春秋左氏傳校本第十二
成公 起元年盡十年
晉 杜氏 集解
唐 陸氏 音義
尾張 秦 鼎 校本
成公 名、黑肱。宣公子。謚法、安民立政曰成。
【読み】
成公 名は、黑肱。宣公の子。謚法に、民を安んじ政を立つるを成と曰う、と。
〔經〕元年、春、王正月、公卽位。無傳。
【読み】
〔經〕元年、春、王の正月、公位に卽く。傳無し。
二月、辛酉、葬我君宣公。無傳。
【読み】
二月、辛酉[かのと・とり]、我が君宣公を葬る。傳無し。
無冰。無傳。周二月、今之十二月。而無冰、書冬溫。
【読み】
冰無し。傳無し。周の二月は、今の十二月。而るに冰無きは、冬の溫かなるを書すなり。
三月、作丘甲。周禮、九夫爲井、四井爲邑、四邑爲丘。丘、十六井。出戎馬一匹、牛三頭。四丘爲甸。甸、六十四井。出長轂一乘、戎馬四匹、牛十二頭、甲士三人、步卒七十二人。此甸所賦。今魯使丘出之。譏重斂故書。○甸、繩證反。斂、力驗反。
【読み】
三月、丘甲を作る。周禮に、九夫を井と爲し、四井を邑と爲し、四邑を丘と爲す、と。丘は、十六井。戎馬一匹、牛三頭を出だす。四丘を甸[しょう]と爲す。甸は、六十四井。長轂一乘、戎馬四匹、牛十二頭、甲士三人、步卒七十二人を出だす。此れ甸の賦する所なり。今魯丘をして之を出ださしむ。重斂を譏る故に書す。○甸は、繩證反。斂は、力驗反。
夏、臧孫許及晉侯盟于赤棘。晉地。
【読み】
夏、臧孫許晉侯と赤棘に盟う。晉の地。
秋、王師敗績于茅戎。茅戎、戎別種。不言戰、王者至尊、天下莫之得校。故以自敗爲文。不書敗地、而書茅戎、明爲茅戎所敗。書秋、從告。○茅、亡交反。
【読み】
秋、王の師茅戎に敗績す。茅戎は、戎の別種。戰を言わざるは、王者は至尊、天下之に校することを得ること莫し。故に自ら敗るるを以て文を爲す。敗るる地を書さずして、茅戎を書すは、茅戎の爲に敗らるるを明かすなり。秋に書すは、告ぐるに從うなり。○茅は、亡交反。
冬、十月。
【読み】
冬、十月。
〔傳〕元年、春、晉侯使瑕嘉平戎于王。平文十七年、邥垂之役。詹嘉處瑕。故謂之瑕嘉。○邥、音審。
【読み】
〔傳〕元年、春、晉侯瑕嘉をして戎を王に平らげしむ。文十七年、邥垂[しんすい]の役を平らぐ。詹嘉瑕に處る。故に之を瑕嘉と謂う。○邥は、音審。
單襄公如晉拜成。單襄公、王卿士。謝晉爲平戎。○單、音善。爲、于僞反。
【読み】
單襄公晉に如きて成[たい]らぎを拜す。單襄公は、王の卿士。晉の爲に戎を平らぐるを謝す。○單は、音善。爲は、于僞反。
劉康公徼戎、將遂伐之。康公、王季子也。戎平還。欲要其無備。○徼、古堯反。
【読み】
劉康公戎を徼[むか]え、將に遂に之を伐たんとす。康公は、王季子なり。戎平らぎて還る。其の備え無きを要[むか]えんと欲す。○徼[きょう]は、古堯反。
叔服曰、背盟而欺大國。此必敗。叔服、周内史。○背、音佩。下同。
【読み】
叔服曰く、盟に背きて大國を欺く。此れ必ず敗れん。叔服は、周の内史。○背は、音佩。下も同じ。
背盟不祥。欺大國不義。神人弗助。將何以勝。不聽。遂伐茅戎。三月、癸未、敗績于徐吾氏。徐吾氏、茅戎之別也。
【読み】
盟に背くは不祥なり。大國を欺くは不義なり。神人助けず。將[はた]何を以て勝たん、と。聽かず。遂に茅戎を伐つ。三月、癸未[みずのと・ひつじ]、徐吾氏に敗績す。徐吾氏は、茅戎の別なり。
爲齊難故、作丘甲。前年、魯乞於楚、欲以伐齊。楚師不出。故懼而作丘甲。○難、乃旦反。下同。
【読み】
齊の難の爲の故に、丘甲を作る。前年、魯楚に乞いて、以て齊を伐たんと欲す。楚の師出でず。故に懼れて丘甲を作る。○難は、乃旦反。下も同じ。
聞齊將出楚師、夏、盟于赤棘。與晉盟。懼齊・楚。
【読み】
齊の將に楚の師を出ださんとするを聞き、夏、赤棘に盟う。晉と盟う。齊・楚を懼るるなり。
秋、王人來告敗。解經所以秋乃書。
【読み】
秋、王人來りて敗を告ぐ。經の秋乃ち書す所以を解く。
冬、臧宣叔令脩賦繕完、治完城郭。○繕、市戰反。完、和端反。
【読み】
冬、臧宣叔賦を脩め繕完して、城郭を治完す。○繕は、市戰反。完は、和端反。
具守備。曰、齊・楚結好、我新與晉盟。晉・楚爭盟、齊師必至。雖晉人伐齊、楚必救之。是齊・楚同我也。同、共也。○守、手又反。
【読み】
守備を具えしむ。曰く、齊・楚は好を結び、我は新たに晉と盟う。晉・楚盟を爭えば、齊の師必ず至らん。晉人齊を伐つと雖も、楚必ず之を救わん。是れ齊・楚我を同[とも]にするなり。同は、共なり。○守は、手又反。
知難而有備、乃可以逞。逞、解也。爲二年、齊侯伐我傳。○解、音蟹。
【読み】
難を知りて備え有らば、乃ち以て逞[と]く可し。逞は、解くなり。二年、齊侯我を伐つ爲の傳なり。○解は、音蟹。
〔經〕二年、春、齊侯伐我北鄙。夏、四月、丙戌、衛孫良夫帥師及齊師戰于新築。衛師敗績。新築、衛地。皆陳曰戰、大崩曰敗績。四月無丙戌。丙戌、五月一日。
【読み】
〔經〕二年、春、齊侯我が北鄙を伐つ。夏、四月、丙戌[ひのえ・いぬ]、衛の孫良夫師を帥いて齊師と新築に戰う。衛の師敗績す。新築は、衛の地。皆陳するを戰と曰い、大いに崩るるを敗績と曰う。四月に丙戌無し。丙戌は、五月一日。
六月、癸酉、季孫行父・臧孫許・叔孫僑如・公孫嬰齊帥師會晉郤克・衛孫良夫・曹公子首、及齊侯戰于鞌。齊師敗績。魯乞師於晉。而不以與謀之例者、從盟主之令、上行於下、非匹敵和成之類。例在宣七年。曹大夫常不書、而書公子首者、首命於國、備於禮、成爲卿故也。鞌、齊地。○郤、去逆反。鞌、音安。
【読み】
六月、癸酉[みずのと・とり]、季孫行父・臧孫許・叔孫僑如・公孫嬰齊師を帥いて晉の郤克・衛の孫良夫・曹の公子首に會して、齊侯と鞌[あん]に戰う。齊の師敗績す。魯師を晉に乞う。而るを與謀の例を以いざるは、盟主の令に從うは、上下に行いて、匹敵和成の類に非ざればなり。例は宣七年に在り。曹の大夫常に書さずして、公子首を書すは、首國に命ぜられて、禮を備えて、卿爲ることを成す故なり。鞌は、齊の地。○郤は、去逆反。鞌は、音安。
秋、七月、齊侯使國佐如師。己酉、及國佐盟于袁婁。穀梁曰、鞌、去齊五百里。袁婁、去齊五十里。
【読み】
秋、七月、齊侯國佐をして師に如かしむ。己酉[つちのと・とり]、國佐と袁婁[えんろう]に盟う。穀梁に曰く、鞌は、齊を去ること五百里。袁婁は、齊を去ること五十里、と。
八月、壬午、宋公鮑卒。未同盟、而赴以名。○鮑、步卯范。
【読み】
八月、壬午[みずのえ・うま]、宋公鮑卒す。未だ同盟せずして、赴[つ]ぐるに名を以てす。○鮑は、步卯范。
庚寅、衛侯速卒。宣十七年、盟于斷道。據傳、庚寅、九月七日。
【読み】
庚寅[かのえ・とら]、衛侯速卒す。宣十七年、斷道に盟う。傳に據るに、庚寅は、九月七日なり。
取汶陽田。晉使齊還魯。故書取。不以好得。故不言歸。○好、呼報反。
【読み】
汶陽[ぶんよう]の田を取る。晉齊をして魯に還さしむ。故に取ると書す。好を以て得るにあらず。故に歸すと言わず。○好は、呼報反。
冬、楚師・鄭師侵衛。子重不書、不親伐。
【読み】
冬、楚の師・鄭の師衛を侵す。子重書さざるは、親伐たらざればなり。
十有一月、公會楚公子嬰齊于蜀。公與大夫會、不貶嬰齊者、時有許・蔡之君故。
【読み】
十有一月、公楚の公子嬰齊に蜀に會す。公大夫と會して、嬰齊を貶せざるは、時に許・蔡の君有る故なり。
丙申、公及楚人・秦人・宋人・陳人・衛人・鄭人・齊人・曹人・邾人・薛人・鄫人盟于蜀。齊在鄭下、非卿。傳曰、卿不書、匱盟也。然則楚卿於是始與中國準。自此以下、楚卿不書、皆貶惡也。
【読み】
丙申[ひのえ・さる]、公楚人・秦人・宋人・陳人・衛人・鄭人・齊人・曹人・邾人[ちゅひと]・薛人・鄫人[しょうひと]と蜀に盟う。齊鄭の下に在るは、卿に非ざればなり。傳に曰く、卿書さざるは、匱盟[きめい]なればなり、と。然らば則ち楚の卿是に於て始めて中國と準ずるなり。此より以下、楚の卿書さざるは、皆惡を貶するなり。
〔傳〕二年、春、齊侯伐我北鄙、圍龍。龍、魯邑。在泰山博縣西南。
【読み】
〔傳〕二年、春、齊侯我が北鄙を伐ち、龍を圍む。龍は、魯の邑。泰山博縣の西南に在り。
頃公之嬖人盧蒲就魁門焉。攻龍門也。
【読み】
頃公[けいこう]の嬖人盧蒲就魁門[せ]む。龍の門を攻むるなり。
龍人囚之。齊侯曰、勿殺。吾與而盟、無入而封。封、竟。
【読み】
龍人之を囚う。齊侯曰く、殺すこと勿かれ。吾而[なんじ]と盟いて、而の封に入ること無からん、と。封は、竟。
弗聽。殺而膊諸城上。膊、磔也。○膊、普各反。磔、陟百反。
【読み】
聽かず。殺して諸を城上に膊[はりつけ]にす。膊[はく]は、磔なり。○膊は、普各反。磔[たく]は、陟百反。
齊侯親鼓。士陵城。三日取龍、遂南侵、及巢丘。取龍侵巢丘不書、其義未聞。
【読み】
齊侯親ら鼓つ。士城を陵ぐ。三日にして龍を取り、遂に南侵して、巢丘に及ぶ。龍を取りて巢丘を侵すこと書さざるは、其の義未だ聞かざればなり。
衛侯使孫良夫・石稷・甯相・向禽將侵齊。與齊師遇。齊伐魯還、相遇於衛地。良夫、孫林父之父。石稷、石碏四世孫。甯相、甯兪子。○相、息亮反。向、舒亮反。
【読み】
衛侯孫良夫・石稷・甯相[ねいしょう]・向禽[しょうきん]をして將に齊を侵さんとせしむ。齊の師と遇う。齊魯を伐ちて還り、衛の地に相遇うなり。良夫は、孫林父の父。石稷は、石碏四世の孫。甯相は、甯兪の子。○相は、息亮反。向は、舒亮反。
石子欲還。孫子曰、不可。以師伐人、遇其師而還、將謂君何。言無以答君。
【読み】
石子還らんと欲す。孫子曰く、不可なり。師を以て人を伐ち、其の師に遇いて還らば、將に君に何とか謂わんとする。以て君に答うること無きを言う。
若知不能、則如無出。今旣遇矣。不如戰也。
【読み】
若し能わざるを知らば、則ち出づること無きに如かんや。今旣に遇えり。戰うに如かざるなり、と。
夏有。闕文。失新築戰事。
【読み】
夏有り。闕文。新築の戰事を失う。
石成子曰、師敗矣。子不少須、衆懼盡。成子、石稷也。衛師已敗。而孫良夫復欲戰。故成子欲使須救。
【読み】
石成子曰く、師敗れたり。子少[しばら]く須たずんば、衆懼らくは盡きん。成子は、石稷なり。衛の師已に敗れぬ。而るを孫良夫復戰わんと欲す。故に成子救いを須たしめんと欲す。
子喪師徒、何以復命。皆不對。又曰、子國卿也。隕子辱矣。隕、見禽獲。
【読み】
子師徒を喪わば、何を以て復命せん、と。皆對えず。又曰く、子は國卿なり。子を隕[おと]さば辱なり。隕は、禽獲せらるるなり。
子以衆退。我此乃止。我於此止、禦齊師。
【読み】
子衆を以[い]て退け。我は此に乃ち止らん、と。我れ此に於て止まり、齊の師を禦がん。
且告車來甚衆。新築人救孫桓子。故竝告令軍中。
【読み】
且車の來ること甚だ衆[おお]しと告ぐ。新築の人孫桓子を救うなり。故に竝に軍中に告令す。
齊師乃止、次于鞫居。鞫居、衛地。○鞫、居六反。
【読み】
齊の師も乃ち止まり、鞫居[きくきょ]に次[やど]る。鞫居は、衛の地。○鞫は、居六反。
新築人仲叔于奚救孫桓子。桓子是以免。于奚、守新築大夫。
【読み】
新築の人仲叔于奚孫桓子を救う。桓子是を以て免れぬ。于奚は、新築を守る大夫。
旣衛人賞之以邑。賞于奚。
【読み】
旣にして衛人之を賞するに邑を以てす。于奚を賞す。
辭。請曲縣、軒縣也。周禮、天子樂宮縣、四周。諸侯軒縣、闕南方。○縣、音玄。
【読み】
辭す。曲縣し、軒縣なり。周禮に、天子の樂は宮縣、四周。諸侯は軒縣、南方を闕く、と。○縣は、音玄。
*「四周」について、頭注に、「四周、一作四面。」とある。
繁纓以朝。許之。繁纓、馬飾。皆諸侯之服。○繁、步于反。
【読み】
繁纓[はんえい]して以て朝せんと請う。之を許す。繁纓は、馬の飾。皆諸侯の服。○繁は、步于反。
仲尼聞之曰、惜也。不如多與之邑。唯器與名、不可以假人。器、車服。名、爵號。
【読み】
仲尼之を聞きて曰く、惜しいかな。多く之に邑を與えんに如かず。唯器と名とは、以て人に假す可からず。器は、車服。名は、爵號。
君之所司也。名以出信、名位不愆、爲民所信。
【読み】
君の司る所なり。名以て信を出だし、名位愆[あやま]らざれば、民の爲に信ぜらる。
信以守器、動不失信、則車服可保。
【読み】
信以て器を守り、動きて信を失わざれば、則ち車服保つ可し。
器以藏禮、車服、所以表尊卑。
【読み】
器以て禮を藏[おさ]め、車服は、尊卑を表する所以なり。
禮以行義、尊卑有禮、各得其義。
【読み】
禮以て義を行い、尊卑禮有れば、各々其の義を得。
義以生利、得其宜、則利生。
【読み】
義以て利を生じ、其の宜を得れば、則ち利生ず。
利以平民。政之大節也。若以假人、與人政也。政亡、則國家從之。弗可止也已。
【読み】
利以て民を平らかにす。政の大節なり。若し以て人に假さば、人に政を與うるなり。政亡ぶれば、則ち國家之に從う。止む可からざるのみ、と。
孫桓子還於新築、不入。不入國。
【読み】
孫桓子新築より還り、入らず。國に入らず。
遂如晉乞師。臧宣叔亦如晉乞師。皆主郤獻子。宣十七年、郤克至齊、爲婦人所笑。遂怒。故魯・衛因之、孫桓子・臧宣叔皆不以國命、各自詣郤克。故不書。
【読み】
遂に晉に如きて師を乞う。臧宣叔も亦晉に如きて師を乞う。皆郤獻子を主とす。宣十七年、郤克齊に至り、婦人の爲に笑わる。遂に怒る。故に魯・衛之に因る、孫桓子・臧宣叔皆國命を以てせずして、各々自ら郤克に詣る。故に書さず。
晉侯許之七百乘。五萬二千五百人。
【読み】
晉侯之に七百乘を許す。五萬二千五百人。
郤子曰、此城濮之賦也。城濮、在僖二十八年。
【読み】
郤子曰く、此れ城濮の賦なり。城濮は、僖二十八年に在り。
有先君之明、與先大夫之肅、故捷。克於先大夫、無能爲役。不中爲之役使。
【読み】
先君の明と、先大夫の肅と有り、故に捷[か]てり。克が先大夫に於る、能く役爲ること無し。之が役使爲るに中らず。
請八百乘。許之。六萬人。
【読み】
八百乘を請う。之を許す。六萬人。
郤克將中軍。士燮將上軍。范文子代荀庚。
【読み】
郤克中軍に將たり。士燮[ししょう]上軍に將たり。范文子荀庚に代わる。
欒書將下軍。代趙朔。
【読み】
欒書下軍に將たり。趙朔に代わる。
韓厥爲司馬。以救魯・衛。
【読み】
韓厥[かんけつ]司馬爲り。以て魯・衛を救う。
臧宣叔逆晉師、且道之。季文子帥師會之。及衛地。韓獻子將斬人。郤獻子馳將救之。至則旣斬之矣。郤子使速以徇。告其僕曰、吾以分謗也。不欲使韓氏獨受謗。
【読み】
臧宣叔晉の師を逆[むか]え、且つ之を道[みちび]く。季文子師を帥いて之に會す。衛の地に及ぶ。韓獻子將に人を斬らんとす。郤獻子馳せて將に之を救わんとす。至れば則ち旣に之を斬れり。郤子速やかに以て徇[とな]えしむ。其の僕に告げて曰く、吾は以て謗りを分かたんとなり。韓氏をして獨り謗りを受けしむることを欲せず。
師從齊師于莘。莘、齊地。
【読み】
師齊の師に莘[しん]に從う。莘は、齊の地。
六月、壬申、師至于靡筓之下。靡筓、山名。○靡、如字。又音摩。筓、音雞。
【読み】
六月、壬申[みずのえ・さる]、師靡筓[ひけい]の下[ふもと]に至る。靡筓は、山の名。○靡は、字の如し。又音摩。筓は、音雞。
齊侯使請戰、曰、子以君師、辱於敝邑、不腆敝賦、詰朝請見。詰朝、平旦。○見、賢遍反。
【読み】
齊侯戰を請わしめて、曰く、子君の師を以て、敝邑を辱くすれば、不腆の敝賦、詰朝に請う見えん、と。詰朝は、平旦。○見は、賢遍反。
對曰、晉與魯・衛、兄弟也。來告曰、大國朝夕釋憾於敝邑之地。大國、謂齊。敝邑、魯・衛自稱。
【読み】
對えて曰く、晉と魯・衛とは、兄弟なり。來り告げて曰く、大國朝夕憾みを敝邑の地に釋く、と。大國は、齊を謂う。敝邑は、魯・衛自ら稱す。
寡君不忍、使羣臣請於大國。無令輿師淹於君地。輿、衆也。淹、久也。
【読み】
寡君忍びずして、羣臣をして大國に請わしむ。輿師をして君の地に淹[ひさ]しからしむること無かれ、と。輿は、衆なり。淹は、久しきなり。
能進不能退。君無所辱命。言自欲戰。不復須君命。
【読み】
能く進みて退くこと能わず。君命を辱くする所無し、と。言うこころは、自ら戰わんと欲す。復君命を須たず。
齊侯曰、大夫之許、寡人之願也。若其不許、亦將見也。
【読み】
齊侯曰く、大夫の許すは、寡人の願いなり。若し其れ許さざるも、亦將に見えんとするなり、と。
齊高固入晉師、桀石以投人、桀、擔也。○擔、丁甘反。
【読み】
齊の高固晉の師に入り、石を桀[にな]いて以て人に投げ、桀は、擔うなり。○擔は、丁甘反。
禽之而乘其車、旣獲其人。因釋己車、而載所獲者車。
【読み】
之を禽にして其の車に乘り、旣に其の人を獲。因りて己が車を釋[す]てて、獲る所の者の車に載るなり。
繫桑本焉、以徇齊壘、將至齊壘。以桑樹繫車而走、欲自異。
【読み】
桑本を繫けて、以て齊の壘に徇えて、將に齊の壘に至らんとす。桑樹を以て車に繫けて走るは、自ら異にせんと欲するなり。
曰、欲勇者、賈余餘勇。賈、買也。言己勇有餘、欲賣之。
【読み】
曰く、勇を欲する者は、余が餘勇を賈え、と。賈は、買うなり。己が勇餘有り、之を賣らんと欲するを言う。
癸酉、師陳于鞌。邴夏御齊侯。逢丑父爲右。晉解張御郤克。鄭丘緩爲右。
【読み】
癸酉、師鞌に陳す。邴夏[へいか]齊侯に御たり。逢丑父右爲り。晉の解張郤克に御たり。鄭丘緩右爲り。
齊侯曰、余姑翦滅此而朝食。姑、且也。翦、盡也。○陳、直覲反。邴、音丙。解、音蟹。
【読み】
齊侯曰く、余姑く此を翦滅して朝食せん、と。姑は、且くなり。翦は、盡くすなり。○陳は、直覲反。邴は、音丙。解は、音蟹。
不介馬而馳之。介、甲也。
【読み】
馬に介せずして之に馳す。介は、甲なり。
郤克傷於矢、流血及屨、未絕鼓音。中軍將自執旗鼓。故雖傷而擊鼓不息。
【読み】
郤克矢に傷つき、流血屨に及べども、未だ鼓音を絕たず。中軍の將は自ら旗鼓を執る。故に傷つくと雖も鼓を擊ちて息まず。
曰、余病矣。張侯曰、自始合、而矢貫余手及肘、余折以御、左輪朱殷、豈敢言病。吾子忍之。張候、解張也。朱、血色。血色久則殷。殷音近烟。今人謂赤黑爲殷色。言血多汙車輪、御猶不敢息。○折、之設反。殷、於閑反。又於辰反。汙、音烏。又一故反。
【読み】
曰く、余病めり、と。張侯曰く、始め合いてよりして、矢余が手と肘とを貫きしを、余折りて以て御して、左輪朱殷[しゅあん]なるも、豈敢えて病めりと言わんや。吾子之を忍べ、と。張候は、解張なり。朱は、血色。血色久しければ則ち殷[あか]し。殷の音は烟に近し。今の人赤黑を謂いて殷色と爲す。言うこころは、血多く車輪を汙すも、御して猶敢えて息まず。○折は、之設反。殷は、於閑反。又於辰反。汙は、音烏。又一故反。
緩曰、自始合、苟有險、余必下推車。子豈識之。然子病矣。以其不識己推車。○推、昌誰反。又他回反。
【読み】
緩曰く、始め合いてよりして、苟も險有れば、余必ず下りて車を推せり。子豈之を識らんや。然らば子は病めり、と。其の己が車を推すを識らざるを以てなり。○推は、昌誰反。又他回反。
張侯曰、師之耳目、在吾旗鼓。進退從之。此車一人殿之、可以集事。殿、鎭也。集、成也。○殿、多練反。
【読み】
張侯曰く、師の耳目は、吾が旗鼓に在り。進退之に從う。此の車一人之に殿たらば、以て事を集[な]す可し。殿は、鎭なり。集は、成すなり。○殿は、多練反。
若之何其以病、敗君之大事也。擐甲執兵、固卽死也。擐、貫也。卽、就也。○擐、音患。
【読み】
之を若何ぞ其れ病めるを以て、君の大事を敗らんや。甲を擐[つらぬ]き兵を執るは、固より死に卽くなり。擐[かん]は、貫くなり。卽は、就くなり。○擐は、音患。
病未及死。吾子勉之。左幷轡、右援枹而鼓。馬逸不能止。師從之。晉師從郤克車。○幷、必政反。援、音爰。枹、音浮。鼓槌也。
【読み】
病むも未だ死に及ばず。吾子之を勉めよ、と。左に轡を幷せ、右に枹[ふ]を援[と]りて鼓つ。馬逸して止むること能わず。師之に從う。晉の師郤克が車に從う。○幷は、必政反。援は、音爰。枹は、音浮。鼓槌なり。
齊師敗績。逐之、三周華不注。華不注、山名。○華、如字。又戶化反。
【読み】
齊の師敗績す。之を逐いて、三たび華不注を周れり。華不注は、山の名。○華は、字の如し。又戶化反。
韓厥夢子輿謂己、曰且辟左右。子輿、韓厥父。
【読み】
韓厥子輿己に謂いて、且く左右を辟けよと曰いしと夢みす。子輿は、韓厥の父。
故中御而從齊侯。居中代御者。自非元帥、御者皆在中。將在左。
【読み】
故に中に御して齊侯を從[お]う。中に居りて御者に代わるなり。元帥に非ざるよりは、御者皆中に在り。將は左に在り。
邴夏曰、射其御者。君子也。公曰、謂之君子而射之、非禮也。齊侯不知戎禮。○射、食亦反。下皆同。
【読み】
邴夏曰く、其の御者を射よ。君子なり、と。公曰く、之を君子と謂いて之を射るは、禮に非ざるなり、と。齊侯戎禮を知らず。○射は、食亦反。下も皆同じ。
射其左。越于車下。越、隊也。○隊、直類反。
【読み】
其の左を射る。車下に越[お]つ。越は、隊[お]つるなり。○隊は、直類反。
射其右。斃于車中。綦毋張喪車、從韓厥曰、請寓乘。綦毋張、晉大夫。寓、寄也。○毋、音無。乘、繩證反。
【読み】
其の右を射る。車中に斃る。綦毋張車を喪い、韓厥に從りて曰く、請う、寓乘せん、と。綦毋張は、晉の大夫。寓は、寄るなり。○毋は、音無。乘は、繩證反。
從左右。皆肘之、使立於後。以左右皆死、不欲使立其處。
【読み】
左右從りす。皆之を肘して、後に立たしむ。左右皆死するを以て、其の處に立たしむることを欲せず。
韓厥俛定其右。俛、俯也。右被射仆車中。故俯安隱之。○俛、音勉。
【読み】
韓厥俛[ふ]して其の右を定む。俛[べん]は、俯すなり。右射られて車中に仆る。故に俯して之を安隱す。○俛は、音勉。
逢丑父與公易位。居公處。
【読み】
逢丑父公と位を易う。公の處に居る。
將及華泉。驂絓於木而止。驂馬絓也。○華、戶化反。絓、戶卦反。一音圭。
【読み】
將に華泉に及ばんとす。驂木に絓[かか]りて止まる。驂馬絓るなり。○華は、戶化反。絓は、戶卦反。一に音圭。
丑父寢於轏中、轏、士車。○轏、士產反。亦仕諫反。臥車也。
【読み】
丑父轏中[さんちゅう]に寢ねしに、轏は、士の車。○轏は、士產反。亦仕諫反。臥車なり。
蛇出於其下、以肱擊之、傷而匿之。故不能推車而及。爲韓厥所及。丑父欲爲右。故匿其傷。
【読み】
蛇其の下より出でしを、肱を以て之を擊ち、傷つきて之を匿[かく]せり。故に車を推すこと能わずして及ばる。韓厥の爲に及ばる。丑父右爲らんと欲す。故に其の傷を匿すなり。
韓厥執縶馬前、縶、馬絆也。執之、示脩臣僕之職。○縶、張立反。絆、音半。
【読み】
韓厥縶[ちゅう]を馬前に執り、縶は、馬絆なり。之を執るは、臣僕の職を脩むるを示すなり。○縶は、張立反。絆は、音半。
再拜稽首、奉觴加璧以進、進觴璧、亦以示敬。
【読み】
再拜稽首して、觴[さかずき]を奉じ璧を加えて以て進めて、觴璧を進むるは、亦以て敬を示すなり。
曰、寡君使羣臣爲魯・衛請、曰、無令輿師陷入君地。本但爲二國救請。不欲乃過入君地。謙辭。○爲、于僞反。
【読み】
曰く、寡君羣臣をして魯・衛の爲に請わしめて、曰く、輿師をして君の地に陷入せしむること無かれ、と。本但二國の救の爲に請うのみ。乃ち君の地に過入することを欲せず、と。謙辭なり。○爲は、于僞反。
下臣不幸、屬當戎行、無所逃隱。屬、適也。○屬、音燭。行、下郎反。
【読み】
下臣不幸にして、屬[たま]々戎行に當たりて、逃隱する所無し。屬は、適々なり。○屬は、音燭。行は、下郎反。
且懼奔辟而忝兩君。臣辱戎士、若奔辟則爲辱晉君、幷爲齊侯羞。故言二君。此蓋韓厥自處臣僕、謙敬之飾言。○辟、音避。
【読み】
且懼れらくは奔辟して兩君を忝めんことを。臣戎士を辱くすれば、若し奔辟せば則ち晉君を辱むることを爲し、幷せて齊侯の羞と爲らん。故に二君と言う。此れ蓋し韓厥自ら臣僕に處る、謙敬の飾言ならん。○辟は、音避。
敢告不敏。攝官承乏。言欲以己不敏、攝承空乏、從君倶還。
【読み】
敢えて告ぐ、不敏なり。官を攝して乏しきを承けん、と。言うこころは、己が不敏を以て、空乏を攝承して、君に從いて倶に還らんと欲す。
丑父使公下如華泉取飮。鄭周父御佐車、宛茷爲右、載齊侯以免。佐車、副車。○宛、紆元反。茷、扶廢反。
【読み】
丑父公をして下りて華泉に如きて飮を取らしむ。鄭周父佐車に御となり、宛茷[えんはい]右と爲り、齊侯を載せて以て免る。佐車は、副車。○宛は、紆元反。茷は、扶廢反。
韓厥獻丑父。郤獻子將戮之。呼曰、自今無有代其君任患者。有一於此、將爲戮乎。郤子曰、人不難以死免其君。我戮之、不祥。赦之以勸事君者。乃免之。
【読み】
韓厥丑父を獻ず。郤獻子將に之を戮せんとす。呼[よ]ばいて曰く、今より其の君に代わりて患に任ずる者有ること無からん。此に一有るも、將に戮することを爲さんとするか、と。郤子曰く、人死を以て其の君を免れしむることを難[はばか]らず。我れ之を戮するは、不祥なり。之を赦して以て君に事る者を勸めん、と。乃ち之を免す。
齊侯免、求丑父、三入三出。重其代己。故三入晉軍求之。○呼、火故反。任、音壬。難、乃旦反。
【読み】
齊侯免れ、丑父を求めんとして、三たび入り三たび出づ。其の己に代わるを重んず。故に三たび晉軍に入りて之を求めんとす。○呼は、火故反。任は、音壬。難は、乃旦反。
每出齊師以帥退、入于狄卒。齊師大敗、皆有退心。故齊侯輕出其衆、以帥厲退者、遂逬入狄卒。狄卒者、狄人從晉討齊者。○輕、遣政反。逬、補諍反。
【読み】
齊の師を出づる每に以て退けるを帥い、狄の卒に入る。齊の師大敗して、皆退心有り。故に齊侯輕々しく其の衆を出でて、以て退く者を帥厲して、遂に狄の卒に逬入[ほうにゅう]す。狄の卒は、狄人の晉に從いて齊を討ずる者なり。○輕は、遣政反。逬は、補諍反。
狄卒皆抽戈、楯冒之、以入于衛師。衛師免之。狄・衛畏齊之强。故不敢害齊侯、皆共免護之。○楯、食準反。又音久。
【読み】
狄の卒皆戈を抽[ひ]き、楯にて之を冒いて、以て衛の師に入れぬ。衛の師も之を免す。狄・衛齊の强きを畏る。故に敢えて齊侯を害せず、皆共に之を免護す。○楯は、食準反。又音久。
遂自徐關入。
【読み】
遂に徐關より入る。
齊侯見保者曰、勉之。齊師敗矣。所過城邑、皆勉勵其守者。
【読み】
齊侯保者を見て曰く、之を勉めよ。齊の師敗れたり、と。過ぐる所の城邑、皆其の守者を勉勵す。
辟女子。使辟君也。齊侯單還。故婦人不辟之。○辟、音避。
【読み】
女子を辟けしむ。君を辟けしむるなり。齊侯單還す。故に婦人之を辟けず。○辟は、音避。
女子曰、君免乎。曰、免矣。曰、銳司徒免乎。曰、免矣。銳司徒、主銳兵者。○銳、悅歲反。
【読み】
女子曰く、君免れたりや、と。曰く、免れたり、と。曰く、銳司徒免れたりや、と。曰く、免れたり、と。銳司徒は、銳兵を主る者。○銳は、悅歲反。
曰、苟君與吾父免矣。可若何。言餘人不可復若何。
【読み】
曰く、苟も君と吾が父と免れたり。若何にす可けん、と。言うこころは、餘人は復若何ともす可からず。
乃奔。走辟君。
【読み】
乃ち奔る。走りて君を辟く。
齊侯以爲有禮。先問君後問父故也。
【読み】
齊侯以て禮有りとす。先ず君を問いて後に父を問う故なり。
旣而問之、辟司徒之妻也。辟司徒、主壘壁者。○辟、音壁。
【読み】
旣にして之を問えば、辟司徒の妻なり。辟司徒は、壘壁を主る者。○辟は、音壁。
予之石窌。石窌、邑名。濟北廬縣東有地、名石窌。○窌、力救反。一力到反。
【読み】
之に石窌[せきりゅう]を予う。石窌は、邑の名。濟北廬縣の東に地有り、石窌と名づく。○窌は、力救反。一に力到反。
晉師從齊師、入自丘輿、擊馬陘。丘輿・馬陘、皆齊邑。○陘、音刑。
【読み】
晉の師齊の師を從[お]い、丘輿より入り、馬陘を擊つ。丘輿・馬陘は、皆齊の邑。○陘は、音刑。
齊侯使賓媚人賂以紀甗・玉磬與地。媚人、國佐也。甗、玉甑。皆滅紀所得。○甗、魚輦反。又音彥。又音言。甑、子孕反。
【読み】
齊侯賓媚人をして賂うに紀の甗[げん]・玉磬と地とを以てせしむ。媚人は、國佐なり。甗は、玉甑[ぎょくそう]。皆紀を滅ぼして得る所。○甗は、魚輦反。又音彥。又音言。甑は、子孕反。
不可、則聽客之所爲。賓媚人致賂。晉人不可、曰、必以蕭同叔子爲質、同叔、蕭君之字。齊侯外祖父。子、女也。難斥言其母。故遠言之。○質、音致。下同。難、乃旦反。
【読み】
可[き]かずんば、則ち客のする所を聽け、と。賓媚人賂を致す。晉人可かずして、曰く、必ず蕭同叔の子を以て質と爲して、同叔は、蕭君の字。齊侯の外祖父なり。子は、女なり。其の母を斥言するを難る。故に之を遠言す。○質は、音致。下も同じ。難は、乃旦反。
而使齊之封内、盡東其畝。使壟畝東西行。○盡、津忍反。行、戶郎反。又如字。
【読み】
齊の封内をして、盡く其の畝を東にせしめよ、と。壟畝をして東西行にせしむ。○盡は、津忍反。行は、戶郎反。又字の如し。
對曰、蕭同叔子非他、寡君之母也。若以匹敵、則亦晉君之母也。吾子布大命於諸侯、而曰必質其母以爲信、其若王命何。言違王命。
【読み】
對えて曰く、蕭同叔の子とは他に非ず、寡君の母なり。若し匹敵を以てせば、則ち亦晉君の母なり。吾子大命を諸侯に布きて、必ず其の母を質として以て信とせんと曰わば、其れ王命を若何。王命に違うを言う。
且是以不孝令也。詩曰、孝子不匱、永錫爾類。詩、大雅。言孝心不乏者、又能以孝道長賜其志類。
【読み】
且つ是れ不孝を以て令するなり。詩に曰く、孝子匱[とぼ]しからざるは、永く爾の類に錫う、と。詩は、大雅。孝心乏しからざる者は、又能く孝道を以て長く其の志類に賜うを言う。
若以不孝令於諸侯、其無乃非德類也乎。不以孝德賜同類。
【読み】
若し不孝を以て諸侯に令せば、其れ乃ち德類に非ざること無からんや。孝德を以て同類を賜わず。
先王疆理天下、物土之宜而布其利。疆、界也。理、正也。物土之宜、播殖之物、各從土宜。
【読み】
先王の天下を疆理するは、物ごと土の宜をして其の利を布けり。疆は、界なり。理は、正すなり。物ごと土の宜とは、播殖の物、各々土宜に從うなり。
故詩曰、我疆我理、南東其畝。詩、小雅。或南或東、從其土宜。
【読み】
故に詩に曰く、我れ疆し我れ理して、其の畝を南東にす、と。詩は、小雅。或は南或は東、其の土宜に從うなり。
今吾子疆理諸侯、而曰盡東其畝而已、唯吾子戎車是利、晉之伐齊、循壟東行易。
【読み】
今吾子諸侯を疆理して、盡く其の畝を東にせんのみと曰わば、唯吾子は戎車をのみ是れ利して、晉の齊を伐つに、壟に循いて東行すれば易し。
無顧土宜。其無乃非先王之命也乎。反先王則不義。何以爲盟主。
【読み】
土宜を顧みること無きなり。其れ乃ち先王の命に非ざること無からんや。先王に反するは則ち不義なり。何を以て盟主爲らん。
其晉實有闕。闕、失。
【読み】
其れ晉實に闕くること有り。闕は、失。
四王之王也、禹・湯・文・武。○之王、于況反。
【読み】
四王の王たるや、禹・湯・文・武。○之王は、于況反。
樹德而濟同欲焉。樹、立也。濟、成也。
【読み】
德を樹てて同欲を濟[な]せり。樹は、立つなり。濟は、成すなり。
五伯之霸也、夏伯、昆吾。商伯、大彭・豕韋。周伯、齊桓・晉文。○或曰、桓・文・宋襄・秦穆・楚莊。
【読み】
五伯の霸たるや、夏の伯は、昆吾。商の伯は、大彭・豕韋。周の伯は、齊桓・晉文。○或は曰く、桓・文・宋襄・秦穆・楚莊、と。
勤而撫之、以役王命。役、事也。
【読み】
勤めて之を撫でて、以て王命に役せり。役は、事うるなり。
今吾子求合諸侯、以逞無疆之欲。疆、竟也。
【読み】
今吾子は諸侯を合わせて、以て無疆の欲を逞しくせんことを求む。疆は、竟なり。
詩曰、布政優優、百祿是遒。詩、頌。殷湯布政優和。故百祿來聚。遒、聚也。
【読み】
詩に曰く、政を布くこと優優たり、百祿是れ遒[あつ]まる、と。詩は、頌。殷湯政を布くこと優和なり。故に百祿來聚す。遒[しゅう]は、聚まるなり。
子實不優、而棄百祿、諸侯何害焉。言不能爲諸侯害。
【読み】
子實に優ならずして、百祿を棄てば、諸侯何の害あらん。言うこころは、諸侯の害を爲すこと能わず。
不然、不見許。
【読み】
然らずんば、許されざるなり。
寡君之命使臣、則有辭矣。曰、子以君師辱於敝邑、不腆敝賦、以犒從者、戰而曰犒、爲孫辭。○使、所吏反。從、才用反。
【読み】
寡君の使臣に命ぜし、則ち辭有り。曰く、子君の師を以て敝邑に辱くすれば、不腆なる敝賦、以て從者を犒[ねぎら]いしも、戰いて犒うと曰うは、孫辭を爲すなり。○使は、所吏反。從は、才用反。
畏君之震、師徒橈敗。震、動。橈、曲也。○橈、乃敎反。
【読み】
君の震を畏れて、師徒橈敗[どうはい]せり。震は、動く。橈は、曲るなり。○橈は、乃敎反。
吾子惠徼齊國之福、不泯其社稷、使繼舊好、唯是先君之敝器土地不敢愛。子又不許、請收合餘燼、燼、火餘木。○燼、似刃反。
【読み】
吾子惠みて齊國の福を徼めんとして、其の社稷を泯[ほろ]ぼさずして、舊好を繼がしめば、唯是れ先君の敝器土地敢えて愛[お]しまじ。子又許さずんば、請う、餘燼を收合して、燼は、火餘の木なり。○燼は、似刃反。
背城借一。欲於城下復借一戰。○背、音佩。
【読み】
城を背にして一を借らん。城下に於て復一戰を借らんと欲す。○背は、音佩。
敝邑之幸、亦云從也。況其不幸、敢不唯命是聽。言完全之時、尙不敢違晉。今若不幸則從命。
【読み】
敝邑の幸いなるも、亦云[ここ]に從えり。況んや其れ不幸なるをや、敢えて唯命是れ聽かざらんや、と。言うこころは、完全の時も、尙敢えて晉に違わざりき。今不幸の若きは則ち命に從わん。
魯・衛諫曰、齊疾我矣。諫郤克也。
【読み】
魯・衛諫めて曰く、齊我を疾[にく]めり。郤克を諫むるなり。
其死亡者、皆親暱也。子若不許、讎我必甚。唯子則又何求。子得其國寶、謂甗磬。○暱、女乙反。
【読み】
其の死亡する者は、皆親暱[しんじつ]なり。子若し許さずんば、我を讎とすること必ず甚だしからん。唯子は則ち又何をか求めん。子其の國寶を得、甗磬を謂う。○暱は、女乙反。
我亦得地、齊歸所侵。
【読み】
我も亦地を得て、齊侵す所を歸す。
而紓於難、齊服則難緩。○紓、音舒。難、乃旦反。
【読み】
難を紓[ゆる]べば、齊服すれば則ち難緩む。○紓は、音舒。難は、乃旦反。
其榮多矣。齊・晉亦唯天所授。豈必晉。
【読み】
其の榮多し。齊・晉も亦唯天の授くる所なり。豈必ずしも晉のみならんや、と。
晉人許之。對曰、羣臣帥賦輿、賦輿、猶兵車。
【読み】
晉人之を許す。對えて曰く、羣臣賦輿を帥いて、賦輿は、猶兵車のごとし。
以爲魯・衛請、若苟有以藉口而復於寡君、藉、薦也。復、白也。○爲、于僞反。藉、在夜反。
【読み】
以て魯・衛の爲に請いしに、若し苟も以て口に藉[し]きて寡君に復[もう]すこと有らば、藉は、薦[し]くなり。復は、白[もう]すなり。○爲は、于僞反。藉は、在夜反。
君之惠也。敢不唯命是聽。
【読み】
君の惠みなり。敢えて唯命を是れ聽かざらんや、と。
禽鄭自師逆公。禽鄭、魯大夫。歸逆公會晉師。
【読み】
禽鄭師より公を逆う。禽鄭は、魯の大夫。歸りて公を逆えて晉の師に會す。
秋、七月、晉師及齊國佐盟于爰婁。使齊人歸我汶陽之田。公會晉師于上鄍。上鄍、地闕。公會晉師不書、史闕。
【読み】
秋、七月、晉の師齊國の佐と爰婁[えんろう]に盟う。齊人をして我が汶陽の田を歸さしむ。公晉の師に上鄍[じょうべい]に會す。上鄍は、地闕く。公晉の師に會すること書さざるは、史の闕なり。
賜三帥先路三命之服、三帥、郤克・士燮・欒書。已嘗受王先路之賜。今改而易新。幷此車所建所服之物。
【読み】
三帥に先路三命の服を賜い、三帥は、郤克・士燮・欒書。已に嘗て王の先路の賜を受く。今改めて新に易う。幷せて此の車の建つる所服する所の物までをす。
司馬・司空・輿帥・候正・亞旅、皆受一命之服。晉司馬・司空、皆大夫。輿帥、主兵車。候正、主斥候。亞旅、亦大夫也。皆魯侯賜。
【読み】
司馬・司空・輿帥・候正・亞旅は、皆一命の服を受く。晉の司馬・司空は、皆大夫なり。輿帥は、兵車を主る。候正は、斥候を主る。亞旅も、亦大夫なり。皆魯侯の賜なり。
八月、宋文公卒。始厚葬、用蜃炭、益車馬、始用殉、燒蛤爲炭以瘞壙、多埋車馬、用人從葬。○蜃、市忍反。
【読み】
八月、宋の文公卒す。始めて厚葬し、蜃炭を用い、車馬を益し、始めて殉を用い、蛤を燒きて炭と爲して以て壙を瘞[うず]め、多く車馬を埋め、人を用いて葬に從う。○蜃は、市忍反。
重器備。重、猶多也。○重、直恭反。
【読み】
器備を重ぬ。重は、猶多きがごとし。○重は、直恭反。
椁有四阿、棺有翰檜。四阿、四注椁也。翰、旁飾。檜、上飾。皆王禮。○翰、戶旦反。一音韓。檜、古外反。又音會。
【読み】
椁に四阿有り、棺に翰檜[かんかい]有り。四阿は、四注椁なり。翰は、旁飾。檜は、上飾。皆王の禮なり。○翰は、戶旦反。一に音韓。檜は、古外反。又音會。
君子謂、華元・樂舉於是乎不臣。臣、治煩去惑者也。是以伏死而爭。今二子者、君生則縱其惑、謂文十八年、殺母弟須。○去、起呂反。
【読み】
君子謂えらく、華元・樂舉是に於て不臣なり。臣は、煩を治め惑を去る者なり。是を以て死に伏して爭う。今二子の者は、君生くるときは則ち其の惑いを縱にして、文十八年、母弟須を殺すを謂う。○去は、起呂反。
死又益其侈。是棄君於惡也。何臣之爲。若言何用爲臣。
【読み】
死するときは又其の侈りを益す。是れ君を惡に棄つるなり。何ぞ臣と之れせんや、と。何を用て臣爲らんと言うが若し。
九月、衛穆公卒。晉三子自役弔焉、哭於大門之外。師還過衛。故因弔之。未復命。故不敢成禮。
【読み】
九月、衛の穆公卒す。晉の三子役より弔して、大門の外に哭す。師還りて衛を過ぐ。故に因りて之を弔う。未だ復命せず。故に敢えて禮を成さず。
衛人逆之、逆於門外設喪位。
【読み】
衛人之を逆え、門外に逆えて喪位を設く。
婦人哭於門内。喪位、婦人哭於堂。賓在門外。故移在門内。
【読み】
婦人門内に哭す。喪位は、婦人は堂に哭す。賓門外に在り。故に移して門内に在るなり。
送亦如之。遂常以葬。至葬行此禮。
【読み】
送るも亦之の如し。遂に常として以いて葬れり。葬に至るまで此の禮を行う。
楚之討陳夏氏也、在宣十一年。
【読み】
楚の陳の夏氏を討ぜしや、宣十一年に在り。
莊王欲納夏姬。申公巫臣曰、不可。君召諸侯、以討罪也。今納夏姬、貪其色也。貪色爲淫、淫爲大罰。周書曰、明德愼罰。周書、康誥。
【読み】
莊王夏姬を納れんと欲す。申公巫臣曰く、不可なり。君諸侯を召すは、以て罪を討ずるなり。今夏姬を納れば、其の色を貪るなり。色を貪るを淫と爲し、淫を大罰と爲す。周書に曰く、德を明らかにし罰を愼む、と。周書は、康誥。
文王所以造周也。明德、務崇之之謂也。愼罰、務去之之謂也。若興諸侯以取大罰、非愼之也。君其圖之。王乃止。
【読み】
文王の周を造[な]せし所以なり。德を明らかにすとは、務めて之を崇くするの謂なり。罰を愼むとは、務めて之を去るの謂なり。若し諸侯を興して以て大罰を取らば、之を愼むに非ざるなり。君其れ之を圖れ、と。王乃ち止む。
子反欲取之。巫臣曰、是不祥人也。是夭子蠻、子蠻、鄭霊公。夏姬之兄。殺死無後。○殺、申志反。下殺靈候同。
【読み】
子反之を取らんと欲す。巫臣曰く、是れ不祥の人なり。是れ子蠻を夭せしめ、子蠻は、鄭の霊公。夏姬の兄。殺死せられて後無し。○殺は、申志反。下の殺靈候も同じ。
殺御叔、御叔、夏姬之夫。亦早死。
【読み】
御叔を殺し、御叔は、夏姬の夫。亦早く死す。
弑靈侯、陳靈公也。
【読み】
靈侯を弑し、陳の靈公なり。
戮夏南、夏姬子、徵舒。
【読み】
夏南を戮し、夏姬の子、徵舒。
出孔・儀、孔寧、儀行父。
【読み】
孔・儀を出だし、孔寧・儀行父。
喪陳國。楚滅陳。○喪、息浪反。
【読み】
陳國を喪ぼせり。楚陳を滅ぼす。○喪は、息浪反。
何不祥如是。人生實難。其有不獲死乎。言死易得。無爲取夏姬以速之。
【読み】
何の不祥か是に如かん。人の生は實に難し。其れ死を獲ざること有らんや。言うこころは、死は得易し。夏姬を取りて以て之を速[まね]くことを爲すこと無かれ。
天下多美婦人。何必是。子反乃止。王以予連尹襄老。襄老死於邲、不獲其尸。邲戰、在宣十二年。
【読み】
天下に美婦人多し。何ぞ必ずしも是れのみならん、と。子反乃ち止む。王以て連尹襄老に予う。襄老邲[ひつ]に死して、其の尸を獲ず。邲の戰は、宣十二年に在り。
其子黑要烝焉。黑要、襄老子。○要、一遙反。
【読み】
其の子黑要烝す。黑要は、襄老の子。○要は、一遙反。
巫臣使道焉、曰、歸。吾聘女。道夏姬使歸鄭。○女、音汝。
【読み】
巫臣道[みちび]かしめて、曰く、歸れ。吾れ女を聘せん、と。夏姬を道きて鄭に歸らしむ。○女は、音汝。
又使自鄭召之、曰、尸可得也。襄老尸。
【読み】
又鄭より之を召[よ]ばしめて、曰く、尸得可し。襄老の尸なり。
必來逆之。姬以告王。王問諸屈巫。屈巫、巫臣。○屈、居勿反。
【読み】
必ず來りて之を逆えよ、と。姬以て王に告ぐ。王諸を屈巫に問う。屈巫は、巫臣。○屈は、居勿反。
對曰、其信。知罃之父、成公之嬖也、而中行伯之季弟也。知罃父、荀首也。中行伯、荀林父也。邲之戰、楚人囚知罃。○知、音智。罃、於耕反。
【読み】
對えて曰く、其れ信ならん。知罃[ちおう]の父は、成公の嬖にして、中行伯の季弟なり。知罃の父は、荀首なり。中行伯は、荀林父なり。邲の戰に、楚人知罃を囚う。○知は、音智。罃は、於耕反。
新佐中軍、而善鄭皇戌。甚愛此子、愛知罃也。
【読み】
新たに中軍に佐として、鄭の皇戌に善し。甚だ此の子を愛すれば、知罃を愛するなり。
其必因鄭而歸王子與襄老之尸、以求之。王子、楚公子穀臣也。邲之戰荀首囚之。
【読み】
其れ必ず鄭に因りて王子と襄老の尸とを歸して、以て之を求めん。王子は、楚の公子穀臣なり。邲の戰に荀首之を囚う。
鄭人懼於邲之役、而欲求媚於晉、其必許之。
【読み】
鄭人邲の役に懼れて、媚を晉に求めんと欲すれば、其れ必ず之を許さん、と。
王遣夏姬歸。將行。謂送者曰、不得尸、吾不反矣。巫臣聘諸鄭。鄭伯許之。聘夏姬。
【読み】
王夏姬をして歸らしむ。將に行かんとす。送者に謂いて曰く、尸を得ずんば、吾れ反らじ、と。巫臣諸を鄭に聘す。鄭伯之を許す。夏姬を聘す。
及共王卽位、將爲陽橋之役。楚伐魯至陽橋。在此年冬。○共、音恭。
【読み】
共王の位に卽くに及びて、將に陽橋の役を爲さんとす。楚魯を伐ちて陽橋に至る。此の年の冬に在り。○共は、音恭。
使屈巫聘於齊、且告師期。巫臣盡室以行。室家盡去。
【読み】
屈巫をして齊に聘せしめ、且師の期を告ぐ。巫臣室を盡くして以て行[さ]る。室家盡く去る。
申叔跪從其父將適郢、遇之、叔跪、申叔時之子。○從、才用反。郢、以井反。
【読み】
申叔跪[しんしゅくき]其の父に從いて將に郢[えい]に適かんとし、之に遇いて、叔跪は、申叔時の子。○從は、才用反。郢は、以井反。
曰、異哉。夫子有三軍之懼、而又有桑中之喜。宜將竊妻以逃者也。桑中、衛風。淫奔之詩。
【読み】
曰く、異なるかな。夫子三軍の懼れ有りて、又桑中の喜び有り。宜なり將に妻を竊みて以て逃げんとする者なること、と。桑中は、衛風。淫奔の詩。
及鄭、使介反幣、而以夏姬行。介、副也。幣、聘物。
【読み】
鄭に及び、介をして幣を反さしめて、夏姬を以[い]て行る。介は、副なり。幣は、聘物。
將奔齊。齊師新敗。曰、吾不處不勝之國。遂奔晉、而因郤至、至、郤克族子。
【読み】
將に齊に奔らんとす。齊の師新たに敗れたり。曰く、吾れ不勝の國に處らず、と。遂に晉に奔りて、郤至に因り、至は、郤克の族子。
以臣於晉。晉人使爲邢大夫。邢、晉邑。
【読み】
以て晉に臣たり。晉人邢の大夫爲らしむ。邢は、晉の邑。
子反請以重幣錮之。禁錮勿令仕。○錮、音固。
【読み】
子反重幣を以て之を錮せんと請う。禁錮して仕えしむること勿からんとす。○錮は、音固。
王曰、止。其自爲謀也則過矣。其爲吾先君謀也則忠。忠、社稷之固也。所蓋多矣。蓋、覆也。○自爲、于僞反。又如字。爲吾、于僞反。
【読み】
王曰く、止めよ。其の自ら爲に謀るや則ち過てり。其の吾が先君の爲に謀るや則ち忠なり。忠は、社稷の固めなり。蓋う所多し。蓋は、覆うなり。○自爲は、于僞反。又字の如し。爲吾は、于僞反。
且彼若能利國家、雖重幣、晉將可乎。言不許。
【読み】
且つ彼若し能く國家に利あらば、重幣と雖も、晉將[はた]可[き]かんや。許さざるを言う。
若無益於晉、晉將棄之。何勞錮焉。爲七年、楚滅巫臣族、晉南通吳張本。
【読み】
若し晉に益無くば、晉將に之を棄てんとす。何ぞ錮することを勞せん、と。七年、楚巫臣の族を滅ぼし、晉南吳に通ずる爲の張本なり。
晉師歸。范文子後入。武子曰、無爲吾望爾也乎。武子、士會。文子之父。
【読み】
晉の師歸る。范文子後れて入る。武子曰く、吾れ爾を望むとすることを無からんや、と。武子は、士會。文子の父。
對曰、師有功。國人喜以逆之。先入、必屬耳目焉。是代帥受名也。故不敢。武子曰、吾知免矣。知其不益己禍。○屬、章欲反。
【読み】
對えて曰く、師功有り。國人喜びて以て之を逆う。先ず入らば、必ず耳目を屬けん。是れ帥に代わりて名を受くるなり。故に敢えてせず、と。武子曰く、吾免ることを知れり、と。其の己が禍を益さざるを知る。○屬は、章欲反。
郤伯見。公曰、子之力也夫。對曰、君之訓也。二三子之力也。臣何力之有焉。郤伯、郤克。○見、賢遍反。
【読み】
郤伯見ゆ。公曰く、子の力めなるかな、と。對えて曰く、君の訓えなり。二三子の力めなり。臣何の力めか之れ有らん、と。郤伯は、郤克。○見は、賢遍反。
范叔見。勞之如郤伯。對曰、庚所命也。克之制也。燮何力之有焉。荀庚、將上軍。時不出。范文子、上軍佐。代行。故稱帥以讓。○勞、力報反。
【読み】
范叔見ゆ。之を勞すること郤伯の如し。對えて曰く、庚が命ずる所なり。克の制なり。燮何の力めか之れ有らん、と。荀庚は、上軍に將たり。時に出でず。范文子は、上軍の佐。代わり行く。故に帥を稱して以て讓る。○勞は、力報反。
欒伯見。公亦如之。對曰、燮之詔也。士用命也。書何力之有焉。詔、告也。欒書、下軍帥。故推功上軍。傳言晉將帥克讓。所以能勝齊。
【読み】
欒伯見ゆ。公亦之の如し。對えて曰く、燮の詔げなり。士命を用ゆるなり。書何の力めか之れ有らん、と。詔は、告げなり。欒書は、下軍の帥。故に功を上軍に推す。傳晉の將帥克く讓る。能く齊に勝つ所以を言う。
宣公使求好于楚、莊王卒、宣公薨、不克作好。在宣十八年。
【読み】
宣公好を楚に求めしめんとせしに、莊王卒し、宣公薨じて、好を作すこと克わざりき。宣十八年に在り。
公卽位、受盟于晉、元年、盟赤棘。
【読み】
公位に卽きて、盟を晉に受け、元年、赤棘に盟う。
會晉伐齊、衛人不行使于楚、不聘楚。
【読み】
晉に會して齊を伐ち、衛人も使いを楚に行[や]らずして、楚に聘せず。
而亦受盟于晉、從於伐齊。故楚令尹子重爲陽橋之役以救齊。
【読み】
亦盟を晉に受け、齊を伐つに從えり。故に楚の令尹子重陽橋の役を爲して以て齊を救う。
將起師、子重曰、君弱、傳曰、寡人生十年而喪先君。共王卽位、至是三年。蓋年十二三矣。
【読み】
將に師を起こさんとするとき、子重曰く、君弱[わか]く、傳に曰く、寡人生まれて十年にして先君を喪う。共王位に卽きてより、是に至りて三年なり。蓋し年十二三ならん。
羣臣不如先大夫。師衆而後可。詩曰、濟濟多士、文王以寧。詩、大雅。言文王以衆士安。
【読み】
羣臣先大夫に如かず。師衆くして後に可なり。詩に曰く、濟濟たる多士、文王以て寧し、と。詩は、大雅。文王衆士を以て安きを言う。
夫文王猶用衆。況吾儕乎。儕、等。
【読み】
夫れ文王も猶衆きを用いたり。況んや吾が儕[ともがら]をや。儕は、等なり。
且先君莊王屬之曰、無德以及遠方、莫如惠恤其民而善用之。乃大戶、閱民戶口。
【読み】
且つ先君莊王之を屬して曰く、德の以て遠方に及ぶこと無くば、其の民を惠恤して善く之を用ゆるに如くは莫し、と。乃ち大いに戶し、民の戶口を閱す。
已責、棄逋責。○逋、補吳反。
【読み】
責を已め、逋責を棄つ。○逋は、補吳反。
逮鰥、施及老鰥。○施、始豉反。
【読み】
鰥[かん]に逮[およ]ぼし、老鰥に施及す。○施は、始豉反。
救乏、赦罪、悉師。王卒盡行。彭名御戎。蔡景公爲左。許靈公爲右。王卒盡行。故王戎車亦行。雖無楚王、令二君當左右之位。
【読み】
乏を救い、罪を赦し、師を悉くす。王の卒盡く行く。彭名戎に御たり。蔡の景公左爲り。許の靈公右爲り。王の卒盡く行く。故に王の戎車も亦行く。楚王無しと雖も、二君をして左右の位に當たらしむ。
二君弱。皆強冠之。
【読み】
二君弱し。皆強いて之を冠せしむ。
冬、楚師侵衛、遂侵我、師于蜀。公賂之而退。故不書侵。○强、其丈反。冠、古亂反。
【読み】
冬、楚の師衛を侵し、遂に我を侵し、蜀に師す。公之に賂いて退く。故に侵を書さず。○强は、其丈反。冠は、古亂反。
使臧孫往。臧孫、宣叔也。
【読み】
臧孫をして往かしむ。臧孫は、宣叔なり。
辭曰、楚遠而久。固將退矣。無功而受名、臣不敢。不敢虛受退楚名。
【読み】
辭して曰く、楚遠くして久し。固より將に退かんとす。功無くして名を受くるは、臣敢えてせず、と。敢えて虛しく楚を退くるの名を受けず。
楚侵及陽橋。陽橋、魯地。
【読み】
楚侵して陽橋に及ぶ。陽橋は、魯の地。
孟孫請往賂之。楚侵遂深。故孟孫請以賂往。孟孫、獻子也。
【読み】
孟孫往きて之に賂わんと請う。楚の侵すこと遂に深し。故に孟孫賂を以て往かんと請う。孟孫は、獻子なり。
以執斲・執鍼・織紝、執斲、匠人。執鍼、女工。織紝、織繒布者。○斲、竹角反。鍼、之林反。紝、女金反。亦而鴆反。
【読み】
執斲[しったく]・執鍼[しっしん]・織紝[しょくじん]、執斲は、匠人。執鍼は、女工。織紝は、繒布を織る者。○斲は、竹角反。鍼は、之林反。紝は、女金反。亦而鴆反。
皆百人、公衡爲質、公衡、成公子。○質、音致。
【読み】
皆百人を以てし、公衡質と爲り、公衡は、成公の子。○質は、音致。
以請盟。楚人許平。十一月、公及楚公子嬰齊・蔡侯・許男・秦右大夫說・宋華元・陳公孫寧・衛孫良夫・鄭公子去疾、及齊國之大夫盟于蜀。齊大夫不書其名、非卿也。○說、音悅。去、起呂反。
【読み】
以て盟を請う。楚人平らぎを許す。十一月、公楚の公子嬰齊・蔡侯・許男・秦の右大夫說・宋の華元・陳の公孫寧・衛の孫良夫・鄭の公子去疾と、齊國の大夫と蜀に盟う。齊の大夫其の名を書さざるは、卿に非ざればなり。○說は、音悅。去は、起呂反。
卿不書、匱盟也。於是乎畏晉而竊與楚盟。故曰匱盟。匱、乏也。
【読み】
卿書さざるは、匱盟なればなり。是に於て晉を畏れて竊かに楚と盟う。故に匱盟と曰う。匱は、乏しきなり。
蔡侯・許男不書、乘楚車也。謂之失位。乘楚王車爲左右、則失位也。卿不書、則稱人、諸侯不書、皆不見經。君臣之別。
【読み】
蔡侯・許男書さざるは、楚の車に乘ればなり。之を位を失うと謂う。楚王の車に乘りて左右と爲るは、則ち位を失うなり。卿の書さざるは、則ち人と稱し、諸侯の書さざるは、皆經に見さず。君臣の別なり。
君子曰、位其不可不愼也乎。蔡・許之君、一失其位、不得列於諸侯。況其下乎。詩曰、不解于位、民之攸墍、詩、大雅。言在上者、勤正其位、則國安而民息也。攸、所也。墍、息也。○解、佳賣反。墍、許器反。
【読み】
君子曰く、位は其れ愼まずんばある可からざるなり。蔡・許の君、一たび其の位を失いて、諸侯に列ぬることを得ず。況んや其の下をや。詩に曰く、位に解[おこた]らざるは、民の墍[いこ]う攸なりとは、詩は、大雅。言うこころは、上に在る者、勤めて其の位を正しくすれば、則ち國安んじて民息うなり。攸は、所なり。墍[き]は、息うなり。○解は、佳賣反。墍は、許器反。
其是之謂矣。
【読み】
其れ是を之れ謂うなり、と。
楚師及宋。公衡逃歸。臧宣叔曰、衡父不忍數年之不宴、宴、樂也。○數、所主反。
【読み】
楚の師宋に及ぶ。公衡逃げ歸る。臧宣叔曰く、衡父數年の宴[たの]しまざるを忍びずして、宴は、樂しむなり。○數は、所主反。
以棄魯國。國將若之何。誰居、後之人必有任是夫。國棄矣。居、辭也。言後人必有當此患。○居、音基。任、音壬。夫、音扶。
【読み】
以て魯國を棄つ。國將に之を若何にせんとす。誰ぞや、後の人必ず是に任ずること有らん。國棄れられたり、と。居は、辭なり。言うこころは、後の人必ず此の患えに當たるもの有らん。○居は、音基。任は、音壬。夫は、音扶。
是行也、晉辟楚、畏其衆也。君子曰、衆之不可以已也、大夫爲政、猶以衆克。況明君而善用其衆乎。大誓所謂商兆民離、周十人同者、衆也。大誓、周書。萬億曰兆。民離則弱、合則成衆。言殷以散亡、周以衆興。
【読み】
是の行や、晉楚を辟けしは、其の衆を畏れてなり。君子曰く、衆の以て已む可からざるや、大夫政を爲すも、猶衆を以て克てり。況んや明君にして善く其の衆を用ゆるをや。大誓に所謂商の兆民は離れ、周の十人は同じとは、衆なればなり、と。大誓は、周書。萬億を兆と曰う。民離るれば則ち弱く、合えば則ち衆を成す。殷は散を以て亡び、周は衆を以て興るを言う。
晉侯使鞏朔獻齊捷于周。王弗見。使單襄公辭焉、曰、蠻夷・戎狄、不式王命、式、用也。
【読み】
晉侯鞏朔をして齊の捷を周に獻ぜしむ。王見ず。單襄公をして辭せしめて、曰く、蠻夷・戎狄、王命を式[もち]いず、式は、用ゆるなり。
淫湎毀常、王命伐之、則有獻捷。王親受而勞之、所以懲不敬、勸有功也。兄弟・甥舅、侵敗王略、兄弟、同姓國。甥舅、異姓國。略、經略法度。○湎、面善反。勞、力報反。敗、必邁反。
【読み】
淫湎して常を毀るを、王命じて之を伐たすれば、則ち捷を獻ずること有り。王親ら受けて之を勞うは、不敬を懲らして、有功を勸むる所以なり。兄弟・甥舅、王略を侵し敗るとき、兄弟は、同姓の國。甥舅は、異姓の國。略は、經略法度。○湎は、面善反。勞は、力報反。敗は、必邁反。
王命伐之、告事而已。不獻其功、所以敬親暱、告伐事、而不獻囚俘。
【読み】
王命じて之を伐たすれば、事を告ぐるのみ。其の功を獻ぜざるは、親暱を敬して、伐事を告げて、囚俘を獻ぜず。
禁淫慝也。淫慝、謂虣掠百姓、取囚俘也。○慝、他得反。虣、薄報反。掠、音亮。
【読み】
淫慝を禁ずる所以なり。淫慝は、百姓を虣掠[ほうりょう]し、囚俘を取るを謂うなり。○慝は、他得反。虣は、薄報反。掠は、音亮。
今叔父克遂有功于齊。克、能也。
【読み】
今叔父克く遂に齊に功有り。克は、能くなり。
而不使命卿鎭撫王室、所使來撫余一人、而鞏伯實來。未有職司於王室、鞏朔、上軍大夫。非命卿。名位不達於王室。
【読み】
而るを命卿をして王室を鎭撫せしめずして、來りて余一人を撫せしむる所にして、鞏伯實に來れり。未だ王室に職司有らず、鞏朔は、上軍の大夫。命卿に非ず。名位王室に達せず。
又奸先王之禮。謂獻齊捷。
【読み】
又先王の禮を奸せり。齊の捷を獻ずるを謂う。
余雖欲於鞏伯、欲受其獻。
【読み】
余鞏伯に欲すと雖も、其の獻を受けんと欲す。
其敢廢舊典以忝叔父。夫齊、甥舅之國也、而大師之後也。齊世與周昏。故曰甥舅。
【読み】
其れ敢えて舊典を廢して以て叔父を忝めんや。夫れ齊は、甥舅の國にして、大師の後なり。齊世々周と昏す。故に甥舅と曰う。
寧不亦淫從其欲、以怒叔父。抑豈不可諫誨。
【読み】
寧ろ亦其の欲を淫從にして、以て叔父を怒らすならざらんや。抑々豈諫誨す可からざらんや、と。
士莊伯不能對。莊伯、鞏朔。○從、子用反。
【読み】
士莊伯對うること能わず。莊伯は、鞏朔。○從は、子用反。
王使委於三吏、委、屬也。三吏、三公也。三公者、天子之吏也。
【読み】
王三吏に委ねしめて、委は、屬すなり。三吏は、三公なり。三公は、天子の吏なり。
禮之如侯伯克敵、使大夫告慶之禮、降於卿禮一等。王以鞏伯宴、而私賄之。使相告之曰、非禮也。勿籍。相、相禮者。籍、書也。王畏晉。故私宴賄以慰鞏朔。○相、息亮反。
【読み】
之を禮すること侯伯の敵に克ちて、大夫をして慶を告げしむるの禮の如くにして、卿の禮より降すこと一等。王鞏伯と宴して、私に之を賄う。相をして之に告げしめて曰く、禮に非ざるなり。籍すること勿かれ、と。相は、禮を相る者。籍は、書なり。王晉を畏る。故に私に宴賄して以て鞏朔を慰む。○相は、息亮反。
〔經〕三年、春、王正月、公會晉侯・宋公・衛侯・曹伯伐鄭。宋・衛未葬。而稱爵以接鄰國、非禮也。
【読み】
〔經〕三年、春、王の正月、公晉侯・宋公・衛侯・曹伯に會して鄭を伐つ。宋・衛未だ葬らず。而るを爵を稱して以て鄰國に接わるは、禮に非ざるなり。
辛亥、葬衛穆公。無傳。
【読み】
辛亥[かのと・い]、衛の穆公を葬る。傳無し。
二月、公至自伐鄭。無傳。
【読み】
二月、公鄭を伐ちてより至る。傳無し。
甲子、新宮災。三日哭。無傳。三年喪畢、宣公神主新入廟。故謂之新宮。書三日哭、善得禮。宗廟、親之神靈所憑居、而遇災。故哀而哭之。
【読み】
甲子[きのえ・ね]、新宮災あり。三日哭す。傳無し。三年の喪畢わりて、宣公の神主新たに廟に入る。故に之を新宮と謂う。三日哭すを書すは、禮を得るを善してなり。宗廟は、親の神靈の憑居する所にして、災に遇う。故に哀しみて之を哭す。
乙亥、葬宋文公。無傳。七月而葬、緩。
【読み】
乙亥[きのと・い]、宋の文公を葬る。傳無し。七月にして葬るは、緩[おそ]きなり。
夏、公如晉。鄭公子去疾帥師伐許。公至自晉。無傳。
【読み】
夏、公晉に如く。鄭の公子去疾師を帥いて許を伐つ。公晉より至る。傳無し。
秋、叔孫僑如帥師圍棘。棘、汶陽田之邑。在濟北蛇丘縣。○蛇、以支反。一如字。
【読み】
秋、叔孫僑如師を帥いて棘を圍む。棘は、汶陽の田の邑。濟北蛇丘縣に在り。○蛇は、以支反。一字の如し。
大雩。無傳。以過時書。
【読み】
大いに雩[う]す。傳無し。以て時を過ぐるを書す。
晉郤克・衛孫良夫伐廧咎如。赤狄別種。○廧、在良反。咎、古刀反。種、章勇反。
【読み】
晉の郤克・衛の孫良夫廧咎如[しょうこうじょ]を伐つ。赤狄の別種。○廧は、在良反。咎は、古刀反。種は、章勇反。
冬、十有一月、晉侯使荀庚來聘。衛侯使孫良夫來聘。丙午、及荀庚盟。丁未、及孫良夫盟。先晉後衛、尊霸主。
【読み】
冬、十有一月、晉侯荀庚をして來聘せしむ。衛侯孫良夫をして來聘せしむ。丙午[ひのえ・うま]、荀庚と盟う。丁未[ひのと・ひつじ]、孫良夫と盟う。晉を先にして衛を後にするは、霸主を尊ぶなり。
鄭伐許。無傳。不書將帥、告辭略。
【読み】
鄭許を伐つ。傳無し。將帥を書さざるは、告辭略すればなり。
〔傳〕三年、春、諸侯伐鄭、次于伯牛、討邲之役也。伯牛、鄭地。邲役、在宣十二年。
【読み】
〔傳〕三年、春、諸侯鄭を伐ち、伯牛に次[やど]るは、邲の役を討ずるなり。伯牛は、鄭の地。邲の役は、宣十二年に在り。
遂東侵鄭。晉潛軍深入。
【読み】
遂に東して鄭を侵す。晉軍を潛めて深く入る。
鄭公子偃帥師禦之。偃、穆公子。
【読み】
鄭の公子偃師を帥いて之を禦ぐ。偃は、穆公の子。
使東鄙覆諸鄤、覆、伏兵也。○覆、扶又反。鄤、亡袁反。又武旦反。
【読み】
東鄙をして諸を鄤[ばん]に覆せしめ、覆は、伏兵なり。○覆は、扶又反。鄤は、亡袁反。又武旦反。
敗諸丘輿。鄤・丘輿、皆鄭地。晉偏軍爲鄭所敗。故不書。
【読み】
諸を丘輿に敗る。鄤・丘輿は、皆の鄭の地。晉の偏軍鄭の爲に敗らる。故に書さず。
皇戌如楚獻捷。
【読み】
皇戌楚に如きて捷を獻ず。
夏、公如晉、拜汶陽之田。前年、晉使齊歸魯汶陽田故。
【読み】
夏、公晉に如くは、汶陽の田を拜するなり。前年、晉齊をして魯に汶陽の田を歸さしむる故なり。
許恃楚而不事鄭。鄭子良伐許。
【読み】
許楚を恃みて鄭に事えず。鄭の子良許を伐つ。
晉人歸楚公子穀臣與連尹襄老之尸于楚、以求知罃。邲之戰楚獲知罃。
【読み】
晉人楚の公子穀臣と連尹襄老の尸とを楚に歸して、以て知罃[ちおう]求む。邲の戰に楚知罃を獲たり。
於是荀首佐中軍矣。荀首、知罃父。
【読み】
是に於て荀首中軍に佐たり。荀首は、知罃の父。
故楚人許之。
【読み】
故に楚人之を許す。
王送知罃曰、子其怨我乎。對曰、二國治戎、臣不才、不勝其任、以爲俘馘、執事不以釁鼓、以血塗鼓爲釁鼓。○勝、音升。
【読み】
王知罃を送りて曰く、子其れ我を怨むるか、と。對えて曰く、二國戎を治め、臣不才、其の任に勝えずして、以て俘馘[ふかく]と爲りしを、執事以て鼓に釁[ちぬ]らずして、血を以て鼓に塗るを釁鼓[きんこ]と爲す。○勝は、音升。
使歸卽戮、君之惠也。臣實不才。又誰敢怨。王曰、然則德我乎。對曰、二國圖其社稷、而求紓其民、紓、緩也。
【読み】
歸りて戮に卽かしむるは、君の惠みなり。臣實に不才なり。又誰をか敢えて怨みん、と。王曰く、然らば則ち我を德とせんか、と。對えて曰く、二國其の社稷を圖りて、其の民を紓[ゆる]べんことを求め、紓は、緩むなり。
各懲其忿以相宥也、宥、赦也。
【読み】
各々其の忿りを懲らして以て相宥し、宥は、赦すなり。
兩釋纍囚以成其好。纍、繫也。
【読み】
兩つながら纍囚を釋きて以て其の好を成す。纍は、繫ぐなり。
二國有好、臣不與及。其誰敢德。言二國本不爲己。
【読み】
二國好有り、臣與り及ばず。其れ誰をか敢えて德とせん、と。二國本己が爲にせざるを言う。
王曰、子歸、何以報我。對曰、臣不任受怨、君亦不任受德、無怨無德。不知所報。王曰、雖然、必告不穀。對曰、以君之靈、纍臣得歸骨於晉、寡君之以爲戮、死且不朽。戮其不勝任。○任、音壬。下同。
【読み】
王曰く、子歸らば、何を以て我に報いん、と。對えて曰く、臣怨みを受くるに任ぜず、君も亦德を受くるに任ぜず、怨み無く德無し。報いん所を知らず、と。王曰く、然りと雖も、必ず不穀に告げよ、と。對えて曰く、君の靈を以て、纍臣骨を晉に歸すことを得、寡君の以て戮することを爲さば、死するも且に朽ちざらんとす、と。其の任に勝えざるを戮す。○任は、音壬。下も同じ。
若從君之惠而免之、以賜君之外臣首、稱於異國君曰外臣。
【読み】
若し君の惠みに從いて之を免して、以て君の外臣首に賜い、異國の君に稱して外臣と曰う。
首其請於寡君、而以戮於宗、亦死且不朽。若不獲命、君不許戮。
【読み】
首其れ寡君に請いて、以て宗に戮せしも、亦死すとも且に朽ちざらんとす。若し命を獲ずして、君戮を許さず。
而使嗣宗職、嗣其祖宗之位職。
【読み】
宗職を嗣がしめ、其の祖宗の位職を嗣ぐ。
次及於事、而帥偏師以脩封疆、雖遇執事、遇楚將帥。
【読み】
次で事に及びて、偏師を帥いて以て封疆を脩めば、執事に遇うと雖も、楚の將帥に遇う。
其弗敢違、違、辟也。
【読み】
其れ敢えて違けずして、違は、辟くなり。
其竭力致死、無有二心、以盡臣禮。所以報也。王曰、晉未可與爭。重爲之禮而歸之。
【読み】
其れ力を竭くし死を致して、二心有ること無くして、以て臣の禮を盡くさん。報ゆる所以なり、と。王曰く、晉は未だ與に爭う可からず、と。重く之が禮を爲して之を歸す。
秋、叔孫僑如圍棘。
【読み】
秋、叔孫僑如棘を圍む。
取汶陽之田、棘不服。故圍之。僑如、叔孫得臣子。
【読み】
汶陽の田を取るとき、棘服せざりき。故に之を圍むなり。僑如は、叔孫得臣の子。
晉郤克・衛孫良夫伐廧咎如、討赤狄之餘焉。宣十五年、晉滅赤狄潞氏。其餘民散入廧咎如。故討之。
【読み】
晉の郤克・衛の孫良夫廧咎如を伐つは、赤狄の餘を討ずるなり。宣十五年、晉赤狄潞氏を滅ぼす。其の餘民廧咎如に散入す。故に之を討ず。
廧咎如潰、上失民也。此傳釋經之文、而經無廧咎如潰。蓋經闕此四字。
【読み】
廧咎如潰ゆとは、上民を失うなり。此の傳經の文を釋して、經に廧咎如潰ゆと無し。蓋し經に此の四字を闕くならん。
冬、十一月、晉侯使荀庚來聘、且尋盟。尋元年赤棘盟。荀庚、林父之子。
【読み】
冬、十一月、晉侯荀庚をして來聘し、且つ盟を尋[かさ]ねしむ。元年赤棘の盟を尋ぬるなり。荀庚は、林父の子。
衛侯使孫良夫來聘、且尋盟。尋宣七年盟。
【読み】
衛侯孫良夫をして來聘し、且つ盟を尋ねしむ。宣七年の盟を尋ぬるなり。
公問諸臧宣叔曰、中行伯之於晉也、其位在三。下卿。
【読み】
公諸を臧宣叔に問いて曰く、中行伯の晉に於るや、其の位三に在り。下卿。
孫子之於衛也、位爲上卿。將誰先。對曰、次國之上卿、當大國之中。中當其下。下當其上大夫。降一等。
【読み】
孫子の衛に於るや、位上卿爲り。將に誰をか先にせんとする、と。對えて曰く、次國の上卿は、大國の中に當たる。中は其の下に當たる。下は其の上大夫に當たる。一等を降す。
小國之上卿、當大國之下卿。中當其上大夫。下當其下大夫。降大國二等。
【読み】
小國の上卿は、大國の下卿に當たる。中は其の上大夫に當たる。下は其の下大夫に當たる。大國に降ること二等。
上下如是、古之制也。古制、公爲大國、侯伯爲次國、子男爲小國。
【読み】
上下是の如きは、古の制なり。古の制は、公を大國と爲し、侯伯を次國と爲し、子男を小國と爲す。
衛在晉、不得爲次國。春秋時、以强弱爲大小。故衛雖侯爵、猶爲小國。
【読み】
衛の晉に在るは、次國爲ることを得ず。春秋の時は、强弱を以て大小を爲す。故に衛は侯爵と雖も、猶小國と爲す。
晉爲盟主。其將先之。計等則二人位敵。以盟主故先晉。
【読み】
晉は盟主爲り。其れ將[はた]之を先にせん、と。等を計れば則ち二人位敵す。盟主を以ての故に晉を先にす。
丙午、盟晉、丁未、盟衛。禮也。
【読み】
丙午、晉に盟い、丁未、衛に盟う。禮なり。
十二月、甲戌、晉作六軍。爲六軍、僭王也。萬二千五百人爲軍。
【読み】
十二月、甲戌[きのえ・いぬ]、晉六軍を作る。六軍を爲るは、王に僭するなり。萬二千五百人を軍と爲す。
韓厥・趙括・鞏朔・韓穿・荀騅・趙旃、皆爲卿。賞鞌之功也。韓厥爲新中軍。趙括佐之。鞏朔爲新上軍。韓穿佐之。荀騅爲新下軍。趙旃佐之。晉舊自有三軍、今增此。故爲六軍。○騅、音隹。
【読み】
韓厥・趙括・鞏朔・韓穿・荀騅・趙旃、皆卿と爲す。鞌の功を賞するなり。韓厥新中軍と爲る。趙括之に佐たり。鞏朔新上軍と爲る。韓穿之に佐たり。荀騅新下軍と爲る。趙旃之に佐たり。晉舊自ら三軍有り、今此を增す。故に六軍とす。○騅は、音隹。
齊侯朝于晉。將授玉。行朝禮。
【読み】
齊侯晉に朝す。將に玉を授けんとす。朝禮を行う。
郤克趨進曰、此行也、君爲婦人之笑辱也。寡君未之敢任。言齊侯之來、以謝婦人之笑。非爲脩好。故云晉君不任當此惠。○任、音壬。
【読み】
郤克趨り進みて曰く、此の行や、君婦人の笑いの爲に辱くするなり。寡君未だ之に敢えて任[た]えず、と。言うこころは、齊侯の來るは、以て婦人の笑いを謝するなり。好を脩むる爲に非ず。故に晉君此の惠みに任當せずと云う。○任は、音壬。
晉侯享齊侯。齊侯視韓厥。韓厥曰、君知厥也乎。齊侯曰、服改矣。戎朝、異服也。言服改、明識其人。
【読み】
晉侯齊侯を享す。齊侯韓厥を視る。韓厥曰く、君厥を知れりや、と。齊侯曰く、服改まれり、と。戎朝は、服を異にす。服改まると言うは、其の人を識るを明かす。
韓厥登、舉爵曰、臣之不敢愛死、爲兩君之在此堂也。
【読み】
韓厥登り、爵を舉げて曰く、臣の敢えて死を愛まざりしは、兩君の此の堂に在らんが爲なり、と。
荀罃之在楚也、鄭賈人有將寘諸褚中以出。旣謀之、未行、而楚人歸之。賈人如晉。荀罃善視之、如實出己。賈人曰、吾無其功、敢有其實乎。吾小人。不可以厚誣君子。遂適齊。傳言知罃之賢。○賈、音古。褚、中呂反。
【読み】
荀罃の楚に在りしや、鄭の賈人將に諸を褚中に寘きて以て出ださんとする有り。旣に之を謀り、未だ行わずして、楚人之を歸す。賈人晉に如く。荀罃善く之を視る、實に己を出だせるが如し。賈人曰く、吾れ其の功無くして、敢えて其の實を有たんや。吾は小人なり。以て厚く君子を誣う可からず、と。遂に齊に適く。傳知罃の賢を言う。○賈は、音古。褚は、中呂反。
〔經〕四年、春、宋公使華元來聘。三月、壬申、鄭伯堅卒。無傳。二年、大夫盟于蜀。壬申、二月二十八日。
【読み】
〔經〕四年、春、宋公華元をして來聘せしむ。三月、壬申[みずのえ・さる]、鄭伯堅卒す。傳無し。二年、大夫蜀に盟う。壬申は、二月二十八日。
杞伯來朝。夏、四月、甲寅、臧孫許卒。無傳。
【読み】
杞伯來朝す。夏、四月、甲寅[きのえ・とら]、臧孫許卒す。傳無し。
公如晉。葬鄭襄公。無傳。
【読み】
公晉に如く。鄭の襄公を葬る。傳無し。
秋、公至自晉。冬、城鄆。無傳。公欲叛晉。故城而爲備。○鄆、音運。
【読み】
秋、公晉より至る。冬、鄆[うん]に城く。傳無し。公晉に叛かんと欲す。故に城きて備えを爲す。○鄆は、音運。
鄭伯伐許。
【読み】
鄭伯許を伐つ。
〔傳〕四年、春、宋華元來聘、通嗣君也。宋共公卽位。
【読み】
〔傳〕四年、春、宋の華元來聘するは、嗣君を通ずるなり。宋の共公位に卽く。
杞伯來朝、歸叔姬故也。將出叔姬、先脩禮朝魯、言其故。
【読み】
杞伯來朝するは、叔姬を歸す故なり。將に叔姬を出ださんとして、先ず禮を脩め魯に朝し、其の故を言う。
夏、公如晉。晉侯見公。不敬。季文子曰、晉侯必不免。言將不能壽終也。後十年、陷厠而死。
【読み】
夏、公晉に如く。晉侯公を見る。不敬なり。季文子曰く、晉侯必ず免れじ。言うこころは、將に壽終すること能わざらん。後十年、厠に陷りて死す。
詩曰、敬之敬之。天惟顯思。命不易哉。詩、頌。言天道顯明。受其命甚難。不可不敬以奉之。○易、以豉反。
【読み】
詩に曰く、之を敬せよ之を敬せよ。天惟れ顯らかなり。命易からざるかな、と。詩は、頌。天道顯明なり。其の命を受くること甚だ難し。敬して以て之を奉ぜずんばある可からざるを言う。○易は、以豉反。
夫晉侯之命、在諸侯矣。可不敬乎。敬諸侯、則得天命。
【読み】
夫れ晉侯の命は、諸侯に在り。敬せざる可けんや、と。諸侯を敬すれば、則ち天命を得。
秋、公至自晉。欲求成于楚而叛晉。季文子曰、不可。晉雖無道、未可叛也。國大臣睦、而邇於我。邇、近也。
【読み】
秋、公晉より至る。成[たい]らぎを楚に求めて晉に叛かんと欲す。季文子曰く、不可なり。晉無道なりと雖も、未だ叛く可からざるなり。國大に臣睦まじくして、我に邇し。邇は、近きなり。
諸侯聽焉。未可以貳。聽、服也。
【読み】
諸侯聽く。未だ以て貳す可からず。聽は、服すなり。
史佚之志有之、周文王大史。
【読み】
史佚の志に之れ有り、周の文王の大史。
曰、非我族類、其心必異。楚雖大、非吾族也。與魯異姓。
【読み】
曰く、我が族類に非ざれば、其の心必ず異なり、と。楚大なりと雖も、吾が族に非ず。魯と姓を異にす。
其肯字我乎。公乃止。字、愛也。
【読み】
其れ肯えて我を字[いつく]しまんや、と。公乃ち止む。字は、愛しむなり。
冬、十一月、鄭公孫申帥師疆許田。前年、鄭伐許、侵其田。今正其界。
【読み】
冬、十一月、鄭の公孫申師を帥いて許の田を疆[さか]う。前年、鄭許を伐ちて、其の田を侵す。今其の界を正す。
許人敗諸展陂。鄭伯伐許、取鉏任・泠敦之田。展陂、亦許地。○任、音壬。泠、力丁反。
【読み】
許人諸を展陂に敗る。鄭伯許を伐ち、鉏任[しょじん]・泠敦[れいとん]の田を取る。展陂も、亦許の地。○任は、音壬。泠は、力丁反。
晉欒書將中軍、代郤克。
【読み】
晉の欒書中軍に將となり、郤克に代わる。
荀首佐之、士燮佐上軍、以救許、伐鄭、取氾・祭。氾・祭、鄭地。成皐縣東有汜水。○氾、音凡、或音祀。祭、側介反。
【読み】
荀首之に佐となり、士燮[ししょう]上軍に佐となりて、以て許を救い、鄭を伐ち、氾[し]・祭を取る。氾・祭は、鄭の地。成皐縣の東に汜水有り。○氾は、音凡、或は音祀。祭は、側介反。
*「氾」は「音凡」であれば「氾」だが、「音祀」であれば「汜」の誤り。頭注に「鄭有東西氾、而此非彼二氾。蓋成皐縣東汜水。晉取之知之。」とある。
楚子反救鄭。鄭伯與許男訟焉。於子反前爭曲直。
【読み】
楚の子反鄭を救う。鄭伯と許男と訟う。子反の前に於て曲直を爭う。
皇戌攝鄭伯之辭。代之對。
【読み】
皇戌鄭伯の辭を攝す。之に代わりて對う。
子反不能決也。曰、君若辱在寡君、寡君與其二三臣、共聽兩君之所欲、成其可知也。欲使自屈於楚子前決之。
【読み】
子反決すること能わず。曰く、君若し辱く寡君に在りて、寡君と其の二三臣と、共に兩君の欲する所を聽かば、成らぎ其れ知る可し。自ら楚子の前に屈せしめて之を決せんと欲す。
不然、側不足以知二國之成。側、子反名。爲明年、許愬鄭於楚張本。
【読み】
然らずんば、側以て二國の成らぎを知るに足らず、と。側は、子反の名。明年、許鄭を楚に愬[うった]うる爲の張本なり。
晉趙嬰通于趙莊姬。趙嬰、趙盾弟。莊姬、趙朔妻。朔、盾之子。
【読み】
晉の趙嬰趙莊姬に通ず。趙嬰は、趙盾の弟。莊姬は、趙朔の妻。朔は、盾の子。
〔經〕五年、春、王正月、杞叔姬來歸。出也。傳在前年。
【読み】
〔經〕五年、春、王の正月、杞の叔姬來歸す。出ださるなり。傳前年に在り。
仲孫蔑如宋。夏、叔孫僑如會晉荀首于穀。穀、齊地。
【読み】
仲孫蔑宋に如く。夏、叔孫僑如晉の荀首に穀に會す。穀は、齊の地。
梁山崩。記異也。梁山、在馮翊夏陽縣北。
【読み】
梁山崩る。異を記すなり。梁山は、馮翊夏陽縣の北に在り。
秋、大水。無傳。
【読み】
秋、大水あり。傳無し。
冬、十有一月、己酉、天王崩。十有二月、己丑、公會晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・邾子・杞伯、同盟于蟲牢。蟲牢、鄭地。陳留封丘縣北有桐牢。
【読み】
冬、十有一月、己酉[つちのと・とり]、天王崩ず。十有二月、己丑[つちのと・うし]、公晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・邾子[ちゅし]・杞伯に會して、蟲牢に同盟す。蟲牢は、鄭の地。陳留封丘縣の北に桐牢有り。
〔傳〕五年、春、原・屛放諸齊。放趙嬰也。原同・屛季、嬰之兄。○屛、步丁反。
【読み】
〔傳〕五年、春、原・屛諸を齊に放つ。趙嬰を放つなり。原同・屛季は、嬰の兄。○屛は、步丁反。
嬰曰、我在。故欒氏不作。我亡、吾二昆其憂哉。且人各有能有不能。言己雖淫、而能令莊姬護趙氏。
【読み】
嬰曰く、我れ在り。故に欒氏作らず。我れ亡びば、吾が二昆其れ憂えんかな。且つ人各々能有り不能有り。言うこころは、己淫なりと雖も、而れども能く莊姬をして趙氏を護らせしむ。
舍我何害。弗聽。
【読み】
我を舍[お]くも何の害あらん、と。聽かず。
嬰夢天使謂己。祭余。余福女。使問諸士貞伯。貞伯曰、不識也。旣而告其人、自告貞伯從人。○舍、音捨。又音赦。聽、吐丁反。女、音汝。從、才用反。
【読み】
嬰夢みらく、天己に謂わしむ。余を祭れ。余女に福せん、と。諸を士貞伯に問わしむ。貞伯曰く、識らず、と。旣にして其の人に告げて、自ら貞伯の從人に告ぐ。○舍は、音捨。又音赦。聽は、吐丁反。女は、音汝。從は、才用反。
曰、神福仁而禍淫。淫而無罰、福也。祭其得亡乎。以得放遣爲福。
【読み】
曰く、神は仁に福して淫に禍す。淫にして罰無きは、福なり。祭らば其れ亡[に]ぐることを得んか、と。放遣を得るを以て福と爲す。
祭之之明日而亡。爲八年、晉殺趙同・趙括傳。
【読み】
之を祭るの明日にして亡げたり。八年、晉趙同・趙括を殺す爲の傳なり。
孟獻子如宋、報華元也。前年、宋華元來聘。
【読み】
孟獻子宋に如くは、華元に報ゆるなり。前年、宋の華元來聘す。
夏、晉荀首如齊逆女。故宣伯餫諸穀。野饋曰餫。運糧饋之、敬大國也。○餫、音鄆。
【読み】
夏、晉の荀首齊に如きて女を逆[むか]う。故に宣伯諸に穀に餫[おく]る。野饋を餫[うん]と曰う。糧を運びて之を饋[おく]るは、大國を敬するなり。○餫は、音鄆[うん]。
梁山崩。晉侯以傳召伯宗。傳、驛。○傳、直戀反。
【読み】
梁山崩る。晉侯傳を以て伯宗を召す。傳は、驛。○傳は、直戀反。
伯宗辟重曰、辟傳。重載之車。○辟、匹亦反。又甫赤反。曰辟、音避。
【読み】
伯宗重を辟かしめて曰く、傳を辟けよ、と。重載の車。○辟は、匹亦反。又甫赤反。曰辟は、音避。
重人曰、待我、不如捷之速也。捷、邪也。
【読み】
重人曰く、我を待たんより、捷するの速やかなるには如かじ、と。捷は、邪[ななめ]なり。
問其所。曰、絳人也。問絳事焉。曰、梁山崩。將召伯宗謀之。問將若之何。曰、山有朽壤而崩。可若何。國主山川。主謂所主祭。
【読み】
其の所を問う。曰く、絳人なり。絳の事を問う。曰く、梁山崩る。將に伯宗を召して之を謀らんとす、と。問う、將に之を若何にせんとする、と。曰く、山に朽壤有りて崩る。若何にす可けん。國は山川を主る。主は主り祭る所を謂う。
故山崩川竭、君爲之不舉、去盛饌。○爲、于僞反。饌、志戀反。
【読み】
故に山崩れ川竭くれば、君之が爲に舉せず、盛饌を去る。○爲は、于僞反。饌は、志戀反。
降服、損盛服。
【読み】
服を降し、盛服を損す。
乘縵、車無文。○縵、武旦反。
【読み】
縵に乘り、車文無し。○縵は、武旦反。
徹樂、息八音。
【読み】
樂を徹し、八音を息む。
出次、舍於郊。
【読み】
出でて次[やど]り、郊に舍る。
祝幣、陳玉帛。
【読み】
祝幣し、玉帛を陳ぬ。
史辭、自罪責。
【読み】
史辭し、自ら罪責す。
以禮焉。禮山川。
【読み】
以て禮す。山川を禮す。
其如此而已。雖伯宗若之何。伯宗請見之。見之於晉君。○見、賢遍反。
【読み】
其れ此の如きのみ。伯宗と雖も之を若何にせん、と。伯宗之を見えんと請う。之を晉君に見えしむ。○見は、賢遍反。
不可。不肯見。
【読み】
可[き]かず。見ゆることを肯わず。
遂以告而從之。從重人言。
【読み】
遂に以て告げて之に從う。重人の言に從う。
許靈公愬鄭伯于楚。前此年、鄭伐許故。
【読み】
許の靈公鄭伯を楚に愬[うった]う。此より前の年、鄭許を伐つ故なり。
六月、鄭悼公如楚訟。不勝。楚人執皇戌及子國。以鄭伯不直故也。子國、鄭穆公子。
【読み】
六月、鄭の悼公楚に如きて訟う。勝たず。楚人皇戌と子國とを執う。鄭伯の不直を以ての故なり。子國は、鄭の穆公の子。
故鄭伯歸、使公子偃請成于晉。秋、八月、鄭伯及晉趙同盟于垂棘。垂棘、晉地。
【読み】
故に鄭伯歸りて、公子偃をして成らぎを晉に請わしむ。秋、八月、鄭伯晉の趙同と垂棘に盟う。垂棘は、晉の地。
宋公子圍龜爲質于楚而歸。圍龜、文公子。○質、音致。
【読み】
宋の公子圍龜楚に質と爲りて歸る。圍龜は、文公の子。○質は、音致。
華元享之。請鼓譟以出、鼓譟以復入。出入輒擊鼓。○復、扶又反。
【読み】
華元之を享す。鼓譟して以て出で、鼓譟して以て復入らんと請う。出入に輒ち鼓を擊つ。○復は、扶又反。
曰、習攻華氏。宋公殺之。蓋宣十五年、宋・楚平後、華元使圍龜代己爲質。故怨而欲攻華氏。
【読み】
曰く、華氏を攻むるを習わん、と。宋公之を殺す。蓋し宣十五年、宋・楚平らぐの後、華元圍龜をして己に代わりて質爲らしむ。故に怨みて華氏を攻めんと欲す。
冬、同盟于蟲牢、鄭服也。
【読み】
冬、蟲牢に同盟するは、鄭服すればなり。
諸侯謀復會。宋公使向爲人辭以子靈之難。子靈、圍龜也。宋公不欲會。以新誅子靈爲辭。爲明年、侵宋傳。○向、舒亮反。
【読み】
諸侯復會せんことを謀る。宋公向爲人[しょういじん]をして辭するに子靈の難を以てせしむ。子靈は、圍龜なり。宋公會することを欲せず。新たに子靈を誅するを以て辭と爲す。明年、宋を侵す爲の傳なり。○向は、舒亮反。
十一月、己酉、定王崩。經在蟲牢上、傳在下、月倒錯。衆家傳、悉無此八字。或衍文。
【読み】
十一月、己酉、定王崩ず。經には蟲牢の上に在り、傳には下に在りて、月倒錯す。衆家の傳、悉く此の八字無し。或は衍文ならん。
〔經〕六年、春、王正月、公至自會。無傳。
【読み】
〔經〕六年、春、王の正月、公會より至る。傳無し。
二月、辛巳、立武宮。魯人自鞌之功至今無患。故築武軍、又作先君武公宮、以告成事、欲以示後世。
【読み】
二月、辛巳[かのと・み]、武宮を立つ。魯人鞌の功より今に至るまで患え無し。故に武軍を築き、又先君武公の宮を作りて、以て成事を告げ、以て後世に示さんと欲す。
取鄟。附庸國也。○鄟、音專。又市臠反。
【読み】
鄟[せん]を取る。附庸の國なり。○鄟は、音專。又市臠反。
衛孫良夫帥師侵宋。夏、六月、邾子來朝。無傳。
【読み】
衛の孫良夫師を帥いて宋を侵す。夏、六月、邾子[ちゅし]來朝す。傳無し。
公孫嬰齊如晉。嬰齊、叔肸子。
【読み】
公孫嬰齊晉に如く。嬰齊は、叔肸[しゅくきつ]の子。
壬申、鄭伯費卒。前年、同盟蟲牢。○費、音祕。
【読み】
壬申[みずのえ・さる]、鄭伯費卒す。前年、蟲牢に同盟す。○費は、音祕。
秋、仲孫蔑・叔孫僑如帥師侵宋。楚公子嬰齊帥師伐鄭。冬、季孫行父如晉。晉欒書帥師救鄭。
【読み】
秋、仲孫蔑・叔孫僑如師を帥いて宋を侵す。楚の公子嬰齊師を帥いて鄭を伐つ。冬、季孫行父晉に如く。晉の欒書師を帥いて鄭を救う。
〔傳〕六年、春、鄭伯如晉拜成。謝前年再盟。
【読み】
〔傳〕六年、春、鄭伯晉に如きて成[たい]らぎを拜す。前年に再び盟うを謝す。
子游相。子游、公子偃。
【読み】
子游相[たす]く。子游は、公子偃。
授玉于東楹之東。禮、授玉兩楹之閒。鄭伯行疾。故東過。
【読み】
玉を東楹[えい]の東に授く。禮に、玉を兩楹の閒に授く、と。鄭伯行くこと疾し。故に東に過ぐ。
士貞伯曰、鄭伯其死乎。自棄也已。視流而行速。不安其位。宜不能久。視流、不端諦。
【読み】
士貞伯曰く、鄭伯其れ死せんか。自ら棄つるのみ。視ること流れて行くこと速やかなり。其の位に安んぜず。宜しく久しきこと能わざるべし、と。視ること流るとは、端諦せざるなり。
二月、季文子以鞌之功立武宮。非禮也。宣十二年、潘黨勸楚子立武軍。楚子答以武有七德、非己所堪、其爲先君宮、告成事而已。今魯倚晉之功、又非霸主而立武宮。故譏之。
【読み】
二月、季文子鞌の功を以て武宮を立つ。禮に非ざるなり。宣十二年、潘黨楚子に武軍を立てんことを勸む。楚子答うるに武に七德有り、己が堪うる所に非ず、其れ先君の宮を爲り、成事を告げんのみを以てす。今魯は晉の功に倚り、又霸主に非ずして武宮を立つ。故に之を譏る。
聽於人以救其難、不可以立武。立武由己。非由人也。言請人救難、勝非己功。○難、乃旦反。
【読み】
人に聽きて以て其の難を救うは、以て武を立つ可からず。武を立つるは己に由る。人に由るに非ざるなり。人に請いて難を救うは、勝己が功に非ざるを言う。○難は、乃旦反。
取鄟、言易也。
【読み】
鄟を取るとは、易きを言うなり。
三月、晉伯宗・夏陽說・衛孫良夫・甯相・鄭人・伊雒之戎・陸渾蠻氏侵宋。夏陽說、晉大夫。蠻氏、戎別種也。河南新城縣東南有蠻城。經唯書衛孫良夫、獨衛告也。○說、音悅。渾、戶門反。
【読み】
三月、晉の伯宗・夏陽說・衛の孫良夫・甯相・鄭人・伊雒の戎・陸渾の蠻氏宋を侵す。夏陽說は、晉の大夫。蠻氏は、戎の別種なり。河南新城縣の東南に蠻城有り。經に唯衛の孫良夫のみを書すは、獨り衛のみ告ぐればなり。○說は、音悅。渾は、戶門反。
以其辭會也。辭會、在前年。
【読み】
其の會を辭するを以てなり。會を辭するは、前年に在り。
師于鍼。衛人不保。不守備。○鍼、其廉反。一音針。
【読み】
鍼[けん]に師す。衛人保せず。守備せず。○鍼は、其廉反。一に音針。
說欲襲衛。曰、雖不可入、多俘而歸。有罪不及死。伯宗曰、不可。衛唯信晉。故師在其郊而不設備。若襲之、是棄信也。雖多衛俘、而晉無信、何以求諸侯。乃止。師還。衛人登陴。聞說謀故。○陴、音皮。
【読み】
說衛を襲わんと欲す。曰く、入る可からずと雖も、俘多くして歸らん。罪有るも死に及ばじ、と。伯宗曰く、不可なり。衛は唯晉を信ず。故に師其の郊に在りて備えを設けず。若し之を襲わば、是れ信を棄つるなり。衛の俘多しと雖も、晉に信無くば、何を以て諸侯を求めん、と。乃ち止む。師還る。衛人陴に登りぬ。說の謀を聞く故なり。○陴は、音皮。
晉人謀去故絳。晉復命新田爲絳。故謂此故絳。
【読み】
晉人故絳を去らんことを謀る。晉復新田を命[な]づけて絳とす。故に此を故絳と謂う。
諸大夫皆曰、必居郇瑕氏之地。郇瑕、古國名。河東解縣西北有郇城。○郇、音荀。解、音蟹。
【読み】
諸大夫皆曰く、必ず郇瑕氏[じゅんかし]の地に居れ。郇瑕は、古の國の名。河東解縣の西北に郇城有り。○郇は、音荀。解は、音蟹。
沃饒而近盬。盬、鹽也。猗氏縣鹽池是也。○盬、音古。猗、於宜反。
【読み】
沃饒にして盬[こ]に近し。盬は、鹽なり。猗氏縣の鹽池是れなり。○盬は、音古。猗は、於宜反。
國利君樂。不可失也。韓獻子將新中軍、且爲僕大夫。兼大僕。○樂、音洛。
【読み】
國利あり、君樂しむ。失う可からざるなり、と。韓獻子新中軍に將として、且僕大夫爲り。大僕を兼ぬ。○樂は、音洛。
公揖而入。獻子從公立於寢庭。路寢之庭。
【読み】
公揖[ゆう]して入る。獻子公に從いて寢庭に立つ。路寢の庭。
謂獻子曰、何如。問諸大夫言是非。
【読み】
獻子に謂いて曰く、何如、と。諸大夫の言の是非を問う。
對曰、不可。郇瑕氏、土薄水淺。土薄、地下。
【読み】
對えて曰く、不可なり。郇瑕氏は、土薄くして水淺し。土薄しとは、地下きなり。
其惡易覯。惡、疾疢。覯、成也。○易、以豉反。覯、古豆反。疢、勑覲反。
【読み】
其の惡覯[な]り易し。惡は、疾疢[しっちん]。覯[こう]は、成るなり。○易は、以豉反。覯は、古豆反。疢は、勑覲反。
易覯則民愁。民愁則墊隘。墊隘、羸困也。○墊、丁念反。隘、於賣反。羸、劣僞反。
【読み】
覯り易きときは則ち民愁う。民愁うるときは則ち墊隘[てんあい]す。墊隘は、羸困[るいこん]なり。○墊は、丁念反。隘は、於賣反。羸は、劣僞反。
於是乎有沈溺重膇之疾。沈溺、濕疾。重膇、足腫。○膇、治僞反。
【読み】
是に於て沈溺重膇[ちょうつい]の疾有り。沈溺は、濕疾。重膇は、足腫。○膇は、治僞反。
不如新田。今平陽絳邑縣是。
【読み】
新田に如かず。今の平陽絳邑縣是れなり。
土厚水深、居之不疾。高燥故。
【読み】
土厚く水深くして、之に居て疾まず。高燥の故なり。
有汾・澮以流其惡、汾水、出大原經絳北、西南入河。澮水、出平陽絳縣南、西入汾。惡、垢穢。○汾、扶云反。澮、古外反。
【読み】
汾・澮有りて以て其の惡を流し、汾水は、大原に出でて絳の北を經、西南して河に入る。澮水は、平陽絳縣の南に出でて、西して汾に入る。惡は、垢穢。○汾は、扶云反。澮は、古外反。
且民從敎。無災患。
【読み】
且民敎えに從う。災患無し。
十世之利也。夫山澤林盬、國之寶也。國饒、則民驕佚。財易致則民驕侈。
【読み】
十世の利なり。夫れ山澤林盬は、國の寶なり。國饒[ゆた]かなれば、則ち民驕佚す。財致に易きときは則ち民驕侈す。
近寶、公室乃貧。不可謂樂。近寶則民務本。
【読み】
寶に近づけば、公室乃ち貧し。樂しと謂う可からず、と。寶に近づくときは則ち民本を務めず。
公說、從之。
【読み】
公說び、之に從う。
夏、四月、丁丑、晉遷于新田。爲季孫如晉傳。
【読み】
夏、四月、丁丑[ひのと・うし]、晉新田に遷る。季孫晉に如く爲の傳なり。
六月、鄭悼公卒。終士貞伯言。
【読み】
六月、鄭の悼公卒す。士貞伯の言を終える。
子叔聲伯如晉。命伐宋。晉人命聲伯。
【読み】
子叔聲伯晉に如く。命じて宋を伐たしむ。晉人聲伯に命ず。
秋、孟獻子・叔孫宣伯侵宋、晉命也。
【読み】
秋、孟獻子・叔孫宣伯宋を侵すは、晉の命なり。
楚子重伐鄭、鄭從晉故也。前年、從晉盟。
【読み】
楚の子重鄭を伐つは、鄭晉に從う故なり。前年、晉に從うを盟う。
冬、季文子如晉、賀遷也。
【読み】
冬、季文子晉に如くは、遷るを賀するなり。
晉欒書救鄭、與楚師遇於繞角。繞角、鄭地。
【読み】
晉の欒書鄭を救い、楚の師と繞角[じょうかく]に遇う。繞角は、鄭の地。
楚師還。晉師遂侵蔡。楚公子申・公子成以申・息之師救蔡、申・息、楚二縣。
【読み】
楚の師還る。晉の師遂に蔡を侵す。楚の公子申・公子成申・息の師を以[い]て蔡を救い、申・息は、楚の二縣。
禦諸桑隧。汝南朗陵縣東有桑里、在上蔡西南。
【読み】
諸を桑隧に禦ぐ。汝南朗陵縣の東に桑里有り、上蔡の西南に在り。
趙同・趙括欲戰、請於武子。武子將許之。武子、欒書。
【読み】
趙同・趙括戰わんと欲し、武子に請う。武子將に之を許さんとす。武子は、欒書。
知莊子、荀首、中軍佐。
【読み】
知莊子、荀首は、中軍の佐。
范文子、士燮、上軍佐。
【読み】
范文子、士燮[ししょう]は、上軍の佐。
韓獻子、韓厥、新中軍將。
【読み】
韓獻子、韓厥は、新中軍の將。
諫曰、不可。吾來救鄭。楚師去我、吾遂至於此、此、蔡地。
【読み】
諫めて曰く、不可なり。吾が來るは鄭を救うなり。楚の師我を去り、吾れ遂に此に至りしは、此は、蔡の地。
是遷戮也。戮而不已、又怒楚師、戰必不克。遷戮不義。怒敵難當。故不克。
【読み】
是れ戮を遷すなり。戮して已まず、又楚の師を怒らさば、戰わば必ず克たざらん。戮を遷すは不義なり。敵を怒らすは當たり難し。故に克たず。
雖克不令。成師以出、而敗楚之二縣、何榮之有焉。六軍悉出。故曰成師。以大勝小。不足爲榮。
【読み】
克つと雖も令[よ]からず。師を成して以て出でて、楚の二縣を敗るとも、何の榮か之れ有らん。六軍悉く出づ。故に成師と曰う。大を以て小に勝つ。榮とするに足らず。
若不能敗、爲辱已甚。不如還也。乃遂還。
【読み】
若し敗ること能わざれば、辱爲ること已甚だし。還るに如かず、と。乃ち遂に還る。
於是軍師之欲戰者衆。或謂欒武子曰、聖人與衆同欲。是以濟事。子盍從衆。盍、何不也。○帥、所類反。
【読み】
是に於て軍師の戰わんと欲する者衆し。或ひと欒武子に謂いて曰く、聖人は衆と欲を同じくす。是を以て事を濟[な]す。子盍ぞ衆に從わざる。盍は、何ぞせざるなり。○帥は、所類反。
子爲大政、中軍元帥。
【読み】
子は大政を爲して、中軍の元帥。
將酌於民者也。酌取民心以爲政。
【読み】
將に民に酌まんとする者なり。民心を酌み取りて以て政を爲す。
子之佐十一人、六軍之卿佐。
【読み】
子の佐十一人、六軍の卿佐。
其不欲戰者、三人而已。知・范・韓也。
【読み】
其の戰を欲せざる者は、三人のみ。知・范・韓なり。
欲戰者可謂衆矣。商書曰、三人占、從二人、衆故也。商書、洪範。
【読み】
戰を欲する者衆しと謂う可し。商書に曰く、三人占えば、二人に從うとは、衆の故なり、と。商書は、洪範。
武子曰、善鈞從衆。鈞、等也。
【読み】
武子曰く、善鈞[ひと]しければ衆に從う。鈞は、等しきなり。
夫善、衆之主也。三卿爲主。可謂衆矣。三卿、皆晉之賢人。
【読み】
夫れ善は、衆の主なり。三卿を主と爲す。衆と謂う可し。三卿は、皆晉の賢人。
從之、不亦可乎。傳善欒書得從衆之義。且爲八年、晉侵蔡傳。
【読み】
之に從わば、亦可ならずや、と。傳欒書が衆に從うの義を得ることを善す。且八年、晉蔡を侵す爲の傳なり。
〔經〕七年、春、王正月、鼷鼠食郊牛角。改卜牛。鼷鼠又食其角。乃免牛。無傳。稱牛、未卜日。免、放也。免牛可也。不郊、非禮也。○鼷、音兮。
【読み】
〔經〕七年、春、王の正月、鼷鼠[けいそ]郊牛の角を食む。改めて牛を卜す。鼷鼠又其の角を食む。乃ち牛を免[はな]つ。傳無し。牛と稱するは、未だ日を卜せざるなり。免は、放つなり。牛を免つは可なり。郊せざるは、禮に非ざるなり。○鼷は、音兮。
吳伐郯。○郯、音談。
【読み】
吳郯[たん]を伐つ。○郯は、音談。
夏、五月、曹伯來朝。不郊。猶三望。無傳。書不郊、閒有事。三望、非禮。
【読み】
夏、五月、曹伯來朝す。郊せず。猶三望す。傳無し。郊せざるを書すは、閒に事有ればなり。三望は、禮に非ず。
秋、楚公子嬰齊帥師伐鄭。公會晉侯・齊侯・宋公・衛侯・曹伯・莒子・邾子・杞伯救鄭。八月、戊辰、同盟于馬陵。馬陵、衛地。陽平元城縣東南有地、名馬陵。
【読み】
秋、楚の公子嬰齊師を帥いて鄭を伐つ。公晉侯・齊侯・宋公・衛侯・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]・杞伯に會して鄭を救う。八月、戊辰[つちのえ・たつ]、馬陵に同盟す。馬陵は、衛の地。陽平元城縣の東南に地有り、馬陵と名づく。
公至自會。無傳。
【読み】
公會より至る。傳無し。
吳入州來。州來、楚邑。淮南下蔡縣是也。
【読み】
吳州來に入る。州來は、楚の邑。淮南下蔡縣是れなり。
冬、大雩。無傳。書過。
【読み】
冬、大いに雩[う]す。傳無し。過ぐるを書すなり。
衛孫林父出奔晉。
【読み】
衛の孫林父出でて晉に奔る。
〔傳〕七年、春、吳伐郯。郯成。
【読み】
〔傳〕七年、春、吳郯を伐つ。郯成[たい]らぐ。
季文子曰、中國不振旅、蠻夷入伐、而莫之或恤。振、整也。旅、衆也。
【読み】
季文子曰く、中國振旅せずして、蠻夷入り伐ちて、之を恤[あわ]れむこと或ること莫し。振は、整うなり。旅は、衆なり。
無弔者也夫。言中國不能相愍恤。故夷狄内侵。
【読み】
弔[あわ]れむ者無ければなるか。言うこころは、中國相愍恤すること能わず。故に夷狄内侵す。
詩曰、不弔昊天、亂靡有定、其此之謂乎。詩、小雅。刺在上者不能弔愍下民。故號天告亂。○昊、戶老反。號、戶刀反。
【読み】
詩曰く、弔れまず昊天、亂定むること有ること靡しとは、其れ此を之れ謂うか。詩は、小雅。上に在る者下民を弔愍すること能わず。故に天を號びて亂を告ぐるを刺[そし]る。○昊は、戶老反。號は、戶刀反。
有上不弔。其誰不受亂。上謂霸主。
【読み】
上有るも弔れまれず。其れ誰か亂を受けざらん。上は霸主を謂う。
吾亡無日矣。
【読み】
吾が亡びんこと日無けん、と。
君子曰、知懼如是、斯不亡矣。
【読み】
君子曰く、懼れを知ること是の如きは、斯れ亡びじ、と。
鄭子良相成公以如晉見、且拜師。謝前年、晉救鄭之師。爲楚伐鄭張本。○相、息亮反。見、賢遍反。
【読み】
鄭の子良成公を相けて以て晉に如きて見え、且つ師に拜す。前年、晉鄭を救うの師を謝す。楚鄭を伐つ爲の張本なり。○相は、息亮反。見は、賢遍反。
夏、曹宣公來朝。
【読み】
夏、曹の宣公來朝す。
秋、楚子重伐鄭、師于氾。氾、鄭地。在襄城縣南。○氾、音凡。
【読み】
秋、楚の子重鄭を伐ち、氾に師す。氾は、鄭の地。襄城縣の南に在り。○氾は、音凡。
諸侯救鄭。鄭共仲・侯羽軍楚師。二子、鄭大夫。
【読み】
諸侯鄭を救う。鄭の共仲・侯羽楚の師に軍す。二子は、鄭の大夫。
囚鄖公・鍾儀、獻諸晉。
【読み】
鄖公[うんこう]・鍾儀を囚え、諸を晉に獻ず。
八月、同盟于馬陵、尋蟲牢之盟、且莒服故也。蟲牢盟、在五年。莒本屬齊。齊服故莒從之。
【読み】
八月、馬陵に同盟するは、蟲牢の盟を尋[かさ]ね、且莒服する故なり。蟲牢の盟は、五年に在り。莒は本齊に屬す。齊服する故に莒之に從う。
晉人以鍾儀歸、囚諸軍府。軍藏府也。爲九年、晉侯見鍾儀張本。○藏、才浪反。
【読み】
晉人鍾儀を以[い]て歸り、諸を軍府に囚う。軍の藏府なり。九年、晉侯鍾儀を見る爲の張本なり。○藏は、才浪反。
楚圍宋之役、在宣十四年。
【読み】
楚宋を圍むの役に、宣十四年に在り。
師還。子重請取於申・呂、以爲賞田。王許之。分申・呂之田、以自賞。
【読み】
師還る。子重申・呂に取りて、以て賞田と爲さんと請う。王之を許す。申・呂の田を分けて、以て自ら賞す。
申公巫臣曰、不可。此申・呂所以邑也。是以爲賦、以御北方。若取之、是無申・呂也。言申・呂賴此田成邑耳。不得此田、則無以出兵賦、而二邑壞也。○御、魚呂反。
【読み】
申公巫臣曰く、不可なり。此れ申・呂の邑とする所以なり。是を以て賦を爲して、以て北方を御[ふせ]ぐ。若し之を取らば、是れ申・呂無きなり。言うこころは、申・呂此の田に賴りて邑を成すのみ。此の田を得ざれば、則ち以て兵賦を出だすこと無くして、二邑壞るるなり。○御は、魚呂反。
晉・鄭必至于漢。王乃止。子重是以怨巫臣。子反欲取夏姬、巫臣止之、遂取以行、子反亦怨之。及共王卽位、楚共王以魯成公元年卽位。
【読み】
晉・鄭必ず漢に至らん、と。王乃ち止む。子重是を以て巫臣を怨む。子反夏姬を取[めと]らんと欲して、巫臣之を止め、遂に取りて以て行[さ]りしかば、子反も亦之を怨む。共王の位に卽くに及びて、楚の共王は魯の成公元年を以て位に卽く。
子重・子反殺巫臣之族子閻・子蕩及淸尹弗忌、皆巫臣之族。
【読み】
子重・子反巫臣の族子閻・子蕩と淸尹弗忌と、皆巫臣の族。
及襄老之子黑要、以夏姬故、幷怨黑要。
【読み】
襄老の子黑要とを殺して、夏姬を以ての故に、幷せて黑要を怨む。
而分其室。子重取子閻之室、使沈尹與王子罷、分子蕩之室、子反取黑要與淸尹之室。巫臣自晉遺二子書、子重・子反。○罷、音皮。
【読み】
其の室を分かつ。子重子閻の室を取り、沈尹と王子罷とをして、子蕩の室を分かたしめ、子反黑要と淸尹との室を取る。巫臣晉より二子に書を遺りて、子重・子反なり。○罷は、音皮。
曰、爾以讒慝貪惏事君、而多殺不辜。余必使爾罷於奔命以死。
【読み】
曰く、爾讒慝貪惏[たんらん]を以て君に事えて、多く不辜を殺せり。余必ず爾をして奔命に罷[つか]れて以て死せしめん、と。
巫臣請使於吳。晉侯許之。吳子壽夢說之。乃通吳于晉。壽夢、季札父。○惏、力含反。夢、莫公反。
【読み】
巫臣吳に使いせんと請う。晉侯之を許す。吳子壽夢之を說ぶ。乃ち吳を晉に通ず。壽夢は、季札の父。○惏は、力含反。夢は、莫公反。
以兩之一卒適吳、舍偏兩之一焉、司馬法、百人爲卒、二十五人爲兩、車九乘爲小偏、十五乘爲大偏。蓋留九乘車及一兩二十五人、令吳習之。○舍、音赦。舊音捨。乘、繩證反。
【読み】
兩の一卒を以[い]て吳に適き、偏兩の一を舍き、司馬法に、百人を卒と爲し、二十五人を兩と爲し、車九乘を小偏と爲し、十五乘を大偏と爲す、と。蓋し九乘の車と一兩二十五人とを留めて、吳をして之を習わしむるならん。○舍は、音赦。舊音捨。乘は、繩證反。
與其射御、敎吳乘車、敎之戰陳、敎之叛楚。前是、吳常屬楚。○戰陳、直覲反。
【読み】
其れに射御を與え、吳に車に乘ることを敎え、之に戰陳を敎え、之に楚に叛くことを敎ゆ。是より前、吳常に楚に屬す。○戰陳は、直覲反。
寘其子狐庸焉、使爲行人於吳。吳始伐楚、伐巢、伐徐。巢・徐、楚屬國。
【読み】
其の子狐庸を寘いて、吳に行人爲らしむ。吳始めて楚を伐ち、巢を伐ち、徐を伐つ。巢・徐は、楚の屬國。
子重奔命。救徐・巢。
【読み】
子重奔命す。徐・巢を救う。
馬陵之會、吳入州來。子重自鄭奔命。因伐鄭而行。
【読み】
馬陵の會に、吳州來に入る。子重鄭より奔命す。鄭を伐つに因りて行く。
子重・子反於是乎一歲七奔命。蠻夷屬於楚者、吳盡取之。是以始大。
【読み】
子重・子反是に於て一歲に七たび奔命す。蠻夷の楚に屬する者、吳盡く之を取る。是を以て始めて大なり。
通吳於上國。上國、諸夏。
【読み】
吳を上國に通ぜり。上國は、諸夏。
衛定公惡孫林父。冬、孫林父出奔晉。林父、孫良夫之子。
【読み】
衛の定公孫林父を惡む。冬、孫林父出でて晉に奔る。林父は、孫良夫の子。
衛侯如晉。晉反戚焉。戚、林父邑。林父出奔、戚隨屬晉。
【読み】
衛の侯晉に如く。晉戚を反す。戚は、林父の邑。林父出奔して、戚隨いて晉に屬す。
〔經〕八年、春、晉侯使韓穿來言汶陽之田、歸之于齊。齊服事晉。故晉來語魯使還二年所取田。○語、魚據反。
【読み】
〔經〕八年、春、晉侯韓穿をして來りて汶陽の田を言いて、之を齊に歸さしむ。齊晉に服事す。故に晉來りて魯に語りて二年に取る所の田を還さしむ。○語は、魚據反。
晉欒書帥師侵蔡。公孫嬰齊如莒。宋公使華元來聘。夏、宋公使公孫壽來納幣。昏聘不使卿。今華元將命。故特書之。宋公無主昏者、自命之。故稱使也。公孫壽、蕩意諸之父。
【読み】
晉の欒書師を帥いて蔡を侵す。公孫嬰齊莒に如く。宋公華元をして來聘せしむ。夏、宋公公孫壽をして來りて幣を納れしむ。昏聘には卿を使わず。今華元命を將[おこな]う。故に特に之を書す。宋公昏を主れる者無く、自ら之を命ず。故に使むと稱す。公孫壽は、蕩意諸の父。
晉殺其大夫趙同・趙括。傳曰、原屛、咎之徒也。明本不以德義自居、宜其見討。故從告辭而稱名。
【読み】
晉其の大夫趙同・趙括を殺す。傳に曰く、原屛は、咎の徒なり、と。本德義を以て自ら居らざれば、宜しく其の討ぜらるべきを明かす。故に告辭に從いて名を稱す。
秋、七月、天子使召伯來賜公命。諸侯卽位、天子賜以命圭、與之合瑞。八年乃來、緩也。天子・天王、王者之通稱。○稱、尺證反。
【読み】
秋、七月、天子召伯をして來りて公に命を賜わしむ。諸侯位に卽けば、天子賜うに命圭を以てして、之と瑞を合す。八年にして乃ち來るは、緩[おく]るるなり。天子・天王は、王者の通稱。○稱は、尺證反。
冬、十月、癸卯、杞叔姬卒。前五年來歸者。女旣適人、雖見出弃、猶以成人禮書之。終爲杞伯所葬。故稱杞叔姬。
【読み】
冬、十月、癸卯[みずのと・う]、杞の叔姬卒す。前五年に來歸する者なり。女旣に人に適けば、出弃せらると雖も、猶成人の禮を以て之を書す。終に杞伯の爲に葬らる。故に杞の叔姬と稱す。
晉侯使士燮來聘。叔孫僑如會晉士燮・齊人・邾人伐郯。先謀而稱會、盟主之命、不同之於列國。
【読み】
晉侯士燮[ししょう]をして來聘せしむ。叔孫僑如晉の士燮・齊人・邾人[ちゅひと]に會して郯[たん]を伐つ。先ず謀りて會すと稱するは、盟主の命、之を列國と同じくせざるなり。
衛人來媵。古者諸侯取適夫人及左右媵。各有姪娣。皆同姓之國。國三人、凡九女。所以廣繼嗣也。魯將嫁伯姬於宋。故衛來媵之。○媵、以證反。適、丁歷反。姪、大結反。又丈一反。
【読み】
衛人來り媵[よう]す。古は諸侯適夫人と左右媵とを取る。各々姪娣有り。皆同姓の國。國ごとに三人、凡そ九女。繼嗣を廣むる所以なり。魯將に伯姬を宋に嫁せんとす。故に衛來りて之に媵す。○媵は、以證反。適は、丁歷反。姪は、大結反。又丈一反。
〔傳〕八年、春、晉侯使韓穿來言汶陽之田、歸之于齊。季文子餞之。餞、送行飮酒。○餞、錢淺反。祖而舍軷、飮酒於其側曰餞。
【読み】
〔傳〕八年、春、晉侯韓穿をして來りて汶陽の田を言いて、之を齊に歸さしむ。季文子之を餞す。餞は、行[さ]るを送りて酒を飮むなり。○餞は、錢淺反。祖して軷[はつ]を舍き、其の側に飮酒するを餞と曰う。
私焉、私與之言。
【読み】
私して、私に之と言う。
曰、大國制義、以爲盟主。是以諸侯懷德畏討、無有貳心。謂汶陽之田、敝邑之舊也、而用師於齊、使歸諸敝邑。用師、鞌之戰。
【読み】
曰く、大國義を制して、以て盟主と爲る。是を以て諸侯德に懷き討を畏れて、貳心有ること無し。汶陽の田を、敝邑の舊なりと謂いて、師を齊に用いて、諸を敝邑に歸さしめたり。師を用ゆるは、鞌の戰なり。
今有二命、曰歸諸齊。信以行義、義以成命、小國所望而懷也。信不可知、義無所立、四方諸侯其誰不解體。言不復肅敬於晉。
【読み】
今二命有りて、諸を齊に歸せと曰う。信以て義を行い、義以て命を成すは、小國の望みて懷く所なり。信知る可からず、義立つ所無くば、四方の諸侯其れ誰か解體せざらん。復晉を肅敬せざるを言う。
詩曰、女也不爽、士貳其行。士也罔極。二三其德。爽、差也。極、中也。詩、衛風。婦人怨丈夫不一其行。喩魯事晉、猶女之事夫、不敢過差。而晉有罔極之心、反二三其德。○差、初買反。又初佳反。
【読み】
詩に曰く、女は爽[たが]わず、士は其の行いを貳にす。士は極罔し。其の德を二三にす、と。爽は、差うなり。極は、中なり。詩は、衛風。婦人丈夫の其の行いを一にせざるを怨む。魯の晉に事うるは、猶女の夫に事うるがごとく、敢えて過差せず。而るに晉に罔極の心有り、反って其の德を二三にするを喩う。○差は、初買反。又初佳反。
七年之中、一與一奪、二三孰甚焉。士之二三、猶喪妃耦。而況霸主。霸主、將德是以。以、用也。
【読み】
七年の中、一たびは與え一たびは奪うは、二三孰れか焉より甚だしからん。士の二三も、猶妃耦を喪う。而るを況んや霸主をや。霸主は、將に德是れ以[もち]いんとす。以は、用ゆるなり。
而二三之、其何以長有諸侯乎。詩曰、猶之未遠、是用大簡。猶、圖也。簡、諫也。詩、大雅。言王者圖事不遠。故用大道諫之。
【読み】
而るに之を二三にせば、其れ何を以て長く諸侯を有たんや。詩に曰く、之を猶[はか]ること未だ遠からず、是に大を用いて簡[いさ]む、と。猶は、圖るなり。簡は、諫むなり。詩は、大雅。王者事を圖ること遠からず。故に大道を用いて之を諫むるを言う。
行父懼晉之不遠猶、而失諸侯也。是以敢私言之。
【読み】
行父晉の遠猶せずして、諸侯を失わんことを懼る。是を以て敢えて私に之を言う、と。
晉欒書侵蔡、六年、未得志故。
【読み】
晉の欒書蔡を侵し、六年、未だ志を得ざる故なり。
遂侵楚、獲申驪。申驪、楚大夫。○驪、力馳反。
【読み】
遂に楚を侵して、申驪を獲たり。申驪は、楚の大夫。○驪は、力馳反。
楚師之還也、謂六年、遇於繞角時。
【読み】
楚の師の還りしや、六年、繞角に遇う時を謂う。
晉侵沈、獲沈子揖。初從知・范・韓也。繞角之役、欒書從知莊子・范文子・韓獻子之言、不與楚戰。自是常從其謀、師出有功。故傳善之。沈國、今汝南平與縣。○揖、音集。又於立反。
【読み】
晉沈を侵して、沈子揖を獲たり。初めて知・范・韓に從えり。繞角の役に、欒書知莊子・范文子・韓獻子の言に從いて、楚と戰わず。是より常に其の謀に從い、師出でて功有り。故に傳之を善す。沈國は、今の汝南平與縣。○揖は、音集。又於立反。
君子曰、從善如流、宜哉。宜有功也。如流、喩速。
【読み】
君子曰く、善に從うこと流るるが如しとは、宜なるかな。宜なり功有ること。流るるが如きは、速やかなるに喩う。
詩曰、愷悌君子、遐不作人。遐、遠也。作、用也。詩、大雅。言文王能遠用善人。不、語助。
【読み】
詩に曰く、愷悌の君子、遐[とお]く人を作[もち]ゆ、と。遐は、遠きなり。作は、用ゆるなり。詩は、大雅。文王能く遠く善人を用ゆると言う。不は、語助。
求善也夫。作人、斯有功績矣。
【読み】
善を求むればなるかな。人を作ゆれば、斯に功績有り、と。
是行也、鄭伯將會晉師、會伐蔡之師。○夫、音扶。
【読み】
是の行や、鄭伯將に晉の師に會せんとし、蔡を伐つの師に會す。○夫は、音扶。
門于許東門、大獲焉。過許見其無備。因攻之。○過、古禾反。
【読み】
許の東門を門[せ]め、大いに獲たり。許を過ぎて其の備え無きを見る。因りて之を攻む。○過は、古禾反。
聲伯如莒、逆也。自爲逆婦。不書者、因聘而逆。○爲、于僞反。
【読み】
聲伯莒に如くは、逆[むか]うるなり。自ら爲に婦を逆う。書さざるは、聘に因りて逆うればなり。○爲は、于僞反。
宋華元來聘、聘共姬也。穆姜之女、成公姊妹、爲宋共公夫人。聘、不應使卿。故傳發其事而已。
【読み】
宋の華元來聘するは、共姬を聘するなり。穆姜の女、成公の姊妹、宋の共公の夫人と爲る。聘は、應に卿を使うべからず。故に傳其の事を發するのみ。
夏、宋公使公孫壽來納幣、禮也。納幣、應使卿。
【読み】
夏、宋公公孫壽をして來りて幣を納れしむるは、禮なり。納幣は、應に卿を使うべし。
晉趙莊姬爲趙嬰之亡故、譖之于晉侯、趙嬰亡、在五年。
【読み】
晉の趙莊姬趙嬰の亡[に]ぐる爲の故に、之を晉侯に譖りて、趙嬰の亡ぐるは、五年に在り。
曰、原・屛將爲亂。欒・郤爲徵。欒氏・郤氏亦徵其爲亂。
【読み】
曰く、原・屛將に亂を爲さんとす、と。欒・郤徵を爲す。欒氏・郤氏も亦其の亂を爲すを徵す。
六月、晉討趙同・趙括。武從姬氏畜于公宮。趙武、莊姬之子。莊姬、晉成公女。畜、養也。
【読み】
六月、晉趙同・趙括を討ず。武姬氏に從いて公宮に畜[やしな]わる。趙武は、莊姬の子。莊姬は、晉の成公の女。畜は、養うなり。
以其田與祁奚。韓厥言於晉侯曰、成季之勳、宣孟之忠、成季、趙衰。宣孟、趙盾。○祁、巨之反。盾、徒本反。
【読み】
其の田を以て祁奚に與う。韓厥晉侯に言いて曰く、成季の勳、宣孟の忠にして、成季は、趙衰。宣孟は、趙盾なり。○祁は、巨之反。盾は、徒本反。
而無後、爲善者其懼矣。三代之令王、皆數百年保天之祿。夫豈無辟王。賴前哲以免也。言三代亦有邪辟之君。但賴其先人以免禍耳。○數、所主反。辟、匹亦反。
【読み】
後無くば、善を爲す者其れ懼れん。三代の令王は、皆數百年天の祿を保てり。夫れ豈辟王無からんや。前哲に賴りて以て免れぬ。言うこころは、三代も亦邪辟の君有り。但其の先人に賴りて以て禍を免るるのみ。○數は、所主反。辟は、匹亦反。
周書曰、不敢侮鰥寡、所以明德也。周書、康誥。言文王不侮鰥寡、而德益明。欲使晉侯之法文王。
【読み】
周書に曰く、敢えて鰥寡を侮らずとは、德を明らかにする所以なり、と。周書は、康誥。文王鰥寡を侮らずして、德益々明らかなるを言う。晉侯をして文王に法らしめんことを欲す。
乃立武而反其田焉。
【読み】
乃ち武を立てて其の田を反す。
秋、召桓公來賜公命。召桓公、周卿士。
【読み】
秋、召桓公來りて公に命を賜う。召桓公は、周の卿士。
晉侯使申公巫臣如吳、假道于莒。與渠丘公立於池上。渠丘公、莒子朱也。池、城池也。梁丘、邑名。莒縣有蘧里。○蘧、其居反。
【読み】
晉侯申公巫臣をして吳に如かしめ、道を莒に假る。渠丘公と池上に立つ。渠丘公は、莒子朱なり。池は、城池なり。梁丘は、邑の名。莒縣に蘧里[きょり]有り。○蘧は、其居反。
曰、城已惡。莒子曰、辟陋在夷。其孰以我爲虞。虞、度也。○度、待洛反。
【読み】
曰く、城已[はなは]だ惡し、と。莒子曰く、辟陋にして夷に在り。其れ孰か我を以て虞[はか]ることをせん、と。虞は、度るなり。○度は、待洛反。
對曰、夫狡焉、狡猾之人。○狡、交卯反。猾、干八反。
【読み】
對えて曰く、夫の狡焉として、狡猾の人。○狡は、交卯反。猾は、干八反。
思啓封疆、以利社稷者、何國蔑有。唯然。故多大國矣。唯或思或縱也。世有思開封疆者、有縱其暴掠者。莒人當唯此爲命。○掠、音亮。
【読み】
封疆を啓きて、以て社稷を利せんと思う者、何れの國か有ること蔑[な]からん。唯然り。故に大國多し。唯或は思い或は縱にす。世々封疆を開かんと思う者有り、其の暴掠を縱にする者有り。莒人當に唯此を命と爲すべし。○掠は、音亮。
勇夫重閉。況國乎。爲明年、莒潰傳。○重、直龍反。又直勇反。
【読み】
勇夫も重閉す。況んや國をや、と。明年、莒潰ゆる爲の傳なり。○重は、直龍反。又直勇反。
冬、杞叔姬卒。來歸自杞。故書。愍其見出來歸。故書卒也。若更適大夫、則不復書卒。
【読み】
冬、杞の叔姬卒す。杞より來歸す。故に書す。其の出だされて來歸するを愍[あわ]れむ。故に卒を書すなり。若し更に大夫に適けば、則ち復卒を書さず。
晉士燮來聘、言伐郯也。以其事吳故。七年、郯與吳成。
【読み】
晉の士燮來聘するは、郯を伐たんことを言うなり。其の吳に事うるを以ての故なり。七年、郯と吳と成らぐ。
公賂之、請緩師。文子不可。文子、士燮。
【読み】
公之に賂いて、師を緩くせんことを請う。文子可[き]かず。文子は、士燮。
曰、君命無貳。失信不立。禮無加貨、事無二成。公私不兩成。
【読み】
曰く、君命は貳無し。信を失えば立たず。禮には加貨無く、事には二成無し。公私兩成せず。
君後諸侯、是寡君不得事君也。欲與魯絕。
【読み】
君諸侯に後れば、是れ寡君君に事うるを得ざるなり。魯と絕たんと欲す。
燮將復之。季孫懼、使宣伯帥師會伐郯。
【読み】
燮將に之を復[もう]さんとす、と。季孫懼れ、宣伯をして師を帥いて郯を伐つに會せしむ。
衛人來媵共姬。禮也。
【読み】
衛人來りて共姬に媵す。禮なり。
凡諸侯嫁女、同姓媵之。異姓則否。必以同姓者、參骨肉至親、所以息陰訟。
【読み】
凡そ諸侯女を嫁すときは、同姓之に媵す。異姓は則ち否[しか]らず。必ず同姓を以てするは、骨肉の至親を參えて、陰訟を息むる所以なり。
〔經〕九年、春、王正月、杞伯來逆叔姬之喪以歸。公會晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・杞伯同盟于蒲。蒲、衛地。在長垣縣西南。
【読み】
〔經〕九年、春、王の正月、杞伯來りて叔姬の喪を逆[むか]えて以て歸る。公晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・杞伯に會して蒲に同盟す。蒲は、衛の地。長垣縣の西南に在り。
公至自會。無傳。
【読み】
公會より至る。傳無し。
二月、伯姬歸于宋。宋不使卿逆、非禮。
【読み】
二月、伯姬宋に歸[とつ]ぐ。宋卿をして逆えしめざるは、禮に非ず。
夏、季孫行父如宋致女。女嫁三月、又使大夫隨加聘問。謂之致女。所以致成婦禮、篤昏姻之好。
【読み】
夏、季孫行父宋に如きて女を致す。女嫁して三月、又大夫をして隨いて聘問を加えしむ。之を致女と謂う。婦禮を成すことを致して、昏姻の好を篤くする所以なり。
晉人來媵。媵伯姬也。
【読み】
晉人來りて媵す。伯姬に媵するなり。
秋、七月、丙子、齊侯無野卒。無傳。五同盟。丙子、六月一日。書七月、從赴。
【読み】
秋、七月、丙子[ひのえ・ね]、齊侯無野卒す。傳無し。五たび同盟す。丙子は、六月一日。七月と書すは、赴[つ]ぐるに從う。
晉人執鄭伯。鄭伯旣受盟於蒲、又受楚賂、會於鄧。故晉執之。稱人者、晉以無道於民告諸侯。例在十五年。
【読み】
晉人鄭伯を執う。鄭伯旣に盟を蒲に受け、又楚の賂を受けて、鄧に會す。故に晉之を執う。人と稱するは、晉民に無道なるを以て諸侯に告ぐればなり。例は十五年に在り。
晉欒書帥師伐鄭。冬、十有一月、葬齊頃公。無傳。
【読み】
晉の欒書師を帥いて鄭を伐つ。冬、十有一月、齊の頃公を葬る。傳無し。
楚公子嬰齊帥師伐莒。庚申、莒潰。民逃其上曰潰。
【読み】
楚の公子嬰齊師を帥いて莒を伐つ。庚申[かのえ・さる]、莒潰ゆ。民其の上を逃るるを潰ゆと曰う。
楚人入鄆。鄆、莒別邑也。楚偏師入鄆。故稱人。
【読み】
楚人鄆[うん]に入る。鄆は、莒の別邑なり。楚の偏師鄆に入る。故に人と稱す。
秦人・白狄伐晉。鄭人圍許。城中城。魯邑也。在東海廩丘縣西南。此閏月城、在十一月之後、十二月之前。故傳曰書時。
【読み】
秦人・白狄晉を伐つ。鄭人許を圍む。中城を城く。魯の邑なり。東海廩丘縣の西南に在り。此れ閏月に城きて、十一月の後、十二月の前に在り。故に傳時なるを書すと曰う。
〔傳〕九年、春、杞桓公來逆叔姬之喪、請之也。叔姬已絕於杞。魯復强請杞、使還取葬。○强、其丈反。
【読み】
〔傳〕九年、春、杞の桓公來りて叔姬の喪を逆うは、之を請うなり。叔姬已に杞に絕ゆ。魯復强いて杞に請いて、還して取りて葬らしむ。○强は、其丈反。
杞叔姬卒、爲杞故也。還爲杞婦。故卒稱杞。○爲、于僞反。下文及爲魯・爲歸同。
【読み】
杞の叔姬卒すとは、杞の爲の故なり。還りて杞の婦と爲る。故に卒するに杞と稱す。○爲は、于僞反。下文及び爲魯・爲歸も同じ。
逆叔姬、爲我也。旣弃而復逆其喪。明爲魯故。○逆叔姬絶句。爲我也、本或無爲字。
【読み】
叔姬を逆うるは、我が爲なり。旣に弃てられて復其の喪を逆う。魯の爲の故なることを明かす。○逆叔姬は絶句。爲我也は、本或は爲の字無からん。
爲歸汶陽之田故、諸侯貳於晉。歸田、在前年。
【読み】
汶陽の田を歸す爲の故に、諸侯晉に貳あり。田を歸すは、前年に在り。
晉人懼、會於蒲、以尋馬陵之盟。馬陵、在七年。
【読み】
晉人懼れ、蒲に會して、以て馬陵の盟を尋[かさ]ぬ。馬陵は、七年に在り。
季文子謂范文子曰、德則不競、尋盟何爲。競、强也。
【読み】
季文子范文子に謂いて曰く、德を則ち競[つよ]めずして、盟を尋ぬるも何をかせん、と。競は、强きなり。
范文子曰、勤以撫之、寬以待之、堅彊以御之、明神以要之、柔服而伐貳、德之次也。
【読み】
范文子曰く、勤以て之を撫で、寬以て之を待ち、堅彊以て之を御し、明神以て之を要し、服するを柔[やす]んじて貳を伐つは、德の次なり、と。
是行也、將始會吳。吳人不至。爲十五年、會鐘離傳。○御、魚呂反。要、一遙反。
【読み】
是の行や、將に始めて吳に會せんとす。吳人至らず。十五年、鐘離に會する爲の傳なり。○御は、魚呂反。要は、一遙反。
二月、伯姬歸于宋。爲致女復命起。
【読み】
二月、伯姬宋に歸ぐ。致女復命の爲に起こす。
楚人以重賂求鄭。鄭伯會楚公子成于鄧。爲晉人執鄭伯傳。
【読み】
楚人重賂を以て鄭に求む。鄭伯楚の公子成に鄧に會す。晉人鄭伯を執うる爲の傳なり。
夏、季文子如宋致女。復命。公享之。賦韓奕之五章。韓奕、詩大雅篇名。其五章言、蹶父嫁女於韓候。爲女相所居。莫如韓樂。文子喩魯候有蹶父之德、宋公如韓候、宋土如韓樂。○蹶、九衛反。爲、于僞反。樂、音洛。
【読み】
夏、季文子宋に如きて女を致す。復命す。公之を享す。韓奕[かんえき]の五章を賦す。韓奕は、詩の大雅の篇の名。其の五章に言う、蹶父[けいほ]女を韓候に嫁す。女の爲に居る所を相る。韓の樂しきに如くは莫し、と。文子魯候に蹶父の德有り、宋公韓候の如く、宋土韓の樂しきが如くなるを喩う。○蹶は、九衛反。爲は、于僞反。樂は、音洛。
穆姜出于房、再拜曰、大夫勤辱、不忘先君、以及嗣君、施及未亡人。穆姜、伯姬母。聞文子言宋樂、喜而出、謝其行勞。婦人夫死、自稱未亡人。○施、以豉反。
【読み】
穆姜房より出でて、再拜して曰く、大夫勤辱して、先君を忘れずして、以て嗣君に及ぼし、施[ひ]いて未亡人に及ぼす。穆姜は、伯姬の母。文子宋の樂しきを言うを聞きて、喜びて出でて、其の行勞を謝す。婦人夫死すれば、自ら未亡人と稱す。○施は、以豉反。
先君猶有望也。言先君亦望文子之若此。
【読み】
先君も猶望むこと有り。先君も亦文子の此の若きを望むを言う。
敢拜大夫之重勤。又賦綠衣之卒章而入。綠衣、詩邶風也。取其我思古人、實獲我心。喩文子言得己意。○重、直勇反。又直用反。邶、音佩。
【読み】
敢えて大夫の重勤を拜す、と。又綠衣の卒章を賦して入る。綠衣は、詩の邶風[はいふう]なり。其の我が古人を思い、實に我が心を獲るに取る。文子の言の己が意を得るに喩う。○重は、直勇反。又直用反。邶は、音佩。
晉人來媵。禮也。同姓故。
【読み】
晉人來り媵す。禮なり。同姓の故なり。
秋、鄭伯如晉。晉人討其貳於楚也、執諸銅鞮。銅鞮、晉別縣。在上黨。○鞮、丁兮反。
【読み】
秋、鄭伯晉に如く。晉人其の楚に貳あるを討じて、諸を銅鞮[どうてい]に執う。銅鞮は、晉の別縣。上黨に在り。○鞮は、丁兮反。
欒書伐鄭。鄭人使伯蠲行成。晉人殺之。非禮也。
【読み】
欒書鄭を伐つ。鄭人伯蠲[はくけん]をして成[たい]らぎを行わしむ。晉人之を殺す。禮に非ざるなり。
兵交、使在其間可也。明殺行人例。○蠲、古玄反。又音圭。
【読み】
兵交わるとき、使其の閒に在りて可なり。行人を殺すの例を明かす。○蠲は、古玄反。又音圭。
楚子重侵陳以救鄭。陳與晉故。
【読み】
楚の子重陳を侵して以て鄭を救う。陳晉に與する故なり。
晉侯觀于軍府、見鍾儀。問之曰、南冠而縶者、誰也。南冠、楚冠。縶、拘執。○縶、陟立反。
【読み】
晉侯軍府を觀て、鍾儀を見る。之を問いて曰く、南冠して縶がるる者は、誰ぞや、と。南冠は、楚の冠。縶[ちゅう]は、拘執。○縶、陟立反。
有司對曰、鄭人所獻楚囚也。使稅之、鄭獻鐘儀、在七年。稅、解也。○稅、吐活反。又私銳反。
【読み】
有司對えて曰く、鄭人の獻ぜし所の楚の囚なり、と。之を稅[と]かしめて、鄭鐘儀を獻ずるは、七年に在り。稅は、解くなり。○稅は、吐活反。又私銳反。
召而弔之。再拜稽首。問其族。對曰、泠人也。泠人、樂官。○泠、力丁反。
【読み】
召して之を弔う。再拜稽首す。其の族を問う。對えて曰く、泠人[れいじん]なり、と。泠人は、樂官。○泠は、力丁反。
公曰、能樂乎。對曰、先父之職官也。敢有二事。言不敢學他事。
【読み】
公曰く、能く樂せんか、と。對えて曰く、先父の職官なり。敢えて二事有らんや、と。敢えて他事を學ばざるを言う。
使與之琴。操南音。南音、楚聲。○操、七刀反。
【読み】
之に琴を與えしむ。南音を操る。南音は、楚の聲。○操は、七刀反。
公曰、君王何如。對曰、非小人之所得知也。固問之。對曰、其爲大子也、師保奉之、以朝于嬰齊、而夕于側也。嬰齊、令尹子重。側、司馬子反。言其尊卿敬老。
【読み】
公曰く、君王は何如、と。對えて曰く、小人の知ることを得る所に非ざるなり、と。固く之を問う。對えて曰く、其の大子爲りしや、師保之を奉じて、以て嬰齊に朝して、側に夕せり。嬰齊は、令尹子重。側は、司馬子反。其の卿を尊び老を敬するを言う。
不知其他。公語范文子。文子曰、楚囚、君子也。言稱先職、不背本也。樂操土風、不忘舊也。稱大子、抑無私也。舍其近事、而遠稱少小、以示性所自然。明至誠。○語、魚據反。
【読み】
其の他を知らず、と。公范文子に語[つ]ぐ。文子曰く、楚の囚は、君子なり。言先職を稱するは、本に背かざるなり。樂土風を操るは、舊を忘れざるなり。大子を稱するは、抑々私無きなり。其の近事を舍てて、遠く少小を稱して、以て性の自然なる所を示す。至誠を明かすなり。○語は、魚據反。
名其二卿、尊君也。尊晉君也。
【読み】
其の二卿に名いうは、君を尊ぶなり。晉君を尊ぶなり。
不背本、仁也。不忘舊、信也。無私、忠也。尊君、敏也。敏、達也。
【読み】
本に背かざるは、仁なり。舊を忘れざるは、信なり。私無きは、忠なり。君を尊ぶは、敏なり。敏は、達するなり。
仁以接事、信以守之、忠以成之、敏以行之、事雖大必濟。言有此四德、必能成大事。
【読み】
仁以て事に接わり、信以て之を守り、忠以て之を成し、敏以て之を行わば、事大なりと雖も必ず濟[な]らん。此の四德有れば、必ず能く大事を成すを言う。
君盍歸之、使合晉・楚之成。公從之、重爲之禮、使歸求成。爲下十二月、晉・楚結成張本。
【読み】
君盍ぞ之を歸して、晉・楚の成らぎを合わせしめざる、と。公之に從い、重く之が禮を爲して、歸りて成らぎを求めしむ。下の十二月、晉・楚成らぎを結ぶ爲の張本なり。
冬、十一月、楚子重自陳伐莒、圍渠丘。渠丘城惡。衆潰奔莒。戊申、楚入渠丘。月六日。
【読み】
冬、十一月、楚の子重陳より莒を伐ち、渠丘を圍む。渠丘城惡し。衆潰えて莒に奔る。戊申[つちのえ・さる]、楚渠丘に入る。月の六日。
莒人囚楚公子平。楚人曰、勿殺。吾歸而俘。莒人殺之。楚師圍莒。莒城亦惡。庚申、莒潰。月十八日。
【読み】
莒人楚の公子平を囚う。楚人曰く、殺すこと勿かれ。吾れ而[なんじ]の俘を歸さん、と。莒人之を殺す。楚の師莒を圍む。莒の城も亦惡し。庚申、莒潰ゆ。月の十八日。
楚遂入鄆。莒無備故也。終巫臣之言。
【読み】
楚遂に鄆に入る。莒備え無き故なり。巫臣の言を終える。
君子曰、恃陋而不備、罪之大者也。備豫不虞、善之大者也。莒恃其陋、而不脩城郭、浹辰之閒、而楚克其三都、無備也夫。浹辰、十二日也。○浹、子協反。又子答反。
【読み】
君子曰く、陋を恃みて備えざるは、罪の大なる者なり。不虞に備豫するは、善の大なる者なり。莒其の陋を恃みて、城郭を脩めずして、浹辰の閒にして、楚其の三都に克ちしは、備え無ければなるかな。浹辰は、十二日なり。○浹は、子協反。又子答反。
詩曰、雖有絲麻、無棄菅蒯。雖有姬姜、無棄蕉萃。凡百君子、莫不代匱、言備之不可以已也。逸詩也。姬姜、大國之女。蕉萃、陋賤之人。○菅、古顏反。蒯、苦怪反。蕉、在遙反。
【読み】
詩に曰く、絲麻有りと雖も、菅蒯[かんかい]を棄つること無かれ。姬姜有りと雖も、蕉萃を棄つること無かれ。凡百の君子、匱[とぼ]しきに代へざること莫しとは、備えの以て已む可からざるを言うなり、と。逸詩なり。姬姜は、大國の女。蕉萃は、陋賤の人。○菅は、古顏反。蒯は、苦怪反。蕉は、在遙反。
秦人・白狄伐晉、諸侯貳故也。
【読み】
秦人・白狄晉を伐つは、諸侯貳ある故なり。
鄭人圍許、示晉不急君也。此秋、晉執鄭伯。
【読み】
鄭人許を圍むは、晉に君を急にせざるを示すなり。此の秋、晉鄭伯を執う。
是則公孫申謀之曰、我出師以圍許、示不畏晉。
【読み】
是れ則ち公孫申之を謀りて曰く、我れ師を出だして以て許を圍み、晉を畏れざるを示す。
爲將改立君者、而紓晉使、紓、緩也。勿亟遣使詣晉、示欲更立君。○爲・將、竝如字。亟、紀力反。或欺冀反。
【読み】
將に君を改め立てんとする者の爲[まね]して、晉の使いを紓[ゆる]くせば、紓は、緩きなり。亟[しば]々使いをして晉に詣らしむること勿くして、更に君を立てんと欲するを示す。○爲・將は、竝字の如し。亟は、紀力反。或は欺冀反。
晉必歸君。爲明年、晉侯歸鄭伯張本。
【読み】
晉必ず君を歸さん、と。明年、晉侯鄭伯を歸す爲の張本なり。
城中城、書時也。
【読み】
中城に城くは、時なるを書すなり。
十二月、楚子使公子辰如晉。報鍾儀之使、請修好結成。鍾儀奉晉命歸。故楚報之。
【読み】
十二月、楚子公子辰をして晉に如かしむ。鍾儀の使いに報い、好を修め成らぎを結ばんことを請う。鍾儀晉の命を奉じて歸る。故に楚之に報ゆ。
〔經〕十年、春、衛侯之弟黑背帥師侵鄭。夏、四月、五卜郊。不從。乃不郊。無傳。卜常祀、不郊、皆非禮。故書。
【読み】
〔經〕十年、春、衛侯の弟黑背師を帥いて鄭を侵す。夏、四月、五たび郊を卜す。從わず。乃ち郊せず。傳無し。常祀を卜し、郊せざるは、皆禮に非ず。故に書す。
五月、公會晉侯・齊侯・宋公・衛侯・曹伯伐鄭。晉侯、大子州蒲也。稱爵、見其生代父居位、失人子之禮。○見、賢遍反。
【読み】
五月、公晉侯・齊侯・宋公・衛侯・曹伯に會して鄭を伐つ。晉侯は、大子州蒲なり。爵を稱するは、其の生きながら父に代わり位に居り、人子の禮を失うを見す。○見は、賢遍反。
齊人來媵。無傳。媵伯姬也。異姓來媵、非禮也。
【読み】
齊人來り媵す。傳無し。伯姬に媵するなり。異姓來り媵するは、禮に非ざるなり。
丙午、晉侯獳卒。六同盟。據傳、丙午、六月七日。有日無月。○獳、乃侯反。
【読み】
丙午[ひのえ・うま]、晉侯獳[どう]卒す。六たび同盟す。傳に據るに、丙午は、六月七日。日有りて月無し。○獳は、乃侯反。
秋、七月、公如晉。冬、十月。
【読み】
秋、七月、公晉に如く。冬、十月。
〔傳〕十年、春、晉侯使糴茷如楚。糴茷、晉大夫。○糴、徒弔反。一杜敖反。茷、扶廢反。一蒲發反。
【読み】
〔傳〕十年、春、晉侯糴茷[てきはい]をして楚に如かしむ。糴茷は、晉の大夫。○糴は、徒弔反。一に杜敖反。茷は、扶廢反。一に蒲發反。
報大宰子商之使也。子商、楚公子辰。使、在前年。
【読み】
大宰子商の使いに報ゆるなり。子商は、楚の公子辰。使いは、前年に在り。
衛子叔黑背侵鄭、晉命也。晉命衛使侵鄭。
【読み】
衛の子叔黑背鄭を侵すは、晉の命なり。晉衛に命じて鄭を侵さしむ。
鄭公子班聞叔申之謀、改立君之謀。
【読み】
鄭の公子班叔申の謀を聞き、君を改め立つの謀。
三月、子如立公子繻。子如、公子班。○繻、音須。
【読み】
三月、子如公子繻を立つ。子如は、公子班。○繻は、音須。
夏、四月、鄭人殺繻、立髡頑。子如奔許。髡頑、鄭成侯大子。○髡、苦門反。
【読み】
夏、四月、鄭人繻を殺して、髡頑[こんがん]を立つ。子如許に奔る。髡頑は、鄭の成侯の大子。○髡は、苦門反。
欒武子曰、鄭人立君。我執一人焉何益。不如伐鄭而歸其君、以求成焉。
【読み】
欒武子曰く、鄭人君を立つ。我れ一人を執うとも何の益あらん。鄭を伐ちて其の君を歸して、以て成[たい]らぎを求めんに如かず、と。
晉侯有疾。五月、晉立大子州蒲以爲君、而會諸侯伐鄭。生立子爲君。此父不父子不子。經因書晉侯。其惡明。
【読み】
晉侯疾有り。五月、晉大子州蒲を立てて以て君と爲して、諸侯を會して鄭を伐つ。生きながら子を立てて君と爲す。此れ父父ならず子子ならざるなり。經因りて晉侯と書す。其の惡明らかなり。
鄭子罕賂以襄鍾。子罕、穆公子。襄鐘、鄭襄公之廟鐘。
【読み】
鄭の子罕賂うに襄鍾を以てす。子罕は、穆公の子。襄鐘は、鄭の襄公の廟鐘。
子然盟于脩澤。子駟爲質。子然・子駟、皆穆公子。滎陽卷縣東有脩武亭。○質、音致。卷、音權。又丘權反。
【読み】
子然脩澤に盟う。子駟質と爲る。子然・子駟は、皆穆公の子。滎陽卷縣の東に脩武亭有り。○質は、音致。卷は、音權。又丘權反。
辛巳、鄭伯歸。鄭伯歸不書、鄭不告入。
【読み】
辛巳[かのと・み]、鄭伯歸る。鄭伯歸ること書さざるは、鄭入ることを告げざればなり。
晉侯夢、大厲被髮及地、搏膺而踊曰、殺余孫不義。厲、鬼也。趙氏之先祖也。八年、晉侯殺趙同・趙括。故怒。○被、皮寄反。
【読み】
晉侯夢みらく、大厲髮を被りて地に及び、膺を搏[う]ちて踊りて曰く、余が孫を殺せしこと不義なり。厲は、鬼なり。趙氏の先祖ならん。八年、晉侯趙同・趙括を殺す。故に怒る。○被は、皮寄反。
余得請於帝矣。壞大門及寢門而入。公懼入于室。又壞戶。公覺、召桑田巫。桑田、晉邑。○壞、音怪。覺、古孝反。
【読み】
余帝に請うことを得たり、と。大門と寢門とを壞りて入る。公懼れて室に入る。又戶を壞る。公覺め、桑田の巫を召す。桑田は、晉の邑。○壞は、音怪。覺は、古孝反。
巫言如夢。巫云鬼怒、如公所夢。
【読み】
巫の言うこと夢の如し。巫鬼の怒りを云うこと、公の夢みる所の如し。
公曰、何如。曰、不食新矣。言公不得及食新麥。
【読み】
公曰く、何如、と。曰く、新を食わじ、と。言うこころは、公新麥を食うに及ぶことを得ず。
公疾病。求醫于秦。秦伯使醫緩爲之。緩、醫名。爲、猶治也。
【読み】
公疾病なり。醫を秦に求む。秦伯醫緩をして之を爲[おさ]めしむ。緩は、醫の名。爲は、猶治むるのごとし。
未至、公夢、疾爲二豎子、曰、彼良醫也。懼傷我。焉逃之。其一曰、居肓之上、膏之下、若我何。肓、鬲也。心下爲膏。○焉、於虔反。一讀如字。屬上句。肓、音荒。心下、鬲上也。
【読み】
未だ至らずして、公夢みらく、疾二豎子と爲りて、曰く、彼は良醫なり。懼らくは我を傷らん。焉[いずく]に之を逃れん、と。其の一曰く、肓[こう]の上、膏[こう]の下に居らば、我を若何にせん、と。肓は、鬲[かく]なり。心の下を膏と爲す。○焉は、於虔反。一に讀みて字の如し。上の句に屬く。肓は、音荒。心の下、鬲の上なり。
醫至。曰、疾不可爲也。在肓之上、膏之下。攻之不可、達之不及、藥不至焉。不可爲也。達、針。
【読み】
醫至る。曰く、疾爲む可からざるなり。肓の上、膏の下に在り。之を攻むとも可ならず、之に達するとも及ばず、藥も至らず。爲む可からざるなり、と。達は、針。
公曰、良醫也。厚爲之禮而歸之。
【読み】
公曰く、良醫なり、と。厚く之が禮を爲して之を歸す。
六月、丙午、晉侯欲麥。周六月、今四月。麥始熟。
【読み】
六月、丙午、晉侯麥を欲す。周の六月は、今の四月。麥始めて熟す。
使甸人獻麥。甸人、主爲公田者。○甸、徒練反。
【読み】
甸人[てんじん]をして麥を獻ぜしむ。甸人は、公田を爲ることを主る者。○甸は、徒練反。
饋人爲之。召桑田巫、示而殺之。將食。張。如廁。陷而卒。張、腹滿也。○饋、其媿反。張、中亮反。
【読み】
饋人之を爲す。桑田の巫を召して、示して之を殺す。將に食わんとす。張す。廁に如く。陷りて卒す。張は、腹滿つるなり。○饋は、其媿反。張は、中亮反。
小臣有晨夢負公以登天。及日中、負晉侯出諸廁。遂以爲殉。傳言巫以明術見殺、小臣以言夢自禍。
【読み】
小臣晨に公を負いて以て天に登ると夢みる有り。日中に及びて、晉侯を負いて諸を廁より出だす。遂に以て殉と爲す。傳巫は術に明なるを以て殺され、小臣は夢を言うを以て自ら禍するを言う。
鄭伯討立君者、戊申、殺叔申・叔禽。叔禽、叔申弟。
【読み】
鄭伯君を立つる者を討じ、戊申[つちのえ・さる]、叔申・叔禽を殺す。叔禽は、叔申の弟。
君子曰、忠爲令德、非其人猶不可。況不令乎。言叔申爲忠、不得其人、還害身。
【読み】
君子曰く、忠は令德爲れども、其の人に非ざれば猶不可なり。況んや不令をや、と。叔申忠を爲して、其の人を得ずして、還って身を害することを言う。
秋、公如晉。親弔非禮。
【読み】
秋、公晉に如く。親ら弔うは禮に非ず。
晉人止公。使送葬。於是糴茷未反。是春晉使糴茷至楚結成。晉謂魯貳於楚。故留公須糴茷還、驗其虛實。
【読み】
晉人公を止む。葬を送らしむ。是に於て糴茷未だ反らず。是の春晉糴茷をして楚に至りて成らぎを結ばしむ。晉魯は楚に貳ありと謂う。故に公を留めて糴茷の還るを須ちて、其の虛實を驗す。
冬、葬晉景公。公送葬。諸侯莫在。魯人辱之。故不書。諱之也。諱不書晉葬也。
【読み】
冬、晉の景公を葬る。公葬を送る。諸侯在ること莫し。魯人之を辱とす。故に書さず。之を諱みてなり。諱みて晉の葬を書さざるなり。
成
經元年。一乘。繩證反。卒七。尊忽反。茅戎。史記及二傳、皆作貿戎。別種。章勇反。
傳。詹嘉。之廉反。欲要。一遙反。結好。呼報反。
經二年。新築。音竹。皆陳。直覲反。僑如。其驕反。注同。以與。音預。匹敵。如字。本或作適。亦音敵。汶。音問。匱盟。其位反。
傳。頃公。音傾。嬖人。必計反。魁。苦囘反。封竟。音境。石碏。七略反。甯兪。羊朱反。復欲。扶又反。子喪。息浪反。隕。于敏反。止御。魚呂反。○今本禦。愆。起虔反。百乘。繩證反。下同。濮。音卜。將中。子匠反。且道。音導。以徇。似俊反。于莘。所巾反。不腆。他典反。詰。起吉反。朝。如字。注及下朝夕・朝食同。釋感。胡暗反。本又作憾。○今本亦憾。無令。力呈反。輿師。如字。下無令輿師同。一音所類反。不復。扶又反。齊壘。力軌反。欲賣。摩懈反。邴。一音彼命反。夏。戶雅反。解張。如字。一音直亮反。軍將。子匠反。下將在左同。貫余。古亂反。下注同。肘。竹九反。近烟。附近之近。左幷。徐方聘反。桴。字林云、擊鼓柄也。○今本枹。不注。之住反。元帥。所類反。綦。音其。喪車。息浪反。寓乘。繩證反。其處。昌慮反。仆車。音赴。又蒲北反。驂。七南反。轏。一音仕板反。以肱。古弘反。而匿。女力反。注同。奉觴。式羊反。無令。力呈反。奔辟。徐扶臂反。服氏扶亦反。從君。才用反。又如字。狄卒。子忽反。注及下同。冒之。亡報反。守者。手又反。辟女子。一音扶亦反。單還。音丹。可復。扶又反。辟司徒。必覓反。注同。徐甫亦反。賓媚。美冀反。賂以。音路。甗。字林、牛健反。甑。一音慈陵反。盡東。津忍反。壟。力勇反。疆理。居良反。注下皆同。易也。以豉反。疆竟。如字。又音境。遒。在由反。徐子由反。犒。苦報反。不泯。彌忍反。舊好。呼報反。敢合。如字。一音閤。復借。扶又反。而紓。一音直呂反。鄍。覓經反。三帥。所類反。注及下同。炭。吐旦反。用殉。似俊反。蛤。古荅反。瘞。於例反。壙。苦晃反。一音曠。椁。音郭。而爭。爭鬭之爭。其侈。昌氏反。又式氏反。過衛。古禾反。又古臥反。夏氏。戶雅反。下同。殺御叔。魚據反。死易。以豉反。烝。之承反。使道。音導。注同。吾聘。匹政反。跪。其委反。一音居委反。郢。一音以政反。使介。音界。邢。音刑。勿令。力呈反。代帥。所類反。下注稱帥軍帥・將帥同。也夫。音扶。庚將。子匠反。下同。求好。呼報反。下同。行使。所吏反。濟濟。子禮反。儕。仕皆反。閱。音悅。鰥。古頑反。王卒。子忽反。注同。令二君。力呈反。不見。賢遍反。之別。彼列反。宴樂。音洛。捷。在妾反。暱。女乙反。謂暴。本又作虣。○今本亦虣。奸。音干。大師。音泰。淫從。本又作縱。
經三年。所馮。皮冰反。書將。子匠反。帥。所類反。
傳。鄤。一音莫干反。徐一音万。俘。芳夫反。馘。古獲反。以釁。許覲反。求紓。音舒。懲。直升反。宥。音又。纍。力誰反。其好。呼報反。下同。不與。音預。不爲。于僞反。疆。居良反。楚將。子亮反。帥。所類反。如潰。戶内反。君爲。于僞反。下爲兩君同。寘諸。之豉反。
經四年。
傳。大史。音泰。疆。居良反。陂。彼皮反。鉏。仕居反。將中。子匠反。愬。音素。
經五年。
傳。能令。力呈反。饋。其媿反。驛也。音亦。捷之。在妾反。邪出。似嗟反。絳人。古巷反。壤。如丈反。去盛。起呂反。縵。一音莫半反。譟。素報反。之難。乃旦反。月倒。丁老反。
經六年。
傳。子游相。息亮反。下甯相同。諦。音帝。魯倚。於綺反。言易。以豉反。夏陽。戶雅反。別種。章勇反。登陴。毗支反。復命。扶又反。而近。附近之近。下及注近實皆同。將新。子匠反。下注軍將同。大僕。音泰。疾疢。本或作■(疒に尓)、同。溺。乃歷反。重膇。一音直媿反。足腫。章勇反。一音常勇反。垢。古口反。驕佚。音逸。公說。音悅。公子成。音城。禦諸。魚呂反。桑隧。音遂。子盍。戶臘反。
經七年。
傳。也夫。音扶。共仲。音恭。鄖。本亦作員。音云。邑名。閻。音鹽。黑要。一遙反。遺。唯季反。慝。他得反。請使。所吏反。說之。音悅。季札。側八反。一卒。子忽反。注同。令吳。力呈反。寘其。之豉反。諸夏。戶雅反。惡孫。烏路反。反戚。七狄反。
經八年。來媵。一音繩證反。娣。大計反。
傳。不復。扶又反。其行。下孟反。注同。猶喪。息浪反。妃耦。音配。下五口反。長有。如字。一音丁丈反。平與。音餘。一音預。愷。開在反。樂也。悌。徒禮反。易也。共姬。音恭。祁奚。字林、上尸反。趙衰。初危反。盾。徒本反。喆。陟列反。○今本哲。邪。似嗟反。敢侮。亡甫反。鰥、古頑反。城已惡。如字。已猶太也。本或作城已惡矣。虞度。待洛反。封疆。居良反。注同。唯然。音維。本或作雖。後人改也。閉。補計反。又補結反。一音戶旦反。不復。扶又反。君後。如字。徐胡豆反。
經九年。之好。呼報反。頃。音傾。
傳。魯復。扶又反。下同。相所。息亮反。綠衣。如字。本又作褖。吐亂反。注同。使在。所吏反。拘。九于反。不背。音佩。下同。舍其。音捨。少小。詩照反。君盍。戶臘反。也夫。音扶。萃。在醉反。匱。其位反。爲將。于僞反、非也。而紓。音舒。晉使。所吏反。注及下同。脩好。呼報反。
經十年。
傳。糶、一音土弔反。今本糴。茷。一音蒲艾反。大宰。音泰。之使。所吏反。下及注使在同。頑。如字。徐五班反。州蒲。本或作州滿。卷縣。字林、丘權反。如淳漢書音同。搏膺。音博。而踊。音勇。及寢門。一本無及字。求醫。於其反。懼傷我。絶句。逃之。絶句。鬲。音革。攻之。音工。鍼也。音針。○今本針。爲之。如字。