春秋左氏傳校本第五
僖公 起元年盡十五年
晉 杜氏 集解
唐 陸氏 音義
尾張 秦 鼎 校本
僖公 名申。莊公之子。閔公之兄。母成風。謚法、小心畏忌曰僖。
【読み】
僖公 名は申。莊公の子。閔公の兄。母は成風。謚法に、小心畏忌するを僖と曰う、と。
〔經〕元年、春、王正月、齊師・宋師・曹師次于聶北、救邢。齊帥諸侯之師、救邢、次于聶北者、案兵觀釁、以待事也。次例在莊三年。聶北、邢地。○聶、女輒反。
【読み】
〔經〕元年、春、王の正月、齊の師・宋の師・曹の師聶北[しょうほく]に次[やど]りて、邢を救う。齊諸侯の師を帥いて、邢を救い、聶北に次るは、兵を案じて釁[きん]を觀て、以て事を待つなり。次の例は莊三年に在り。聶北は、邢の地。○聶は、女輒反。
*曹師について、頭注に「曹師作伯、誤。此三國皆師多、而大夫將。故名氏不見、竝称師。」とある。
夏、六月、邢遷于夷儀。邢遷如歸。故以自遷爲辭。夷儀、邢地。
【読み】
夏、六月、邢夷儀に遷る。邢の遷ること歸るが如し。故に自ら遷るを以て辭と爲す。夷儀は、邢の地。
齊師・宋師・曹師城邢。傳例曰、救患分災、禮也。一事而再列三國、於文不可言諸侯師故。
【読み】
齊の師・宋の師・曹の師邢に城く。傳例に曰く、患えを救い災いに分かつは、禮なり、と。一事にして再び三國を列ぬるは、文に於て諸侯の師と言う可からざる故なり。
秋、七月、戊辰、夫人姜氏薨于夷。齊人以歸。傳在閔二年。不言齊人殺、諱之。書地者、明在外薨。
【読み】
秋、七月、戊辰[つちのえ・たつ]、夫人姜氏夷に薨ず。齊人以[い]て歸る。傳は閔二年に在り。齊人殺すと言わざるは、之を諱みてなり。地を書すは、外に在りて薨ずることを明かすなり。
楚人伐鄭。荆始改號曰楚。
【読み】
楚人鄭を伐つ。荆始めて號を改めて楚と曰う。
八月、公會齊侯・宋公・鄭伯・曹伯・邾人于檉。檉、宋地。陳國陳縣西北有檉城。公及其會。而不書盟、還不以盟告。○檉、勅呈反。
【読み】
八月、公齊侯・宋公・鄭伯・曹伯・邾人[ちゅひと]に檉[てい]に會す。檉は、宋の地。陳國陳縣の西北に檉城有り。公其の會に及びぬ。而るに盟を書さざるは、還りて盟を以て告げざればなり。○檉は、勅呈反。
九月、公敗邾師于偃。偃、邾地。
【読み】
九月、公邾の師を偃[えん]に敗る。偃は、邾の地。
冬、十月、壬午、公子友帥師敗莒師于酈、獲莒挐。酈、魯地。挐、莒子之弟。不書弟者、非卿。非卿則不應書、嘉季友之功。故特書其所獲。大夫、生死皆曰獲。獲例在昭二十三年。○酈、力知反。挐、女居反。又女加反。
【読み】
冬、十月、壬午[みずのえ・うま]、公子友師を帥いて莒の師を酈に敗り、莒の挐[じょ]を獲。酈は、魯の地。挐は、莒子の弟なり。弟と書さざるは、卿に非ざればなり。卿に非ざれば則ち書す應からざるも、季友の功を嘉す。故に特に其の獲る所を書す。大夫は、生死皆獲と曰う。獲の例は昭二十三年に在り。○酈は、力知反。挐は、女居反。又女加反。
十有二月、丁巳、夫人氏之喪至自齊。僖公請而葬之。故告於廟、而書喪至也。齊侯旣殺哀姜、以其尸歸、絕之於魯、僖公請其喪而還、不稱姜、闕文。
【読み】
十有二月、丁巳[ひのと・み]、夫人氏の喪齊より至る。僖公請いて之を葬る。故に廟に告げて、喪の至るを書すなり。齊侯旣に哀姜を殺して、其の尸を以て歸り、之を魯に絕てども、僖公其の喪を請いて還せるに、姜を稱せざるは、闕文なり。
〔傳〕元年、春、不稱卽位、公出故也。國亂、身出、復入。故卽位之禮有闕。
【読み】
〔傳〕元年、春、卽位を稱せざるは、公出づる故なり。國亂れ、身出でて、復入る。故に卽位の禮闕くること有り。
公出復入。不書、諱之也。諱國惡、禮也。掩惡揚善、義存君親。故通有諱例。皆當時臣子率意而隱。故無深淺常準。聖賢從之、以通人理。有時而聽之可也。
【読み】
公出でて復入る。書さざるは、之を諱みてなり。國惡を諱むは、禮なり。惡を掩い善を揚ぐるは、義君親を存するなり。故に通じて諱の例有り。皆當時の臣子意に率いて隱す。故に深淺の常準無し。聖賢之に從いて、以て人理を通ず。時有りて之を聽[ゆる]して可なり。
諸侯救邢。實大夫。而曰諸侯、總衆國之辭。
【読み】
諸侯邢を救う。實は大夫なり。而るに諸侯と曰うは、衆國を總ぶるの辭なり。
邢人潰、出奔師。奔聶北之師也。邢潰不書、不告也。
【読み】
邢人潰[つい]え、出でて師に奔る。聶北の師に奔るなり。邢潰えること書さざるは、告げざればなり。
師遂逐狄人、具邢器用而遷之、師無私焉。皆撰具還之、無所私取。○撰、仕眷反。
【読み】
師遂に狄人を逐い、邢の器用を具えて之を遷して、師私すること無し。皆撰具して之を還して、私に取る所無し。○撰は、仕眷反。
夏、邢遷于夷儀。諸侯城之、救患也。
【読み】
夏、邢夷儀に遷る。諸侯之に城くは、患えを救うなり。
凡侯伯、救患、分災、討罪、禮也。侯伯、州長也。分穀帛。○分、甫問反。又如字。
【読み】
凡そ侯伯、患えを救い、災いに分かち、罪を討つは、禮なり。侯伯は、州長なり。穀帛を分かつなり。○分は、甫問反。又字の如し。
秋、楚人伐鄭、鄭卽齊故也。
【読み】
秋、楚人鄭を伐つは、鄭齊に卽く故なり。
盟于犖、謀救鄭也。犖、卽檉也。地有二名。○犖、音洛。
【読み】
犖[らく]に盟うは、鄭を救わんことを謀るなり。犖は、卽ち檉なり。地に二名有り。○犖は、音洛。
九月、公敗邾師于偃、虛丘之戍將歸者也。虛丘、邾地。邾人旣送哀姜還、齊人殺之。因戍虛丘、欲以侵魯、公以義求齊、齊送姜氏之喪、邾人懼乃歸。故公要而敗之。○虛、起居反。要、於遙反。
【読み】
九月、公邾の師を偃に敗るは、虛丘の戍の將に歸らんとする者なり。虛丘は、邾の地。邾人旣に哀姜を送りて還して、齊人之を殺す。因りて虛丘を戍り、以て魯を侵さんと欲するに、公義を以て齊に求め、齊姜氏の喪を送れば、邾人懼れて乃ち歸る。故に公要して之を敗る。○虛は、起居反。要は、於遙反。
冬、莒人來求賂。求還慶父之賂。
【読み】
冬、莒人來りて賂を求む。慶父を還すの賂を求む。
公子友敗諸酈、獲莒子之弟挐。非卿也。嘉獲之也。莒旣不能爲魯討慶父、受魯之賂、而又重來、其求無厭。故嘉季友之獲而書之。○重、直用反。
【読み】
公子友諸を酈に敗り、莒子の弟挐を獲。卿に非ず。之を獲るを嘉するなり。莒旣に魯の爲に慶父を討ずること能わずして、魯の賂を受けて、又重ねて來り、其の求め厭くこと無し。故に季友の獲たるを嘉して之を書す。○重は、直用反。
公賜季友汶陽之田及費。汶陽田、汶水北地。汶水、出泰山萊蕪縣、西入濟。○費、音祕。
【読み】
公季友に汶陽[ぶんよう]の田と費とを賜う。汶陽の田は、汶水の北の地。汶水は、泰山萊蕪縣に出でて、西して濟に入る。○費は、音祕。
夫人氏之喪至自齊。
【読み】
夫人氏の喪齊より至る。
君子以齊人之殺哀姜也、爲已甚矣。女子從人者也。言女子有三從之義。在夫家有罪、非父母家所宜討也。
【読み】
君子齊人の哀姜を殺すを以て、已甚[はなは]だしとす。女子は人に從う者なり。言うこころは、女子に三從の義有り。夫の家に在りて罪有るは、父母の家の宜しく討ずべき所に非ざるなり。
〔經〕二年、春、王正月、城楚丘。楚丘、衛邑。不言城衛、衛未遷。
【読み】
〔經〕二年、春、王の正月、楚丘に城く。楚丘は、衛の邑。衛に城くと言わざるは、衛未だ遷らざればなり。
夏、五月、辛巳、葬我小君哀姜。無傳。反哭成喪。故稱小君。例在定十五年。
【読み】
夏、五月、辛巳[かのと・み]、我が小君哀姜を葬る。傳無し。反哭して喪を成す。故に小君と稱す。例は定十五年に在り。
虞師・晉師滅下陽。下陽、虢邑。在河東大陽縣。晉於此始赴見經。滅例在襄十三年。○大、音泰。一如字。
【読み】
虞の師・晉の師下陽を滅ぼす。下陽は、虢の邑。河東大陽縣に在り。晉此に於て始めて赴[つ]げて經に見ゆ。滅の例は襄十三年に在り。○大は、音泰。一に字の如し。
秋、九月、齊侯・宋公・江人・黃人盟于貫。貫、宋地。梁國蒙縣西北有貰城。貰與貫字相似。江國、在汝南安陽縣。○貰、市夜反。又音世。
【読み】
秋、九月、齊侯・宋公・江人・黃人貫に盟う。貫は、宋の地。梁國蒙縣の西北に貰城有り。貰と貫と字相似たり。江國は、汝南安陽縣に在り。○貰は、市夜反。又音世。
冬、十月、不雨。傳在三年。
【読み】
冬、十月、雨ふらず。傳三年に在り。
楚人侵鄭。
【読み】
楚人鄭を侵す。
〔傳〕二年、春、諸侯城楚丘而封衛焉。君死國滅。故傳言封。
【読み】
〔傳〕二年、春、諸侯楚丘に城きて衛を封ず。君死し國滅ぶ。故に傳封ずと言う。
不書所會、後也。諸侯旣罷、而魯後至。諱不及期。故以獨城爲文。
【読み】
會する所を書さざるは、後れたればなり。諸侯旣に罷[かえ]りて、魯後れて至る。期に及ばざるを諱む。故に獨城くを以て文を爲す。
晉荀息請以屈產之乘、與垂棘之璧、假道於虞以伐虢。荀息、荀叔也。屈地生良馬、垂棘出美玉。故以爲名。四馬曰乘。自晉適虢、途出於虞。故借道。○屈、求勿反。又居勿反。乘、繩證反。
【読み】
晉の荀息屈產の乘と、垂棘の璧とを以て、道を虞に假りて以て虢を伐たんことを請う。荀息は、荀叔なり。屈の地良馬を生じ、垂棘美玉を出だす。故に以て名とす。四馬を乘と曰う。晉より虢に適くは、途虞より出づ。故に道を借るなり。○屈は、求勿反。又居勿反。乘は、繩證反。
公曰、是吾寶也。對曰、若得道於虞、猶外府也。公曰、宮之奇存焉。宮之奇、虞忠臣。
【読み】
公曰く、是れ吾が寶なり、と。對えて曰く、若し道を虞に得ば、猶外府のごとけん、と。公曰く、宮之奇存す、と。宮之奇は、虞の忠臣。
對曰、宮之奇之爲人也、懦而不能强諫。懦、弱也。○懦、乃亂反。又乃貨反。强、其良反。又其丈反。
【読み】
對えて曰く、宮之奇の人と爲りや、懦にして强諫すること能わず。懦は、弱きなり。○懦は、乃亂反。又乃貨反。强は、其良反。又其丈反。
且少長於君、君暱之。雖諫、將不聽。親而狎之。必輕其言。○少、詩照反。長、丁丈反。暱、女乙反。
【読み】
且つ少[わか]きより君に長じて、君之を暱[なじ]む。諫むと雖も、將に聽かざらんとす、と。親しんで之に狎る。必ず其の言を輕んぜん。○少は、詩照反。長は、丁丈反。暱は、女乙反。
乃使荀息假道於虞、曰、冀爲不道、入自顚軨、伐鄍三門、前是、冀伐虞至鄍。鄍、虞邑。河東大陽縣東北有顚軨坂。○軨、音零。坂、音反。
【読み】
乃ち荀息をして道を虞に假らしめて、曰く、冀不道を爲して、顚軨[てんれい]より入り、鄍[めい]の三門を伐ち、是より前、冀虞を伐ちて鄍に至れり。鄍は、虞の邑。河東大陽縣の東北に顚軨坂有り。○軨は、音零。坂は、音反。
冀之旣病、則亦唯君故。言虞報伐冀使病。將欲假道。故稱虞彊、以說其心。冀、國名。平陽皮氏縣東北有冀亭。
【読み】
冀の旣に病めるは、則ち亦唯君の故なり。言うこころは、虞冀を報伐して病ましめり。將に道を假らんと欲す。故に虞の彊きを稱して、以て其の心を說ばす。冀は、國の名。平陽皮氏縣の東北に冀亭有り。
今虢爲不道、保於逆旅、逆旅、客舍也。虢稍遣人分依客舍以聚衆、抄晉邊邑。○抄、初敎反。又楚稍反。强取物。
【読み】
今虢不道を爲し、逆旅を保ちて、逆旅は、客舍なり。虢稍[ようや]く人をして客舍に分依して以て衆を聚め、晉の邊邑を抄しめしむ。○抄は、初敎反。又楚稍反。强いて物を取るなり。
以侵敝邑之南鄙。敢請假道以請罪于虢。問虢伐己以何罪。
【読み】
以て敝邑の南鄙を侵せり。敢えて請う、道を假りて以て罪を虢に請わん、と。虢の己を伐つは何の罪を以てなるかを問う。
虞公許之、且請先伐虢。喜於厚賂、而欲求媚。
【読み】
虞公之を許し、且先ず虢を伐たんと請う。厚賂を喜びて、媚を求めんと欲す。
宮之奇諫。不聽。遂起師。
【読み】
宮之奇諫む。聽かず。遂に師を起こす。
夏、晉里克・荀息帥師、會虞師伐虢、滅下陽。晉猶主兵、不信虞。
【読み】
夏、晉の里克・荀息師を帥いて、虞の師に會して虢を伐ち、下陽を滅ぼす。晉猶兵を主るは、虞を信ぜざればなり。
先書虞、賄故也。虞非倡兵之首、而先書之、惡貪賄也。
【読み】
先ず虞を書すは、賄の故なり。虞倡兵の首に非ずして、先ず之を書すは、賄を貪るを惡んでなり。
秋、盟于貫、服江・黃也。江・黃、楚與國也。始來服齊。故爲合諸侯。
【読み】
秋、貫に盟うは、江・黃を服するなり。江・黃は、楚の與國なり。始めて來りて齊に服す。故に爲に諸侯を合わす。
齊寺人貂始漏師于多魚。寺人、内奄官、豎貂也。多魚、地名。闕。齊桓多嬖寵。内則如夫人者六人、外則幸豎貂・易牙之等、終以此亂國。傳言於此始貂擅貴寵、漏洩桓公軍事。爲齊亂張本。○寺、如字。又音侍。
【読み】
齊の寺人貂[ちょう]始めて師を多魚に漏らす。寺人は、内奄官、豎貂なり。多魚は、地の名。闕く。齊桓嬖寵多し。内は則ち夫人の如者六人、外は則ち豎貂・易牙の等を幸して、終に此を以て國を亂れり。傳此に於て始めて貂貴寵を擅[ほしいまま]にし、桓公の軍事を漏洩するを言う。齊亂る爲の張本なり。○寺は、字の如し。又音侍。
虢公敗戎于桑田。桑田、虢地。在弘農陝縣東北。
【読み】
虢公戎を桑田に敗る。桑田は、虢の地。弘農陝縣の東北に在り。
晉卜偃曰、虢必亡矣。亡下陽不懼、而又有功。是天奪之鑒、鑒、所以自照。
【読み】
晉の卜偃曰く、虢は必ず亡びん。下陽を亡いて懼れずして、又功有り。是れ天之が鑒を奪いて、鑒は、自ら照らす所以なり。
而益其疾也。驕則生疾。
【読み】
其の疾を益すなり。驕れば則ち疾を生ず。
必易晉而不撫其民矣。不可以五稔。稔、熟也。爲下五年、晉滅虢張本。○易、以豉反。
【読み】
必ず晉を易[あなど]りて其の民を撫でじ。以て五稔なる可からざらん。稔は、熟すなり。下五年、晉虢を滅ぼす爲の張本なり。○易は、以豉反。
冬、楚人伐鄭。鬭章囚鄭耼伯。經書侵、傳言伐、本以伐興、權行侵掠。爲後年楚伐鄭、鄭伯欲成張本。○耼、乃甘反。掠、音亮。
【読み】
冬、楚人鄭を伐つ。鬭章鄭の耼伯[たんはく]を囚う。經は侵と書し、傳は伐と言うは、本伐を以て興し、權[かり]に侵掠を行うなり。後年楚鄭を伐ち、鄭伯成[たい]らがんと欲する爲の張本なり。○耼は、乃甘反。掠は、音亮。
〔經〕三年、春、王正月、不雨。夏、四月、不雨。一時不雨、則書首月。傳例曰、不曰旱、不爲災。
【読み】
〔經〕三年、春、王の正月、雨ふらず。夏、四月、雨ふらず。一時雨ふらざれば、則ち首月を書す。傳例に曰く、旱すと曰わざるは、災いを爲さざればなり、と。
徐人取舒。無傳。徐國、在下邳僮縣東南。舒國、今廬江舒縣。勝國而不用大師、亦言取。例在襄十三年。
【読み】
徐人舒を取る。傳無し。徐國は、下邳僮縣の東南に在り。舒國は、今の廬江の舒縣。國に勝ちて大師を用いざるも、亦取ると言う。例は襄十三年に在り。
六月、雨。示旱不竟夏。
【読み】
六月、雨ふる。旱の夏を竟[お]えざるを示す。
秋、齊侯・宋公・江人・黃人會于陽穀。陽穀、齊地。在東平須昌縣北。
【読み】
秋、齊侯・宋公・江人・黃人陽穀に會す。陽穀は、齊の地。東平須昌縣の北に在り。
冬、公子友如齊涖盟。涖、臨也。○涖、音利。又音類。
【読み】
冬、公子友齊に如きて涖[のぞ]みて盟う。涖は、臨むなり。○涖は、音利。又音類。
楚人伐鄭。
【読み】
楚人鄭を伐つ。
〔傳〕三年、春、不雨。夏、六月、雨。自十月不雨、至于五月。不曰旱、不爲災也。周六月、夏四月。於播種五稼無損。
【読み】
〔傳〕三年、春、雨ふらず。夏、六月、雨ふる。十月より雨ふらずして、五月に至れり。旱すと曰わざるは、災いを爲さざればなり。周の六月は、夏の四月なり。五稼を播種するに於て損無し。
秋、會于陽穀、謀伐楚也。二年、楚侵鄭故。
【読み】
秋、陽穀に會するは、楚を伐たんことを謀るなり。二年、楚鄭を侵す故なり。
齊侯爲陽穀之會、來尋盟。冬、公子友如齊涖盟。公時不會陽穀。故齊侯自陽穀遣人詣魯求尋盟。魯使上卿詣齊受盟、謙也。
【読み】
齊侯陽穀の會の爲に、來りて盟を尋[かさ]ねんとす。冬、公子友齊に如きて涖みて盟う。公時に陽穀に會せず。故に齊侯陽穀より人をして魯に詣りて尋盟を求めしむ。魯上卿をして齊に詣りて盟を受けしむるは、謙るなり。
楚人伐鄭。鄭伯欲成。孔叔不可、曰、齊方勤我。孔叔、鄭大夫。勤、恤鄭難。
【読み】
楚人鄭を伐つ。鄭伯成[たい]らがんと欲す。孔叔可[き]かず、曰く、齊方に我に勤む。孔叔は、鄭の大夫。勤は、鄭の難を恤うるなり。
弃德不祥。祥、善也。
【読み】
德を弃[す]つるは不祥なり、と。祥は、善なり。
齊侯與蔡姬乘舟于囿。蕩公。蔡姬、齊侯夫人。蕩、搖也。囿、苑也。蓋魚池在苑中。
【読み】
齊侯蔡姬と舟に囿に乘る。公を蕩[うご]かす。蔡姬は、齊侯の夫人。蕩は、搖すなり。囿は、苑なり。蓋し魚池苑中に在るならん。
公懼、變色。禁之。不可。公怒。歸之。未絕之也。蔡人嫁之。爲明年齊侵蔡傳。
【読み】
公懼れ、色を變ず。之を禁ず。可かず。公怒る。之を歸す。未だ之を絕たざるなり。蔡人之を嫁す。明年齊蔡を侵す爲の傳なり。
〔經〕四年、春、王正月、公會齊侯・宋公・陳侯・衛侯・鄭伯・許男・曹伯侵蔡。蔡潰。民逃其上曰潰。例在文三年。
【読み】
〔經〕四年、春、王の正月、公齊侯・宋公・陳侯・衛侯・鄭伯・許男・曹伯に會して蔡を侵す。蔡潰[つい]ゆ。民其の上を逃るるを潰と曰う。例は文三年に在り。
遂伐楚、次于陘。遂、兩事之辭。楚强。齊欲綏之以德。故不速進而次陘。陘、楚地。潁川召陵縣南有陘亭。○陘、音刑。
【読み】
遂に楚を伐ち、陘に次[やど]る。遂は、兩事の辭。楚强し。齊之を綏んずるに德を以てせんと欲す。故に速やかに進まずして陘に次る。陘は、楚の地。潁川召陵縣の南に陘亭有り。○陘は、音刑。
夏、許男新臣卒。未同盟、而赴以名。
【読み】
夏、許男新臣卒す。未だ同盟せずして、赴[つ]ぐるに名を以てす。
楚屈完來盟于師。盟于召陵。屈完、楚大夫也。楚子遣完如師以觀齊。屈完覩齊之盛、因而求盟。故不稱使、以完來盟爲文。齊桓退舍以禮楚。故盟召陵。召陵、潁川縣也。
【読み】
楚の屈完來りて師に盟わんとす。召陵に盟う。屈完は、楚の大夫なり。楚子完をして師に如きて以て齊を觀せしむ。屈完齊の盛んなるを覩て、因りて盟を求む。故に使と稱せずして、完の來盟を以て文を爲す。齊桓退舍して以て楚を禮す。故に召陵に盟う。召陵は、潁川縣なり。
齊人執陳轅濤塗。轅濤塗、陳大夫。
【読み】
齊人陳の轅濤塗[えんとうと]を執う。轅濤塗は、陳の大夫。
秋、及江人・黃人伐陳。受齊命討陳之罪。而以與謀爲文者、時齊不行、使魯爲主。與謀例、在宣七年。
【読み】
秋、江人・黃人と陳を伐つ。齊の命を受けて陳の罪を討つ。而るに與謀を以て文を爲すは、時に齊行かず、魯をして主爲らしむればなり。與謀の例は、宣七年に在り。
八月、公至自伐楚。無傳。告于廟。
【読み】
八月、公楚を伐ちてより至る。傳無し。廟に告ぐるなり。
葬許穆公。冬、十有二月、公孫茲帥師、會齊人・宋人・衛人・鄭人・許人・曹人侵陳。公孫茲、叔牙子、叔孫戴伯。
【読み】
許の穆公を葬る。冬、十有二月、公孫茲[こうそんじ]師を帥いて、齊人・宋人・衛人・鄭人・許人・曹人に會して陳を侵す。公孫茲は、叔牙の子、叔孫戴伯。
〔傳〕四年、春、齊侯以諸侯之師侵蔡。蔡潰。遂伐楚。
【読み】
〔傳〕四年、春、齊侯諸侯の師を以[い]て蔡を侵す。蔡潰ゆ。遂に楚を伐つ。
楚子使與師言曰、君處北海、寡人處南海、唯是風馬牛不相及也。楚界猶未至南海。因齊處北海、遂稱所近。牛馬風逸、蓋末界之微事。故以取喩。
【読み】
楚子師と言わしめて曰く、君は北海に處り、寡人は南海に處りて、唯是れ風する馬牛も相及ばず。楚の界猶南海に至らず。齊の北海に處るに因りて、遂に近き所を稱す。牛馬の風逸するは、蓋し末界の微事ならん。故に以て取り喩う。
不虞君之涉吾地也、何故。管仲對曰、昔召康公命我先君大公、召康公、周大保召公奭也。
【読み】
虞[はか]らざりき、君の吾が地に涉[わた]らんとは、何の故ぞ、と。管仲對えて曰く、昔召康公我が先君大公に命じて、召康公は、周の大保召公奭なり。
曰、五侯九伯、女實征之、以夾輔周室。五等諸侯、九州之伯、皆得征討其罪。齊桓因此命以夸楚。○女、音汝。
【読み】
曰く、五侯九伯、女實に之を征して、以て周室を夾輔せよ、と。五等の諸侯、九州の伯、皆其の罪を征討することを得。齊桓此の命に因りて以て楚に夸[ほこ]る。○女は、音汝。
賜我先君履、東至于海、西至于河、南至于穆陵、北至于無棣。穆陵・無棣、皆齊竟也。履、所踐履之界。齊桓又因以自言其盛。○棣、大計反。
【読み】
我が先君に履むことを賜いて、東は海に至り、西は河に至り、南は穆陵に至り、北は無棣[むたい]に至るまでをせり。穆陵・無棣は、皆齊の竟なり。履は、踐履する所の界なり。齊桓又因りて以て自ら其の盛んなるを言う。○棣は、大計反。
爾貢包茅不入、王祭不共、無以縮酒。寡人是徵。包、裹束也。茅、菁茅也。束茅而灌之以酒爲縮酒。尙書、包軌菁茅。茅之爲異、未審。○共、音恭。
【読み】
爾の貢する包茅入れざれば、王の祭共[そな]わらずして、以て酒を縮[したた]らすこと無し。寡人是れ徵す。包は、裹束なり。茅は、菁茅なり。茅を束ねて之に灌ぐに酒を以てするを縮酒と爲す。尙書に、包軌菁茅、と。茅の異爲る、未だ審らかならず。○共は、音恭。
昭王南征而不復。寡人是問。昭王、成王之孫。南巡守涉漢、船壞而溺。周人諱而不赴。諸侯不知其故。故問之。
【読み】
昭王南征して復らず。寡人是れ問う、と。昭王は、成王の孫。南に巡守して漢を涉り、船壞れて溺る。周人諱みて赴げず。諸侯其の故を知らず。故に之を問う。
對曰、貢之不入、寡君之罪也。敢不共給。昭王之不復、君其問諸水濱。昭王時、漢非楚竟。故不受罪。
【読み】
對えて曰く、貢の入れざるは、寡君の罪なり。敢えて共給せざらんや。昭王の復らざるは、君其れ諸を水濱に問え、と。昭王の時、漢は楚の竟に非ず。故に罪を受けず。
師進、次于陘。楚不服罪。故復進師。
【読み】
師進み、陘に次る。楚罪に服せず。故に復師を進む。
夏、楚子使屈完如師。如陘之師、觀强弱。
【読み】
夏、楚子屈完をして師に如かしむ。陘の師に如きて、强弱を觀る。
師退、次于召陵。完請盟故。
【読み】
師退き、召陵に次る。完盟を請う故なり。
齊侯陳諸侯之師、與屈完乘而觀之。乘、共載。○乘、繩證反。
【読み】
齊侯諸侯の師を陳ねて、屈完と乘して之を觀る。乘は、共に載るなり。○乘は、繩證反。
齊侯曰、豈不穀是爲。先君之好是繼。與不穀同好如何。言諸侯之附從、非爲己。乃尋先君之好。謙而自廣、因求與楚同好。孤・寡・不穀、諸侯謙稱。○爲、于僞反。稱、尺證反。
【読み】
齊侯曰く、豈不穀が是れ爲ならんや。先君の好を是れ繼がん。不穀と好を同じくせば如何、と。言うこころは、諸侯の附從するは、己の爲には非ず。乃ち先君の好を尋[かさ]ねんとなり。謙りて自ら廣め、因りて楚と好を同じくせんことを求む。孤・寡・不穀は、諸侯の謙稱。○爲は、于僞反。稱は、尺證反。
對曰、君惠徼福於敝邑之社稷、辱收寡君、寡君之願也。齊侯曰、以此衆戰、誰能禦之。以此攻城、何城不克。對曰、君若以德綏諸侯、誰敢不服。君若以力、楚國、方城以爲城、漢水以爲池、方城山、在南陽葉縣南。以言竟土之遠。漢水、出武都至江夏、南入江。言其險固以當城池。○徼、古堯反。要也。葉、始涉反。當、丁浪反。
【読み】
對えて曰く、君惠みて福を敝邑の社稷に徼[もと]めんとして、辱く寡君を收めば、寡君の願いなり、と。齊侯曰く、此の衆を以て戰わば、誰か能く之を禦がん。此を以て城を攻めば、何れの城か克たざらん、と。對えて曰く、君若し德を以て諸侯を綏んぜば、誰か敢えて服せざらん。君若し力を以てせば、楚國、方城以て城と爲し、漢水以て池と爲せば、方城山は、南陽葉縣の南に在り。以て竟土の遠きを言う。漢水は、武都に出でて江夏に至り、南して江に入る。其の險固以て城池に當たるを言う。○徼は、古堯反。要むるなり。葉は、始涉反。當は、丁浪反。
雖衆、無所用之。
【読み】
衆[おお]しと雖も、之を用ゆる所無からん、と。
屈完及諸侯盟。
【読み】
屈完諸侯と盟う。
陳轅濤塗謂鄭申侯曰、師出於陳・鄭之閒、國必甚病。申侯、鄭大夫。當有共給之費故。
【読み】
陳の轅濤塗鄭の申侯に謂いて曰く、師陳・鄭の閒より出でば、國必ず甚だ病まん。申侯は、鄭の大夫。當に共給の費え有るべき故なり。
若出於東方、觀兵於東夷、循海而歸、其可也。東夷、郯・莒・徐夷也。觀兵、示威。
【読み】
若し東方より出でて、兵を東夷に觀[しめ]し、海に循いて歸らば、其れ可ならん、と。東夷は、郯[たん]・莒・徐夷なり。兵を觀すは、威を示すなり。
申侯曰、善。濤塗以告。齊侯許之。許出東方。
【読み】
申侯曰く、善し、と。濤塗以て告ぐ。齊侯之を許す。東方より出づることを許す。
申侯見曰、師老矣。若出於東方而遇敵、懼不可用也。若出於陳・鄭之閒、共其資糧屝屨、其可也。屝、草屨。○見、賢遍反。屝、符費反。
【読み】
申侯見えて曰く、師老[つか]れたり。若し東方より出でて敵に遇わば、懼れらくは用ゆ可からざらん。若し陳・鄭の閒より出でて、其の資糧屝屨[ひく]を共せば、其れ可ならん、と。屝は、草屨。○見は、賢遍反。屝は、符費反。
齊侯說、與之虎牢、還以鄭邑賜之。
【読み】
齊侯說び、之に虎牢を與え、還りて鄭の邑を以て之を賜う。
執轅濤塗。
【読み】
轅濤塗を執[とら]う。
秋、伐陳、討不忠也。以濤塗爲誤軍道。
【読み】
秋、陳を伐つは、不忠を討ずるなり。濤塗を以て軍道を誤らすとす。
許穆公卒于師。葬之以侯。禮也。男而以侯禮、加一等。
【読み】
許の穆公師に卒す。之を葬るに侯を以てす。禮なり。男にして侯の禮を以てするは、一等を加うるなり。
凡諸侯薨于朝會、加一等、諸侯命有三等。公爲上等、侯伯中等、子男爲下等。
【読み】
凡そ諸侯朝會に薨ずれば、一等を加え、諸侯の命に三等有り。公を上等とし、侯伯は中等、子男を下等とす。
死王事、加二等。謂以死勤事。
【読み】
王事に死すれば、二等を加う。死を以て事を勤むるを謂う。
於是有以袞斂。袞衣、公服也。謂加二等。○斂、力驗反。
【読み】
是に於て袞を以て斂すること有り。袞衣は、公服なり。二等を加うるを謂う。○斂は、力驗反。
冬、叔孫戴伯帥師、會諸侯之師侵陳。陳成。歸轅濤塗。陳服罪。故歸其大夫。戴、謚也。
【読み】
冬、叔孫戴伯師を帥いて、諸侯の師に會して陳を侵す。陳成[たい]らぐ。轅濤塗を歸す。陳罪に服す。故に其の大夫を歸す。戴は、謚なり。
初、晉獻公欲以驪姬爲夫人。卜之。不吉。筮之。吉。公曰、從筮。卜人曰、筮短龜長。不如從長。物生而後有象。象而後有滋。滋而後有數。龜象、筮數。故象長數短。
【読み】
初め、晉の獻公驪姬を以て夫人と爲さんと欲す。之を卜す。不吉なり。之を筮す。吉なり。公曰く、筮に從わん、と。卜人曰く、筮は短く龜は長し。長きに從うに如かず。物生じて而して後に象有り。象ありて而して後に滋ること有り。滋りて而して後に數有り。龜は象、筮は數。故に象は長く數は短し。
且其繇曰、專之渝、攘公之羭。繇、卜兆辭。渝、變也。攘、除也。羭、美也。言變乃除公之美。○繇、直救反。渝、羊朱反。下渝同音。
【読み】
且つ其の繇[ちゅう]に曰く、之を專らにせば渝[か]わり、公の羭[よき]を攘[はら]わん。繇は、卜兆の辭。渝は、變わるなり。攘は、除うなり。羭は、美なり。言うこころは、變ぜば乃ち公の美を除わん。○繇は、直救反。渝は、羊朱反。下の渝も同じ音。
一薰一蕕、十年尙猶有臭。薰、香草。蕕、臭草。十年有臭、言善易消、惡難除。
【読み】
一薰一蕕[ゆう]、十年なれども尙猶臭有り、と。薰は、香草。蕕は、臭草。十年にして臭有りとは、善消え易く、惡除き難きを言う。
必不可。弗聽。立之。生奚齊。其娣生卓子。
【読み】
必ず不可なり、と。聽かず。之を立つ。奚齊を生む。其の娣卓子を生む。
及將立奚齊、旣與中大夫成謀。姬謂大子曰、君夢齊姜。必速祭之。齊姜、大子母。言求食。○卓、吐濁反。
【読み】
將に奚齊を立てんとするに及びて、旣に中大夫と謀を成す。姬大子に謂いて曰く、君齊姜を夢みたり。必ず速やかに之を祭れ、と。齊姜は、大子の母。食を求むるを言う。○卓は、吐濁反。
大子祭于曲沃、歸胙于公。胙、祭之酒肉。
【読み】
大子曲沃に祭り、胙を公に歸[おく]る。胙は、祭の酒肉。
公田。姬寘諸宮。六日、公至。毒而獻之。毒酒經宿輒敗。而經六日、明公之惑。
【読み】
公田[かり]す。姬諸を宮に寘[お]く。六日にして、公至る。毒して之を獻ず。毒酒宿を經れば輒ち敗る。而るに六日を經るは、公の惑えるを明かすなり。
公祭之地。地墳。與犬。犬斃。與小臣。小臣亦斃。姬泣曰、賊由大子。大子奔新城。新城、曲沃。○墳、扶粉反。
【読み】
公之を地に祭る。地墳[うごも]つ。犬に與う。犬斃る。小臣に與う。小臣も亦斃る。姬泣きて曰く、賊大子に由れり、と。大子新城に奔る。新城は、曲沃。○墳は、扶粉反。
公殺其傅杜原款。
【読み】
公其の傅杜原款を殺す。
或謂大子、子辭。君必辯焉。以六日之狀自理。○款、苦管反。辯、兵免反。
【読み】
或ひと大子に謂う、子辭せよ。君必ず辯ぜん、と。六日の狀を以て自ら理す。○款は、苦管反。辯は、兵免反。
大子曰、君非姬氏、居不安、食不飽。我辭、姬必有罪。君老矣。吾又不樂。吾自理則姬死。姬死則君必不樂。不樂爲由吾也。○樂、音洛。
【読み】
大子曰く、君姬氏に非ざれば、居安んぜず、食飽かず。我れ辭せば、姬必ず罪有らん。君老いたり。吾れ又樂しめざるなり、と。吾れ自ら理せば則ち姬死せん。姬死せば則ち君必ず樂まざらん。樂まざるは吾に由るとす。○樂は、音洛。
曰、子其行乎。大子曰、君實不察其罪。被此名也以出、人誰納我。十二月、戊申、縊于新城。姬遂譖二公子曰、皆知之。重耳奔蒲、夷吾奔屈。二子時在朝。爲明年晉殺申生傳。○被、皮寄反。又皮綺反。縊、一賜反。譖、側鴆反。
【読み】
曰く、子其れ行[さ]らんか、と。大子曰く、君實に其の罪を察せず。此の名を被りて以て出でては、人誰か我を納れん、と。十二月、戊申[つちのえ・さる]、新城に縊る。姬遂に二公子を譖して曰く、皆之を知れり、と。重耳蒲に奔り、夷吾屈に奔る。二子時に朝に在り。明年晉申生を殺す爲の傳なり。○被は、皮寄反。又皮綺反。縊は、一賜反。譖は、側鴆反。
〔經〕五年、春、晉侯殺其世子申生。稱晉侯、惡用讒。書春、從告。
【読み】
〔經〕五年、春、晉侯其の世子申生を殺す。晉侯と稱するは、讒を用ゆるを惡んでなり。春を書すは、告ぐるに從うなり。
杞伯姬來。朝其子。無傳。伯姬來寧、寧成風也。朝其子者、時子年在十歲左右、因有諸侯子得行朝義、而卒不成朝禮、故繫於母、而曰朝其子。○杞伯姬來、絕句。來、歸寧。朝其子、猶言其子朝。
【読み】
杞の伯姬來る。其の子を朝せしむ。傳無し。伯姬來寧するは、成風を寧するなり。其の子を朝せしむるとは、時に子の年十歲の左右に在り、諸侯の子朝義を行うことを得ること有るに、而れども卒に朝禮を成さざるに因りて、故に母に繫けて、其の子を朝せしむと曰う。○杞伯姬來は、絕句。來は、歸寧。其の子を朝せしむるとは、猶其の子朝すと言うがごとし。
夏、公孫茲如牟。叔孫戴伯娶於牟。卿非君命不越竟。故奉公命聘於牟、因自爲逆。
【読み】
夏、公孫茲[こうそんじ]牟[ぼう]に如く。叔孫戴伯牟に娶る。卿君命に非ざれば竟を越えず。故に公命を奉じて牟に聘し、因りて自ら爲に逆[むか]うるなり。
公及齊侯・宋公・陳侯・衛侯・鄭伯・許男・曹伯會王世子于首止。惠王大子鄭也。不名而殊會、尊之也。首止、衛地。陳留襄邑縣東南有首郷。
【読み】
公齊侯・宋公・陳侯・衛侯・鄭伯・許男・曹伯と王の世子に首止に會す。惠王の大子鄭なり。名いわずして殊に會するは、之を尊んでなり。首止は、衛の地。陳留襄邑縣の東南に首郷有り。
秋、八月、諸侯盟于首止。閒無異事、復稱諸侯者、王世子不盟故也。王之世子、尊與王同。齊桓行霸、翼戴天子、尊崇王室。故殊貴世子。
【読み】
秋、八月、諸侯首止に盟う。閒異事無きに、復諸侯と稱するは、王の世子盟わざる故なり。王の世子、尊きこと王と同じ。齊桓霸を行いて、天子を翼戴し、王室を尊崇す。故に殊に世子を貴ぶ。
鄭伯逃歸不盟。逃其師而歸也。逃例、在文三年。
【読み】
鄭伯逃げ歸りて盟わず。其の師を逃げて歸るなり。逃の例は、文三年に在り。
楚人滅弦。弦子奔黃。弦國、在弋陽軑縣東南。
【読み】
楚人弦を滅ぼす。弦子黃に奔る。弦國は、弋陽軑[たい]縣の東南に在り。
九月、戊申、朔、日有食之。無傳。
【読み】
九月、戊申[つちのえ・さる]、朔、日之を食する有り。傳無し。
冬、晉人執虞公。虞公貪璧馬之寶、距絕忠諫。稱人以執、同於無道於其民之例。例在成十五年。所以罪虞、且言易也。晉侯脩虞之祀、而歸其職貢於王。故不以滅同姓爲譏。
【読み】
冬、晉人虞公を執[とら]う。虞公璧馬の寶を貪りて、忠諫を距絕す。人と稱して以て執わるるは、其の民に無道なるの例に同じくするなり。例は成十五年に在り。虞を罪する所以、且易きを言うなり。晉侯虞の祀を脩めて、其の職貢を王に歸す。故に同姓を滅ぼすを以て譏りを爲さず。
〔傳〕五年、春、王正月、辛亥、朔、日南至。周正月、今十一月。冬至之日、日南極。
【読み】
〔傳〕五年、春、王の正月、辛亥[かのと・い]、朔、日南至す。周の正月は、今の十一月なり。冬至の日に、日南極す。
公旣視朔、遂登觀臺、以望而書。禮也。視朔、親告朔也。觀臺、臺上構屋、可以遠觀者也。朔旦冬至、歷數之所始。治歷者因此、則可以明其術數、審別陰陽、敍事訓民。魯君不能常脩此禮。故善公之得禮。○觀、古亂反。
【読み】
公旣に朔を視、遂に觀臺に登りて、以て望みて書す。禮なり。朔を視るは、親ら告朔するなり。觀臺は、臺上に屋を構え、以て遠觀す可き者なり。朔旦冬至は、歷數の始まる所。歷を治むる者此に因るときは、則ち以て其の術數を明らかにし、陰陽を審別し、事を敍で民を訓う可し。魯君常に此の禮を脩むること能わず。故に公の禮を得るを善す。○觀は、古亂反。
凡分・至・啓・閉、必書雲物。分、春秋分也。至、冬夏至也。啓、立春・立夏。閉、立秋・立冬。雲物、氣色災變也。傳重申周典。不言公者、日官掌其職。○重、直用反。
【読み】
凡そ分・至・啓・閉には、必ず雲物を書す。分は、春秋分なり。至は、冬夏至なり。啓は、立春・立夏。閉は、立秋・立冬。雲物は、氣色災變なり。傳周典を重ねて申ぶ。公と言わざるは、日官其の職を掌ればなり。○重は、直用反。
爲備故也。素察妖祥、逆爲之備。
【読み】
備えの爲の故なり。素妖祥を察して、逆[あらかじ]め之が備えを爲す。
晉侯使以殺大子申生之故來告。釋經必須告乃書。
【読み】
晉侯大子申生を殺すの故を以て來りて告げしむ。經は必ず告ぐるを須ちて乃ち書すを釋く。
初、晉侯使士蔿爲二公子築蒲與屈。不愼。寘薪焉。不謹愼。○爲、于僞反。
【読み】
初め、晉侯士蔿[しい]をして二公子の爲に蒲と屈とに築かしむ。愼まず。薪を寘[お]けり。謹愼せず。○爲は、于僞反。
夷吾訴之。公使讓之。譴讓之。
【読み】
夷吾之を訴う。公之を讓[せ]めしむ。之を譴讓す。
士蔿稽首而對曰、臣聞之、無喪而慼、憂必讎焉、讎、猶對也。
【読み】
士蔿稽首して對えて曰く、臣之を聞く、喪無くして慼[いた]めば、憂え必ず讎[むか]い、讎は、猶對うのごとし。
無戎而城、讎必保焉。保而守之。
【読み】
戎無くして城けば、讎必ず保つ、と。保ちて之を守る。
寇讎之保、又何愼焉。守官廢命、不敬。固讎之保、不忠。失忠與敬、何以事君。詩云、懷德惟寧、宗子惟城。詩、大雅。懷德以安、則宗子之固若城。
【読み】
寇讎に之れ保たる、又何ぞ愼まん。官を守りて命を廢するは、不敬なり。讎の保を固むるは、不忠なり。忠と敬とを失わば、何を以てか君に事えん。詩に云う、德を懷[やわ]らげて惟れ寧んずれば、宗子惟れ城なり、と。詩は、大雅。德を懷らげて以て安んずれば、則ち宗子の固きこと城の若し。
君其脩德而固宗子、何城如之。言城不如固宗子。
【読み】
君其れ德を脩めて宗子を固くせば、何の城か之に如かん。城は宗子を固くするに如かざるを言う。
三年將尋師焉。焉用愼。尋、用也。
【読み】
三年ありて將に師を尋[もち]いんとす。焉ぞ愼むことを用いん、と。尋は、用ゆるなり。
退而賦曰、狐裘尨茸。一國三公。吾誰適從。士蔿自作詩也。尨茸、亂貌。公與二公子爲三。言城不堅、則爲公子所訴、爲公所讓。堅之、則爲固讎不忠。無以事君。故不知所從。○尨、莫江反。又音蒙。適、丁歷反。
【読み】
退きて賦して曰く、狐裘尨茸[ぼうじょう]たり。一國に三公あり。吾れ誰にか適從せん、と。士蔿自ら詩を作るなり。尨茸は、亂るる貌。公と二公子と三と爲す。言うこころは、城堅からずんば、則ち公子の爲に訴えられ、公の爲に讓めらる。之を堅くすれば、則ち讎を固くして不忠と爲す。以て君に事うること無し。故に從う所を知らず。○尨は、莫江反。又音蒙。適は、丁歷反。
及難、公使寺人披伐蒲。重耳曰、君父之命不校。乃徇曰、校者吾讎也。踰垣而走。披斬其袪。遂出奔翟。袪、袂也。○難、乃旦反。袪、起魚反。翟、音狄。
【読み】
難に及びて、公寺人披をして蒲を伐たしむ。重耳曰く、君父の命は校[むく]いず、と。乃ち徇[とな]えて曰く、校いん者は吾が讎なり、と。垣を踰えて走る。披其の袪[きょ]を斬る。遂に出でて翟に奔る。袪は、袂なり。○難は、乃旦反。袪は、起魚反。翟は、音狄。
夏、公孫茲如牟。娶焉。因聘而娶。故傳實其事。
【読み】
夏、公孫茲牟に如く。娶れり。聘に因りて娶る。故に傳其の事を實にす。
會于首止、會王大子鄭、謀寧周也。惠王以惠后故、將廢大子鄭、而立王子帶。故齊桓帥諸侯、會王大子、以定其位。
【読み】
首止に會するは、王の大子鄭に會して、周を寧んぜんことを謀るなり。惠王惠后の故を以て、將に大子鄭を廢して、王子帶を立てんとす。故に齊桓諸侯を帥いて、王の大子に會して、以て其の位を定む。
陳轅宣仲怨鄭申侯之反己於召陵。宣仲、轅濤塗。
【読み】
陳の轅宣仲鄭の申侯の己に召陵に反きしを怨む。宣仲は、轅濤塗。
故勸之城其賜邑。齊桓所賜虎牢。
【読み】
故に之に勸めて其の賜邑に城かしむ。齊桓賜う所の虎牢。
曰、美城之。大名也。子孫不忘。吾助子請。
【読み】
曰く、美[うるわ]しく之を城け。大名なり。子孫忘れざらん。吾れ子を助けて請わん、と。
乃爲之請於諸侯而城之。美。樓櫓之備美設。
【読み】
乃ち之が爲に諸侯に請いて之を城く。美し。樓櫓の備え美設す。
遂譖諸鄭伯、曰、美城其賜邑、將以叛也。
【読み】
遂に諸を鄭伯に譖して、曰く、美しく其の賜邑に城くは、將に以て叛かんとするなり、と。
申侯由是得罪。爲七年、鄭殺申侯傳。
【読み】
申侯是に由りて罪を得たり。七年、鄭申侯を殺す爲の傳なり。
秋、諸侯盟。王使周公召鄭伯曰、吾撫女以從楚、輔之以晉。可以少安。周公、宰孔也。王恨齊桓定大子之位。故召鄭伯、使叛齊也。晉・楚不服於齊。故以鎭安鄭。
【読み】
秋、諸侯盟う。王周公をして鄭伯を召さしめて曰く、吾れ女を撫して以て楚に從わしめ、之を輔くるに晉を以てせん。以て少しく安かる可し、と。周公は、宰孔なり。王齊桓が大子の位を定むるを恨む。故に鄭伯を召して、齊に叛かしむるなり。晉・楚齊に服せず。故に以て鄭を鎭安す。
鄭伯喜於王命、而懼其不朝於齊也。故逃歸不盟。
【読み】
鄭伯王命を喜びて、其の齊に朝せざるを懼る。故に逃げ歸りて盟わざらんとす。
孔叔止之曰、國君不可以輕。輕則失親。孔叔、鄭大夫。親、黨援也。○輕、遣政反。
【読み】
孔叔之を止めて曰く、國君は以て輕々しくす可からず。輕々しくれば則ち親を失う。孔叔は、鄭の大夫。親は、黨援なり。○輕は、遣政反。
失親、患必至。病而乞盟、所喪多矣。君必悔之。弗聽。逃其師而歸。○喪、息浪反。
【読み】
親を失えば、患え必ず至る。病みて盟を乞えば、喪う所多し。君必ず之を悔いん、と。聽かず。其の師を逃げて歸る。○喪は、息浪反。
楚鬭穀於菟滅弦。弦子奔黃。
【読み】
楚の鬭穀於菟[とうどうおと]弦を滅ぼす。弦子黃に奔る。
於是江・黃・道・柏方睦於齊。皆弦姻也。姻、外親也。道國、在汝南安陽縣南。柏、國名。汝南西平縣有柏亭。
【読み】
是に於て江・黃・道・柏方に齊に睦まし。皆弦の姻なり。姻は、外親なり。道國は、汝南安陽縣の南に在り。柏は、國の名。汝南西平縣に柏亭有り。
弦子恃之而不事楚。又不設備。故亡。
【読み】
弦子之を恃みて楚に事えず。又備えを設けず。故に亡びたり。
晉侯復假道於虞以伐虢。宮之奇諫曰、虢、虞之表也。虢亡、虞必從之。晉不可啓。寇不可翫。翫、習也。
【読み】
晉侯復道を虞に假りて以て虢を伐つ。宮之奇諫めて曰く、虢は、虞の表なり。虢亡びば、虞必ず之に從わん。晉は啓く可からず。寇は翫[なら]わす可からず。翫[がん]は、習うなり。
一之謂甚。其可再乎。爲二年、假晉道滅下陽。
【読み】
一たびも之れ甚だしと謂う。其れ再びす可けんや。二年、晉に道を假して下陽を滅ぼす爲なり。
諺所謂、輔車相依、脣亡齒寒者、其虞・虢之謂也。輔、頰輔。車、牙車。○車、尺奢反。
【読み】
諺に所謂、輔車相依り、脣亡ぶれば齒寒しとは、其れ虞・虢を之れ謂うなり、と。輔は、頰輔。車は、牙車。○車は、尺奢反。
公曰、晉、吾宗也。豈害我哉。對曰、大伯・虞仲、大王之昭也。大伯不從。是以不嗣。大伯・虞仲、皆大王之子。不從父命、倶讓適吳。仲雍支子、別封西吳。虞公其後也。穆生昭、昭生穆。以世次計。故大伯・虞仲、於周爲昭。○昭、上饒反。後昭・穆放此。
【読み】
公曰く、晉は、吾が宗なり。豈我を害せんや、と。對えて曰く、大伯・虞仲は、大王の昭なり。大伯從わず。是を以て嗣がず。大伯・虞仲は、皆大王の子。父の命に從わず、倶に讓りて吳に適く。仲雍の支子、別に西吳に封ぜらる。虞公は其の後なり。穆昭を生み、昭穆を生む。世次を以て計る。故に大伯・虞仲は、周に於て昭爲り。○昭は、上饒反。後の昭・穆は此に放え。
虢仲・虢叔、王季之穆也。王季者、大伯・虞仲之母弟也。虢仲・虢叔、王季之子、文王之母弟也。仲・叔、皆虢君字。
【読み】
虢仲・虢叔は、王季の穆なり。王季は、大伯・虞仲の母弟なり。虢仲・虢叔は、王季の子、文王の母弟なり。仲・叔は、皆虢君の字。
爲文王卿士。勳在王室、藏於盟府。盟府、司盟之官。
【読み】
文王の卿士爲り。勳王室に在りて、盟府に藏めり。盟府は、司盟の官。
將虢是滅。何愛於虞。且虞能親於桓・莊乎。其愛之也。桓・莊之族何罪、而以爲戮。不唯偪乎。桓叔・莊伯之族、晉獻公之從祖昆弟。獻公患其偪、盡殺之。事在莊二十五年。○偪、彼力反。
【読み】
將に虢をも是れ滅ぼさんとす。何ぞ虞を愛せん。且つ虞能く桓・莊より親しからんや。其れ之を愛せんや。桓・莊の族何の罪ありて、以て戮することをせしや。唯偪るにあらずや。桓叔・莊伯の族は、晉の獻公の從祖昆弟なり。獻公其の偪るを患え、盡く之を殺す。事は莊二十五年に在り。○偪は、彼力反。
親以寵偪、猶尙害之。況以國乎。
【読み】
親しきも寵を以て偪れば、猶尙之を害せり。況んや國を以てするをや、と。
公曰、吾享祀豐絜。神必據我。據、猶安也。
【読み】
公曰く、吾が享祀豐絜なり。神必ず我に據らん、と。據は、猶安んずるがごとし。
對曰、臣聞之、鬼神非人實親。惟德是依。故周書曰、皇天無親。惟德是輔。周書、逸書。
【読み】
對えて曰く、臣之を聞く、鬼神は人を實に親しむに非ず。惟德に是れ依る、と。故に周書に曰く、皇天親無し。惟德を是れ輔く、と。周書は、逸書。
又曰、黍稷非馨。明德惟馨。馨、香之遠聞。○聞、音問。又如字。
【読み】
又曰く、黍稷馨[こう]ばしきに非ず。明德惟れ馨ばし。馨は、香の遠聞なり。○聞は、音問。又字の如し。
又曰、民不易物。惟德繄物。黍稷牲玉、無德則不見饗。有德則見饗。言物一而異用。○繄、烏兮反。
【読み】
又曰く、民物を易えず。惟れ德繄[こ]れ物なり、と。黍稷牲玉、德無ければ則ち饗[う]けられず。德有れば則ち饗けらる。物一にして用を異にするを言う。○繄[えい]は、烏兮反。
如是、則非德民不和、神不享矣。神所馮依、將在德矣。若晉取虞、而明德以薦馨香、神其吐之乎。
【読み】
是の如くならば、則ち德に非ざれば民和せず、神享けず。神の馮依する所は、將に德に在らんとす。若し晉虞を取りて、明德以て馨香を薦めば、神其れ之を吐かんや、と。
弗聽。許晉使。宮之奇以其族行。行、去也。○馮、皮沐反。
【読み】
聽かず。晉の使に許す。宮之奇其の族を以[い]て行[さ]る。行は、去るなり。○馮は、皮沐反。
曰、虞不臘矣。臘、歲終祭衆神之名。
【読み】
曰く、虞は臘せざらん。臘は、歲終に衆神を祭るの名。
在此行也、晉不更舉矣。不更舉兵。
【読み】
此の行に在りてや、晉更に舉げじ、と。更に兵を舉げず。
八月、甲午、晉侯圍上陽。上陽、虢國都。在弘農陝縣東南。
【読み】
八月、甲午[きのえ・うま]、晉侯上陽を圍む。上陽は、虢の國都。弘農陝縣の東南に在り。
問於卜偃曰、吾其濟乎。對曰、克之。公曰、何時。對曰、童謠云、丙之晨、龍尾伏辰。龍尾、尾星也。日月之會曰辰。日在尾。故尾星伏不見。
【読み】
卜偃に問いて曰く、吾れ其れ濟[な]らんか、と。對えて曰く、之に克たん、と。公曰く、何れの時ぞ、と。對えて曰く、童謠に云う、丙[ひのえ]の晨に、龍尾辰に伏す。龍尾は、尾星なり。日月の會を辰と曰う。日尾に在り。故に尾星伏して見えず。
均服振振、取虢之旂。戎事、上下同服。振振、盛貌。旂、軍之旌旗。
【読み】
均服振振として、虢を取るの旂[はた]たつ。戎事は、上下服を同じくす。振振は、盛んなる貌。旂は、軍の旌旗。
鶉之賁賁、天策焞焞、火中成軍。虢公其奔。鶉、鶉火星也。賁賁、鳥星之體也。天策、傅說星。時近日、星微。焞焞、無光輝也。言丙子平旦、鶉火中、軍事有成功也。此已上皆童謠言也。童齔之子、未有念慮之感、而會成嬉戲之言。似若有馮者。其言或中或否。博覽之士、能懼思之人、兼而志之、以爲鑒戒、以爲將來之驗、有益於世敎。○賁、音奔。焞、他門反。齔、初問反。
【読み】
鶉[じゅん]の賁賁[ほんほん]たる、天策の焞焞[とんとん]たる、火の中するとき軍を成さん。虢公其れ奔らん、と。鶉は、鶉火星なり。賁賁は、鳥星の體なり。天策は、傅說星。時に日に近くして、星微なり。焞焞は、光輝無きなり。言うこころは、丙子の平旦、鶉火中するとき、軍事成功有りとなり。此れ已上は皆童謠の言なり。童齔[どうしん]の子、未だ念慮の感有らずして、會[たま]々嬉戲の言を成す。馮ること有る者の若きに似たり。其の言或は中り或は否[しか]らず。博覽の士、能く懼思する人、兼ねて之を志[しる]し、以て鑒戒と爲して、以て將來の驗と爲せば、世敎に益有らん。○賁は、音奔。焞は、他門反。齔は、初問反。
其九月十月之交乎。以星驗推之、知九月十月之交。謂夏之九月十月也。交、晦朔交會。
【読み】
其れ九月十月の交か。星驗を以て之を推し、九月十月の交なるを知る。夏の九月十月を謂うなり。交は、晦朔の交會なり。
丙子旦、日在尾、月在策、是夜日月合朔於尾。月行疾。故至旦而過在策。
【読み】
丙子[ひのえ・ね]の旦に、日尾に在り、月策に在りて、是の夜日月尾に合朔す。月行は疾[はや]し。故に旦に至りて過ぎて策に在り。
鶉火中。必是時也。
【読み】
鶉火中す。必ず是の時ならん、と。
冬、十二月、丙子、朔、晉滅虢。虢公醜奔京師。不書、不告也。周十二月、夏之十月。
【読み】
冬、十二月、丙子、朔、晉虢を滅ぼす。虢公醜京師に奔る。書さざるは、告げざればなり。周の十二月は、夏の十月なり。
師還、館于虞、遂襲虞滅之、執虞公及其大夫井伯、以媵秦穆姬。秦穆姬、晉獻公女。送女曰媵。以屈辱之。
【読み】
師還るとき、虞に館り、遂に虞を襲いて之を滅ぼし、虞公と其の大夫井伯とを執えて、以て秦の穆姬に媵す。秦の穆姬は、晉の獻公の女。女を送るを媵と曰う。以て之を屈辱す。
而脩虞祀、且歸其職貢於王。虞所命祀。
【読み】
而して虞の祀を脩め、且其の職貢を王に歸す。虞の命ぜられたる所の祀なり。
故書曰晉人執虞公、罪虞、且言易也。○易、以豉反。
【読み】
故に書して晉人虞公を執うと曰うは、虞を罪し、且易きを言うなり。○易は、以豉反。
〔經〕六年、春、王正月。夏、公會齊侯・宋公・陳侯・衛侯・曹伯伐鄭、圍新城。新城、鄭新密。今滎陽密縣。
【読み】
〔經〕六年、春、王の正月。夏、公齊侯・宋公・陳侯・衛侯・曹伯に會して鄭を伐ち、新城を圍む。新城は、鄭の新密。今の滎陽の密縣。
秋、楚人圍許。楚子不親圍、以圍者告。
【読み】
秋、楚人許を圍む。楚子親ら圍まずして、圍む者を以て告ぐ。
諸侯遂救許。皆伐鄭之諸侯。故不復更敍。
【読み】
諸侯遂に許を救う。皆鄭を伐つの諸侯。故に復更に敍せず。
冬、公至自伐鄭。無傳。
【読み】
冬、公鄭を伐ちてより至る。傳無し。
〔傳〕六年、春、晉侯使賈華伐屈。夷吾不能守、盟而行。賈華、晉大夫。非不欲校、力不能守。言不如重耳之賢。
【読み】
〔傳〕六年、春、晉侯賈華をして屈を伐たしむ。夷吾守ること能わず、盟いて行[さ]る。賈華は、晉の大夫。校[むく]ゆることを欲せざるに非ず、力守ること能わざるなり。重耳の賢に如かざるを言うなり。
將奔狄。郤芮曰、後出同走、罪也。嫌與重耳同謀而相隨。○郤、去逆反。芮、如銳反。
【読み】
將に狄に奔らんとす。郤芮[げきぜい]曰く、後に出でて同じく走るは、罪なり。重耳と同じく謀りて相隨うに嫌あり。○郤は、去逆反。芮は、如銳反。
不如之梁。梁近秦而幸焉。乃之梁。以梁爲秦所親幸、秦旣大國、且穆姬在焉、故欲因以求入。
【読み】
梁に之くに如かず。梁は秦に近くして幸ぜらる、と。乃ち梁に之く。梁、秦の爲に親幸せられ、秦旣に大國にして、且穆姬焉に在るを以て、故に因りて以て入ることを求めんと欲す。
夏、諸侯伐鄭、以其逃首止之盟故也。首止盟、在五年。
【読み】
夏、諸侯鄭を伐つは、其の首止の盟を逃るるを以ての故なり。首止の盟は、五年に在り。
圍新密、鄭所以不時城也。實新密、而經言新城者、鄭以非時興土功、齊桓聲其罪、以告諸侯。
【読み】
新密を圍むは、鄭の時ならずして城く所以なり。實は新密にして、經に新城と言うは、鄭時に非ずして土功を興すを以て、齊桓其の罪を聲[な]らして、以て諸侯に告ぐるなり。
秋、楚子圍許以救鄭。諸侯救許。乃還。
【読み】
秋、楚子許を圍みて以て鄭を救う。諸侯許を救う。乃ち還る。
冬、蔡穆侯將許僖公、以見楚子於武城。楚子退舍武城、猶有忿志。而諸侯各罷兵。故蔡將許君歸楚。武城、楚地。在南陽宛縣北。○宛、於元反。
【読み】
冬、蔡の穆侯許の僖公を將[ひき]いて、以て楚子に武城に見えしむ。楚子退いて武城に舍り、猶忿志有り。而るに諸侯各々兵を罷む。故に蔡、許君を將いて楚に歸す。武城は、楚の地。南陽宛縣の北に在り。○宛は、於元反。
許男面縛銜璧、大夫衰絰、士輿櫬。縛手於後、唯見其面。以璧爲贄、手縛。故銜之。櫬、棺也。將受死。故衰絰。○衰、七雷反。
【読み】
許男面縛して璧を銜[ふく]み、大夫衰絰[さいてつ]し、士櫬[ひつぎ]を輿[にな]う。手を後ろに縛り、唯其の面を見る。璧を以て贄と爲すに、手縛せらる。故に之を銜むなり。櫬[しん]は、棺なり。將に死を受けんとす。故に衰絰す。○衰は、七雷反。
楚子問諸逢伯。逢伯、楚大夫。
【読み】
楚子諸を逢伯に問う。逢伯は、楚の大夫。
對曰、昔武王克殷、微子啓如是、微子啓、紂庶兄。宋之祖也。
【読み】
對えて曰く、昔武王殷に克ちしとき、微子啓是の如くせば、微子啓は、紂の庶兄。宋の祖なり。
武王親釋其縛、受其璧而祓之、祓、除凶之禮。○祓、芳弗反。
【読み】
武王親ら其の縛を釋き、其の璧を受けて之を祓[はらい]し、祓[ふつ]は、凶を除[はら]うの禮。○祓は、芳弗反。
焚其櫬、禮而命之、使復其所。楚子從之。
【読み】
其の櫬を焚き、禮して之に命じ、其の所に復らしめり、と。楚子之に從う。
〔經〕七年、春、齊人伐鄭。夏、小邾子來朝。無傳。郳犂來始得王命、而來朝也。邾之別封。故曰小邾。
【読み】
〔經〕七年、春、齊人鄭を伐つ。夏、小邾子[しょうちゅし]來朝す。傳無し。郳[げい]の犂來[れいらい]始めて王命を得て、來朝するなり。邾の別封なり。故に小邾と曰う。
鄭殺其大夫申侯。申侯、鄭卿。專利而不厭。故稱名以殺。罪之也。例在文六年。○厭、於鹽反。傳同。
【読み】
鄭其の大夫申侯を殺す。申侯は、鄭の卿。利を專らにして厭かず。故に名を稱して以て殺す。之を罪するなり。例は文六年に在り。○厭は、於鹽反。傳も同じ。
秋、七月、公會齊侯・宋公・陳世子款・鄭世子華盟于甯母。高平方與縣東有泥母亭。音如甯。○母、如字。又音無。與、音預。泥、乃麗反。
【読み】
秋、七月、公齊侯・宋公・陳の世子款・鄭の世子華に會して甯母[ねいぼ]に盟う。高平方與縣の東に泥母亭有り。音甯の如し。○母は、字の如し。又音無。與は、音預。泥は、乃麗反。
曹伯班卒。無傳。五年、同盟于首止。
【読み】
曹伯班卒す。傳無し。五年、首止に同盟す。
公子友如齊。無傳。罷盟而聘、謝不敏也。
【読み】
公子友齊に如く。傳無し。盟より罷[かえ]りて聘するは、不敏を謝するなり。
冬、葬曹昭公。無傳。
【読み】
冬、曹の昭公を葬る。傳無し。
〔傳〕七年、春、齊人伐鄭。孔叔言於鄭伯曰、諺有之、曰、心則不競、何憚於病。競、强也。憚、難也。○難、乃旦反。
【読み】
〔傳〕七年、春、齊人鄭を伐つ。孔叔鄭伯に言いて曰く、諺に之れ有り、曰く、心則ち競[こわ]からざれば、何ぞ病[くる]しきを憚らん、と。競は、强きなり。憚は、難きなり。○難は、乃旦反。
旣不能彊、又不能弱、所以斃也。國危矣。請下齊以救國。公曰、吾知其所由來矣。姑少待我。欲以申侯說。
【読み】
旣に彊きこと能わず、又弱きこと能わざるは、斃るる所以なり。國危し。請う、齊に下りて以て國を救わん、と。公曰く、吾れ其の由りて來る所を知れり。姑少[しばら]く我を待て、と。申侯を以て說かんと欲す。
對曰、朝不及夕。何以待君。
【読み】
對えて曰く、朝、夕に及ばず。何を以て君を待たれんや、と。
夏、鄭殺申侯以說于齊。且用陳轅濤塗之譖也。轅濤譖、在五年。
【読み】
夏、鄭申侯を殺して以て齊に說く。且陳の轅濤塗[えんとうと]の譖を用ゆるなり。轅濤の譖は、五年に在り。
初、申侯、申出也。姊妹之子爲出。
【読み】
初め、申侯は、申の出[おい]なり。姊妹の子を出とす。
有寵於楚文王。文王將死、與之璧、使行。曰、唯我知女。女專利而不厭。予取予求、不女疵瑕也。從我取、從我求、我不以女爲罪釁。○女、音汝。
【読み】
楚の文王に寵有り。文王將に死なんとするや、之に璧を與えて、行[さ]らしむ。曰く、唯我れ女を知る。女利を專らにして厭かず。予に取り予に求めしも、女を疵瑕とせざりき。我に從いて取り、我に從いて求めしも、我は女を以て罪釁[ざいきん]とせざりし、と。○女は、音汝。
後之人將求多於女。謂嗣君也。求多、以禮義大望責之。
【読み】
後の人將に多きを女に求めんとす。嗣君を謂うなり。多きを求むとは、禮義を以て大に之を望責するなり。
女必不免。我死、女必速行。無適小國。將不女容焉。政狹、法峻。
【読み】
女必ず免れず。我れ死なば、女必ず速やかに行れ。小國に適くこと無かれ。將に女を容れざらんとす、と。政狹く、法峻[さが]し。
旣葬。出奔鄭。又有寵於厲公。子文聞其死也、曰、古人有言曰、知臣莫若君。弗可改也已。
【読み】
旣に葬る。出でて鄭に奔る。又厲公に寵有り。子文其の死するを聞くや、曰く、古人言えること有り曰く、臣を知るは君に若くは莫し、と。改む可からざるのみ、と。
秋、盟于甯母、謀鄭故也。
【読み】
秋、甯母に盟うは、鄭の故を謀るなり。
管仲言於齊侯曰、臣聞之、招攜以禮、懷遠以德。攜、離也。
【読み】
管仲齊侯に言いて曰く、臣之を聞く、攜[はな]るるを招くには禮を以てし、遠きを懷くるには德を以てす、と。攜は、離るるなり。
德禮不易、無人不懷。
【読み】
德禮易わらざれば、人として懷かざるは無し、と。
齊侯脩禮於諸侯、諸侯官受方物。諸侯官司、各於齊受其方所當貢天子之物。
【読み】
齊侯禮を諸侯に脩め、諸侯の官方物を受く。諸侯の官司、各々齊に於て其の方の當に天子に貢すべき所の物を受く。
鄭伯使大子華聽命於會。
【読み】
鄭伯大子華をして命を會に聽かしむ。
言於齊侯曰、洩氏・孔氏・子人氏三族、實違君命。三族、鄭大夫。○洩、息列反。
【読み】
齊侯に言いて曰く、洩氏[せつし]・孔氏・子人氏の三族、實に君命に違えり。三族は、鄭の大夫。○洩は、息列反。
若君去之以爲成、我以鄭爲内臣。君亦無所不利焉。以鄭事齊、如封内臣。○去、起呂反。
【読み】
若し君之を去[す]てて以て成[たい]らぎを爲さば、我れ鄭を以て内臣と爲らん。君も亦利あらざる所無けん、と。鄭を以て齊に事うること、封内の臣の如し。○去は、起呂反。
齊侯將許之。管仲曰、君以禮與信屬諸侯。而以姦終之、無乃不可乎。子父不奸之謂禮、守命共時之謂信。守君命、共時事。○奸、音干。共、音恭。
【読み】
齊侯將に之を許さんとす。管仲曰く、君禮と信とを以て諸侯を屬けたり。而るを姦を以て之を終わらば、乃ち不可なること無からんや。子父奸さざる、之を禮と謂い、命を守り時に共する、之を信を謂う。君命を守り、時事に共す。○奸は、音干。共は、音恭。
違此二者、姦莫大焉。
【読み】
此の二つの者に違わば、姦焉より大なるは莫し、と。
公曰、諸侯有討於鄭、未捷。今苟有釁。從之、不亦可乎。子華犯父命。是其釁隙。
【読み】
公曰く、諸侯鄭を討ずること有れども、未だ捷[か]たず。今苟に釁有り。之に從わば、亦可ならずや、と。子華父の命を犯す。是れ其の釁隙なり。
對曰、君若綏之以德、加之以訓辭、而帥諸侯以討鄭、鄭將覆亡之不暇。豈敢不懼。若總其罪人以臨之、總、將領也。子華奸父之命、卽罪人。
【読み】
對えて曰く、君若之を綏んずるに德を以てし、之に加うるに訓辭を以てして、諸侯を帥いて以て鄭を討ぜば、鄭將に覆亡にも暇あらざらんとす。豈敢えて懼れざらんや。若し其の罪人を總べて以て之を臨まば、總は、將領なり。子華父の命を奸すは、卽ち罪人なり。
鄭有辭矣。何懼。以大義爲辭。
【読み】
鄭に辭有り。何ぞ懼れん。大義を以て辭を爲す。
且夫合諸侯以崇德也。會而列姦、何以示後嗣。列姦、用子華。
【読み】
且つ夫れ諸侯を合するは以て德を崇ぶなり。會して姦を列ねば、何を以てか後嗣に示さん。姦を列ぬとは、子華を用ゆるなり。
夫諸侯之會、其德刑禮義、無國不記。記姦之位、位、會位也。子華爲姦人。而列在會位、將爲諸侯所記。
【読み】
夫れ諸侯の會は、其の德刑禮義、國として記さざるは無し。姦の位を記さば、位は、會位なり。子華は姦人爲り。而るに列して會位に在らば、將に諸侯の爲に記されんとす。
君盟替矣。替、廢也。
【読み】
君の盟替[すた]れん。替は、廢るなり。
作而不記、非盛德也。君舉必書。雖復齊史隱諱、亦損盛德。
【読み】
作して記さざるは、盛德に非ざるなり。君の舉は必ず書す。復齊史は隱諱すと雖も、亦盛德を損す。
君其勿許。鄭必受盟。
【読み】
君其れ許すこと勿かれ。鄭必ず盟を受けん。
夫子華旣爲大子。而求介於大國、以弱其國。亦必不免。介、因也。
【読み】
夫れ子華旣に大子爲り。而るに大國に介[よ]りて、以て其の國を弱まさんことを求む。亦必ず免れじ。介は、因るなり。
鄭有叔詹・堵叔・師叔、三良爲政。未可閒也。
【読み】
鄭に叔詹[しゅくせん]・堵叔・師叔有り、三良政を爲す。未だ閒す可からざるなり、と。
齊侯辭焉。子華由是得罪於鄭。
【読み】
齊侯辭す。子華是に由りて罪を鄭に得たり。
冬、鄭伯使請盟于齊。以齊侯不聽子華故。
【読み】
冬、鄭伯盟を齊に請わしむ。齊侯子華に聽くにあらざるを以ての故なり。
閏月、惠王崩。襄王惡大叔帶之難、襄王、惠王大子鄭也。大叔帶、襄王弟、惠后之子也。有寵於惠后、惠后欲立之、未及而卒。
【読み】
閏月、惠王崩ず。襄王大叔帶の難を惡み、襄王は、惠王の大子鄭なり。大叔帶は、襄王の弟、惠后の子なり。惠后に寵有り、惠后之を立てんと欲し、未だ及ばずして卒す。
懼不立、不發喪、而告難于齊。爲八年、盟洮傳。○洮、他刀反。
【読み】
立たざらんことを懼れて、喪を發せずして、難を齊に告ぐ。八年、洮[とう]に盟う爲の傳なり。○洮は、他刀反。
〔經〕八年、春、王正月、公會王人・齊侯・宋公・衛侯・許男・曹伯・陳世子款盟于洮。王人與諸侯盟不譏者、王室有難故。洮、曹地。
【読み】
〔經〕八年、春、王の正月、公王人・齊侯・宋公・衛侯・許男・曹伯・陳の世子款に會して洮[とう]に盟う。王人諸侯と盟うに譏らざるは、王室難有る故なり。洮は、曹の地。
鄭伯乞盟。新服未與會。故不序列、別言乞盟。
【読み】
鄭伯盟を乞う。新たに服して未だ會に與らず。故に序列せずして、別に盟を乞うと言う。
夏、狄伐晉。秋、七月、禘于大廟、用致夫人。禘、三年大祭之名。大廟、周公廟。致者、致新死之主於廟、而列之昭穆。夫人淫而與殺、不薨於寢。於禮不應致。故僖公疑其禮、歷三禘、今果行之。嫌異常。故書之。○殺、音試。
【読み】
夏、狄晉を伐つ。秋、七月、大廟に禘し、用[もっ]て夫人を致す。禘は、三年の大祭の名。大廟は、周公の廟。致すとは、新たに死するの主を廟に致して、之を昭穆に列ぬるなり。夫人淫にして殺に與り、寢に薨ぜず。禮に於て應に致すべからず。故に僖公其の禮を疑いて、三禘を歷て、今果たして之を行う。常に異なるに嫌あり。故に之を書す。○殺は、音試。
冬、十有二月、丁未、天王崩。實以前年閏月崩、以今年十二月丁未告。
【読み】
冬、十有二月、丁未[ひのと・ひつじ]、天王崩ず。實は前年の閏月を以て崩じ、今年十二月丁未を以て告ぐ。
〔傳〕八年、春、盟于洮、謀王室也。
【読み】
〔傳〕八年、春、洮に盟うは、王室を謀るなり。
鄭伯乞盟、請服也。
【読み】
鄭伯盟を乞うは、服せんことを請うなり。
襄王定位、而後發喪。王人會洮還、而後王位定。
【読み】
襄王位を定めて、而して後に喪を發せり。王人洮に會して還りて、而して後に王位定まる。
晉里克帥師、梁由靡御、虢射爲右、以敗狄于采桑。傳言前年事也。平陽北屈縣西南有采桑津。○射、食亦反。
【読み】
晉の里克師を帥い、梁由靡御となり、虢射[かくせき]右と爲り、以て狄を采桑に敗る。傳、前年の事を言うなり。平陽北屈縣の西南に采桑津有り。○射は、食亦反。
梁由靡曰、狄無恥。從之必大克。不恥走。故可逐。
【読み】
梁由靡曰く、狄恥無し。之を從[お]わば必ず大いに克たん、と。走[に]ぐるを恥じず。故に逐う可し。
里克曰、懼之而已。無速衆狄。恐怨深而羣黨來報。
【読み】
里克曰く、之を懼さんのみ。衆狄を速[まね]くこと無かれ、と。怨深して羣黨來報せんことを恐る。
虢射曰、期年狄必至。示之弱矣。○期、音基。
【読み】
虢射曰く、期年に狄必ず至らん。之に弱きを示せり、と。○期は、音基。
夏、狄伐晉。報采桑之役也。復期月。明期年之言驗。
【読み】
夏、狄晉を伐つ。采桑の役に報ゆるなり。期月に復びせり。期年の言の驗あるを明かす。
秋、禘而致哀姜焉。非禮也。
【読み】
秋、禘して哀姜を致す。禮に非ざるなり。
凡夫人不薨于寢、不殯于廟、不赴于同、不祔于姑、則弗致也。寢、小寢。同、同盟。將葬、又不以殯過廟。據經哀姜薨葬之文、則爲殯廟赴同祔姑。今當以不薨于寢、不得致也。
【読み】
凡そ夫人寢に薨ぜず、廟に殯せず、同に赴[つ]げず、姑に祔せざれば、則ち致さざるなり。寢は、小寢。同は、同盟。將に葬らんとして、又殯を以て廟に過ぎず。經の哀姜薨葬の文に據れば、則ち廟に殯し同に赴げ姑に祔することを爲せり。今當に寢に薨ぜざるを以て、致すことを得ざるなるべし。
冬、王人來告喪。難故也。是以緩。有大叔帶之難。
【読み】
冬、王人來りて喪を告ぐ。難の故なり。是を以て緩[おく]る。大叔帶の難有り。
宋公疾。大子茲父固請曰、目夷長且仁。君其立之。茲父、襄公也。目夷、茲父庶兄、子魚也。
【読み】
宋公疾む。大子茲父固く請いて曰く、目夷長じて且仁なり。君其れ之を立てよ、と。茲父は、襄公なり。目夷は、茲父の庶兄、子魚なり。
公命子魚。子魚辭曰、能以國讓、仁孰大焉。臣不及也。且又不順。立庶、不順禮。
【読み】
公子魚に命ず。子魚辭して曰く、能く國を以て讓るは、仁孰か焉より大ならん。臣は及ばざるなり。且つ又不順なり、と。庶を立つるは、禮に順わざるなり。
遂走而退。
【読み】
遂に走りて退く。
〔經〕九年、春、王三月、丁丑、宋公御說卒。四同盟。○御、魚呂反。說、音悅。
【読み】
〔經〕九年、春、王の三月、丁丑[ひのと・うし]、宋公御說卒す。四たび同盟す。○御は、魚呂反。說は、音悅。
夏、公會宰周公・齊侯・宋子・衛侯・鄭伯・許男・曹伯于葵丘。周公、宰孔也。宰、官。周、采地。天子三公不字。宋子、襄公也。傳例曰、在喪、公侯曰子。陳留外黃縣東有葵丘。
【読み】
夏、公宰周公・齊侯・宋子・衛侯・鄭伯・許男・曹伯に葵丘[ききゅう]に會す。周公は、宰孔なり。宰は、官。周は、采地。天子の三公は字いわず。宋子は、襄公なり。傳例に曰く、喪に在れば、公侯を子と曰う、と。陳留外黃縣の東に葵丘有り。
秋、七月、乙酉、伯姬卒。無傳。公羊・穀梁曰、未適人。故不稱國。已許嫁、則以成人之禮書、不復殤也。婦人許嫁而筓、猶丈夫之冠。
【読み】
秋、七月、乙酉[きのと・とり]、伯姬卒す。傳無し。公羊・穀梁に曰く、未だ人に適かず。故に國を稱せず、と。已に許嫁すれば、則ち成人の禮を以て書して、復殤[しょう]にせざるなり。婦人許嫁して筓するは、猶丈夫の冠するがごとし。
九月、戊辰、諸侯盟于葵丘。夏會葵丘、次伯姬卒、文不相比。故重言諸侯。宰孔先歸不與盟。
【読み】
九月、戊辰[つちのえ・たつ]、諸侯葵丘に盟う。夏葵丘に會し、次に伯姬卒して、文相比[なら]わず。故に諸侯を重言す。宰孔先ず歸りて盟に與らず。
甲子、晉侯佹諸卒。未同盟、而赴以名。甲子、九月十一日。戊辰、十五日也。書在盟後、從赴。○佹、九委反。
【読み】
甲子[きのえ・ね]、晉侯佹諸卒す。未だ同盟せずして、赴[つ]ぐるに名を以てす。甲子は、九月十一日。戊辰は、十五日なり。書して盟の後に在るは、赴ぐるに從うなり。○佹は、九委反。
冬、晉里克殺其君之子奚齊。獻公未葬、奚齊未成君。故稱君之子。奚齊受命繼位、無罪。故里克稱名。伯爵在喪、亦稱子。見竹書紀年。
【読み】
冬、晉の里克其の君の子奚齊を殺す。獻公未だ葬らず、奚齊未だ君と成らず。故に君の子と稱す。奚齊命を受け位を繼いで、罪無し。故に里克名を稱す。伯爵喪に在るも、亦子と稱す。竹書紀年に見ゆ。
〔傳〕九年、春、宋桓公卒。未葬、而襄公會諸侯。故曰子。
【読み】
〔傳〕九年、春、宋の桓公卒す。未だ葬らずして、襄公諸侯に會す。故に子と曰う。
凡在喪、王曰小童、公・侯曰子。在喪、未葬也。小童者、童蒙幼末之稱。子者、繼父之辭。公・侯、位尊。上連王者、下絕伯・子・男。周康王在喪、稱予一人釗、禮稱亦不言小童。或所稱之辭、各有所施。此謂王自稱之辭。非諸下所得書。故經無其事、傳通取舊典之文、以事相接。○之稱、去聲。釗、古堯反。亦音昭。
【読み】
凡そ喪に在るは、王を小童と曰い、公・侯を子と曰う。喪に在るとは、未だ葬らざるなり。小童は、童蒙幼末の稱。子は、父に繼ぐの辭。公・侯は、位尊し。上は王者に連なり、下は伯・子・男に絕つ。周の康王喪に在りて、予一人釗[しょう]と稱して、禮稱にも亦小童と言わず。或は稱する所の辭、各々施す所有るならん。此は王自ら稱するの辭を謂う。諸れ下の書すことを得る所に非ず。故に經に其の事無けれども、傳は通じて舊典の文を取りて、事を以て相接ぐるなり。○之稱は、去聲。釗は、古堯反。亦音昭。
夏、會于葵丘、尋盟、且脩好。禮也。
【読み】
夏、葵丘に會して、盟を尋[かさ]ね、且好を脩む。禮なり。
王使宰孔賜齊侯胙、胙、祭肉。尊之比二王後。
【読み】
王宰孔をして齊侯に胙を賜わしめて、胙は、祭肉。之を尊んで二王の後に比す。
曰、天子有事于文武、有祭事也。
【読み】
曰く、天子文武に事有りて、祭事有るなり。
使孔賜伯舅胙。天子謂異姓諸侯曰伯舅。
【読み】
孔をして伯舅に胙を賜わしむ、と。天子異姓の諸侯を謂いて伯舅と曰う。
齊侯將下拜。孔曰、且有後命。天子使孔曰、以伯舅耋老、加勞賜一級、無下拜。七十曰耋。級、等也。○耋、田節反。一他結反。勞、力報反。
【読み】
齊侯將に下拜せんとす。孔曰く、且後命有り。天子孔をして曰わしむ、伯舅が耋老[てつろう]するを以て、加勞して一級を賜いて、下拜すること無からしむ、と。七十を耋と曰う。級は、等なり。○耋は、田節反。一に他結反。勞は、力報反。
對曰、天威不違顏咫尺。言天鑒察不遠、威嚴常在顏面之前。八寸曰咫。
【読み】
對えて曰く、天威顏を違[さ]らざること咫尺[しせき]。言うこころは、天の鑒察遠からず、威嚴常に顏面の前に在り。八寸を咫と曰う。
小白、余敢貪天子之命、無下拜、小白、齊侯名。余、身也。
【読み】
小白、余敢えて天子の命を貪りて、下拜すること無くば、小白は、齊侯の名。余は、身なり。
恐隕越于下、隕越、顚墜也。據天王居上。故言恐顚墜于下。
【読み】
恐れらくは下に隕越して、隕越は、顚墜なり。天王上に居るに據る。故に下に顚墜せんことを恐ると言う。
以遺天子羞。敢不下拜。下拜登受。拜堂下、受胙於堂上。○遺、于季反。
【読み】
以て天子に羞を遺らんことを。敢えて下拜せざらんや、と。下拜して登りて受く。堂下に拜して、胙を堂上に受く。○遺は、于季反。
秋、齊侯盟諸侯于葵丘、曰、凡我同盟之人、旣盟之後、言歸于好。義取脩好。故傳顯其盟辭。
【読み】
秋、齊侯諸侯に葵丘に盟いて、曰く、凡そ我が同盟の人、旣に盟うの後は、言[ここ]に好に歸せん、と。義好を脩むるに取る。故に傳其の盟辭を顯す。
宰孔先歸。旣會、先諸侯去。○先諸、悉薦反。
【読み】
宰孔先ず歸る。旣に會して、諸侯に先んじて去る。○先諸は、悉薦反。
遇晉侯、曰、可無會也。晉侯欲來會葵丘。
【読み】
晉侯に遇いて、曰く、會すること無かる可し。晉侯來りて葵丘に會せんと欲す。
齊侯不務德而勤遠略。故北伐山戎、在莊三十年。
【読み】
齊侯德を務めずして遠略を勤む。故に北、山戎を伐ち、莊三十年に在り。
南伐楚、在四年。
【読み】
南、楚を伐ち、四年に在り。
西爲此會也。東略之不知。西則否矣。言或向東、必不能復西略。
【読み】
西、此の會を爲せり。東略せんは知らず。西は則ち否[しか]らじ。言うこころは、東に向かうこと或れば、必ず復西略すること能わず。
其在亂乎。君務靖亂。無勤於行。在、存也。微戒獻公、言晉將有亂。
【読み】
其れ亂を在[と]わんか。君亂を靖[しず]むることを務めよ。行くことを勤むること無かれ、と。在は、存[と]うなり。獻公に微戒して、晉將に亂有らんとすと言う。
晉侯乃還。不復會齊。
【読み】
晉侯乃ち還る。復齊に會せず。
九月、晉獻公卒。里克・丕鄭、欲納文公。故以三公子之徒作亂。丕鄭、晉大夫。三公子、申生・重耳・夷吾。○丕、普悲反。
【読み】
九月、晉の獻公卒す。里克・丕鄭[ひてい]、文公を納れんと欲す。故に三公子の徒を以て亂を作す。丕鄭は、晉の大夫。三公子は、申生・重耳・夷吾。○丕は、普悲反。
初、獻公使荀息傅奚齊。公疾。召之曰、以是藐諸孤、言其幼賤、與諸子縣藐。○藐、妙小反。又亡角反。
【読み】
初め、獻公荀息をして奚齊に傅たらしむ。公疾む。之を召して曰く、是の諸孤に藐たるを以て、言うこころは、其の幼賤、諸子と縣藐なり。○藐は、妙小反。又亡角反。
辱在大夫。其若之何。欲屈辱荀息、使保護之。
【読み】
辱く大夫に在り。其れ之を若何、と。荀息を屈辱して、之を保護せしめんと欲す。
稽首而對曰、臣竭其股肱之力、加之以忠貞。其濟、君之靈也。不濟、則以死繼之。公曰、何謂忠貞。對曰、公家之利、知無不爲、忠也。送往事居、耦俱無猜、貞也。往、死者。居、生者。耦、兩也。送死事生、兩無疑恨。所謂正也。
【読み】
稽首して對えて曰く、臣其の股肱の力を竭し、之に加うるに忠貞を以てせん。其の濟[な]るは、君の靈なり。濟らずんば、則ち死を以て之に繼がん、と。公曰く、何をか忠貞と謂うや、と。對えて曰く、公家の利、知れば爲さざること無きは、忠なり。往を送り居に事え、耦[ふた]つながら俱に猜[うたが]い無きは、貞なり、と。往は、死者。居は、生者。耦は、兩つなり。死を送り生に事え、兩つながら疑恨無し。所謂正なり。
及里克將殺奚齊、先告荀息曰、三怨將作。三公子之徒。
【読み】
里克將に奚齊を殺さんとするに及びて、先ず荀息に告げて曰く、三怨將に作らんとす。三公子の徒。
秦・晉輔之。子將何如。荀息曰、將死之。里克曰、無益也。荀叔曰、吾與先君言矣。不可以貳。能欲復言、而愛身乎。荀叔、荀息也。復言、言可復也。
【読み】
秦・晉之を輔く。子將に何如にせんとする、と。荀息曰く、將に之に死なんとす、と。里克曰く、益無し、と。荀叔曰く、吾れ先君と言えり。以て貳[ふたごころ]ある可からず。能く言を復せんことを欲して、身を愛せんや。荀叔は、荀息なり。復言は、言復す可きなり。
*頭注に「一說、復、踐也。是也」とある。
雖無益也、將焉辟之。且人之欲善、誰不如我。我欲無貳、而能謂人已乎。言不能止里克使不忠於申生等。
【読み】
益無しと雖も、將[はた]焉んぞ之を辟けん。且つ人の善を欲する、誰か我に如かざらん。我れ貳無からんことを欲して、能く人に已めよと謂わんや、と。言うこころは、里克を止めて申生等に不忠ならしむること能わず。
冬、十月、里克殺奚齊于次。次、喪寢。
【読み】
冬、十月、里克奚齊を次に殺す。次は、喪寢。
書曰殺其君之子、未葬也。
【読み】
書して其の君の子を殺すと曰うは、未だ葬らざればなり。
荀息將死之。人曰、不如立卓子而輔之。荀息立公子卓、以葬。十一月、里克殺公子卓于朝。荀息死之。
【読み】
荀息將に之に死なんとす。人曰く、卓子を立てて之を輔くるに如かず、と。荀息公子卓を立てて、以て葬る。十一月、里克公子卓を朝に殺す。荀息之に死す。
君子曰、詩所謂白圭之玷、尙可磨也。斯言之玷、不可爲也。詩、大雅。言此言之缺、難治甚於白圭。○玷、丁簟反。又丁念反。
【読み】
君子曰く、詩に所謂白圭の玷[か]けたるは、尙磨く可し。斯の言の玷けたるは、爲[おさ]む可からず、と。詩は、大雅。言うこころは、此れ言の缺[か]けたるは、治め難きこと白圭より甚だし。○玷[てん]は、丁簟反。又丁念反。
荀息有焉。有此詩人重言之義。
【読み】
荀息焉れ有り、と。此の詩人言を重んずるの義有り。
齊侯以諸侯之師伐晉、及高梁而還。討晉亂也。高梁、晉地。在平陽縣西南。
【読み】
齊侯諸侯の師を以[い]て晉を伐ち、高梁に及びて還る。晉の亂を討ずるなり。高梁は、晉の地。平陽縣の西南に在り。
令不及魯。故不書。前已發不書例。今復重發、嫌霸者異於凡諸侯。
【読み】
令魯に及ばず。故に書さず。前已に書さざるの例を發す。今復重ねて發するは、霸者は凡諸侯に異なるに嫌あればなり。
晉郤芮使夷吾重賂秦以求入。郤芮、郤克祖父。從夷吾者。○從、才用反。
【読み】
晉の郤芮[げきぜい]夷吾をして重く秦に賂いて以て入ることを求めしむ。郤芮は、郤克の祖父。夷吾に從う者なり。○從は、才用反。
曰、人實有國。我何愛焉。言國非己之有。何愛而不以賂秦。
【読み】
曰く、人實に國を有つ。我れ何ぞ愛[おし]まん。言うこころは、國は己が有に非ず。何ぞ愛んで以て秦に賂わざらん。
入而能民、土於何有。從之。能得民、不患無土。
【読み】
入りて民を能くせば、土に於て何か有らん、と。之に從う。能く民を得ば、土無きを患えず。
齊隰朋帥師會秦師、納晉惠公。隰朋、齊大夫。惠公、夷吾。
【読み】
齊の隰朋[しゅうほう]師を帥いて秦の師に會して、晉の惠公を納る。隰朋は、齊の大夫。惠公は、夷吾。
秦伯謂郤芮曰、公子誰恃。對曰、臣聞亡人無黨。有黨必有讎。言夷吾無黨。無黨則無讎。易出易入。以微勸秦。
【読み】
秦伯郤芮に謂いて曰く、公子は誰をか恃める、と。對えて曰く、臣聞く、亡人は黨無し。黨有れば必ず讎有り、と。言うこころは、夷吾黨無し。黨無ければ則ち讎無し。出で易く入り易し。以て秦を微勸す。
夷吾弱不好弄。弄、戲也。
【読み】
夷吾は弱にして弄[たわむれ]を好まず。 弄は、戲れなり。
能鬭不過。有節制。
【読み】
能く鬭いて過ぎず。節制有り。
長亦不改、不識其他。
【読み】
長じて亦改めずして、其の他を識らず、と。
公謂公孫枝曰、夷吾其定乎。公孫枝、秦大夫、子桑也。
【読み】
公公孫枝に謂いて曰く、夷吾は其れ定めんか、と。公孫枝は、秦大夫、子桑なり。
對曰、臣聞之、唯則定國。詩曰、不識不知、順帝之則、文王之謂也。詩、大雅。帝、天也。則、法也。言文王闇行、自然合天之法。
【読み】
對えて曰く、臣之を聞く、唯則あれば國を定む、と。詩に曰く、識らず知らず、帝の則に順うとは、文王を謂うなり。詩は、大雅。帝は、天なり。則は、法なり。文王闇行して、自然に天の法に合うを言う。
又曰、不僭不賊、鮮不爲則、僭、過差也。賊、傷害也。皆忌克也。能不然、則可爲人法則。○鮮、息淺反。
【読み】
又曰く、僭[たが]わず賊[そこな]わざれば、則と爲らざること鮮しとは、僭は、過差なり。賊は、傷害なり。皆忌克なり。能く然らざれば、則ち人の法則と爲る可し。○鮮は、息淺反。
無好無惡、不忌不克之謂也。今其言多忌克。旣僭而賊。
【読み】
好み無く惡み無く、忌まず克たざるを謂うなり。今其の言忌克多し。旣に僭にして賊なり。
難哉。言能自定難。
【読み】
難いかな、と。能く自ら定むることの難きを言う。
公曰、忌則多怨。又焉能克。是吾利也。其言雖多忌、適足以自害。不能勝人也。秦伯慮其還害己。故曰、是吾利。
【読み】
公曰く、忌めば則ち怨み多し。又焉ぞ能く克たん。是れ吾が利なり、と。其の言忌むこと多しと雖も、適に以て自ら害するに足れり。人に勝つこと能わず。秦伯其の還って己を害せんことを慮る。故に曰く、是れ吾が利なり、と。
宋襄公卽位、以公子目夷爲仁、使爲左師以聽政。於是宋治。故魚氏世爲左師。
【読み】
宋の襄公位に卽き、公子目夷を以て仁と爲し、左師と爲して以て政を聽かしむ。是に於て宋治まる。故に魚氏世々左師爲り。
〔經〕十年、春、王正月、公如齊。無傳。
【読み】
〔經〕十年、春、王の正月、公齊に如く。傳無し。
狄滅溫。溫子奔衛。蓋中國之狄、滅而居其土地。
【読み】
狄溫を滅ぼす。溫子衛に奔る。蓋し中國の狄、滅ぼして其の土地に居るならん。
晉里克弑其君卓、及其大夫荀息。弑卓在前年。而以今春書者、從赴也。獻公旣葬、卓已免喪。故稱君也。荀息稱名者、雖欲復言、本無遠謀、從君於昏。
【読み】
晉の里克其の君卓を弑して、其の大夫荀息に及ぶ。卓を弑するは前年に在り。而るに今春を以て書すは、赴[つ]ぐるに從うなり。獻公旣に葬り、卓已に喪を免る。故に君と稱するなり。荀息名を稱するは、復言せんことを欲すと雖も、本遠謀無く、君に昏に從えばなり。
夏、齊侯・許男伐北戎。無傳。北戎、山戎。
【読み】
夏、齊侯・許男北戎を伐つ。傳無し。北戎は、山戎。
晉殺其大夫里克。奚齊者、先君所命。卓子又以在國嗣位。罪未爲無道。而里克親爲三怨之主、累弑二君。故稱名以罪之。
【読み】
晉其の大夫里克を殺す。奚齊は、先君の命ずる所。卓子も又國に在るを以て位を嗣ぐ。罪未だ無道を爲さず。而るを里克親ら三怨の主と爲り、累[しき]りに二君を弑す。故に名を稱して以て之を罪す。
秋、七月。冬、大雨雪。無傳。平地尺爲大雪。○雨、于付反。
【読み】
秋、七月。冬、大いに雪雨[ふ]る。傳無し。平地尺を大雪とす。○雨は、于付反。
〔傳〕十年、春、狄滅溫、蘇子無信也。
【読み】
〔傳〕十年、春、狄溫を滅ぼすは、蘇子信無ければなり。
蘇子叛王卽狄。又不能於狄。狄人伐之。王不救。故滅。蘇子奔衛。蘇子、周司寇、蘇公之後也。國於溫。故曰溫子。叛王事在莊十九年。
【読み】
蘇子王に叛きて狄に卽く。又狄に能からず。狄人之を伐つ。王救わず。故に滅びたり。蘇子衛に奔る。蘇子は、周の司寇、蘇公の後なり。溫に國す。故に溫子と曰う。王に叛く事は莊十九年に在り。
夏、四月、周公忌父・王子黨會齊隰朋、立晉侯。周公忌父、周郷士。王子黨、周大夫。
【読み】
夏、四月、周公忌父・王子黨齊の隰朋[しゅほう]に會して、晉侯を立つ。周公忌父は、周の郷士。王子黨は、周の大夫。
晉侯殺里克以說。自解說不簒。
【読み】
晉侯里克を殺して以て說く。自ら簒わざると解說す。
將殺里克、公使謂之曰、微子則不及此。雖然、子弑二君與一大夫。爲子君者、不亦難乎。對曰、不有廢也、君何以興。欲加之罪、其無辭乎。言欲加己罪、不患無辭。
【読み】
將に里克を殺さんとするに、公之に謂わしめて曰く、子微[な]かりせば則ち此に及ばじ。然りと雖も、子二君と一大夫とを弑せり。子の君爲る者、亦難からずや、と。對えて曰く、廢すること有らずんば、君何を以て興らん。之に罪を加えんと欲せば、其れ辭無からんや。言うこころは、己に罪を加えんと欲せば、辭無きを患えず。
臣聞命矣。伏劒而死。於是丕鄭聘于秦、且謝緩賂。故不及。丕鄭、里克黨。以在秦故、不及里克倶死。
【読み】
臣命を聞けり、と。劒に伏して死す。是に於て丕鄭[ひてい]秦に聘し、且緩賂を謝す。故に及ばず。丕鄭は、里克の黨。秦に在るの故を以て、里克と倶に死なず。
晉侯改葬共大子。共大子、申生也。○共、音恭。大、音泰。
【読み】
晉侯共大子を改葬す。共大子は、申生なり。○共は、音恭。大は、音泰。
秋、狐突適下國、下國、曲沃新城。
【読み】
秋、狐突下國に適き、下國は、曲沃の新城。
遇大子。大子使登僕、忽如夢而相見。狐突、本爲申生御。故復使登車爲僕。
【読み】
大子に遇う。大子登りて僕たらしめて、忽として夢の如くにして相見るなり。狐突は、本申生の御爲り。故に復車に登りて僕爲らしむ。
而告之曰、夷吾無禮。余得請於帝矣。請罰夷吾。
【読み】
之に告げて曰く、夷吾禮無し。余帝に請うことを得たり。夷吾を罰せんと請う。
將以晉畀秦。秦將祀余。對曰、臣聞之、神不歆非類、民不祀非族。君祀無乃殄乎。歆、饗也。殄、絕也。
【読み】
將に晉を以て秦に畀[あた]えんとす。秦將に余を祀らんとす、と。對えて曰く、臣之を聞く、神は非類に歆[う]けず、民は非族を祀らず、と。君の祀乃ち殄[た]ゆること無からんや。歆[きん]は、饗[う]くるなり。殄[てん]は、絕つなり。
且民何罪。失刑乏祀。君其圖之。君曰、諾。吾將復請。七日、新城西偏、將有巫者。而見我焉。新城、曲沃也。將因巫而見。
【読み】
且つ民何の罪かある。刑を失い祀に乏しからん。君其れ之を圖れ、と。君曰く、諾。吾れ將に復請わんとす。七日ありて、新城の西偏に、將に巫者有らんとす。而[なんじ]我を見よ、と。新城は、曲沃なり。將に巫に因りて見えんとす。
許之。遂不見。狐突許其言。申生之象亦沒。○見、賢遍反。又如字。
【読み】
之を許す。遂に見えず。狐突其の言を許す。申生の象も亦沒す。○見は、賢遍反。又字の如し。
及期而往。告之曰、帝許我罰有罪矣。敝於韓。敝、敗也。韓、晉地。獨敝惠公。故言罰有罪。明復以晉畀秦。夷吾忌克多怨、終於失國。雖改葬加謚、申生猶忿。傳言鬼神所馮、有時而信。
【読み】
期に及びて往く。之に告げて曰く、帝我に有罪を罰するを許せり。韓に敝[やぶ]れん。敝は、敗るなり。韓は、晉の地。獨惠公を敝る。故に有罪を罰すと言う。復晉を以て秦に畀えざること明らかなり。夷吾忌克にして多怨、國を失うに終わる。改葬して加謚すと雖も、申生猶忿る。傳に鬼神の馮[よ]る所、時有りて信あるを言う。
丕鄭之如秦也、言於秦伯曰、呂甥・郤稱・冀芮實爲不從。若重問以召之、三子、晉大夫。不從、不與秦賂。問、聘問之幣。○稱、尺證反。又如字。
【読み】
丕鄭の秦に如くや、秦伯に言いて曰く、呂甥[りょせい]・郤稱[げきしょう]・冀芮[きぜい]實に從わざることを爲せり。若し問を重くして以て之を召さば、三子は、晉の大夫。從わずとは、秦に賂を與えざるなり。問は、聘問の幣。○稱は、尺證反。又字の如し。
臣出晉君。君納重耳。蔑不濟矣。蔑、無也。
【読み】
臣晉君を出ださん。君重耳を納れよ。濟[な]らざること蔑[な]けん、と。蔑は、無きなり。
冬、秦伯使泠至報問、且召三子。泠至、秦大夫。○泠、力丁反。
【読み】
冬、秦伯泠至[れいし]をして報問せしめ、且三子を召す。泠至は、秦の大夫。○泠は、力丁反。
郤芮曰、幣重而言甘。誘我也。遂殺平鄭・祁舉、祁舉、晉大夫。
【読み】
郤芮曰く、幣重くして言甘し。我を誘[おび]くなり、と。遂に平鄭・祁舉と、祁舉は、晉の大夫。
及七輿大夫、侯・伯七命、副車七乘。
【読み】
七輿大夫の、侯・伯は七命、副車七乘あり。
左行共華・右行賈華・叔堅・騅歂・纍虎・特宮・山祁。皆里・丕之黨也。七子、七輿大夫。○行、戶剛反。共、音恭。騅、音隹。歂、市專反。纍、力追反。
【読み】
左行共華・右行賈華・叔堅・騅歂[すいせん]・纍虎[るいこ]・特宮・山祁とを殺す。皆里・丕の黨なり。七子は、七輿の大夫。○行は、戶剛反。共は、音恭。騅は、音隹。歂は、市專反。纍は、力追反。
丕豹奔秦。丕豹、丕鄭之子。
【読み】
丕豹秦に奔る。丕豹は、丕鄭の子。
言於秦伯曰、晉侯背大主而忌小怨。民弗與也。伐之必出。大主、秦也。小怨、里・丕。
【読み】
秦伯に言いて曰く、晉侯大主に背きて小怨を忌む。民與せず。之を伐たば必ず出でん、と。大主は、秦なり。小怨は、里・丕。
公曰、失衆、焉能殺。謂殺里・丕之黨。
【読み】
公曰く、衆を失わば、焉ぞ能く殺さん。里・丕の黨を殺すを謂う。
違禍。誰能出君。謂豹避禍也。爲明年晉殺丕鄭傳。
【読み】
禍を違[さ]く。誰か能く君を出ださん、と。豹が禍を避くるを謂うなり。明年晉丕鄭を殺す爲の傳なり。
〔經〕十有一年、春、晉殺其大夫丕鄭父。以私怨謀亂國。書名、罪之。書春、從告。
【読み】
〔經〕十有一年、春、晉其の大夫丕鄭父を殺す。私怨を以て國を亂らんことを謀る。名を書すは、之を罪するなり。春に書すは、告ぐるに從うなり。
夏、公及夫人姜氏會齊侯于陽穀。無傳。婦人送迎不出門。見兄弟不踰閾。與公倶會齊侯、非禮。○閾、音域。門限也。
【読み】
夏、公夫人姜氏と齊侯に陽穀に會す。傳無し。婦人は送迎門を出でず。兄弟に見ゆるに閾[しきい]を踰えず。公と倶に齊侯に會するは、非禮なり。○閾[よく]は、音域。門限なり。
秋、八月、大雩。無傳。過時。故書。
【読み】
秋、八月、大いに雩[う]す。傳無し。時を過ぐ。故に書す。
冬、楚人伐黃。
【読み】
冬、楚人黃を伐つ。
〔傳〕十一年、春、晉侯使以丕鄭之亂來告。釋經書在今年。
【読み】
〔傳〕十一年、春、晉侯丕鄭の亂を以て來り告げしむ。經の書して今年に在るを釋く。
天王使召武公・内史過賜晉侯命。天王、周襄王。召武公、周卿士。内史過、周大夫。諸侯卽位、天子賜之命圭爲瑞。○過、古禾反。
【読み】
天王召武公・内史過をして晉侯に命を賜わしむ。天王は、周の襄王。召武公は、周の卿士。内史過は、周の大夫。諸侯位に卽けば、天子之に命圭を賜いて瑞と爲す。○過は、古禾反。
受玉惰。過歸。告王曰、晉侯其無後乎。王賜之命、而惰於受瑞。先自弃也已。其何繼之有。禮、國之幹也。敬、禮之輿也。不敬、則禮不行。禮不行、則上下昏。何以長世。爲惠公不終張本。○長、直良反。又丁丈反。
【読み】
玉を受くること惰れり。過歸る。王に告げて曰く、晉侯は其れ後無からんか。王之に命を賜いて、瑞を受くるに惰る。先ず自ら弃[す]つるのみ。其れ何の繼ぐことか之れ有らん。禮は、國の幹なり。敬は、禮の輿なり。敬せざれば、則ち禮行われず。禮行われざれば、則ち上下昏し。何を以て世を長くせん、と。惠公終わらざる爲の張本なり。○長は、直良反。又丁丈反。
夏、揚・拒・泉・皐・伊・雒之戎、同伐京師、入王城、焚東門。揚・拒・泉・皐、皆戎邑、及諸雜戎居伊水・雒水之閒者。今伊闕北有泉亭。○拒、倶宇反。
【読み】
夏、揚・拒・泉・皐・伊・雒[らく]の戎、同じく京師を伐ち、王城に入りて、東門を焚く。揚・拒・泉・皐は、皆戎邑、諸々の雜戎と伊水・雒水の閒に居る者なり。今伊闕の北に泉亭有り。○拒は、倶宇反。
王子帶召之也。王子帶、甘昭公也。召戎、欲因以簒位。
【読み】
王子帶が之を召[むか]えるなり。王子帶は、甘昭公なり。戎を召すは、因りて以て位を簒わんと欲するなり。
秦・晉伐戎以救周。秋、晉侯平戎于王。爲二十四年、天王出居鄭傳。
【読み】
秦・晉戎を伐ちて以て周を救う。秋、晉侯戎を王に平らぐ。二十四年、天王出でて鄭に居る爲の傳なり。
黃人不歸楚貢。冬、楚人伐黃。黃人恃齊故。
【読み】
黃人楚に貢を歸[おく]らず。冬、楚人黃を伐つ。黃人齊を恃む故なり。
〔經〕十有二年、春、王三月、庚午、日有食之。無傳。不書朔、官失之。
【読み】
〔經〕十有二年、春、王の三月、庚午[かのえ・うま]、日之を食する有り。傳無し。朔を書さざるは、官之を失えり。
夏、楚人滅黃。秋、七月。冬、十有二月、丁丑、陳侯杵臼卒。無傳。遺世子與僖公同盟甯母及洮。○臼、其九反。
【読み】
夏、楚人黃を滅ぼす。秋、七月。冬、十有二月、丁丑[ひのと・うし]、陳侯杵臼[しょきゅう]卒す。傳無し。世子をして僖公と甯母[ねいぼ]と洮[とう]とに同盟せしむ。○臼は、其九反。
〔傳〕十二年、春、諸侯城衛楚丘之郛。懼狄難也。楚丘、衛國都。郛、郭也。爲明年春、狄侵衛傳。○郛、芳夫反。難、乃旦反。
【読み】
〔傳〕十二年、春、諸侯衛の楚丘の郛[ふ]に城く。狄の難を懼れてなり。楚丘は、衛の國都。郛は、郭なり。明年春、狄衛を侵す爲の傳なり。○郛は、芳夫反。難は、乃旦反。
黃人恃諸侯之睦于齊也、不共楚職、曰、自郢及我九百里、焉能害我。夏、楚滅黃。郢、楚都。○共、音恭。
【読み】
黃人諸侯の齊に睦まじきを恃めるや、楚に職を共せずして、曰く、郢[えい]より我に及ぶまで九百里、焉ぞ能く我を害せん、と。夏、楚黃を滅ぼす。郢は、楚の都。○共は、音恭。
王以戎難故、討王子帶。子帶前年召戎伐周。
【読み】
王戎の難を以ての故に、王子帶を討ず。子帶前年戎を召して周を伐たしむ。
秋、王子帶奔齊。
【読み】
秋、王子帶齊に奔る。
冬、齊侯使管夷吾平戎于王、使隰朋平戎于晉。平、和也。前年晉救周伐戎。故戎與周・晉不和。
【読み】
冬、齊侯管夷吾をして戎を王に平らげしめ、隰朋[しゅうほう]をして戎を晉に平らげしむ。平は、和らぐなり。前年晉周を救いて戎を伐つ。故に戎と周・晉と和せず。
王以上卿之禮饗管仲。管仲辭曰、臣、賤有司也。有天子之二守國・高在。國子・高子、天子所命爲齊守臣。皆上卿也。莊二十二年、高傒始見經。僖二十八年、國歸父乃見傳。歸父之父曰懿仲、高傒之子曰莊子。不知今當誰世。○守、手又反。
【読み】
王上卿の禮を以て管仲を饗す。管仲辭して曰く、臣は、賤しき有司なり。天子の二守なる國・高の在る有り。國子・高子は、天子の命じて齊の守臣と爲す所。皆上卿なり。莊二十二年、高傒始めて經に見ゆ。僖二十八年、國歸父乃ち傳に見ゆ。歸父の父を懿仲と曰い、高傒の子を莊子と曰う。知らず、今誰の世に當たることを。○守は、手又反。
若節春秋、來承王命、何以禮焉。節、時也。
【読み】
若し春秋を節にして、來りて王命を承けば、何を以て禮せん。節は、時なり。
陪臣敢辭。諸侯之臣曰陪臣。
【読み】
陪臣敢えて辭す、と。諸侯の臣を陪臣と曰う。
王曰、舅氏、伯舅之使。故曰舅氏。
【読み】
王曰く、舅氏、伯舅の使。故に舅氏と曰う。
余嘉乃勳、應乃懿德。謂督不忘。往踐乃職、無逆朕命。功勳美德、可謂正而不可忘者。不言位而言職者、管仲位卑而執齊政。故欲以職尊之。
【読み】
余乃の勳を嘉し、乃の懿德に應じたり。督[ただ]しくして忘れられずと謂う。往きて乃の職を踐みて、朕が命に逆うこと無し、と。功勳美德、正しくして忘る可からざる者と謂う可し。位と言わずして職と言うは、管仲位卑くして齊の政を執る。故に職を以て之を尊ばんと欲するなり。
管仲受下卿之禮而還。管仲不敢以職自高、卒受本位之禮。
【読み】
管仲下卿の禮を受けて還る。管仲敢えて職を以て自ら高しとせず、卒に本位の禮を受く。
君子曰、管氏之世祀也宜哉。讓不忘其上。詩曰、愷悌君子、神所勞矣。詩、大雅。愷、樂也。悌、易也。言樂易君子、爲神所勞來。故世祀也。管仲之後、於齊沒不復見。亦舉其無驗。○愷、開在反。悌、音弟。勞、力報反。來、力代反。
【読み】
君子曰く、管氏の世々祀らるるや宜なるかな。讓りて其の上を忘れず。詩に曰く、愷悌の君子は、神の勞する所なり、と。詩は、大雅。愷は、樂しむなり。悌は、易きなり。言うこころは、樂易の君子は、神の爲に勞來せらる。故に世々祀らるるなり。管仲の後、齊に於て沒して復見れず。亦其の驗無きを舉ぐ。○愷は、開在反。悌は、音弟。勞は、力報反。來は、力代反。
〔經〕十有三年、春、狄侵衛。傳在前年春。
【読み】
〔經〕十有三年、春、狄衛を侵す。傳は前年の春に在り。
夏、四月、葬陳宣公。無傳。
【読み】
夏、四月、陳の宣公を葬る。傳無し。
公會齊侯・宋公・陳侯・衛侯・鄭伯・許男・曹伯于鹹。鹹、衛地。東郡濮陽縣東南有鹹城。
【読み】
公齊侯・宋公・陳侯・衛侯・鄭伯・許男・曹伯に鹹[かん]に會す。鹹は、衛の地。東郡濮陽縣の東南に鹹城有り。
秋、九月、大雩。無傳。書過。
【読み】
秋、九月、大いに雩[う]す。傳無し。過ぐるを書す。
冬、公子友如齊。無傳。
【読み】
冬、公子友齊に如く。傳無し。
〔傳〕十三年、春、齊侯使仲孫湫聘于周、且言王子帶。前年王子帶奔齊。言欲復之。
【読み】
〔傳〕十三年、春、齊侯仲孫湫[ちゅうそんしょう]をして周に聘し、且王子帶を言わしむ。前年王子帶齊に奔る。言いて之を復さんと欲す。
事畢。不與王言。不言子帶事。
【読み】
事畢る。王と言わず。子帶の事を言わず。
歸、復命曰、未可。王怒未怠。其十年乎。不十年、王弗召也。
【読み】
歸りて、復命して曰く、未だ可ならず。王の怒り未だ怠らず。其れ十年か。十年ならずんば、王召さじ、と。
夏、會于鹹、淮夷病杞故。且謀王室也。
【読み】
夏、鹹に會するは、淮夷杞を病ましむる故なり。且王室を謀るなり。
秋、爲戎難故、諸侯戍周。齊仲孫湫致之。戍、守也。致諸侯戍卒于周。○爲、于僞反。難、乃旦反。
【読み】
秋、戎の難の爲の故に、諸侯周を戍る。齊の仲孫湫之を致す。戍は、守るなり。諸侯の戍卒を周に致す。○爲は、于僞反。難は、乃旦反。
冬、晉荐饑。麥・禾皆不熟。○荐、在薦反。
【読み】
冬、晉荐[しき]りに饑ゆ。麥・禾皆熟せず。○荐[せん]は、在薦反。
使乞糴于秦。秦伯謂子桑、與諸乎。對曰、重施而報、君將何求。言不損秦。○施、式豉反。
【読み】
糴[てき]を秦に乞わしむ。秦伯子桑に謂う、諸を與えんか、と。對えて曰く、重く施して報いば、君將[はた]何をか求めん。言うこころは、秦を損せざるなり。○施は、式豉反。
重施而不報、其民必攜。攜而討焉、無衆必敗。不義故民離。
【読み】
重く施して報いざれば、其の民必ず攜[はな]れん。攜れて討ぜば、衆無くして必ず敗れん、と。不義の故に民離る。
謂百里、與諸乎。百里、秦大夫。
【読み】
百里に謂う、諸を與えんか、と。百里は、秦の大夫。
對曰、天災流行、國家代有。救災恤鄰、道也。行道有福。
【読み】
對えて曰く、天災の流行する、國家代る代る有り。災いを救い鄰を恤[めぐ]むは、道なり。道を行えば福有り、と。
丕鄭之子豹在秦。請伐晉。欲爲父報怨。
【読み】
丕鄭の子豹秦に在り。晉を伐たんと請う。父の爲に怨みを報いんと欲す。
秦伯曰、其君是惡、其民何罪。
【読み】
秦伯曰く、其の君是れ惡しきも、其の民何の罪かある。
秦於是乎輸粟于晉。自雍及絳相繼。雍、秦國都。絳、晉國都。○雍、於用反。
【読み】
秦是に於て粟を晉に輸[いた]す。雍より絳[こう]に及ぶまで相繼ぐ。雍は、秦の國都。絳は、晉の國都。○雍は、於用反。
命之曰汎舟之役。從渭水運入河汾。
【読み】
之を命[な]づけて汎舟の役と曰う。渭水より運びて河汾に入る。
〔經〕十有四年、春、諸侯城緣陵。緣陵、杞邑。辟淮夷、遷都于緣陵。
【読み】
〔經〕十有四年、春、諸侯緣陵に城く。緣陵は、杞の邑。淮夷を辟け、都を緣陵に遷す。
夏、六月、季姬及鄫子遇于防、使鄫子來朝。季姬、魯女。鄫夫人也。鄫子本無朝志。爲季姬所召而來。故言使鄫子來朝。鄫國、今琅邪鄫縣。○鄫、似綾反。
【読み】
夏、六月、季姬鄫子[しょうし]と防に遇い、鄫子をして來朝せしむ。季姬は、魯の女。鄫の夫人なり。鄫子本朝する志無し。季姬の爲に召されて來る。故に鄫子をして來朝せしむと言う。鄫國は、今の琅邪鄫縣。○鄫は、似綾反。
秋、八月、辛卯、沙鹿崩。沙鹿、山名。平陽元城縣東有沙鹿土山、在晉地。災害繫於所災所害。故不繫國。
【読み】
秋、八月、辛卯[かのと・う]、沙鹿崩る。沙鹿は、山の名。平陽元城縣の東に沙鹿土山有り、晉の地に在り。災害は災いある所害ある所に繫る。故に國に繫けず。
狄侵鄭。無傳。
【読み】
狄鄭を侵す。傳無し。
冬、蔡侯肸卒。無傳。未同盟而赴以名。○肸、許乙反。
【読み】
冬、蔡侯肸[きつ]卒す。傳無し。未だ同盟せずして赴[つ]ぐるに名を以てす。○肸は、許乙反。
〔傳〕十四年、春、諸侯城緣陵、而遷杞焉。不書其人、有闕也。闕、謂器用不具、城池未固而去、爲惠不終也。澶淵之會、旣而無歸、大夫不書、而國別稱人。今此揔曰諸侯、君臣之辭。不言城杞、杞未遷也。○澶、市然反。
【読み】
〔傳〕十四年、春、諸侯緣陵に城きて、杞を遷す。其の人を書さざるは、闕くること有ればなり。闕くとは、器用具わらず、城池未だ固からずして去り、惠みを爲して終わらざるを謂うなり。澶淵[せんえん]の會、旣にして歸[おく]ること無ければ、大夫書さずして、國別に人と稱せり。今此に揔[す]べて諸侯と曰うは、君臣の辭なり。杞に城くと言わざるは、杞未だ遷らざればなり。○澶は、市然反。
鄫季姬來寧。公怒止之。以鄫子之不朝也。來寧不書、而後年書歸鄫、更嫁之文也。明公絕鄫昏、旣來朝而還。○還、戶關反。
【読み】
鄫の季姬來寧す。公怒りて之を止む。鄫子の朝せざるを以てなり。來寧は書さずして、後年鄫に歸るを書すは、更めて嫁ぐの文なり。公鄫の昏を絕ち、旣に來朝して還るを明かす。○還は、戶關反。
夏、遇于防、而使來朝。
【読み】
夏、防に遇いて、來朝せしむ。
秋、八月、辛卯、沙鹿崩。晉卜偃曰、期年將有大咎。幾亡國。國主山川。山崩川竭、亡國之徵。○期、音基。咎、其九反。幾、音祈。又音機。
【読み】
秋、八月、辛卯、沙鹿崩る。晉の卜偃曰く、期年にして將に大咎有らんとす。幾ど國を亡ぼさん、と。國は山川を主る。山崩れ川竭くるは、亡國の徵なり。○期は、音基。咎は、其九反。幾は、音祈。又音機。
冬、秦饑。使乞糴于晉。晉人弗與。
【読み】
冬、秦饑ゆ。糴[てき]を晉に乞わしむ。晉人與えず。
慶鄭曰、背施無親、慶鄭、晉大夫。○背、音佩。施、式豉反。
【読み】
慶鄭曰く、施に背けば親無く、慶鄭は、晉の大夫。○背は、音佩。施は、式豉反。
幸災不仁。貪愛不祥。怒鄰不義。四德皆失、何以守國。虢射曰、皮之不存、毛將安傅。虢射、惠公舅也。皮以喩所許秦城、毛以喩糴。言旣背秦施、爲怨以深。雖與之糴、猶無皮而施毛。○傅、音附。
【読み】
災いを幸うは不仁なり。貪りて愛むは不祥なり。鄰を怒らすは不義なり。四德皆失わば、何を以て國を守らん、と。虢射[かくせき]曰く、皮の存せざる、毛將[はた]安くに傅[つ]かん、と。虢射は、惠公の舅なり。皮は以て秦に許す所の城に喩え、毛は以て糴に喩う。言うこころは、旣に秦の施しに背いて、怨みを爲すこと以[すで]に深し。之に糴を與うと雖も、猶皮無くして毛を施すがごとし。○傅は、音附。
慶鄭曰、弃信背鄰、患孰恤之。無信患作、失援必斃。是則然矣。虢射曰、無損於怨、而厚於寇。不如勿與。言與秦粟、不足解怨。適足使秦强。
【読み】
慶鄭曰く、信を弃[す]てて鄰に背かば、患えあるも孰か之を恤れまん。信無ければ患え作り、援けを失えば必ず斃る、と。是れ則ち然り、と。虢射曰く、怨みに損無くして、寇を厚くす。與うること勿からんに如かず、と。言うこころは、秦に粟を與うとも、怨みを解くに足らず。適に秦を强からしむるに足れり。
慶鄭曰、背施幸災、民所弃也。近猶讎之。況怨敵乎。弗聽。退曰、君其悔是哉。
【読み】
慶鄭曰く、施に背き災いを幸うは、民の弃つる所なり。近きも猶之を讎とす。況んや怨敵をや、と。聽かず。退いて曰く、君其れ是を悔いんかな、と。
〔經〕十有五年、春、王正月、公如齊。無傳。諸侯五年再相朝。禮也。例在文十五年。
【読み】
〔經〕十有五年、春、王の正月、公齊に如く。傳無し。諸侯五年に再び相朝す。禮なり。例は文十五年に在り。
楚人伐徐。三月、公會齊侯・宋公・陳侯・衛侯・鄭伯・許男・曹伯盟于牡丘。牡丘、地名。闕。
【読み】
楚人徐を伐つ。三月、公齊侯・宋公・陳侯・衛侯・鄭伯・許男・曹伯に會して牡丘に盟う。牡丘は、地の名。闕く。
遂次于匡。匡、衛地。在陳留長垣縣西南。
【読み】
遂に匡に次[やど]る。匡は、衛の地。陳留長垣縣の西南に在り。
公孫敖帥師、及諸侯之大夫救徐。公孫敖、慶父之子。諸侯旣盟次匡、皆遣大夫將兵救徐。故不復具列國別也。
【読み】
公孫敖師を帥いて、諸侯の大夫と徐を救う。公孫敖は、慶父の子。諸侯旣に盟いて匡に次り、皆大夫をして兵を將[ひき]いて徐を救わしむ。故に復具列して國別せざるなり。
夏、五月、日有食之。秋、七月、齊師・曹師伐厲。厲、楚與國。義陽隨縣北有厲郷。
【読み】
夏、五月、日之を食する有り。秋、七月、齊師・曹師厲を伐つ。厲は、楚の與國。義陽隨縣の北に厲郷有り。
八月、螽。無傳。爲災。
【読み】
八月、螽[しゅう]あり。傳無し。災いを爲す。
九月、公至自會。無傳。
【読み】
九月、公會より至る。傳無し。
季姬歸于鄫。無傳。來寧不書、此書者、以明中絕。○中、丁仲反。又如字。
【読み】
季姬鄫[しょう]に歸る。傳無し。來寧書さずして、此に書すは、以て中絕を明らかにするなり。○中は、丁仲反。又字の如し。
己卯、晦、震夷伯之廟。夷伯、魯大夫。展氏之祖父。夷、謚。伯、字。震者、雷電擊之。大夫旣卒、書字。
【読み】
己卯[つちのと・う]、晦、夷伯の廟に震す。夷伯は、魯の大夫。展氏の祖父。夷は、謚。伯は、字。震は、雷電之を擊つなり。大夫旣に卒すれば、字を書す。
冬、宋人伐曹。楚人敗徐于婁林。婁林、徐地。下邳僮縣東南有婁亭。○婁、力侯反。
【読み】
冬、宋人曹を伐つ。楚人徐を婁林に敗る。婁林は、徐の地。下邳僮縣の東南に婁亭有り。○婁は、力侯反。
十有一月、壬戌、晉侯及秦伯戰于韓。獲晉侯。例得大夫曰獲。晉侯背施無親、愎諫違卜。故貶絕、下從衆臣之例、而不言以歸。不書敗績、晉師不大崩。○愎、皮逼反。
【読み】
十有一月、壬戌[みずのえ・いぬ]、晉侯秦伯と韓に戰う。晉侯を獲たり。例に大夫を得るを獲と曰う。晉侯施に背きて親無く、諫めに愎[もと]り卜に違う。故に貶絕して、下衆臣の例に從いて、以[い]て歸ると言わず。敗績を書さざるは、晉の師大いに崩れざればなり。○愎[ひょく]は、皮逼反。
〔傳〕十五年、春、楚人伐徐、徐卽諸夏故也。
【読み】
〔傳〕十五年、春、楚人徐を伐つは、徐諸夏に卽く故なり。
三月、盟于牡丘、尋葵丘之盟、且救徐也。葵丘之盟、在九年。
【読み】
三月、牡丘に盟うは、葵丘の盟を尋[かさ]ね、且徐を救うなり。葵丘の盟は、九年に在り。
孟穆伯帥師、及諸侯之師救徐。諸侯次于匡以待之。
【読み】
孟穆伯師を帥いて、諸侯の師と徐を救う。諸侯匡に次りて以て之を待つ。
夏、五月、日有食之。不書朔與日、官失之也。
【読み】
夏、五月、日之を食する有り。朔と日とを書さざるは、官之を失うなり。
秋、伐厲、以救徐也。
【読み】
秋、厲を伐つは、以て徐を救うなり。
晉侯之入也、秦穆姬屬賈君焉。晉侯入、在九年。穆姬、申生姊、秦穆夫人。賈君、晉獻公次妃、賈女也。○屬、音燭。
【読み】
晉侯の入るや、秦の穆姬賈君を屬す。晉侯入るは、九年に在り。穆姬は、申生の姊、秦の穆夫人なり。賈君は、晉の獻公の次妃、賈の女なり。○屬は、音燭。
且曰、盡納羣公子。羣公子、晉武・獻之族。宣二年傳曰、驪姬之亂、詛無畜羣公子。○詛、莊據反。
【読み】
且曰く、盡く羣公子を納れよ、と。羣公子は、晉の武・獻の族。宣二年の傳に曰く、驪姬の亂に、羣公子を畜うこと無からんと詛[ちか]えり、と。○詛は、莊據反。
晉侯烝於賈君、又不納羣公子。是以穆姬怨之。晉侯許賂中大夫、中大夫、國内執政、里・丕等。
【読み】
晉侯賈君に烝して、又羣公子を納れず。是を以て穆姬之を怨む。晉侯賂を中大夫に許して、中大夫は、國内の執政、里・丕等。
旣而皆背之。賂秦伯以河外列城五、東盡虢略、南及華山、内及解梁城。旣而不與。河外、河南也。東盡虢略、從河南而東、盡虢界也。解梁城、今河東解縣也。華山、在弘農華陰縣西南。○解、音蟹。
【読み】
旣にして皆之に背く。秦伯に賂うに河外の列城五つ、東は虢略を盡くし、南は華山に及ぶと、内は解梁城に及ぶまでとを以てす。旣にして與えず。河外は、河南なり。東は虢略を盡くすとは、河南よりして東、虢の界を盡くすなり。解梁城は、今の河東の解縣なり。華山は、弘農華陰縣の西南に在り。○解は、音蟹。
晉饑、秦輸之粟、在十三年。
【読み】
晉饑ゆるとき、秦之に粟を輸[いた]し、十三年に在り。
秦饑、晉閉之糴。在十四年。
【読み】
秦饑ゆるとき、晉之が糴[てき]を閉ず。十四年に在り。
故秦伯伐晉。
【読み】
故に秦伯晉を伐つ。
卜徒父筮之。吉。徒父、秦之掌龜卜者。卜人而用筮、不能通三易之占。故據其所見雜占而言之。
【読み】
卜徒父之を筮す。吉なり。徒父は、秦の龜卜を掌る者。卜人にして筮を用ゆれば、三易の占に通ずること能わず。故に其の見る所の雜占に據りて之を言う。
涉河、侯車敗。詰之。秦伯之軍涉河、則晉侯車敗也。秦伯不解。謂敗在己。故詰之。○詰、起吉反。
【読み】
河を涉らば、侯の車敗れん、と。之を詰[なじ]る。秦伯の軍河を涉らば、則ち晉侯の車敗れん。秦伯解せず。敗己に在りと謂[おも]う。故に之を詰る。○詰は、起吉反。
對曰、乃大吉也。三敗、必獲晉君。其卦遇蠱。巽下艮上蠱。
【読み】
對えて曰く、乃ち大吉なり。三敗して、必ず晉君を獲ん。其の卦蠱に遇えり。巽下艮上は蠱なり。
曰、千乘三去。三去之餘、獲其雄狐。夫狐蠱、必其君也。於周易、利涉大川。往有事也。亦秦勝晉之卦也。今此所言、蓋卜筮書雜辭。以狐蠱爲君、其義欲以喩晉惠公。其象未聞。○去、起居反。又起據反。一起呂反。
【読み】
曰く、千乘三去す。三去の餘は、其の雄狐を獲ん、と。夫れ狐は蠱なれば、必ず其の君ならん。周易に於ては、大川を涉るに利あり。往きて事有るなり。亦秦晉に勝つの卦なり。今此の言う所は、蓋し卜筮書の雜辭ならん。狐蠱を以て君と爲すは、其の義以て晉の惠公に喩えんと欲するなり。其の象は未だ聞かず。○去は、起居反。又起據反。一に起呂反。
蠱之貞、風也。其悔、山也。内卦爲貞。外卦爲悔。巽爲風。秦象。艮爲山。晉象。
【読み】
蠱の貞は、風なり。其の悔は、山なり。内卦を貞と爲す。外卦を悔と爲す。巽を風と爲す。秦の象なり。艮を山と爲す。晉の象なり。
歲云秋矣。我落其實、而取其材。所以克也。周九月、夏之七月、孟秋也。艮爲山。山有木。今歲已秋。風吹落山木之實、則材爲人所取。
【読み】
歲云[ここ]に秋なり。我れ其の實を落して、其の材を取る。克つ所以なり。周の九月は、夏の七月、孟秋なり。艮を山と爲す。山に木有り。今歲已に秋なり。風山木の實を吹き落せば、則ち材人の爲に取らる。
實落材亡。不敗何待。
【読み】
實落ち材亡ぶ。敗れずして何をか待たん、と。
三敗及韓。晉侯車三壞。
【読み】
三たび敗れて韓に及ぶ。晉侯の車三たび壞る。
晉侯謂慶鄭曰、寇深矣。若之何。對曰、君實深之。可若何。公曰、不孫。卜右。慶鄭吉。弗使。惡其不孫、不以爲車右。此夷吾之多忌。○孫、音遜。
【読み】
晉侯慶鄭に謂いて曰く、寇深し。之を若何にせん、と。對えて曰く、君實に之を深くす。若何にす可けん、と。公曰く、不孫なり、と。右を卜す。慶鄭吉なり。使わず。其の不孫を惡みて、以て車右と爲さず。此れ夷吾の多忌なり。○孫は、音遜。
步揚御戎、家僕徒爲右、步揚、郤犨之父。
【読み】
步揚戎に御となり、家僕徒右と爲り、步揚は、郤犨[げきしゅう]の父。
乘小駟。鄭入也。鄭所獻馬。名小駟。
【読み】
小駟に乘る。鄭の入れしなり。鄭の獻ずる所の馬。小駟と名づく。
慶鄭曰、古者大事、必乘其產。生其水土、而知其人心、安其敎訓、而服習其道。唯所納之、無不如志。今乘異產、以從戎事。及懼而變、將與人易。變易人意。
【読み】
慶鄭曰く、古者[いにしえ]大事には、必ず其の產に乘る。其の水土に生じて、其の人心を知り、其の敎訓に安んじて、其の道に服習す。唯之を納るる所のままにして、志の如くならざること無し。今は異產に乘りて、以て戎事に從わんとす。懼るるに及びて變ぜば、將に人と易わらんとす。人意に變易す。
亂氣狡憤、陰血周作、張脈僨興。外彊中乾。狡、戾也。僨、動也。氣狡憤於外、則血脈必周身而作、隨氣張動。外雖有彊形、而内實乾竭。○憤、扶粉反。張、中亮反。僨、方問反。
【読み】
亂氣狡憤すれば、陰血周作して、張脈僨興す。外彊きも中乾く。狡は、戾[もと]るなり。僨は、動くなり。氣外に狡憤すれば、則ち血脈必ず身を周りて作り、氣に隨いて張動す。外彊形有りと雖も、而れども内實に乾竭す。○憤は、扶粉反。張は、中亮反。僨は、方問反。
進退不可、周旋不能。君必悔之。弗聽。
【読み】
進退可ならず、周旋能わず。君必ず之を悔いん、と。聽かず。
九月、晉侯逆秦師。使韓簡視師。韓簡、晉大夫韓萬之孫。
【読み】
九月、晉侯秦の師を逆[むか]う。韓簡をして師を視せしむ。韓簡は、晉の大夫韓萬の孫。
復曰、師少於我、鬭士倍我。公曰、何故。對曰、出因其資、謂奔梁求秦。
【読み】
復して曰く、師は我より少なくして、鬭士は我に倍せり、と。公曰く、何の故ぞ、と。對えて曰く、出づるとき其の資に因り、梁に奔りて秦に求むるを謂う。
入用其寵、爲秦所納。
【読み】
入るとき其の寵を用い、秦の爲に納れらる。
饑食其粟。三施而無報。是以來也。今又擊之。我怠秦奮。倍猶未也。公曰、一夫不可狃。況國乎。狃、忕也。言辟秦則使忕來。○施、式氏反。忕、時世反。又時設反。
【読み】
饑ゆるとき其の粟を食いぬ。三たび施して報ゆること無し。是を以て來れり。今又之を擊つ。我は怠り秦は奮う。倍すというも猶未だし、と。公曰く、一夫も狃れしむ可からず。況んや國をや、と。狃[じゅう]は、忕[な]れるなり。言うこころは、秦を辟けば則ち忕れ來らしめん。○施は、式氏反。忕[せつ]は、時世反。又時設反。
*忕は、立心偏に犬とある。
遂使請戰、曰、寡人不佞。能合其衆、而不能離也。君若不還、無所逃命。秦伯使公孫枝對曰、君之未入、寡人懼之。入而未定列、猶吾憂也。列、位也。
【読み】
遂に戰を請わしめて、曰く、寡人不佞なり。能く其の衆を合わせて、離つこと能わざるなり。君若し還らずんば、命を逃るる所無し、と。秦伯公孫枝をして對えしめて曰く、君の未だ入らざるや、寡人之を懼れぬ。入りて未だ列を定めざるや、猶吾が憂えなりき。列は、位なり。
苟列定矣。敢不承命。韓簡退曰、吾幸而得囚。得囚爲幸。言必敗。
【読み】
苟も列定りぬ。敢えて命を承けざらんや、と。韓簡退いて曰く、吾れ幸いにして囚わるることを得ん、と。囚わるることを得るを幸いとす。必ず敗るるを言う。
壬戌、戰于韓原。九月十三日。
【読み】
壬戌、韓原に戰う。九月十三日。
晉戎馬還、濘而止。濘、泥也。還、便旋也。小駟不調。故隋泥中。○濘、乃定反。隋、大果反。
【読み】
晉の戎馬還し、濘にして止まる。濘は、泥なり。還は、便旋なり。小駟調わず。故に泥中に隋[お]つ。○濘は、乃定反。隋は、大果反。
公號慶鄭。慶鄭曰、愎諫違卜、愎、戾也。○號、戶刀反。又戶報反。
【読み】
公慶鄭を號[よ]ぶ。慶鄭曰く、諫めに愎[もと]り卜に違い、愎は、戾るなり。○號は、戶刀反。又戶報反。
固敗是求。又何逃焉。遂去之。
【読み】
固より敗を是れ求めり。又何ぞ逃れん、と。遂に之を去る。
梁由靡御韓簡、虢射爲右、輅秦伯、將止之、輅、迎也。止、獲也。○輅、五嫁反。
【読み】
梁由靡韓簡に御となり、虢射右と爲り、秦伯を輅[むか]えて、將に之を止[え]んとするを、輅は、迎うなり。止は、獲るなり。○輅は、五嫁反。
鄭以救公誤之、遂失秦伯。秦獲晉侯以歸。經書十一月壬戌。十四日。經從赴。
【読み】
鄭公を救えというを以て之を誤らせ、遂に秦伯を失う。秦晉侯を獲て以[い]て歸る。經は十一月壬戌に書す。十四日なり。經は赴[つ]ぐるに從うなり。
晉大夫反首拔舍從之。反首、亂頭髮下垂也。拔、草。舍、止。壞形毀服。○拔、蒲末反。
【読み】
晉の大夫反首拔舍して之に從う。反首は、頭髮を亂して下り垂るるなり。拔は、草。舍は、止まる。形を壞り服を毀るなり。○拔は、蒲末反。
秦伯使辭焉、曰、二三子何其慼也。寡人之從君而西也、亦晉之妖夢是踐。豈敢以至。狐突不寐、而與神言。故謂之妖夢。申生言、帝許罰有罪。今將晉君而西、以厭息此語。踐、厭也。○厭、於冉反。又於輒反。
【読み】
秦伯辭せしめて、曰く、二三子何ぞ其れ慼[うれ]うるや。寡人が君に從いて西するや、亦晉の妖夢を是れ踐[お]さんとなり。豈敢えて以て至らんや、と。狐突寐ずして、神と言う。故に之を妖夢と謂う。申生言う、帝有罪を罰するを許す、と。今晉君を將いて西するは、以て此の語を厭息せんとなり。踐は、厭[お]すなり。○厭は、於冉反。又於輒反。
晉大夫三拜稽首曰、君履后土而戴皇天。皇天后土實聞君之言。羣臣敢在下風。
【読み】
晉の大夫三拜稽首して曰く、君后土を履みて皇天を戴く。皇天后土實に君の言を聞けり。羣臣敢えて下風に在り、と。
穆姬聞晉侯將至、以大子罃・弘、與女簡璧、登臺而履薪焉、罃、康公名。弘、其母弟也。簡璧、罃・弘姊妹。古之宮閉者、皆居之臺抗絕之。穆姬欲自罪。故登臺而荐之以薪。左右上下者、皆履柴乃得通。○罃、於耕反。
【読み】
穆姬晉侯の將に至らんとするを聞き、大子罃[おう]・弘と、女簡璧とを以[い]て、臺に登りて薪を履み、罃は、康公の名。弘は、其の母弟なり。簡璧は、罃・弘の姊妹。古の宮閉ずる者は、皆之を臺に居[お]きて之を抗絕す。穆姬自ら罪せんと欲す。故に臺に登りて之を荐[かこ]うに薪を以てす。左右の上下する者、皆柴を履みて乃ち通ずることを得。○罃は、於耕反。
使以免服衰絰逆、且告、免・衰・絰、遭喪之服。令行人服此服迎秦伯、且告將以恥辱自殺。○免、音問。衰、七雷反。絰、大結反。
【読み】
以て免[ぶん]して衰絰[さいてつ]を服して逆[むか]え、且つ告げしめて、免・衰・絰は、喪に遭うの服。行人をして此の服を服して秦伯を迎えしめ、且將に恥辱を以て自殺せんとするを告ぐ。○免は、音問。衰は、七雷反。絰は、大結反。
曰、上天降災、使我兩君、匪以玉帛相見、而以興戎。若晉君朝以入、則婢子夕以死。夕以入、則朝以死。唯君裁之。乃舍諸靈臺。在京兆鄠縣。周之故臺。亦所以抗絕令不得通外内。
【読み】
曰く、上天災いを降して、我が兩君をして、玉帛を以て相見ゆるに匪ずして、以て戎を興さしむ。若し晉君朝に以て入らば、則ち婢子夕に以て死なん。夕に以て入らば、則ち朝に以て死なん。唯君之を裁せよ、と。乃ち諸を靈臺に舍く。京兆鄠縣に在り。周の故臺なり。亦抗絕して外内を通ずることを得ざらしむる所以なり。
大夫請以入。公曰、獲晉侯、以厚歸也。旣而喪歸焉用之。若將晉侯入、則夫人或自殺。
【読み】
大夫以[い]て入らんと請う。公曰く、晉侯を獲るは、厚を以て歸るなり。旣にして喪をもて歸らんこと焉んぞ之を用いん。若し晉侯を將いて入らば、則ち夫人或は自殺せん。
大夫其何有焉。何有、猶何得。
【読み】
大夫其れ何か有らん。何か有らんとは、猶何をか得んというがごとし。
且晉人慼憂以重我、謂反首拔舍。
【読み】
且つ晉人慼憂以て我に重ね、反首拔舍を謂う。
天地以要我。不圖晉憂、重其怒也。我食吾言、背天地也。食、消也。○重、直用反。
【読み】
天地以て我に要す。晉の憂えを圖らざるは、其の怒りを重ぬるなり。我れ吾が言を食[け]すは、天地に背くなり。食は、消すなり。○重は、直用反。
重怒難任、背天不祥。必歸晉君。任、當也。○任、音壬。
【読み】
怒りを重ぬれば任[た]え難く、天に背くは不祥なり。必ず晉君を歸さん、と。任は、當たるなり。○任は、音壬。
公子縶曰、不如殺之。無聚慝焉。公子縶、秦大夫。恐夷吾歸、復相聚爲惡。○縶、張執反。慝、他得反。
【読み】
公子縶[ちゅう]曰く、之を殺すに如かず。聚慝せしむること無かれ、と。公子縶は、秦の大夫。恐らくは、夷吾歸らば、復相聚まりて惡を爲さん。○縶は、張執反。慝は、他得反。
子桑曰、歸之而質其大子、必得大成。晉未可滅。而殺其君、祗以成惡。祗、適也。○質、音置。祗、音支。
【読み】
子桑曰く、之を歸して其の大子を質にせば、必ず大成を得ん。晉は未だ滅ぼす可からず。而るを其の君を殺さば、祗[まさ]に以て惡を成さん。祗は、適になり。○質は、音置。祗は、音支。
且史佚有言曰、無始禍。史佚、周武王時大史。名、佚。
【読み】
且つ史佚[しいつ]言えること有り曰く、禍を始むること無かれ。史佚は、周の武王の時の大史。名は、佚。
無怙亂。恃人亂爲己利。
【読み】
亂を怙[たの]むこと無かれ。人の亂を恃みて己が利とす。
無重怒。重怒難任、陵人不祥。乃許晉平。
【読み】
怒りを重ぬること無かれ、と。怒りを重ぬれば任え難く、人を陵ぐは不祥なり、と。乃ち晉の平らぎを許す。
晉侯使郤乞告瑕呂飴甥、且召之。郤乞、晉大夫也。瑕呂飴甥、卽呂甥也。蓋姓、瑕呂。名、飴甥。字、子金。晉侯聞秦將許之平。故告呂甥、召使迎己。○飴、音怡。
【読み】
晉侯郤乞[げきこつ]をして瑕呂飴甥[かりょいせい]に告げ、且つ之を召さしむ。郤乞は、晉の大夫なり。瑕呂飴甥は、卽ち呂甥なり。蓋し姓は、瑕呂。名は、飴甥。字は、子金ならん。晉侯秦の將に之に平らぎを許さんとするを聞く。故に呂甥に告げて、召して己を迎えしむ。○飴は、音怡。
子金敎之言曰、朝國人、而以君命賞、恐國人不從。故先賞之於朝。
【読み】
子金之に言を敎えて曰く、國人を朝せしめて、君命を以て賞し、國人の從わざるを恐る。故に先ず之を朝に賞す。
且告之曰、孤雖歸、辱社稷矣。其卜貳圉也。貳、代也。圉、惠公大子、懷公。
【読み】
且之に告げて曰く、孤歸ると雖も、社稷を辱めたり。其れ卜して圉を貳[か]わりにせよ、と。貳は、代わるなり。圉は、惠公の大子、懷公。
衆皆哭。哀君不還國。
【読み】
衆皆哭す。君の國に還らざるを哀れむ。
晉於是乎作爰田。分公田之稅、應入公者、爰之於所賞之衆。
【読み】
晉是に於て爰田[えんでん]を作る。公田の稅の、應に公に入るべき者を分かちて、之を賞する所の衆に爰[か]う。
呂甥曰、君亡之不恤、而羣臣是憂。惠之至也。將若君何。衆曰、何爲而可。對曰、征繕以輔孺子。征、賦也。繕、治也。孺子、大子圉。
【読み】
呂甥曰く、君亡を恤えずして、羣臣を是れ憂う。惠の至りなり。將に君を若何にせんとする、と。衆曰く、何を爲して可ならん、と。對えて曰く、征繕して以て孺子を輔けん。征は、賦なり。繕は、治むるなり。孺子は、大子圉。
諸侯聞之、喪君有君、羣臣輯睦、甲兵益多、好我者勸、惡我者懼。庶有益乎。衆說。晉於是乎作州兵。五黨爲州。州、二千五百家也。因此又使州長各繕甲兵。○喪、息浪反。輯、音集。又七入反。
【読み】
諸侯之を聞きしに、君を喪いて君有り、羣臣輯睦して、甲兵益々多くば、我を好する者は勸み、我を惡む者は懼れん。庶わくは益有らんか、と。衆說ぶ。晉是に於て州兵を作る。五黨を州と爲す。州は、二千五百家なり。此に因りて又州長をして各々甲兵を繕[おさ]めしむ。○喪は、息浪反。輯は、音集。又七入反。
初、晉獻公筮嫁伯姬於秦。遇歸妹 兌下震上歸妹。
【読み】
初め、晉の獻公伯姬を秦に嫁せんことを筮す。歸妹の 兌下震上は歸妹。
之睽。兌下離上睽。歸妹上六變而爲睽。
【読み】
睽[けい]に之くに遇えり。兌下離上は睽。歸妹の上六變じて睽と爲る。
史蘇占之。曰、不吉。史蘇、晉卜筮之史。
【読み】
史蘇之を占う。曰く、不吉なり。史蘇は、晉の卜筮の史。
其繇曰、士刲羊、亦無衁也、女承筐、亦無貺也。周易歸妹上六爻辭也。衁、血也。貺、賜也。刲羊、士之功。承筐、女之職。上六無應。所求不獲。故下刲無血、上承無實。不吉之象也。離爲中女、震爲長男。故稱士女。○繇、直救反。刲、苦圭反。衁、音荒。中、丁仲反。
【読み】
其の繇[ちゅう]に曰く、士羊を刲[さ]すも、亦衁[こう]無く、女筐を承くるも、亦貺[たまもの]無し、と。周易歸妹上六の爻辭なり。衁は、血なり。貺は、賜なり。羊を刲すは、士の功。筐を承くるは、女の職。上六應無し。求むる所獲ず。故に下刲すに血無く、上承くるに實無し。不吉の象なり。離を中女と爲し、震を長男と爲す。故に士女と稱す。○繇は、直救反。刲は、苦圭反。衁は、音荒。中は、丁仲反。
西鄰責言、不可償也。將嫁女於西、而遇不吉之卦。故知有責讓之言、不可報償。○鄰責、音債。又如字。償、市亮反。又音常。
【読み】
西鄰の責言は、償う可からざるなり。將に女を西に嫁せんとして、不吉の卦に遇う。故に責讓の言有り、報償す可からざるを知る。○鄰責は、音債。又字の如し。償は、市亮反。又音常。
歸妹之睽、猶無相也。歸妹、女嫁之卦。睽、乖離之象。故曰無相。相、助也。○相、息亮反。
【読み】
歸妹の睽に之くも、猶相[たす]け無きなり。歸妹は、女嫁の卦。睽は、乖離の象。故に相け無しと曰う。相は、助けなり。○相は、息亮反。
震之離、亦離之震。二卦變而氣相通。
【読み】
震離に之き、亦離震に之く。二卦變じて氣相通ず。
爲雷爲火、爲嬴敗姬。嬴、秦姓。姬、晉姓。震爲雷、離爲火。火動熾而害其母、女嫁反害其家之象。故曰爲嬴敗姬。
【読み】
雷と爲し火と爲し、嬴[えい]姬を敗ると爲す。嬴は、秦の姓。姬は、晉の姓。震を雷と爲し、離を火と爲す。火動熾して其の母を害するは、女嫁して反って其の家を害するの象なり。故に嬴姬を敗ると爲すと曰う。
車說其輹、火焚其旗。不利行師。敗于宗丘。輹、車下縛也。丘、猶邑也。震爲車、離爲火。上六爻在震則無應。故車脫輹。在離則失位。故火焚旗。言皆失車火之用也。車敗旗焚。故不利行師。火還害母。故敗不出國、近在宗邑。○說、吐活反。輹、音福。又音服。
【読み】
車其の輹を說き、火其の旗を焚く。師を行[や]るに利あらず。宗丘に敗れん。輹は、車下の縛なり。丘は、猶邑のごとし。震を車と爲し、離を火と爲す。上六の爻震に在りて則ち應無し。故に車輹を脫[と]く。離に在りては則ち位を失う。故に火旗を焚く。皆車火の用を失うを言うなり。車敗れ旗焚く。故に師を行るに利あらず。火還って母を害す。故に敗れて國を出でずして、近く宗邑に在り。○說は、吐活反。輹は、音福。又音服。
歸妹睽孤、寇張之弧。此睽上九爻辭也。處睽之極。故曰睽孤。失位孤絕。故遇寇難、而有弓矢之警。皆不吉之象。
【読み】
歸妹の睽孤、寇之が弧[ゆみ]を張る。此れ睽の上九の爻辭なり。睽の極に處る。故に睽孤と曰う。位を失い孤絕す。故に寇難に遇いて、弓矢の警め有り。皆不吉の象なり。
姪其從姑。震爲木、離爲火。火從木生。離爲震妹。於火爲姑。謂我姪者、我謂之姑。謂子圉質秦。○姪、待結反。字林、丈一反。
【読み】
姪其れ姑に從わん。震を木と爲し、離を火と爲す。火は木より生ず。離は震の妹と爲す。火に於ては姑爲り。我を姪と謂う者は、我れ之を姑と謂う。子圉秦に質たるを謂う。○姪は、待結反。字林に、丈一反。
六年其逋、逃歸其國、而弃其家。逋、亡也。家、謂子圉婦懷嬴。○逋、補吾反。
【読み】
六年其れ逋[のが]れ、其の國に逃げ歸りて、其の家を弃[す]てん。逋は、亡[のが]るるなり。家は、子圉の婦懷嬴[かいえい]を謂う。○逋は、補吾反。
明年、其死於高梁之虛。惠公死之明年、文公入殺懷公于高梁。高梁、晉地、在平陽楊氏縣西南。凡筮者用周易、則其象可推。非此而往、則臨時占者或取於象、或取於氣、或取於時日王相、以成其占。若盡附會以爻象、則構虛而不經。故略言其歸趣。他皆放此。○虛、去魚反。王、于況反。相、息亮反。
【読み】
明年、其れ高梁の虛に死せん、と。惠公死するの明年、文公入りて懷公を高梁に殺す。高梁は、晉の地、平陽楊氏縣の西南に在り。凡そ筮者周易を用ゆれば、則ち其の象推す可し。此に非ざるよりは、則ち時に臨みて占者或は象に取り、或は氣に取り、或は時日王相に取りて、以て其の占を成す。若し盡く附會するに爻象を以てせば、則ち虛を構えて不經なり。故に略々其の歸趣を言うのみ。他も皆此に放え。○虛は、去魚反。王は、于況反。相は、息亮反。
及惠公在秦、曰、先君若從史蘇之占、吾不及此夫。韓簡侍曰、龜、象也。筮、數也。物生而後有象。象而後有滋。滋而後有數。先君之敗德及。可數乎。史蘇是占、勿從何益。言龜以象示、筮以數告。象數相因而生、然後有占。占所以知吉凶、不能變吉凶。故先君敗德、非筮數所生。雖復不從史蘇、不能益禍。○夫、音扶。先君之敗德及、絕句。可數乎、一讀、及可數乎。數、色主反。復、扶又反。
【読み】
惠公の秦に在るに及びて、曰く、先君若し史蘇の占に從わば、吾れ此に及ばざらんか、と。韓簡侍して曰く、龜は、象なり。筮は、數なり。物生じて而して後に象有り。象ありて而して後に滋ること有り。滋りて而して後に數有り。先君の敗德にて及べり。數なる可けんや。史蘇の是の占、從うこと勿きも何ぞ益[ま]さん。言うこころは、龜は象を以て示し、筮は數を以て告ぐ。象數相因りて生じて、然して後に占有り。占は吉凶を知る所以にして、吉凶を變ずること能わず。故に先君の敗德は、筮數の生ずる所に非ず。復史蘇に從わずと雖も、禍を益すこと能わず。○夫は、音扶。先君之敗德及は、絕句。可數乎は、一に讀む、及可數乎(數う可きに及ばんや)、と。數は、色主反。復は、扶又反。
詩曰、下民之孼、匪降自天。僔沓背憎、職競由人。詩、小雅。言民之有邪惡、非天所降、僔沓面語、背相憎疾。皆人競所主作。因以諷諫惠公有以召此禍也。○僔、尊本反。
【読み】
詩曰く、下民の孼[わざわい]は、天より降るに匪ず。僔沓[そんとう]して背けば憎み、競うを職[つかさど]るは人に由る、と。詩は、小雅。民の邪惡有るは、天の降す所に非ず、僔沓して面語し、背いて相憎疾す。皆人の競いて主作する所なるを言う。因りて以て惠公以て此の禍を召すこと有るを諷諫す。○僔は、尊本反。
震夷伯之廟、罪之也。於是展氏有隱慝焉。隱惡、非法所得。尊貴、罪所不加。是以聖人因天地之變、自然之妖、以感動之。知達之主、則識先聖之情以自厲、中下之主、亦信妖祥以不妄、神道助敎、唯此爲深。○知、音智。
【読み】
夷伯の廟に震すとは、之を罪するなり。是に於て展氏隱慝有り。隱惡は、法の得る所に非ず。尊貴は、罪の加えざる所なり。是を以て聖人天地の變、自然の妖に因りて、以て之を感動す。知達の主は、則ち先聖の情を識りて以て自ら厲[はげ]み、中下の主も、亦妖祥を信じて以て妄りならず、神道の敎えを助くる、唯此を深しとす。○知は、音智。
冬、宋人伐曹、討舊怨也。莊十四年、曹與諸侯伐宋。
【読み】
冬、宋人曹を伐つは、舊怨を討ずるなり。莊十四年、曹諸侯と宋を伐てり。
楚敗徐于婁林、徐恃救也。恃齊救。
【読み】
楚徐を婁林に敗るは、徐救いを恃めばなり。齊の救いを恃むなり。
十月、晉陰飴甥會秦伯、盟于王城。陰飴甥、卽呂甥也。食采於陰。故曰陰飴甥。王城、秦地。馮翊臨晉縣東有王城。今名武郷。
【読み】
十月、晉の陰飴甥秦伯に會して、王城に盟う。陰飴甥は、卽ち呂甥なり。陰に食采す。故に陰飴甥と曰う。王城は、秦の地。馮翊臨晉縣の東に王城有り。今武郷と名づく。
秦伯曰、晉國和乎。對曰、不和。小人恥失其君、而悼喪其親、痛其親爲秦所殺。
【読み】
秦伯曰く、晉國和するか、と。對えて曰く、和せず。小人は其の君を失うことを恥じて、其の親を喪うことを悼み、其の親秦の爲に殺さるるを痛む。
不憚征繕以立圉也。曰、必報讎。寧事戎狄。君子愛其君而知其罪、不憚征繕以待秦命。曰、必報德。有死無二。以此不和。秦伯曰、國謂君何。對曰、小人慼謂之不免、君子恕、以爲必歸。小人曰、我毒秦。秦豈歸君。毒、謂三施不報。
【読み】
征繕を憚らずして以て圉を立てんとす。曰く、必ず讎を報いん。寧ろ戎狄に事えんや、と。君子は其の君を愛して其の罪を知り、征繕を憚らずして以て秦の命を待つ。曰く、必ず德に報いん。死すること有るとも二無からん、と。此を以て和せず、と。秦伯曰く、國君を何とか謂うや、と。對えて曰く、小人は慼えて之を免れずと謂い、君子は恕[はか]りて、以爲えらく、必ず歸らん、と。小人は曰く、我れ秦に毒せり。秦豈君を歸さんや、と。毒は、三施報いざるを謂う。
君子曰、我知罪矣。秦必歸君。貳而執之、服而舍之、德莫厚焉、刑莫威焉。服者懷德、貳者畏刑、此一役也。言還惠公、使諸侯威服、復可當一事之功。○舍、如字。又音捨。還、音環。
【読み】
君子は曰く、我れ罪を知れり。秦必ず君を歸さん。貳して之を執え、服して之を舍[ゆる]すは、德焉より厚きは莫く、刑焉より威なるは莫し。服する者德に懷き、貳ある者刑を畏れば、此れ一役なり。言うこころは、惠公を還して、諸侯をして威服せしめば、復一事の功に當たる可べし。○舍は、字の如し。又音捨。還は、音環。
秦可以霸。納而不定、廢而不立、以德爲怨、秦不其然。秦伯曰、是吾心也。改館晉侯、饋七牢焉。牛・羊・豕各一爲一牢。
【読み】
秦以て霸たる可し。納れて定めず、廢てて立てず、德を以て怨みと爲すは、秦其れ然らざらん、と。秦伯曰く、是れ吾が心なり、と。改めて晉侯を館して、七牢を饋[おく]りぬ。牛・羊・豕各一を一牢とす。
蛾析謂慶鄭曰、盍行乎。蛾析、晉大夫也。○蛾、魚綺反。一五何反。
【読み】
蛾析[ぎせき]慶鄭に謂いて曰く、盍ぞ行[さ]らざるや、と。蛾析は、晉の大夫なり。○蛾は、魚綺反。一に五何反。
對曰、陷君於敗、謂呼不往、誤晉師、失秦伯。
【読み】
對えて曰く、君を敗に陷れ、呼べども往かず、晉の師を誤らして、秦伯を失わするを謂う。
敗而不死、又使失刑、非人臣也。臣而不臣、行將焉入。十一月、晉侯歸。丁丑、殺慶鄭而後入。丁丑、月二十九日。
【読み】
敗れて死せず、又刑を失わしめば、人臣に非ざるなり。臣にして不臣なるは、行るも將に焉[いずく]に入らんとする、と。十一月、晉侯歸る。丁丑[ひのと・うし]、慶鄭を殺して而して後に入る。丁丑は、月の二十九日。
是歲晉又饑。秦伯又餼之粟。曰、吾怨其君、而矜其民。且吾聞、唐叔之封也、箕子曰、其後必大。晉其庸可冀乎。唐叔、晉始封之君。武王之子。箕子、殷王帝乙之子。紂之庶兄。○餼、許氣反。
【読み】
是の歲晉又饑ゆ。秦伯又之に粟を餼[おく]る。曰く、吾れ其の君を怨みて、其の民を矜れむ。且吾れ聞く、唐叔の封ぜられしや、箕子曰く、其の後必ず大ならん、と。晉其れ庸[もっ]て冀う可けんや。唐叔は、晉の始封の君。武王の子。箕子は、殷王帝乙の子。紂の庶兄。○餼[き]は、許氣反。
姑樹德焉、以待能者。
【読み】
姑く德を樹てて、以て能者を待たん、と。
於是秦始征晉河東、置官司焉。征、賦也。四年傳、驪姬旣與中大夫成謀。此傳、晉許賂中大夫。二中大夫、所指不同。疏無明說。
【読み】
是に於て秦始めて晉の河東を征して、官司を置けり。征は、賦なり。四年の傳に、驪姬旣に中大夫と謀を成す、と。此の傳に、晉賂を中大夫に許す、と。二りの中大夫は、指す所同じからず。疏に明說無し。
僖
經元年。觀釁。許覲反。
傳。復入。扶又反。下文同。常準。之尹反。人潰。戶内反。撰具。一音仕轉反。州長。丁丈反。犖。一音力角反。爲魯。于僞反。無厭。於鹽反。汶陽。音問。萊蕪。音來。
經二年。見經。賢遍反。貫。古亂反。
傳。宮之奇。其宜反。伐鄍。亡丁反。以說。音悅。賄故。呼罪反。惡貪。烏路反。故爲。于僞反。下同。貂。音彫。豎。上主反。擅貴。時戰反。漏洩。息列反。又以制反。
經三年。下邳。皮悲反。僮。音童。廬江。力居反。
傳。爲陽。于僞反。鄭難。乃旦反。囿。音又。
經四年。召陵。上照反。傳皆同。濤塗。音桃。與謀。音預。下同。
傳。所近。附近之近。大公。音泰。注同。公奭。音釋。夾輔。古洽反。舊古協反。夸。苦瓜反。齊竟。音境。下同。不共。本亦作供。下及注同。縮。所六反。裹。音果。菁。子丁反。苞匭。音軌。本或作包軌。○今本亦包軌。守。手又反。溺。乃歷反。水濱。音賓。故復。扶又反。之好。呼報反。下及注同。之費。芳味反。郯。音談。資糧。音良。齊侯說。音悅。袞。古本反。不如。依字読。或一音而據反。攘。如羊反。薰、許云反。蕕。音由。易消。以豉反。歸胙。才故反。姬寘。之豉反。犬斃。婢世反。
經五年。惡用。烏路反。越竟。音境。自爲。于僞反。復稱。扶又反。軑。音大。言易。以豉反。
傳。而書。本或作而書雲物、非也。審別。彼列反。寘薪。之豉反。譴讓。弃戰反。焉用。於虔反。茸。如容反。又音戎。披。普皮反。不校。音敎。乃徇。似俊反。踰垣。音袁。袂。面世反。樓櫓。音魯。秋諸侯盟。本或此下更有于首止三字、非。撫女。音汝。侯復。扶又反。六年經注同。大伯。音泰。下及注同。吾享。興兩反。晉使。所吏反。不臘。力盍反。童謠。音遙。不見。賢遍反。振振。音眞。注同。鶉之。述春反。又常倫反。傅說。音悅。近日。附近之近。已上。時掌反。童齔。一音恥問反。嬉戲。許宜反。或中。丁仲反。
經六年。
傳。以見。賢遍反。各罷。扶罵反。又扶買反。絰。直結反。輿櫬。初覲反。其縛。如字。舊扶臥反。
經七年。方與。音房。泥母。一音甯。王奴兮反。
傳。何憚。徒旦反。請下。戶嫁反。朝不。如字。疵瑕。似斯反。又疾移反。罪釁。許靳反。下文同。政狹。音洽。釁隙。去逆反。覆亡。芳服反。替矣。他計反。雖復。扶又反。介於。音界。堵叔。丁古反。又音者。惡大叔。烏路反。大音泰。叔又作■(叔の俗字)。
經八年。未與。音預。下同。大廟。音泰。
傳。不祔。音附。茲父。音甫。目夷長。丁丈反。
經九年。不復。扶又反。殤。式羊反。而筓。古兮反。之冠。古喚反。相比。毗志反。故重。直用反。不與。音預。殺其。如字。又音弑。傳同。公羊音試。
傳。脩好。呼報反。下于好幷注同。侯胙。才素反。一級。音急。咫尺。之氏反。顚隊。直類反。下同。○今本墜。復西。扶又反。下不復會同。縣藐。音玄。猜。七才反。焉辟。於虔反。下文焉能皆同。今復。扶又反。重發。直用反。濕。音習。易出易入。竝以豉反。不好。呼報反。長亦。丁丈反。不僭。子念反。下注同。無好。呼報反。又如字。無惡。烏路反。宋治。直吏反。
經十年。
傳。不簒。初患反。共大子。本亦作恭。故復。扶又反。下文及注同。畀秦。必利反。下注同。不歆。許金反。西偏。匹緜反。所馮。皮冰反。七乘。繩證反。山祁。巨支反。字林、上尸反。背大。音佩。
經十一年。踰閾。一音況域反。
傳。受玉惰。徒臥反。皐。古刀反。
經十二年。杵臼。昌呂反。
傳。始見。賢遍反。下同。陪臣。步回反。之使。所吏反。督。音篤。凱。本又作愷。○今本亦愷。悌。本亦作弟。凱樂。音洛。下同。悌易。以豉反。下同。不復。扶又反。
經十三年。濮。音卜。
傳。戍卒。子忽反。荐。在薦反。饑。音飢。又音機。糴。直歷反。及絳。古巷反。汎舟。芳劒反。河汾。扶云反。
經十四年。
傳。
經十五年。牡丘。茂后反。不復。扶又反。螽。音終。本亦作■(虫偏に衆)。己卯晦。音悔。下邳。蒲悲反。
傳。諸夏。戶雅反。下注同。烝於。之承反。遇蠱。音古。千乘。繩證反。惡其。烏路反。小駟。音四。狡。古卯反。脈。音麥。可狃。女九反。厭息。一音於甲反。履。如字。徐本作屨。九具反。抗絕。苦浪反。荐。在薦反。上下。時掌反。絻服。又作免。音同。○今本免。令行。力呈反。下同。鄠縣。音戶。焉用。於虔反。以要。於遙反。縶。丁立反。復相。扶又反。佚。音逸。大史。音泰。怙。音古。爰田。于元反。孺。如喩反。好我。呼報反。惡我。烏路反。衆說。音悅。州長。丁丈反。下長男同。睽。苦圭反。又音圭。刲。刺割也。承筐。曲方反。無貺。音況。本亦作況。無應。應對之應。下無應同。嬴。音盈。輹。按車旁著畐、音福。老子所云、三十輻共一轂、是也。車旁著■(輹の右側)、音服。是車下伏菟。縛。如字。又扶臥反。寇難。乃旦反。警。音景。講虛。本又作構。各依字讀。○今本亦構。孼。魚列反。沓。徒合反。有邪。似嗟反。以風。方鳳反。○今本諷。不憚。徒旦反。饋。其位反。蛾。本或作蟻。晳。本或作析。同。星曆反。○今本亦析。盍行。戶臘反。焉入。於虔反。四年傳、漢以爲池。或作漢水。○今本漢水。