春秋左氏傳校本第二十
昭公 起元年盡三年
晉 杜氏 集解
唐 陸氏 音義
尾張 秦 鼎 校本
昭公 名、裯。襄公子。母齊歸。在位二十五年、遜于齊。在外八年、凡三十三年。薨于乾侯。謚法、威儀恭明曰昭。
【読み】
昭公 名は、裯[ちゅう]。襄公の子。母は齊歸。在位二十五年、齊に遜る。外に在ること八年、凡そ三十三年なり。乾侯に薨ず。謚法に、威儀恭明なるを昭と曰う、と。
〔經〕元年、春、王正月、公卽位。無傳。
【読み】
〔經〕元年、春、王の正月、公位に卽く。傳無し。
叔孫豹會晉趙武・楚公子圍・齊國弱・宋向戌・衛齊惡・陳公子招・蔡公孫歸生・鄭罕虎・許人・曹人于虢。招、實陳侯母弟。不稱弟者、義與莊二十五年公子友同。今讀舊書、則楚當先晉。而先書趙武者、亦取宋盟貴武之信。故尙之也。衛在陳・蔡上、先至於會。○招、常遙反。虢、瓜百反。當先、悉薦反。
【読み】
叔孫豹晉の趙武・楚の公子圍・齊の國弱・宋の向戌[しょうじゅつ]・衛の齊惡・陳の公子招・蔡の公孫歸生・鄭の罕虎・許人・曹人に虢[かく]に會す。招は、實は陳侯の母弟なり。弟と稱せざるは、義莊二十五年の公子友と同じ。今舊書を讀むときは、則ち楚當に晉に先だつべし。而るに先ず趙武を書すは、亦宋の盟に武の信を貴ぶに取る。故に之を尙ぶなり。衛の陳・蔡の上に在るは、先ず會に至ればなり。○招は、常遙反。虢は、瓜百反。當先は、悉薦反。
三月取鄆。不稱將師、將卑師少。書取、言易也。○鄆、音運。
【読み】
三月鄆[うん]を取る。將師を稱せざるは、將卑しく師少なければなり。取ると書すは、易きを言うなり。○鄆は、音運。
夏、秦伯之弟鍼出奔晉。稱弟、罪秦伯。○鍼、其廉反。
【読み】
夏、秦伯の弟鍼[けん]出でて晉に奔る。弟と稱するは、秦伯を罪するなり。○鍼は、其廉反。
六月、丁巳、邾子華卒。無傳。三同盟。
【読み】
六月、丁巳[ひのと・み]、邾子[ちゅし]華卒す。傳無し。三たび同盟す。
晉荀吳帥師敗狄于大鹵。大鹵、大原晉陽縣。○大鹵、如字。又音泰。
【読み】
晉の荀吳師を帥いて狄を大鹵[たいろ]に敗る。大鹵は、大原晉陽縣。○大鹵は、字の如し。又音泰。
秋、莒去疾自齊入于莒。國逆而立之曰入。○去、起呂反。
【読み】
秋、莒の去疾齊より莒に入る。國逆[むか]えて之を立つるを入ると曰う。○去は、起呂反。
莒展輿出奔吳。弑君賊、未會諸侯。故不稱爵。
【読み】
莒の展輿出でて吳に奔る。君を弑する賊にして、未だ諸侯に會せず。故に爵を稱せず。
叔弓帥師疆鄆田。春取鄆、今正其封疆。
【読み】
叔弓師を帥いて鄆の田を疆[さか]う。春鄆を取り、今其の封疆を正す。
葬邾悼公。無傳。
【読み】
邾の悼公を葬る。傳無し。
冬、十有一月、己酉、楚子麇卒。楚以瘧疾赴。故不書弑。○麇、九倫反。
【読み】
冬、十有一月、己酉[つちのと・とり]、楚子麇[きん]卒す。楚瘧疾[ぎゃくしつ]を以て赴[つ]ぐ。故に弑を書さず。○麇は、九倫反。
楚公子比出奔晉。書名、罪之。
【読み】
楚の公子比出でて晉に奔る。名を書すは、之を罪するなり。
〔傳〕元年、春、楚公子圍聘于鄭。且娶於公孫段氏。伍舉爲介。伍舉、椒舉。介、副也。
【読み】
〔傳〕元年、春、楚の公子圍鄭に聘す。且公孫段氏に娶らんとす。伍舉介爲り。伍舉は、椒舉。介は、副なり。
將入館。就客舍。
【読み】
將に入りて館せんとす。客舍に就く。
鄭人惡之、知楚懷詐。○惡、烏路反。
【読み】
鄭人之を惡み、楚の詐りを懷くを知る。○惡は、烏路反。
使行人子羽與之言、乃館於外。舍城外。
【読み】
行人子羽をして之と言わしめて、乃ち外に館す。城外に舍す。
旣聘、將以衆逆。以兵入逆婦。
【読み】
旣に聘し、將に衆を以て逆えんとす。兵を以て入りて婦を逆う。
子產患之、使子羽辭曰、以敝邑褊小、不足以容從者。請墠聽命。欲於城外除地爲墠、行昏禮。○褊、必淺反。墠、音善。
【読み】
子產之を患え、子羽をして辭せしめて曰く、敝邑の褊小なるを以て、以て從者を容るるに足らず。請う墠[せん]にして命を聽かん、と。城外に於て地を除いて墠を爲り、昏禮を行わんことを欲す。○褊は、必淺反。墠は、音善。
令尹命大宰伯州犂對曰、君辱貺寡大夫圍、謂圍將使豐氏撫有而室。豐氏、公孫段。
【読み】
令尹大宰伯州犂[はくしゅうり]に命じて對えしめて曰く、君辱く寡大夫圍に貺[たま]い、圍に謂えらく、將に豐氏をして而[なんじ]の室を撫有せしめんとす、と。豐氏は、公孫段。
圍布几筵、告於莊・共之廟而來。莊王、圍之祖。共王、圍之父。
【読み】
圍几筵を布き、莊・共の廟に告げて來れり。莊王は、圍の祖。共王は、圍の父。
若野賜之、是委君貺於草莽也。是寡大夫不得列於諸卿也。言不得從卿禮。
【読み】
若し野にして之を賜わば、是れ君の貺を草莽に委[す]つるなり。是れ寡大夫諸卿に列ぬることを得ざるなり。言うこころは、卿の禮に從うことを得ざるなり。
不寧唯是。又使圍蒙其先君、蒙、欺也。告先君而來、不得成禮於女氏之廟。故以爲欺先君。
【読み】
不寧[むし]ろ唯是のみならんや。又圍をして其の先君を蒙[あざむ]かしめて、蒙は、欺くなり。先君に告げて來りて、禮を女氏の廟に成すことを得ず。故に以て先君を欺くと爲す。
將不得爲寡君老。大臣稱老。懼辱命而黜退。
【読み】
將に寡君の老と爲ることを得ざらんとす。大臣は老と稱す。命を辱めて黜退せられんことを懼る。
其蔑以復矣。唯大夫圖之。
【読み】
其れ以て復すこと蔑[な]からん。唯大夫之を圖れ、と。
子羽曰、小國無罪。恃實其罪。恃大國而無備、則是罪。
【読み】
子羽曰く、小國罪無し。恃むは實に其の罪なり。大國を恃みて備え無きは、則ち是れ罪なり。
將恃大國之安靖己、而無乃包藏禍心以圖之。小國失恃、而懲諸侯、使莫不憾者、距違君命、而有所壅塞不行是懼。言己失所恃、則諸侯懲恨以距君命、壅塞不行。所懼唯此。
【読み】
將に大國の己を安靖せんことを恃まんとするに、而るに乃ち禍心を包藏して以て之を圖ること無からんや。小國恃みを失いて、諸侯を懲らさば、憾みざる者莫くして、君命を距違して、壅塞して行われざる所有らしめんこと是れ懼る。言うこころは、己恃む所を失わば、則ち諸侯懲恨して以て君命を距み、壅塞して行われざらん。懼るる所は唯此のみ。
不然、敝邑館人之屬也。館人、守舍之人也。
【読み】
然らずんば、敝邑は館人の屬なり。館人は、守舍の人なり。
其敢愛豐氏之祧。祧、遠祖廟。○祧、他彫反。
【読み】
其れ敢えて豐氏の祧[ちょう]を愛まんや、と。祧は、遠祖の廟。○祧は、他彫反。
伍舉知其有備也、請垂櫜而入。垂櫜、示無弓。○櫜、音羔。弓衣也。
【読み】
伍舉其の備え有るを知るや、櫜[こう]を垂れて入らんと請う。櫜を垂るとは、弓無きを示すなり。○櫜は、音羔。弓衣なり。
許之。
【読み】
之を許す。
正月、乙未、入逆而出。
【読み】
正月、乙未[きのと・ひつじ]、入りて逆えて出づ。
遂會於虢。虢、鄭地。
【読み】
遂に虢に會す。虢は、鄭の地。
尋宋之盟也。宋盟、在襄二十七年。
【読み】
宋の盟を尋[かさ]ぬるなり。宋の盟は、襄二十七年に在り。
祁午謂趙文子曰、宋之盟、楚人得志於晉。得志、謂先歃。午、祁奚子。○歃、所洽反。
【読み】
祁午趙文子に謂いて曰く、宋の盟に、楚人志を晉に得たり。志を得るとは、先ず歃るを謂うなり。午は、祁奚の子。○歃は、所洽反。
今令尹之不信、諸侯之所聞也。子弗戒、懼又如宋。恐楚復得志。
【読み】
今令尹の不信は、諸侯の聞ける所なり。子戒めずば、懼らくは又宋の如くならん。楚復志を得んことを恐る。
子木之信、稱於諸侯、猶詐晉而駕焉。駕、猶陵也。詐、謂衷甲。○衷、音忠。
【読み】
子木の信は、諸侯に稱せられしも、猶晉を詐りて駕[しの]げり。駕は、猶陵ぐのごとし。詐は、甲を衷[うち]にするを謂う。○衷は、音忠。
況不信之尤者乎。尤、甚也。
【読み】
況んや不信の尤[はなは]だしき者をや。尤は、甚だなり。
楚重得志於晉、晉之恥也。
【読み】
楚重ねて志を晉に得ば、晉の恥なり。
子相晉國以爲盟主、於今七年矣。襄二十五年始爲政。以春言。故云七年。○重、直用反。
【読み】
子晉國を相けて以て盟主爲ること、今に於て七年なり。襄二十五年始めて政を爲す。春を以て言う。故に七年と云うなり。○重は、直用反。
再合諸侯、襄二十五年、會夷儀、二十六年、會澶淵。
【読み】
再び諸侯を合わせ、襄二十五年、夷儀に會し、二十六年、澶淵[せんえん]に會す。
三合大夫、襄二十七年、會于宋、三十年、會澶淵、及今會虢也。
【読み】
三たび大夫を合わせ、襄二十七年、宋に會し、三十年、澶淵に會し、及び今虢に會するなり。
服齊・狄、寧東夏、襄二十八年、齊侯・白狄朝晉。
【読み】
齊・狄を服せしめ、東夏を寧んじ、襄二十八年、齊侯・白狄晉に朝す。
平秦亂、襄二十六年、秦・晉爲成。
【読み】
秦の亂を平らげ、襄二十六年、秦・晉成らぎを爲す。
城淳于。襄二十九年、城杞之淳于、杞遷都。
【読み】
淳于に城く。襄二十九年、杞の淳于に城きて、杞都を遷す。
師徒不頓、國家不罷、民無謗讟、讟、誹也。
【読み】
師徒頓[にぶ]からず、國家罷[つか]れず、民謗讟[ぼうとく]無く、讟は、誹るなり。
諸侯無怨、天無大災。子之力也。有令名矣。而終之以恥、午也是懼。吾子其不可以不戒。
【読み】
諸侯怨むること無く、天大災無し。子の力なり。令名有り。而るに之を終わるに恥を以てせんこと、午や是れ懼る。吾子其れ以て戒めずんばある可からず、と。
文子曰、武受賜矣。受午言。
【読み】
文子曰く、武賜を受けり。午の言を受く。
然宋之盟、子木有禍人之心、武有仁人之心。是楚所以駕於晉也。今武猶是心也。楚又行僭、僭、不信。
【読み】
然れども宋の盟に、子木は人に禍するの心有り、武は人に仁するの心有り。是れ楚の晉を駕ぎし所以なり。今武猶是の心なり。楚又僭を行うも、僭は、不信なり。
非所害也。武將信以爲本、循而行之。譬如農夫、是穮是蔉、穮、耘也。壅苗爲蔉。○穮、音標。蔉、音袞。
【読み】
害とする所に非ざるなり。武將に信以て本と爲し、循いて之を行わんとす。譬えば農夫の、是れ穮[くさぎ]り是れ蔉[つちか]えば、穮[ひょう]は、耘[くさぎ]るなり。苗に壅[つちか]うを蔉[こん]と爲す。○穮は、音標。蔉は、音袞。
雖有饑饉、必有豐年。言耕鉏不以水旱息、必獲豐年之收。○饉、其靳反。收、手又反。又如字。
【読み】
饑饉有りと雖も、必ず豐年有るが如し。言うこころは、耕鉏水旱を以て息めざれば、必ず豐年の收を獲ん。○饉は、其靳反。收は、手又反。又字の如し。
且吾聞之、能信不爲人下。吾未能也。自恐未能信也。
【読み】
且つ吾れ之を聞く、能く信なれば人の下と爲らず、と。吾れ未だ能わざるなり。自ら未だ信なること能わざるを恐るるなり。
詩曰、不僭不賊、鮮不爲則、信也。詩、大雅。僭、不信。賊、害人也。
【読み】
詩に曰く、僭せず賊せざれば、則爲らざること鮮しとは、信なり。詩は、大雅。僭は、不信なり。賊は、人を害するなり。
能爲人則者、不爲人下矣。吾不能是難。楚不爲患。
【読み】
能く人の則と爲る者は、人の下と爲らず。吾れ能わざること是れ難[なや]みとす。楚患えと爲らず、と。
楚令尹圍請、用牲、讀舊書、加于牲上而已。舊書、宋之盟書。楚恐晉先歃。故欲從舊書、加于牲上、不歃血。經所以不書盟。○難、乃旦反。
【読み】
楚の令尹圍請う、牲を用い、舊書を讀みて、牲上に加えんのみ、と。舊書は、宋の盟書なり。楚晉先ず歃らんことを恐る。故に舊書に從い、牲上に加え、血を歃らざらんことを欲す。經盟を書さざる所以なり。○難は、乃旦反。
晉人許之。三月、甲辰、盟。
【読み】
晉人之を許す。三月、甲辰[きのえ・たつ]、盟う。
楚公子圍設服離衛。設君服、二人執戈、陳於前以自衛。離、陳也。
【読み】
楚の公子圍服を設けて離[つら]ね衛る。君服を設け、二人戈を執り、前に陳ね以て自ら衛る。離は、陳ぬるなり。
叔孫穆子曰、楚公子美矣。君哉。美服似君。
【読み】
叔孫穆子曰く、楚の公子は美なり。君なるかな、と。美服君に似たり。
鄭子皮曰、二執戈者前矣。禮、國君行、有二執戈者在前。
【読み】
鄭の子皮曰く、二りの戈を執る者前なり、と。禮に、國君行かば、二りの戈を執る者前に在る有り、と。
蔡子家曰、蒲宮、有前不亦可乎。公子圍在會、特緝蒲爲王殿屋屛蔽、以自殊異。言旣造王宮而居之。雖服君服、無所怪也。
【読み】
蔡の子家曰く、蒲宮すれば、前有るも亦可ならんや、と。公子圍會に在りて、特に蒲を緝[あつ]めて王の殿屋屛蔽を爲して、以て自ら殊異にす。言うこころは、旣に王宮を造りて之に居る。君服を服すと雖も、怪しき所無し。
楚伯州犂曰、此行也、辭而假之寡君。聞諸大夫譏之。故言假以飾令尹過。
【読み】
楚の伯州犂曰く、此の行や、辭して之を寡君に假れり、と。諸大夫の之を譏るを聞く。故に假ると言いて以て令尹の過ちを飾るなり。
鄭行人揮曰、假不反矣。言將遂爲君。
【読み】
鄭の行人揮曰く、假りて反さざらん、と。言うこころは、將に遂に君爲らんとす。
伯州犂曰、子姑憂子皙之欲背誕也。襄三十年、鄭子皙殺伯有、背命放誕。將爲國難。言子且自憂此。無爲憂令尹不反戈。○背、音佩。
【読み】
伯州犂曰く、子姑く子皙の背誕せんと欲するを憂えよ、と。襄三十年、鄭の子皙伯有を殺し、命に背きて放誕なり。將に國難を爲さんとす。言うこころは、子且く自ら此を憂えよ。令尹が戈を反さざるを憂うることを爲すこと無かれ。○背は、音佩。
子羽曰、當璧猶在。假而不反、子其無憂乎。子羽、行人揮。當璧、謂弃疾。事在昭十三年。言弃疾有當璧之命。圍雖取國、猶將有難。不無憂也。
【読み】
子羽曰く、當璧猶在り。假りて反さざるも、子其れ憂え無からん、と。子羽は、行人揮。當璧は、弃疾を謂う。事は昭十三年に在り。言うこころは、弃疾當璧の命有り。圍國を取ると雖も、猶將に難有らんとす。憂え無しとせざるなり。
齊國子曰、吾代二子愍矣。國子、國弱也。二子、謂王子圍及伯州犂。圍此冬便簒位、不能自終。州犂亦尋爲圍所殺。故言可愍。
【読み】
齊の國子曰く、吾は二子に代わりて愍[うれ]えり、と。國子は、國弱なり。二子は、王子圍と伯州犂とを謂う。圍此の冬便ち位を簒いて、自ら終わること能わず。州犂も亦尋[つい]で圍の爲に殺さる。故に愍う可しと言う。
陳公子招曰、不憂何成。二子樂矣。言以憂生事、事成而樂。○樂、音洛。
【読み】
陳の公子招曰く、憂えずんば何ぞ成らん。二子は樂せん、と。言うこころは、憂えを以て事を生じ、事成りて樂しむ。○樂は、音洛。
衛齊子曰、苟或知之、雖憂何害。齊子、齊惡。言先知爲備、雖有憂難、無所損害。
【読み】
衛の齊子曰く、苟も之を知ること或らば、憂うと雖も何の害あらん、と。齊子は、齊惡。言うこころは、先ず知りて備えを爲さば、憂難有りと雖も、損害する所無し。
宋合左師曰、大國令、小國共。吾知共而已。共承大國命、不能知其禍福。○共、音恭。
【読み】
宋の合左師曰く、大國は令し、小國は共す。吾は共を知るのみ、と。大國の命を共承して、其の禍福を知ること能わず。○共は、音恭。
晉樂王鮒曰、小旻之卒章善矣。吾從之。小旻、詩小雅。其卒章、義取非唯暴虎馮河之可畏也、不敬小人亦危殆。王鮒從斯義。故不敢譏議公子圍。○鮒、音附。
【読み】
晉の樂王鮒曰く、小旻の卒章は善し。吾れ之に從わん、と。小旻は、詩の小雅。其の卒章は、義唯暴虎馮河の畏る可きのみに非ず、小人を敬せざるも亦危殆なるに取る。王鮒斯の義に從う。故に敢えて公子圍を譏議せず。○鮒は、音附。
退會。子羽謂子皮曰、叔孫絞而婉。絞、切也。譏其似君、反謂之美。故曰婉。
【読み】
會より退く。子羽子皮に謂いて曰く、叔孫は絞にして婉なり。絞は、切なり。其の君に似たるを譏りて、反って之を美と謂う。故に婉と曰う。
宋左師簡而禮。無所臧否。故曰簡。共事大國。故曰禮。○否、音鄙。
【読み】
宋の左師は簡にして禮あり。臧否する所無し。故に簡と曰う。大國に共事す。故に禮と曰う。○否は、音鄙。
樂王鮒字而敬。字、愛也。不犯凶人。所以自愛敬。
【読み】
樂王鮒は字にして敬なり。字は、愛しむなり。凶人を犯さず。自ら愛敬する所以なり。
子與子家持之。子、子皮。子家、蔡公孫歸生。持之、言無所取與。
【読み】
子と子家とは之を持にせり。子は、子皮。子家は、蔡の公孫歸生。之を持にすとは、取與する所無きを言う。
皆保世之主也。齊・衛・陳大夫、其不免乎。國子代人憂、子招樂憂、齊子雖憂弗害。夫弗及而憂、與可憂而樂、與憂而弗害、皆取憂之道也。憂必及之。大誓曰、民之所欲、天必從之。逸書。○樂、音洛。
【読み】
皆保世の主なり。齊・衛・陳の大夫は、其れ免れざらんか。國子は人に代わりて憂え、子招は憂えを樂しみ、齊子は憂うと雖も害あらずとす。夫れ及ばずして憂うると、憂う可くして樂しむと、憂えて害あらずとするとは、皆憂えを取るの道なり。憂え必ず之に及ばん。大誓に曰く、民の欲する所は、天必ず之に從う、と。逸書。○樂は、音洛。
三大夫兆憂。憂能無至乎。開憂兆也。
【読み】
三大夫は憂えを兆せり。憂え能く至ること無からんや。憂兆を開くなり。
言以知物、其是之謂矣。物、類也。察言以知禍福之類。八年、陳招殺大子、國弱・齊惡、當身各無患。
【読み】
言以て物を知るとは、其れ是を謂うなり、と。物は、類なり。言を察して以て禍福の類を知るなり。八年、陳の招大子を殺し、國弱・齊惡は、當身各々患無し。
季武子伐莒、取鄆。兵未加莒而鄆服。故書取而不言伐。
【読み】
季武子莒を伐ちて、鄆を取る。兵未だ莒に加えずして鄆服す。故に取るを書して伐つを言わず。
莒人告於會。楚告於晉曰、尋盟未退。尋弭兵之盟。
【読み】
莒人會に告ぐ。楚晉に告げて曰く、盟を尋ねて未だ退かず。弭兵の盟を尋ぬ。
而魯伐莒、瀆齊盟。瀆、慢也。
【読み】
而るに魯莒を伐ちて、齊盟を瀆[あなど]れり。瀆は、慢るなり。
請戮其使。時叔孫豹在會。欲戮之。
【読み】
請う、其の使いを戮せん、と。時に叔孫豹會に在り。之を戮せんと欲す。
樂桓子相趙文子。桓子、樂王鮒。相、佐也。
【読み】
樂桓子趙文子を相く。桓子は、樂王鮒。相は、佐くなり。
欲求貨於叔孫、而爲之請、使請帶焉。難指求貨。故以帶爲辭。○而爲、去聲。
【読み】
貨を叔孫に求めて、之が爲に請わんと欲して、帶を請わしむ。貨を求むることを指し難し。故に帶を以て辭と爲す。○而爲は、去聲。
弗與。梁其踁曰、貨以藩身。子何愛焉。踁、叔孫家臣。○踁、戶定反。
【読み】
與えず。梁其踁[りょうきけい]曰く、貨は以て身を藩[まも]らんとす。子何ぞ愛しめる、と。踁は、叔孫の家臣。○踁は、戶定反。
叔孫曰、諸侯之會、衛社稷也。我以貨免、魯必受師。言不戮其使、必伐其國。
【読み】
叔孫曰く、諸侯の會は、社稷を衛らんとなり。我れ貨を以て免るれば、魯必ず師を受けん。言うこころは、其の使いを戮せざれば、必ず其の國を伐たん。
是禍之也。何衛之爲。人之有牆、以蔽惡也。喩己爲國衛。如牆爲人蔽。
【読み】
是れ之を禍するなり。何ぞ衛るとせん。人の牆有るは、以て惡を蔽わんとなり。己は國の衛り爲り。牆の人の蔽い爲るが如きに喩う。
牆之隙壞、誰之咎也。咎在牆。
【読み】
牆の隙壞あるは、誰が咎ぞや。咎牆に在り。
衛而惡之、吾又甚焉。罪甚牆。
【読み】
衛りて之を惡しくせば、吾れ又焉より甚だし。罪牆より甚だし。
雖怨季孫、魯國何罪。怨季孫之伐莒。
【読み】
季孫を怨むと雖も、魯國何の罪ある。季孫が莒を伐つを怨む。
叔出季處、有自來矣。吾又誰怨。季孫守國、叔孫出使、所從來久。今遇此戮無所怨也。
【読み】
叔は出でて季は處るは、自りて來ること有り。吾れ又誰をか怨みん。季孫國を守り、叔孫出でて使いするは、從來する所久し。今此の戮に遇うも怨むる所無し。
然鮒也賄。弗與不已。召使者、裂裳帛而與之、曰、帶其褊矣。言帶褊盡。故裂裳、示不相逆。
【読み】
然れども鮒や賄をす。與えずんば已まじ、と。使者を召し、裳帛を裂きて之を與えて、曰く、帶は其れ褊せり、と。言うこころは、帶褊盡す。故に裳を裂きて、相逆わざるを示すなり。
趙孟聞之曰、臨患不忘國、忠也。謂言魯國何罪。
【読み】
趙孟之を聞きて曰く、患えに臨みて國を忘れざるは、忠なり。魯國何の罪あると言うを謂う。
思難不越官、信也。謂言叔出季處。○難、乃旦反。下同。
【読み】
難を思いて官を越えざるは、信なり。叔出でて季處ると言うを謂う。○難は、乃旦反。下も同じ。
圖國忘死、貞也。謂不以貨免。
【読み】
國を圖りて死を忘るるは、貞なり。貨を以て免れざるを謂う。
謀主三者、義也。三者、忠・信・貞。
【読み】
謀三つの者を主とするは、義なり。三つの者とは、忠・信・貞。
有是四者。又可戮乎。幷義而四。
【読み】
是の四つの者有り。又戮す可けんや、と。義を幷せて四つ。
乃請諸楚曰、魯雖有罪、其執事不辟難、執事、謂叔孫。
【読み】
乃ち諸を楚に請いて曰く、魯罪有りと雖も、其の執事難を辟けず、執事は、叔孫を謂う。
畏威而敬命矣。謂不敢辟戮。
【読み】
威を畏れて命を敬せり。敢えて戮を辟けざるを謂う。
子若免之、以勸左右、可也。若子之羣吏、處不辟汚、汚、勞事。
【読み】
子若し之を免して、以て左右を勸めば、可なり。若し子の羣吏、處りて汚を辟けず、汚は、勞事。
出不逃難、不苟免。
【読み】
出でて難を逃れずんば、苟も免れず。
其何患之有。患之所生、汚而不治、難而不守、所由來也。能是二者、又何患焉。不靖其能、其誰從之。安靖賢能、則衆附從。
【読み】
其れ何の患えか之れ有らん。患えの生ずる所は、汚にして治めず、難ありて守らざれば、由り來る所なり。是の二つの者を能くせば、又何ぞ患えん。其の能を靖んぜずんば、其れ誰か之に從わん。賢能を安靖すれば、則ち衆附從す。
魯叔孫豹、可謂能矣。請免之以靖能者。
【読み】
魯の叔孫豹は、能と謂う可し。請う、之を免して以て能者を靖んぜん。
子會而赦有罪、不伐魯。
【読み】
子會して有罪を赦し、魯を伐たず。
又賞其賢、赦叔孫。
【読み】
又其の賢を賞せば、叔孫を赦す。
諸侯其誰不欣焉望楚而歸之、視遠如邇。疆場之邑、一彼一此。何常之有。言今衰世。疆場無定主。
【読み】
諸侯其れ誰か欣焉として楚を望みて之に歸すること、遠きを視るも邇きが如くならざらん。疆場の邑は、一彼一此なり。何の常か之れ有らん。言うこころは、今は衰世。疆場定主無し。
王伯之令也、言三王・五伯、有令德時。
【読み】
王伯の令ありしや、三王・五伯、令德有りし時を言う。
引其封疆、引、正也。正封界。
【読み】
其の封疆を引[ただ]して、引は、正すなり。封界を正す。
而樹之官、樹、立也。立官以守國。
【読み】
之が官を樹てて、樹は、立つなり。官を立てて以て國を守る。
舉之表旗、旌旗以表貴賤。
【読み】
之が表旗を舉げて、旌旗以て貴賤を表す。
而著之制令、爲諸侯作制度法令、使不得相侵犯。
【読み】
之が制令を著し、諸侯の爲に制度法令を作り、相侵犯することを得ざらしむ。
過則有刑、猶不可壹。於是乎虞有三苗、三苗、饕餮。放三危者。
【読み】
過てば則ち刑有るも、猶壹にす可からず。是に於て虞に三苗有り、三苗は、饕餮[とうてつ]。三危に放たる者。
夏有觀・扈、觀國、今頓丘衛縣。扈、在始平鄠縣。書序曰、啓與有扈戰于甘之野。○觀、音館。
【読み】
夏に觀・扈[こ]有り、觀國は、今の頓丘の衛縣。扈は、始平の鄠縣[こけん]に在り。書序に曰く、啓と有扈と甘の野に戰う、と。○觀は、音館。
商有姺・邳、二國、商諸侯。邳、今下邳縣。○姺、西典反。又西禮反。
【読み】
商に姺[せん]・邳有り、二國は、商の諸侯。邳は、今の下邳縣。○姺は、西典反。又西禮反。
周有徐・奄。二國、皆嬴姓。書序曰、成王伐淮夷、遂踐奄。徐卽淮夷。
【読み】
周に徐・奄有り。二國は、皆嬴[えい]姓。書序に曰く、成王淮夷を伐ち、遂に奄を踐[き]る、と。徐は卽淮夷なり。
自無令王、諸侯逐進、遂、猶競也。
【読み】
令王無かりしより、諸侯逐進して、遂は、猶競うのごとし。
狎主齊盟。其又可壹乎。彊弱無常。故更主盟。○更、音庚。
【読み】
狎[こも]々齊盟を主れり。其れ又壹にす可けんや。彊弱常無し。故に更々盟を主る。○更は、音庚。
恤大舍小、足以爲盟主。大、謂簒弑滅亡之禍。
【読み】
大を恤れみ小を舍てば、以て盟主爲るに足らん。大は、簒弑滅亡の禍を謂う。
又焉用之。焉用治小事。○焉、於虔反。
【読み】
又焉ぞ之を用いん。焉ぞ小事を治むることを用いん。○焉は、於虔反。
封疆之削、何國蔑有。主齊盟者、誰能辯焉。辯、治也。
【読み】
封疆の削らる、何れの國にか有ること蔑からん。齊盟を主る者、誰か能く辯[おさ]めん。辯は、治むるなり。
吳・濮有釁、楚之執事、豈其顧盟。吳在東、濮在南。今建寧郡南有濮夷。釁、過也。
【読み】
吳・濮に釁[きん]有らば、楚の執事、豈其れ盟を顧みんや。吳は東に在り、濮は南に在り。今建寧郡の南に濮夷有り。釁は、過ちなり。
莒之疆事、楚勿與知、諸侯無煩、不亦可乎。莒・魯爭鄆、爲日久矣。苟無大害於其社稷、可無亢也。亢、禦。○與、音預。亢、苦浪反。又音剛。
【読み】
莒の疆事、楚與り知ること勿く、諸侯煩無きは、亦可ならずや。莒・魯の鄆を爭うは、日爲ること久し。苟も其の社稷に大害無くんば、亢[ふせ]ぐこと無かる可し。亢は、禦ぐなり。○與は、音預。亢は、苦浪反。又音剛。
去煩宥善、莫不競勸。子其圖之。固請諸楚。楚人許之。乃免叔孫。
【読み】
煩を去り善を宥めば、競勸せざること莫けん。子其れ之を圖れ、と。固く諸を楚に請う。楚人之を許す。乃ち叔孫を免す。
令尹享趙孟、賦大明之首章。大明、詩大雅。首章言文王明明照於下。故能赫赫盛於上。令尹意在首章。故特稱首章、以自光大。○去、起呂反。
【読み】
令尹趙孟を享して、大明の首章を賦す。大明は、詩の大雅。首章に文王明明として下に照らかなり。故に能く赫赫として上に盛んなるを言う。令尹の意首章に在り。故に特に首章を稱して、以て自ら光大にす。○去は、起呂反。
趙孟賦小宛之二章。小宛、詩小雅。二章取其各敬爾儀、天命不又。言天命一去、不可復還。以戒令尹。
【読み】
趙孟小宛の二章を賦す。小宛は、詩の小雅。二章は其の各々爾の儀を敬せよ、天命又せざるというに取る。言うこころは、天命一たび去らば、復還る可からず。以て令尹を戒む。
事畢。趙孟謂叔向曰、令尹自以爲王矣。何如。問將能成否。
【読み】
事畢わる。趙孟叔向[しゅくきょう]に謂いて曰く、令尹自ら王たらんと以爲[おも]えり。何如、と。將能く成らんや否やと問う。
對曰、王弱、令尹疆。其可哉。言可成。
【読み】
對えて曰く、王弱く、令尹疆し。其れ可ならんかな。言うこころは、成る可し。
雖可不終。趙孟曰、何故。對曰、彊以克弱而安之、彊不義也。安於勝君。是彊而不義。
【読み】
可なりと雖も終えじ、と。趙孟曰く、何の故ぞ、と。對えて曰く、彊以て弱に克ちて之に安んずるは、彊くして不義なるなり。君に勝つに安んず。是れ彊くして不義なり。
不義而彊、其斃必速。詩曰、赫赫宗周、襃姒滅之、彊不義也。詩、小雅。襃姒、周幽王后。幽王惑焉、而行不義。遂至滅亡。言雖赫赫盛彊、不義足以滅之。○滅、如字。詩作烕。
【読み】
不義にして彊きは、其の斃ること必ず速やかなり。詩に曰く、赫赫たる宗周も、襃姒之を滅ぼすとは、彊くして不義なるなり。詩は、小雅。襃姒は、周の幽王の后。幽王惑いて、不義を行う。遂に滅亡に至れり。言うこころは、赫赫として盛彊なりと雖も、不義なれば以て之を滅ぼすに足る。○滅は、字の如し。詩烕に作る。
令尹爲王、必求諸侯。晉少懦矣。懦、弱也。○懦、乃亂反。
【読み】
令尹王と爲らば、必ず諸侯を求めん。晉少しく懦[よわ]し。懦は、弱きなり。○懦は、乃亂反。
諸侯將往。若獲諸侯、其虐滋甚。滋、益也。
【読み】
諸侯將に往かんとす。若し諸侯を獲ば、其の虐滋々甚だしからん。滋は、益々なり。
民弗堪也。將何以終。夫以彊取、取不以道。
【読み】
民堪えじ。將に何を以て終わらんとする。夫れ彊を以て取り、取るに道を以てせず。
不義而克、必以爲道。以不義爲道。
【読み】
不義にして克たば、必ず以て道とせん。不義を以て道とす。
道以淫虐、弗可久已矣。爲十三年、楚弑靈王傳。
【読み】
道として以て淫虐ならば、久しかる可からざるのみ、と。十三年、楚靈王を弑する爲の傳なり。
夏、四月、趙孟・叔孫豹・曹大夫入于鄭。會罷過鄭。
【読み】
夏、四月、趙孟・叔孫豹・曹の大夫鄭に入る。會より罷[かえ]りて鄭を過ぐ。
鄭伯兼享之。子皮戒趙孟、戒享期。
【読み】
鄭伯之を兼ね享せんとす。子皮趙孟に戒め、享期を戒む。
禮終。趙孟賦瓠葉。受所戒禮、畢而賦詩。瓠葉、詩小雅。義取古人不以微薄廢禮、雖瓠葉兔首、猶與賓客享之。○瓠、戶故反。
【読み】
禮終わる。趙孟瓠葉[こよう]を賦す。戒むる所の禮を受け、畢わりて詩を賦す。瓠葉は、詩の小雅。義古人微薄を以て禮を廢せず、瓠葉兔首と雖も、猶賓客と與に之を享するに取る。○瓠は、戶故反。
子皮遂戒穆叔、且告之。告以趙孟賦瓠葉。
【読み】
子皮遂に穆叔に戒め、且つ之を告ぐ。告ぐるに趙孟瓠葉を賦するを以てす。
穆叔曰、趙孟欲一獻。瓠葉詩、義取薄物而以獻酬。知欲一獻。
【読み】
穆叔曰く、趙孟一獻を欲するならん。瓠葉の詩、義薄物にして以て獻酬するに取る。一獻を欲することを知る。
子其從之。子皮曰、敢乎。言不敢。
【読み】
子其れ之に從え、と。子皮曰く、敢えてせんや、と。敢えてせざるを言う。
穆叔曰、夫人之所欲也。又何不敢。夫人、趙孟。○夫、音扶。
【読み】
穆叔曰く、夫の人の欲する所なり。又何ぞ敢えてせざらん、と。夫人は、趙孟。○夫は、音扶。
及享、具五獻之籩豆於幕下。朝聘之制、大國之卿、五獻。
【読み】
享に及びて、五獻の籩豆を幕下に具う。朝聘の制、大國の卿は、五獻なり。
趙孟辭。趙孟自以今非聘鄭、故辭五獻。
【読み】
趙孟辭す。趙孟自ら今鄭に聘するに非ざるを以て、故に五獻を辭す。
私於子產、私語。
【読み】
子產に私して、私語なり。
曰、武請於冢宰矣。冢宰、子皮。請、謂賦瓠葉。
【読み】
曰く、武冢宰に請えり、と。冢宰は、子皮。請うとは、瓠葉を賦せしを謂う。
乃用一獻。趙孟爲客。禮終乃宴。卿會公侯、享宴皆折俎、不體薦。○折、之設反。
【読み】
乃ち一獻を用ゆ。趙孟客爲り。禮終わりて乃ち宴す。卿の公侯に會するは、享宴皆折俎ありて、體薦せず。○折は、之設反。
穆叔賦鵲巢。鵲巢、詩召南。言鵲有巢而鳩居之。喩晉君有國、趙孟治之。
【読み】
穆叔鵲巢[じゃくそう]を賦す。鵲巢は、詩の召南。言うこころは、鵲巢有りて鳩之に居る。晉君國を有ち、趙孟之を治むるに喩う。
趙孟曰、武不堪也。又賦采蘩。亦詩召南。義取蘩菜薄物、可以薦公侯、享其信不求其厚也。
【読み】
趙孟曰く、武堪えざるなり、と。又采蘩[さいはん]を賦す。亦詩の召南。義蘩菜は薄物なるも、以て公侯に薦む可し、其の信を享けて其の厚きを求めざるに取るなり。
曰、小國爲蘩。大國省穡而用之、其何實非命。穆叔言、小國微薄猶蘩菜、大國能省愛、用之而不棄、則何敢不從命。穡、愛也。○省、所景反。又所幸反。
【読み】
曰く、小國は蘩爲り。大國省穡して之を用いば、其れ何ぞ實に命に非ざらん、と。穆叔言う、小國微薄にして猶蘩菜のごとくなるも、大國能く省愛して、之を用いて棄てざれば、則ち何ぞ敢えて命に從わざらん、と。穡は、愛するなり。○省は、所景反。又所幸反。
子皮賦野有死麕之卒章。野有死麕、詩召南。卒章曰、舒而脫脫兮。無感我帨兮。無使尨也吠。脫脫、安徐。帨、佩巾。義取君子徐以禮來、無使我失節、而使狗驚吠。喩趙孟以義撫諸侯、無以非禮相加陵。○脫、吐外反。帨、始銳反。
【読み】
子皮野有死麕[やゆうしきん]の卒章を賦す。野有死麕は、詩の召南。卒章に曰く、舒[しず]かにして脫脫[たいたい]たり。我が帨[ぜい]を感[うご]かすこと無かれ。尨[いぬ]をして吠えしむること無かれ、と。脫脫は、安徐。帨は、佩巾。義君子徐[しず]かに禮を以て來り、我をして節を失わしめて、狗をして驚吠せしむること無かれというに取る。趙孟義を以て諸侯を撫して、非禮を以て相加陵すること無きに喩う。○脫は、吐外反。帨は、始銳反。
趙孟賦常棣。常棣、詩小雅。取其凡今之人、莫如兄弟。言欲親兄弟之國。
【読み】
趙孟常棣[じょうてい]を賦す。常棣は、詩の小雅。其の凡そ今の人、兄弟に如くは莫しというに取る。言うこころは、兄弟の國を親せんことを欲す。
且曰、吾兄弟比以安、尨也可使無吠。受子皮之詩。○比、毗志反。下同。
【読み】
且つ曰く、吾が兄弟比して以て安んぜば、尨や吠ゆること無からしむ可し、と。子皮の詩を受く。○比は、毗志反。下も同じ。
穆叔・子皮及曹大夫興拜。三大夫、皆兄弟國。興、起也。
【読み】
穆叔・子皮曹の大夫と興[た]ちて拜す。三大夫は、皆兄弟の國。興は、起つなり。
舉兕爵曰、小國賴子、知免於戾矣。兕爵、所以罰不敬。言小國蒙趙孟德比以安、自知免此罰戮。
【読み】
兕爵[じしゃく]を舉げて曰く、小國子に賴りて、戾[つみ]に免ることを知れり、と。兕爵は、不敬を罰する所以なり。言うこころは、小國趙孟の德を蒙り比して以て安く、自ら此の罰戮を免るるを知る。
飮酒樂。趙孟出曰、吾不復此矣。不復見此樂。○樂、音洛。復、去聲。下同。
【読み】
酒を飮みて樂しむ。趙孟出でて曰く、吾れ此を復びせじ、と。復此の樂を見じ。○樂は、音洛。復は、去聲。下も同じ。
天王使劉定公勞趙孟於潁、館於雒汭。王、周景王。定公、劉夏。潁水、出陽城縣。雒汭、在河南鞏縣南。水曲流爲汭。
【読み】
天王劉定公をして趙孟を潁に勞わしめ、雒汭[らくぜい]に館す。王は、周の景王。定公は、劉夏。潁水は、陽城縣に出づ。雒汭は、河南鞏縣の南に在り。水の曲流を汭と爲す。
劉子曰、美哉禹功、見河雒而思禹功。
【読み】
劉子曰く、美なるかな禹の功、河雒を見て禹の功を思うなり。
明德遠矣。微禹、吾其魚乎。吾與子弁冕端委、以治民臨諸侯、禹之力也。弁冕、冠也。端委、禮衣。言今得共服冠冕有國家者、皆由禹之力。
【読み】
明德遠し。禹微かりせば、吾れ其れ魚ならんか。吾と子と弁冕端委して、以て民を治め諸侯に臨むは、禹の力なり。弁冕は、冠なり。端委は、禮衣。言うこころは、今共に冠冕を服して國家を有つことを得るは、皆禹の力に由る。
子盍亦遠績禹功、而大庇民乎。勸趙孟使纂禹功。
【読み】
子盍ぞ亦遠く禹の功を績[つ]ぎて、大いに民を庇わざるや、と。趙孟を勸めて禹の功を纂[つ]がしむ。
對曰、老夫罪戾是懼。焉能恤遠。吾儕偸食、朝不謀夕。何其長也。言欲苟免目前。不能念長久。
【読み】
對えて曰く、老夫罪戾を是れ懼る。焉ぞ能く遠きを恤えん。吾儕は偸食[とうしょく]して、朝夕を謀らず。何ぞ其れ長きをせんや、と。言うこころは、苟も目前を免れんことを欲す。長久を念うこと能わず。
劉子歸以語王曰、諺所謂老將知而耄及之者、八十曰耄。耄、亂也。○知、音智。
【読み】
劉子歸りて以て王に語りて曰く、諺に所謂老いて將に知ならんとして耄之に及ぶとは、八十を耄と曰う。耄は、亂るるなり。○知は、音智。
其趙孟之謂乎。爲晉正卿、以主諸侯。而儕於隸人、朝不謀夕。言其自比於賤人、而無恤民之心。
【読み】
其れ趙孟を謂うか。晉の正卿として、以て諸侯を主れり。而るに隸人に儕[ひと]しくして、朝夕を謀らずという。言うこころは、其れ自ら賤人に比して、民を恤うるの心無し。
棄神人矣。民爲神主。不恤民。故神人皆去。
【読み】
神人に棄てられたり。民は神の主爲り。民を恤えず。故に神人皆去つ。
神怒民叛、何以能久。趙孟不復年矣。言將死。不復見明年。
【読み】
神怒り民叛かば、何を以て能く久しからん。趙孟復年せじ。言うこころは、將に死せんとす。復明年を見じ。
神怒、不歆其祀、民叛、不卽其事。祀事不從、又何以年。爲此冬趙孟卒起本。
【読み】
神怒れば、其の祀を歆[う]けず、民叛けば、其の事に卽かず。祀事從わざれば、又何を以て年せん、と。此の冬趙孟卒する爲の起本なり。
叔孫歸。虢會歸。
【読み】
叔孫歸る。虢の會より歸るなり。
曾夭御季孫以勞之。旦及日中不出。恨季孫伐莒、使己幾被戮。
【読み】
曾夭季孫に御して以て之を勞う。旦より日中に及べども出でず。季孫莒を伐ち、己をして幾ど戮を被らしめんとするを恨む。
曾夭謂曾阜、曾阜、叔孫家臣。
【読み】
曾夭曾阜に謂いて、曾阜は、叔孫の家臣。
曰、旦及日中。吾知罪矣。魯以相忍爲國也。忍其外、不忍其内、焉用之。欲受楚戮、是忍其外。日中不出、是不忍其内。
【読み】
曰く、旦より日中に及べり。吾れ罪を知れり。魯は相忍ぶを以て國を爲せり。其の外に忍びて、其の内に忍びざること、焉ぞ之を用いん、と。楚の戮を受けんと欲するは、是れ其の外に忍ぶなり。日中まで出でざるは、是れ其の内に忍びざるなり。
阜曰、數月於外。言叔孫勞役在外數月。○數、所主反。
【読み】
阜曰く、外に數月せり。言うこころは、叔孫勞役して外に在ること數月なり。○數は、所主反。
一旦於是、庸何傷。賈而欲贏、而惡嚻乎。言譬如商賈求贏利者、不得惡諠嚻之聲。○賈、音古。惡、烏路反。下同。嚻、許驕反。又五高反。
【読み】
是に一旦するも、庸て何ぞ傷まん。賈して贏[えい]を欲して、嚻[ごう]を惡まんや、と。言うこころは、譬えば商賈の贏利を求むる者の、諠嚻の聲を惡むことを得ざるが如し。○賈は、音古。惡は、烏路反。下も同じ。嚻は、許驕反。又五高反。
阜謂叔孫曰、可以出矣。叔孫指楹曰、雖惡是、其可去乎。乃出見之。楹、柱也。以諭魯有季孫、猶屋有柱。○去、起呂反。
【読み】
阜叔孫に謂いて曰く、以て出づ可し、と。叔孫楹を指して曰く、是を惡むと雖も、其れ去る可けんや、と。乃ち出でて之を見る。楹は、柱なり。以て魯に季孫有るは、猶屋の柱有るがごときに諭う。○去は、起呂反。
鄭徐吾犯之妹美。犯、鄭大夫。
【読み】
鄭の徐吾犯の妹美なり。犯は、鄭の大夫。
公孫楚聘之矣。楚、子南。穆公孫。
【読み】
公孫楚之を聘す。楚は、子南。穆公の孫。
公孫黑又使强委禽焉。禽、鴈也。納采用鴈。○强、其丈反。
【読み】
公孫黑又强いて禽を委せしむ。禽は、鴈なり。納采に鴈を用ゆ。○强は、其丈反。
犯懼、告子產。子產曰、是國無政。非子之患也。唯所欲與。犯請於二子、請使女擇焉。皆許之。子皙盛飾入、布幣而出。布陳贄幣。子皙、公孫黑。
【読み】
犯懼れて、子產に告ぐ。子產曰く、是れ國に政無きなり。子の患えには非ざるなり。唯與えんと欲する所のままなり、と。犯二子に請えらく、請う、女をして擇ばしめん、と。皆之を許す。子皙盛飾して入り、幣を布きて出づ。贄幣を布陳す。子皙は、公孫黑。
子南戎服入、左右射、超乘而出。女自房觀之、曰、子皙信美矣。抑子南夫也。言丈夫。○乘、繩證反。
【読み】
子南戎服して入り、左右に射、超乘して出づ。女房より之を觀て、曰く、子皙は信に美なり。抑々子南は夫なり。言うこころは、丈夫なり。○乘は、繩證反。
夫夫婦婦、所謂順也。適子南氏。
【読み】
夫夫たり婦婦たるは、所謂順なり、と。子南氏に適く。
子皙怒。旣而櫜甲以見子南。欲殺之而取其妻。子南知之、執戈逐之、及衝、擊之以戈。衝、交道。
【読み】
子皙怒る。旣にして櫜甲[こうこう]して以て子南を見る。之を殺して其の妻を取らんと欲す。子南之を知り、戈を執りて之を逐い、衝に及びて、之を擊つに戈を以てす。衝は、交道。
子皙傷而歸。告大夫曰、我好見之、不知其有異志也。故傷。大夫皆謀之。子產曰、直鈞、幼賤有罪。罪在楚也。先聘、子南直也。子南用戈、子皙直也。子產力未能討。故鈞其事、歸罪於楚。○好、如字。一呼報反。
【読み】
子皙傷つきて歸る。大夫に告げて曰く、我れ之を好見して、其の異志有るを知らざりき。故に傷けり、と。大夫皆之を謀る。子產曰く、直鈞しきは、幼賤に罪有り。罪は楚に在り、と。先ず聘するは、子南の直なり。子南戈を用ゆるは、子皙の直なり。子產力未だ討ずること能わず。故に其の事を鈞しくして、罪を楚に歸するなり。○好は、字の如し。一に呼報反。
乃執子南而數之曰、國之大節有五。女皆奸之。奸、犯也。○女、音汝。下皆同。
【読み】
乃ち子南を執えて之を數[せ]めて曰く、國の大節五有り。女皆之を奸せり。奸は、犯すなり。○女は、音汝。下も皆同じ。
畏君之威、聽其政、尊其貴、事其長、養其親。五者所以爲國也。今君在國、女用兵焉、不畏威也。奸國之紀、不聽政也。奸國之紀、謂傷人。○長、丁丈反。養、如字。
【読み】
君の威を畏れ、其の政を聽き、其の貴を尊び、其の長に事え、其の親を養う。五つの者は國を爲むる所以なり。今君國に在すに、女兵を用ゆるは、威を畏れざるなり。國の紀を奸すは、政を聽かざるなり。國の紀を奸すとは、人を傷つくるを謂う。○長は、丁丈反。養は、字の如し。
子皙上大夫、女嬖大夫、而弗下之、不尊貴也。幼而不忌、不事長也。忌、畏也。
【読み】
子皙は上大夫、女は嬖大夫にして、之に下らざるは、貴を尊ばざるなり。幼にして忌[おそ]れざるは、長に事えざるなり。忌は、畏るるなり。
兵其從兄、不養親也。君曰、余不女忍殺。宥女以遠。勉速行乎。無重而罪。五月、庚辰、鄭放游楚於吳。
【読み】
其の從兄を兵するは、親を養わざるなり。君曰く、余女を殺すに忍びず。女を宥むるに遠を以てす、と。勉めて速やかに行[さ]らんか。而の罪を重ぬること無かれ、と。五月、庚辰[かのえ・たつ]、鄭游楚を吳に放つ。
將行子南、子產咨於大叔。大叔、游楚之兄子。○從兄、如字。又才用反。
【読み】
將子南を行らんとするに、子產大叔に咨[と]う。大叔は、游楚の兄の子。○從兄は、字の如し。又才用反。
大叔曰、吉不能亢身。焉能亢宗。亢、蔽也。○亢、苦浪反。
【読み】
大叔曰く、吉や身を亢[おお]うこと能わず。焉ぞ能く宗を亢わん。亢は、蔽うなり。○亢は、苦浪反。
彼國政也。非私難也。子圖鄭國。利則行之。又何疑焉。周公殺管叔而蔡蔡叔。蔡、放也。○難、乃旦反。蔡蔡、上素葛反。下如字。
【読み】
彼は國政なり。私の難に非ざるなり。子は鄭國を圖る。利ならば則ち之を行え。又何ぞ疑わん。周公は管叔を殺して蔡叔を蔡[はな]てり。蔡は、放つなり。○難は、乃旦反。蔡蔡は、上は素葛反。下は字の如し。
夫豈不愛。王室故也。吉若獲戾、子將行之。何有於諸游。爲二年、鄭殺公孫黑傳。○夫、音扶。
【読み】
夫れ豈愛せざらんや。王室の故なり。吉若し戾を獲ば、子將に之を行らんとす。諸游に何か有らん、と。二年、鄭公孫黑を殺す爲の傳なり。○夫は、音扶。
秦后子有寵於桓、如二君於景。后子、秦桓公子、景公母弟鍼也。其權寵如兩君。
【読み】
秦の后子桓に寵有りて、景に二君の如し。后子は、秦の桓公の子、景公の母弟鍼なり。其の權寵兩君の如し。
其母曰、弗去懼選。選、數也。恐景公數其罪而加戮。○選、息轉反。又素短反。數、所主反。
【読み】
其の母曰く、去らずんば懼らくは選[かぞ]えられん、と。選は、數うるなり。恐らくは景公其の罪を數えて戮を加えん。○選は、息轉反。又素短反。數は、所主反。
癸卯、鍼適晉。其車千乘。
【読み】
癸卯[みずのと・う]、鍼晉に適く。其の車千乘あり。
書曰秦伯之弟鍼出奔晉、罪秦伯也。罪失敎。
【読み】
書して秦伯の弟鍼出でて晉に奔ると曰うは、秦伯を罪するなり。敎えを失うを罪す。
后子享晉侯。爲晉侯設享禮。
【読み】
后子晉侯を享す。晉侯の爲に享禮を設く。
造舟于河、造舟爲梁、通秦・晉之道。○造、七報反。
【読み】
河に造舟し、造舟して梁と爲して、秦・晉の道を通ず。○造は、七報反。
十里舍車、一舍八乘、爲八反之備。
【読み】
十里に車を舍き、一舍に八乘、八反の備えを爲す。
自雍及絳。雍・絳相去千里、用車八百乘。○雍、於用反。
【読み】
雍より絳に及ぶ。雍・絳相去ること千里、車八百乘を用ゆ。○雍は、於用反。
歸取酬幣、備九獻之儀。始禮自齎其一。故續送其八酬酒幣。
【読み】
歸りて酬幣を取らしめ、九獻の儀を備うる。始禮は自ら其の一つを齎[もたら]す。故に其の八つの酬酒幣を續ぎ送るなり。
終事八反。每十里以八乘車、各以次載幣、相授而還。不徑至。故言八反。千里用車八百乘、其二百乘以自隨。故言千乘。傳言秦鍼之出、極奢富以成禮、欲盡敬於所赴。
【読み】
事を終うるまで八反す。十里每に八乘の車を以てして、各々次を以て幣を載せて、相授けて還る。徑[ただ]ちに至らず。故に八反と言う。千里に車八百乘を用い、其の二百乘は以て自ら隨う。故に千乘と言う。傳秦鍼の出づる、奢富を極めて以て禮を成して、敬を赴[つ]ぐる所に盡くせんと欲するを言う。
司馬侯問焉曰、子之車盡於此而已乎。對曰、此之謂多矣。若能少此、吾何以得見。言己坐車多故出奔。○見、賢遍反。
【読み】
司馬侯問いて曰く、子の車此に盡きたるのみか、と。對えて曰く、此を多しと謂えり。若し能く此より少なくば、吾れ何を以て見ゆることを得ん、と。言うこころは、己車の多き故に坐して出奔す。○見は、賢遍反。
女叔齊以告公、叔齊、司馬侯。
【読み】
女叔齊以て公に告げ、叔齊は、司馬侯。
且曰、秦公子必歸。臣聞、君子能知其過、必有令圖。令圖、天所贊也。后子見趙孟。趙孟曰、吾子其曷歸。問何時當歸。
【読み】
且つ曰く、秦の公子は必ず歸らん。臣聞く、君子能く其の過ちを知れば、必ず令圖有り、と。令圖は、天の贊くる所なり、と。后子趙孟を見る。趙孟曰く、吾子其れ曷[いつ]か歸らん、と。何の時か當に歸るべきと問う。
對曰、鍼懼選於寡君、是以在此。將待嗣君。趙孟曰、秦君何如。對曰、無道。趙孟曰、亡乎。對曰、何爲。一世無道、國未艾也。艾、絕也。○艾、魚廢反。
【読み】
對えて曰く、鍼寡君に選えられんことを懼れ、是を以て此に在り。將に嗣君を待たんとす、と。趙孟曰く、秦君は何如、と。對えて曰く、無道なり、と。趙孟曰く、亡びんか、と。對えて曰く、何爲れぞ。一世の無道にしては、國未だ艾[た]えざるなり。艾は、絕えるなり。○艾は、魚廢反。
國於天地、有與立焉。言欲輔助之者多。
【読み】
天地に國するは、與に立つること有り。言うこころは、之を輔助せんと欲する者多し。
不數世淫、弗能斃也。趙孟曰、天乎。對曰、有焉。趙孟曰、其幾何。對曰、鍼聞之、國無道而年穀和熟、天贊之也。贊、佐助也。
【読み】
數世の淫ならざれば、斃るること能わざるなり、と。趙孟曰く、天か、と。對えて曰く、有り、と。趙孟曰く、其れ幾何ぞ、と。對えて曰く、鍼之を聞く、國無道にして年穀和熟するは、天の之を贊くるなり、と。贊は、佐助なり。
鮮不五稔。鮮、少也。少尙當歷五年。多則不啻。
【読み】
鮮きも五稔ならざらんや、と。鮮は、少なきなり。少なきも尙當に五年を歷るべし。多くば則ち啻[ただ]ならず。
趙孟視蔭曰、朝夕不相及。誰能待五。蔭、日景也。趙孟意衰、以日景自喩。故言朝夕不相及、誰能待五。○蔭、於金反。景、如字。又於領反。
【読み】
趙孟蔭を視て曰く、朝夕相及ばず。誰か能く五を待たん、と。蔭は、日景なり。趙孟意衰え、日景を以て自ら喩う。故に朝夕相及ばず、誰か能く五を待たんと言う。○蔭は、於金反。景は、字の如し。又於領反。
后子出而告人曰、趙孟將死矣。主民、翫歲而愒日。翫・愒、皆貪也。○愒、苦蓋反。
【読み】
后子出でて人に告げて曰く、趙孟將に死せんとす。民を主りて、歲を翫[むさぼ]りて日を愒[むさぼ]る。翫[がん]・愒[かい]は、皆貪るなり。○愒は、苦蓋反。
其與幾何。言不能久。○與、如字。又預。
【読み】
其れ與に幾何かあらん、と。言うこころは、久しきこと能わず。○與は、字の如し。又預。
鄭爲游楚亂故、游楚、子南。
【読み】
鄭游楚の亂の爲の故に、游楚は、子南。
六月、丁巳、鄭伯及其大夫盟于公孫段氏。罕虎・公孫僑・公孫段・印段・游吉・駟帶私盟于閨門之外。實薰隧。閨門、鄭城門。薰隧、門外道名。實之者、爲明年、子產數子皙罪、稱薰隧盟起本。
【読み】
六月、丁巳、鄭伯其の大夫と公孫段氏に盟う。罕虎・公孫僑・公孫段・印段・游吉・駟帶私に閨門の外に盟う。實は薰隧なり。閨門は、鄭の城門。薰隧は、門外の道の名。之を實にするは、明年、子產子皙の罪を數めて、薰隧の盟を稱する爲の起本なり。
公孫黑强與於盟、使大史書其名、且曰七子。自欲同於六卿。故曰七子。○强、其丈反。與、音預。
【読み】
公孫黑强いて盟に與り、大史をして其の名を書さしめ、且つ七子と曰う。自ら六卿に同じからんと欲す。故に七子と曰う。○强は、其丈反。與は、音預。
子產弗討。子皙强。討之、恐亂國。
【読み】
子產討ぜず。子皙强し。之を討ぜば、恐らくは國を亂らん。
晉中行穆子敗無終及羣狄于大原。卽大鹵也。無終、山戎。
【読み】
晉の中行穆子無終と羣狄とを大原に敗りぬ。卽ち大鹵なり。無終は、山戎。
崇卒也。崇、衆也。
【読み】
卒を崇[あつ]めてなり。崇は、衆なり。
*「衆」は、漢籍國字解全書では「聚」。
將戰、魏舒曰、彼徒我車、所遇又阨。地險不便車。○阨、於懈反。
【読み】
將に戰わんとするとき、魏舒曰く、彼は徒我は車、遇う所又阨[あい]なり。地險にして車に便ならず。○阨は、於懈反。
以什共車、必克。更增十人、以當一車之用。○共、音恭。
【読み】
什を以て車に共せば、必克たん。更に十人を增して、以て一車の用に當つるなり。○共は、音恭。
困諸阨、又克。車每困於阨道。今去車。故爲必克。○去、起呂反。
【読み】
諸を阨に困しめば、又克たん。車每[つね]に阨道に困しむ。今車を去る。故に必ず克つとす。○去は、起呂反。
請皆卒。去車爲步卒。
【読み】
請う、皆卒とせん。車を去てて步卒とす。
自我始。乃毀車以爲行、魏舒先自毀其屬車爲步陳。○行、戶郎反。陳、直覲反。下五陳・未陳同。
【読み】
我より始めん、と。乃ち車を毀りて以て行を爲し、魏舒先ず自ら其の屬車を毀りて步陳と爲す。○行は、戶郎反。陳は、直覲反。下の五陳・未陳も同じ。
五乘爲三伍。乘車者車三人。五乘、十五人。今改去車、更以五人爲伍、分爲三伍。○五乘、繩證反。
【読み】
五乘を三伍と爲す。車に乘る者車ごとに三人なり。五乘は、十五人なり。今改めて車を去り、更に五人を以て伍と爲し、分けて三伍と爲す。○五乘は、繩證反。
荀吳之嬖人不肯卽卒。斬以徇。魏舒輒斬之。荀吳不恨。所以能立功。
【読み】
荀吳の嬖人肯えて卒に卽かず。斬りて以て徇[とな]う。魏舒輒ち之を斬る。荀吳恨みず。能く功を立つる所以なり。
爲五陳以相離、兩於前、伍於後、專爲右角、參爲左角、偏爲前拒、皆臨時處置之名。○拒、九甫反。
【読み】
五陳を爲して以て相離ち、兩を前に、伍を後に、專を右角と爲し、參を左角と爲し、偏を前拒と爲して、皆時に臨みて處置するの名。○拒は、九甫反。
以誘之。翟人笑之。笑其失常。
【読み】
以て之を誘く。翟人之を笑う。其の常を失うを笑う。
未陳而薄之、大敗之。傳言苟吳能用善謀。
【読み】
未だ陳せずして之に薄[せま]り、大いに之を敗れり。傳苟吳能く善謀を用ゆるを言う。
莒展輿立、而奪羣公子秩。公子召去疾于齊。秋、齊公子鉏納去疾。齊雖納去疾、莒人先召之。故從國逆例書入。去疾奔齊、在襄三十一年。
【読み】
莒の展輿立ちて、羣公子の秩を奪う。公子去疾を齊より召ぶ。秋、齊の公子鉏去疾を納る。齊去疾を納ると雖も、莒人先ず之を召ぶ。故に國逆の例に從いて入ると書す。去疾齊に奔るは、襄三十一年に在り。
展輿奔吳。吳外孫。
【読み】
展輿吳に奔る。吳の外孫なればなり。
叔弓帥師疆鄆田。因莒亂也。此春取鄆、今正其疆界。
【読み】
叔弓師を帥いて鄆の田を疆う。莒の亂に因りてなり。此の春鄆を取り、今其の疆界を正すなり。
於是莒務婁・瞀胡及公子滅明、以大厖與常儀靡奔齊。三子、展輿黨。大厖・常儀靡、莒二邑。○務、如字。又音謀。一音無。瞀、音茂。一音謀。
【読み】
是に於て莒の務婁[ぼうろう]・瞀胡[ぼうこ]と公子滅明と、大厖[たいぼう]と常儀靡とを以[い]て齊に奔る。三子は、展輿の黨。大厖・常儀靡は、莒の二邑。○務は、字の如し。又音謀。一に音無。瞀は、音茂。一に音謀。
君子曰、莒展之不立、棄人也夫。奪羣公子秩、是弃人。
【読み】
君子曰く、莒展の立たざるは、人を棄てたるなり。羣公子の秩を奪うは、是れ人を弃つるなり。
人可棄乎。詩曰、無競維人、善矣。詩、周頌。言惟得人則國家彊。
【読み】
人棄つ可けんや。詩に曰く、維れ人より競[つよ]きは無しとは、善し、と。詩は、周頌。言うこころは、惟れ人を得れば則ち國家彊し。
晉侯有疾。鄭伯使公孫僑如晉聘、且問疾。叔向問焉曰、寡君之疾病。卜人曰、實沈・臺駘爲祟。史莫之知。敢問此何神也。子產曰、昔高辛氏有二子。伯曰閼伯、季曰實沈。高辛、帝嚳。○駘、他才反。閼、於葛反。嚳、音酷。
【読み】
晉侯疾有り。鄭伯公孫僑をして晉に如きて聘し、且つ疾を問わしむ。叔向問いて曰く、寡君の疾病なり。卜人曰く、實沈・臺駘祟りを爲す、と。史之を知るもの莫し。敢えて問う、此れ何れの神ぞや、と。子產曰く、昔高辛氏に二子有り。伯を閼伯[あつはく]と曰い、季を實沈と曰う。高辛は、帝嚳[ていこく]。○駘は、他才反。閼は、於葛反。嚳は、音酷。
居于曠林、不相能也。曠林、地闕。○能、如字。又奴代反。
【読み】
曠林に居りて、相能[むつ]まじからず。曠林は、地闕く。○能は、字の如し。又奴代反。
日尋干戈、以相征討。尋、用也。
【読み】
日々に干戈を尋[もち]いて、以て相征討す。尋は、用ゆるなり。
后帝不臧、后帝、堯也。臧、善也。
【読み】
后帝臧[よみ]せず、后帝は、堯なり。臧は、善なり。
遷閼伯于商丘、主辰。商丘、宋地。主祀辰星。辰、大火也。
【読み】
閼伯を商丘に遷して、辰を主らしむ。商丘は、宋の地。辰星を祀ることを主る。辰は、大火なり。
商人是因。故辰爲商星。商人、湯先相土。封商丘、因閼伯故國祀辰星。
【読み】
商人是に因る。故に辰を商の星と爲す。商人は、湯の先相土なり。商丘に封ぜられ、閼伯の故國に因りて辰星を祀れり。
遷實沈于大夏、主參。大夏、今晉陽縣。○參、音森。下同。
【読み】
實沈を大夏に遷して、參を主らしむ。大夏は、今の晉陽縣。○參は、音森。下も同じ。
唐人是因、以服事夏・商。唐人、若劉累之等。累遷魯縣、此在大夏。
【読み】
唐人是に因りて、以て夏・商に服事す。唐人とは、劉累の等の若きなり。累は魯縣に遷り、此は大夏に在り。
其季世曰唐叔虞。唐人之季世、其君曰叔虞。
【読み】
其の季世を唐叔虞と曰う。唐人の季世にして、其の君を叔虞と曰う。
當武王邑姜方震大叔、邑姜、武王后。齊大公之女。懷胎爲震。大叔、成王之弟、叔虞。○震、音振。又音申。大、音泰。
【読み】
武王の邑姜の方に大叔を震[はら]めるに當たり、邑姜は、武王の后。齊の大公の女。懷胎を震と爲す。大叔は、成王の弟、叔虞。○震は、音振。又音申。大は、音泰。
夢帝謂己、余命而子曰虞。帝、天。取唐君之名。
【読み】
夢に帝己に謂えらく、余而[なんじ]の子を命[なづ]けて虞と曰わん。帝は、天。唐君の名を取るなり。
將與之唐、屬諸參、而蕃育其子孫。及生、有文在其手曰虞。遂以命之。及成王滅唐而封大叔焉。故參爲晉星。叔虞封唐。是爲晉侯。○屬、之玉反。蕃、音煩。
【読み】
將に之に唐を與え、諸を參に屬して、其の子孫を蕃育せんとす、と。生まるるに及びて、文の其の手に在る有りて虞と曰う。遂に以て之に命けぬ。成王の唐を滅ぼすに及びて大叔を封ぜり。故に參を晉の星と爲す。叔虞唐に封ぜらる。是を晉侯と爲す。○屬は、之玉反。蕃は、音煩。
由是觀之、則實沈、參神也。
【読み】
是に由りて之を觀れば、則ち實沈は、參の神なり。
昔金天氏有裔子曰昧。爲玄冥師、生允格・臺駘。金天氏、帝少暭。裔、遠也。玄冥、水官。昧爲水官之長。
【読み】
昔金天氏に裔子有り昧と曰う。玄冥の師と爲り、允格[いんかく]・臺駘を生む。金天氏は、帝少暭。裔は、遠きなり。玄冥は、水官。昧を水官の長と爲す。
臺駘能業其官、纂昧之業。
【読み】
臺駘能く其の官を業にし、昧の業を纂ぐ。
宣汾・洮、宣、猶通也。汾・洮、二水名。○洮、他刀反。
【読み】
汾・洮[とう]を宣[とお]し、宣は、猶通すのごとし。汾・洮は、二水の名。○洮は、他刀反。
障大澤、陂障之。○障、之尙反。又音章。
【読み】
大澤に障して、之に陂障す。○障は、之尙反。又音章。
以處大原。大原、晉陽也。臺駘之所居。
【読み】
以て大原に處れり。大原は、晉陽なり。臺駘の居る所。
帝申嘉之、封諸汾川、帝、顓頊。
【読み】
帝申ねて之を嘉して、諸を汾川に封じ、帝は、顓頊[せんぎょく]。
沈・姒・蓐・黃實守其祀、四國、臺駘之後。○沈、音審。
【読み】
沈[しん]・姒・蓐[じょく]・黃實に其の祀を守りしを、四國は、臺駘の後。○沈は、音審。
今晉主汾而滅之矣。滅四國。
【読み】
今晉汾を主りて之を滅ぼせり。四國を滅ぼす。
由是觀之、則臺駘、汾神也。
【読み】
是に由りて之を觀れば、則ち臺駘は、汾の神なり。
抑此二者、不及君身。山川之神、則水旱癘疫之災、於是乎禜之、有水旱之災、則禜祭山川之神、若臺駘者。周禮、四曰禜祭。爲營欑、用幣、以祈福祥。○禜、音詠。欑、子管反。
【読み】
抑々此の二りの者は、君の身に及ばず。山川の神は、則ち水旱癘疫の災あれば、是に於て之を禜[えい]し、水旱の災有れば、則ち山川の神、臺駘の若き者を禜祭するなり。周禮に、四に禜祭と曰う。營欑[えいさん]を爲し、幣を用いて、以て福祥を祈る。○禜は、音詠。欑は、子管反。
日月星辰之神、則雪霜風雨之不時、於是乎禜之。星辰之神、若實沈者。
【読み】
日月星辰の神は、則ち雪霜風雨の時ならざれば、是に於て之を禜するのみ。星辰の神は、實沈の若き者。
若君身、則亦出入・飮食・哀樂之事也。山川星辰之神、又何爲焉。言實沈・臺駘不爲君疾。
【読み】
君の身の若きは、則ち亦出入・飮食・哀樂の事なり。山川星辰の神、又何ぞ爲さん。言うこころは、實沈・臺駘君の疾を爲さず。
僑聞之、君子有四時。朝以聽政、聽國政。
【読み】
僑之を聞く、君子に四時有り。朝は以て政を聽き、國政を聽く。
晝以訪問、問可否。
【読み】
晝は以て訪問し、可否を問う。
夕以脩令、念所施。
【読み】
夕は以て令を脩め、施す所を念う。
夜以安身。於是乎節宣其氣、宣、散也。
【読み】
夜は以て身を安んず、と。是に於て其の氣を節宣して、宣は、散るなり。
勿使有所壅閉湫底、以露其體、湫、集也。底、滯也。露、羸也。壹之則血氣集滯、而體羸露。○壅、於勇反。湫、子小反。又音秋。底、丁禮反。
【読み】
壅閉湫底する所有りて、以て其の體を露[つか]らし、湫は、集まるなり。底は、滯るなり。露は、羸[つか]れるなり。之を壹にすれば則ち血氣集滯して、體羸露[るいろ]す。○壅は、於勇反。湫は、子小反。又音秋。底は、丁禮反。
玆心不爽、而昏亂百度。玆、此也。爽、明也。百度、百事之節。
【読み】
玆の心爽ならずして、百度を昏亂せしむること勿し。玆は、此なり。爽は、明らかなり。百度は、百事の節。
今無乃壹之。同四時也。
【読み】
今乃ち之を壹にすること無からんや。四時を同じくするなり。
則生疾矣。
【読み】
則ち疾を生じぬ。
僑又聞之、内官不及同姓。内官、嬪御。
【読み】
僑又之を聞く、内官は同姓に及ばず。内官は、嬪御。
其生不殖、殖、長也。
【読み】
其の生殖せず、殖は、長ずるなり。
美先盡矣、則相生疾。同姓之相與、先美也。美極則盡。盡則生疾。
【読み】
美先ず盡くれば、則ち疾を相生ず。同姓の相與するは、先ず美なり。美極まれば則ち盡く。盡くれば則ち疾を生ず。
君子是以惡之。故志曰、買妾不知其姓、則卜之。違此二者、古之所愼也。壹四時、取同姓、二者古人所愼。○惡、如字。又烏路反。取、七住反。
【読み】
君子是を以て之を惡む、と。故に志に曰く、妾を買うに其の姓を知らざれば、則ち之を卜う、と。此の二つの者に違うは、古の愼む所なり。四時を壹にし、同姓を取る、二つの者は古人の愼む所なり。○惡は、字の如し。又烏路反。取は、七住反。
男女辨姓、禮之大司也。辨、別也。
【読み】
男女姓を辨つは、禮の大司なり。辨は、別つなり。
今君内實有四姬焉。同姓姬四人。
【読み】
今君の内實に四姬有り。同姓の姬四人。
其無乃是也乎。若由是二者、弗可爲也已。爲、治也。
【読み】
其れ乃ち是なること無からんや。若し是の二つの者に由らば、爲む可からざるのみ。爲は、治むるなり。
四姬有省猶可。無則必生疾矣。據異姓、去同姓。故言省。○省、所景反。又所幸反。
【読み】
四姬を省くこと有らば猶可なり。無くば則ち必ず疾を生ぜん、と。異姓に據りて、同姓を去る。故に省くと言う。○省は、所景反。又所幸反。
叔向曰、善哉。肸未之聞也。此皆然矣。
【読み】
叔向曰く、善いかな。肸[きつ]未だ之を聞かざりき。此れ皆然り、と。
叔向出。行人揮送之。送叔向。
【読み】
叔向出づ。行人揮之を送る。叔向を送る。
叔向問鄭故焉、且問子皙。對曰、其與幾何。言將敗不久。○與、如字。又音預。
【読み】
叔向鄭の故を問い、且つ子皙を問う。對えて曰く、其れ幾何かあらん。言うこころは、將に敗れんとすること久しからず。○與は、字の如し。又音預。
*頭注に、「按與、語助也。一說、與、助也。言助之者少也。」とある。
無禮而好陵人、怙富而卑其上。弗能久矣。爲明年、鄭殺公孫黑傳。
【読み】
無禮にして人を陵ぐことを好み、富を怙[たの]みて其の上を卑しむ。久しきこと能わじ、と。明年、鄭公孫黑を殺す爲の傳なり。
晉侯聞子產之言曰、博物君子也。重賄之。
【読み】
晉侯子產の言を聞きて曰く、博物の君子なり、と。重く之に賄う。
晉侯求醫於秦。秦伯使醫和視之。曰、疾不可爲也。是謂近女室。疾如蠱。蠱、惑疾。
【読み】
晉侯醫を秦に求む。秦伯醫和をして之を視せしむ。曰く、疾爲む可からざるなり。是を女室に近づくと謂う。疾蠱の如し。蠱は、惑疾。
非鬼非食、惑以喪志。惑女色而失志。○喪、息浪反。
【読み】
鬼に非ず食に非ず、惑いて以て志を喪えり。女色に惑いて志を失う。○喪は、息浪反。
良臣將死。天命不祐。良臣不匡救君過。故將死、而不爲天所祐。
【読み】
良臣將に死せんとす。天命祐けず、と。良臣君の過ちと匡救せず。故に將に死せんとして、天の爲に祐けられず。
公曰、女不可近乎。對曰、節之。先王之樂、所以節百事也。故有五節。五聲之節。
【読み】
公曰く、女は近づく可からざるか、と。對えて曰く、之を節するなり。先王の樂は、百事を節する所以なり。故に五節有り。五聲の節。
遲速本末以相及、中聲以降、五降之後、不容彈矣。此謂先王之樂得中聲、聲成五降而息也。降、罷退。○彈、徒丹反。又徒旦反。
【読み】
遲速本末以て相及ぼし、中聲にして以て降り、五降の後、容[まさ]に彈ずべからず。此れ先王の樂は中聲を得、聲成りて五降して息むを謂うなり。降は、罷退なり。○彈は、徒丹反。又徒旦反。
於是有煩手淫聲、慆堙心耳、乃忘平和。君子弗聽也。五降而不息、則雜聲竝奏。所謂鄭・衛之聲。○慆、吐刀反。
【読み】
是に於て煩手淫聲すること有れば、心耳を慆堙[とういん]して、乃ち平和を忘れしむ。君子は聽かざるなり。五降して息まざれば、則ち雜聲竝に奏す。所謂鄭・衛の聲なり。○慆は、吐刀反。
物亦如之。言百事皆如樂。不可失節。
【読み】
物も亦之の如し。言うこころは、百事皆樂の如し。節を失う可からず。
至於煩、乃舍也已。無以生疾。煩不舍則生疾。○舍、音捨。
【読み】
煩に至れば、乃ち舍[や]むるのみ。以て疾を生ずること無かれ。煩にして舍まざれば則ち疾を生ず。○舍は、音捨。
君子之近琴瑟、以儀節也。非以慆心也。爲心之節儀、使動不過度。
【読み】
君子の琴瑟を近づくるは、以て儀節をするなり。以て心を慆[ふさ]がんとには非ず。心の節儀を爲して、動きて度を過ぎざらしむ。
天有六氣、謂陰陽風雨晦明也。
【読み】
天に六氣有り、陰陽風雨晦明を謂うなり。
降生五味、謂金味辛、木味酸、水味鹹、火味苦、土味甘、皆由陰陽風雨而生。
【読み】
降りて五味を生じ、金の味は辛く、木の味は酸く、水の味は鹹[しおから]く、火の味は苦く、土の味は甘く、皆陰陽風雨よりして生ずるを謂う。
發爲五色、辛色白、酸色靑、鹹色黑、苦色赤、甘色黃。發、見也。○見、賢遍反。
【読み】
發して五色と爲り、辛の色は白く、酸の色は靑く、鹹[かん]の色は黑く、苦の色は赤く、甘の色は黃なり。發は、見るなり。○見は、賢遍反。
徵爲五聲。白聲商、靑聲角、黑聲羽、赤聲徵、黃聲宮。徵、驗也。○聲徵、張里反。
【読み】
徵して五聲と爲る。白の聲は商、靑の聲は角、黑の聲は羽、赤の聲は徵、黃の聲は宮。徵は、驗なり。○聲徵は、張里反。
淫生六疾。淫、過也。滋味聲色、所以養人。然過則生害。
【読み】
淫[す]ぐれば六疾を生ず。淫は、過ぐるなり。滋味聲色は、人を養う所以なり。然れども過ぐれば則ち害を生ず。
六氣曰陰陽風雨晦明也。分爲四時、序爲五節。六氣之化、分而序之、則成四時、得五行之節。
【読み】
六氣を陰陽風雨晦明と曰う。分かれて四時と爲り、序でて五節と爲る。六氣の化、分かれて之を序づれば、則ち四時を成し、五行の節を得。
過則爲菑。陰淫寒疾、寒過則爲冷。
【読み】
過ぐれば則ち菑[わざわい]を爲す。陰淫は寒疾し、寒過ぐれば則ち冷を爲す。
陽淫熱疾、熱過則喘渴。
【読み】
陽淫は熱疾し、熱過ぐれば則ち喘渴す。
風淫末疾、末、四支也。風爲緩急。
【読み】
風淫は末疾し、末は、四支なり。風は緩急を爲す。
雨淫腹疾、雨濕之氣爲洩注。
【読み】
雨淫は腹疾し、雨濕の氣は洩注を爲す。
晦淫惑疾、晦、夜也。爲宴寢過節、則心惑亂。
【読み】
晦淫は惑疾し、晦は、夜なり。宴寢節に過ぐることを爲せば、則ち心惑亂す。
明淫心疾。明、晝也。思慮煩多、心勞生疾。
【読み】
明淫は心疾す。明は、晝なり。思慮煩多なれば、心勞して疾を生ず。
女陽物而晦時。淫則生内熱惑蠱之疾。女常隨男。故言陽物。家道常在夜。故言晦時。
【読み】
女は陽の物にして晦の時なり。淫すれば則ち内熱惑蠱の疾を生ず。女は常に男に隨う。故に陽の物と言う。家道は常に夜に在り。故に晦の時と言う。
今君不節不時。能無及此乎。
【読み】
今君節あらず時あらず。能く此に及ぶこと無からんや、と。
出告趙孟。趙孟曰、誰當良臣。對曰、主是謂矣。主相晉國、於今八年。晉國無亂、諸侯無闕。可謂良矣。和聞之、國之大臣、榮其寵祿、任其大節、有菑禍興而無改焉、改、改行以救菑。○行、去聲。
【読み】
出でて趙孟に告ぐ。趙孟曰く、誰か良臣に當たれる、と。對えて曰く、主を是れ謂うなり。主晉國を相けて、今に八年なり。晉國亂無く、諸侯闕けたること無し。良と謂う可し。和之を聞く、國の大臣、其の寵祿に榮え、其の大節に任じて、菑禍の興ること有りて改むること無ければ、改は、行いを改めて以て菑を救うなり。○行は、去聲。
必受其咎。今君至於淫以生疾、將不能圖恤社稷。禍孰大焉。主不能禦。吾是以云也。云主將死。
【読み】
必ず其の咎を受く、と。今君淫にして以て疾を生じて、將に社稷を圖り恤うること能わざらんとするに至れり。禍孰れか焉より大ならん。主禦ぐこと能わず。吾れ是を以て云えり、と。主將に死せんとするを云う。
趙孟曰、何謂蠱。對曰、淫溺惑亂之所生也。溺、沈沒於嗜欲。
【読み】
趙孟曰く、何を蠱と謂うや、と。對えて曰く、淫溺惑亂の生ずる所なり。溺は、嗜欲に沈沒するなり。
於文、皿蟲爲蠱。文、字也。皿、器也。器受蟲害者爲蠱。○皿、命景反。又讀若猛。
【読み】
文に於て、皿蟲[めいこ]を蠱と爲す。文は、字なり。皿は、器なり。器の蟲の害を受くる者を蠱と爲す。○皿は、命景反。又讀んで猛の若し。
穀之飛亦爲蠱。穀久積則變爲飛蟲。名曰蠱。
【読み】
穀の飛ぶも亦蠱と爲す。穀久しく積めば則ち變じて飛蟲と爲る。名づけて蠱と曰う。
在周易、女惑男、風落山、謂之蠱。巽下艮上、蠱。巽爲長女、爲風、艮爲少男、爲山。少男而說長女非匹。故惑。山木得風而落。
【読み】
周易に在りて、女男を惑わし、風山を落す、之を蠱と謂う。巽下艮上は、蠱なり。巽を長女と爲し、風と爲し、艮を少男と爲し、山と爲す。少男にして長女を說ぶは匹に非ず。故に惑う。山木風を得て落つ。
皆同物也。物、猶類也。
【読み】
皆同物なり、と。物は、猶類のごとし。
趙孟曰、良醫也。厚其禮而歸之。贈賄之禮。
【読み】
趙孟曰く、良醫なり、と。其の禮を厚くして之を歸す。贈賄の禮なり。
楚公子圍使公子黑肱・伯州犂城犫・櫟・郟。黑肱、王子圍之弟、子皙也。犫縣、屬南陽。郟縣、屬襄城。櫟、今河南陽翟縣。三邑、本鄭地。○犫、尺州反。櫟、音歷。又音鑠。郟、音夾。
【読み】
楚の公子圍公子黑肱・伯州犂をして犫[しゅう]・櫟[れき]・郟[こう]に城かしむ。黑肱は、王子圍の弟、子皙なり。犫縣は、南陽に屬す。郟縣は、襄城に屬す。櫟は、今の河南陽翟縣なり。三邑は、本鄭の地。○犫は、尺州反。櫟は、音歷。又音鑠。郟は、音夾。
鄭人懼。子產曰、不害。令尹將行大事、謂將弑君。
【読み】
鄭人懼る。子產曰く、害あらず。令尹將に大事を行わんとして、將に君を弑せんとするを謂う。
而先除二子也。二子、謂黑肱・伯州犂。
【読み】
先ず二子を除かんとするなり。二子は、黑肱・伯州犂を謂う。
禍不及鄭。何患焉。
【読み】
禍鄭に及ばず。何ぞ患えん、と。
冬、楚公子圍將聘于鄭。伍舉爲介。未出竟。聞王有疾而還。伍舉遂聘。十一月、己酉、公子圍至、入問王疾、縊而弑之。縊、絞也。孫卿曰、以冠纓絞之。長歷推、己酉、十二月六日。經傳皆言十一月、月誤也。○縊、一豉反。
【読み】
冬、楚の公子圍將に鄭に聘せんとす。伍舉介爲り。未だ竟を出でず。王疾有りと聞きて還る。伍舉遂に聘す。十一月、己酉、公子圍至り、入りて王の疾を問い、縊りて之を弑す。縊[い]は、絞めるなり。孫卿曰く、冠纓を以て之を絞す、と。長歷もて推すに、己酉は、十二月六日。經傳皆十一月と言うは、月の誤りなり。○縊は、一豉反。
遂殺其二子幕及平夏。皆郟敖子。
【読み】
遂に其の二子幕と平夏とを殺す。皆郟敖の子。
右尹子干出奔晉。子干、王子比。
【読み】
右尹子干出でて晉に奔る。子干は、王子比。
宮廐尹子皙出奔鄭。因築城而去。
【読み】
宮廐尹子皙出でて鄭に奔る。城を築くに因りて去る。
殺大宰伯州犂于郟。葬王于郟。謂之郟敖。郟敖、楚子麇。
【読み】
大宰伯州犂を郟に殺す。王を郟に葬る。之を郟敖と謂う。郟敖は、楚子麇。
使赴于鄭。伍舉問應爲後之辭焉。問赴者。
【読み】
鄭に赴[つ]げしむ。伍舉後爲る應きの辭を問う。赴者に問うなり。
對曰、寡大夫圍。伍舉更之曰、共王之子圍爲長。伍舉更赴辭使從禮。此告終稱嗣、不以簒弑赴諸侯。○共、音恭。長、丁丈反。
【読み】
對えて曰く、寡大夫圍、と。伍舉之を更めて曰く、共王の子圍長爲り、と。伍舉赴辭を更めて禮に從わしむ。此れ終を告げ嗣を稱し、簒弑を以て諸侯に赴げざるなり。○共は、音恭。長は、丁丈反。
子干奔晉、從車五乘。叔向使與秦公子同食。食祿同。○從、才用反。
【読み】
子干晉に奔るや、從車五乘なり。叔向秦の公子と食を同じくせしむ。食祿同じ。○從は、才用反。
皆百人之餼。百人、一卒也。其祿足百人。○餼、音墍。
【読み】
皆百人の餼なり。百人は、一卒なり。其の祿百人に足る。○餼は、音墍。
趙文子曰、秦公子富。謂秦鍼富强、秩祿不宜與子干同。
【読み】
趙文子曰く、秦の公子は富めり。秦の鍼は富强、秩祿子干と同じかる宜からずと謂う。
叔向曰、底祿以德。底、致也。○底、音旨。
【読み】
叔向曰く、祿を底[いた]すは德を以てす。底は、致すなり。○底は、音旨。
*「底」は「厎」。
德鈞以年、年同以尊。公子以國。不聞以富。且夫以千乘去其國、彊禦已甚。詩曰、不侮鰥寡、不畏彊禦。詩、大雅。侮、陵也。○夫、音扶。
【読み】
德鈞しければ年を以てし、年同じければ尊を以てす。公子は國を以てす。富を以てすることを聞かず。且つ夫れ千乘を以て其の國を去るは、彊禦已甚だし。詩に曰く、鰥寡を侮[しの]がず、彊禦を畏れず、と。詩は、大雅。侮は、陵ぐなり。○夫は、音扶。
秦・楚匹也。
【読み】
秦・楚は匹なり、と。
使后子與子干齒。以年齒爲高下而坐。
【読み】
后子と子干とをして齒せしむ。年齒を以て高下を爲して坐せしむ。
辭曰、鍼懼選、楚公子不獲。是以皆來。亦唯命。不獲、不得自安。言倶奔事有優劣。唯主人命所處。謙辭。
【読み】
辭して曰く、鍼は選えらるるを懼れ、楚の公子は獲ず。是を以て皆來れり。亦唯命のままなり。獲ずとは、自ら安んずることを得ざるなり。言うこころは、倶に奔るも事に優劣有り。唯主人處する所を命ぜよ、と。謙辭なり。
且臣與羇齒、無乃不可乎。后子先來仕。欲自同於晉臣爲主人。子干後來奔、以爲羇旅之客。
【読み】
且つ臣と羇と齒せば、乃ち不可なること無からんや。后子先ず來りて仕う。自ら晉の臣に同じくして主人爲らんと欲す。子干後に來奔して、以て羇旅の客爲り。
史佚有言曰、非羇何忌。忌、敬也。欲謙以自別。
【読み】
史佚言えること有り曰く、羇に非ずして何ぞ忌[うやま]わん、と。忌は、敬うなり。謙して以て自ら別たんと欲す。
楚靈王卽位、薳罷爲令尹、薳啓彊爲大宰。靈王、公子圍也。卽位易名熊虔。○罷、音皮。彊、其良反。
【読み】
楚の靈王位に卽き、薳罷[いひ]を令尹と爲し、薳啓彊を大宰と爲す。靈王は、公子圍なり。位に卽きて名を熊虔と易う。○罷は、音皮。彊は、其良反。
鄭游吉如楚、葬郟敖、且聘立君。歸。謂子產曰、具行器矣。行器、會備。
【読み】
鄭の游吉楚に如き、郟敖を葬り、且つ立君に聘す。歸る。子產に謂いて曰く、行器を具えよ。行器は、會の備えなり。
楚王汰侈而自說其事。必合諸侯。吾往無日矣。子產曰、不數年未能也。爲四年、會申傳。○說、音悅。一始悅反。數、所主反。
【読み】
楚王汰侈にして自ら其の事を說ぶ。必ず諸侯を合わせん。吾れ往かんこと日無けん、と。子產曰く、數年ならざれば未だ能わじ、と。四年、申に會する爲の傳なり。○說は、音悅。一に始悅反。數は、所主反。
十二月、晉旣烝。烝、冬祭也。
【読み】
十二月、晉旣に烝す。烝は、冬祭なり。
趙孟適南陽、將會孟子餘。孟子餘、趙衰、趙武之曾祖。其廟在晉之南陽溫縣。往會祭之。
【読み】
趙孟南陽に適き、將に孟子餘に會せんとす。孟子餘は、趙衰、趙武の曾祖。其の廟晉の南陽溫縣に在り。往きて之を祭るに會す。
甲辰、朔、烝于溫。趙氏烝祭。甲辰、十二月朔。晉旣烝、趙孟乃烝其家廟、則晉烝當在甲辰之前。傳言十二月、月誤。
【読み】
甲辰、朔、溫に烝す。趙氏烝祭す。甲辰は、十二月朔。晉旣に烝して、趙孟乃ち其の家廟に烝すれば、則ち晉の烝は當に甲辰の前に在るべし。傳十二月と言うは、月の誤りなり。
庚戌、卒。十二月七日。終劉定公・秦后子之言。
【読み】
庚戌[かのえ・いぬ]、卒す。十二月七日。劉定公・秦の后子の言を終わる。
鄭伯如晉弔。及雍乃復。弔趙氏。蓋趙氏辭之而還。傳言大夫彊、諸侯畏而弔之。○雍、於用反。
【読み】
鄭伯晉に如きて弔わんとす。雍に及びて乃ち復る。趙氏を弔うなり。蓋し趙氏之を辭して還るならん。傳大夫彊く、諸侯畏れて之を弔するを言う。○雍は、於用反。
〔經〕二年、春、晉侯使韓起來聘。夏、叔弓如晉。叔弓、叔老子。
【読み】
〔經〕二年、春、晉侯韓起をして來聘せしむ。夏、叔弓晉に如く。叔弓は、叔老の子。
秋、鄭殺其大夫公孫黑。書名、惡之。薰隧盟、子產不討、遂以爲卿。故書名。○惡、烏路反。
【読み】
秋、鄭其の大夫公孫黑を殺す。名を書すは、之を惡むなり。薰隧の盟に、子產討ぜず、遂に以て卿と爲す。故に名を書す。○惡は、烏路反。
冬、公如晉、至河乃復。弔少姜也。晉人辭之。故還。
【読み】
冬、公晉に如き、河に至りて乃ち復る。少姜を弔するなり。晉人之を辭す。故に還る。
季孫宿如晉。致襚服也。公實以秋行、冬還乃書。
【読み】
季孫宿晉に如く。襚服[すいふく]を致すなり。公實は秋を以て行き、冬還りて乃ち書すなり。
〔傳〕二年、春、晉侯使韓宣子來聘。公卽位故。
【読み】
〔傳〕二年、春、晉侯韓宣子をして來聘せしむ。公位に卽く故なり。
且告爲政而來見。禮也。代趙武爲政。雖盟主而脩好同盟。故曰禮。○見、賢遍反。
【読み】
且つ政を爲すことを告げて來り見ゆ。禮なり。趙武に代わりて政を爲す。盟主と雖も好を同盟に脩む。故に禮と曰う。○見は、賢遍反。
觀書於大史氏。見易象與魯春秋、曰、周禮盡在魯矣。易象、上下經之象辭。魯春秋、史記之策書。春秋遵周公之典以序事。故曰周禮盡在魯矣。
【読み】
書を大史氏に觀る。易象と魯の春秋とを見て、曰く、周の禮は盡く魯に在り。易象は、上下經の象の辭。魯の春秋は、史記の策書。春秋は周公の典に遵いて以て事を序づ。故に周の禮は盡く魯に在りと曰う。
吾乃今知周公之德、與周之所以王也。易象・春秋、文王・周公之制。當此時、儒道廢、諸國多闕。唯魯備。故宣子適魯而說之。○以王、于況反。說、音悅。
【読み】
吾れ乃ち今周公の德と、周の王たる所以を知れり、と。易象・春秋は、文王・周公の制。此の時に當たりて、儒道廢して、諸國闕けたること多し。唯魯のみ備わる。故に宣子魯に適きて之を說ぶなり。○以王は、于況反。說は、音悅。
公享之。季武子賦緜之卒章。緜、詩大雅。卒章、義取文王有四臣。故能以緜緜致興盛。以晉侯比文王、以韓子比四輔。
【読み】
公之を享す。季武子緜の卒章を賦す。緜は、詩の大雅。卒章は、義文王四臣有り。故に能く以て緜緜として興盛を致すに取る。晉侯を以て文王に比し、韓子を以て四輔に比す。
韓子賦角弓。角弓、詩小雅。取其兄弟昏姻、無胥遠矣。言兄弟之國、宜相親。
【読み】
韓子角弓を賦す。角弓は、詩の小雅。其の兄弟昏姻、胥[あい]遠ざかること無きに取る。言うこころは、兄弟の國は、宜しく相親しむべし。
季武子拜曰、敢拜子之彌縫敝邑。寡君有望矣。彌縫、猶補合也。謂以兄弟之義。
【読み】
季武子拜して曰く、敢えて子の敝邑を彌縫するを拜す。寡君望むこと有り、と。彌縫は、猶補合のごとし。兄弟の義を以てするを謂う。
武子賦節之卒章。節、詩小雅。卒章、取式訛爾心、以畜萬邦。以言晉德可以畜萬邦。○節、才結反。
【読み】
武子節の卒章を賦す。節は、詩の小雅。卒章は、式[もっ]て爾の心を訛して、以て萬邦を畜[やしな]えというに取る。以て言うこころは、晉の德以て萬邦を畜う可し、と。○節は、才結反。
旣享、宴于季氏。有嘉樹焉。宣子譽之。譽其好也。○譽、音餘。
【読み】
旣に享して、季氏に宴す。嘉樹有り。宣子之を譽む。其の好きを譽むるなり。○譽は、音餘。
武子曰、宿敢不封殖此樹。以無忘角弓。封、厚也。殖、長也。
【読み】
武子曰く、宿敢えて此の樹を封殖せざらんや。以て角弓を忘るること無けん、と。封は、厚きなり。殖は、長きなり。
遂賦甘棠。甘棠、詩召南。召伯息於甘棠之下。詩人思之、而愛其樹。武子欲封殖嘉樹如甘棠。以宣子比召公。
【読み】
遂に甘棠を賦す。甘棠は、詩の召南。召伯甘棠の下に息う。詩人之を思いて、其の樹を愛す。武子嘉樹を封殖すること甘棠の如くせんと欲す。宣子を以て召公に比するなり。
宣子曰、起不堪也。無以及召公。
【読み】
宣子曰く、起堪えざるなり。以て召公に及ぶこと無し、と。
宣子遂如齊納幣。爲平公聘少姜。
【読み】
宣子遂に齊に如きて幣を納る。平公の爲に少姜を聘す。
見子雅。子雅召子旗、子旗、子雅之子。
【読み】
子雅を見る。子雅子旗を召して、子旗は、子雅の子。
使見宣子。宣子曰、非保家之主也。不臣。志氣亢。○見、賢遍反。下見彊同。
【読み】
宣子に見えしむ。宣子曰く、保家の主に非ざるなり。不臣なり、と。志氣亢ず。○見は、賢遍反。下の見彊も同じ。
見子尾。子尾見彊。彊、子尾之子。
【読み】
子尾を見る。子尾彊を見えしむ。彊は、子尾の子。
宣子謂之如子旗。亦不臣。
【読み】
宣子之を謂うこと子旗の如し。亦不臣という。
大夫多笑之。唯晏子信之曰、夫子君子也。夫子、韓起。
【読み】
大夫多く之を笑う。唯晏子のみ之を信じて曰く、夫子は君子なり。夫子は、韓起。
君子有信。其有以知之矣。爲十年、齊欒施・高彊來奔張本。
【読み】
君子は信有り。其れ以て之を知ること有らん。十年、齊の欒施・高彊來奔する爲の張本なり。
自齊聘於衛。衛侯享之。北宮文子賦淇澳。淇澳、詩衛風。美武公也。言宣子有武公之德。○澳、於六反。
【読み】
齊より衛に聘す。衛侯之を享す。北宮文子淇澳[きいく]を賦す。淇澳は、詩の衛風。武公を美むるなり。言うこころは、宣子武公の德有り。○澳は、於六反。
宣子賦木瓜。木瓜、亦衛風。義取於欲厚報以爲好。
【読み】
宣子木瓜[ぼっか]を賦す。木瓜も、亦衛風。義厚報して以て好を爲さんと欲するに取る。
夏、四月、韓須如齊逆女。須、韓起之子。逆少姜。
【読み】
夏、四月、韓須齊に如きて女を逆[むか]う。須は、韓起の子。少姜を逆う。
齊陳無宇送女、致少姜。少姜有寵於晉侯。晉侯謂之少齊。爲立別號。所以寵異之。
【読み】
齊の陳無宇女を送り、少姜を致す。少姜晉侯に寵有り。晉侯之を少齊と謂う。爲に別號を立つ。之を寵異する所以なり。
謂陳無宇非卿、欲使齊以適夫人禮送少姜。○適、丁歷反。
【読み】
陳無宇を卿に非ずと謂いて、齊をして適夫人の禮を以て少姜を送らしめんと欲す。○適は、丁歷反。
執諸中都。中都、晉邑。在西河界休縣東南。
【読み】
諸を中都に執う。中都は、晉の邑。西河界休縣の東南に在り。
少姜爲之請曰、送從逆班。班、列也。
【読み】
少姜之が爲に請いて曰く、送るは逆うるの班に從う。班は、列なり。
畏大國也、猶有所易、是以亂作。韓須、公族大夫。陳無宇、上大夫。言齊畏晉、改易禮制、使上大夫送、遂致此執辱之罪。蓋少姜謙以示譏。
【読み】
大國を畏るるや、猶易うる所有りしかば、是を以て亂作れり、と。韓須は、公族大夫。陳無宇は、上大夫。言うこころは、齊晉を畏れ、禮制を改易して、上大夫をして送らしめ、遂に此の執辱の罪を致せり。蓋し少姜謙して以て譏りを示すなり。
叔弓聘于晉、報宣子也。此春、韓宣子來聘。
【読み】
叔弓晉に聘するは、宣子に報ゆるなり。此の春、韓宣子來聘す。
晉侯使郊勞。聘禮、賓至近郊、君使卿勞之。○勞、力報反。
【読み】
晉侯郊勞せしむ。聘禮に、賓近郊に至るときは、君卿をして之を勞わしむ、と。○勞、力報反。
辭曰、寡君使弓來繼舊好、固曰、女無敢爲賓。徹命於執事、敝邑弘矣。徹、達也。○女、音汝。下皆同。
【読み】
辭して曰く、寡君弓をして來りて舊好を繼がしめ、固より曰く、女敢えて賓爲ること無し、と。命を執事に徹せば、敝邑の弘[さいわい]なり。徹は、達するなり。○女は、音汝。下も皆同じ。
敢辱郊使。請辭。辭郊勞。○使、所吏反。
【読み】
敢えて郊使を辱くせんや。請う、辭す、と。郊勞を辭す。○使は、所吏反。
致館。辭曰、寡君命下臣來繼舊好。好合使成、臣之祿也。得通君命、則於己爲榮祿。
【読み】
館を致す。辭して曰く、寡君下臣に命じて來りて舊好を繼がしむ。好く合い使い成らば、臣の祿[さいわい]なり。君命を通ずることを得ば、則ち己に於て榮祿爲り。
敢辱大館。敢、不敢。
【読み】
敢えて大館を辱くせんや、と。敢は、不敢なり。
叔向曰、子叔子知禮哉。吾聞之、曰、忠信、禮之器也。卑讓、禮之宗也。宗、猶主也。
【読み】
叔向曰く、子叔子は禮を知るかな。吾れ之を聞く、曰く、忠信は、禮の器なり。卑讓は、禮の宗なり、と。宗は、猶主のごとし。
辭不忘國、忠信也。謂稱舊好。
【読み】
辭國を忘れざるは、忠信なり。舊好と稱するを謂う。
先國後己、卑讓也。始稱敝邑之弘、先國也。次稱臣之祿、後己也。
【読み】
國を先にし己を後にするは、卑讓なり。始め敝邑の弘と稱するは、國を先にするなり。次に臣の祿と稱するは、己を後にするなり。
詩曰、敬愼威儀、以近有德。夫子近德矣。詩、大雅。
【読み】
詩に曰く、威儀を敬愼すれば、以て有德に近づく、と。夫子德に近づけり、と。詩は、大雅。
秋、鄭公孫黑將作亂。欲去游氏而代其位。游氏、大叔之族。黑爲游楚所傷。故欲害其族。○去、起呂反。
【読み】
秋、鄭の公孫黑將に亂を作さんとす。游氏を去りて其の位に代わらんと欲す。游氏は、大叔の族。黑游楚の爲に傷つけらる。故に其の族を害せんと欲す。○去は、起呂反。
傷疾作而不果。前年、游楚所擊創。○創、初良反。
【読み】
傷疾作りて果たさず。前年、游楚擊つ所の創なり。○創は、初良反。
駟氏與諸大夫欲殺之。駟氏、黑之族。
【読み】
駟氏諸大夫と之を殺さんと欲す。駟氏は、黑の族。
子產在鄙、聞之、懼弗及、乘遽而至、遽、傳驛。○傳、中戀反。
【読み】
子產鄙に在り、之を聞き、及ばざらんことを懼れ、遽に乘じて至り、遽は、傳驛。○傳は、中戀反。
使吏數之、責數其罪。
【読み】
吏をして之を數[せ]めしめて、其の罪を責數す。
曰、伯有之亂、在襄三十年。
【読み】
曰く、伯有の亂に、襄三十年に在り。
以大國之事、而未爾討也。務共大國、不暇治女罪。○共、音恭。下同。
【読み】
大國の事あるを以て、未だ爾を討ぜざりき。大國に共するを務めて、女の罪を治むるに暇あらざりし。○共は、音恭。下も同じ。
爾有亂心無厭、國不女堪。專伐伯有。而罪一也。昆弟爭室、而罪二也。謂爭徐吾犯之妹。○厭、於鹽反。
【読み】
爾亂心有りて厭くこと無く、國女に堪えず。專ら伯有を伐つ。而[なんじ]の罪一なり。昆弟室を爭う、而の罪二なり。徐吾犯の妹を爭うを謂う。○厭は、於鹽反。
薰隧之盟、女矯君位、而罪三也。謂使大史書七子。
【読み】
薰隧の盟に、女君位を矯[いつわ]る、而の罪三なり。大史をして七子を書さしむるを謂う。
有死罪三。何以堪之。不速死、大刑將至。
【読み】
死罪三つ有り。何を以て之に堪えん。速やかに死せずんば、大刑將に至らんとす、と。
再拜稽首、辭曰、死在朝夕。無助天爲虐。子產曰、人誰不死。凶人不終。命也。作凶事爲凶人。不助天、其助凶人乎。
【読み】
再拜稽首して、辭じて曰く、死朝夕に在り。天を助けて虐を爲すこと無かれ、と。子產曰く、人誰か死なざらん。凶人は終わらず。命なり。凶事を作すを凶人と爲す。天を助けずして、其れ凶人を助けんや、と。
請以印爲褚師。印、子皙之子。褚師、市官。○褚、張呂反。
【読み】
印を以て褚師と爲さんと請う。印は、子皙の子。褚師は、市官。○褚は、張呂反。
子產曰、印也若才、君將任之。不才、將朝夕從女。女罪之不恤、而又何請焉。不速死、司寇將至。七月、壬寅、縊。尸諸周氏之衢、衢、道也。
【読み】
子產曰く、印や若し才ならば、君將に之に任ぜんとす。不才ならば、將に朝夕に女に從わんとす。女の罪を恤えずして、又何ぞ請わん。速やかに死せずんば、司寇將に至らんとす、と。七月、壬寅[みずのえ・とら]、縊る。諸を周氏の衢[く]に尸[さら]し、衢は、道なり。
加木焉。書其罪於木、以加尸上。
【読み】
木を加う。其の罪を木に書して、以て尸の上に加う。
晉少姜卒。公如晉、及河。晉侯使士文伯來辭曰、非伉儷也。晉侯溺於所幸、爲少姜行夫人之服。故諸侯弔、不敢以私煩諸侯。故止之。
【読み】
晉の少姜卒す。公晉に如き、河に及ぶ。晉侯士文伯をして來りて辭せしめて曰く、伉儷[こうれい]に非ざるなり。晉侯所幸に溺れ、少姜の爲に夫人の服を行う。故に諸侯弔するも、敢えて私を以て諸侯を煩わさず。故に之を止む。
請君無辱。公還。季孫宿遂致服焉。致少姜之襚服。公以末秋行、始冬還。還乃書之。故經在冬。
【読み】
請う、君辱くすること無かれ、と。公還る。季孫宿遂に服を致す。少姜の襚服を致すなり。公末秋を以て行き、始冬に還る。還れば乃ち之を書す。故に經冬に在り。
叔向言陳無宇於晉侯曰、彼何罪。彼、無宇。
【読み】
叔向陳無宇を晉侯に言いて曰く、彼れ何の罪かある。彼は、無宇。
君使公族逆之、齊使上大夫送之、猶曰不共、君求以貪。國則不共、逆卑於送。是晉國不共。
【読み】
君公族をして之を逆えしめ、齊上大夫をして之を送らしむるを、猶不共なりと曰わんは、君の求め以[はなは]だ貪れり。國則ち共せずして、逆うるは送るより卑し。是れ晉國共せざるなり。
而執其使、君刑己頗。何以爲盟主。頗、不平。○頗、普多反。
【読み】
其の使いを執うるは、君の刑己[はなは]だ頗なり。何を以て盟主爲らん。頗は、不平。○頗は、普多反。
且少姜有辭。謂請無宇之辭。
【読み】
且少姜も辭有りし、と。無宇を請うの辭を謂う。
冬、十月、陳無宇歸。晉侯赦之。
【読み】
冬、十月、陳無宇歸る。晉侯之を赦す。
十一月、鄭印段如晉弔。弔少姜。
【読み】
十一月、鄭の印段晉に如きて弔う。少姜を弔う。
〔經〕三年、春、王正月、丁未、滕子原卒。襄二十五年、盟重丘。○重、直恭反。
【読み】
〔經〕三年、春、王の正月、丁未[ひのと・ひつじ]、滕子原卒す。襄二十五年、重丘に盟う。○重は、直恭反。
夏、叔弓如滕。五月、葬滕成公。卿共小國之葬禮過厚。葬襄公、滕子來會。故魯厚報之。○共、音恭。下皆同。
【読み】
夏、叔弓滕に如く。五月、滕の成公を葬る。卿小國の葬禮に共するは過厚なり。襄公を葬るとき、滕子來會す。故に魯之に厚報す。○共は、音恭。下も皆同じ。
秋、小邾子來朝。八月、大雩。冬、大雨雹。無傳。記災。○雨、于付反。雹、蒲學反。
【読み】
秋、小邾子[しょうちゅし]來朝す。八月、大いに雩[う]す。冬、大いに雹雨[ふ]る。傳無し。災を記すなり。○雨は、于付反。雹は、蒲學反。
北燕伯款出奔齊。不書大夫逐之、而言奔、罪之也。書名、從告。
【読み】
北燕伯款出でて齊に奔る。大夫之を逐うを書さずして、奔ると言うは、之を罪するなり。名を書すは、告ぐるに從うなり。
〔傳〕三年、春、王正月、鄭游吉如晉、送少姜之葬。梁丙與張趯見之。二子、晉大夫。○趯、他歷反。
【読み】
〔傳〕三年、春、王の正月、鄭の游吉晉に如きて、少姜の葬を送る。梁丙と張趯[ちょうてき]と之を見る。二子は、晉の大夫。○趯は、他歷反。
梁丙曰、甚矣哉、子之爲此來也。卿共妾葬、過禮甚。○爲、于僞反。
【読み】
梁丙曰く、甚だしきかな、子の此の爲に來れるや、と。卿妾の葬に共するは、禮を過ぐること甚だし。○爲は、于僞反。
子大叔曰、將得已乎。言不得止。
【読み】
子大叔曰く、將[はた]已むことを得んや。止むことを得ざるを言う。
昔文・襄之霸也、晉文公・襄公。
【読み】
昔文・襄の霸たるや、晉の文公・襄公。
其務不煩諸侯、令諸侯三歲而聘、五歲而朝、有事而會、不協而盟、明王之制、歲聘閒朝、在十三年。今簡之。
【読み】
其の務め諸侯を煩わさず、諸侯をして三歲にして聘し、五歲にして朝し、事有れば會し、協[あ]わずして盟い、明王の制は、歲ごとに聘し閒に朝すること、十三年に在り。今之を簡[おろそ]かにす。
君薨、大夫弔、卿共葬事、夫人、士弔、大夫送葬、先王之制、諸侯之喪、士弔、大夫送葬、在三十年。蓋時俗過制。故文・襄雖節之、猶過於古。
【読み】
君薨ずれば、大夫弔し、卿葬事に共し、夫人は、士弔し、大夫葬を送らしめて、先王の制は、諸侯の喪には、士弔し、大夫葬を送ること、三十年に在り。蓋し時俗制に過ぐ。故に文・襄之を節すと雖も、猶古に過ぐるならん。
足以昭禮命事謀闕而已、朝聘以昭禮、盟會以謀闕。
【読み】
以て禮を昭らかにし事を命じ闕けたるを謀るに足るのみにして、朝聘して以て禮を昭らかにし、盟會して以て闕けたるを謀る。
無加命矣。命有常。
【読み】
加命無かりき。命常有り。
今嬖寵之喪、不敢擇位、而數於守適。不敢以其位卑、而令禮數如守適夫人。然則時適夫人之喪、弔送之禮、已過文・襄之制。○而數、所具反。又所主反。適、丁歷反。
【読み】
今嬖寵の喪に、敢えて位を擇ばずして、數守適に於てす。敢えて其の位の卑しきを以てせずして、禮數をして守適夫人の如くならしむ。然らば則ち時に適夫人の喪は、弔送の禮、已に文・襄の制に過ぎたり。○而數は、所具反。又所主反。適は、丁歷反。
唯懼獲戾。豈敢憚煩。少姜有寵而死、齊必繼室。繼室、復薦女。
【読み】
唯戾[つみ]を獲んことを懼る。豈敢えて煩を憚らんや。少姜寵有りて死すれば、齊必ず室を繼がん。室を繼ぐとは、復女を薦むるなり。
今玆吾又將來賀。不唯此行也。張趯曰、善哉、吾得聞此數也。然自今子其無事矣。譬如火焉。火、心星。
【読み】
今玆[ことし]吾れ又將に來り賀せんとす。唯此の行のみにあらじ、と。張趯曰く、善いかな、吾れ此の數を聞くことを得たり。然れども今より子其れ事無からん。譬えば火の如し。火は、心星。
火中、寒暑乃退。心以季夏昏中而暑退、季冬旦中而寒退。
【読み】
火中すれば、寒暑乃ち退く。心季夏の昏を以て中して暑退き、季冬の旦に中して寒退く。
此其極也。能無退乎。晉將失諸侯。諸侯求煩不獲。言將不能復煩諸侯。
【読み】
此れ其の極なり。能く退くこと無からんや。晉將に諸侯を失わんとす。諸侯煩を求むとも獲ざらん、と。言うこころは、將に復諸侯を煩わすこと能わざらんとす。
二大夫退。子大叔告人曰、張趯有知、其猶在君子之後乎。譏其無隱諱。○知、音智。
【読み】
二大夫退く。子大叔人に告げて曰く、張趯知有るも、其れ猶君子の後に在らんか、と。其の隱諱無きを譏る。○知は、音智。
丁未、滕子原卒。同盟。故書名。同盟於襄之世。亦應從同盟之禮。故傳發之。
【読み】
丁未、滕子原卒す。同盟なり。故に名を書す。襄の世に同盟す。亦同盟の禮に從う應し。故に傳之を發す。
齊侯使晏嬰請繼室於晉、復以女繼少姜。
【読み】
齊侯晏嬰をして室を繼がんことを晉に請わしめて、復女を以て少姜に繼がんとす。
曰、寡人願事君、朝夕不倦、將奉質幣、以無失時、則國家多難、是以不獲。不得自來。○質、之二反。又如字。難、乃旦反。
【読み】
曰く、寡人君に事えて、朝夕に倦まずして、質幣を將奉して、以て時を失うこと無けんことを願えども、則ち國家多難にして、是を以て獲ず。自ら來たることを得ず。○質は、之二反。又字の如し。難は、乃旦反。
*頭注に「按各本於晉下、有曰寡君使嬰五字。唯穆本無之。」とある。
不腆先君之適、謂少姜。
【読み】
不腆なる先君の適、少姜を謂う。
以備内官、焜燿寡人之望、則又無祿、早世隕命、寡人失望。
【読み】
以て内官に備えて、寡人の望みを焜燿[こんよう]せしも、則ち又無祿にして、早世隕命して、寡人望みを失えり。
君若不忘先君之好、惠顧齊國、辱收寡人、徼福於大公・丁公、徼、要也。二公、齊先君。言收恤寡人、則先君與之福也。○焜、胡本反。又音昆。徼、古堯反。
【読み】
君若し先君の好を忘れず、齊國を惠顧して、寡人を辱收し、福を大公・丁公に徼[もと]めんとし、徼[きょう]は、要むるなり。二公は、齊の先君なり。言うこころは、寡人を收恤せば、則ち先君も之に福を與えん。○焜は、胡本反。又音昆。徼は、古堯反。
照臨敝邑、鎭撫其社稷、則猶有先君之適、適、夫人之女。
【読み】
敝邑を照臨し、其の社稷を鎭撫せば、則ち猶先君の適、適は、夫人の女。
及遺姑姊妹、遺、餘也。
【読み】
及び遺れる姑姊妹、遺は、餘るなり。
若而人。言如常人。不敢譽。
【読み】
若而人有り。言うこころは、常人の如しとなり。敢えて譽めざるなり。
君若不棄敝邑、而辱使董振擇之、以備嬪嬙、寡人之望也。董、正也。振、整也。嬪嬙、婦官。○振、之刃反。一音眞。
【読み】
君若し敝邑を棄てずして、辱く董振して之を擇びて、以て嬪嬙[ひんきょう]に備えしめば、寡人の望みなり、と。董は、正すなり。振は、整うなり。嬪嬙は、婦官。○振は、之刃反。一に音眞。
韓宣子使叔向對曰、寡君之願也。寡君不能獨任其社稷之事、未有伉儷、在縗絰之中、是以未敢請。制、夫人之服則葬訖、君臣乃釋服。○任、音壬。
【読み】
韓宣子叔向をして對えしめて曰く、寡君の願いなり。寡君獨り其の社稷の事に任[た]うること能わず、未だ伉儷[こうれい]有らざるも、縗絰[さいてつ]の中に在れば、是を以て未だ敢えて請わざりき。制に、夫人の服は則ち葬訖[おわ]れば、君臣乃ち服を釋く、と。○任は、音壬。
君有辱命、惠莫大焉。若惠顧敝邑、撫有晉國、賜之内主、豈唯寡君。舉羣臣實受其貺。其自唐叔以下、實寵嘉之。唐叔、晉之祖。
【読み】
君辱命有り、惠焉より大なるは莫し。若し敝邑を惠顧し、晉國を撫有して、之が内主を賜わば、豈唯寡君のみならんや。羣臣を舉[こぞ]りて實に其の貺[たまもの]を受けん。其れ唐叔より以下も、實に之を寵嘉せん、と。唐叔は、晉の祖。
旣成昏、許昏成。
【読み】
旣に昏を成し、昏を許して成る。
晏子受禮。受賓享之禮。
【読み】
晏子禮を受く。賓享の禮を受く。
叔向從之宴、相與語。叔向曰、齊其何如。問興衰。
【読み】
叔向之に從いて宴して、相與に語る。叔向曰く、齊其れ何如、と。興衰を問う。
晏子曰、此季世也。吾弗知、齊其爲陳氏矣。不知其他。唯知齊將爲陳氏。
【読み】
晏子曰く、此れ季世なり。吾れ知らず、齊は其れ陳氏爲らん。其の他を知らず。唯齊の將に陳氏爲らんとするを知るのみ。
公棄其民、而歸於陳氏。棄民不恤。
【読み】
公其の民を棄てて、陳氏に歸せしむ。民を棄てて恤れまず。
齊舊四量。豆・區・釜・鍾。四升爲豆、各自其四、以登於釜、四豆爲區。區、斗六升。四區爲釜。釜、六斗四升。登、成也。○量、音亮。下同。區、烏侯反。下皆同。
【読み】
齊は舊四量。豆・區[おう]・釜・鍾あり。四升を豆と爲し、各々其の四にしてより、以て釜に登り、四豆を區と爲す。區は、斗六升。四區を釜と爲す。釜は、六斗四升なり。登は、成るなり。○量は、音亮。下も同じ。區は、烏侯反。下も皆同じ。
釜十則鍾。六斛四斗。
【読み】
釜十は則ち鍾なり。六斛[こく]四斗。
陳氏三量、皆登一焉。鍾乃大矣。登、加也。加一、謂加舊量之一也。以五升爲豆、五豆爲區、五區爲釜、則區二斗、釜八斗、鐘八斛。
【読み】
陳氏は三量を、皆一を登す。鍾乃ち大なり。登は、加うるなり。一を加うとは、舊量の一を加うるを謂うなり。五升を以て豆と爲し、五豆を區と爲し、五區を釜と爲せば、則ち區は二斗、釜は八斗、鐘は八斛。
以家量貸、而以公量收之。貸厚而收薄。
【読み】
家量を以て貸して、公量を以て之を收む。貸すは厚くして收むるは薄し。
山木如市、弗加於山、魚鹽蜃蛤、弗加於海。賈如在山海、不加貴。○蜃、食軫反。賈、音嫁。
【読み】
山木市に如けども、山より加えず、魚鹽蜃蛤も、海より加えず。賈山海に在るが如くにして、貴を加えず。○蜃は、食軫反。賈は、音嫁。
民參其力、二入於公、而衣食其一。言公重賦斂。○參、七南反。又音三。
【読み】
民其の力を參にして、二は公に入れて、其の一を衣食にす。公賦斂を重くするを言う。○參は、七南反。又音三。
公聚朽蠹、而三老凍餒。三老、謂上壽・中壽・下壽。皆八十已上、不見養遇。
【読み】
公聚は朽蠹[きゅうと]して、三老は凍餒[とうたい]す。三老は、上壽・中壽・下壽を謂う。皆八十已上にして、養遇せられず。
國之諸市、屨賤踊貴。踊、刖足者屨。言刖多。○踊、音勇。
【読み】
國の諸市、屨[くつ]は賤しくして踊は貴し。踊は、足を刖[き]る者の屨なり。刖[あしぎり]の多きを言う。○踊は、音勇。
民人痛疾、而或燠休之、燠休、痛念聲。謂陳氏也。○燠、於喩反。一於六反。休、虛喩反。又許留反。
【読み】
民人痛疾すれば、或は之を燠休[いくきゅう]して、燠休は、痛念の聲なり。陳氏を謂うなり。○燠は、於喩反。一に於六反。休は、虛喩反。又許留反。
其愛之如父母、而歸之如流水。欲無獲民、將焉辟之。箕伯・直柄・虞遂・伯戲、四人、皆舜後。陳氏之先。○戲、許宜反。
【読み】
其の之を愛すること父母の如くにして、之に歸すること流水の如し。民を獲ること無からんと欲すとも、將焉ぞ之を辟けん。箕伯・直柄・虞遂・伯戲、四人は、皆舜の後。陳氏の先なり。○戲は、許宜反。
其相胡公・大姬、已在齊矣。胡公、四人之後。周始封陳之祖。大姬、其妃也。言陳氏雖爲人臣、然將有國。其先祖鬼神、已與胡公共在齊。○大、音泰。
【読み】
其れ胡公・大姬を相けて、已に齊に在り、と。胡公は、四人の後。周始めて封ずる陳の祖なり。大姬は、其の妃なり。言うこころは、陳氏人臣爲りと雖も、然れども將に國を有たんとす。其の先祖の鬼神、已に胡公と共に齊に在り。○大は、音泰。
叔向曰、然。雖吾公室、今亦季世也。戎馬不駕、卿無軍行、言晉衰弱、不能征討救諸侯。○行、戶郎反。
【読み】
叔向曰く、然り。吾が公室と雖も、今亦季世なり。戎馬駕せず、卿軍行無く、言うこころは、晉衰弱して、征討して諸侯を救うこと能わず。○行は、戶郎反。
公乘無人、卒列無長。百人爲卒。言人皆非其人、非其長。○乘、繩證反。
【読み】
公乘に人無く、卒列に長無し。百人を卒と爲す。言うこころは、人皆其の人に非ず、其の長に非ず。○乘は、繩證反。
庶民罷敝、而宮室滋侈、滋、益也。
【読み】
庶民罷敝して、宮室滋々侈り、滋は、益々なり。
道殣相望、餓死爲殣。○殣、音覲。路冢也。
【読み】
道殣[どうきん]相望みて、餓死を殣と爲す。○殣は、音覲。路冢なり。
而女富溢尤。女、嬖寵之家。
【読み】
女富溢々尤[はなは]だし。女は、嬖寵の家。
民聞公命、如逃寇讎。欒・郤・胥・原・狐・續・慶・伯降在皁隸。八姓、晉舊臣之族也。皁隸、賤官。
【読み】
民公の命を聞けば、寇讎を逃ぐるが如し。欒[らん]・郤[げき]・胥・原・狐・續・慶・伯降りて皁隸[そうれい]に在り。八姓は、晉の舊臣の族なり。皁隸は、賤官。
政在家門、大夫專政。
【読み】
政家門に在りて、大夫政を專にす。
民無所依、君日不悛、以樂慆憂。慆、藏。悛、改也。○慆、音滔。樂、音洛。
【読み】
民依る所無く、君日々に悛[あらた]めず、樂を以て憂えを慆[おさ]む。慆は、藏むる。悛は、改むるなり。○慆は、音滔。樂は、音洛。
公室之卑、其何日之有。言今至。
【読み】
公室の卑しからんこと、其れ何れの日か之れ有らん。今至るを言う。
讒鼎之銘、讒、鼎名也。
【読み】
讒鼎の銘に、讒は、鼎の名なり。
曰、昧旦丕顯、後世猶怠。昧旦、早起也。丕、大也。言夙興以務大顯、後世猶解怠。
【読み】
曰く、昧旦に丕[おお]いに顯らかにするも、後世猶怠る、と。昧旦は、早起なり。丕は、大いなり。言うこころは、夙に興きて以て務めて大いに顯らかにするも、後世猶解怠す。
況日不悛。其能久乎。
【読み】
況んや日々に悛めざるをや。其れ能く久しからんや、と。
晏子曰、子將若何。問何以免此難。
【読み】
晏子曰く、子將に若何にせんとする、と。何を以て此の難を免れんと問う。
叔向曰、晉之公族盡矣。肸聞之、公室將卑、其宗族枝葉先落、則公從之。肸之宗十一族、同祖爲崇。○肸、許乙反。
【読み】
叔向曰く、晉の公族盡きたり。肸[きつ]之を聞く、公室の將に卑しからんとするは、其の宗族の枝葉先ず落つれば、則ち公之に從う、と。肸の宗は十一族なりしも、同祖を崇と爲す。○肸は、許乙反。
唯羊舌氏在而已。肸又無子、無賢子。
【読み】
唯羊舌氏在るのみ。肸又子無く、賢子無し。
公室無度。無法度。
【読み】
公室度無し。法度無し。
幸而得死。言得以壽終爲幸。
【読み】
幸いにして死することを得んのみ。言うこころは、壽を以て終わることを得るを幸いとす。
豈其獲祀。言必不得祀。
【読み】
豈其れ祀らるることを獲んや、と。言うこころは、必ず祀らるることを得ず。
初、景公欲更晏子之宅。曰、子之宅近市、湫隘嚻塵。不可以居。湫、下。隘、小。嚻、聲。塵、土。○湫、子小反。徐音秋。又在酒反。
【読み】
初め、景公晏子の宅を更めんと欲す。曰く、子の宅市に近くして、湫隘[しょうあい]嚻塵[ごうじん]なり。以て居る可からず。湫は、下[ひく]き。隘は、小さき。嚻は、聲。塵は、土。○湫は、子小反。徐音秋。又在酒反。
請更諸爽塏者。爽、明。塏、燥。○塏、音凱。
【読み】
請う、諸を爽塏[そうがい]なる者に更めん、と。爽は、明らか。塏は、燥く。○塏は、音凱。
辭曰、君之先臣容焉。先臣、晏子之先人。
【読み】
辭して曰く、君の先臣容れたり。先臣は、晏子の先人。
臣不足以嗣之、於臣侈矣。侈、奢也。
【読み】
臣以て之を嗣ぐに足らざれば、臣に於ては侈れるなり。侈は、奢るなり。
且小人近市、朝夕得所求、小人之利也。敢煩里旅。旅、衆也。不敢勞衆爲己宅。
【読み】
且つ小人市に近くして、朝夕求むる所を得るは、小人の利なり。敢えて里旅を煩わさんや、と。旅は、衆なり。敢えて衆を勞して己が宅を爲さず。
公笑曰、子近市。識貴賤乎。對曰、旣利之。敢不識乎。公曰、何貴何賤。於是景公繁於刑、繁、多也。
【読み】
公笑いて曰く、子市に近し。貴賤を識れりや、と。對えて曰く、旣に之を利とす。敢えて識らざらんや、と。公曰く、何れか貴く何れか賤しき、と。是に於て景公刑を繁[おお]くして、繁は、多きなり。
有鬻踊者。故對曰、踊貴屨賤。旣已告於君。故與叔向語而稱之。傳護晏子、令不與張趯同譏。○鬻、羊六反。賣也。
【読み】
踊を鬻[ひさ]ぐ者有り。故に對えて曰く、踊は貴く屨は賤し、と。旣已に君に告げぬ。故に叔向と語りて之を稱せり。傳晏子を護して、張趯と譏りを同じくせざらしむ。○鬻[いく]は、羊六反。賣るなり。
景公爲是省於刑。
【読み】
景公是が爲に刑を省けり。
君子曰、仁人之言、其利博哉。晏子一言而齊侯省刑。詩曰、君子如祉、亂庶遄已。詩小雅。如、行也。祉、福也。遄、疾也。言君子行福、則庶幾亂疾止也。○爲、于僞反。
【読み】
君子曰く、仁人の言は、其の利博いかな。晏子一言にして齊侯刑を省けり。詩に曰く、君子祉[さいわい]を如[おこな]わば、亂庶わくは遄[すみ]やかに已まん、と。詩は小雅。如は、行うなり。祉は、福なり。遄は、疾やかなり。言うこころは、君子福を行わば、則ち庶幾わくは亂疾やかに止まん。○爲は、于僞反。
其是之謂乎。
【読み】
其れ是を之れ謂うか、と。
及晏子如晉、公更其宅。反則成矣。旣拜、拜、謝新宅。
【読み】
晏子が晉に如くに及びて、公其の宅を更む。反れば則ち成れり。旣に拜して、拜は、新宅を謝するなり。
乃毀之而爲里室、皆如其舊、本壞里室以大晏子之宅。故復之。○壞、音怪。
【読み】
乃ち之を毀ちて里室と爲して、皆其の舊の如くにして、本里室を壞りて以て晏子の宅を大にす。故に之を復す。○壞は、音怪。
則使宅人反之。還其故室。○還、音環。
【読み】
則ち宅人をして之を反さしむ。其の故室を還す。○還は、音環。
且諺曰、非宅是卜。唯鄰是卜。卜良鄰。
【読み】
且つ諺に曰く、宅を是れ卜するに非ず。唯鄰を是れ卜す、と。良鄰を卜す。
二三子先卜鄰矣。二三子、謂鄰人。
【読み】
二三子先に鄰を卜せり。二三子は、鄰人を謂う。
違卜不祥。君子不犯非禮、去儉卽奢爲非禮。
【読み】
卜に違うは不祥なり。君子は非禮を犯さず、儉を去りて奢に卽くを非禮と爲す。
小人不犯不祥、古之制也。吾敢違諸乎。卒復其舊宅。公弗許。因陳桓子以請。乃許之。傳言齊・晉之衰、賢臣懷憂、且言陳氏之興。
【読み】
小人は不祥を犯さざるは、古の制なり。吾れ敢えて諸に違わんや、と。卒に其の舊宅に復る。公許さず。陳桓子に因りて以て請う。乃ち之を許す。傳齊・晉の衰えて、賢臣憂えを懷くを言い、且つ陳氏の興るを言う。
夏、四月、鄭伯如晉。公孫段相。甚敬而卑、禮無違者。晉侯嘉焉、授之以策、策、賜命之書。
【読み】
夏、四月、鄭伯晉に如く。公孫段相く。甚だ敬して卑しく、禮違う者無し。晉侯嘉して、之を授くるに策を以てして、策は、命を賜うの書なり。
曰、子豐有勞於晉國、子豐、段之父。
【読み】
曰く、子豐が晉國に勞有りしこと、子豐は、段の父。
余聞而弗忘。賜女州田、州縣、今屬河内郡。○女、音汝。
【読み】
余聞きて忘れず。女に州の田を賜いて、州縣は、今河内郡に屬す。○女は、音汝。
以胙乃舊勳。伯石再拜稽首、受策以出。
【読み】
以て乃の舊勳に胙[むく]ゆ、と。伯石再拜稽首して、策を受けて以て出づ。
君子曰、禮其人之急也乎。伯石之汰也、汰、驕也。
【読み】
君子曰く、禮は其れ人の急なるか。伯石の汰[おご]るも、汰は、驕るなり。
一爲禮於晉、猶荷其祿。況以禮終始乎。詩曰、人而無禮、胡不遄死。其是之謂乎。
【読み】
一たび禮を晉に爲して、猶其の祿を荷えり。況んや禮を以て終始するをや。詩に曰く、人として禮無くんば、胡ぞ遄やかに死せざる、と。其れ是を之れ謂うか、と。
初、州縣、欒豹之邑也。豹、欒盈族。○荷、戶可反。
【読み】
初め、州縣は、欒豹の邑なり。豹は、欒盈の族。○荷は、戶可反。
及欒氏亡、范宣子・趙文子・韓宣子皆欲之。文子曰、溫吾縣也。州本屬溫。溫、趙氏邑。
【読み】
欒氏が亡ぶるに及びて、范宣子・趙文子・韓宣子皆之を欲す。文子曰く、溫は吾が縣なり、と。州は本溫に屬す。溫は、趙氏の邑。
二宣子曰、自郤稱以別三傳矣。郤稱、晉大夫。始受州。自是州與溫別、至今傳三家。○稱、尺證反。傳、直專反。
【読み】
二宣子曰く、郤稱よりして以て別れて三傳せり。郤稱は、晉の大夫。始めて州を受く。是よりして州は溫と別れ、今に至りて
三家に傳えたり。○稱は、尺證反。傳は、直專反。
晉之別縣、不唯州。誰獲治之。言縣邑旣別甚多。無有得追而治取之。
【読み】
晉の縣を別つこと、唯州のみにあらず。誰か之を治むることを獲ん、と。言うこころは、縣邑旣に別るること甚だ多し。追て之を治め取ることを得ること有ること無し。
文子病之、乃舍之。二子曰、吾不可以正議而自與也。皆舍之。
【読み】
文子之を病[うれ]え、乃ち之を舍つ。二子曰く、吾れ正議を以てして自ら與う可からず、と。皆之を舍つ。
及文子爲政、趙獲曰、可以取州矣。獲、文子之子。○乃舍、音赦。又音捨。下同。
【読み】
文子が政を爲すに及びて、趙獲曰く、以て州を取る可し、と。獲は、文子の子。○乃舍は、音赦。又音捨。下も同じ。
文子曰、退。使獲退也。
【読み】
文子曰く、退け。獲をして退かしむるなり。
二子之言義也。二子、二宣子也。
【読み】
二子の言は義なり。二子は、二宣子なり。
違義禍也。余不能治余縣。又焉用州。其以徼禍也。君子曰、弗知實難。患不知禍所起。
【読み】
義に違うは禍なり。余余が縣を治むること能わず。又焉ぞ州を用いんや。其れ以て禍を徼めんや。君子曰く、知らざるは實に難し。禍の起こる所を知らざるを患う。
知而弗從、禍莫大焉。有言州必死。
【読み】
知りて從わざるは、禍焉より大なるは莫し、と。州を言うこと有らば必ず死せん、と。
豐氏故主韓氏。故、猶舊也。豐氏至晉、舊以韓氏爲主人。
【読み】
豐氏は故より韓氏を主とす。故は、猶舊のごとし。豐氏晉に至れば、舊より韓氏を以て主人と爲す。
伯石之獲州也、韓宣子爲之請之。爲其復取之之故。後若還晉、因自欲取之。爲七年、豐氏歸州張本。○爲、去聲。自爲介外皆同。
【読み】
伯石の州を獲るや、韓宣子之が爲に之を請えるなり。其の復すとき之を取らんが爲の故なり。後若し晉に還さば、因りて自ら之を取らんと欲す。七年、豐氏州を歸す爲の張本なり。○爲は、去聲。爲介より外は皆同じ。
五月、叔弓如滕、葬滕成公。子服椒爲介。及郊、遇懿伯之忌、敬子不入。忌、怨也。懿伯、椒之叔父。敬子、叔弓也。叔弓禮椒、爲之辟仇。○辟、音避。
【読み】
五月、叔弓滕に如きて、滕の成公を葬る。子服椒介爲り。郊に及び、懿伯の忌に遇い、敬子入らず。忌は、怨むなり。懿伯は、椒の叔父。敬子は、叔弓なり。叔弓椒を禮するは、之が仇を辟けるが爲なり。○辟は、音避。
惠伯曰、公事有公利、無私忌。椒請先入。乃先受館。敬子從之。惠伯、子服椒也。傳言叔弓之有禮。
【読み】
惠伯曰く、公事には公利有りて、私忌無し。椒請う、先ず入らん、と。乃ち先ず館を受く。敬子之に從う。惠伯は、子服椒なり。傳叔弓の禮有るを言う。
晉韓起如齊逆女。爲平公逆。
【読み】
晉の韓起齊に如きて女を逆う。平公の爲に逆う。
公孫蠆爲少姜之有寵也、以其子更公女、而嫁公子。更嫁公女。○蠆、敕邁反。更、平聲。
【読み】
公孫蠆[こうそんたい]少姜の寵有りしが爲に、其の子を以て公女に更えて、公の子を嫁がしむ。公の女を更め嫁す。○蠆は、敕邁反。更は、平聲。
人謂宣子、子尾欺晉。晉胡受之。宣子曰、我欲得齊而遠其寵、寵將來乎。寵謂子尾。○遠、去聲。
【読み】
人宣子に謂えらく、子尾晉を欺く。晉胡ぞ之を受けん、と。宣子曰く、我れ齊を得んと欲して其の寵を遠ざけば、寵將來らんや、と。寵は子尾を謂う。○遠は、去聲。
秋、七月、鄭罕虎如晉、賀夫人。
【読み】
秋、七月、鄭の罕虎晉に如きて、夫人を賀す。
且告曰、楚人日徵敝邑、以不朝立王之故。楚靈王新立。
【読み】
且つ告げて曰く、楚人日々に敝邑を徵すに、立王に朝せざるの故を以てす。楚の靈王新たに立つ。
敝邑之往、則畏執事、其謂寡君而固有外心。其不往、則宋之盟云。云交相見。
【読み】
敝邑往かば、則ち執事の、其れ寡君を而[なんじ]固より外心有りと謂わんことを畏る。其れ往かざるときは、則ち宋の盟に云えり。交々相見えんと云う。
進退罪也。寡君使虎布之。布、陳也。
【読み】
進退罪あり。寡君虎をして之を布かしむ、と。布は、陳ぶるなり。
宣子使叔向對曰、君若辱有寡君、在楚何害。脩宋盟也。君苟思盟、寡君乃知免於戾矣。君若不有寡君、雖朝夕辱於敝邑、寡君猜焉。猜、疑也。
【読み】
宣子叔向をして對えしめて曰く、君若し辱く寡君を有せば、楚に在るも何の害あらん。宋の盟を脩むるなり。君苟も盟を思わば、寡君乃ち戾[つみ]に免るることを知れり。君若し寡君を有せざれば、朝夕に敝邑に辱くすと雖も、寡君猜[うたが]わん。猜は、疑うなり。
君實有心、何辱命焉。言若有事晉心、至楚可不須告。
【読み】
君實に心有らば、何ぞ命ずることを辱くせん。言うこころは、若し晉に事うる心有らば、楚に至るも告ぐることを須いざる可し。
君其往也。苟有寡君、在楚猶在晉也。
【読み】
君其れ往け。苟も寡君を有せば、楚に在るも猶晉に在るがごとし、と。
張趯使謂大叔曰、自子之歸也、歸、在此年春。
【読み】
張趯大叔に謂わしめて曰く、子の歸りしより、歸は、此の年の春に在り。
小人糞除先人之敝廬、曰、子其將來。今子皮實來。小人失望。大叔曰、吉賤。不獲來。賤、非上卿。
【読み】
小人先人の敝廬を糞除して、曰く、子其れ將に來らんとす、と。今子皮實に來れり。小人望みを失えり、と。大叔曰く、吉は賤し。來ることを獲ず。賤しとは、上卿に非ざるなり。
畏大國、尊夫人也。且孟曰而將無事。吉庶幾焉。孟、張趯也。庶幾如趯言。
【読み】
大國を畏れ、夫人を尊びてなり。且つ孟而[なんじ]將に事無からんとすと曰えり。吉庶幾えり、と。孟は、張趯なり。趯が言の如くならんことを庶幾う。
小邾穆公來朝。季武子欲卑之。不欲以諸侯禮待之。
【読み】
小邾穆公來朝す。季武子之を卑しめんと欲す。諸侯の禮を以て之を待することを欲せず。
穆叔曰、不可。曹・滕・二邾、實不忘我好。敬以逆之、猶懼其貳。又卑一睦焉、一睦、謂小邾。
【読み】
穆叔曰く、不可なり。曹・滕・二邾は、實に我が好を忘れず。敬して以て之を逆うるも、猶其の貳あらんことを懼る。又一睦を卑しまば、一睦は、小邾を謂う。
逆羣好也。其如舊而加敬焉。志曰、能敬無災。又曰、敬逆來者、天所福也。季孫從之。
【読み】
羣好に逆うなり。其れ舊の如くにして敬を加えよ。志に曰く、能く敬すれば災い無し、と。又曰く、敬して來者を逆うるは、天の福する所なり、と。季孫之に從う。
八月、大雩、旱也。
【読み】
八月、大いに雩するは、旱すればなり。
齊侯田於莒。莒、齊東竟。○好、去聲。
【読み】
齊侯莒に田[かり]す。莒は、齊の東竟。○好は、去聲。
盧蒲嫳見、泣且請曰、余髮如此種種。余奚能爲。嫳、慶封之黨。襄二十八年、放之於竟。種種、短也。自言衰老、不能復爲害。○嫳、普結反。見、賢遍反。種、章勇反。
【読み】
盧蒲嫳[きょほべつ]見え、泣き且つ請いて曰く、余が髮此の如く種種たり。余奚ぞ能くせん、と。嫳は、慶封の黨。襄二十八年、之を竟に放つ。種種は、短きなり。自ら衰老して、復害を爲すこと能わずと言う。○嫳は、普結反。見は、賢遍反。種は、章勇反。
公曰、諾。吾告二子。二子、子雅・子尾。
【読み】
公曰く、諾。吾れ二子に告げん、と。二子は、子雅・子尾。
歸而告之。子尾欲復之。子雅不可、曰、彼其髮短、而心甚長。其或寢處我矣。言不可信。
【読み】
歸りて之を告ぐ。子尾之を復さんと欲す。子雅可[き]かずして、曰く、彼れ其の髮短くして、心甚だ長し。其れ或は我に寢處せん、と。言うこころは、信ず可からず。
九月、子雅放盧蒲嫳于北燕。恐其復作亂。
【読み】
九月、子雅盧蒲嫳を北燕に放つ。其の復亂を作さんことを恐る。
燕簡公多嬖寵。欲去諸大夫、而立其寵人。冬、燕大夫比以殺公之外嬖。比、相親比。○去、上聲。比、毗志反。
【読み】
燕の簡公嬖寵多し。諸大夫を去りて、其の寵人を立てんと欲す。冬、燕の大夫比して以て公の外嬖を殺す。比は、相親比するなり。○去は、上聲。比は、毗志反。
公懼、奔齊。
【読み】
公懼れ、齊に奔る。
書曰北燕伯款出奔齊、罪之也。款罪輕於衛衎、重於蔡朱。故舉中示例。○衎、苦旦反。
【読み】
書して北燕伯款出でて齊に奔ると曰うは、之を罪するなり。款の罪衛衎[かん]より輕くして、蔡朱より重し。故に中を舉げて例を示す。○衎は、苦旦反。
十月、鄭伯如楚。子產相。楚子享之、賦吉日。吉日、詩小雅。宣王田獵之詩。楚王欲與鄭伯共田。故賦之。
【読み】
十月、鄭伯楚に如く。子產相く。楚子之を享して、吉日を賦す。吉日は、詩の小雅。宣王田獵するの詩なり。楚王鄭伯と共に田せんと欲す。故に之を賦す。
旣享。子產乃具田備。王以田江南之夢。楚之雲夢、跨江南北。○夢、如字。又莫公反。
【読み】
旣に享す。子產乃ち田の備えを具う。王以て江南の夢に田す。楚の雲夢は、江の南北に跨る。○夢は、字の如し。又莫公反。
齊公孫竈卒。竈、子雅。
【読み】
齊の公孫竈[こうそんそう]卒す。竈は、子雅。
司馬竈見晏子、司馬竈、齊大夫。
【読み】
司馬竈晏子を見て、司馬竈は、齊の大夫。
曰、又喪子雅矣。晏子曰、惜也、子旗不免。殆哉。以其不臣。○喪、息浪反。
【読み】
曰く、又子雅を喪えり、と。晏子曰く、惜しいかな、子旗免れじ。殆きかな。其の不臣を以てなり。○喪は、息浪反。
姜族弱矣。而嬀將始昌。嬀、陳氏。○嬀、九危反。
【読み】
姜の族弱りたり。而して嬀[き]將に始めて昌えんとす。嬀は、陳氏。○嬀は、九危反。
二惠競爽、猶可。子雅・子尾、齊惠公之孫也。競、彊也。爽、明也。
【読み】
二惠競爽せば、猶可なり。子雅・子尾は、齊の惠公の孫なり。競は、彊きなり。爽は、明らかなり。
又弱一个焉。姜其危哉。○个、古賀反。
【読み】
又一个[いっか]を弱くす。姜其れ危うきかな、と。○个は、古賀反。
昭
經元年。不稱將。下匠反。下同。帥。所類反。言易。以豉反。大鹵。音魯。莒展出奔吳。一本作莒展輿。○今本亦同。疆鄆。居良反。注同。以瘧。音虐。書弑。申志反。或作殺。音同。
傳。且娶。七住反。爲介。音界。注同。從者。才用反。辱貺。音況。布几。木亦作机。筵。音延。莊共。音恭。草莽。莫蕩反。而懲。直升反。不憾。戶暗反。所雍。於勇反。本又作壅。注及下注同。○今本亦壅。垂櫜。古刀反。復得。扶又反。下雖復同。而駕。如字。又音加。注及下同。子相。息亮反。東夏。戶雅反。淳于。音純。不罷。音皮。謗讟。音獨。誹也。方畏反。行僭。子念反。下同。是穮。彼驕反。是蔉。古本反。耘也。音云。除草也。耕鉏。仕居反。鮮不。息淺反。特緝。七入反。誕也。音但。便簒。初患反。小旻。亡巾反。馮河。皮冰反。絞。古卯反。而婉。紆阮反。注同。臧否。悲矣反。舊方九反。持之。如字。本或作恃、誤。當身。丁浪反。瀆齊。徒木反。其使。所吏反。下注其使・出使・下召使者同。相趙。息亮反。注同。以藩。方元反。之隙。去逆反。之咎。其九反。注同。也賄。呼罪反。辟汚。音烏。注及下同。疆。居良反。注及下至莒之疆事同。場。音亦。注同。表旗。音其。饕。吐刀反。餮。吐結反。夏有。戶雅反。觀。舊音官。扈。音戶。鄠縣。音戶。邳。皮悲反。嬴姓。音盈。狎主。戶甲反。吳濮。音卜。有釁。許靳反。禦也。魚呂反。○今本無也字。宥善。音又。小宛。紆阮反。可復。扶又反。襃姒。音似。過鄭。古禾反。猶與賓客享之。許丈反。又普庚反。於幕。武博反。采蘩。音煩。死麏。九倫反。○今本麕。使尨。武江反。也吠。扶廢反。兕爵。徐履反。於戾。力計反。下同。於潁。營井反。於雒汭。如銳反。劉夏。戶雅反。弁端委。本亦作弁冕端委。○今本亦同。子蓋。戶臘反。何不也。亦遠績功。本或作亦遠績禹功。○今本亦同。大庇。必利反。又音祕。焉能。於虔反。下焉用・焉能同。吾儕。仕皆反。朝不。如字。下同。以語。魚據反。而耄。莫報反。不歆。許金反。曾夭。於兆反。幾被。音祈。曾阜。扶九反。欲贏。音盈。注同。惡讙。呼端反。或作喧。○今本亦喧。指楹。音盈。贄幣。音至。櫜甲。古刀反。本或作衷。丁隆反。及衝。尺容反。奸之。音干。女嬖。必計反。弗下。戶嫁反。無重。直用反。又直勇反。而蔡。素葛反。說文作■(上が殺、下が米)。音同。字從殺下米。云、■(左が米、右が悉)■(上が殺、下が米)散之也。會杜義。千乘。繩證反。下及注同。爲晉侯。于僞反。造舟。李巡注爾雅云、比其舩而度也。郭云、倂舟爲橋。自齎。子兮反。本又作賚、同。而還。音環。不徑。古定反。己坐。才臥反。女叔齊。音汝。其幾何。居豈反。下同。鮮不。息淺反。注同。五稔。而甚反。不啻。始豉反。視蔭。本亦作陰。朝夕。如字。注同。翫歲。五喚反。說文云、習厭也。又作忨。云、貪也。其與。如字。又音預。鄭爲。于僞反。閨門。音圭。實薰。許云反。隧。音遂。數子皙。色主反。又色具反。大原。音泰。崇卒。子忽反。下及注皆同。又阨。本又作隘。不便。婢面反。以什。音十。以徇。辭俊反。疆鄆。居良反。注同。務婁。竝如字。厖。武江反。也夫。音扶。爲崇。息遂反。帝嚳。苦毒反。相土。息亮反。大夏。戶雅反。注及下同。主參。所林反。注及下同。方震。本又作娠。之愼反。懷胎。他來反。有裔。以制反。曰昧。音妹。爲玄冥師。師、長也。少暭。詩照反。下戶老反。之長。丁丈反。下殖長同。纂昧。子管反。宣汾。扶云反。陂障。彼皮反。顓頊。音專。下許玉反。姒。音似。癘。音例。疫。音役。禜之。徐一音營。哀樂。音洛。朝以。如字。湫。徐一音在酒反。服云、著也。底。服云、止也。露羸。劣危反。下同。嬪御。婢人反。辨別。彼列反。去同。起呂反。幾何。居豈反。而好。呼報反。怙富。音戶。近女。附近之近。下同。如蠱。音古。不佑。音又。以降。音絳。下及注同。或音戶江反。堙。音因。爲菑。音災。下同。喘渴。昌兗反。洩注。息列反。下如字。思慮。息利反。主相。息亮反。其咎。其九反。能御。魚呂反。本亦作禦。○今本亦禦。淫溺。乃狄反。耆欲。時志反。○今本嗜。皿蟲。字林、音猛。巽下。音遜。艮上。古恨反。長女。丁丈反。下同。少男。詩照反。下同。而說。音悅。櫟。徐失灼反。郟。古洽反。爲介。音界。出竟。音境。殺之。申志反。○今本弑。絞也。古卯反。幕。音莫。平夏。戶雅反。宮廐。居久反。五乘。繩證反。下同。之餼。許氣反。一卒。子忽反。不侮。亡甫反。鰥寡。古頑反。史佚。音逸。自別。彼列反。薳啓彊。一音居良反。汰侈。音泰。旣烝。之承反。趙衰。初危反。
經二年。少姜。詩照反。傳放此。致襚。音遂。
傳。脩好。呼報反。所以王。周弘正依字讀。四臣。大顚・閎夭・散宜生・南宮适。四輔。謂先後・奔奏・疏附・禦侮。彌縫。扶恭反。補合。如字。一音閤。賦節。徐如字。式訛。五禾反。殖長。丁丈反。召南。上照反。下同。爲平公。于僞反。下文爲之請同。亢也。苦浪反。○今本無也字。淇。音其。爲好。呼報反。後文注皆同。介休。音界。下許虯反。○今本介作界。以近。附近之近。下同。驛。音亦。女矯。居表反。朝夕。如字。下同。以印。一刃反。之衢。其于反。非伉。苦浪反。儷。力計反。其使。所吏反。
經三年。
傳。閒朝。閒厠之閒。守適。本或作嫡。而令。力呈反。復薦。扶又反。下不出者皆同。朝夕。如字。不腆。他典反。焜。服云、明也。燿。羊照反。服云、照也。殞命。于敏反。○今本隕。之好。呼報反。大公。音泰。要也。一遙反。敢譽。音餘。嬪廧。本又作嬙。在良反。○今本亦嬙。在衰。七雷反。本亦作縗。今本亦縗。絰。直結反。其貺。音況。吾弗知。絕句。以五升爲豆四豆爲區四區爲釜。舊本如此。直加豆爲五升。而區釜自大。故杜云、區二斗、釜八斗、是也。本或作五豆爲區、五區爲釜者謂加舊豆爲五、亦與杜注相會。非於五升之豆又五五而加也。○今本亦五豆爲區、五區爲釜。量貸。他代反。蛤。古答反。賦斂。力驗反。公聚。徐在喩反。一音在主反。朽蠹。丁故反。三老。服云、工老・商老・農老也。凍。丁貢反。餒。奴罪反。上壽。音授。下同。以上。時掌反。○今本以作已。屨賤。九具反。刖者。音月。又五刮反。而或燠。徐音憂。又於到反。休之。賈云、燠、厚也。休、美也。將焉。於虔反。其相。息亮反。服如字。卒列。子忽反。注同。無長。丁丈反。注同。罷敝。音皮。滋侈。尺氏反。又昌氏反。道殣。說文云、道中死者人所覆也。毛詩、作墐。傳云、墐路冢也。欒郤。去逆反。皁。才早反。隸。力計反。不悛。七全反。以樂。一音岳。慆憂。吐刀反。讒鼎。仕咸反。服云、疾讒之鼎也。昧旦。音妹。丕顯。普悲反。怠解。佳賣反。○今本解怠。況日。人實反。此難。乃旦反。近市。附近之近。下同。隘。於賣反。嚻塵。許驕反。一音五高反。爽塏。苦待反。燥也。素早反。朝夕。如字。下雖朝夕同。令不與。力呈反。省於。所景反。下同。如祉。音恥。遄。市專反。故復。音服。下卒復・爲其復・欲復之同。諺曰。音彥。段相。息亮反。筴。初革反。○今本策。以胙。才路反。之汰。音泰。猶荷。任也。一音可。以別。絕句。又焉。於虔反。爲介。音界。猜焉。七才反。糞除。甫問反。東竟。音境。盧蒲嫳。一音匹舌反。子產相。息亮反。