、居安思危。逸書。 【読み】 書に曰く、安きに居りて危うきを思え。逸書。 思則有備。有備無患。敢以此規。規正公。 【読み】 思えば則ち備え有り。備え有れば患え無し、と。敢えて此を以て規[ただ]す、と。公を規正す。 公曰、子之敎、敢不承命。抑微子、寡人無以待戎、待遇接納。 【読み】 公曰く、子の敎え、敢えて命を承けざらんや。抑々子微かりせば、寡人以て戎を待すること無く、待遇接納。 不能濟河。渡河南服鄭。 【読み】 河を濟ること能わず。河を渡りて南鄭を服す。 夫賞、國之典也。藏在盟府。司盟之府、有賞功之制。 【読み】 夫れ賞は、國の典なり。藏めて盟府に在り。司盟の府に、賞功の制有り。 不可廢也。子其受之。 【読み】 廢す可からざるなり。子其れ之を受けよ、と。 魏絳於是乎始有金石之樂。禮也。禮、大夫有功則賜樂。 【読み】 魏絳是に於て始めて金石の樂有り。禮なり。禮に、大夫功有れば則ち樂を賜う、と。 秦庶長鮑・庶長武帥師伐晉、以救鄭。庶長、秦爵也。不書救鄭、已屬晉、無所救。○長、丁丈反。鮑、步卯反。 【読み】 秦の庶長鮑・庶長武師を帥いて晉を伐ちて、以て鄭を救う。庶長は、秦の爵なり。鄭を救うを書さざるは、已に晉に屬して、救う所無ければなり。○長は、丁丈反。鮑は、步卯反。 鮑先入晉地。士魴御之。少秦師而弗設備。壬午、武濟自輔氏、從輔氏渡河。○御、魚呂反。後放此。 【読み】 鮑先ず晉の地に入る。士魴之を御[ふせ]ぐ。秦の師を少なしとして備えを設けず。壬午[みずのえ・うま]、武輔氏より濟り、輔氏より河を渡る。○御は、魚呂反。後も此に放え。 與鮑交伐晉師。己丑、秦・晉戰于櫟。晉師敗績。易秦故也。不書敗績、晉恥易秦而敗。故不告也。櫟、晉地。○櫟、力的反。又失灼反。易、以豉反。 【読み】 鮑と交々晉の師を伐つ。己丑[つちのと・うし]、秦・晉櫟[れき]に戰う。晉の師敗績す。秦を易[あなど]る故なり。敗績を書さざるは、晉秦を易りて敗るるを恥ず。故に告げざればなり。櫟は、晉の地。○櫟は、力的反。又失灼反。易は、以豉反。 〔經〕十有二年、春、王二月、莒人伐我東鄙、圍台。琅邪費縣南有台亭。○台、勑才反。又音臺。一翼之反。 【読み】 〔經〕十有二年、春、王の二月、莒人我が東鄙を伐ち、台を圍む。琅邪費縣の南に台亭有り。○台は、勑才反。又音臺。一に翼之反。 季孫宿帥師救台、遂入鄆。鄆、莒邑。○鄆、音運。 【読み】 季孫宿師を帥いて台を救い、遂に鄆[うん]に入る。鄆は、莒の邑。○鄆は、音運。 夏、晉侯使士魴來聘。秋、九月、吳子乘卒。五年、會於戚。公不與盟。而赴以名。 【読み】 夏、晉侯士魴をして來聘せしむ。秋、九月、吳子乘卒す。五年、戚に會す。公盟に與らず。而れども赴[つ]ぐるに名を以てす。 冬、楚公子貞帥師侵宋。公如晉。 【読み】 冬、楚の公子貞師を帥いて宋を侵す。公晉に如く。 〔傳〕十二年、春、莒人伐我東鄙、圍台。季武子救台、遂入鄆、乘勝入鄆。報見伐。 【読み】 〔傳〕十二年、春、莒人我が東鄙を伐ち、台を圍む。季武子台を救い、遂に鄆に入り、勝に乘じて鄆に入る。伐たるるに報ゆるなり。 取其鐘以爲公盤。 【読み】 其の鐘を取りて以て公の盤に爲る。 夏、晉士魴來聘、且拜師。謝前年伐鄭師。 【読み】 夏、晉の士魴來聘し、且つ師を拜す。前年鄭を伐つの師を謝す。 秋、吳子壽夢卒。壽夢、吳子之號。 【読み】 秋、吳子壽夢卒す。壽夢は、吳子の號。 臨於周廟。禮也。周廟、文王廟也。周公出文王。故魯立其廟。吳始通。故曰禮。○臨、力蔭反。下同。 【読み】 周廟に臨す。禮なり。周廟は、文王の廟なり。周公は文王より出づ。故に魯其の廟を立つ。吳始めて通ず。故に禮と曰う。○臨は、力蔭反。下も同じ。 凡諸侯之喪、異姓臨於外、於城外、向其國。 【読み】 凡そ諸侯の喪、異姓は外に臨し、城外に於て、其の國に向かう。 同姓於宗廟、所出王之廟。 【読み】 同姓は宗廟に於てし、出づる所の王の廟。 同宗於祖廟、始封君之廟。 【読み】 同宗は祖廟に於てし、始封の君の廟。 同族於禰廟。父廟也。同族、謂高祖以下。 【読み】 同族は禰廟[でいびょう]に於てす。父の廟なり。同族は、高祖以下を謂う。 是故魯爲諸姬、臨於周廟、諸姬、同姓國。 【読み】 是の故に魯諸姬の爲には、周廟に臨し、諸姬は、同姓の國。 爲邢・凡・蔣・茅・胙・祭、臨於周公之廟。卽祖廟也。六國、皆周公之支子。別封爲國、共祖周公。○胙、才故反。祭、側界反。又如字。 【読み】 邢・凡・蔣・茅・胙・祭の爲には、周公の廟に臨す。卽ち祖廟なり。六國は、皆周公の支子。別封せられて國を爲し、共に周公を祖にす。○胙は、才故反。祭は、側界反。又字の如し。 冬、楚子囊・秦庶長無地伐宋、師于楊梁、以報晉之取鄭也。取鄭、在前年。梁國睢陽縣東有地、名楊梁。 【読み】 冬、楚の子囊・秦の庶長無地宋を伐ち、楊梁に師するは、以て晉の鄭を取るに報ゆるなり。鄭を取るは、前年に在り。梁國睢陽縣の東に地有り、楊梁と名づく。 靈王求后于齊。齊侯問對於晏桓子。桓子對曰、先王之禮辭有之。天子求后於諸侯、諸侯對曰、夫婦所生若而人、不敢譽、亦不敢毀。故曰若如人。○譽、音餘。 【読み】 靈王后を齊に求む。齊侯對えを晏桓子に問う。桓子對えて曰く、先王の禮辭に之れ有り。天子后を諸侯に求むれば、諸侯對えて曰く、夫婦の生む所の若而人と、敢えて譽めず、亦敢えて毀[そし]らず。故に若の如き人と曰う。○譽は、音餘。 *「若如人」は漢籍國字解全書では「若而人」。 妾婦之子若而人。言非適也。 【読み】 妾婦の子の若而人、と。適に非ざるを言うなり。 無女而有姊妹及姑姊妹、則曰先守某公之遺女若而人。 【読み】 女無くして姊妹と姑姊妹と有れば、則ち先守某公の遺女若而人と曰う、と。 齊侯許昏。王使陰里結之。陰里、周大夫。結、成也。爲十五年、劉夏逆王后傳。○守、手又反。 【読み】 齊侯昏を許す。王陰里をして之を結ばしむ。陰里は、周の大夫。結は、成すなり。十五年、劉夏王后を逆うる爲の傳なり。○守は、手又反。 公如晉、朝、且拜士魴之辱。禮也。士魴聘在此年夏。嫌君臣不敵。故曰禮。 【読み】 公晉に如くは、朝して、且つ士魴の辱きを拜するなり。禮なり。士魴の聘は此の年の夏に在り。君臣敵せざるに嫌あり。故に禮と曰う。 秦嬴歸于楚。秦景公妹、爲楚共王夫人。 【読み】 秦嬴[しんえい]楚に歸[とつ]ぐ。秦の景公の妹、楚の共王の夫人と爲る。 楚司馬子庚聘于秦、爲夫人寧。禮也。子庚、莊王子、午也。諸侯夫人、父母旣沒、歸寧使卿。故曰禮。 【読み】 楚の司馬子庚秦に聘し、夫人の爲に寧す。禮なり。子庚は、莊王の子、午なり。諸侯の夫人、父母旣に沒すれば、歸寧に卿を使う。故に禮と曰う。 〔經〕十有三年、春、公至自晉。夏、取邿。邿、小國也。任城亢父縣有邿亭。傳例曰、書取、言易也。○邿、音詩。任、音壬。亢、苦浪反。又音剛。 【読み】 〔經〕十有三年、春、公晉より至る。夏、邿[し]を取る。邿は、小國なり。任城亢父縣に邿亭有り。傳例に曰く、取ると書すは、易きを言うなり、と。○邿は、音詩。任は、音壬。亢は、苦浪反。又音剛。 秋、九月、庚辰、楚子審卒。共王也。成二年、大夫盟于蜀。 【読み】 秋、九月、庚辰[かのえ・たつ]、楚子審卒す。共王なり。成二年、大夫蜀に盟う。 冬、城防。 【読み】 冬、防に城く。 〔傳〕十三年春、公至自晉。孟獻子書勞于廟。禮也。書勳勞於策也。桓二年傳曰、公至自唐、告於廟也。凡公行、告於宗廟。反行、飮至、舍爵、策勳。禮也。桓十六年傳又曰、公至自伐鄭。以飮至之禮也。然則還告廟、及飮至、及書勞。三事偏行一禮、則亦書至。悉闕、乃不書至。傳因獻子之事、以發明凡例。釋例詳之。 【読み】 〔傳〕十三年春、公晉より至る。孟獻子勞を廟に書す。禮なり。勳勞を策に書すなり。桓二年の傳に曰く、公唐より至るとは、廟に告ぐるなり。凡そ公の行は、宗廟に告ぐ。行より反れば、飮至し、爵を舍き、勳を策す。禮なり、と。桓十六年の傳に又曰く、公鄭を伐ちてより至る。飮至の禮を以てす、と。然らば則ち還りて廟に告げ、飮至し、勞を書す。三事一禮を偏行すれば、則ち亦至るを書す。悉く闕くれば、乃ち至るを書さず。傳獻子の事に因りて、以て凡例を發明す。釋例之を詳らかにす。 夏、邿亂、分爲三。國分爲三部、志力各異。 【読み】 夏、邿亂れ、分かれて三と爲る。國分かれて三部と爲り、志力各々異なり。 師救邿、遂取之。魯師也。經不稱師、不滿二千五百人。傳通言之。 【読み】 師邿を救い、遂に之を取る。魯の師なり。經師と稱せざるは、二千五百人に滿たざればなり。傳は通じて之を言う。 凡書取、言易也。不用師徒、及用師徒、而不勞、雖國亦曰取。 【読み】 凡そ取ると書すは、易きを言うなり。師徒を用いず、及び師徒を用いても、勞せざれば、國と雖も亦取ると曰う。 用大師焉曰滅、敵人距戰、斬獲俘馘、用力難重、雖邑亦曰滅。 【読み】 大師を用ゆるを滅ぼすと曰い、敵人距戰して、斬獲俘馘[ふかく]、力を用ゆること難重なれば、邑と雖も亦滅ぼすと曰う。 弗地曰入。謂勝其國邑、不有其地。 【読み】 地もたざるを入ると曰う。其の國邑に勝ちて、其の地を有たざるを謂う。 荀罃・士魴卒。晉侯蒐于緜上以治兵、爲將命軍帥也。必蒐而命之、所以與衆共。 【読み】 荀罃[じゅんおう]・士魴卒す。晉侯緜上に蒐して以て治兵し、將に軍帥を命ぜんとする爲なり。必ず蒐して之を命ずるは、衆と共にする所以なり。 使士匃將中軍。辭曰、伯游長。伯游、荀偃。○長、上聲。 【読み】 士匃[しかい]をして中軍に將たらしむ。辭して曰く、伯游長ぜり。伯游は、荀偃。○長は、上聲。 昔臣習於知伯、是以佐之。非能賢也。七年、韓厥老。知罃代將中軍。士匃佐之。匃今將讓。故謂爾時之舉、不以己賢。事見九年。 【読み】 昔臣知伯に習い、是を以て之に佐たり。能く賢なるに非ざるなり。七年、韓厥老す。知罃代わりて中軍に將たり。士匃之に佐たり。匃今將に讓らんとす。故に爾[そ]の時の舉は、己が賢を以てするにあらずと謂う。事は九年に見ゆ。 請從伯游。荀偃將中軍。代荀罃。 【読み】 請う、伯游に從わん、と。荀偃中軍に將たり。荀罃に代わる。 士匃佐之。位如故。 【読み】 士匃之に佐たり。位故の如し。 使韓起將上軍。辭以趙武。又使欒黶。以武位卑、故不聽。更命黶。 【読み】 韓起をして上軍に將たらしむ。辭するに趙武を以てす。又欒黶[らんえん]をせしむ。武が位卑しきを以て、故に聽かず。更に黶に命ず。 辭曰、臣不如韓起。韓起願上趙武。君其聽之。使趙武將上軍。武自新軍超四等、代荀偃。 【読み】 辭して曰く、臣韓起に如かず。韓起趙武を上にせんことを願う。君其れ之を聽け、と。趙武をして上軍に將たらしむ。武新軍より四等を超えて、荀偃に代わる。 韓起佐之。位如故。 【読み】 韓起之に佐たり。位故の如し。 欒黶將下軍。魏絳佐之。黶亦如故。絳自新軍佐超一等、代士魴。 【読み】 欒黶下軍に將たり。魏絳之に佐たり。黶も亦故の如し。絳新軍の佐より一等を超えて、士魴に代わる。 新軍無帥。將佐皆遷。 【読み】 新軍帥無し。將佐皆遷る。 晉侯難其人。使其什吏、率其卒乘官屬、以從於下軍。禮也。得愼舉之禮。○難、乃旦反。或如字。 【読み】 晉侯其の人を難[なや]む。其の什吏をして、其の卒乘官屬を率いて、以て下軍に從わしむ。禮なり。舉を愼むの禮を得たり。○難は、乃旦反。或は字の如し。 晉國之民、是以大和、諸侯遂睦。 【読み】 晉國の民、是を以て大いに和し、諸侯遂に睦まじ。 君子曰、讓、禮之主也。范宣子讓、其下皆讓。欒黶爲汰、弗敢違也。晉國以平、數世賴之。刑善也夫。刑、法也。○汰、音泰。數、所主反。 【読み】 君子曰く、讓は、禮の主なり。范宣子讓りて、其の下皆讓る。欒黶が汰爲るも、敢えて違わざるなり。晉國以て平らかに、數世之に賴れり。刑善なればなるかな。刑は、法なり。○汰は、音泰。數は、所主反。 一人刑善、百姓休和。可不務乎。書曰、一人有慶、兆民賴之、其寧惟永、其是之謂乎。周書、呂刑也。一人、天子也。寧、安也。永、長也。義取上有好善之慶、則下賴其福。 【読み】 一人刑善なれば、百姓休和す。務めざる可けんや。書に曰く、一人慶有れば、兆民之に賴り、其れ寧くして惟れ永しとは、其れ是を謂うか。周書は、呂刑なり。一人は、天子なり。寧は、安きなり。永は、長きなり。義上善を好むの慶有れば、則ち下其の福に賴るに取る。 周之興也、其詩曰、儀刑文王、萬邦作孚。詩、大雅。言文王善用法。故能爲萬國所信。孚、信也。 【読み】 周の興るや、其の詩に曰く、儀[よ]く刑ある文王、萬邦に孚とせらる、と。詩は、大雅。文王善く法を用ゆ。故に能く萬國の爲に信とせらるるを言う。孚は、信なり。 言刑善也。及其衰也、其詩曰、大夫不均。我從事獨賢。詩、小雅。刺幽王役使不均。故從事者怨恨、稱己之勞、以爲獨賢、無讓心。 【読み】 刑の善きを言うなり。其の衰うるに及びてや、其の詩に曰く、大夫均しからず。我れ事に從いて獨り賢なり、と。詩は、小雅。幽王の役使均しからず。故に事に從う者怨恨して、己が勞を稱して、以て獨り賢と爲して、讓心無きを刺[そし]る。 言不讓也。 【読み】 讓らざるを言うなり。 世之治也、君子尙能而讓其下、能者在下位、則貴尙而讓之。 【読み】 世の治むるや、君子は能を尙して其の下に讓り、能者下位に在れば、則ち貴尙して之に讓る。 小人農力以事其上。是以上下有禮、而讒慝黜遠。由不爭也。謂之懿德。 【読み】 小人は力を農[あつ]くして以て其の上に事うる。是を以て上下禮有りて、讒慝黜遠す。爭わざるに由れるなり。之を懿德と謂う。 及其亂也、君子稱其功以加小人、加、陵也。君子、在位者。○遠、于萬反。又如字。 【読み】 其の亂るるに及びてや、君子は其の功を稱して以て小人を加[しの]ぎ、加は、陵ぐなり。君子は、位に在る者。○遠は、于萬反。又字の如し。 小人伐其技以馮君子。馮、亦陵也。自稱其能爲伐。○技、其綺反。馮、音憑。 【読み】 小人其の技に伐[ほこ]りて以て君子を馮ぐ。馮も、亦陵ぐなり。自ら其の能を稱するを伐ると爲す。○技は、其綺反。馮は、音憑。 是以上下無禮、亂虐竝生。由爭善也。爭自善也。 【読み】 是を以て上下禮無く、亂虐竝び生ず。爭いて善とするに由れるなり。爭いて自ら善とするなり。 謂之昏德。國家之敝、恆必由之。傳言晉之所以興。 【読み】 之を昏德と謂う。國家の敝[やぶ]るるは、恆に必ず之に由れり。傳晉の興る所以を言う。 楚子疾。告大夫曰、不穀不德、少主社稷、生十年而喪先君、未及習師保之敎訓、而應受多福。多福、謂爲君。 【読み】 楚子疾む。大夫に告げて曰く、不穀不德にして、少[わか]くして社稷を主り、生まれて十年にして先君を喪い、未だ師保の敎訓に習うに及ばずして、多福を應受す。多福は、君爲るを謂う。 是以不德、而亡師于鄢、鄢、在成十六年。○鄢、音偃。 【読み】 是を以て不德にして、師を鄢[えん]に亡いて、鄢は、成十六年に在り。○鄢は、音偃。 以辱社稷、爲大夫憂、其弘多矣。弘、大也。 【読み】 以て社稷を辱しめ、大夫の憂えを爲せること、其れ弘多なり。弘は、大なり。 若以大夫之靈、獲保首領以沒於地、唯是春秋窀穸之事、窀、厚也。穸、夜也。厚夜、猶長夜。春秋、謂祭祀。長夜、謂葬埋。○窀、張倫反。一徒門反。穸、音夕。 【読み】 若し大夫の靈を以て、首領を保ちて以て地に沒することを獲ば、唯是れ春秋窀穸[ちゅんせき]の事に、窀は、厚きなり。穸は、夜なり。厚夜は、猶長夜のごとし。春秋は、祭祀を謂う。長夜は、葬埋を謂う。○窀は、張倫反。一に徒門反。穸は、音夕。 所以從先君於禰廟者、從先君代爲禰廟。 【読み】 先君を禰廟[でいびょう]に從わん所以の者、先君に從いて代わりて禰廟と爲る。 請爲靈若厲。欲受惡謚、以歸先君也。亂而不損曰靈、戮殺不辜曰厲。 【読み】 請う、靈若しくは厲と爲せよ。惡謚を受けて、以て先君に歸せんと欲するなり。亂れて損せざるを靈と曰い、不辜を戮殺するを厲と曰う。 大夫擇焉。莫對。及五命。乃許。 【読み】 大夫擇べ、と。對うるもの莫し。五命に及ぶ。乃ち許す。 秋、楚共王卒。子囊謀諡。大夫曰、君有命矣。子囊曰、君命以共。若之何毀之。赫赫楚國、而君臨之、撫有蠻夷、奄征南海、以屬諸夏。而知其過、可不謂共乎。請謚之共。大夫從之。傳言子囊之善。○共、音恭。 【読み】 秋、楚の共王卒す。子囊諡を謀る。大夫曰く、君命有り、と。子囊曰く、君命ずるに共を以てせり。之を若何ぞ之を毀[やぶ]らん。赫赫たる楚國にして、之に君とし臨み、蠻夷を撫有し、南海を奄征して、以て諸夏を屬せり。而るに其の過ちを知るは、共と謂わざる可けんや。請う、之を共と謚せん、と。大夫之に從う。傳子囊の善きを言う。○共は、音恭。 吳侵楚。養由基奔命。子庚以師繼之。子庚、楚司馬。 【読み】 吳楚を侵す。養由基命に奔る。子庚師を以[い]て之に繼ぐ。子庚は、楚の司馬。 養叔曰、吳乘我喪、謂我不能師也。養叔、養由基也。 【読み】 養叔曰く、吳我が喪に乘ずるは、我を師すること能わずと謂いてなり。養叔は、養由基なり。 必易我而不戒。戒、備也。○易、以豉反。 【読み】 必ず我を易りて戒めじ。戒は、備うるなり。○易は、以豉反。 子爲三覆以待我。覆、伏兵。○覆、扶又反。 【読み】 子三覆を爲して以て我を待て。覆は、伏兵。○覆は、扶又反。 我請誘之。子庚從之。戰于庸浦、庸浦、楚地。 【読み】 我れ請う、之を誘かん、と。子庚之に從う。庸浦に戰い、庸浦は、楚の地。 大敗吳師、獲公子黨。 【読み】 大いに吳の師を敗り、公子黨を獲たり。 君子以吳爲不弔。不用天道相弔恤。 【読み】 君子吳を以て不弔と爲す。天道を用いて相弔恤せず。 詩曰、不弔昊天。亂靡有定。言不爲昊天所恤、則致罪也。爲明年、會向傳。 【読み】 詩に曰く、昊天に弔せられず。亂定まること有ること靡し、と。言うこころは、昊天の爲に恤れまれざれば、則ち罪を致すなり。明年、向に會する爲の傳なり。 冬、城防、書事時也。土功雖有常節、通以事閒爲時。○閒、音閑。 【読み】 冬、防に城くは、事の時なるを書すなり。土功常節有りと雖も、通じて事の閒を以て時と爲す。○閒は、音閑。 於是將早城。臧武仲請俟畢農事。禮也。 【読み】 是に於て將に早く城かんとす。臧武仲農事を畢うるを俟たんと請う。禮なり。 鄭良霄・大宰石■猶在楚。十一年、楚人執之至今。○■、勑略反。 【読み】 鄭の良霄[りょうしょう]・大宰石■[せきちゃく]猶楚に在り。十一年、楚人之を執えて今に至る。○■は、勑略反。 *■は、上から「兔の上部」+「比」+「犬」。次段も同じ。 石■言於子囊曰、先王卜征五年、先征五年而卜吉凶也。征、謂巡守征行。○先征、悉薦反。 【読み】 石■子囊に言いて曰く、先王征を卜すること五年にして、征に先だつこと五年にして吉凶を卜するなり。征は、巡守して征行するを謂う。○先征は、悉薦反。 而歲習其祥、祥習則行。五年五卜、皆同吉、乃巡狩。 【読み】 歲ごとに其の祥を習[かさ]ね、祥習なれば則ち行く。五年に五たび卜して、皆同じく吉なれば、乃ち巡狩す。 不習、則增脩德而改卜。不習、謂卜不吉。○不習則增絕句。 【読み】 習ならざれば、則ち德を增し脩めて改め卜す。習ならずとは、卜吉ならざるを謂う。○不習則增は絕句。 今楚實不競。行人何罪。不能脩德與晉競。 【読み】 今楚實に競わず。行人何の罪ある。德を脩めて晉と競うこと能わず。 止鄭一卿以除其偪、一卿、謂良霄。 【読み】 鄭の一卿を止めて以て其の偪れるを除き、一卿は、良霄を謂う。 使睦而疾楚以固於晉、焉用之。位不偪、則大臣睦。怨疾楚、則事晉固。 【読み】 睦まじくして楚を疾[にく]ませて以て晉に固からしめんこと、焉んぞ之を用いん。位偪らざれば、則ち大臣睦まじ。楚を怨疾すれば、則ち晉に事うること固し。 使歸而廢其使、行而見執於楚、鄭又遂堅事晉。是鄭廢本見使之意。○其使、所吏反。下同。 【読み】 歸して其の使いを廢し、行きて楚に執えらるれば、鄭も又遂に堅く晉に事う。是れ鄭本使いを見[や]るの意を廢つるなり。○其使は、所吏反。下も同じ。 怨其君、以疾其大夫、而相牽引也、不猶愈乎。 【読み】 其の君を怨みて、以て其の大夫を疾みて、相牽引せしめば、猶愈[た]えざるや、と。 楚人歸之。釋義。鄭遣良霄使楚其意、欲楚執之、而鄭得堅事晉爾。故不如遣之歸鄭、以廢其遣使之本意也。後良霄果作亂。据此則益知杜注有誤脫。愈解爲勝。已見八年。 【読み】 楚人之を歸す。釋義。鄭良霄をして楚に使わしむる其の意は、楚之を執えて、鄭晉に堅く事えんことを得んと欲するのみ。故に之をして鄭に歸らしめて、以て其の遣使の本意を廢するに如かざるなり。後良霄果たして亂を作す。此に据[よ]れば則ち益々杜注誤脫有ることを知る。愈の解は勝と爲す。已に八年に見ゆ。 〔經〕十有四年、春、王正月、季孫宿・叔老會晉士匃・齊人・宋人・衛人・鄭公孫蠆・曹人・莒人・邾人・滕人・薛人・杞人・小邾人會吳于向。叔老、聲伯子也。魯使二卿會晉、敬事覇國。晉人自是輕魯幣而益敬其使。故叔老雖介、亦列於會也。齊崔杼・宋華閱・衛北宮括在會惰慢不攝。故貶稱人。蓋欲以督率諸侯、奬成覇功也。吳來在向、諸侯會之。故曰會吳。向、鄭地。 【読み】 〔經〕十有四年、春、王の正月、季孫宿・叔老晉の士匃[しかい]・齊人・宋人・衛人・鄭の公孫蠆[こうそんたい]・曹人・莒人・邾人[ちゅひと]・滕人・薛人・杞人・小邾人に會して吳に向[しょう]に會す。叔老は、聲伯の子なり。魯二卿をして晉に會せしめて、覇國に敬事す。晉人是より魯の幣を輕くして益々其の使いを敬す。故に叔老介と雖も、亦會に列なるなり。齊の崔杼・宋の華閱・衛の北宮括會に在りて惰慢不攝。故に貶して人と稱す。蓋し以て諸侯を督率して、覇功を奬成せんと欲するなり。吳來りて向に在り、諸侯之に會す。故に吳に會すと曰う。向は、鄭の地。 二月、乙未、朔、日有食之。無傳。 【読み】 二月、乙未[きのと・ひつじ]、朔、日之を食する有り。傳無し。 夏、四月、叔孫豹會晉荀偃・齊人・宋人・衛北宮括・鄭公孫蠆・曹人・莒人・邾人・滕人・薛人・杞人・小邾人伐秦。齊・宋大夫不書、義與向同。 【読み】 夏、四月、叔孫豹晉の荀偃・齊人・宋人・衛の北宮括・鄭の公孫蠆・曹人・莒人・邾人・滕人・薛人・杞人・小邾人に會して秦を伐つ。齊・宋の大夫書さざるは、義向と同じ。 己未、衛侯出奔齊。諸侯之策、書孫・甯逐衛公、春秋以其自取奔亡之禍、故諸侯失國者、皆不書逐君之賊也。不書名、從告。 【読み】 己未[つちのと・ひつじ]、衛侯出でて齊に奔る。諸侯の策には、孫・甯衛公を逐うと書すも、春秋には其の自ら奔亡の禍を取るを以て、故に諸侯の國を失う者、皆君を逐うの賊を書さざるなり。名を書さざるは、告ぐるに從うなり。 莒人侵我東鄙。無傳。報入鄆。 【読み】 莒人我が東鄙を侵す。傳無し。鄆に入るに報ゆるなり。 秋、楚公子貞帥師伐吳。冬、季孫宿會晉士匃・宋華閱・衛孫林父・鄭公孫蠆・莒人・邾人于戚。 【読み】 秋、楚の公子貞師を帥いて吳を伐つ。冬、季孫宿晉の士匃・宋の華閱・衛の孫林父・鄭の公孫蠆・莒人・邾人に戚に會す。 〔傳〕十四年、春、吳告敗于晉。前年、爲楚所敗。 【読み】 〔傳〕十四年、春、吳敗を晉に告ぐ。前年、楚の爲に敗らる。 會于向、爲吳謀楚故也。謀爲吳伐楚。○爲、于僞反。 【読み】 向に會するは、吳の爲に楚の故を謀るなり。吳の爲に楚を伐たんことを謀る。○爲は、于僞反。 范宣子數吳之不德也、以退吳人。吳伐楚喪。故以爲不德。數而遣之、卒不爲伐楚。 【読み】 范宣子吳の不德を數[せ]めて、以て吳人を退く。吳楚の喪を伐つ。故に以て不德と爲す。數めて之を遣り、卒に爲に楚を伐たず。 執莒公子務婁。在會。不書、非卿。○務、莫侯反。又如字。婁、力侯反。或力倶反。 【読み】 莒の公子務婁[ぼうろう]を執う。會に在り。書さざるは、卿に非ざればなり。○務は、莫侯反。又字の如し。婁は、力侯反。或は力倶反。 以其通楚使也。莒貳於楚。故比年伐魯。 【読み】 其の楚の使いを通ずるを以てなり。莒楚に貳す。故に比年に魯を伐つ。 將執戎子駒支。駒支、戎子名。 【読み】 將に戎子駒支を執えんとす。駒支は、戎子の名。 范宣子親數諸朝、行之所在亦設朝位。 【読み】 范宣子親ら諸を朝に數めて、行の在る所も亦朝位を設く。 曰、來、姜戎氏。昔秦人迫逐乃祖吾離于瓜州、四獄之後皆姜姓。又別爲允姓。瓜州地在今燉煌。○燉、徒門反。 【読み】 曰く、來れ、姜戎氏。昔秦人乃[なんじ]の祖吾離を瓜州に迫逐するや、四獄の後は皆姜姓。又別に允姓と爲る。瓜州の地は今の燉煌に在り。○燉は、徒門反。 乃祖吾離被苫蓋、蓋、苫別名。○被、普皮反。苫、式占反。蓋、戶臘反。爾雅曰、白蓋謂之苫。 【読み】 乃の祖吾離苫蓋[せんがい]を被り、蓋は、苫の別名。○被は、普皮反。苫は、式占反。蓋は、戶臘反。爾雅に曰く、白蓋之を苫と謂う、と。 蒙荆棘、以來歸我先君、蒙、冒也。 【読み】 荆棘[けいきょく]を蒙[おか]して、以て我が先君に來歸せしかば、蒙は、冒すなり。 我先君惠公有不腆之田、腆、厚也。○腆、他典反。 【読み】 我が先君惠公不腆の田有りて、腆は、厚きなり。○腆は、他典反。 與女剖分而食之。中分爲剖。○女、音汝。下同。中、丁仲反。又如字。 【読み】 女と剖分して之を食めり。中分するを剖と爲す。○女は、音汝。下も同じ。中は、丁仲反。又字の如し。 今諸侯之事我寡君、不如昔者、蓋言語漏洩。則職女之由。職、主也。 【読み】 今諸侯の我が寡君に事うること、昔に如かざるは、蓋し言語の漏洩すればなり。則ち職として女に由れり。職は、主なり。 詰朝之事、爾無與焉。詰朝、明旦。不使復得與會事。○詰、起吉反。與、音預。下同。 【読み】 詰朝の事、爾與ること無かれ。詰朝は、明旦。復會事に與るを得せしめず。○詰は、起吉反。與は、音預。下も同じ。 與、將執女。 【読み】 與らば、將に女を執えんとす、と。 對曰、昔秦人負恃其衆、貪于土地、逐我諸戎、惠公蠲其大德、蠲、明也。 【読み】 對えて曰く、昔秦人其の衆を負恃して、土地を貪り、我が諸戎を逐いしとき、惠公其の大德を蠲[あき]らかにし、蠲[けん]は、明らかなり。 謂我諸戎、是四獄之裔冑也、四獄、堯時方伯。姜姓也。裔、遠。冑、後也。○裔、以制反。 【読み】 我が諸戎を、是れ四獄の裔冑なり、四獄は、堯の時の方伯。姜姓なり。裔は、遠き。冑は、後なり。○裔は、以制反。 毋是翦弃、翦、削也。 【読み】 是れ翦弃すること毋かれと謂い、翦は、削るなり。 賜我南鄙之田、狐狸所居、豺狼所嘷、我諸戎除翦其荆棘、驅其狐狸豺狼、以爲先君不侵不叛之臣、至于今不貳。不内侵、亦不外叛。○嘷、戶羔反。 【読み】 我に南鄙の田を賜いしも、狐狸の居る所、豺狼の嘷[ほ]える所なりしかば、我が諸戎其の荆棘を除翦し、其の狐狸豺狼を驅りて、以て先君不侵不叛の臣と爲り、今に至るまで貳あらず。内侵せず、亦外叛せず。○嘷は、戶羔反。 昔文公與秦伐鄭、秦人竊與鄭盟而舍戍焉、在僖三十年。 【読み】 昔文公秦と鄭を伐ちしとき、秦人竊かに鄭と盟いて戍を舍きしかば、僖三十年に在り。 於是乎有殽之師、在僖三十三年。 【読み】 是に於て殽[こう]の師有りて、僖三十三年に在り。 晉禦其上、戎亢其下、亢、猶當也。○亢、苦浪反。 【読み】 晉其の上を禦ぎ、戎其の下を亢[あ]たり、亢は、猶當たるのごとし。○亢は、苦浪反。 秦師不復、我諸戎實然。譬如捕鹿。晉人角之、諸戎掎之、掎其足也。○掎、居綺反。 【読み】 秦師復らざりしは、我が諸戎實に然らしめり。譬えば鹿を捕うるが如し。晉人之を角[つのと]り、諸戎之を掎[あしと]りて、其の足を掎[ひ]くなり。○掎は、居綺反。 與晉踣之。踣、僵也。○踣、蒲北反。 【読み】 晉と之を踣[たお]せり。踣[ほく]は、僵[たお]すなり。○踣は、蒲北反。 戎何以不免。自是以來、晉之百役、與我諸戎、相繼于時、言給晉役不曠時。 【読み】 戎何を以て免がれざる。是より以來、晉の百役に、我が諸戎と、時に相繼ぎ、晉の役に給して時を曠[むな]しくせざるを言う。 以從執政、猶殽志也。意常如殽、無有二也。 【読み】 以て執政に從うこと、猶殽の志のごとし。意常に殽の如く、二有ること無し。 豈敢離逷。 【読み】 豈敢えて離逷[りてき]せんや。 今官之師旅、無乃實有所闕、以攜諸侯。而罪我諸戎。我諸戎、飮食衣服不與華同、贄幣不通、言語不達、何惡之能爲。不與於會、亦無瞢焉。瞢、悶也。○逷、他歷反。不與、音預。瞢、莫贈反。又武登反。一武忠反。 【読み】 今官の師旅、乃ち實に闕くる所有りて、以て諸侯を攜[はな]れしむること無からんや。而るを我が諸戎を罪する。我が諸戎は、飮食衣服華と同じからず、贄幣通ぜず、言語達せざれば、何の惡を能く爲さん。會に與らざるも、亦瞢[もだ]ゆること無し、と。瞢[ぼう]は、悶ゆるなり。○逷は、他歷反。不與は、音預。瞢は、莫贈反。又武登反。一に武忠反。 賦靑蠅而退。靑蠅、詩小雅。取其愷悌君子、無信讒言。○蠅、以仍反。 【読み】 靑蠅[せいよう]を賦して退く。靑蠅は、詩の小雅。其の愷悌の君子、讒言を信ずること無かれというに取る。○蠅は、以仍反。 宣子辭焉、辭謝。 【読み】 宣子辭して、辭謝す。 使卽事於會。成愷悌也。成愷悌、不信讒也。不書者、戎爲晉屬。不得特達。 【読み】 事に會に卽かしむ。愷悌を成すなり。愷悌を成すは、讒を信ぜざるなり。書さざるは、戎は晉の屬爲り。特達することを得ざればなり。 於是子叔齊子爲季武子介以會。自是晉人輕魯幣、而益敬其使。齊子、叔老字也。言晉敬魯使。經所以竝書二卿。 【読み】 是に於て子叔齊子季武子の介と爲りて以て會す。是より晉人魯の幣を輕くして、益々其の使いを敬せり。齊子は、叔老の字なり。晉の魯の使いを敬するを言う。經に二卿を竝べ書す所以なり。 吳子諸樊旣除喪、諸樊、吳子乘之長子也。乘卒、至此春十七月。旣葬而除喪。 【読み】 吳子諸樊旣に喪を除き、諸樊は、吳子乘の長子なり。乘卒し、此の春に至りて十七月。旣に葬りて喪を除く。 將立季札。札、諸樊少弟。○札、側八反。 【読み】 將に季札を立てんとす。札は、諸樊の少弟。○札は、側八反。 季札辭曰、曹宣公之卒也、諸侯與曹人不義曹君、曹君、公子負芻也。殺大子而自立。事在成十三年。 【読み】 季札辭して曰く、曹の宣公の卒するや、諸侯曹人と曹君を義とせず、曹君は、公子負芻なり。大子を殺して自立す。事は成十三年に在り。 將立子臧。子臧去之、遂弗爲也、以成曹君。君子曰、能守節。君義嗣也。諸樊、適子。故曰義嗣。 【読み】 將に子臧を立てんとす。子臧之を去りて、遂に爲らずして、以て曹君を成せり。君子曰く、能く節を守れり、と。君は義嗣なり。諸樊は、適子。故に義嗣と曰う。 誰敢奸君。有國非吾節也。札雖不才、願附於子臧、以無失節。 【読み】 誰か敢えて君を奸さん。國を有つは吾が節に非ざるなり。札不才なりと雖も、願わくは子臧に附して、以て節を失うこと無からん、と。 固立之。弃其室而耕。乃舍之。傳言季札之讓、且明吳兄弟相傳。 【読み】 固く之を立てんとす。其の室を弃てて耕す。乃ち之を舍[ゆる]す。傳季札の讓を言い、且吳兄弟相傳うるを明らかにす。 夏、諸侯之大夫從晉侯伐秦、以報櫟之役也。櫟役、在十一年。 【読み】 夏、諸侯の大夫晉侯に從い秦を伐つは、以て櫟の役に報ゆるなり。櫟の役は、十一年に在り。 晉侯待于竟、使六卿帥諸侯之師以進。言經所以不稱晉侯。 【読み】 晉侯竟に待ちて、六卿をして諸侯の師を帥いて以て進ましむ。經に晉侯を稱せざる所以を言う。 及涇。不濟。諸侯之師不肯渡也。涇水、出安定朝那縣、至京兆高陸縣入渭。○朝、如字。那、乃多反。 【読み】 涇に及ぶ。濟[わた]らず。諸侯の師肯えて渡らざるなり。涇水は、安定朝那縣に出でて、京兆高陸縣に至りて渭に入る。○朝は、字の如し。那は、乃多反。 叔向見叔孫穆子。穆子賦匏有苦葉。詩邶風也。義取於深則厲、淺則揭。言己志在於必濟。 【読み】 叔向[しゅくきょう]叔孫穆子を見る。穆子匏有苦葉[ほうゆうこよう]を賦す。詩の邶[はい]風なり。義深ければ則ち厲し、淺ければ則ち揭するに取る。己が志必ず濟るに在るを言う。 叔向退而具舟。魯人・莒人先濟。鄭子蟜見衛北宮懿子曰、與人而不固、取惡莫甚焉。若社稷何。懿子說。二子見諸侯之師、而勸之濟。濟涇而次。傳言北宮括所以書於伐秦。○說、音悅。 【読み】 叔向退きて舟を具う。魯人・莒人先ず濟る。鄭の子蟜[しきょう]衛の北宮懿子を見て曰く、人に與して固からざれば、惡を取ること焉より甚だしきは莫し。社稷を若何、と。懿子說ぶ。二子諸侯の師を見て、之に濟らんことを勸む。涇を濟りて次[やど]る。傳北宮括が秦を伐つを書す所以を言う。○說は、音悅。 秦人毒涇上流。師人多死。飮毒水故。 【読み】 秦人涇の上流に毒す。師人多く死す。毒水を飮む故なり。 鄭司馬子蟜帥鄭師以進。師皆從之、至于棫林。棫林、秦地。○棫、位逼反。 【読み】 鄭の司馬子蟜鄭の師を帥いて以て進む。師皆之に從い、棫林[よくりん]に至る。棫林は、秦の地。○棫は、位逼反。 不獲成焉。秦不服。 【読み】 成[たい]らぎを獲ず。秦服せず。 荀偃令曰、雞鳴而駕、塞井夷竈、示不反。 【読み】 荀偃令して曰く、雞鳴きて駕し、井を塞ぎ竈を夷[たい]らげ、反らざるを示す。 唯余馬首是瞻。言進退從己。 【読み】 唯余が馬首を是れ瞻よ、と。進退己に從えと言う。 欒黶曰、晉國之命、未是有也。余馬首欲東。乃歸。黶、惡偃自專。故弃之歸。 【読み】 欒黶[らんえん]曰く、晉國の命に、未だ是れ有らざるなり。余が馬首東せんと欲す、と。乃ち歸る。黶、偃が自ら專なるを惡む。故に之を弃てて歸る。 下軍從之。左史謂魏莊子曰、不待中行伯乎。中行伯、荀偃也。莊子、魏絳也。左史、晉大夫。 【読み】 下軍之に從う。左史魏莊子に謂いて曰く、中行伯を待たざらんか、と。中行伯は、荀偃なり。莊子は、魏絳なり。左史は、晉の大夫。 莊子曰、夫子命從帥。夫子、謂荀偃。 【読み】 莊子曰く、夫子帥に從えと命じぬ。夫子は、荀偃を謂う。 欒伯、吾帥也。吾將從之。從帥、所以待夫子也。以從命爲待也。欒黶、下軍帥。莊子爲佐。故曰吾帥。 【読み】 欒伯は、吾が帥なり。吾れ將に之に從わんとす。帥に從うは、夫子を待つ所以なり、と。命に從うを以て待つと爲すなり。欒黶は、下軍の帥。莊子は佐爲り。故に吾が帥と曰う。 伯游曰、吾令實過。悔之何及。多遺秦禽。軍帥不和。恐多爲秦所禽獲。○遣、唯季反。 【読み】 伯游曰く、吾が令實に過てり。之を悔ゆるとも何ぞ及ばん。多く秦に禽を遺らん、と。軍帥和せず。恐らくは多く秦の爲に禽獲せられん。○遣は、唯季反。 乃命大還。 【読み】 乃ち命じて大いに還る。 晉人謂之遷延之役。遷延、却退。 【読み】 晉人之を遷延の役と謂う。遷延は、却退。 欒鍼曰、此役也、報櫟之敗也、役又無功。晉之恥也。吾有二位於戎路。欒鍼、欒黶弟也。二位、謂黶將下軍、鍼爲戎右。 【読み】 欒鍼[らんけん]曰く、此の役や、櫟の敗に報いんとして、役又功無し。晉の恥なり。吾れ戎路に二位有り。欒鍼は、欒黶の弟なり。二位とは、黶下軍に將となり、鍼戎右爲るを謂う。 敢不恥乎。與士鞅馳秦師死焉。士鞅反。鞅、士匃子。 【読み】 敢えて恥じざらんや、と。士鞅と秦の師に馳せて死す。士鞅反る。鞅は、士匃の子。 欒黶謂士匃曰、余弟不欲往、而子召之。余弟死、而子來。是而子殺余之弟也。弗逐、余亦將殺之。 【読み】 欒黶士匃に謂いて曰く、余が弟往くことを欲せざりしに、而[なんじ]が子之を召[よ]べり。余が弟は死して、而が子は來る。是れ而が子余が弟を殺せるなり。逐わずんば、余亦將に之を殺さんとす、と。 士鞅奔秦。欒黶汰侈、誣逐士鞅也。而、女也。 【読み】 士鞅秦に奔る。欒黶汰侈、誣いて士鞅を逐うなり。而は、女なり。 於是齊崔杼・宋華閱・仲江會伐秦。不書、惰也。臨事惰慢不脩也。仲江、宋公孫師之子。 【読み】 是に於て齊の崔杼・宋の華閱・仲江秦を伐つに會す。書さざるは、惰ればなり。事に臨みて惰慢して脩めざるなり。仲江は、宋の公孫師の子。 向之會、亦如之。衛北宮括不書於向、亦惰。 【読み】 向の會も、亦之の如し。衛の北宮括向に書さずして、亦惰る。 書於伐秦、攝也。能自攝整、從鄭子蟜倶濟涇。 【読み】 秦を伐つを書すは、攝すればなり。能く自ら攝整して、鄭の子蟜に從いて倶に涇を濟る。 秦伯問於士鞅曰、晉大夫其誰先亡。對曰、其欒氏乎。秦伯曰、以其汰乎。對曰、然。欒黶汰虐已甚、猶可以免。其在盈乎。盈、黶之子。 【読み】 秦伯士鞅に問いて曰く、晉の大夫は其れ誰か先ず亡びん、と。對えて曰く、其れ欒氏か、と。秦伯曰く、其の汰[おご]れるを以てか、と。對えて曰く、然り。欒黶汰虐已甚だしきも、猶以て免る可し。其れ盈に在らんか、と。盈は、黶の子。 秦伯曰、何故。對曰、武子之德在民、如周人之思召公焉。愛其甘棠。況其子乎。武子、欒書。黶之父也。召公奭聽訟於甘棠之下、周人思之、不害其樹、而作勿伐之詩。在召南。 【読み】 秦伯曰く、何の故ぞ、と。對えて曰く、武子の德の民に在ること、周人の召公を思うが如し。其の甘棠[かんとう]をも愛す。況んや其の子をや。武子は、欒書。黶の父なり。召公奭訟を甘棠の下に聽き、周人之を思いて、其の樹を害せずして、伐ること勿かれという詩を作る。召南に在り。 欒黶死、盈之善未能及人、武子所施沒矣。而黶之怨實章。將於是乎在。秦伯以爲知言、爲之請於晉而復之。爲傳二十一年、晉滅欒氏張本。○施、如字。又始豉反。 【読み】 欒黶死せば、盈の善は未だ人に及ぼすこと能わずして、武子の施す所は沒[つ]きん。而して黶の怨み實に章[あらわ]れん。將に是に於て在らんとす、と。秦伯以て知言と爲し、之が爲に晉に請いて之を復す。傳二十一年、晉欒氏を滅ぼす爲の張本なり。○施は、字の如し。又始豉反。 衛獻公戒孫文子・甯惠子食。勑戒二子、欲共宴食。 【読み】 衛の獻公孫文子・甯惠子に食を戒む。二子に勑戒して、共に宴食せんと欲す。 皆服而朝。服朝服待命於朝。 【読み】 皆服して朝す。朝服を服して命を朝に待つ。 日旰不召、旰、晏也。○旰、古旦反。 【読み】 日旰[く]るるまで召さずして、旰[かん]は、晏[おそ]きなり。○旰は、古旦反。 而射鴻於囿。二子從之。從公於囿。○射、食亦反。 【読み】 鴻を囿に射る。二子之に從う。公に囿に從う。○射は、食亦反。 不釋皮冠而與之言。皮冠、田獵之冠也。旣不釋冠、又不與食。 【読み】 皮冠を釋かずして之と言う。皮冠は、田獵の冠なり。旣に冠を釋かずして、又與に食わず。 二子怒。 【読み】 二子怒る。 孫文子如戚、戚、孫文子邑。 【読み】 孫文子戚に如き、戚は、孫文子の邑。 孫蒯入使。孫蒯、孫文子之子。○使、所吏反。又如字。 【読み】 孫蒯[そんかい]入りて使いす。孫蒯は、孫文子の子。○使は、所吏反。又字の如し。 公飮之酒、使大師歌巧言之卒章。巧言、詩小雅。其卒章曰、彼何人斯。居河之麋。無拳無勇、職爲亂階。戚、衛河上邑。公欲以喩文子居河上而爲亂。大師、掌樂大夫。○飮、於鴆反。麋、亡悲反。拳、音權。 【読み】 公之に酒を飮ましめ、大師をして巧言の卒章を歌わしむ。巧言は、詩の小雅。其の卒章に曰く、彼れ何人ぞや。河の麋[みぎわ]に居る。拳[ちから]無く勇無きも、職として亂階を爲す、と。戚は、衛の河上の邑。公以て文子の河上に居りて亂を爲すに喩えんと欲す。大師は、掌樂大夫。○飮は、於鴆反。麋[び]は、亡悲反。拳は、音權。 大師辭。師曹請爲之。辭以爲不可。師曹、樂人。 【読み】 大師辭す。師曹之を爲さんと請う。辭して以て不可と爲す。師曹は、樂人。 初、公有嬖妾、使師曹誨之琴。誨、敎也。 【読み】 初め、公嬖妾有り、師曹をして之に琴を誨[おし]えしむ。誨[かい]は、敎ゆるなり。 師曹鞭之。公怒。鞭師曹三百。故師曹欲歌之以怒孫子、以報公。公使歌之。遂誦之。恐孫蒯不解故。 【読み】 師曹之に鞭つ。公怒る。師曹を鞭つこと三百。故に師曹之を歌いて以て孫子を怒らせて、以て公に報いんと欲す。公之を歌わしむ。遂に之を誦す。孫蒯が解せざらんことを恐るる故なり。 蒯懼。告文子。文子曰、君忌我矣。弗先必死。欲先公作亂。○欲先、息薦反。 【読み】 蒯懼る。文子に告ぐ。文子曰く、君我を忌めり。先だたずんば必ず死なん、と。公に先だちて亂を作さんと欲す。○欲先は、息薦反。 幷帑於戚、帑、子也。○幷、必政反。帑、音奴。 【読み】 帑を戚に幷せて、帑は、子なり。○幷は、必政反。帑は、音奴。 而入見蘧伯玉曰、君之暴虐、子所知也。大懼社稷之傾覆。將若之何。伯玉、蘧瑗。 【読み】 入りて蘧伯玉[きょはくぎょく]を見て曰く、君の暴虐なるは、子の知る所なり。大いに社稷の傾覆せんことを懼る。將に之を若何にせんとする、と。伯玉は、蘧瑗。 對曰、君制其國。臣敢奸之。奸、猶犯也。 【読み】 對えて曰く、君其の國を制す。臣敢えて之を奸さんや。奸は、猶犯すのごとし。 雖奸之、庸知愈乎。言逐君更立、未知當差否。 【読み】 之を奸すと雖も、庸[もっ]て愈[まさ]ることを知らんや。言うこころは、君を逐いて更め立つるとも、未だ當に差[い]ゆべきや否やを知らず。 遂行。從近關出。懼難作、欲速出竟。 【読み】 遂に行[さ]る。近關より出づ。難の作らんことを懼れ、速やかに竟を出でんことを欲す。 公使子蟜・子伯・子皮與孫子盟于丘宮。孫子皆殺之。三子、衛羣公子。疑孫子。故盟之。丘宮、近戚地。○蟜、居表反。 【読み】 公子蟜・子伯・子皮をして孫子と丘宮に盟わしむ。孫子皆之を殺す。三子は、衛の羣公子。孫子を疑う。故に之に盟う。丘宮は、戚に近き地。○蟜は、居表反。 四月、己未、子展奔齊。子展、衛獻公弟。 【読み】 四月、己未、子展齊に奔る。子展は、衛の獻公の弟。 公如鄄。鄄、衛地。○鄄、音絹。 【読み】 公鄄[けん]に如く。鄄は、衛の地。○鄄は、音絹。 使子行於孫子。孫子又殺之。使往請和也。子行、羣公子。 【読み】 子行を孫子に使わす。孫子又之を殺す。往きて和を請わしむ。子行は、羣公子。 公出奔齊。孫氏追之、敗公徒于河澤。濟北東阿縣西南有大澤。 【読み】 公出でて齊に奔る。孫氏之を追い、公の徒を河澤に敗る。濟北東阿縣の西南に大澤有り。 鄄人執之。公徒因敗散還。故爲公執之。○爲、于僞反。 【読み】 鄄人之を執う。公の徒敗に因りて散じ還る。故に公の爲に之を執う。○爲は、于僞反。 初、尹公佗學射於庾公差、庾公差學射於公孫丁。二子追公。二子、佗與差。爲孫氏逐公。○佗、徒河反。差、初佳反。又初宜反。 【読み】 初、尹公佗は射を庾公差[ゆこうし]に學び、庾公差は射を公孫丁に學ぶ。二子公を追う。二子は、佗と差。孫氏の爲に公を逐う。○佗は、徒河反。差は、初佳反。又初宜反。 公孫丁御公。爲公御也。 【読み】 公孫丁公に御たり。公の御と爲るなり。 子魚曰、射爲背師、不射爲戮。射爲禮乎。子魚、庾公差。禮射不求中。○射、食亦反。下除禮射皆同。背、音佩。 【読み】 子魚曰く、射れば師に背くと爲り、射らざれば戮と爲る。射て禮を爲さんか、と。子魚は、庾公差。禮射は中るを求めず。○射は、食亦反。下除禮射皆同じ。背は、音佩。 射兩軥而還。軥、車軛卷者。○軥、其倶反。又古豆反。軛、於革反。 【読み】 兩軥[りょうく]を射て還る。軥は、車軛[しゃあく]の卷ける者。○軥は、其倶反。又古豆反。軛は、於革反。 尹公佗曰、子爲師。我則遠矣。乃反之。佗、不從丁學。故言遠。始與公差倶退、悔而獨還射丁。 【読み】 尹公佗曰く、子は師とせり。我は則ち遠し、と。乃ち之に反る。佗は、丁に從いて學ばず。故に遠しと言う。始め公差と倶に退き、悔いて獨り還りて丁を射るなり。 公孫丁授公轡而射之。貫臂。貫佗臂。○貫、古亂反。一音官。 【読み】 公孫丁公に轡を授けて之を射る。臂を貫く。佗が臂を貫く。○貫は、古亂反。一に音官。 子鮮從公。子鮮、公母弟。○鮮、音僊。 【読み】 子鮮公に從う。子鮮は、公の母弟。○鮮は、音僊。 及竟、公使祝宗告亡、且告無罪。告宗廟也。 【読み】 竟に及び、公祝宗をして亡を告げ、且罪無しと告げしむ。宗廟に告ぐるなり。 定姜曰、無神何告。若有、不可誣也。誣、欺也。定姜、公適母。 【読み】 定姜曰く、神無くば何ぞ告げん。若し有らば、誣う可からざるなり。誣は、欺くなり。定姜は、公の適母。 有罪。若何告無。舍大臣而與小臣謀、一罪也。先君有冢卿以爲師保。而蔑之、二罪也。謂不釋皮冠之比。○舍、音捨。比、必二反。 【読み】 罪有り。若何ぞ無しと告げん。大臣を舍てて小臣と謀る、一の罪なり。先君冢卿有りて以て師保と爲す。而るを之を蔑[ないがしろ]にす、二の罪なり。皮冠を釋かざるの比[たぐい]を謂う。○舍は、音捨。比は、必二反。 余以巾櫛事先君、而暴妾使余、三罪也。告亡而已。無告無罪。時姜在國。故不使得告無罪。○櫛、側乙反。 【読み】 余巾櫛を以て先君に事えしに、而るを暴にして余を妾使す、三の罪なり。亡を告げんのみ。罪無しと告ぐること無かれ、と。時に姜國に在り。故に罪無しと告ぐることを得せしめず。○櫛は、側乙反。 公使厚成叔弔于衛、曰、寡君使瘠。聞君不撫社稷、而越在他竟。越、遠也。瘠、厚成叔名。○瘠、在亦反。 【読み】 公厚成叔をして衛を弔せしめて、曰く、寡君瘠を使わしむ。聞く、君社稷を撫でずして、他竟に越在す、と。越は、遠きなり。瘠は、厚成叔の名。○瘠は、在亦反。 若之何不弔。以同盟之故、使瘠敢私於執事。執事、衛諸大夫。 【読み】 之を若何ぞ不弔なる。同盟の故を以て、瘠をして敢えて執事に私せしむ。執事は、衛の諸大夫。 曰、有君不弔、弔、恤也。 【読み】 曰く、君不弔なる有り、弔は、恤れむなり。 有臣不敏、敏、達也。 【読み】 臣不敏なる有り、敏は、達するなり。 君不赦宥、臣亦不帥職、增淫發洩、其若之何。衛人使大叔儀對、大叔儀、衛大夫。○洩、息列反。 【読み】 君赦宥せずして、臣も亦職に帥わず、淫を增して發洩せしこと、其れ之を若何、と。衛人大叔儀をして對えしめて、大叔儀は、衛の大夫。○洩は、息列反。 曰、羣臣不佞、得罪於寡君、寡君不以卽刑、而悼弃之、以爲君憂。君不忘先君之好、辱弔羣臣、又重恤之。重恤、謂愍其不達也。 【読み】 曰く、羣臣不佞にして、罪を寡君に得しに、寡君以て刑に卽けずして、悼みて之を弃て、以て君の憂えを爲せり。君先君の好を忘れず、辱く羣臣を弔い、又重ねて之を恤れめり。重ねて恤れむとは、其の不達を愍[あわ]れむを謂うなり。 敢拜君命之辱、重拜大貺。謝重恤之賜。 【読み】 敢えて君命の辱きを拜し、重ねて大貺[たいきょう]を拜す、と。重恤の賜を謝す。 厚孫歸復命。語臧武仲曰、衛君其必歸乎。有大叔儀以守、守於國。○語、魚據反。守、手又反。 【読み】 厚孫歸りて復命す。臧武仲に語りて曰く、衛の君は其れ必ず歸らんか。大叔儀有りて以て守り、國を守る。○語は、魚據反。守は、手又反。 有母弟鱄以出。或撫其内、或營其外。能無歸乎。 【読み】 母弟鱄[せん]有りて以て出でたり。或は其の内を撫で、或は其の外を營む。能く歸ること無からんや、と。 齊人以郲寄衛侯。郲、齊所滅郲國。○鱄、市臠反。又音專。郲、音來。 【読み】 齊人郲[らい]を以て衛侯を寄す。郲は、齊の滅ぼす所の郲國。○鱄は、市臠反。又音專。郲は、音來。 及其復也、以郲糧歸。言其貪。 【読み】 其の復るに及びてや、郲の糧を以て歸る。其の貪を言う。 右宰穀從而逃歸。衛人將殺之。穀、衛大夫也。以其從君、故欲殺之。○從、才用反。又如字。 【読み】 右宰穀從いて逃げ歸る。衛人將に之を殺さんとす。穀は、衛の大夫なり。其の君に從うを以て、故に之を殺さんと欲す。○從は、才用反。又字の如し。 辭曰、余不說初矣。言初從君、非說之。不獲已耳。○說、音悅。注及下同。 【読み】 辭して曰く、余が說ばざるは初めよりなり。言うこころは、初め君に從うは、之を說ぶに非ず。已むことを獲ざるのみ。○說は、音悅。注及び下同じ。 余狐裘而羔袖。言一身盡善。唯少有惡。喩己雖從君出、其罪不多。 【読み】 余は狐裘にして羔袖[こうしゅう]せり、と。言うこころは、一身盡く善きなり。唯少しく惡有り。己君に從いて出づと雖も、其の罪多からざるに喩う。 乃赦之。 【読み】 乃ち之を赦す。 衛人立公孫剽。剽、穆公孫。○剽、匹妙反。一甫遙反。 【読み】 衛人公孫剽を立つ。剽は、穆公の孫。○剽は、匹妙反。一に甫遙反。 孫林父・甯殖相之、以聽命於諸侯。聽盟會之命。○相、息亮反。 【読み】 孫林父・甯殖之を相けて、以て命を諸侯に聽く。盟會の命を聽く。○相は、息亮反。 衛侯在郲。臧紇如齊唁衛侯。衛侯與之言。虐。退而告其人曰、衛侯其不得入矣。其言糞土也。亡而不變。何以復國。武仲不書、未爲卿。○唁、魚變反。弔失國曰唁。 【読み】 衛侯郲に在り。臧紇齊に如きて衛侯を唁[とむら]う。衛侯之と言う。虐なり。退きて其の人に告げて曰く、衛侯は其れ入ることを得ざらん。其の言は糞土なり。亡げて變ぜず。何を以て國に復らん、と。武仲書さざるは、未だ卿爲らざればなり。○唁は、魚變反。失國を弔うを唁と曰う。 子展・子鮮聞之、見臧紇與之言。道。順道理。 【読み】 子展・子鮮之を聞き、臧紇を見て之と言う。道なり。道理に順う。 臧孫說。謂其人曰、衛君必入。夫二子者、或輓之、或推之。欲無入得乎。爲二十六年、衛侯歸傳。○輓、音晩。推、如字。又他回反。 【読み】 臧孫說ぶ。其の人に謂いて曰く、衛の君は必ず入らん。夫の二子なる者、或は之を輓き、或は之を推す。入ること無からんと欲すとも得んや、と。二十六年、衛侯歸る爲の傳なり。○輓は、音晩。推は、字の如し。又他回反。 師歸自伐秦。 【読み】 師秦を伐ちてより歸る。 晉侯舍新軍。禮也。 【読み】 晉侯新軍を舍つ。禮なり。 成國、不過半天子之軍。成國、大國。○舍、音捨。 【読み】 成國は、天子の軍を半ばにするに過ぎず。成國は、大國。○舍は、音捨。 周爲六軍。諸侯之大者、三軍可也。 【読み】 周は六軍を爲す。諸侯の大なる者も、三軍にして可なり。 於是知朔生盈而死。朔、知罃之長子。盈、朔弟也。盈生而朔死。○知、音智。 【読み】 是に於て知朔盈を生みて死す。朔は、知罃[ちおう]の長子。盈は、朔の弟なり。盈生まれて朔死す。○知は、音智。 盈生六年而武子卒。彘裘亦幼。皆未可立也。新軍無帥。故舍之。裘、士魴子也。十三年、荀罃・士魴卒。其子皆幼、未任爲卿。故新軍無帥、遂舍之。○彘、直例反。任、音壬。 【読み】 盈生まれて六年にして武子卒す。彘裘[ていきゅう]も亦幼なり。皆未だ立つ可からざるなり。新軍帥無し。故に之を舍つ。裘は、士魴の子なり。十三年、荀罃・士魴卒す。其の子皆幼くして、未だ卿とするに任えず。故に新軍帥無く、遂に之を舍つ。○彘は、直例反。任は、音壬。 師曠侍於晉侯。師曠、晉樂大師、子野。 【読み】 師曠晉侯に侍る。師曠は、晉の樂大師、子野なり。 晉侯曰、衛人出其君、不亦甚乎。對曰、或者其君實甚。良君將賞善而刑淫、養民如子、蓋之如天、容之如地。民奉其君、愛之如父母、仰之如日月、敬之如神明、畏之如雷霆、其可出乎。夫君、神之主、民之望也。若困民之主、匱神乏祀、百姓絕望、社稷無主、將安用之。弗去何爲。 【読み】 晉侯曰く、衛人其の君を出だす、亦甚だしからずや、と。對えて曰く、或は其の君實に甚だしからん。良君は將に善を賞して淫を刑し、民を養うこと子の如く、之を蓋うこと天の如く、之を容るること地の如くせんとす。民其の君を奉じて、之を愛すること父母の如く、之を仰ぐこと日月の如く、之を敬すること神明の如く、之を畏るること雷霆の如くならば、其れ出だす可けんや。夫れ君は、神の主にして、民の望みなり。若し民の主[せい]を困しめ、神の祀を匱[とぼ]しくし、百姓望みを絕ち、社稷主無くば、將に安くに之を用いんとする。去らずして何をかせん。 *「民之主」「匱神乏祀」について、頭注に「釋文、乏祀、或作之祀。誤也。王若虛云、主或當作生。陸云、說苑引作困民之性。生性通用。周語匱神之祀、而困民之財。据此作之祀、爲是。」とある。 天生民而立之君、使司牧之、勿使失性。有君而爲之貳、貳、卿佐。○去、起呂反。 【読み】 天民を生じて之が君を立て、之を司牧せしめて、性を失わしむること勿し。君有りて之が貳を爲して、貳は、卿佐。○去は、起呂反。 使師保之、勿使過度。是故天子有公、諸侯有卿、卿置側室、側室、支子之官。 【読み】 之を師保せしめて、度に過ぎしむること勿し。是の故に天子に公有り、諸侯に卿有り、卿は側室を置き、側室は、支子の官。 大夫有貳宗、貳宗、宗子之副貳者。 【読み】 大夫に貳宗有り、貳宗は、宗子の副貳なる者。 士有朋友、庶人・工・商・皁隸・牧圉皆有親暱、以相輔佐也。善則賞之、賞、謂宣揚。○暱、女乙反。 【読み】 士に朋友有り、庶人・工・商・皁隸[そうれい]・牧圉[ぼくぎょ]まで皆親暱[しんじつ]有りて、以て相輔佐す。善なれば則ち之を賞し、賞は、宣揚するを謂う。○暱は、女乙反。 過則匡之、匡、正也。 【読み】 過てば則ち之を匡し、匡は、正すなり。 患則救之、救其難也。 【読み】 患えば則ち之を救い、其の難を救うなり。 失則革之。革、更也。 【読み】 失は則ち之を革む。革は、更むなり。 自王以下、各有父兄子弟、以補察其政。補其愆過、察其得失。 【読み】 王より以下、各々父兄子弟有りて、以て其の政を補察す。其の愆過[けんか]を補い、其の得失を察す。 史爲書、謂大史君舉則書。 【読み】 史書を爲し、大史君の舉をば則ち書すを謂う。 瞽爲詩、瞽、盲者。爲詩以風刺。○風、芳鳳反。 【読み】 瞽詩を爲し、瞽は、盲者。詩を爲して以て風刺す。○風は、芳鳳反。 工誦箴諫、工、樂人也。誦箴諫之辭。 【読み】 工箴諫を誦し、工は、樂人なり。箴諫の辭を誦す。 大夫規誨、規正諫誨其君。 【読み】 大夫規誨し、其の君を規正諫誨す。 士傳言、士、卑。不得徑達。聞君過失、傳告大夫。 【読み】 士言を傳え、士は、卑し。徑[ただ]ちに達することを得ず。君の過失を聞けば、大夫に傳告す。 庶人謗、庶人不與政。聞君過則誹謗。 【読み】 庶人謗り、庶人は政に與らず。君の過ちを聞けば則ち誹謗す。 商旅于市、旅、陳也。陳其貨物、以示時所貴尙。 【読み】 商市を旅[つら]ね、旅は、陳ぬるなり。其の貨物を陳ねて、以て時の貴尙する所を示す。 百工獻藝。獻其技藝、以喩政事。 【読み】 百工藝を獻ず。其の技藝を獻じて、以て政事に喩う。 故夏書曰、遒人以木鐸徇于路、逸書。遒人、行人之官也。木鐸、木舌金鈴。徇於路、求歌謡之言。○遒、在由反。 【読み】 故に夏書に曰く、遒人[しゅうじん]木鐸を以て路に徇[とな]え、逸書なり。遒人は、行人の官なり。木鐸は、木舌金鈴。路に徇うとは、歌謡の言を求むるなり。○遒は、在由反。 官師相規、官師、大夫。自相規正。 【読み】 官師相規[ただ]し、官師は、大夫。自ら相規正す。 工執藝事以諫。所謂獻藝。 【読み】 工藝事を執りて以て諫む、と。所謂藝を獻ずるなり。 正月孟春、於是乎有之。諫失常也。有遒人徇路之事。 【読み】 正月孟春、是に於て之れ有り。常を失えるを諫むるなり。遒人路に徇うるの事有り。 天之愛民甚矣。豈其使一人肆於民上、肆、放也。 【読み】 天の民を愛すること甚だし。豈其れ一人をして民の上に肆[ほしいまま]にして、肆は、放なり。 以從其淫、而弃天地之性。必不然矣。傳善師曠能因問盡言。○從、子用反。 【読み】 以て其の淫を從[ほしいまま]にして、天地の性を弃てしめんや。必ず然らじ、と。傳師曠能く問いに因りて言を盡くすを善す。○從は、子用反。 秋、楚子爲庸浦之役故、在前年。○爲、于僞反。 【読み】 秋、楚子庸浦の役の爲の故に、前年に在り。○爲は、于僞反。 子囊師于棠以伐吳。吳不出而還。子囊殿。殿、軍後。○殿、多練反。 【読み】 子囊棠[とう]に師して以て吳を伐つ。吳出でずして還る。子囊殿たり。殿は、軍後。○殿は、多練反。 以吳爲不能而弗儆。吳人自皐舟之隘、要而擊之。皐舟、吳險阨之道。○要、一遙反。阨、於賣反。 【読み】 吳を以て能わずと爲して儆[いまし]めず。吳人皐舟の隘より、要[むか]えて之を擊つ。皐舟は、吳の險阨[けんあい]の道。○要は、一遙反。阨は、於賣反。 楚人不能相救。吳人敗之、獲楚公子宜穀。傳言不備不可以師。 【読み】 楚人相救うこと能わず。吳人之を敗り、楚の公子宜穀を獲たり。傳備えざれば以て師す可からざるを言う。 王使劉定公賜齊侯命、將昏於齊故也。定公、劉夏。位賤、以能而使之。傳稱謚、舉其終。 【読み】 王劉定公をして齊侯に命を賜わしめて、將に齊に昏せんとする故なり。定公は、劉夏。位賤しきも、能を以て之を使えり。傳謚を稱するは、其の終わりを舉ぐるなり。 曰、昔伯舅大公、右我先王、股肱周室、師保萬民、世胙大師、以表東海。胙、報也。表、顯也。謂顯封東海、以報大師之功。 【読み】 曰く、昔伯舅大公、我が先王を右[たす]け、周室に股肱として、萬民を師保せしかば、世々大師に胙[むく]いて、以て東海に表せり。胙は、報ゆるなり。表は、顯すなり。東海に顯封して、以て大師の功に報ゆるを謂う。 王室之不壞、繄伯舅是賴。繄、發聲。 【読み】 王室の壞れざるは、繄[ああ]伯舅に是れ賴れり。繄[えい]は、發聲。 今余命女環。環、齊靈公名。○女、音汝。 【読み】 今余女環に命ず。環は、齊の靈公の名。○女は、音汝。 玆率舅氏之典、纂乃祖考、無忝乃舊。敬之哉。無廢朕命。纂、繼也。因昏而加襃顯。傳言王室不能命有功。 【読み】 玆に舅氏の典に率い、乃の祖考を纂[つ]ぎ、乃の舊を忝むること無かれ。之を敬めや。朕が命を廢つること無かれ、と。纂[さん]は、繼ぐなり。昏に因りて襃顯を加う。傳王室有功に命ずること能わざるを言う。 晉侯問衛故於中行獻子。問衛逐君、當討否。獻子、荀偃。 【読み】 晉侯衛の故を中行獻子に問う。衛君を逐うは、當に討ずべきや否やを問う。獻子は、荀偃。 對曰、不如因而定之。衛有君矣。謂剽已立。 【読み】 對えて曰く、因りて之を定めんに如かず。衛に君有り。剽已に立つを謂う。 伐之未可以得志、而勤諸侯。史佚有言曰、因重而撫之。重不可移。就撫安之。 【読み】 之を伐つも未だ以て志を得可からずして、諸侯を勤めしめん。史佚言えること有り曰く、重きに因りて之を撫でよ、と。重きは移す可からず。就きて之を撫安す。 仲虺有言曰、亡者侮之、亂者取之。推亡固存、國之道也。仲虺、湯左相。 【読み】 仲虺[ちゅうき]言えること有り曰く、亡びんとする者は之を侮り、亂るる者は之を取る。亡を推し存を固くするは、國の道なり、と。仲虺は、湯の左相。 君其定衛以待時乎。待其昏亂之時乃伐之。 【読み】 君其れ衛を定めて以て時を待たんか、と。其の昏亂の時を待ちて乃ち之を伐て、と。 冬、會于戚、謀定衛也。定立剽。 【読み】 冬、戚に會するは、衛を定めんことを謀るなり。剽を定立す。 范宣子假羽毛於齊而弗歸。齊人始貳。析羽爲旌。王者游車之所建。齊私有之。因謂之羽毛。宣子聞而借觀之。 【読み】 范宣子羽毛を齊に假りて歸さず。齊人始めて貳あり。析羽を旌と爲す。王者游車の建つる所なり。齊私かに之を有す。因りて之を羽毛と謂う。宣子聞きて借りて之を觀る。 楚子囊還自伐吳。卒。將死。遺言謂子庚、必城郢。楚徙都郢。未有城郭。公子燮・公子儀因築城爲亂、事未得訖。子囊欲訖而未暇。故遺言見意。 【読み】 楚の子囊吳を伐ちてより還る。卒す。將に死なんとす。遺言して子庚に謂えらく、必ず郢[えい]に城け、と。楚徙りて郢に都せり。未だ城郭有らず。公子燮[しょう]・公子儀城を築くに因りて亂を爲し、事未だ訖[お]わることを得ず。子囊訖わらんと欲して未だ暇あらず。故に遺言して意を見す。 君子謂子囊忠。君薨不忘增其名、謂前年謚君爲共。 【読み】 君子子囊を謂えらく、忠なり。君薨じて其の名を增すことを忘れず、前年君を謚して共とするを謂う。 將死不忘衛社稷。可不謂忠乎。忠、民之望也。詩曰、行歸于周、萬民所望、忠也。詩、小雅。忠信爲周。言德行歸於忠信、卽爲萬民所瞻望。○行、下孟反。 【読み】 將に死なんとして社稷を衛ることを忘れず。忠と謂わざる可けんや。忠は、民の望みなり。詩に曰く、行周に歸すれば、萬民の望む所なりとは、忠なるなり、と。詩は、小雅。忠信を周と爲す。言うこころは、德行忠信に歸すれば、卽ち萬民の爲に瞻望せらる。○行は、下孟反。 〔經〕十有五年、春、宋公使向戌來聘。二月、己亥、及向戌盟于劉。劉夏逆王后于齊。劉、采地。夏、名也。天子卿書字。劉夏非卿。故書名。天子無外。所命則成。故不言逆女。 【読み】 〔經〕十有五年、春、宋公向戌[しょうじゅつ]をして來聘せしむ。二月、己亥[つちのと・い]、向戌と劉に盟う。劉夏王后を齊より逆う。劉は、采地。夏は、名なり。天子の卿は字を書す。劉夏は卿に非ず。故に名を書す。天子は外無し。命ずる所は則ち成る。故に女を逆うと言わず。 夏、齊侯伐我北鄙、圍成。公救成、至遇。無傳。遇、魯地。書至遇、公畏齊、不敢至成。 【読み】 夏、齊侯我が北鄙を伐ち、成を圍む。公成を救い、遇に至る。傳無し。遇は、魯の地。遇に至ると書すは、公齊を畏れて、敢えて成に至らざるなり。 季孫宿・叔孫豹帥師城成郛。備齊。故夏城非例所譏。 【読み】 季孫宿・叔孫豹師を帥いて成の郛[ふ]に城く。齊に備うるなり。故に夏城くも例の譏る所に非ず。 秋、八月、丁巳、日有食之。無傳。八月無丁巳。丁巳、七月一日也。日月必有誤。 【読み】 秋、八月、丁巳[ひのと・み]、日之を食する有り。傳無し。八月に丁巳無し。丁巳は、七月一日なり。日月に必ず誤り有らん。 邾人伐我南鄙。冬、十有一月、癸亥、晉侯周卒。四同盟。 【読み】 邾人[ちゅひと]我が南鄙を伐つ。冬、十有一月、癸亥[みずのと・い]、晉侯周卒す。四たび同盟す。 〔傳〕十五年、春、宋向戌來聘、且尋盟。報二年豹之聘、尋十一年亳之盟。 【読み】 〔傳〕十五年、春、宋の向戌來聘し、且盟を尋[かさ]ぬ。二年の豹の聘に報い、十一年の亳[はく]の盟を尋ぬ。 見孟獻子、尤其室、尤、責過也。 【読み】 孟獻子を見て、其の室を尤めて、尤は、過ちを責むるなり。 曰、子有令聞。而美其室。非所望也。對曰、我在晉、吾兄爲之。毀之重勞。且不敢閒。傳言獻子友于兄、且不隱其實。○聞、音問。閒、去聲。 【読み】 曰く、子令聞有り。而るに其の室を美にす。望み所に非ざるなり、と。對えて曰く、我れ晉に在りしとき、吾が兄之を爲せり。之を毀[こぼ]てば重ねて勞す。且敢えて閒[そし]らず、と。傳獻子兄に友にして、且其の實を隱さざるを言う。○聞は、音問。閒は、去聲。 官師從單靖公、逆王后于齊。卿不行、非禮也。官師、劉夏也。天子官師、非卿也。劉夏獨過魯告昏。故不書單靖公。天子不親昏。使上卿逆而公監之。故曰卿不行、非禮。○過、古禾反。 【読み】 官師單靖公に從いて、王后を齊に逆う。卿行かざるは、禮に非ざるなり。官師は、劉夏なり。天子の官師は、卿に非ざるなり。劉夏獨り魯に過[いた]りて昏を告ぐ。故に單靖公を書さず。天子は親ら昏せず。上卿をして逆えしめて公之を監す。故に卿行かざるは、禮に非ずと曰う。○過は、古禾反。 楚公子午爲令尹、代子囊。 【読み】 楚の公子午を令尹と爲し、子囊に代わる。 公子罷戎爲右尹、蔿子馮爲大司馬、子馮、叔敖從子。○罷、音皮。 【読み】 公子罷戎を右尹と爲し、蔿子馮[いしひょう]を大司馬と爲し、子馮は、叔敖の從子。○罷は、音皮。 公子橐師爲右司馬、公子成爲左司馬、屈到爲莫敖、屈到、屈蕩子。○屈、居勿反。 【読み】 公子橐師[たくし]を右司馬と爲し、公子成を左司馬と爲し、屈到を莫敖と爲し、屈到は、屈蕩の子。○屈は、居勿反。 公子追舒爲箴尹、追舒、莊王子、子南。 【読み】 公子追舒を箴尹と爲し、追舒は、莊王の子、子南。 屈蕩爲連尹、養由基爲宮廏尹、以靖國人。 【読み】 屈蕩を連尹と爲し、養由基を宮廏尹と爲し、以て國人を靖んず。 君子謂楚於是乎能官人。官人、國之急也。能官人、則民無覦心。無覬覦以求幸。○廏、音救。 【読み】 君子謂えらく、楚是に於て能く人を官にせり。人を官にするは、國の急なり。能く人を官にすれば、則ち民覦心[ゆしん]無し。覬覦[きゆ]して以て幸いを求むること無し。○廏は、音救。 詩云、嗟我懷人。寘彼周行。能官人也。詩、周南也。寘、置也。行、列也。周、徧也。詩人嗟歎言、我思得賢人、置之徧於列位。是后妃之志、以官人爲急。○行、戶郎反。下同。 【読み】 詩に云う、嗟[ああ]我れ人を懷う。彼を寘きて行に周くせんことを、と。能く人を官にするなり。詩は、周南なり。寘は、置くなり。行は、列なり。周は、徧きなり。詩人嗟歎して言う、我れ賢人を得て、之を置きて列位に徧くせんことを思う、と。是れ后妃の志、人を官にするを以て急とするなり。○行は、戶郎反。下も同じ。 王及公・侯・伯・子・男・甸・采・衛・大夫、各居其列、所謂周行也。言自王以下、諸侯・大夫各任其職、則是詩人周行之志也。甸・采・衛、五服之名也。天子所居千里曰圻、其外曰侯服、次曰甸服、次曰男服、次曰采服、次曰衛服。五百里爲一服。不言侯・男、略舉也。○任、音壬。 【読み】 王公・侯・伯・子・男・甸[てん]・采・衛・大夫と、各々其の列に居るは、所謂周行なり、と。言うこころは、王より以下、諸侯・大夫各々其の職に任ずるは、則ち是れ詩人周行の志なり。甸・采・衛は、五服の名なり。天子の居る所千里を圻[き]と曰い、其の外を侯服と曰い、次を甸服と曰い、次を男服と曰い、次を采服と曰い、次を衛服と曰う。五百里を一服と爲す。侯・男を言わざるは、略して舉ぐるなり。○任は、音壬。 鄭尉氏・司氏之亂、其餘盜在宋。亂在十年。 【読み】 鄭の尉氏・司氏の亂に、其の餘盜宋に在り。亂十年に在り。 鄭人以子西・伯有・子產之故、納賂于宋、三子之父皆爲尉氏所殺故。 【読み】 鄭人子西・伯有・子產の故を以て、賂を宋に納るるに、三子の父皆尉氏の爲に殺さるる故なり。 以馬四十乘、百六十匹。 【読み】 馬四十乘と、百六十匹。 與師茷・師慧。樂師也。茷・慧、其名。○茷、扶廢反。徐音伐。 【読み】 師茷[はい]・師慧とを以てす。樂師なり。茷・慧は、其の名。○茷は、扶廢反。徐音伐。 三月、公孫黑爲質焉。公孫黑、子晳。○質、音致。 【読み】 三月、公孫黑質と爲る。公孫黑は、子晳。○質は、音致。 司城子罕以堵女父・尉翩・司齊與之、良司臣而逸之、賢而放之。○女、音汝。 【読み】 司城子罕堵女父・尉翩[いへん]・司齊を以て之に與え、司臣を良として之を逸れしめ、賢として之を放つ。○女は、音汝。 託諸季武子。武子寘諸卞。子罕以司臣託季氏。 【読み】 諸を季武子に託す。武子諸を卞に寘く。子罕司臣を以て季氏に託す。 鄭人醢之三人也。三人、堵女父・尉翩・司齊。 【読み】 鄭人之の三人を醢[ししびしお]にす。三人は、堵女父・尉翩・司齊。 師慧過宋朝、將私焉。私、小便。 【読み】 師慧宋の朝を過ぎ、將に私せんとす。私は、小便。 其相曰、朝也。相師者。○相、息亮反。 【読み】 其の相曰く、朝なり、と。師を相くる者。○相は、息亮反。 慧曰、無人焉。相曰、朝也。何故無人。慧曰、必無人焉。若猶有人、豈其以千乘之相、易淫樂之矇。必無人焉故也。千乘相、謂子產等也。言不爲子產殺三盜、得賂而歸之、是重淫樂而輕相國。○易、以豉反。輕也。 【読み】 慧曰く、人無し、と。相曰く、朝なり。何の故に人無からん、と。慧曰く、必ず人無からん。若し猶人有らば、豈其れ千乘の相を以て、淫樂の矇[もう]より易[かろ]んぜんや。必ず人無きが故なり、と。千乘の相とは、子產等を謂うなり。言うこころは、子產の爲に三盜を殺さずして、賂を得て之を歸すは、是れ淫樂を重んじて相國を輕んずるなり。○易は、以豉反。輕んずるなり。 子罕聞之、固請而歸之。言子罕能改過。 【読み】 子罕之を聞き、固く請いて之を歸す。子罕能く過ちを改むるを言う。 夏、齊侯圍成、貳於晉故也。不畏霸主。故敢伐魯。 【読み】 夏、齊侯成を圍むは、晉に貳ある故なり。霸主を畏れず。故に敢えて魯を伐つ。 於是乎城成郛。郛、郭也。 【読み】 是に於て成の郛に城く。郛は、郭なり。 秋、邾人伐我南鄙。亦貳於晉故。 【読み】 秋、邾人我が南鄙を伐つ。亦晉に貳ある故なり。 使告于晉。晉將爲會以討邾・莒。十二年・十四年、莒人伐魯、未之討也。 【読み】 晉に告げしむ。晉將に會を爲して以て邾・莒を討ぜんとす。十二年・十四年、莒人魯を伐ちしも、未だ之を討ぜざるなり。 晉侯有疾。乃止。冬、晉悼公卒。遂不克會。爲明年、會湨梁傳。○湨、古歷反。 【読み】 晉侯疾有り。乃ち止む。冬、晉の悼公卒す。遂に會すること克わず。明年、湨梁[けきりょう]に會する爲の傳なり。○湨は、古歷反。 鄭公孫夏如晉奔喪、子蟜送葬。夏、子西也。言諸侯畏晉。故卿共葬。○共、音恭。 【読み】 鄭の公孫夏晉に如きて喪に奔り、子蟜[しきょう]葬を送る。夏は、子西なり。諸侯晉を畏る。故に卿葬に共するを言う。○共は、音恭。 宋人或得玉、獻諸子罕。子罕弗受。獻玉者曰、以示玉人、玉人、能治玉者。 【読み】 宋人或ひと玉を得、諸を子罕に獻ず。子罕受けず。玉を獻ずる者曰く、以て玉人に示すに、玉人は、能く玉を治むる者。 玉人以爲寶也。故敢獻之。子罕曰、我以不貪爲寶、爾以玉爲寶。若以與我、皆喪寶也。不若人有其寶。稽首而告曰、小人懷璧、不可以越郷。言必爲盜所害。○喪、息浪反。 【読み】 玉人以て寶と爲す。故に敢えて之を獻ず、と。子罕曰く、我は貪らざるを以て寶と爲し、爾は玉を以て寶と爲す。若し以て我に與えば、皆寶を喪うなり。若かじ、人ごとに其の寶を有たんには、と。稽首して告げて曰く、小人璧を懷けば、以て郷を越ゆ可からず。言うこころは、必ず盜の爲に害せらる。○喪は、息浪反。 納此以請死也。請免死。 【読み】 此を納るるは以て死を請うなり、と。死を免れんことを請う。 子罕寘諸其里、使玉人爲之攻之、攻、治也。 【読み】 子罕諸を其の里に寘きて、玉人をして之が爲に之を攻[おさ]めしめ、攻は、治むるなり。 富而後使復其所。賣玉得富。 【読み】 富みて而して後に其の所に復らしむ。玉を賣りて富を得る。 十二月、鄭人奪堵狗之妻、而歸諸范氏。堵狗、堵女父之族。狗娶於晉范氏。鄭人旣誅女父。畏狗因范氏而作亂。故奪其妻歸范氏、先絕之。傳言鄭之有謀。○堵、音者。 【読み】 十二月、鄭人堵狗の妻を奪いて、諸を范氏に歸す。堵狗は、堵女父の族。狗晉の范氏に娶る。鄭人旣に女父を誅す。狗范氏に因りて亂を作さんことを畏る。故に其の妻を奪いて范氏に歸して、先ず之を絕つなり。傳鄭の謀有るを言う。○堵は、音者。 襄 經十年。偪陽。本或作逼。不復。扶又反。 傳。賢行。下孟反。彌。徐音弭。一音武脾反。隊。徒對反。徐徒猥反。堞。徐養涉反。上。時掌反。以徇。似俊反。潦。音老。以几。本又作机同。○今本亦机。可重。直用反。帥卒。子忽反。何貺。音況。賜也。禘。大計反。題以。大兮反。識也。帥師。所類反。其行。戶郎反。請禱。丁老反。夷俘。芳扶反。令居。力呈反。下令在・勸令同。秦丕玆。一本作秦不玆。訾毋。音無。師數。所角反。疲病。音皮。禦寇。魚呂反。爭競。爭鬭之爭。下文與之爭同。幼少。詩照反。閒諸侯。閒厠之閒。封疆。居良反。媐。一音怡。其處。昌慮反。不儆。音景。公孫夏。戶雅反。七乘。繩證反。至治。直吏反。梧。音吾。鄭復。扶又反。以見。賢遍反。下同。還鄭。本又作環。潁。音穎。能御。魚呂反。能庇。必利反。王右。音又。注同。篳。音必。閏。音圭。本亦作圭。騂。字林、許營反。旄。音毛。主爲。于僞反。共祭。音恭。之相。息亮反。下同。以賄。呼罪反。之長。丁丈反。則何謂正矣。何或作可、誤也。 經十一年。復在。扶又反。亳。蒲各反。徐扶各反。良霄。徐音消。 傳。賦稅。舒銳反。將復。扶又反。閎。音宏。詛諸。側慮反。五父。音甫。衢。其倶反。相要。一遙反。使疆。居良反。注同。之難。乃旦反。瑣。素果反。宛陵。於阮反。又於元反。濟隧。音遂。毋。音無。下皆同。速去。起呂反。奬王。將丈反。之比。必利反。殛之。紀力反。注同。俾失。本又作卑。必爾反。斃。婢世反。大夫詹。之廉反。言使。所吏反。注同。爲介。音界。鮮不。息淺反。赦宥。音又。五乘。繩證反。下及注同。二肆。音四。縣鍾。音玄。○今本鐘。數。所角反。 經十二年。不與。音預。 傳。嚮。許亮反。或作向。○今本亦向。禰。乃禮反。魯爲。于僞反。下皆同。爲邢。音刑。凡蔣。將丈反。案富辰所稱邢在蔣下、今傳在凡上。未知何者爲是。茅。亡交反。庶長。丁丈反。下同。敢譽。或如字。非適。丁歷反。劉夏。戶雅反。嬴。音盈。 經十三年。邿。音詩。亢父。音甫。言易。以豉反。傳同。 傳。舍爵。如字。又音捨。馘。古獲反。爲將。于僞反。軍帥。所類反。下文無帥同。事見。賢遍反。將佐。子匠反。什吏。音十。卒乘。子忽反。下繩證反。也夫。音扶。休和。許虯反。有好。呼報反。之治。直吏反。慝。他得反。不爭。爭鬭之爭。少主。詩照反。喪。息浪反。歿。音沒。今本沒。諸夏。戶雅反。必易。徐神豉反。庸浦。判五反。昊。胡老反。巡守。手又反。下同。本又作狩。焉用之。於虔反。本或作將焉用之。 經十四年。其使。所吏反。雖介。音界。惰。徒臥反。 傳。楚使。所吏反。迫逐。音百。瓜州。古華反。煌。音皇。冒。莫報反。洩。息列反。徐以世反。詰朝。如字。使復。扶又反。冑。直又反。毋是。音無。狸。力之反。又作貍同。豺。隹皆反。殽。戶交反。捕。音步。徐又音賦。踣。一音敷豆反。僵。居良反。逷。他歷反。贄。音至。愷悌。開在反。下徒禮反。下文及注同。子介。音界。其使。所吏反。注同。之長。丁丈反。少弟。詩照反。適子。丁歷反。奸。音干。相傳。直專反。于竟。音境。朝那。如淳。音株。匏。白交反。則揭。起例反。棫林。徐于目反。一音於鞠反。黶惡。烏路反。從帥。所類反。下及注皆同。沃奓。昌氏反。本或作侈。又尺氏反。而女。音汝。召公。上照反。注同。奭。詩亦反。爲之。于僞反。囿。音又。之麋。本或作湄。嬖。必計反。不解。音蟹。蘧。其居反。傾覆。芳服反。瑗。于眷反。知愈。羊主反。當差。初賣反。懼難。乃旦反。出竟。音境。下文皆同。近戚。附近之近。射爲。一讀射而禮乎。音食夜反。求中。丁仲反。兩軥。服云、車軛兩邊。又馬頸者。卷者。音權。又起權反。子爲。于僞反。適母。丁歷反。弔于衛。本或作弔于衛侯。侯衍字也。大叔。音泰。之好。呼報反。又重。直用反。注及下同。羔袖。本又作襃。在又反。剽。字林、匹召反。唁。徐作■(歹+言)。音唁。糞。方問反。之長。丁丈反。無帥。所類反。注同。出其君。如字。徐出黜。卬之。音仰。本亦作仰。○今本仰。雷霆。徒丁反。又音挺。本亦作電。匱。其位反。其難。乃旦反。瞽。音古。盲者。莫庚反。箴諫。之林反。士傳。直專反。注同。不與。音預。非謗。如字。本或作誹。音亦同。亦甫味反。其技。其綺反。遒。徐在幽反。又子由反。鐸。待洛反。徇於。似俊反。鈴。力丁反。以從。本或作縱。弗儆。音景。隘。於懈反。右我。音又。世胙。才故反。不壞。如字。服本作懷。繄。烏兮反。環。戶關反。史佚。音逸。仲虺。許鬼反。侮之。亡甫反。左相。息亮反。析羽。星歷反。見意。賢遍反。 經十五年。 傳。令聞。音問。重勞。直用反。敢閒。閒厠之閒。公監。工銜反。罷戎。一音戶買反。蔿。于委反。子馮。皮冰反。從子。才用反。橐。音託。公子成。音城。箴。之林反。覦。羊主反。徐音喩。覬。音冀。寘彼。之豉反。下同。周徧。音遍。下同。日圻。音祈。四十乘。繩證反。下千乘同。子晳。星歷反。卞。皮彥反。之曚。音蒙。不爲。于僞反。下文爲之改之同。堵苟。本或作狗。娶於。七住反。
春秋左氏傳校本第十六 襄公 起十六年盡二十二年 晉 杜氏 集解 唐 陸氏 音義 尾張 秦 鼎 校本 〔經〕十有六年、春、王正月、葬晉悼公。踰月而葬。速也。 【読み】 〔經〕十有六年、春、王の正月、晉の悼公を葬る。月を踰えて葬る。速きなり。 三月、公會晉侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子・薛伯・杞伯・小邾子于湨梁。不書高厚、逃歸故也。湨水、出河内軹縣、東南至溫入河。○湨、古闃反。軹、之氏反。 【読み】 三月、公晉侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]・薛伯・杞伯・小邾子に湨梁[けきりょう]に會す。高厚を書さざるは、逃げ歸る故なり。湨水は、河内軹[し]縣に出でて、東南して溫に至り河に入る。○湨は、古闃反。軹は、之氏反。 戊寅、大夫盟。諸大夫本欲盟高厚、高厚逃歸。故遂自共盟。雞澤會重序諸侯。今此閒無異事、卽上諸侯大夫可知。○重、直用反。 【読み】 戊寅[つちのえ・とら]、大夫盟う。諸大夫本高厚に盟わんと欲して、高厚逃げ歸る。故に遂に自ら共に盟うなり。雞澤の會は重ねて諸侯を序[つら]ぬ。今此は閒に異事無ければ、卽ち上の諸侯の大夫なること知る可し。○重は、直用反。 晉人執莒子・邾子以歸。邾・莒二國數侵魯、又無道於其民。故稱人以執。不以歸京師、非禮也。 【読み】 晉人莒子・邾子を執えて以[い]て歸る。邾・莒の二國數々魯を侵し、又其の民に無道なり。故に人と稱して以て執う。以て京師に歸[おく]らざるは、禮に非ざるなり。 齊侯伐我北鄙。無傳。齊貳晉故。 【読み】 齊侯我が北鄙を伐つ。傳無し。齊晉に貳ある故なり。 夏、公至自會。無傳。 【読み】 夏、公會より至る。傳無し。 五月、甲子、地震。無傳。 【読み】 五月、甲子[きのえ・ね]、地震す。傳無し。 叔老會鄭伯・晉荀偃・衛甯殖・宋人伐許。荀偃主兵、當序鄭上。方示叔老可以會鄭伯。故荀偃在下。 【読み】 叔老鄭伯・晉の荀偃・衛の甯殖[ねいしょく]・宋人に會して許を伐つ。荀偃兵を主れば、當に鄭の上に序ずべし。方に叔老が以て鄭伯に會す可きを示さんとす。故に荀偃下に在り。 秋、齊侯伐我北鄙、圍郕。大雩。無傳。書過。 【読み】 秋、齊侯我が北鄙を伐ち、郕[せい]を圍む。大いに雩す。傳無し。過ぐるを書す。 *「郕」は、原本は「成」であるが「郕」とする。以下同じ。 冬、叔孫豹如晉。 【読み】 冬、叔孫豹晉に如く。 〔傳〕十六年、春、葬晉悼公。 【読み】 〔傳〕十六年、春、晉の悼公を葬る。 平公卽位。平公、悼公子、彪。○彪、彼虯反。 【読み】 平公位に卽く。平公は、悼公の子、彪。○彪は、彼虯反。 羊舌肸爲傅、肸、叔向也。代士渥濁。○肸、許乙反。 【読み】 羊舌肸[ようぜつきつ]を傅と爲し、肸は、叔向[しゅくきょう]なり。士渥濁に代わる。○肸は、許乙反。 張君臣爲中軍司馬、張老子。代其父。 【読み】 張君臣を中軍司馬と爲し、張老の子。其の父に代わる。 祁奚・韓襄・欒盈・士鞅爲公族大夫、祁奚去中軍尉、爲公族大夫、去劇職就閒官。韓襄、無忌子也。 【読み】 祁奚・韓襄・欒盈・士鞅を公族大夫と爲し、祁奚中軍尉を去て、公族大夫と爲るは、劇職を去て閒官に就くなり。韓襄は、無忌の子なり。 虞丘書爲乘馬御。代程鄭。○乘、繩證反。 【読み】 虞丘書を乘馬御と爲す。程鄭に代わる。○乘は、繩證反。 改服脩官、烝于曲沃。旣葬改喪服。脩官、選賢能。曲沃、晉祖廟。烝、冬祭也。諸侯五月而葬。旣葬卒哭作主、然後烝嘗於廟。今晉踰月葬、作主而烝祭、傳言晉將有湨梁之會。故速葬。 【読み】 服を改め官を脩め、曲沃に烝す。旣に葬りて喪服を改むるなり。官を脩むるは、賢能を選ぶなり。曲沃は、晉の祖廟。烝は、冬の祭なり。諸侯は五月にして葬る。旣に葬りて卒哭して主を作り、然して後に廟に烝嘗す。今晉の月を踰えて葬り、主を作りて烝祭するは、傳晉將に湨梁の會有らんとす。故に速やかに葬るを言う。 警守而下、會于湨梁、順河東行。故曰下。 【読み】 警守して下り、湨梁に會し、河に順いて東行す。故に下ると曰う。 命歸侵田。諸侯相侵取之田。 【読み】 命じて侵田を歸さしむ。諸侯相侵取するの田。 以我故、執邾宣公・莒犂比公。犂比、莒子號也。十二年・十四年、莒人侵魯、前年、邾人伐魯。晉將爲魯討之、悼公卒、不克會。故平公終其事。○犂、力私反。一力兮反。比。音毗。注同。 【読み】 我が故を以て、邾の宣公・莒の犂比公[りひこう]を執う。犂比は、莒子の號なり。十二年・十四年、莒人魯を侵し、前年、邾人魯を伐つ。晉將に魯の爲に之を討ぜんとして、悼公卒して、會すること克わず。故に平公其の事を終うるなり。○犂は、力私反。一に力兮反。比は。音毗。注も同じ。 且曰、通齊・楚之使。邾・莒、在齊・楚往來道中。故幷以此責之。經書執、在大夫盟下、旣盟而後告。 【読み】 且曰く、齊・楚の使いを通ぜり、と。邾・莒は、齊・楚往來の道中に在り。故に幷せて此を以て之を責む。經に執うるを書すこと、大夫盟うの下に在るは、旣に盟いて後に告ぐればなり。 晉侯與諸侯宴于溫、使諸大夫舞。曰、歌詩必類。歌古詩、當使各從義類。 【読み】 晉侯諸侯と溫に宴し、諸大夫をして舞わしむ。曰く、詩を歌うこと必ず類せよ、と。古詩を歌うこと、當に各々義類に從わしむべし、と。 齊高厚之詩不類。齊有二心故。 【読み】 齊の高厚の詩類せず。齊二心有る故なり。 荀偃怒。且曰、諸侯有異志矣。使諸大夫盟高厚。高厚逃歸。齊爲大國、高厚若此。知小國必當有從者。 【読み】 荀偃怒る。且つ曰く、諸侯異志有り、と。諸大夫をして高厚に盟わしめんとす。高厚逃げ歸る。齊は大國と爲して、高厚此の若し。小國も必ず當に從う者有るべきを知るなり。 於是叔孫豹・晉荀偃・宋向戌・衛甯殖・鄭公孫蠆・小邾之大夫盟、曰、同討不庭。自曹以下大夫不書。故傳舉小邾以包之。○向、舒亮反。戌、音恤。蠆、勑邁反。 【読み】 是に於て叔孫豹・晉の荀偃・宋の向戌[しょうじゅつ]・衛の甯殖・鄭の公孫蠆[こうそんたい]・小邾の大夫盟いて、曰く、同じく不庭を討ぜん、と。曹より以下の大夫を書さず。故に傳小邾を舉げて以て之を包[か]ぬ。○向は、舒亮反。戌は、音恤。蠆は、勑邁反。 許男請遷于晉。許欲叛楚。 【読み】 許男遷らんことを晉に請う。許楚に叛かんことを欲す。 諸侯遂遷許。許大夫不可。晉人歸諸侯。唯以其師討許之不肯遷。 【読み】 諸侯遂に許を遷さんとす。許の大夫可[き]かず。晉人諸侯を歸す。唯其の師を以て許の遷ることを肯わざるを討ず。 鄭子蟜聞將伐許、遂相鄭伯以從諸侯之師。鄭與許有宿怨。故其君親行。○蟜、居表反。 【読み】 鄭の子蟜[しきょう]將に許を伐たんとするを聞き、遂に鄭伯を相けて以て諸侯の師に從う。鄭と許と宿怨有り。故に其の君親ら行く。○蟜は、居表反。 穆叔從公、從公歸。○從、才用反。又如字。 【読み】 穆叔は公に從い、公に從いて歸る。○從は、才用反。又字の如し。 齊子帥師會晉荀偃。 【読み】 齊子は師を帥いて晉の荀偃に會す。 書曰會鄭伯、爲夷故也。夷、平也。春秋於魯事、所記不與外事同者、客主之言、所以爲文、固當異也。魯卿每會公侯、春秋無譏。故於此示例、不先書主兵之荀偃、而書後至之鄭伯。時皆諸侯大夫、義取皆平故得會鄭伯。 【読み】 書して鄭伯に會すと曰うは、夷[たい]らかなるが爲の故なり。夷は、平なり。春秋魯の事に於て、記する所外事と同じからざるは、客主の言、文を爲す所以、固より當に異なるべければなり。魯の卿公侯に會する每に、春秋譏ること無し。故に此に於て例を示して、先ず主兵の荀偃を書して、後至の鄭伯を書せり。時に皆諸侯の大夫なるも、義皆平らかなるが故に鄭伯に會することを得るに取る。 夏、六月、次于棫林。庚寅、伐許、次于函氏。棫林・函氏、皆許地。○棫、爲逼反。又于目反。 【読み】 夏、六月、棫林[よくりん]に次[やど]る。庚寅[かのえ・とら]、許を伐ち、函氏に次る。棫林・函氏は、皆許の地。○棫は、爲逼反。又于目反。 晉荀偃・欒黶帥師伐楚、以報宋揚梁之役。晉師獨進。揚梁役、在十二年。○黶、於斬反。 【読み】 晉の荀偃・欒黶[らんえん]師を帥いて楚を伐ち、以て宋の揚梁の役に報ゆ。晉の師獨り進む。揚梁の役は、十二年に在り。○黶は、於斬反。 楚公子格帥師及晉師戰于湛阪。襄城昆陽縣北有湛水、東入汝。○湛、市林反。一直斬反。阪、音反。又扶板反。 【読み】 楚の公子格師を帥いて晉の師と湛阪に戰う。襄城昆陽縣の北に湛水有り、東して汝に入る。○湛は、市林反。一に直斬反。阪は、音反。又扶板反。 楚師敗績。晉師遂侵方城之外、不書、不告。 【読み】 楚の師敗績す。晉の師遂に方城の外を侵し、書さざるは、告げざればなり。 復伐許而還。許未遷故。○復、扶又反。 【読み】 復許を伐ちて還る。許未だ遷らざる故なり。○復は、扶又反。 秋、齊侯圍郕。郕、魯孟氏邑。貳晉。故伐魯。 【読み】 秋、齊侯郕を圍む。郕は、魯の孟氏の邑。晉に貳あり。故に魯を伐つ。 孟孺子速徼之。孟獻子之子、莊子速也。徼、要也。○徼、古澆反。 【読み】 孟孺子速之を徼[むか]う。孟獻子の子、莊子速なり。徼は、要[むか]うなり。○徼は、古澆反。 齊侯曰、是好勇。去之以爲之名。速遂塞海陘而還。海陘、魯隘道。○陘、音刑。 【読み】 齊侯曰く、是れ勇を好む。之を去りて以て之が名を爲さん、と。速遂に海陘を塞ぎて還る。海陘は、魯の隘道。○陘は、音刑。 冬、穆叔如晉聘、且言齊故。言齊再伐魯。 【読み】 冬、穆叔晉に如きて聘し、且齊の故を言う。齊再び魯を伐ちしを言う。 晉人曰、以寡君之未禘祀、禘祀、三年喪畢之吉祭。 【読み】 晉人曰く、寡君の未だ禘祀せざると、禘祀は、三年の喪畢わるの吉祭。 與民之未息。新伐許及楚。 【読み】 民の未だ息わざるとを以てなり。新たに許と楚とを伐つ。 不然、不敢忘。穆叔曰、以齊人之朝夕釋憾於敝邑之地、是以大請。敝邑之急、朝不及夕。引領西望曰、庶幾乎。庶幾晉來救。 【読み】 然らずんば、敢えて忘れじ、と。穆叔曰く、齊人の朝夕に憾みを敝邑の地に釋くを以て、是を以て大いに請う。敝邑の急なる、朝夕に及ばず。領[えり]を引きて西望して曰く、庶幾[ねが]われん。晉の來り救うを庶幾う。 比執事之閒、恐無及也。 【読み】 執事の閒ある比[ころおい]には、恐らくは及ぶこと無からん、と。 見中行獻子、賦圻父。圻父、詩小雅。周司馬掌封畿之兵甲。故謂之圻父。詩人責圻父爲王爪牙、不脩其職、使百姓受困苦之憂、而無所止居。○比、必利反。閒、音閑。行、戶郎反。圻、其依反。 【読み】 中行獻子を見て、圻父[きほ]を賦す。圻父は、詩の小雅。周の司馬封畿の兵甲を掌る。故に之を圻父と謂う。詩人圻父が王の爪牙として、其の職を脩めずして、百姓をして困苦の憂えを受けて、止居する所無からしむるを責む。○比は、必利反。閒は、音閑。行は、戶郎反。圻は、其依反。 獻子曰、偃知罪矣。敢不從執事、以同恤社稷。而使魯及此。及此憂。 【読み】 獻子曰く、偃罪を知れり。敢えて執事に從いて、以て同じく社稷を恤えざらんや。而るを魯をして此に及ばしめり、と。此の憂えに及ぶ。 見范宣子、賦鴻鴈之卒章。鴻鴈、詩小雅。卒章曰、鴻鴈于飛、哀鳴嗷嗷。唯此哲人、謂我劬勞。言魯憂困嗷嗷然、若鴻鴈之失所。大曰鴻、小曰鴈。 【読み】 范宣子を見て、鴻鴈の卒章を賦す。鴻鴈は、詩の小雅。卒章に曰く、鴻鴈于[ここ]に飛びて、哀しみ鳴くこと嗷嗷[ごうごう]たり。唯[こ]れ此の哲人、我を劬勞すと謂う、と。魯の憂困嗷嗷然として、鴻鴈の所を失うが若きを言う。大を鴻と曰い、小を鴈と曰う。 *「唯」は、詩経には「維」。 宣子曰、匃在此。敢使魯無鳩乎。鳩、集也。○匃、古害反。鳩、居牛反。 【読み】 宣子曰く、匃[かい]此に在り。敢えて魯をして鳩[あつ]まること無からしめんや、と。鳩は、集まるなり。○匃は、古害反。鳩は、居牛反。 〔經〕十有七年、春、王二月、庚午、邾子牼卒。無傳。宣公也。四同盟。○牼、若耕反。 【読み】 〔經〕十有七年、春、王の二月、庚午[かのえ・うま]、邾子[ちゅし]牼[こう]卒す。傳無し。宣公なり。四たび同盟す。○牼は、苦耕反。 宋人伐陳。夏、衛石買帥師伐曹。買、石稷子。 【読み】 宋人陳を伐つ。夏、衛の石買師を帥いて曹を伐つ。買は、石稷の子。 秋、齊侯伐我北鄙、圍桃。高厚帥師伐我北鄙、圍防。弁縣東南有桃虛。○虛、起居反。 【読み】 秋、齊侯我が北鄙を伐ち、桃を圍む。高厚師を帥いて我が北鄙を伐ち、防を圍む。弁縣の東南に桃虛有り。○虛は、起居反。 九月、大雩。無傳。書過。 【読み】 九月、大いに雩[う]す。傳無し。過ぐるを書す。 宋華臣出奔陳。暴亂宗室、懼而出奔。實以冬出。書秋者、以始作亂時來告。○華、戶化反。 【読み】 宋の華臣出でて陳に奔る。宗室を暴亂し、懼れて出奔す。實は冬を以て出づ。秋に書すは、始めて亂を作す時を以て來り告ぐればなり。○華は、戶化反。 冬、邾人伐我南鄙。 【読み】 冬、邾人我が南鄙を伐つ。 〔傳〕十七年、春、宋莊朝伐陳、獲司徒卬。卑宋也。司徒卬、陳大夫。卑宋不設備。○朝、如字。凡人名字、皆放此。卬、五郎反。 【読み】 〔傳〕十七年、春、宋の莊朝陳を伐ち、司徒卬[こう]を獲たり。宋を卑しめばなり。司徒卬は、陳の大夫。宋を卑しみて備えを設けず。○朝は、字の如し。凡そ人の名字は、皆此に放え。卬は、五郎反。 衛孫蒯田于曹隧、越竟而獵。孫蒯、林父之子。○蒯、苦怪反。 【読み】 衛の孫蒯[そんかい]曹隧に田[かり]して、竟を越えて獵す。孫蒯は、林父の子。○蒯は、苦怪反。 飮馬于重丘、重丘、曹邑。○飮、於鴆反。重、直龍反。 【読み】 馬に重丘に飮[みずか]い、重丘は、曹の邑。○飮は、於鴆反。重は、直龍反。 毀其甁。重丘人閉門而訽之、訽、罵也。○訽、呼豆反。罵、馬嫁反。 【読み】 其の甁を毀[こぼ]つ。重丘の人門を閉じて之を訽[ののし]りて、訽[こう]は、罵るなり。○訽は、呼豆反。罵は、馬嫁反。 曰、親逐而君、爾父爲厲。厲、惡鬼。林父逐君、在十四年。 【読み】 曰く、親ら而[なんじ]の君を逐い、爾の父は厲爲り。厲は、惡鬼。林父が君を逐うことは、十四年に在り。 是之不憂、而何以田爲。 【読み】 是を憂えずして、何を以て田することをする、と。 夏、衛石買・孫蒯伐曹、取重丘。孫蒯不書、非卿。 【読み】 夏、衛の石買・孫蒯曹を伐ち、重丘を取る。孫蒯書さざるは、卿に非ざればなり。 曹人愬于晉。爲明年、晉人執石買傳。○愬、悉路反。 【読み】 曹人晉に愬[うった]う。明年、晉人石買を執うる爲の傳なり。○愬は、悉路反。 齊人以其未得志于我故、前年、圍郕辟孟孺子。 【読み】 齊人其の未だ志を我に得ざるを以ての故に、前年、郕を圍みて孟孺子を辟く。 秋、齊侯伐我北鄙、圍桃。高厚圍臧紇于防。防、臧紇邑。○紇、恨發反。 【読み】 秋、齊侯我が北鄙を伐ち、桃を圍む。高厚臧紇[ぞうこつ]を防に圍む。防は、臧紇の邑。○紇は、恨發反。 師自陽關逆臧孫、至于旅松。陽關、在泰山鉅平縣東。旅松、近防地也。魯師畏齊、不敢至防。 【読み】 師陽關より臧孫を逆[むか]えんとして、旅松に至る。陽關は、泰山鉅平縣の東に在り。旅松は、防に近き地なり。魯の師齊を畏れ、敢えて防に至らず。 鄹叔紇・臧疇・臧賈帥甲三百、宵犯齊師、送之而復。鄹叔紇、叔梁紇。臧疇・臧賈、臧紇之昆弟也。三子與臧紇共在防。故夜送臧紇於旅松、而復還守防。○鄹、側留反。 【読み】 鄹叔紇[しゅうしゅくこつ]・臧疇・臧賈甲三百を帥いて、宵齊の師を犯し、之を送りて復る。鄹叔紇は、叔梁紇。臧疇・臧賈は、臧紇の昆弟なり。三子臧紇と共に防に在り。故に夜臧紇を旅松に送りて、復還りて防を守る。○鄹は、側留反。 齊師去之。失臧紇故。 【読み】 齊の師之を去る。臧紇を失う故なり。 齊人獲臧堅。堅、臧紇之族。 【読み】 齊人臧堅を獲たり。堅は、臧紇の族。 齊侯使夙沙衛唁之、且曰、無死。使無自殺。 【読み】 齊侯夙沙衛をして之を唁[とむら]わしめ、且つ曰く、死すること無かれ、と。自殺すること無からしむ。 堅稽首曰、拜命之辱。抑君賜不終。姑又使其刑臣禮於士。以杙抉其傷而死。言使賤人來唁己。是惠賜不終也。夙沙衛、奄人。故謂之刑臣。○杙、音弋。抉、烏穴反。又音決。 【読み】 堅稽首して曰く、命の辱きを拜す。抑々君の賜終えず。姑く又其の刑臣をして士を禮せしめり、と。杙[くい]を以て其の傷を抉[えぐ]りて死す。言うこころは、賤人をして來りて己を唁わしむ。是れ惠賜終わらざるなり。夙沙衛は、奄人。故に之を刑臣と謂う。○杙[よく]は、音弋。抉は、烏穴反。又音決。 冬、邾人伐我南鄙、爲齊故也。齊未得志於魯。故邾助之。○爲、于僞反。 【読み】 冬、邾人我が南鄙を伐つは、齊の爲の故なり。齊未だ志を魯に得ず。故に邾之を助く。○爲は、于僞反。 宋華閱卒。華臣弱皐比之室、臣、閱之弟。皐比、閱之子。弱、侵易之。○比、音毗。易、以豉反。 【読み】 宋の華閱卒す。華臣皐比の室を弱しとして、臣は、閱の弟。皐比は、閱の子。弱しとは、之を侵し易[あなど]るなり。○比は、音毗。易は、以豉反。 使賊殺其宰華吳。賊六人以鈹殺諸盧門合左師之後。盧門、宋城門。合、向戌邑。後、屋後。○鈹、普皮反。 【読み】 賊をして其の宰華吳を殺さしむ。賊六人鈹[つるぎ]を以て諸を盧門の合左師の後に殺す。盧門は、宋の城門。合は、向戌の邑。後は、屋後。○鈹は、普皮反。 左師懼曰、老夫無罪。賊曰、皐比私有討於吳。遂幽其妻、幽吳妻也。 【読み】 左師懼れて曰く、老夫罪無し、と。賊曰く、皐比私かに吳を討ずること有り、と。遂に其の妻を幽[とら]えて、吳の妻を幽うるなり。 曰、畀余而大璧。畀、與也。 【読み】 曰く、余に而の大璧を畀[あた]えよ、と。畀[ひ]は、與うるなり。 宋公聞之、曰、臣也、不唯其宗室是暴、大亂宋國之政。必逐之。左師曰、臣也亦卿也。大臣不順、國之恥也。不如蓋之。乃舍之。 【読み】 宋公之を聞きて、曰く、臣や、唯其の宗室を是て暴[そこな]うのみにあらず、大いに宋國の政を亂れり。必ず之を逐え、と。左師曰く、臣や亦卿なり。大臣の不順なるは、國の恥なり。之を蓋わんには如かじ、と。乃ち之を舍[ゆる]す。 左師爲己短策、苟過華臣之門必騁。惡之。○騁、勑領反。惡、烏路反。 【読み】 左師己が短策を爲り、苟も華臣の門を過ぐれば必ず騁[は]す。之を惡む。○騁[てい]は、勑領反。惡は、烏路反。 十一月、甲午、國人逐瘈狗。瘈狗入於華臣氏。國人從之。華臣懼、遂奔陳。華臣心不自安。見逐狗而驚走。○瘈、居世反。一音制。 【読み】 十一月、甲午[きのえ・うま]、國人瘈狗[けいく]を逐う。瘈狗華臣氏に入る。國人之を從[お]う。華臣懼れ、遂に陳に奔る。華臣の心自ら安んぜず。狗を逐うを見て驚走す。○瘈は、居世反。一に音制。 宋皇國父爲大宰。爲平公築臺、妨於農收。周十一月、今九月。收斂時。 【読み】 宋の皇國父大宰爲り。平公の爲に臺を築き、農收を妨ぐ。周の十一月は、今の九月。收斂の時なり。 子罕請俟農功之畢。公弗許。築者謳曰、澤門之皙、實興我役、澤門、宋東城南門也。皇國父白皙、而居近澤門。○皙、星曆反。 【読み】 子罕農功の畢わるを俟たんと請う。公許さず。築く者謳[うた]いて曰く、澤門の皙、實に我が役を興し、澤門は、宋の東城の南門なり。皇國父白皙にして、居ること澤門に近し。○皙は、星曆反。 邑中之黔、實慰我心。子罕黑色、而居邑中。○黔、音琴。一其廉反。 【読み】 邑中の黔[けん]、實に我が心を慰めり、と。子罕は黑色にして、邑中に居る。○黔は、音琴。一に其廉反。 子罕聞之、親執扑、扑、杖。○扑、普卜反。 【読み】 子罕之を聞き、親ら扑[つえ]を執りて、扑は、杖。○扑は、普卜反。 以行築者、而抶其不勉者、曰、吾儕小人、皆有闔廬、以辟燥濕寒暑。闔、謂門戶閉塞。○行、下孟反。抶、恥乙反。 【読み】 以て築く者を行[めぐ]りて、其の勉めざる者を抶[むちう]ちて、曰く、吾が儕[ともがら]小人も、皆闔廬有りて、以て燥濕寒暑を辟く。闔は、門戶閉塞を謂う。○行は、下孟反。抶は、恥乙反。 今君爲一臺而不速成、何以爲役。役、事也。 【読み】 今君一臺を爲して速やかに成さずんば、何を以て役と爲さん、と。役は、事なり。 謳者乃止。 【読み】 謳う者乃ち止む。 或問其故。子罕曰、宋國區區。而有詛有祝、禍之本也。傳善子罕分謗。○詛、莊慮反。祝、之又反。 【読み】 或ひと其の故を問う。子罕曰く、宋國は區區たり。而るに詛[しょ]有り祝有るは、禍の本なり。傳子罕謗りを分かつを善す。○詛は、莊慮反。祝は、之又反。 齊晏桓子卒。晏嬰父也。 【読み】 齊の晏桓子卒す。晏嬰の父なり。 晏嬰麤縗斬、斬、不緝之也。縗、在胷前。麤、三升布。○麤、本作麄。縗、七雷反。 【読み】 晏嬰麤縗斬[そさいざん]し、斬は、之を緝せざるなり。縗は、胷前に在り。麤は、三升の布。○麤は、本麄に作る。縗は、七雷反。 苴絰帶、杖、菅屨、苴、麻之有子者。取其麤也。杖、竹杖。菅屨、草屨。○苴、七余反。菅、古顏反。 【読み】 苴[そ]の絰帶[てったい]、杖、菅屨[かんく]し、苴は、麻の子[み]有る者。其の麤に取るなり。杖は、竹杖。菅屨は、草屨。○苴は、七余反。菅は、古顏反。 食鬻、居倚廬、寢苫、枕草。此禮與士喪禮略同。其異、唯枕草耳。然枕凷亦非喪服正文。○鬻、之六反。謂朝一溢米、暮一溢米。苫、傷廉反。枕、之鴆反。凷、苦對反。一苦怪反。 【読み】 鬻[かゆ]を食い、倚廬[いろ]に居り、苫[とま]に寢ね、草を枕にす。此の禮は士喪禮と略同じ。其の異なるは、唯草を枕にするのみ。然れども凷[かい]を枕にするも亦喪服の正文に非ず。○鬻は、之六反。朝一溢米、暮一溢米を謂う。苫は、傷廉反。枕は、之鴆反。凷は、苦對反。一に苦怪反。 其老曰、非大夫之禮也。時之所行、士及大夫縗服、各有不同。晏子爲大夫而行士禮。其家臣不解。故譏之。 【読み】 其の老曰く、大夫の禮に非ざるなり、と。時の行う所、士と大夫との縗服、各々同じからざること有り。晏子大夫として士禮を行う。其の家臣解せず。故に之を譏る。 曰、唯卿爲大夫。晏子悪直己以斥時失禮。故孫辭略答家老。或云、晏子言、古以卿爲大夫。吾非卿。故不服大夫之服。釋義、諸矦降于天子一等。故唯卿得服大夫之服。按孔疏似勝。家語、孔子曰、晏平仲可謂能遠害矣。不以己之是駮人之非。遜辭以避害矣。 【読み】 曰く、唯卿のみ大夫を爲す、と。晏子己を直くして以て時の失禮を斥[さ]すを悪む。故に孫辭して家老に略答す。或ひと云う、晏子言う、古は卿を以て大夫と爲す。吾れ卿に非ず。故に大夫の服を服せず、と。釋義に、諸矦天子に降ること一等。故に唯卿のみ大夫の服を服することを得、と。按ずるに孔疏勝れるに似たり。家語に、孔子曰く、晏平仲能く害を遠ざくと謂う可し。己の是を以て人の非を駮[せ]めず。遜辭以て害を避くるなり、と。 〔經〕十有八年、春、白狄來。不言朝、不能行朝禮。 【読み】 〔經〕十有八年、春、白狄來る。朝すと言わざるは、朝禮を行うこと能わざればなり。 夏、晉人執衛行人石買。石買、卽是伐曹者。宜卽懲治本罪。而晉因其爲行人之使執之。故書行人以罪晉。 【読み】 夏、晉人衛の行人石買を執う。石買は、卽ち是れ曹を伐つ者。宜しく卽きて本罪を懲治すべし。而るを晉其の行人の使い爲るに因りて之を執う。故に行人と書して以て晉を罪す。 秋、齊師伐我北鄙。不書齊侯、齊侯不入竟。 【読み】 秋、齊の師我が北鄙を伐つ。齊侯を書さざるは、齊侯竟に入らざればなり。 冬、十月、公會晉侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子・滕子・薛伯・杞伯・小邾子同圍齊。齊數行不義。諸侯同心倶圍之。 【読み】 冬、十月、公晉侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]・滕子・薛伯・杞伯・小邾子に會して同じく齊を圍む。齊數々不義を行う。諸侯同心して倶に之を圍む。 曹伯負芻卒于師。無傳。禮當與許男同。三同盟。 【読み】 曹伯負芻師に卒す。傳無し。禮當に許男と同じかるべし。三たび同盟す。 楚公子午帥師伐鄭。 【読み】 楚の公子午師を帥いて鄭を伐つ。 〔傳〕十八年、春、白狄始來。白狄、狄之別名。未嘗與魯接。故曰始。 【読み】 〔傳〕十八年、春、白狄始めて來る。白狄は、狄の別名。未だ嘗て魯と接わらず。故に始めてと曰う。 夏、晉人執衛行人石買于長子、執孫蒯于純留。長子・純留二縣、今皆屬上黨郡。孫蒯不書、父在位、蒯非卿。○長、丁丈反。或如字。純、徒溫反。或如字。 【読み】 夏、晉人衛の行人石買を長子に執え、孫蒯を純留に執う。長子・純留の二縣は、今皆上黨郡に屬す。孫蒯書さざるは、父位に在りて、蒯卿に非ざればなり。○長は、丁丈反。或は字の如し。純は、徒溫反。或は字の如し。 爲曹故也。前年、衛伐曹。 【読み】 曹の爲の故なり。前年、衛曹を伐つ。 秋、齊侯伐我北鄙。 【読み】 秋、齊侯我が北鄙を伐つ。 中行獻子將伐齊。夢與厲公訟、弗勝。厲公、獻子所弑者。 【読み】 中行獻子將に齊を伐たんとす。夢みらく、厲公と訟えて、勝たず。厲公は、獻子が弑せし所の者。 公以戈擊之。首隊於前。跪而戴之、奉之以走、見梗陽之巫皐。梗陽、晉邑。在大原晉陽縣南。皐、巫名也。夢幷見之。○隊、直位反。跪、其委反。奉、芳勇反。 【読み】 公戈を以て之を擊つ。首前に隊[お]つ。跪きて之を戴き、之を奉[ささ]げて以て走り、梗陽の巫皐を見る、と。梗陽は、晉の邑。大原晉陽縣の南に在り。皐は、巫の名なり。夢に幷せて之を見る。○隊は、直位反。跪は、其委反。奉は、芳勇反。 他日見諸道。與之言。同。巫亦夢見獻子與厲公訟。 【読み】 他日諸を道に見る。之と言う。同じ。巫も亦夢に獻子と厲公と訟うるを見る。 巫曰、今玆主必死。若有事於東方、則可以逞。巫知獻子有死徵。故勸使快意伐齊。 【読み】 巫曰く、今玆[ことし]主必ず死せん。若し東方に事有らば、則ち以て逞くす可し、と。巫獻子に死徵有るを知る。故に勸めて快意に齊を伐たしむ。 獻子許諾。 【読み】 獻子許諾す。 晉侯伐齊。將濟河。獻子以朱絲係玉二瑴、雙玉曰瑴。○瑴、古學反。 【読み】 晉侯齊を伐つ。將に河を濟らんとす。獻子朱絲を以て玉二瑴[かく]を係けて、雙玉を瑴と曰う。○瑴は、古學反。 而禱曰、齊環怙恃其險、負其衆庶、環、齊靈公名。負、依也。 【読み】 禱りて曰く、齊の環其の險を怙恃し、其の衆庶に負[よ]り、環は、齊の靈公の名。負は、依るなり。 弃好背盟、陵虐神主、神主、民也。謂數伐魯殘民人。 【読み】 好を弃て盟に背き、神主を陵虐すれば、神主は、民なり。數々魯を伐ちて民人を殘[そこな]うを謂う。 曾臣彪將率諸侯以討焉。彪、晉平公名。稱臣者、明上有天子、以謙告神。曾臣、猶末臣。 【読み】 曾臣彪將に諸侯を率いて以て討ぜんとす。彪は、晉の平公の名。臣と稱するは、上に天子有るを明らかにし、謙を以て神に告ぐるなり。曾臣は、猶末臣のごとし。 其官臣偃實先後之。守官之臣。偃、獻子名。○先、悉薦反。後、戶豆反。 【読み】 其の官臣偃實に之を先後す。守官の臣。偃は、獻子の名。○先は、悉薦反。後は、戶豆反。 苟捷有功、無作神羞。羞、恥也。 【読み】 苟も捷[か]ちて功有らしめ、神の羞を作すこと無かれ。羞は、恥なり。 官臣偃無敢復濟。偃信巫言。故以死自誓。○復、扶又反。 【読み】 官臣偃敢えて復濟ること無からん。偃巫の言を信ず。故に死を以て自ら誓う。○復は、扶又反。 唯爾有神裁之。沈玉而濟。 【読み】 唯爾有神之を裁せよ、と。玉を沈めて濟る。 冬、十月、會于魯濟、尋湨梁之言、同伐齊。湨梁在十六年。盟曰、同討不庭。○沈、音鴆。或如字。 【読み】 冬、十月、魯濟に會して、湨梁[けきりょう]の言を尋[かさ]ね、同じく齊を伐つ。湨梁は十六年に在り。盟に曰く、同じく不庭を討ぜん、と。○沈は、音鴆。或は字の如し。 齊侯禦諸平陰、塹防門而守之。廣里。平陰城、在濟北盧縣東北。其城南有防。防有門。於門外作塹。橫行廣一里。故經書圍。○廣、古曠反。 【読み】 齊侯諸を平陰に禦ぎ、防門に塹して之を守る。廣さ里。平陰城は、濟北盧縣の東北に在り。其の城の南に防有り。防に門有り。門外に於て塹を作る。橫行廣さ一里。故に經に圍むと書す。○廣は、古曠反。 夙沙衛曰、不能戰、莫如守險。謂防門不足爲險。 【読み】 夙沙衛曰く、戰うこと能わずんば、險を守るに如くは莫し、と。防門險と爲すに足らざるを謂う。 弗聽。 【読み】 聽かず。 諸侯之士門焉。齊人多死。范宣子告析文子、析文子、齊大夫、子家。○析、星曆反。 【読み】 諸侯の士門[せ]む。齊人多く死す。范宣子析文子に告げて、析文子は、齊の大夫、子家。○析は、星曆反。 曰、吾知子。敢匿情乎。魯人・莒人皆請以車千乘、自其郷入、旣許之矣。若入、君必失國。子盍圖之。子家以告公。公恐。晏嬰聞之曰、君固無勇。而又聞是。弗能久矣。不能久敵晉。 【読み】 曰く、吾れ子を知れり。敢えて情を匿さんや。魯人・莒人皆車千乘を以て、其の郷より入らんことを請い、旣に之を許せり。若し入らば、君必ず國を失わん。子盍ぞ之を圖らざる、と。子家以て公に告ぐ。公恐る。晏嬰之を聞きて曰く、君固より勇無し。而るに又是を聞く。久しきこと能わじ、と。久しく晉に敵すること能わず。 齊侯登巫山以望晉師。巫山、在盧縣東北。 【読み】 齊侯巫山に登りて以て晉の師を望む。巫山は、盧縣の東北に在り。 晉人使司馬斥山澤之險、雖所不至、必旆而疏陳之、斥、候也。疏建旌旗以爲陳示衆也。○斥、音尺。陳、直覲反。 【読み】 晉人司馬をして山澤の險を斥[うかが]わしめ、至らざる所と雖も、必ず旆して之を疏陳し、斥は、候[うかが]うなり。疏[まば]らに旌旗を建てて以て陳を爲して衆きを示すなり。○斥は、音尺。陳は、直覲反。 使乘車者、左實右僞、以旆先、僞、以衣服爲人形也。建旆以先驅。 【読み】 車に乘る者をして、左は實右は僞にして、旆を以て先だたせ、僞とは、衣服を以て人形を爲すなり。旆を建てて以て先驅とす。 輿曳柴而從之。以揚塵。 【読み】 輿柴を曳きて之に從う。以て塵を揚ぐ。 齊侯見之、畏其衆也、乃脫歸。脫、不張旌幟。 【読み】 齊侯之を見、其の衆を畏るるや、乃ち脫して歸る。脫は、旌幟を張らざるなり。 丙寅、晦、齊師夜遁。師曠告晉侯曰、鳥烏之聲樂。齊師其遁。鳥烏得空營。故樂也。 【読み】 丙寅[ひのえ・とら]、晦、齊の師夜遁ぐ。師曠晉侯に告げて曰く、鳥烏の聲樂しめり。齊の師其れ遁げしならん、と。鳥烏空營を得。故に樂しむなり。 邢伯告中行伯、邢伯、晉大夫、邢侯也。中行伯、獻子。 【読み】 邢伯中行伯に告げて、邢伯は、晉の大夫、邢侯なり。中行伯は、獻子。 曰、有班馬之聲。夜遁馬不相見。故鳴。班、別也。○別、彼列反。 【読み】 曰く、班馬の聲有り。夜遁げて馬相見ず。故に鳴く。班は、別るるなり。○別は、彼列反。 齊師其遁。 【読み】 齊の師其れ遁げしならん、と。 叔向告晉侯曰、城上有烏。齊師其遁。 【読み】 叔向[しゅくきょう]晉侯に告げて曰く、城上に烏有り。齊の師其れ遁げしならん、と。 十一月、丁卯、朔、入平陰、遂從齊師。夙沙衛連大車以塞隧而殿。此衛所欲守險。○殿、丁練反。 【読み】 十一月、丁卯[ひのと・う]、朔、平陰に入り、遂に齊の師を從[お]う。夙沙衛大車を連ねて以て隧を塞ぎて殿す。此れ衛が守らんと欲する所の險なり。○殿は、丁練反。 殖綽・郭最曰、子殿國師、齊之辱也。奄人殿師。故以爲辱。 【読み】 殖綽・郭最曰く、子國の師に殿たらば、齊の辱なり。奄人師に殿す。故に以て辱と爲す。 子姑先乎。乃代之殿。衛殺馬於隘以塞道。恨二子。故塞其道、欲使晉得之。 【読み】 子姑く先んぜんか、と。乃ち之に代わりて殿す。衛馬を隘に殺して以て道を塞ぐ。二子を恨む。故に其の道を塞ぎて、晉をして之を得せしめんと欲す。 晉州綽及之、射殖綽中肩、兩矢夾脰。脰、頸也。○脰、音豆。 【読み】 晉の州綽之に及び、殖綽を射て肩に中て、兩矢脰[とう]を夾む。脰は、頸なり。○脰は、音豆。 曰、止、將爲三軍獲。不止、將取其衷。不止、復欲射兩矢中央。○衷、音忠。 【読み】 曰く、止まらば、將に三軍の獲と爲さんとす。止まらずんば、將に其の衷を取らんとす、と。止まらずんば、復兩矢の中央を射んと欲す。○衷は、音忠。 顧曰、爲私誓。州綽曰、有如日。言必不殺女、明如日。 【読み】 顧みて曰く、私誓を爲さん、と。州綽曰く、日の如きこと有らん、と。言うこころは、必ず女を殺さざること、明らかなること日の如し。 乃弛弓而自後縛之。反縛之。○弛、式氏反。 【読み】 乃ち弓を弛めて後[しりえ]より之を縛[ゆ]う。之を反縛す。○弛は、式氏反。 其右具丙、州綽之右。 【読み】 其の右具丙も、州綽の右。 亦舍兵而縛郭最。皆衿甲面縛、衿甲、不解甲。○舍、音捨。衿、其鴆反。 【読み】 亦兵を舍てて郭最を縛う。皆衿甲にして面縛せられて、衿甲は、甲を解かざるなり。○舍は、音捨。衿は、其鴆反。 坐于中軍之鼓下。 【読み】 中軍の鼓下に坐す。 晉人欲逐歸者、魯・衛請攻險。險、固城守者。 【読み】 晉人は歸者を逐わんと欲し、魯・衛は險を攻めんと請う。險は、固く城守する者。 己卯、荀偃・士匃以中軍克京玆。在平陰城東南。 【読み】 己卯[つちのと・う]、荀偃・士匃[しかい]中軍を以て京玆[けいじ]に克つ。平陰城の東南に在り。 乙酉、魏絳・欒盈以下軍克邿。欒黶死、其子盈佐下軍。平陰西有邿山。○邿、音詩。 【読み】 乙酉[きのと・とり]、魏絳・欒盈下軍を以[い]て邿[し]に克つ。欒黶死して、其の子盈下軍に佐たり。平陰の西に邿山有り。○邿は、音詩。 趙武・韓起以上軍圍廬。弗克。十二月、戊戌、及秦周伐雍門之萩。秦周、魯大夫。趙武及之共伐萩也。雍門、齊城門。○雍、於用反。 【読み】 趙武・韓起上軍を以て廬を圍む。克たず。十二月、戊戌[つちのえ・いぬ]、秦周と雍門の萩を伐る。秦周は、魯の大夫。趙武之と共に萩を伐るなり。雍門は、齊の城門。○雍は、於用反。 范鞅門于雍門。其御追喜以戈殺犬于門中。殺犬示閒暇。 【読み】 范鞅雍門を門む。其の御追喜戈を以て犬を門中に殺す。犬を殺して閒暇を示す。 孟莊子斬其橁、以爲公琴。莊子、孺子速也。橁、木名。○橁、勑倫反。又相倫反。 【読み】 孟莊子其の橁[ちん]を斬り、以て公の琴に爲る。莊子は、孺子速なり。橁は、木の名。○橁は、勑倫反。又相倫反。 己亥、焚雍門及西郭・南郭。劉難・士弱率諸侯之師、焚申池之竹木。二子、晉大夫。○難、乃多反。又如字。 【読み】 己亥[つちのと・い]、雍門と西郭・南郭とを焚く。劉難・士弱諸侯の師を率いて、申池の竹木を焚く。二子は、晉の大夫。○難は、乃多反。又字の如し。 壬寅、焚東郭・北郭。范鞅門于揚門。齊西門。 【読み】 壬寅[みずのえ・とら]、東郭・北郭を焚く。范鞅揚門を門む。齊の西門。 州綽門于東閭。齊東門。 【読み】 州綽東閭を門む。齊の東門。 左驂迫還于門中、以枚數闔。枚、馬檛也。闔、門扇也。數其板示不恐。○還、音旋。一音患。數、所主反。檛、陟瓜反。 【読み】 左驂門中に迫還し、枚を以て闔を數う。枚は、馬檛[ばた]なり。闔は、門扇なり。其の板を數えて恐れざるを示すなり。○還は、音旋。一に音患。數は、所主反。檛は、陟瓜反。 *頭注に「迫入迴旋。釋義迫字絕句。爲物所逼也。還、盤辟不進也。」とある。 齊侯駕、將走郵棠。郵棠、齊邑。 【読み】 齊侯駕して、將に郵棠に走らんとす。郵棠は、齊の邑。 大子與郭榮扣馬、大子、光也。榮、齊大夫。 【読み】 大子郭榮と馬を扣[ひか]えて、大子は、光なり。榮は、齊の大夫。 曰、師速而疾。略也。言欲略行其地。無久攻意。○行、下孟反。 【読み】 曰く、師速やかにして疾し。略するなり。言うこころは、其の地を略行せんことを欲するのみ。久しく攻むる意無し。○行は、下孟反。 將退矣。君何懼焉。且社稷之主、不可以輕。輕則失衆。君必待之。將犯之。大子抽劒斷鞅。乃止。 【読み】 將に退かんとす。君何ぞ懼れん。且つ社稷の主は、以て輕々しくす可からず。輕々しくすれば則ち衆を失う。君必ず之を待て、と。將に之を犯さんとす。大子劒を抽きて鞅を斷つ。乃ち止まる。 甲辰、東侵及濰、南及沂。濰水、在東莞、東北至北海都昌縣入海。沂水、出東莞蓋縣、至下邳入泗。○莞、音官。 【読み】 甲辰[きのえ・たつ]、東侵して濰[い]に及び、南沂[ぎ]に及ぶ。濰水は、東莞[とうかん]に在り、東北して北海都昌縣に至りて海に入る。沂水は、東莞蓋縣に出でて、下邳に至り泗に入る。○莞は、音官。 鄭子孔欲去諸大夫、欲專權。○去、起呂反。下同。 【読み】 鄭の子孔諸大夫を去らんと欲し、權を專にせんことを欲す。○去は、起呂反。下も同じ。 將叛晉、而起楚師以去之。 【読み】 將に晉に叛きて、楚の師を起こして以て之を去らんとす。 使告子庚。子庚弗許。子庚、楚令尹公子午。 【読み】 子庚に告げしむ。子庚許さず。子庚は、楚の令尹公子午。 楚子聞之、使楊豚尹宜告子庚曰、國人謂不穀主社稷、而不出師。死不從禮。不能承先君之業。死將不得從先君之禮。 【読み】 楚子之を聞き、楊豚尹宜をして子庚に告げしめて曰く、國人謂えらく、不穀社稷を主りてより、師を出ださず。死して禮に從わざらん、と。先君の業を承くること能わず。將に死して先君の禮に從うことを得ざらんとす。 不穀卽位、於今五年。師徒不出。人其以不穀爲自逸而忘先君之業矣。謂己未嘗統師自出。 【読み】 不穀位に卽きて、今に於て五年なり。師徒出でず。人其れ不穀を以て自ら逸んじて先君の業を忘るとせん。己未だ嘗て師を統べて自ら出でずと謂う。 大夫圖之。其若之何。子庚歎曰、君王其謂午懷安乎。吾以利社稷也。見使者、稽首而對曰、諸侯方睦於晉。臣請嘗之。嘗、試其難易也。 【読み】 大夫之を圖れ。其之を若何、と。子庚歎じて曰く、君王其れ午を懷安すと謂えるか。吾は以て社稷を利せんとなり、と。使者を見て、稽首して對えて曰く、諸侯方に晉に睦まじ。臣請う之を嘗[こころ]みん。嘗は、其の難易を試みるなり。 若可、君而繼之。不可、收師而退。可以無害。君亦無辱。 【読み】 若し可ならば、君而[すなわ]ち之を繼げ。不可ならば、師を收めて退かん。以て害無かる可し。君も亦辱無からん、と。 子庚帥師治兵於汾。襄城縣東北有汾丘縣。 【読み】 子庚師を帥いて汾に兵治す。襄城縣の東北に汾丘縣有り。 於是子蟜・伯有・子張從鄭伯伐齊、子張、公孫黑肱。 【読み】 是に於て子蟜・伯有・子張鄭伯に從いて齊を伐ち、子張は、公孫黑肱。 子孔・子展・子西守。二子知子孔之謀、二子、子展・子西。○守、手又反。下同。 【読み】 子孔・子展・子西守る。二子子孔が謀を知りて、二子は、子展・子西。○守は、手又反。下も同じ。 完守入保。完城郭、内保守。 【読み】 完守入保す。城郭を完くし、内保守す。 子孔不敢會楚師。 【読み】 子孔敢えて楚の師に會せず。 楚師伐鄭、次於魚陵。魚陵、魚齒山也。在南陽犫縣北。鄭地。○犫、尺由反。 【読み】 楚の師鄭を伐ち、魚陵に次[やど]る。魚陵は、魚齒山なり。南陽犫縣の北に在り。鄭の地。○犫は、尺由反。 右師城上棘、遂涉潁、次于旃然。將涉潁。故於水邉權築小城、以爲進退之備。旃然水、出熒陽城皐縣、東入汴。 【読み】 右師上棘に城き、遂に潁を涉りて、旃然[せんぜん]に次る。將に潁を涉らんとす。故に水邉に於て權[か]りに小城を築き、以て進退の備えと爲す。旃然水は、熒陽城皐縣に出でて、東して汴に入る。 蔿子馮・公子格率銳師侵費滑・胥靡・獻于・雍梁。胥靡・獻于・雍梁、皆鄭邑。河南翟縣東北有雍氏城。○蔿、于委反。馮、皮冰反。費、扶味反。雍、於用反。 【読み】 蔿子馮[いしひょう]・公子格銳師を率いて費滑・胥靡・獻于・雍梁を侵す。胥靡・獻于・雍梁は、皆鄭の邑。河南翟縣の東北に雍氏城有り。○蔿は、于委反。馮は、皮冰反。費は、扶味反。雍は、於用反。 右回梅山、在熒陽密縣東北。○回、如字。又胡猥反。 【読み】 右梅山を回り、熒陽密縣の東北に在り。○回は、字の如し。又胡猥反。 侵鄭東北、至于蟲牢而反。子庚門于純門、信于城下而還。信、再宿也。○純、如字。一市荀反。 【読み】 鄭の東北を侵し、蟲牢に至りて反る。子庚純門を門めて、城下に信して還る。信は、再宿なり。○純は、字の如し。一に市荀反。 涉於魚齒之下、魚齒山之下有滍水。故言涉。○滍、音雉。 【読み】 魚齒の下を涉るとき、魚齒山の下に滍水[ちすい]有り。故に涉ると言う。○滍は、音雉。 甚雨及之、楚師多凍、役徒幾盡。晉人聞有楚師。師曠曰、不害。吾驟歌北風、又歌南風、南風不競、歌者吹律以詠八風、南風音微。故曰不競也。師曠唯歌南北風者、聽晉・楚之强弱。○幾、音祈。 【読み】 甚雨之に及び、楚の師多く凍え、役徒幾ど盡きたり。晉人楚の師有りと聞く。師曠曰く、害あらず。吾れ驟[しば]々北風を歌い、又南風を歌うに、南風競わずして、歌う者律を吹きて以て八風を詠ずるも、南風音微なり。故に競わずと曰うなり。師曠唯南北風を歌うは、晉・楚の强弱を聽くなり。○幾は、音祈。 多死聲。楚必無功。董叔曰、天道多在西北。歲在豕韋。月又建亥。故曰多在西北。 【読み】 死聲多し。楚必ず功無からん、と。董叔曰く、天道多く西北に在り。歲豕韋に在り。月又亥に建[さ]す。故に多く西北に在るを曰う。 南師不時、必無功。不時、謂觸歲月。 【読み】 南師時ならず、必ず功無からん、と。時ならずとは、歲月に觸るるを謂うなり。 叔向曰、在其君之德也。言天時地利不如人和。 【読み】 叔向曰く、其の君の德に在るなり、と。言うこころは、天の時地の利は人の和に如かず。 〔經〕十有九年、春、王正月、諸侯盟于祝柯。前年、圍齊之諸侯也。祝柯縣、今屬濟南郡。 【読み】 〔經〕十有九年、春、王の正月、諸侯祝柯に盟う。前年、齊を圍むの諸侯なり。祝柯縣は、今濟南郡に屬す。 晉人執邾子。稱人以執、悪及民也。 【読み】 晉人邾子[ちゅし]を執う。人と稱して以て執うるは、悪民に及ぶなり。 公至自伐齊。無傳。 【読み】 公齊を伐ちてより至る。傳無し。 取邾田自漷水。取邾田以漷水爲界也。漷水、出東海合郷縣、西南經魯國、至高平湖陸縣入泗。○漷、好虢反。又音郭。 【読み】 邾田を取ること漷水[かくすい]よりす。邾の田を取ること漷水を以て界と爲すなり。漷水は、東海合郷縣に出でて、西南して魯國を經て、高平湖陸縣に至りて泗に入る。○漷は、好虢反。又音郭。 季孫宿如晉。葬曹成公。無傳。 【読み】 季孫宿晉に如く。曹の成公を葬る。傳無し。 夏、衛孫林父帥師伐齊。秋、七月、辛卯、齊侯環卒。世子光三與魯同盟。 【読み】 夏、衛の孫林父師を帥いて齊を伐つ。秋、七月、辛卯[かのと・う]、齊侯環卒す。世子光三たび魯と同盟す。 晉士匃帥師侵齊、至穀。聞齊侯卒。乃還。詳錄所至及還者、善得禮。 【読み】 晉の士匃[しかい]師を帥いて齊を侵し、穀に至る。齊侯卒すと聞く。乃ち還る。詳らかに至る所と還るとを錄するは、禮を得るを善するなり。 八月、丙辰、仲孫蔑卒。無傳。 【読み】 八月、丙辰[ひのえ・たつ]、仲孫蔑卒す。傳無し。 齊殺其大夫高厚。鄭殺其大夫公子嘉。冬、葬齊靈公。無傳。 【読み】 齊其の大夫高厚を殺す。鄭其の大夫公子嘉を殺す。冬、齊の靈公を葬る。傳無し。 城西郛。魯西郭。 【読み】 西郛に城く。魯の西郭。 叔孫豹會晉士匃于柯。魏郡内黃縣東北有柯城。 【読み】 叔孫豹晉の士匃に柯に會す。魏郡内黃縣の東北に柯城有り。 城武城。泰山南武城縣。 【読み】 武城に城く。泰山の南武城縣。 〔傳〕十九年、春、諸侯還自沂上、盟于督揚。曰、大毋侵小。督揚、卽祝柯也。 【読み】 〔傳〕十九年、春、諸侯沂上[ぎじょう]より還り、督揚に盟う。曰く、大小を侵すこと毋かれ、と。督揚は、卽ち祝柯なり。 執邾悼公、以其伐我故。伐魯、在十七年。 【読み】 邾の悼公を執うるは、其の我を伐つを以ての故なり。魯を伐つは、十七年に在り。 遂次于泗上、疆我田。正邾・魯之界也。泗、水名。 【読み】 遂泗上に次[やど]りて、我が田を疆う。邾・魯の界を正すなり。泗は、水の名。 取邾田、自漷水、歸之于我。邾田在漷水北。今更以漷爲界。故曰取邾田。 【読み】 邾の田を取るに、漷水よりして、之を我に歸す。邾の田は漷水の北に在り。今更に漷を以て界と爲す。故に邾の田を取ると曰う。 晉侯先歸。 【読み】 晉侯先ず歸る。 公享晉六卿于蒲圃、六卿過魯。 【読み】 公晉の六卿を蒲圃に享して、六卿魯を過ぐ。 賜之三命之服。軍尉・司馬・司空・輿尉・候奄皆受一命之服。如鞌戰還之賜。唯無先輅。○鞌、音安。 【読み】 之に三命の服を賜う。軍尉・司馬・司空・輿尉・候奄まで皆一命の服を受く。鞌[あん]の戰より還るの賜の如し。唯先輅[せんろ]無し。○鞌は、音安。 賄荀偃束錦・加璧・乘馬、先吳壽夢之鼎。荀偃、中軍元帥。故特賄之。五匹爲束。四馬爲乘。壽夢、吳子乘也。獻鼎於魯。因以爲名。古之獻物、必有以先。今以璧馬爲鼎之先。○先、吳悉薦反。又如字。夢、莫公反。 【読み】 荀偃に束錦・加璧・乘馬を賄いて、吳の壽夢の鼎に先だつ。荀偃は、中軍の元帥。故に特に之を賄う。五匹を束と爲す。四馬を乘と爲す。壽夢は、吳子乘なり。鼎を魯に獻ず。因りて以て名とす。古の物を獻ずるは、必ず以て先だつこと有り。今璧馬を以て鼎の先と爲すなり。○先は、吳悉薦反。又字の如し。夢は、莫公反。 荀偃癉疽、生瘍於頭。癉疽、悪創。○癉、丁但反。又音旦。疽、七徐反。瘍、音羊。創、初良反。 【読み】 荀偃癉疽[たんしょ]して、瘍を頭に生ず。癉疽は、悪創。○癉は、丁但反。又音旦。疽は、七徐反。瘍は、音羊。創は、初良反。 濟河、及著雍。病。目出。大夫先歸者皆反。士匃請見。弗内。請後。曰、鄭甥可。士匃中軍佐。故問後也。鄭甥、荀吳。其母鄭女。○著、張慮反。又直慮反。雍、於用反。見、賢遍反。 【読み】 河を濟り、著雍に及ぶ。病めり。目出づ。大夫の先ず歸る者皆反る。士匃見えんと請う。内れず。後を請う。曰く、鄭の甥可なり、と。士匃は中軍の佐。故に後を問うなり。鄭の甥は、荀吳。其の母は鄭の女。○著は、張慮反。又直慮反。雍は、於用反。見は、賢遍反。 二月、甲寅、卒。而視。不可含。目開口噤。○含、戶暗反。 【読み】 二月、甲寅[きのえ・とら]、卒す。而して視る。含す可からず。目開き口噤[つぐ]む。○含は、戶暗反。 宣子盥而撫之曰、事吳敢不如事主。猶視。大夫稱主。 【読み】 宣子盥[てあら]いて之を撫でて曰く、吳に事うること敢えて主に事えんが如くならざらんや、と。猶視る。大夫を主と稱す。 欒懷子曰、其爲未卒事於齊故也乎。懷子、欒盈。 【読み】 欒懷子曰く、其れ未だ事を齊に卒えざる爲の故ならんや、と。懷子は、欒盈。 乃復撫之曰、主苟終、所不嗣事于齊者、有如河。乃瞑、受含。嗣、續也。○復、扶又反。瞑、亡丁反。一亡干反。 【読み】 乃ち復之を撫でて曰く、主苟に終わるも、事を齊に嗣がざる所の者あらば、河の如きこと有らん、と。乃ち瞑して、含を受く。嗣は、續ぐなり。○復は、扶又反。瞑は、亡丁反。一に亡干反。 宣子出曰、吾淺、之爲丈夫也。自恨以私待人。 【読み】 宣子出でて曰く、吾は淺きかな、之れ丈夫爲たること、と。自ら私を以て人を待[ふせ]ぐを恨む。 晉欒魴帥師從衛孫文子伐齊。爲懷子之言故也。欒魴、欒氏族。不書、兵幷林父、不別告也。經書夏、從告。 【読み】 晉の欒魴師を帥いて衛の孫文子に從いて齊を伐つ。懷子の言の爲の故なり。欒魴は、欒氏の族。書さざるは、兵林父に幷せて、別に告げざればなり。經夏を書すは、告ぐるに從うなり。 季武子如晉拜師。謝討齊。 【読み】 季武子晉に如きて師に拜す。齊を討ずるを謝す。 晉侯享之。范宣子爲政。代荀偃將中軍。 【読み】 晉侯之を享す。范宣子政を爲す。荀偃に代わりて中軍に將たり。 賦黍苗。黍苗、詩小雅。美召伯勞來諸侯、如陰雨之長黍苗也。喩晉君憂勞魯國猶召伯。 【読み】 黍苗を賦す。黍苗は、詩の小雅。召伯諸侯を勞來すること、陰雨の黍苗を長ずるが如くなるを美む。晉君魯國を憂勞すること猶召伯のごときに喩う。 季武子興、再拜稽首曰、小國之仰大國也、如百穀之仰膏雨焉。若常膏之、其天下輯睦。豈唯敝邑。賦六月。六月、尹吉甫佐天子征伐之詩。以晉侯比吉甫出征以匡王國。○仰、如字。又五亮反。下同。膏雨、如字。又古報反。常膏、古報反。又如字。 【読み】 季武子興[た]ちて、再拜稽首して曰く、小國の大國を仰ぐや、百穀の膏雨を仰ぐが如し。若し常に之を膏[うるお]さば、其れ天下輯睦せん。豈唯敝邑のみならんや、と。六月を賦す。六月は、尹吉甫天子を佐けて征伐するの詩。晉侯を以て吉甫が出征して以て王國を匡すに比す。○仰は、字の如し。又五亮反。下も同じ。膏雨は、字の如し。又古報反。常膏は、古報反。又字の如し。 季武子以所得於齊之兵、作林鍾、而銘魯功焉。林鐘、律名。鑄鐘聲應林鐘。因以爲名。 【読み】 季武子齊に得る所の兵を以て、林鍾を作り、魯の功を銘す。林鐘は、律の名。鐘を鑄る聲林鐘に應ず。因りて以て名とす。 臧武仲謂季孫曰、非禮也。夫銘、天子令德、天子銘德、不銘功。 【読み】 臧武仲季孫に謂いて曰く、禮に非ざるなり。夫れ銘は、天子は令德をし、天子は德を銘して、功を銘せず。 諸侯言時計功、舉得時、動有功、則可銘也。 【読み】 諸侯は時を言い功を計り、舉時を得、動功有れば、則ち銘す可し。 大夫稱伐。銘其功伐之勞。 【読み】 大夫は伐を稱す。其の功伐の勞を銘す。 今稱伐、則下等也。從大夫故。 【読み】 今伐を稱すれば、則ち下等なり。大夫に從う故なり。 計功、則借人也。借晉力也。○借、如字。一情亦反。 【読み】 功を計れば、則ち人に借れり。晉の力を借るなり。○借は、字の如し。一に情亦反。 言時、則妨民多矣。何以爲銘。且夫大伐小、取其所得以作彝器、彝、常也。謂鐘鼎爲宗廟之常器。 【読み】 時を言えば、則ち民を妨ぐること多し。何を以て銘を爲さん。且つ夫れ大小を伐てば、其の得る所を取りて以て彝器を作り、彝は、常なり。鐘鼎は宗廟の常器爲るを謂う。 銘其功烈、以示子孫。昭明德而懲無禮也。今將借人之力、以救其死。若之何銘之。小國幸於大國、以勝大國爲幸。 【読み】 其の功烈を銘して、以て子孫に示す。明德を昭らかにして無禮を懲らすなり。今將[はた]人の力を借りて、以て其の死を救うのみ。之を若何ぞ之を銘せん。小國大國に幸いありて、大國に勝つを以て幸いと爲す。 而昭所獲焉以怒之、亡之道也。爲城西郛武城傳。 【読み】 獲る所を昭らかにして以て之を怒らすは、亡の道なり、と。城西と郛武とに城く爲の傳なり。 齊侯娶于魯。曰顏懿姬。無子。其姪鬷聲姬生光。以爲大子。兄子曰姪。顏・鬷、皆二姬母姓。因以爲號。懿・聲、皆謚。○姪、直結反。鬷、子公反。 【読み】 齊侯魯に娶る。顏懿姬と曰う。子無し。其の姪鬷聲姬[そうせいき]光を生む。以て大子と爲す。兄の子を姪と曰う。顏・鬷は、皆二姬の母の姓。因りて以て號と爲す。懿・聲は、皆謚。○姪は、直結反。鬷は、子公反。 諸子仲子・戎子。戎子嬖。諸子、諸妾姓子者。二子、皆宋女。 【読み】 諸子に仲子・戎子というあり。戎子嬖せらる。諸子は、諸妾の姓の子なる者。二子は、皆宋の女。 仲子生牙。屬諸戎子。屬託之。○屬、之蜀反。 【読み】 仲子牙を生む。諸を戎子に屬す。之を屬託す。○屬は、之蜀反。 戎子請以爲大子。許之。齊侯許之。 【読み】 戎子以て大子と爲さんと請う。之を許す。齊侯之を許す。 仲子曰、不可。廢常不祥。廢立嫡之常。 【読み】 仲子曰く、不可なり。常を廢するは不祥なり。嫡を立つるの常を廢す。 閒諸侯難。事難成也。 【読み】 諸侯に閒[まじ]わるは難し。事成り難し。 光之立也、列於諸侯矣。列諸侯之會。 【読み】 光の立つや、諸侯に列なれり。諸侯の會に列ぬる。 今無故而廢之、是專黜諸侯、謂光已有諸侯之尊。 【読み】 今故無くして之を廢せば、是れ專ら諸侯を黜けて、光已に諸侯の尊有るを謂う。 而以難犯不祥也。君必悔之。公曰、在我而已。遂東大子光、廢而徙之東鄙。 【読み】 難きを以て不祥を犯すなり。君必ず之を悔いん、と。公曰く、我に在るのみ、と。遂に大子光を東せしめ、廢して之を東鄙に徙[うつ]す。 使高厚傅牙、以爲大子、夙沙衛爲少傅。 【読み】 高厚をして牙に傅たらしめて、以て大子と爲し、夙沙衛を少傅と爲す。 齊侯疾。崔杼微逆光、疾病而立之。 【読み】 齊侯疾む。崔杼微[ひそ]かに光を逆[むか]え、疾病にして之を立つ。 光殺戎子、終言之。○杼、直呂反。 【読み】 光戎子を殺し、之を終え言う。○杼は、直呂反。 尸諸朝。非禮也。婦人無刑。無黥刖之刑。○刖、音月。又五刮反。 【読み】 諸を朝に尸[さら]す。禮に非ざるなり。婦人は刑無し。黥刖[げいげつ]の刑無し。○刖は、音月。又五刮反。 雖有刑、不在朝市。謂犯死刑者、猶不暴尸。○暴、蒲卜反。 【読み】 刑有りと雖も、朝市に在らず。死刑を犯す者も、猶尸を暴さざるを謂う。○暴は、蒲卜反。 夏、五月、壬辰、晦、齊靈公卒、經書七月辛卯、光定位而後赴。 【読み】 夏、五月、壬辰[みずのえ・たつ]、晦、齊の靈公卒し、經に七月辛卯と書すは、光位を定めて而して後に赴[つ]ぐるなり。 莊公卽位。大子光也。 【読み】 莊公位に卽く。大子光なり。 執公子牙於句瀆之丘。以夙沙衛易已。衛奔高唐以叛。光謂衛敎公易己。高唐、在祝柯縣西北。○句、苦侯反。瀆、音豆。 【読み】 公子牙を句瀆[こうとう]の丘に執う。夙沙衛を以て已を易えたりとす。衛高唐に奔りて以て叛く。光衛を公に己を易うるを敎えたりと謂う。高唐は、祝柯縣の西北に在り。○句は、苦侯反。瀆は、音豆。 晉士匃侵齊、及穀。聞喪而還。禮也。禮之常、不必待君命。 【読み】 晉の士匃齊を侵して、穀に及ぶ。喪を聞きて還る。禮なり。禮の常、必ずしも君命を待たず。 於四月丁未、於此年四月。 【読み】 四月丁未[ひのと・ひつじ]に於て、此の年の四月に於て。 鄭公孫蠆卒。赴於晉大夫。范宣子言於晉侯、以其善於伐秦也。十四年、晉伐秦、子蟜見諸侯師、而勸之濟涇。 【読み】 鄭の公孫蠆[こうそんたい]卒す。晉の大夫に赴[つ]ぐ。范宣子晉侯に言うに、其の秦を伐つに善かりしを以てす。十四年、晉秦を伐つとき、子蟜諸侯の師を見て、之を勸めて涇を濟らす。 六月、晉侯請於王。王追賜之大路、使以行禮也。大路、天子所賜車之總名。以行葬禮。傳言大夫有功、則賜服路。 【読み】 六月、晉侯王に請う。王之に大路を追賜して、以て禮を行わしめり。大路は、天子賜う所の車の總名。以て葬禮を行わしむ。傳大夫功有れば、則ち服路を賜うを言う。 秋、八月、齊崔杼殺高厚於灑藍、而兼其室。灑藍、齊地。○灑、色買反。又所綺反。 【読み】 秋、八月、齊の崔杼高厚を灑藍[さいらん]に殺して、其の室を兼ぬ。灑藍は、齊の地。○灑は、色買反。又所綺反。 書曰齊殺其大夫、從君於昏也。傳解經不言崔杼殺、而爲國討文。 【読み】 書して齊其の大夫を殺すと曰うは、君に昏に從えばなり。傳經崔杼殺すと言わずして、國討の文を爲すを解く。 鄭子孔之爲政也專。專權。 【読み】 鄭の子孔の政を爲すや專なり。權を專にす。 國人患之。乃討西宮之難、十年、尉止等作難西宮、子孔知而不言。 【読み】 國人之を患う。乃ち西宮の難と、十年、尉止等難を西宮に作せしとき、子孔知りて言わず。 與純門之師。前年、子孔召楚師至純門。 【読み】 純門の師とを討ず。前年、子孔楚の師を召して純門に至らす。 子孔當罪。以其甲及子革・子良氏之甲守。以自守也。 【読み】 子孔罪に當たる。其の甲と子革・子良氏の甲とを以て守る。以て自ら守るなり。 甲辰、子展・子西率國人伐之、殺子孔而分其室。 【読み】 甲辰[きのえ・たつ]、子展・子西國人を率いて之を伐ち、子孔を殺して其の室を分かつ。 書曰鄭殺其大夫、專也。亦以國討爲文。 【読み】 書して鄭其の大夫を殺すと曰うは、專なればなり。亦國討を以て文を爲す。 子然・子孔宋子之子也。子然、子革父。 【読み】 子然・子孔は宋子の子なり。子然は、子革の父。 士子孔、圭嬀之子也。宋子・圭嬀、皆鄭穆公妾。士子孔、子良父。○嬀、居危反。 【読み】 士子孔は、圭嬀[けいき]の子なり。宋子・圭嬀は、皆鄭の穆公の妾。士子孔は、子良の父。○嬀は、居危反。 圭嬀之班、亞宋子而相親也。亞、次也。 【読み】 圭嬀の班、宋子に亞[つ]ぎて相親しむなり。亞は、次なり。 士子孔、亦相親也。僖之四年、子然卒、鄭僖四年、魯襄六年。 【読み】 士子孔も、亦相親しむなり。僖の四年に、子然卒し、鄭僖の四年は、魯襄の六年。 簡之元年、士子孔卒。魯襄八年。 【読み】 簡の元年に、士子孔卒す。魯襄の八年。 司徒孔實相子革・子良之室、司徒孔與二父相親。故相助其子。○相、息亮反。 【読み】 司徒孔實に子革・子良の室を相けて、司徒孔二父と相親しむ。故に其の子を相助く。○相は、息亮反。 三室如一。言同心。 【読み】 三室一の如し。心を同じくするを言う。 故及於難。故二子幷及難。 【読み】 故に難に及べり。故に二子幷せて難に及ぶ。 子革・子良出奔楚。子革爲右尹。子革、卽鄭丹。 【読み】 子革・子良出でて楚に奔る。子革右尹と爲る。子革は、卽ち鄭丹。 鄭人使子展當國、子西聽政。立子產爲卿。簡公猶幼。故大夫當國。 【読み】 鄭人子展をして國に當たり、子西をして政を聽かしむ。子產を立てて卿と爲す。簡公猶幼し。故に大夫國に當たるなり。 齊慶封圍高唐。弗克。夙沙衛以叛。故圍之。 【読み】 齊の慶封高唐を圍む。克たず。夙沙衛以[い]て叛く。故に之を圍む。 冬、十一月、齊侯圍之。見衛在城上、號之。乃下。衛下與齊侯語。○號、胡報反。召也。一戶刀反。 【読み】 冬、十一月、齊侯之を圍む。衛が城上に在るを見て、之を號ぶ。乃ち下る。衛下りて齊侯と語る。○號は、胡報反。召すなり。一に戶刀反。 問守備焉。以無備告。揖之。乃登。齊侯以衛告誠、揖而禮之、欲生之也。衛志於戰死。故不順齊侯之揖、而還登城。 【読み】 守備を問う。以て備え無きを告ぐ。之を揖[ゆう]す。乃ち登る。齊侯衛が誠を告ぐるを以て、揖して之を禮するは、之を生かさんことを欲するなり。衛戰死を志す。故に齊侯の揖に順わずして、還りて城に登る。 聞師將傅、食高唐人。殖綽・工僂會、夜縋納師。因其會食。二子、齊大夫。○傅、音附。食、音嗣。僂、呂侯反。 【読み】 師將に傅[つ]かんとすと聞き、高唐の人に食わしむ。殖綽・工僂會し、夜縋[つい]して師を納る。其の會食に因る。二子は、齊の大夫。○傅は、音附。食は、音嗣。僂は、呂侯反。 醢衛于軍。 【読み】 衛を軍に醢[ししびしお]にす。 城西郛、懼齊也。前年、與晉伐齊、又鑄其器爲鐘。故懼。 【読み】 西郛に城くは、齊を懼れてなり。前年、晉と齊を伐ち、又其の器を鑄て鐘と爲す。故に懼る。 齊及晉平、盟于大隧。大隧、地闕。 【読み】 齊晉と平らぎ、大隧に盟う。大隧は、地闕く。 故穆叔會范宣子于柯。齊・晉平。魯懼齊。故爲柯會以自固。 【読み】 故に穆叔范宣子に柯に會す。齊・晉平らぐ。魯齊を懼る。故に柯の會を爲して以て自ら固くす。 穆叔見叔向、賦載馳之四章。四章曰、控于大邦。誰因誰極。控、引也。取其欲引大國以自救助。 【読み】 穆叔叔向[しゅくきょう]を見て、載馳の四章を賦す。四章に曰く、大邦を控[ひ]かんとす。誰に因り誰に極[いた]らん、と。控は、引くなり。其の大國を引きて以て自ら救助せんことを欲するに取る。 叔向曰、肸敢不承命。叔向度齊未肯以盟服。故許救魯。 【読み】 叔向曰く、肸[きつ]敢えて命を承けざらんや、と。叔向齊の未だ肯て盟を以て服せざるを度る。故に魯を救うことを許す。 穆叔歸曰、齊猶未也。不可以不懼。乃城武城。 【読み】 穆叔歸りて曰く、齊猶未だし。以て懼れざる可からず、と。乃ち武城に城く。 衛石共子卒。石買。○共、音恭。 【読み】 衛の石共子卒す。石買なり。○共は、音恭。 悼子不哀。買之子、石惡。 【読み】 悼子哀しまず。買の子、石惡。 孔成子曰、是謂蹷其本。蹷、猶拔也。○蹷、求月反。一居月反。又居衛反。 【読み】 孔成子曰く、是を其の本を蹷[ぬ]くと謂う。蹷[けつ]は、猶拔くがごとし。○蹷は、求月反。一に居月反。又居衛反。 必不有其宗。爲二十八年、石惡出奔傳。 【読み】 必ず其の宗を有たざらん、と。二十八年、石惡出奔する爲の傳なり。 〔經〕二十年、春、王正月、辛亥、仲孫速會莒人盟于向。向、莒邑。○向、舒亮反。 【読み】 〔經〕二十年、春、王の正月、辛亥[かのと・い]、仲孫速莒人に會して向[しょう]に盟う。向は、莒の邑。○向は、舒亮反。 夏、六月、庚申、公會晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子・滕子・薛伯・杞伯・小邾子盟于澶淵。澶淵、在頓丘縣南。今名繁汙。此衛地。又近戚田。○澶、市專反。汙、音紆。 【読み】 夏、六月、庚申[かのえ・さる]、公晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]・滕子・薛伯・杞伯・小邾子に會して澶淵[せんえん]に盟う。澶淵は、頓丘縣の南に在り。今繁汙と名づく。此れ衛の地。又戚に近きの田。○澶は、市專反。汙は、音紆。 秋、公至自會。無傳。 【読み】 秋、公會より至る。傳無し。 仲孫速帥師伐邾。蔡殺其大夫公子燮。莊公子。 【読み】 仲孫速師を帥いて邾を伐つ。蔡其の大夫公子燮[しょう]を殺す。莊公の子。 蔡公子履出奔楚。燮母弟也。 【読み】 蔡の公子履出でて楚に奔る。燮の母弟なり。 陳侯之弟黃出奔楚。稱弟、明無罪也。 【読み】 陳侯の弟黃出でて楚に奔る。弟と稱するは、罪無きを明らかにするなり。 叔老如齊。冬、十月、丙辰、朔、日有食之。無傳。 【読み】 叔老齊に如く。冬、十月、丙辰[ひのえ・たつ]、朔、日之を食する有り。傳無し。 季孫宿如宋。 【読み】 季孫宿宋に如く。 〔傳〕二十年、春、及莒平。孟莊子會莒人盟于向、督揚之盟故也。莒數伐魯。前年、諸侯盟督揚以和解之。故二國自復共盟結其好。 【読み】 〔傳〕二十年、春、莒と平らぐ。孟莊子莒人に會して向に盟うは、督揚の盟の故なり。莒數々魯を伐つ。前年、諸侯督揚に盟いて以て之を和解す。故に二國自ら復共に盟いて其の好を結ぶなり。 夏、盟于澶淵、齊成故也。齊與晉平。 【読み】 夏、澶淵に盟うは、齊成らぐ故なり。齊晉と平らぐ。 邾人驟至、以諸侯之事、弗能報也。驟、數也。謂十五年・十七年、伐魯。 【読み】 邾人驟[しば]々至りしも、諸侯の事を以て、報ゆること能わざりき。驟は、數々なり。十五年・十七年、魯を伐つを謂う。 秋、孟莊子伐邾以報之。旣盟而又伐之、非。 【読み】 秋、孟莊子邾を伐ちて以て之に報ゆ。旣に盟いて又之を伐つは、非なり。 蔡公子燮欲以蔡之晉。背楚。 【読み】 蔡の公子燮蔡を以て晉に之かんと欲す。楚に背く。 蔡人殺之。公子履、其母弟也。故出奔楚。與兄同謀故。 【読み】 蔡人之を殺す。公子履は、其の母弟なり。故に出でて楚に奔る。兄と同謀の故なり。 陳慶虎・慶寅畏公子黃之偪、二慶、陳卿。恐黃偪奪其政。 【読み】 陳の慶虎・慶寅公子黃の偪らんことを畏れ、二慶は、陳の卿。黃が偪りて其の政を奪わんことを恐る。 愬諸楚曰、與蔡司馬同謀。同欲之晉。 【読み】 諸を楚に愬[うった]えて曰く、蔡司馬と謀を同じくす、と。同じく晉に之かんと欲す、と。 楚人以爲討。討、責陳。 【読み】 楚人以て討ずることを爲す。討ずるとは、陳を責むるなり。 公子黃出奔楚。奔楚自理。 【読み】 公子黃出でて楚に奔る。楚に奔りて自理す。 初、蔡文侯欲事晉、曰、先君與於踐土之盟。先君、文侯父、莊侯甲午也。踐土盟、在僖二十八年。○與、音預。 【読み】 初め、蔡の文侯晉に事えんことを欲して、曰く、先君踐土の盟に與れり。先君は、文侯の父、莊侯甲午なり。踐土の盟は、僖二十八年に在り。○與は、音預。 晉不可弃。且兄弟也。畏楚不能行而卒。宣十七年、文侯卒。 【読み】 晉は弃つ可からず。且兄弟なり、と。楚を畏れて行うこと能わずして卒す。宣十七年に、文侯卒す。 楚人使蔡無常。徵發無準。 【読み】 楚人蔡を使うこと常無し。徵發準無し。 公子燮求從先君以利蔡、不能而死。 【読み】 公子燮先君に從いて以て蔡を利せんことを求め、能わずして死す。 書曰蔡殺其大夫公子燮、言不與民同欲也。罪其違衆。 【読み】 書して蔡其の大夫公子燮を殺すと曰うは、民と欲を同じくせざるを言うなり。其の衆に違うを罪す。 陳侯之弟黃出奔楚、言非其罪也。稱弟、罪陳侯、及二慶。 【読み】 陳侯の弟黃出でて楚に奔るとは、其の罪に非ざるを言うなり。弟と稱するは、陳侯を罪して、二慶に及ぶ。 公子黃將出奔。呼於國曰、慶氏無道、求專陳國、暴蔑其君、而去其親。五年不滅、是無天也。爲二十三年、陳殺二慶傳。○呼、火故反。去、起呂反。 【読み】 公子黃將に出奔せんとす。國に呼びて曰く、慶氏無道にして、陳國を專にせんことを求め、其の君を暴蔑して、其の親を去てり。五年にして滅びずんば、是れ天きなり、と。二十三年、陳二慶を殺す爲の傳なり。○呼は、火故反。去は、起呂反。 齊子初聘于齊。禮也。齊・魯有怨、朝聘禮絕、今始復通。故曰初。繼好息民。故曰禮。 【読み】 齊子初めて齊に聘す。禮なり。齊・魯怨み有りて、朝聘禮絕えて、今始めて復通ず。故に初めてと曰う。好を繼ぎ民を息う。故に禮と曰う。 冬、季武子如宋、報向戌之聘也。向戌聘、在十五年。 【読み】 冬、季武子宋に如くは、向戌[しょうじゅつ]の聘に報ゆるなり。向戌の聘は、十五年に在り。 褚師段逆之以受享。段、共公子、子石也。逆以入國、受享禮。○褚、張呂反。段、徒亂反。 【読み】 褚師段[ちょしだん]之を逆[むか]えて以て享を受けしむ。段は、共公の子、子石なり。逆えて以て國に入り、享禮を受けしむ。○褚は、張呂反。段は、徒亂反。 賦常棣之七章以卒。武子賦也。七章以卒、盡八章。取其妻子好合、如鼓瑟琴。宜爾室家、樂爾妻孥。言二國好合宜其室家、相親如兄弟。 【読み】 常棣の七章より卒までを賦す。武子賦するなり。七章より卒までとは、八章を盡くすなり。其の妻子好合、瑟琴を鼓つが如し。爾の室家に宜しく、爾の妻孥を樂しむというに取る。言うこころは、二國の好合其の室家に宜しく、相親しむこと兄弟の如し。 宋人重賄之。歸復命。公享之。賦魚麗之卒章。魚麗、詩小雅。卒章曰、物其有矣。維其時矣。喩聘宋得其時。 【読み】 宋人重く之に賄う。歸りて復命す。公之を享す。魚麗[ぎょり]の卒章を賦す。魚麗は、詩の小雅。卒章に曰く、物其れ有り。維れ其の時なり、と。宋を聘するの其の時を得るに喩う。 公賦南山有臺。南山有臺、詩小雅。取其樂只君子、邦家之基、邦家之光。喩武子奉使、能爲國光暉。 【読み】 公南山有臺を賦す。南山有臺は、詩の小雅。其の樂しむ君子は、邦家の基、邦家の光というに取る。武子使いを奉じて、能く國の光暉を爲すに喩う。 武子去所曰、臣不堪也。去所、辟席。 【読み】 武子所を去りて曰く、臣堪えざるなり、と。所を去るは、席を辟くるなり。 衛甯惠子疾。召悼子、悼子、甯喜。 【読み】 衛の甯惠子疾む。悼子を召して、悼子は、甯喜。 曰、吾得罪於君、悔而無及也。名藏在諸侯之策。曰孫林父・甯殖出其君。君入則掩之。掩惡名。 【読み】 曰く、吾れ罪を君に得て、悔ゆれども及ぶこと無し。名諸侯の策に藏めて在り。孫林父・甯殖其の君を出だすと曰う。君入らば則ち之を掩わん。惡名を掩わん。 若能掩之、則吾子也。若不能、猶有鬼神、吾有餒而已。不來食矣。餒、餓也。 【読み】 若[なんじ]能く之を掩わば、則ち吾が子なり。若能わずんば、猶[もし]鬼神有らば、吾れ餒[う]ゆること有らんのみ。來り食わじ、と。餒は、餓ゆるなり。 悼子許諾。惠子遂卒。爲二十六年、衛侯歸傳。 【読み】 悼子許諾す。惠子遂に卒す。二十六年、衛侯歸る爲の傳なり。 〔經〕二十有一年、春、王正月、公如晉。邾庶其以漆・閭丘來奔。二邑、在高平南。平陽縣東北有漆郷、西北有顯閭亭。以邑出爲叛。適魯而言來奔、内外之辭。 【読み】 〔經〕二十有一年、春、王の正月、公晉に如く。邾[ちゅ]の庶其[しょき]漆・閭丘を以て來奔す。二邑は、高平の南に在り。平陽縣の東北に漆郷有り、西北に顯閭亭有り。邑を以て出づるを叛くと爲す。魯に適きて來奔すと言うは、内外の辭なり。 夏、公至自晉。無傳。 【読み】 夏、公晉より至る。傳無し。 秋、晉欒盈出奔楚。盈不能防閑其母、以取奔亡。稱名罪之。 【読み】 秋、晉の欒盈出でて楚に奔る。盈其の母を防閑すること能わずして、以て奔亡を取る。名を稱して之を罪す。 九月、庚戌、朔、日有食之。無傳。 【読み】 九月、庚戌[かのえ・いぬ]、朔、日之を食する有り。傳無し。 冬、十月、庚辰、朔、日有食之。無傳。 【読み】 冬、十月、庚辰[かのえ・たつ]、朔、日之を食する有り。傳無し。 曹伯來朝。公會晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子于商任。商任、地闕。○任、音壬。 【読み】 曹伯來朝す。公晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]に商任に會す。商任は、地闕く。○任は、音壬。 〔傳〕二十一年、春、公如晉、拜師及取邾田也。謝十八年、伐齊之師、漷水之田。 【読み】 〔傳〕二十一年、春、公晉に如くは、師と邾の田を取るとを拜するなり。十八年、齊を伐つの師と、漷水の田とを謝す。 邾庶其以漆・閭丘來奔。庶其、邾大夫。 【読み】 邾の庶其漆・閭丘を以て來奔す。庶其は、邾の大夫。 季武子以公姑姊妻之。計公年、不得有未嫁姑姊。蓋寡者二人。 【読み】 季武子公の姑姊を以て之に妻す。公の年を計るに、未だ嫁せざる姑姊有ることを得ず。蓋し寡なる者二人ならん。 皆有賜於其從者。 【読み】 皆其の從者に賜有り。 於是魯多盜。季孫謂臧武仲曰、子盍詰盜。詰、治也。○從、才用反。詰、起吉反。 【読み】 是に於て魯盜多し。季孫臧武仲に謂いて曰く、子盍ぞ盜を詰[おさ]めざる、と。詰は、治むるなり。○從は、才用反。詰は、起吉反。 武仲曰、不可詰也。紇又不能。季孫曰、我有四封而詰其盜。何故不可。子爲司寇。將盜是務去。若之何不能。武仲曰、子召外盜而大禮焉、何以止吾盜。吾、謂國中。○去、起呂反。下皆同。 【読み】 武仲曰く、詰む可からざるなり。紇[こつ]又能わず、と。季孫曰く、我れ四封有りて其の盜を詰む。何の故に不可ならん。子は司寇爲り。將に盜を是れ務めて去らんとす。之を若何ぞ能わざる、と。武仲曰く、子外盜を召して大いに焉を禮すれば、何を以て吾が盜を止めん。吾は、國中を謂う。○去は、起呂反。下も皆同じ。 子爲正卿、而來外盜、使紇去之。將何以能。 【読み】 子正卿として、外盜を來し、紇をして之を去らしめんとす。將[はた]何を以て能くせん。 庶其竊邑於邾以來、子以姬氏妻之、而與之邑、使食漆・閭丘。 【読み】 庶其邑を邾に竊みて以て來りしを、子姬氏を以て之に妻せて、之に邑を與え、漆・閭丘を食ましむ。 其從者皆有賜焉。 【読み】 其の從者まで皆賜有り。 若大盜、禮焉以君之姑姊與其大邑、其次、皁・牧・輿馬、給其賤役、從皁至牧、凡八等之人。 【読み】 若し大盜は、焉を禮するに君の姑姊と其の大邑とを以てし、其の次は、皁[そう]・牧・輿馬をし、其れに賤役を給すること、皁より牧に至るまで、凡そ八等の人。 其小者、衣裳劍帶、是賞盜也。賞而去之、其或難焉。 【読み】 其の小なる者は、衣裳劍帶をせば、是れ盜を賞するなり。賞して之を去らんとせば、其れ或は難からん。 紇也聞之、在上位者、洒濯其心、壹以待人、軌度其信、可明徵也、徵、驗也。○洒、西禮反。度、待洛反。 【読み】 紇や之を聞く、上位に在る者は、其の心を洒濯して、壹にして以て人を待ち、軌度ありて其れ信にして、明徵す可くして、徵は、驗しなり。○洒は、西禮反。度は、待洛反。 而後可以治人。夫上之所爲、民之歸也。上所不爲、而民或爲之、是以加刑罰焉、而莫敢不懲。若上之所爲、而民亦爲之、乃其所也。又可禁乎。夏書曰、念玆在玆。逸書也。玆、此也。謂行此事、當念使可施之於此。 【読み】 而して後に以て人を治む可し、と。夫れ上の爲す所は、民の歸なり。上の爲さざる所にして、民或は之を爲せば、是を以て刑罰を加えて、敢えて懲りざること莫し。若し上の爲す所にして、民も亦之を爲すは、乃ち其の所なり。又禁ず可けんや。夏書に曰く、玆を念うも玆に在り。逸書なり。玆は、此なり。此の事を行わんとせば、當に之を此に施す可からしむることを念うべきを謂う。 釋玆在玆。釋、除也。謂欲有所治除於人、亦當顧己得無亦有之。 【読み】 玆を釋[のぞ]くも玆に在り。釋は、除くなり。人に治除する所有らんことを欲せば、亦當に己も亦之れ有ること無きを得んやと顧みるべきを謂う。 名言玆在玆。名此事、言此事、亦皆當令可施於此。 【読み】 玆を名づけ言うも玆に在り。此の事を名づけ、此の事を言わんとするも、亦皆當に此に施す可からしむべし。 允出玆在玆。允、信也。信出於此、則善亦在此。 【読み】 允玆に出づれば玆に在り。允は、信なり。信此に出づれば、則ち善も亦此に在り。 惟帝念功。言帝念功、則功成也。 【読み】 惟れ帝功を念え、と。言うこころは、帝功を念えば、則ち功成るなり。 將謂由已壹也。信由已壹、而後功可念也。言非但意念而已。當須信己誠至。 【読み】 將[これ]已が壹に由るを謂うなり。信已が壹に由りて、而して後に功念う可きなり、と。言うこころは、但意に念うのみに非ず。當に須く己が誠至を信にすべし。 庶其非卿也。以地來、雖賤必書、重地也。重地。故書其人。其人書、則惡名彰。以懲不義。 【読み】 庶其は卿に非ざるなり。地を以て來れば、賤しと雖も必ず書すは、地を重んずるなり。地を重んず。故に其の人を書す。其の人書せば、則ち惡名彰る。以て不義を懲らすなり。 齊侯使慶佐爲大夫。慶佐、崔杼黨。 【読み】 齊侯慶佐をして大夫爲らしむ。慶佐は、崔杼の黨。 復討公子牙之黨、執公子買于句瀆之丘。公子鉏來奔、叔孫還奔燕。三子、齊公族。言莊公斥逐親戚、以成崔慶之勢、終有弑殺之禍。○復、扶又反。鉏、仕居反。還、音旋。 【読み】 復公子牙の黨を討じて、公子買を句瀆の丘に執う。公子鉏[しょ]來奔し、叔孫還燕に奔る。三子は、齊の公族。莊公親戚を斥逐して、以て崔慶の勢を成して、終に弑殺の禍有るを言う。○復は、扶又反。鉏は、仕居反。還は、音旋。 夏、楚子庚卒。 【読み】 夏、楚の子庚卒す。 楚子使薳子馮爲令尹。訪於申叔豫。叔豫、叔時孫。 【読み】 楚子薳子馮[いしひょう]をして令尹爲らしむ。申叔豫に訪[と]う。叔豫は、叔時の孫。 叔豫曰、國多寵而王弱。弱、政敎微、而貴臣强。 【読み】 叔豫曰く、國寵多くして王弱し。弱しとは、政敎微にして、貴臣强きなり。 國不可爲也。遂以疾辭。方暑、闕地下冰而牀焉、重繭衣裘、鮮食而寢。繭、緜衣。○闕、求月反。衣裘、於旣反。鮮、息淺反。 【読み】 國爲む可からず、と。遂に疾を以て辭す。暑に方りて、地を闕[ほ]り冰を下して牀し、繭を重ね裘を衣、食を鮮くして寢ぬ。繭は、緜衣。○闕は、求月反。衣裘は、於旣反。鮮は、息淺反。 楚子使醫視之。復曰、瘠則甚矣。瘠、痩也。○瘠、在亦反。 【読み】 楚子醫をして之を視せしむ。復して曰く、瘠は則ち甚だし。瘠は、痩なり。○瘠は、在亦反。 而血氣未動。言無疾。 【読み】 而れども血氣未だ動かず、と。疾無きを言う。 乃使子南爲令尹。子南、公子追舒也。爲二十二年、殺追舒傳。 【読み】 乃ち子南をして令尹爲らしむ。子南は、公子追舒なり。二十二年、追舒を殺す爲の傳なり。 欒桓子娶於范宣子、生懷子。桓子、欒黶。懷子、盈也。 【読み】 欒桓子范宣子に娶りて、懷子を生む。桓子は、欒黶[らんえん]。懷子は、盈なり。 范鞅以其亡也、怨欒氏。十四年、欒黶彊逐范鞅使奔秦。○彊、其丈反。 【読み】 范鞅其の亡[に]ぐるを以てや、欒氏を怨む。十四年、欒黶彊いて范鞅を逐いて秦に奔らしむ。○彊は、其丈反。 故與欒盈爲公族大夫、而不相能。桓子卒、欒祁與其老州賓通、欒祁、桓子妻、范宣子女、盈之母也。范氏、堯後、祁姓。 【読み】 故に欒盈と與に公族大夫と爲りて、相能からず。桓子卒して、欒祁其の老州賓と通じて、欒祁は、桓子の妻、范宣子の女、盈の母なり。范氏は、堯の後、祁姓。 幾亡室矣。言亂甚。○幾、其依反。 【読み】 幾ど室を亡ぼさんとす。亂の甚だしきを言う。○幾は、其依反。 懷子患之。祁懼其討也、愬諸宣子曰、盈將爲亂、以范氏爲死桓主而專政矣、桓主、欒黶。 【読み】 懷子之を患う。祁其の討ぜんことを懼れ、諸を宣子に愬[うった]えて曰く、盈將に亂を爲さんとし、范氏を以て桓主を死せりとして政を專にすと爲して、桓主は、欒黶。 曰、吾父逐鞅也、不怒而以寵報之、謂宣子不爲黶責怒鞅、而反與鞅寵位。 【読み】 曰く、吾が父鞅を逐いしに、怒らずして寵を以て之に報い、宣子黶が爲に鞅を責怒せずして、反って鞅に寵位を與うるを謂う。 又與吾同官而專之、同爲公族大夫、而鞅專其權勢。 【読み】 又吾と同官にして之を專にせしめ、同じく公族大夫として、鞅其の權勢を專にす。 吾父死而益富、死吾父而專於國。有死而已。吾蔑從之矣。言宣子專政。盈欲以死作難。 【読み】 吾が父死して益々富み、吾が父を死せりとして國を專にす。死すること有らんのみ。吾れ之に從うこと蔑[な]けん、と。言うこころは、宣子政を專にす。盈死を以て難を作さんと欲す。 其謀如是。懼害於主。 【読み】 其の謀是の如し。懼らくは主に害あらん。 吾不敢不言。 【読み】 吾れ敢えて言わずんばあらず、と。 范鞅爲之徵。證其有此。 【読み】 范鞅之が徵を爲す。其の此れ有るを證す。 懷子好施、士多歸之。宣子畏其多士也、信之。懷子爲下卿。下軍佐。○好、呼報反。施、式豉反。 【読み】 懷子施を好み、士多く之に歸す。宣子其の多士を畏るるや、之を信ず。懷子下卿爲り。下軍の佐。○好は、呼報反。施は、式豉反。 宣子使城著而遂逐之。著、晉邑。在外易逐。○著、直據反。又張慮反。易、以豉反。 【読み】 宣子著に城かしめて遂に之を逐う。著は、晉の邑。外に在れば逐い易し。○著は、直據反。又張慮反。易は、以豉反。 秋、欒盈出奔楚。 【読み】 秋、欒盈出でて楚に奔る。 宣子殺箕遺・黃淵・嘉父・司空靖・邴豫・董叔・邴師・申書・羊舌虎・叔羆、十子、皆晉大夫。欒盈之黨也。羊舌虎、叔向弟。 【読み】 宣子箕遺・黃淵・嘉父・司空靖・邴豫[へいよ]・董叔・邴師・申書・羊舌虎・叔羆[しゅくゆう]を殺し、十子は、皆晉の大夫。欒盈の黨なり。羊舌虎は、叔向の弟。 囚伯華・叔向・籍偃。籍偃、上軍司馬。 【読み】 伯華・叔向[しゅくきょう]・籍偃を囚う。籍偃は、上軍の司馬。 人謂叔向曰、子離於罪。其爲不知乎。譏其受囚、而不能去。○知、音智。 【読み】 人叔向に謂いて曰く、子罪に離[かか]れり。其れ不知と爲るか、と。其の囚を受けて、去ること能わざるを譏る。○知は、音智。 叔向曰、與其死亡若何。言雖囚、何若於死亡。 【読み】 叔向曰く、其の死亡せんよりは若何。言うこころは、囚わるると雖も、死亡に何若[いず]れぞ。 詩曰、優哉游哉、聊以卒歲。知也。詩、小雅。言君子優游於衰世、所以辟害卒其壽。是亦知也。 【読み】 詩に曰く、優なるかな游なるかな、聊か以て歲を卒えん、と。知なり、と。詩は、小雅。言うこころは、君子衰世に優游するは、害を辟け其の壽を卒うる所以なり。是も亦知なり。 樂王鮒見叔向曰、吾爲子請。叔向弗應。出。不拜。樂王鮒、晉大夫、樂桓子。○鮒、音附。 【読み】 樂王鮒叔向を見て曰く、吾れ子の爲に請わん、と。叔向應えず。出づ。拜せず。樂王鮒は、晉の大夫、樂桓子。○鮒は、音附。 其人皆咎叔向。叔向曰、必祁大夫。祁大夫、祁奚也。食邑於祁。因以爲氏。祁縣、今屬太原。 【読み】 其の人皆叔向を咎む。叔向曰く、必ず祁大夫ならん、と。祁大夫は、祁奚なり。祁に食邑す。因りて以て氏と爲す。祁縣は、今太原に屬す。 室老聞之曰、樂王鮒言於君、無不行。其言皆得行。 【読み】 室老之を聞きて曰く、樂王鮒君に言えば、行われざること無し。其の言皆行わることを得。 求赦吾子、吾子不許。謂不應、出不拜。 【読み】 吾子を赦さんことを求むるに、吾子許さず。應えず、出づるに拜せざるを謂う。 祁大夫所不能也、不能動君。 【読み】 祁大夫の能わざる所にして、君を動かすこと能わず。 而曰必由之、何也。叔向曰、樂王鮒、從君者也。何能行。祁大夫、外舉不弃讎、内舉不失親。其獨遺我乎。詩曰、有覺德行、四國順之。詩、大雅。言德行直、則天下順之。 【読み】 必ず之に由らんと曰うは、何ぞや、と。叔向曰く、樂王鮒は、君に從う者なり。何ぞ能く行われん。祁大夫は、外舉讎を弃てず、内舉親を失わず。其れ獨り我を遺さんか。詩に曰く、覺たる德行有れば、四國之に順う、と。詩は、大雅。德行直なれば、則ち天下之に順うを言う。 夫子覺者也。覺、較然正直。○較、音角。 【読み】 夫子は覺たる者なり、と。覺は、較然として正直なり。○較は、音角。 晉侯問叔向之罪於樂王鮒。對曰、不弃其親、其有焉。言叔向篤親親。必與叔虎同謀。 【読み】 晉侯叔向の罪を樂王鮒に問う。對えて曰く、其の親を弃てざれば、其れ有らん、と。言うこころは、叔向親親に篤し。必ず叔虎と謀を同じくせん。 於是祁奚老矣。老、去公族大夫。 【読み】 是に於て祁奚老せり。老は、公族大夫を去るなり。 聞之、乘馹而見宣子曰、詩曰、惠我無疆。子孫保之。詩、周頌也。言文武有惠訓之德、加於百姓。故子孫保賴之。○馹、人實反。傳也。 【読み】 之を聞き、馹[じつ]に乘りて宣子を見て曰く、詩に曰く、我を惠みて疆り無し。子孫之を保つ、と。詩は、周頌なり。言うこころは、文武惠訓の德の、百姓に加うる有り。故に子孫之を保賴す。○馹は、人實反。傳なり。 書曰、聖有謩勳、明徵定保。逸書。謩、謀也。勳、功也。言聖哲有謀功者、當明信定安之。○謩、莫胡反。勳、如字。書作訓。 【読み】 書に曰く、聖にして謩勳[ぼくん]有るは、明徵定保す、と。逸書。謩は、謀るなり。勳は、功なり。言うこころは、聖哲にして謀功有る者は、當に之を明信定安す。○謩は、莫胡反。勳は、字の如し。書訓に作る。 夫謀而鮮過、惠訓不倦者、叔向有焉。謀鮮過、有謩勳也。惠訓不倦、惠我無疆也。 【読み】 夫れ謀りて過ち鮮く、惠訓して倦まざる者は、叔向焉れ有り。謀りて過ち鮮きは、謩勳有るなり。惠訓して倦まざるは、我を惠して疆り無きなり。 社稷之固也。猶將十世宥之、以勸能者。今壹不免其身、壹、以弟故。 【読み】 社稷の固めなり。猶將に十世も之を宥めて、以て能者を勸めんとす。今壹たびにして其の身を免さずして、壹は、弟を以ての故なり。 以弃社稷。不亦惑乎。鯀殛而禹興、言不以父罪廢其子。 【読み】 以て社稷を弃つ。亦惑うるならずや。鯀殛せられて禹興り、言うこころは、父の罪を以て其の子を廢せず。 伊尹放大甲而相之、卒無怨色、大甲、湯孫也。荒淫失度。伊尹放之桐宮三年、改悔而復之、而無恨心。言不以一怨妨大德。 【読み】 伊尹大甲を放ちて之を相け、卒に怨色無く、大甲は、湯の孫なり。荒淫にして度を失う。伊尹之を桐宮に放つこと三年、改悔して之を復して、恨心無し。一怨を以て大德を妨げざるを言う。 管・蔡爲戮、周公右王。言兄弟罪不相及。 【読み】 管・蔡戮せられて、周公王を右[たす]けり。言うこころは、兄弟罪相及ばず。 若之何其以虎也弃社稷。子爲善、誰敢不勉。多殺何爲。宣子說、與之乘、以言諸公而免之。共載入見公。○說、音悅。見、賢遍反。 【読み】 之を若何ぞ其れ虎を以て社稷を弃てん。子善を爲さば、誰か敢えて勉めざらん。多く殺して何をかせん、と。宣子說び、之と乘りて、以て諸を公に言いて之を免す。共に載りて入りて公に見ゆ。○說は、音悅。見は、賢遍反。 不見叔向而歸。言爲國非私叔向也。○爲、于僞反。下同。 【読み】 叔向を見ずして歸る。國の爲にして叔向に私するに非ざるを言うなり。○爲は、于僞反。下も同じ。 叔向亦不告免焉而朝。不告謝之、明不爲己。 【読み】 叔向も亦免さることを告げずして朝す。之に告謝せざるは、己が爲ならざるを明らかにす。 初、叔向之母妬叔虎之母美而不使。不使見叔向父。○妬、丁故反。 【読み】 初め、叔向の母叔虎の母の美なるを妬みて使えしめず。叔向の父に見えしめず。○妬は、丁故反。 其子皆諫其母。其母曰、深山大澤、實生龍蛇。言非常之地、多生非常之物。 【読み】 其の子皆其の母を諫む。其の母曰く、深山大澤、實に龍蛇を生ず。非常の地、多く非常の物を生ずるを言う。 彼美。余懼其生龍蛇以禍女。女敝族也。敝、衰壞也。龍蛇、喩奇怪。○女、音汝。 【読み】 彼れ美なり。余懼れらくは其の龍蛇を生じて以て女に禍せんことを。女は敝族なり。敝は、衰壞なり。龍蛇は、奇怪に喩う。○女は、音汝。 國多大寵。六卿專權。 【読み】 國大寵多し。六卿權を專にす。 不仁人閒之、不亦難乎。余何愛焉。使往視寢、生叔虎。美而有勇力。欒懷子嬖之。故羊舌氏之族及於難。 【読み】 不仁の人之を閒せば、亦難からずや。余何ぞ愛[おし]まん、と。往きて寢を視せしむれば、叔虎を生めり。美にして勇力有り。欒懷子之を嬖す。故に羊舌氏の族難に及べり。 欒盈過於周。周西鄙掠之。劫掠財物。○閒、去聲。掠、音亮。 【読み】 欒盈周を過ぐ。周の西鄙之を掠[かす]む。財物を劫掠す。○閒は、去聲。掠は、音亮。 辭於行人、王行人也。 【読み】 行人に辭して、王の行人なり。 曰、天子陪臣盈、諸侯之臣、稱於天子曰陪臣。 【読み】 曰く、天子の陪臣盈、諸侯の臣、天子に稱して陪臣と曰う。 得罪於王之守臣、范宣子爲王所命。故曰守臣。 【読み】 罪を王の守臣に得て、范宣子は王の爲に命ぜらる。故に守臣と曰う。 將逃罪、罪重於郊甸、重得罪於郊甸、謂爲郊甸所侵掠也。郭外曰郊、郊外曰甸。 【読み】 將に罪を逃げんとするに、罪郊甸[こうてん]に重なりて、重ねて罪を郊甸に得るとは、郊甸の爲に侵掠せらるるを謂うなり。郭外を郊と曰い、郊外を甸と曰う。 無所伏竄。敢布其死。布、陳也。 【読み】 伏竄[ふくざん]する所無し。敢えて其の死を布く。布は、陳くなり。 昔陪臣書能輸力於王室、王施惠焉。輸力、謂輔相晉國、以翼戴天子。 【読み】 昔陪臣書能く力を王室に輸[いた]して、王惠みを施せり。力を輸すとは、晉國を輔相して、以て天子を翼戴するを謂う。 其子黶不能保任其父之勞。大君若不弃書之力、亡臣猶有所逃。大君、謂天王。○任、音壬。 【読み】 其の子黶は其の父の勞を保任すること能わざりし。大君若し書の力を弃てずんば、亡臣猶逃ぐる所有らん。大君は、天王を謂う。○任は、音壬。 若弃書之力、而思黶之罪、臣戮餘也。罪戮餘也。 【読み】 若し書の力を弃てて、黶の罪を思わば、臣は戮餘なり。罪戮の餘なり。 將歸死於尉氏。尉氏、討姦之官。 【読み】 將に死を尉氏に歸せんとす。尉氏は、姦を討ずるの官。 不敢還矣。敢布四體。惟大君命焉。布四體、言無所隱。 【読み】 敢えて還らじ。敢えて四體を布く。惟大君命ぜよ、と。四體を布くとは、隱す所無きを言う。 王曰、尤而效之、其又甚焉。尤晉逐盈、而自掠之、是效尤。 【読み】 王曰く、尤めて之に效うは、其れ又焉より甚だし、と。晉の盈を逐うを尤めて、自ら之を掠むるは、是れ尤に效うなり。 使司徒禁掠欒氏者、歸所取焉、使候出諸轘轅。候、送迎賓客之官也。轘轅關、在緱氏縣東南。 【読み】 司徒をして欒氏を掠むる者を禁じて、取る所を歸さしめ、候をして諸を轘轅[かんえん]より出ださしめり。候は、賓客を送迎するの官なり。轘轅關は、緱氏縣の東南に在り。 冬、曹武公來朝、始見也。卽位三年、始來見公。 【読み】 冬、曹の武公來朝するは、始めて見ゆるなり。位に卽きて三年、始めて來りて公に見ゆ。 會於商任、錮欒氏也。禁錮欒盈、使諸侯不得受。 【読み】 商任に會するは、欒氏を錮するなり。欒盈を禁錮して、諸侯をして受くることを得ざらしむ。 齊侯・衛侯不敬。叔向曰、二君者必不免。會朝、禮之經也。禮、政之輿也。政、須禮而行。 【読み】 齊侯・衛侯不敬なり。叔向曰く、二君は必ず免れじ。會朝は、禮の經なり。禮は、政の輿なり。政は、禮を須て行わる。 政、身之守也。政存則身安。 【読み】 政は、身の守りなり。政存すれば則ち身安し。 怠禮失政。失政不立。是以亂也。爲二十五年、齊弑光、二十六年、衛弑剽傳。 【読み】 禮を怠れば政を失う。政を失えば立たず。是を以て亂るるなり、と。二十五年、齊光を弑し、二十六年、衛剽を弑する爲の傳なり。 知起・中行喜・州綽・邢蒯出奔齊。四子、晉大夫。○知、音智。行、戶郎反。蒯、苦怪反。 【読み】 知起・中行喜・州綽・邢蒯出でて齊に奔る。四子は、晉の大夫。○知は、音智。行は、戶郎反。蒯は、苦怪反。 皆欒氏之黨也。樂王鮒謂范宣子曰、盍反州綽・邢蒯。勇士也。宣子曰、彼欒氏之勇也。余何獲焉。言不爲己用。 【読み】 皆欒氏の黨なり。樂王鮒范宣子に謂いて曰く、盍ぞ州綽・邢蒯を反さざるや。勇士なり、と。宣子曰く、彼は欒氏の勇なり。余何ぞ獲ん、と。己が用と爲らざるを言う。 王鮒曰、子爲彼欒氏、乃亦子之勇也。言子待之如欒氏、亦爲子用也。 【読み】 王鮒曰く、子彼の欒氏を爲さば、乃ち亦子の勇ならん、と。言うこころは、子之を待つこと欒氏の如くならば、亦子が用と爲らん。 齊莊公朝。指殖綽・郭最曰、是寡人之雄也。州綽曰、君以爲雄、誰敢不雄。然臣不敏、平陰之役、先二子鳴。十八年、晉伐齊、及平陰、州綽獲殖綽・郭最。故自比於雞鬭勝而先鳴。○先二、悉薦反。 【読み】 齊の莊公朝す。殖綽・郭最を指して曰く、是れ寡人の雄なり、と。州綽曰く、君以て雄と爲さば、誰か敢えて雄とせざらん。然れども臣不敏なれども、平陰の役に、二子に先だちて鳴けり、と。十八年、晉齊を伐ち、平陰に及び、州綽殖綽・郭最を獲。故に自ら雞の鬭い勝ちて先ず鳴くに比す。○先二は、悉薦反。 莊公爲勇爵。設爵位以命勇士。 【読み】 莊公勇爵を爲す。爵位を設けて以て勇士に命ず。 殖綽・郭最欲與焉。自以爲勇。○與、音預。下同。 【読み】 殖綽・郭最與らんと欲す。自ら以て勇と爲す。○與は、音預。下も同じ。 州綽曰、東閭之役、臣左驂迫還於門中、識其枚數。識門板數。亦在十八年。 【読み】 州綽曰く、東閭の役に、臣が左驂門中に迫り還り、其の枚數を識れり。門板の數を識る。亦十八年に在り。 其可以與於此乎。公曰、子爲晉臣也。對曰、臣爲隸新。言但爲僕隸尙新耳。 【読み】 其れ以て此に與る可きか、と。公曰く、子は晉臣の爲なり、と。對えて曰く、臣隸と爲ること新たなり。言うこころは、但僕隸と爲ること尙新たなるのみ。 然二子者、譬於禽獸、臣食其肉、而寢處其皮矣。言嘗射得之。 【読み】 然れども二子の者、禽獸に譬うれば、臣は其の肉を食いて、其の皮に寢處せり、と。嘗て射て之を得たるを言う。 〔經〕二十有二年、春、王正月、公至自會。無傳。 【読み】 〔經〕二十有二年、春、王の正月、公會より至る。傳無し。 夏、四月。秋、七月、辛酉、叔老卒。無傳。子叔齊子。 【読み】 夏、四月。秋、七月、辛酉[かのと・とり]、叔老卒す。傳無し。子叔齊子。 冬、公會晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子・薛伯・杞伯・小邾子于沙隨。公至自會。無傳。 【読み】 冬、公晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]・薛伯・杞伯・小邾子に沙隨に會す。公會より至る。傳無し。 楚殺其大夫公子追舒。書名者、寵近小人、貪而多馬爲國所患。 【読み】 楚其の大夫公子追舒を殺す。名を書すは、小人を寵近して、貪りて馬多く國の爲に患えらるればなり。 〔傳〕二十二年、春、臧武仲如晉。公頻與晉侯外會、今各將罷還。魯之守卿、遣武仲爲公謝不敏。故不書。 【読み】 〔傳〕二十二年、春、臧武仲晉に如く。公頻りに晉侯と外に會し、今各々將に罷め還らんとす。魯の守卿、武仲をして公の爲に不敏を謝せしむ。故に書さず。 雨。過御叔。御叔在其邑、將飮酒。御叔、魯御邑大夫。○過、古禾反。御、魚呂反。又魚據反。 【読み】 雨ふる。御叔に過る。御叔其の邑に在り、將に酒を飮まんとす。御叔は、魯の御邑の大夫。○過は、古禾反。御は、魚呂反。又魚據反。 曰、焉用聖人。武仲、多知。時人謂之聖。○焉、於虔反。 【読み】 曰く、焉ぞ聖人を用いん。武仲は、多知。時の人之を聖と謂う。○焉は、於虔反。 我將飮酒而已。雨行。何以聖爲。穆叔聞之、曰、不可使也、而傲使人。言御叔不任使四方。○使人、所吏反。任、音壬。 【読み】 我れ將に酒を飮まんとするのみ。雨行す。何を以て聖と爲さん、と。穆叔之を聞きて、曰く、使う可からずして、使人に傲る。御叔四方に使うるに任えざるを言う。○使人は、所吏反。任は、音壬。 國之蠹也。令倍其賦。古者家其國邑。故以重賦爲罸。傳言穆叔能用敎。 【読み】 國の蠹[と]なり、と。其の賦を倍せしむ。古は其の國邑に家す。故に重賦を以て罸と爲す。傳穆叔能く敎えを用ゆるを言う。 夏、晉人徵朝于鄭。召鄭使朝。 【読み】 夏、晉人朝を鄭に徵す。鄭を召して朝せしむ。 鄭人使少正公孫僑對、少正、鄭卿官也。公孫僑、子產。 【読み】 鄭人少正公孫僑をして對えしめて、少正は、鄭の卿官なり。公孫僑は、子產。 曰、在晉先君悼公九年、我寡君於是卽位。魯襄八年。 【読み】 曰く、晉の先君悼公の九年に在りて、我が寡君是に於て位に卽けり。魯襄八年。 卽位八月、卽位年之八月。 【読み】 位に卽くの八月にして、位に卽く年の八月。 而我先大夫子駟、從寡君以朝于執事、執事不禮於寡君、言朝執事、謙不敢斥晉侯。 【読み】 我が先大夫子駟、寡君に從いて以て執事に朝せしに、執事寡君に禮あらざれば、執事に朝すと言うは、謙して敢えて晉侯を斥[さ]さざるなり。 寡君懼。因是行也、我二年六月、朝于楚、因朝晉不見禮、生朝楚心。 【読み】 寡君懼れぬ。是の行に因りてや、我が二年六月に、楚に朝せしかば、晉に朝して禮せられざるに因りて、楚に朝するの心を生ず。 晉是以有戲之役。在九年。○戲、許宜反。 【読み】 晉是を以て戲の役有り。九年に在り。○戲は、許宜反。 楚人猶競、而申禮於敝邑、敝邑欲從執事、而懼爲大尤、曰、晉其謂我不共有禮。是以不敢攜貳於楚。我四年三月、先大夫子蟜又從寡君以觀釁於楚、實朝、言觀釁、飾辭也。言欲往視楚、知可去否。○共、音恭。 【読み】 楚人猶競いて、禮を敝邑に申ぬれば、敝邑執事に從わんことを欲すれども、而れども大尤爲らんことを懼れて、曰く、晉其れ我を有禮に共せずと謂わんか、と。是を以て敢えて楚に攜貳せざりき。我が四年三月に、先大夫子蟜又寡君に從いて以て釁を楚に觀しかば、實は朝して、釁を觀ると言うは、飾辭なり。往きて楚を視て、去る可きや否やを知らんと欲するを言う。○共は、音恭。 晉於是乎有蕭魚之役。在十一年。 【読み】 晉是に於て蕭魚の役有り。十一年に在り。 謂我敝邑、邇在晉國、譬諸草木、吾臭味也。晉・鄭同姓故。 【読み】 我が敝邑を謂えらく、邇く晉國に在ること、諸を草木に譬うれば、吾が臭味なり。晉・鄭の同姓の故なり。 而何敢差池。差池、不齊一。○差、初宜反。又初佳反。一七河反。池、直知反。一徒河反。 【読み】 而るを何ぞ敢えて差池[しち]する、と。差池は、齊一ならざるなり。○差は、初宜反。又初佳反。一に七河反。池は、直知反。一に徒河反。 楚亦不競、寡君盡其土實、土地所有。 【読み】 楚も亦競わざれば、寡君其の土實を盡くし、土地の有る所。 重之以宗器、宗廟禮樂之器。鐘磬之屬。 【読み】 之に重ぬるに宗器を以てして、宗廟禮樂の器。鐘磬の屬。 以受齊盟、齊、同也。 【読み】 以て齊盟を受け、齊は、同じなり。 遂帥羣臣、隨于執事、以會歲終、朝正。 【読み】 遂に羣臣を帥いて、執事に隨いて、以て歲終に會し、正に朝するなり。 貳於楚者、子侯・石盂歸而討之。石盂、石■。○盂、音于。■、勑略反。 【読み】 楚に貳ある者、子侯・石盂をば歸りて之を討じき。石盂は、石■[せきちゃく]。○盂は、音于。■は、勑略反。 *■は、上から「兔の上部」+「比」+「犬」。次段も同じ。 湨梁之明年、湨梁、在十六年。 【読み】 湨梁[けきりょう]の明年に、湨梁は、十六年に在り。 子蟜老矣。公孫夏從寡君以朝于君、見於嘗酎、酒之新熟重者爲酎。嘗新飮酒爲嘗酎。○見、賢遍反。又如字。酎、直又反。 【読み】 子蟜老す。公孫夏寡君に從いて以て君に朝し、嘗酎に見え、酒の新たに熟して重なる者を酎と爲す。新しきを嘗め酒を飮むを嘗酎と爲す。○見は、賢遍反。又字の如し。酎は、直又反。 與執燔焉。助祭。○與、音預。 【読み】 燔を執るに與れり。祭を助く。○與は、音預。 閒二年、聞君將靖東夏、謂二十年、澶淵盟。○閒、去聲。又如字。 【読み】 二年を閒[へだ]て、君將に東夏を靖んぜんとすと聞き、二十年、澶淵[せんえん]の盟を謂う。○閒は、去聲。又字の如し。 四月、又朝以聽事。先澶淵二月、往朝以聽會期。 【読み】 四月に、又朝して以て事の期を聽けり。澶淵に先だつこと二月、往きて朝して以て會期を聽く。 不朝之閒、無歲不聘、無役不從。以大國政令之無常、國家罷病、不虞荐至、荐、仍也。○罷、音皮。 【読み】 朝せざるの閒も、歲として聘せざること無く、役として從わざること無し。大國政令の常無く、國家罷病して、不虞の荐[しき]りに至るを以て、荐は、仍りなり。○罷は、音皮。 無日不惕。豈敢忘職。惕、懼也。 【読み】 日として惕[おそ]れざること無し。豈敢えて職を忘れんや。惕は、懼るるなり。 大國若安定之、其朝夕在庭。何辱命焉。言自將往。不須來召。 【読み】 大國若し之を安定せば、其れ朝夕庭に在らん。何ぞ命を辱くせん。言うこころは、自ら將に往かんとす。來り召すことを須いず。 若不恤其患、而以爲口實、口實、但有其言而已。 【読み】 若し其の患えを恤えずして、以て口實を爲さば、口實は、但其の言有るのみ。 其無乃不堪任命、而翦爲仇讎。翦、削也。謂見剝削不堪命、則成仇讎。 【読み】 其れ乃ち命に堪任せずして、翦[けず]られて仇讎と爲ること無からんや。翦は、削るなり。剝削せられて命に堪えざるときは、則ち仇讎と成るを謂う。 敝邑是懼。其敢忘君命。委諸執事。執事實重圖之。傳言子產有辭、所以免大國之討。 【読み】 敝邑是れ懼る。其れ敢えて君の命を忘れんや。諸を執事に委ぬ。執事實に重ねて之を圖れ、と。傳子產辭有りて、大國の討を免るる所以を言う。 秋、欒盈自楚適齊。晏平仲言於齊侯曰、商任之會、受命於晉。受錮欒氏之命。 【読み】 秋、欒盈楚より齊に適く。晏平仲齊侯に言いて曰く、商任の會に、命を晉に受けたり。欒氏を錮するの命を受く。 今納欒氏、將安用之。小所以事大、信也。失信不立。君其圖之。弗聽。退告陳文子曰、君人執信、臣人執共。忠信篤敬、上下同之。天之道也。君自弃也。弗能久矣。爲二十五年、齊弑其君光傳。 【読み】 今欒氏を納れば、將に安くにか之を用いんとする。小の大に事うる所以は、信なり。信を失えば立たず。君其れ之を圖れ、と。聽かず。退きて陳文子に告げて曰く、人に君としては信を執り、人に臣としては共を執る。忠信篤敬は、上下之を同じくす。天の道なり。君自ら弃つ。久しきこと能わじ、と。二十五年、齊其の君光を弑する爲の傳なり。 九月、鄭公孫黑肱有疾。歸邑于公、黑肱、子張。 【読み】 九月、鄭の公孫黑肱疾有り。邑を公に歸し、黑肱は、子張。 召室老宗人立段。段、子石、黑肱子。 【読み】 室老宗人を召して段を立つ。段は、子石、黑肱の子。 而使黜官薄祭、黜官、無多受職。 【読み】 而して官を黜け祭を薄くし、官を黜くるは、多く職を受くるもの無きなり。 祭以特羊、殷以少牢、四時祀以一羊、三年盛祭以羊豕。殷、盛也。 【読み】 祭には特羊を以てし、殷には少牢を以てし、四時の祀は一羊を以てし、三年の盛祭は羊豕を以てす。殷は、盛んなり。 足以共祀、盡歸其餘邑。曰、吾聞之、生於亂世、貴而能貧、民無求焉。可以後亡。敬共事君與二三子。生在敬戒。不在富也。 【読み】 以て祀に共するに足りて、盡く其の餘邑を歸さしむ。曰く、吾れ之を聞く、亂世に生まれて、貴くして能く貧しければ、民求むること無し。以て後に亡ぶ可し、と。敬共して君と二三子に事えよ。生は敬戒に在り。富に在ざるなり、と。 己巳、伯張卒。君子曰、善戒。詩曰、愼爾侯度、用戒不虞。鄭子張其有焉。詩、大雅。侯、維也。義取愼法度、戒未然。○盡、津忍反。 【読み】 己巳[つちのと・み]、伯張卒す。君子曰く、善く戒めり。詩に曰く、爾の侯[こ]の度を愼みて、用て不虞を戒めよ、と。鄭の子張其れ有り、と。詩は、大雅。侯は、維れなり。義法度を愼み、未然に戒むるに取る。○盡は、津忍反。 冬、會于沙隨、復錮欒氏也。晉知欒盈在齊。故復錮也。○復、扶又反。下皆同。 【読み】 冬、沙隨に會するは、復欒氏を錮するなり。晉欒盈が齊に在るを知る。故に復錮するなり。○復は、扶又反。下も皆同じ。 欒盈猶在齊。晏子曰、禍將作矣。齊將伐晉。不可以不懼。爲明年、齊伐晉傳。 【読み】 欒盈猶齊に在り。晏子曰く、禍將に作らんとす。齊將に晉を伐たんとす。以て懼れずんばある可からず、と。明年、齊晉を伐つ爲の傳なり。 楚觀起有寵於令尹子南。未益祿而有馬數十乘。言子南偏寵觀起令富。 【読み】 楚の觀起令尹子南に寵有り。未だ祿を益さずして馬數十乘有り。子南觀起を偏寵して富ましむるを言う。 楚人患之。王將討焉。子南之子弃疾爲王御士。御王車者。 【読み】 楚人之を患う。王將に討ぜんとす。子南の子弃疾王の御士爲り。王の車を御する者。 王每見之必泣。弃疾曰、君三泣臣矣。敢問誰之罪也。王曰、令尹之不能、爾所知也。國將討焉。爾其居乎。問能止事我否。 【読み】 王之を見る每に必ず泣く。弃疾曰く、君三たび臣に泣く。敢えて問う、誰が罪ぞや、と。王曰く、令尹の不能は、爾が知れる所なり。國將に討ぜんとす。爾其れ居らんか、と。能く止まりて我に事えんや否やと問う。 對曰、父戮子居、君焉用之。洩命重刑、臣亦不爲。漏泄君命、罪之重。○泄、息列反。又以制反。 【読み】 對えて曰く、父戮せられて子居る、君焉ぞ之を用いん。命を洩らして刑を重ねんことは、臣も亦せじ、と。君命を漏泄するは、罪の重きなり。○泄は、息列反。又以制反。 王遂殺子南於朝、轘觀起於四竟。轘、車裂以徇。○轘、音患。 【読み】 王遂に子南を朝に殺し、觀起を四竟に轘[かん]にす。轘は、車裂して以て徇うるなり。○轘は、音患。 子南之臣謂弃疾、請徙子尸於朝。欲犯命取殯。 【読み】 子南の臣弃疾に謂えらく、請う、子の尸を朝より徙[うつ]せ、と。命を犯して取り殯せんことを欲す。 曰、君臣有禮。唯二三子。不欲犯命移尸。 【読み】 曰、君臣は禮有り。唯二三子のままなり、と。命を犯して尸を移すことを欲せず。 三日、弃疾請尸。王許之。旣葬。其徒曰、行乎。行、去也。 【読み】 三日ありて、弃疾尸を請う。王之を許す。旣に葬る。其の徒曰く、行[さ]らんか、と。行は、去るなり。 曰、吾與殺吾父。行將焉入。曰、然則臣王乎。曰、弃父事讎、吾弗忍也。於事是讎、於實是君。故雖謂讎、而不敢報。○與、音預。 【読み】 曰く、吾れ吾が父を殺すに與れり。行るも將に焉くに入らんとする、と。曰く、然らば則ち王に臣たらんか、と。曰く、父を弃て讎に事うるは、吾れ忍びず、と。事に於ては是れ讎、實に於ては是れ君。故に讎と謂うと雖も、敢えて報いず。○與は、音預。 遂縊而死。傳譏康王與人子謀其父、失君臣之義。○縊、一賜反。 【読み】 遂に縊れて死す。傳康王人の子と其の父を謀り、君臣の義を失うを譏る。○縊は、一賜反。 復使薳子馮爲令尹、公子齮爲司馬、屈建爲莫敖。屈建、子木也。○齮、五綺反。屈、居勿反。 【読み】 復薳子馮[いしひょう]をして令尹爲らしめ、公子齮を司馬と爲し、屈建を莫敖と爲す。屈建は、子木なり。○齮は、五綺反。屈は、居勿反。 有寵於薳子者八人。皆無祿而多馬。他日朝、與申叔豫言。弗應而退。從之。入於人中。申叔辟薳子、不欲與語。 【読み】 薳子に寵有る者八人。皆祿無くして馬多し。他日朝して、申叔豫と言う。應えずして退く。之に從う。人中に入る。申叔薳子を辟け、與に語ることを欲せず。 又從之。遂歸。退朝見之、薳子就申叔家見之。 【読み】 又之に從う。遂に歸る。朝より退きて之を見て、薳子申叔が家に就きて之を見る。 曰、子三困我於朝。吾懼。不敢不見。吾過、子姑告我。何疾我也。對曰、吾不免是懼。何敢告子。言恐與子幷罪。故不敢與子語。○不見、賢遍反。 【読み】 曰く、子三たび我を朝に困しむ。吾れ懼る。敢えて見えずんばあらず。吾れ過たば、子姑く我に告げよ。何ぞ我を疾[にく]めるや、と。對えて曰く、吾れ免れざらんことを是れ懼る。何ぞ敢えて子に告げん、と。言うこころは、子と幷せ罪せられんことを恐る。故に敢えて子と語らず。○不見は、賢遍反。 曰、何故。對曰、昔觀起有寵於子南。子南得罪、觀起車裂。何故不懼。自御而歸。不能當道。薳子惶懼意不在御。 【読み】 曰く、何の故ぞ、と。對えて曰く、昔觀起子南に寵有り。子南罪を得しかば、觀起車裂せられぬ。何の故に懼れざらん、と。自ら御して歸る。道に當たること能わず。薳子惶懼して意御に在らず。 至。謂八人者曰、吾見申叔夫子、所謂生死而肉骨也。已死復生、白骨更肉。 【読み】 至る。八人の者に謂いて曰く、吾れ申叔夫子を見るは、所謂死を生かして骨に肉づくるなり。已に死して復生き、白骨更に肉づく。 知我者、如夫子則可。夫子、謂申叔也。如夫子、謂以義匡己。 【読み】 我を知る者は、夫子の如きは則ち可なり。夫子は、申叔を謂うなり。夫子の如きとは、義を以て己を匡すを謂う。 不然請止。止、不相知。 【読み】 然らずんば請う止めん、と。止むとは、相知らざるなり。 辭八人者、而後王安之。辭、遣之。 【読み】 八人の者を辭して、而して後に王之を安んぜり。辭すとは、之を遣[さ]るなり。 十二月、鄭游眅將如晉。游眅、公孫蠆子。 【読み】 十二月、鄭の游眅將に晉に如かんとす。游眅は、公孫蠆[こうそんたい]の子。 *「眅」について、頭注に「物氏云、眅或作販。」とある。 未出竟、遭逆妻者、奪之、以館于邑。舍止其邑、不復行。 【読み】 未だ竟を出でざるに、妻を逆[むか]うる者に遭い、之を奪いて、以て邑に館る。其の邑に舍止して、復行かず。 丁巳、其夫攻子明殺之、以其妻行。十二月無丁巳。丁巳、十一月十四日也。 【読み】 丁巳[ひのと・み]、其の夫子明を攻めて之を殺し、其の妻を以[い]て行[さ]る。十二月に丁巳無し。丁巳は、十一月十四日なり。 子展廢良而立大叔。良、游眅子。大叔、眅弟。 【読み】 子展良を廢して大叔を立つ。良は、游眅の子。大叔は、眅の弟。 曰、國卿、君之貳也。民之主也。不可以苟。請舍子明之類。子明有罪、而良又不賢故。○舍、音捨。 【読み】 曰く、國卿は、君の貳なり。民の主なり。以て苟もす可からず。請う、子明の類を舍てん、と。子明罪有りて、良も又不賢なる故なり。○舍は、音捨。 求亡妻者、使復其所、使游氏勿怨。鄭國不討專殺之人、所以抑强扶弱、臨時之宜。 【読み】 妻を亡う者を求めて、其の所に復らしめ、游氏をして怨むること勿からしむ。鄭國專殺の人を討ぜざるは、强を抑え弱を扶くる所以、時に臨むの宜なり。 曰、無昭惡也。交怨、則父之不脩益明也。 【読み】 曰く、惡を昭[あらわ]すこと無かれ、と。交々怨めば、則ち父の不脩益々明らかなり。 襄 經十六年。湨。徐公壁反。軹。韋昭音枳。數侵。所角反。郕。音成。 傳。叔向。許丈反。就閒。音閑。烝于。之承反。警。居領反。守。手又反。將爲。于僞反。下文爲夷同。之使。所吏反。遂相。息亮反。函氏。音咸。子格。古百反。湛。徐丈林反。孟孺。本又作■。如住反。子速。本亦作遬。音同。要也。一遙反。好勇。呼報反。海陘。徐古定反。魯隘。於懈反。禘。大計反。朝夕。如字。下同。圻父。音甫。注同。嗷嗷。五刀反。劬勞。求于反。 經十七年。牼。徐戶耕反。 傳。曹隧。音遂。越竟。音境。遂飮。○今本無遂字。甁。步經反。復還守。扶又反。又音服。喭(唁?)。音彥。抉。徐古穴反。其傷。如字。畀余。必利反。注同。大宰。音泰。後放此。爲平公。于僞反。妨於。音芳。農收。如字。又手又反。謳。烏侯反。之皙。徐思益反。吾儕。仕皆反。闔。戶臘反。廬。力居反。分謗。補浪反。衰。本又作縗同。注同。○今本亦縗。不緝。七入反。絰帶。直結反。以苴麻爲絰及帶。杖。禮記云、苴杖竹也。屨。九具反。食鬻。一音羊六反。倚廬。於綺反。不解。音蟹。 經十八年。之使。所吏反。入竟。音境。齊數。所角反。負芻。初倶反。 傳。純留。地理誌、作屯。爲曹。于僞反。所殺。申志反。○今本弑。梗陽。古杏反。巫皐。古刀反。而禱。丁老反。一音丁報反。恬恃。音戶。棄好。呼報反。○今本弃。背盟。音佩。謂數。所角反。守官。手又反。又如字。魯濟。子禮反。禦諸。魚呂反。塹。七豔反。敢匿。女力反。千乘。繩證反。子盍。戶臘反。公恐。曲勇反。斥山澤。一音昌夜反。乃脫。一音他外反。旗幟。申志反。一音赤志反。夜遁。徒困反。連大。竝如字。塞隧。音遂。道也。郭最。徐子會反。於隘。於懈反。射殖。食亦反。下注同。中肩。丁仲反。矢夾。古洽反。或古協反。乃弛。本又作施。音同。城守。手又反。萩。本又作秋。示閒。音閑。左驂。七南反。迫。音百。以枚。每回反。闔。戶臘反。門板。不恐。曲勇反。郵棠。音尤。扣馬。音口。以輕。遣政反。下同。斷鞅。音短。沂。魚依反。蓋縣。古害反。下邳。蒲悲反。入泗。音四。楊豚。徒門反。見使。所吏反。難易。以豉反。於汾。扶云反。旃然。章延反。入汴。皮彥反。薳。本又作蔿。○今本又蔿。滑。于八反。蟲牢。力刀反。多凍。丁弄反。吾驟。仕救反。 經十九年。祝柯。古多反。漷水。一音虎伯反。字林、口郭口獲二反。西郛。芳扶反。 傳。督揚。丁毒反。毋侵。音無。疆我。居良反。蒲圃。布古反。過魯。古禾反。賄。呼罪反。乘馬。繩證反。注四馬爲乘同。元帥。所類反。而視。如字。徐市至反。下同。噤。其蔭反。盥。音管。其爲。于僞反。下注爲懷子同。兵幷。如字。又必政反。將中軍。子匠反。後放此。召伯。上照反。下同。勞。力報反。來。力代反。之長。丁丈反。鑄鐘。之樹反。聲應。應對之應。且夫。音扶。彝。以之反。懲。直升反。娶于。七住反。中子。音仲。亦作仲。下皆放此。○今本亦仲。嬖。必計反。立適。丁歷反。本或作嫡。○今本亦嫡。閒諸侯。閒厠之閒。少傅。詩照反。下注簡公猶少同。黥。其京反。藍。力甘反。之難。乃旦反。注及下同。甲守。手又反。下問守備同。亞宋子。於嫁反。夜縋。直僞反。醢衛。音海。大隧。音遂。控于。苦貢反。度齊。待洛反。 經二十年。燮。悉協反。 傳。莒數。所角反。下同。和解。古買反。又戶買反。自復。扶又反。下始復同。其好。呼報反。下皆同。背楚。音佩。偪。彼力反。共公子。音恭。常棣。大計反。樂爾。音洛。妻帑。音奴。魚麗。力馳反。樂只。之氏反。本亦作旨。奉使。所吏反。之策。初革反。出其君。如字。徐音黜。有餒。奴罪反。 經二十一年。閭丘。力於反。 傳。公姑姊。杜以公之姑及姊。是二人也。或曰、列女傳稱梁有節姑妹、謂父之妹也。此云姑姊、是父之姊也、一人耳。以杜氏爲誤。案成九年、伯姬歸于宋。伯者長稱。九年始嫁、則爲成公之妹。成公不得有姊矣。若成公別有庶長之姊、以成公公衡之年推之、亦不復堪嫁。故知二人也。唯公羊以成公卽位年幼。據左氏成四年傳云、公如晉、晉侯見公、不敬。公歸欲求成于楚。得季文子諫而止。此非年幼也。反覆推之、杜氏不誤。妻之。七計反。下同。子盍。胡臘反。下盍反同。皁牧。在早反。濯。直角反。不懲。直升反。當令。力呈反。殺之。申志反。又如字。○今本作弑殺之。繭。古典反。痩。所又反。不相能。如字。徐乃代反。不爲。于僞反。下文吾爲同。作難。乃旦反。邴豫。音丙。叔羆。彼皮反。詩小雅。案今小雅無此全語。皆咎。其九反。德行。下孟反。注同。無疆。居良反。下注同。宥之。音又。鯀。古本反。殛。紀力反。大甲。音泰。而相。息亮反。右王。音又。之乘。繩證反。於難。乃旦反。守臣。手又反。注同。罪重。直用反。注同。郊甸。徒練反。伏竄。七亂反。輔相。息亮反。倣之。戶敎反。或作效。○今本效。轘轅。音袁。錮欒。音固。齊殺。申志反。下同。○今本弑。剽。匹妙反。其枚。本亦作板。子爲。于僞反。嘗射。食亦反。 經二十二年。 傳。之守。手又反。爲公。于僞反。多知。音智。又如字。而傲。五報反。之蠹。丁故反。少正。詩照反。注及下少牢同。僑。其驕反。釁。許靳反。重之。直用反。公孫夏。戶雅反。下同。先澶。悉薦反。荐至。在薦反。不惕。他歷反。朝夕。如字。堪任。音壬。黑肱。古弘反。馬數。所主反。十乘。繩證反。令富。力呈反。君焉。於虔反。下焉入同。四竟。音境。下同。取殯。必刃反。殺吾。如字。音試。游眅。呼板反。○疏本普板反。
(引用文献)